(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】異方導電材料の製造方法および素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 43/00 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
H01R43/00 H
(21)【出願番号】P 2022501965
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2021006110
(87)【国際公開番号】W WO2021166999
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2020028839
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】高桑 英希
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 和人
(72)【発明者】
【氏名】齋江 俊之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直樹
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-283375(JP,A)
【文献】特開2002-260753(JP,A)
【文献】特開平07-282878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R11/00-11/32
H01R43/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の上に、有機絶縁体層と前記有機絶縁体層を貫通する複数の導体とを含む異方導電層を形成する異方導電層形成工程を含み、
前記異方導電層形成工程が下記工程A、工程Bおよび工程Cからなる群から選択される少なくとも1つの工程を含み、
前記複数の導体のうち前記基材から遠い側の前記異方導電層の表面における露出部は、前記異方導電層の膜面の法線方向から見たとき、それぞれ直径5μmの円の内部に収まる形状を有
し、
さらに、前記工程Aにおいて、支持体の上に導通部を形成する、基材準備工程を含む、
異方導電材料の製造方法;
工程A:有機絶縁体層またはその前駆体層を前記基材の上に形成し、前記有機絶縁体層またはその前駆体層に凹凸形状を形成し、前記凹凸形状のうち凹部に導体を充填する工程;
工程B:有機絶縁体層を前記基材の上に形成し、前記有機絶縁体層に導体を含む部材を埋め込む工程;
工程C:導通可能な凸部を前記基材の上に形成し、前記凸部が形成された前記上に有機絶縁体層を形成する工程。
【請求項2】
前記有機絶縁体層またはその前駆体層が感光性を有する材料から形成される、請求項1に記載の異方導電材料の製造方法。
【請求項3】
前記有機絶縁体層上またはその前駆体層上にマスクパターンを形成する工程およびエッチングによって前記マスクパターンを前記有機絶縁体層に転写することによって、前記工程Aにおける凹凸形状を形成する、請求項1または2に記載の異方導電材料の製造方法。
【請求項4】
前記マスクパターンが感光層にパターンを形成したものである、請求項3に記載の異方導電材料の製造方法。
【請求項5】
前記有機絶縁体層上またはその前駆体層上にマスクパターンを形成する工程が、前記有機絶縁体層上にマスク層を形成し、さらに、その上に感光層を形成する工程、前記感光層にパターンを形成する工程、エッチングによって前記マスクパターンをマスク層に転写する工程を含む、請求項3または4に記載の異方導電材料の製造方法。
【請求項6】
前記異方導電層形成工程の後に基材を除去する基材除去工程を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の異方導電材料の製造方法。
【請求項7】
前記有機絶縁体層がポリイミドおよびポリベンゾオキサゾールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の異方導電材料の製造方法。
【請求項8】
前記異方導電層形成工程が前記工程Aおよび前記工程Bからなる群から選択される少なくとも1つの工程を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の異方導電材料の製造方法。
【請求項9】
前記導通部の上に前記有機絶縁体層を形成する工程を含む、請求項
1~8のいずれか1項に記載の異方導電材料の製造方法。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の異方導電材料の製造方法を含む、素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異方導電材料の製造方法および素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化膜等の絶縁性基材の厚み方向に貫通した複数の貫通穴に金属が充填された金属充填微細構造体は、近年ナノテクノロジーでも注目されている分野のひとつである。金属充填微細構造体は、例えば、電池用電極、ガス透過膜、センサー、および異方導電材料等の用途が期待されている。
異方導電材料は、半導体素子等の電子部品と回路基板との間に挿入し、加圧するだけで電子部品と回路基板間の電気的接続が得られるため、半導体素子等の電子部品等の電気的接続部材、および機能検査を行う際の検査用コネクタ等として広く使用されている。
特に、半導体素子等の電子部品は、ダウンサイジング化が顕著である。従来のワイヤーボンディングのような配線基板を直接接続する方式、フリップチップボンディング、およびサーモコンプレッションボンディング等では、電子部品の電気的な接続の安定性を十分に保証することができないため、電子接続部材として異方導電材料が注目されている。このような材料として、特許文献1や特許文献2に記載の異方導電材料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4163728号公報
【文献】特開2008-305443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、異方導電材料として、樹脂膜中に導電粒子を分散させた非貫通型の有機異方導電材料や、金属酸化物等の貫通孔に導体を充填した貫通型の無機異方導電材料が検討されていた。しかしながら、前者は導電粒子のサイズによっては微細な電極の接合に不向きである場合があり、後者は可撓性の低さによって多様な形状の電極の接合に不向きである場合があった。貫通型の異方導電材料を有機物で製造することができれば、取り扱い性・加工性に優れるため、様々な用途の電極材料として利用できる。
【0005】
そこで本発明は、簡便なプロセスで有機異方導電材料を製造可能な異方導電材料の製造方法、および、上記異方導電材料の製造方法を含む素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、本発明者が鋭意検討を行った結果、下記手段により、上記課題は解決された。
<1> 基材の上に、有機絶縁体層と上記有機絶縁体層を貫通する複数の導体とを含む異方導電層を形成する異方導電層形成工程を含み、
上記異方導電層形成工程が下記工程A、工程Bおよび工程Cからなる群から選択される少なくとも1つの工程を含み、
上記複数の導体のうち上記基材から遠い側の上記異方導電層の表面における露出部は、上記異方導電層の膜面の法線方向から見たとき、それぞれ直径5μmの円の内部に収まる形状を有する、
異方導電材料の製造方法;
工程A:有機絶縁体層またはその前駆体層を上記基材の上に形成し、上記有機絶縁体層またはその前駆体層に凹凸形状を形成し、上記凹凸形状のうち凹部に導体を充填する工程;
工程B:有機絶縁体層を上記基材の上に形成し、上記有機絶縁体層に導体を含む部材を埋め込む工程;
工程C:導通可能な凸部を上記基材の上に形成し、上記凸部が形成された上記上に有機絶縁体層を形成する工程。
<2> 上記有機絶縁体層またはその前駆体層が感光性を有する材料から形成される、<1>に記載の異方導電材料の製造方法。
<3> 上記有機絶縁体層上またはその前駆体層上にマスクパターンを形成する工程およびエッチングによって上記マスクパターンを上記有機絶縁体層に転写することによって、上記工程Aにおける凹凸形状を形成する、<1>または<2>に記載の異方導電材料の製造方法。
<4> 上記マスクパターンが感光層にパターンを形成したものである、<3>に記載の異方導電材料の製造方法。
<5> 上記有機絶縁体層上またはその前駆体層上にマスクパターンを形成する工程が、上記有機絶縁体層上にマスク層を形成し、さらに、その上に感光層を形成する工程、上記感光層にパターンを形成する工程、エッチングによって上記マスクパターンをマスク層に転写する工程を含む、<3>または<4>に記載の異方導電材料の製造方法。
<6> 上記異方導電層形成工程の後に基材を除去する基材除去工程を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の異方導電材料の製造方法。
<7> 上記有機絶縁体層がポリイミドおよびポリベンゾオキサゾールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の異方導電材料の製造方法。
<8> 上記異方導電層形成工程が上記工程Aおよび上記工程Bからなる群から選択される少なくとも1つの工程を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の異方導電材料の製造方法。
<9> さらに、上記工程Aにおいて、支持体の上に導通部を形成する、基材準備工程を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の異方導電材料の製造方法。
<10> 上記導通部の上に上記有機絶縁体層を形成する工程を含む、<9>に記載の異方導電材料の製造方法。
<11> <1>~<10>のいずれか1つに記載の異方導電材料の製造方法を含む、素子の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、簡便なプロセスで有機異方導電材料を製造可能な異方導電材料の製造方法、および、上記異方導電材料の製造方法を含む素子の製造方法を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例における異方導電材料の製造過程を示すフローチャートである。
【
図2】実施例における異方導電材料の製造過程を模式的な断面図で示す工程説明図である。
【
図3】実施例で作製した異方導電材料を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の主要な実施形態について説明する。しかしながら、本発明は、明示した実施形態に限られるものではない。
本明細書において「~」という記号を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、その工程の所期の作用が達成できる限りにおいて、他の工程と明確に区別できない工程も含む意味である。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有しない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた露光も含む。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の両方、または、いずれかを意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および「メタクリル」の両方、または、いずれかを意味し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」および「メタクリロイル」の両方、または、いずれかを意味する。
本明細書において、構造式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また本明細書において、固形分濃度とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量百分率である。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、特に述べない限り、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC測定)に従い、ポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000、TSKgel Super HZ2000(東ソー(株)製)を用いることによって求めることができる。それらの分子量は特に述べない限り、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて測定したものとする。また、GPC測定における検出は特に述べない限り、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用したものとする。
本明細書において、積層体を構成する各層の位置関係について、「上」または「下」と記載したときには、注目している複数の層のうち基準となる層の上側または下側に他の層があればよい。すなわち、基準となる層と上記他の層の間に、さらに第3の層や要素が介在していてもよく、基準となる層と上記他の層は接している必要はない。また、特に断らない限り、基材に対し層が積み重なっていく方向を「上」と称し、または、感光層がある場合には、基材から感光層へ向かう方向を「上」と称し、その反対方向を「下」と称する。なお、このような上下方向の設定は、本明細書中における便宜のためであり、実際の態様においては、本明細書における「上」方向は、上向きと異なることもありうる。
本明細書において、特段の記載がない限り、組成物は、組成物に含まれる各成分として、その成分に該当する2種以上の化合物を含んでもよい。また、特段の記載がない限り、組成物における各成分の含有量とは、その成分に該当する全ての化合物の合計含有量を意味する。
本明細書において、特に述べない限り、温度は23℃、気圧は101,325Pa(1気圧)、相対湿度は50%RHである。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
「直交」等の角度、温度、および圧力について、特に記載がなければ、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
また、「同一」とは、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。また、「全面」等は、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
【0010】
本発明の異方導電材料の製造方法は、基材の上に、有機絶縁体層と上記有機絶縁体層を貫通する複数の導体とを含む異方導電層を形成する異方導電層形成工程を含み、上記異方導電層形成工程が下記工程A、工程Bおよび工程Cからなる群から選択される少なくとも1つの工程を含み、上記複数の導体のうち上記基材から遠い側の上記異方導電層の表面における露出部は、上記異方導電層の膜面の法線方向から見たとき、それぞれ直径5μmの円の内部に収まる形状を有することを特徴とする。
工程A:有機絶縁体層またはその前駆体層を上記基材の上に形成し、上記有機絶縁体層またはその前駆体層に凹凸形状を形成し、上記凹凸形状のうち凹部に導体を充填する工程
工程B:有機絶縁体層を上記基材の上に形成し、上記有機絶縁体層に導体を含む部材を埋め込む工程
工程C:導通可能な凸部を上記基材の上に形成し、上記凸部が形成された上記表面に有機絶縁体層を形成する工程
【0011】
このような構成とすることにより、簡単なプロセスで、有機異方導電材料を製造することが可能になる。有機異方導電材料は、加工特性に優れるため、適用できる素子の範囲が広がる。
【0012】
また、本発明の異方導電材料の製造方法は、基材準備工程を有するものであってもよい。
以下、本発明の異方導電材料の製造方法について説明する。
【0013】
<基材準備工程>
本発明の異方導電材料は、支持体の上に導通部を形成する基材準備工程を含むことが好ましい。すなわち、基材は、上記導通部と上記導通部を支持する支持体を有することが好ましい。基材が導通部を有することにより、電解めっきにより異方導電層の導体を形成することが可能となる。
支持体は、ガラス基板、シリコン基板などが例示される。
また、基材は、機械的剥離や溶解などで、異方導電層から除去可能であることが好ましく、支持体のうち導通部と接する部分に剥離層や仮接着剤層などの剥離を容易にする層を含んでいてもよい。
導通部は特に限定されず、その具体例としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、インジウムがドープされたスズ酸化物(ITO)等が好適に例示され、中でも、電気伝導性の観点から、銅、金、アルミニウム、ニッケルが好ましく、銅、金がより好ましく、銅がさらに好ましい。導通部は、上記導体とその組成の50質量%以上が共通することが好ましく、90質量%以上が共通することがより好ましく、98質量%以上が共通することがより好ましい。このような構成とすることにより、接合時の導通信頼性がより向上する傾向にある。
なお、本発明の異方導電材料の製造方法においては、基材準備工程は必須ではなく、所定の基材を調達することで対応してもよい。
【0014】
<異方導電層形成工程>
本発明の異方導電材料の製造方法は、基材の上に、有機絶縁体層と上記有機絶縁体層を貫通する複数の導体とを含む異方導電層を形成する異方導電層形成工程を含む。このような構成とすることにより、有機異方導電材料が簡易に製造可能となる。基材が導通部を有する場合、導通部の上に上記有機絶縁体層を形成する工程を含むことが好ましい。有機絶縁体層は導通部の表面に設けてもよいし、導通部の表面に剥離層等の層を設けてその表面に有機絶縁体層を設けてもよい。
本発明においては、上記異方導電層形成工程が工程A、工程Bおよび工程Cからなる群から選択される少なくとも1つの工程を含み、工程Aおよび工程Bからなる群から選択される少なくとも1つの工程を含むことが好ましく、工程Aを含むことがより好ましい。
【0015】
<<工程A>>
工程Aは、有機絶縁体層またはその前駆体層を上記基材の上に形成し、上記有機絶縁体層またはその前駆体層(好ましくは有機絶縁体層)に凹凸形状を形成し、上記凹凸形状のうち凹部に導体を充填する工程である。有機絶縁体層の形成に際し、前駆体層を経由する場合は、上記前駆体層を有機絶縁体層に変換してから、上記凹凸形状を形成することが好ましい。有機絶縁体層は凹部を形成することが容易であるため、上記工程を採用することにより、容易に異方導電材料が製造可能になる。
有機絶縁体層またはその前駆体層は、有機絶縁材料を用いて形成することができるものであれば特に制限なく応用される。本発明において、有機絶縁材料は、有機溶剤等に対する耐性を有することが好ましく、また、体積抵抗率が1×1015Ωcm以上であることが好ましい。
また、有機絶縁体層は、その厚さが50μm以下であることが好ましく、また、5μm以上であることが実際的である。
有機絶縁体層は、ポリイミドおよびポリベンゾオキサゾールからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。また、有機絶縁体層またはその前駆体層は、感光性を有さない材料から形成されてもよいが、感光性を有する材料から形成されることが好ましい。なお、感光性を有する材料とは、すべての材料が感光性を有することを意味するものではなく、有機絶縁体層またはその前駆体層を構成する材料全体として感光性を有していればよい。感光性を有することにより、有機絶縁体層に感光性を持たせて露光しパターニングすることができる。有機絶縁体層が感光性を有する場合の具体例としては、国際公開第2017/146152号の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、有機絶縁体層自体をパターニングしない場合も、露光によって、有機絶縁体層の強度を高めることが可能になる。この場合の有機絶縁体層の具体例としては、国際公開第2017/146152号の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0016】
上記有機絶縁体層またはその前駆体層に凹凸形状を形成する方法としては、フォトレジストを利用したドライエッチングが挙げられる。具体的には、有機絶縁体層上またはその前駆体層上(好ましくは、有機絶縁体層上)にマスクパターンを形成する工程およびエッチングによって上記マスクパターンを上記有機絶縁体層に転写する工程が挙げられる。上記マスクパターンは感光層にパターンを形成したもの(フォトリソグラフィー法によるもの)であることが好ましい。従って、感光層は、例えば、フォトレジスト層が例示される。さらには、上記有機絶縁体層上またはその前駆体層上にマスクパターンを形成する工程が、上記有機絶縁体層上にマスク層を形成し、さらに、その上に感光層を形成する工程、上記感光層にパターンを形成する工程、エッチングによって上記マスクパターンをマスク層に転写する工程を含むことが好ましい。マスク層としては、ポリシリコン、アモルファスカーボン、窒素含有酸化シリコンが例示される。工程Aにおいて、凹部が貫通する様にパターンが形成される。
また、マスク層や感光層の形成の際に有機絶縁体層またはその前駆体層が溶解・変質等を受ける可能性がある場合、保護層としてポリビニルアルコールやスチレンエラストマー等による中間層をマスク層や感光層と有機絶縁体層またはその前駆体層との間に設けてもよい。
また、上述の通り、本発明においては、フォトレジストを用いず有機絶縁体層を直接露光・現像して凹凸形状を形成してもよい。
なお、有機絶縁体層およびその前駆体層には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で多少の導体を含んでいてもよい。
【0017】
工程Aは、さらに、上記凹凸形状のうち凹部に導体を充填することを含む。導体を充填することにより、異方導電材料が得られる。充填方法としてはめっきや蒸着等が使用でき、特にめっきが好ましい。めっきにより充填する場合、基材が導通部を有することが好ましい。充填方法については、また、特開2018-037509号公報の段落番号0031~0050に記載された方法を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0018】
<工程B>
有機絶縁体層を上記基材の上に形成し、上記有機絶縁体層に導体を含む部材を埋め込む工程である。部材の埋め込みは、例えば、針状の被転写用導体を複数有する剣山状の部材を有機絶縁体層に対して圧し込む等の方法で行うことができる。
有機絶縁体層等は、工程Aで述べたもの等が好ましく用いられる。
【0019】
<工程C>
導通可能な凸部を上記基材の上に形成し、上記凸部が形成された上に有機絶縁体層を形成する工程である。凸部の形成は、例えば、導体をリソグラフィでパターニングしてピラー部を形成する、平坦な領域に導体のウィスカーを成長させたりする、導体をトナー転写する等の方法で行うことができる。
有機絶縁体層等は、工程Aで述べたもの等が好ましく用いられる。
【0020】
<その他>
本発明の異方導電材料の製造方法においては、基材を除去する基材除去工程を含んでいてもよい。具体的には、上記異方導電層形成工程の後に、機械的剥離や溶解などで、基材を除去する基材除去工程を含んでもよい。基材をより除去しやすくするため、基材の表面に剥離層や仮接着剤層等を設けてもよい。この構成は、特に、基材が導通部を有する場合に有益である。
【0021】
<有機絶縁体層を貫通する複数の導体>
本発明の異方導電材料の製造方法においては、上記複数の導体のうち上記基材から遠い側の上記異方導電層の表面における露出部は、上記異方導電層の膜面の法線方向から見たとき、それぞれ直径5μmの円の内部に収まる形状を有する。このような円の内部に収まる形状とすることにより、法線方向の十分な導電性と膜面方向の十分な絶縁性の両立が達成できる。露出部とは、有機絶縁体に覆われていない導体の表面を意味する。
複数の導体のうち基材から遠い側の異方導電層表面における露出部が、上記異方導電層の膜面の法線方向から見たとき、つまり平面視において(
図3参照)、それぞれ直径5μmの円の内部に収まる形状を有する。上記の直径(
図3のd2)はさらに4μmであることが好ましく、3μmであることがより好ましく、2μmであることが特に好ましい。上記複数の導体は、有機絶縁体層中で、その厚み方向に延びる柱状の形態であることが好ましく、有機絶縁体層を貫通した柱状構造であることがより好ましい。なお、上記円の下限値は特に制約されず、例えば100nm以上であることが実際的である。複数の導体の距離(
図3のd1)は特に限定されないが、異方導電材料の用途を考慮すると、導体の中心間の距離として3μm以上であることが好ましい。上限としては、10μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましい。
導体の材質は特に限定されずその具体例としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、インジウムがドープされたスズ酸化物(ITO)等が好適に例示される。中でも、電気伝導性の観点から、銅、金、アルミニウム、ニッケルが好ましく、銅、金がより好ましく、銅がさらに好ましい。
本発明の異方導電層は、さらに、非貫通の導体や直径5μmの円の内部に収まらない形状を有する貫通導体も含んでいてもよい。
【0022】
次に、本発明の製造方法で得られる異方導電材料の一例を
図3に従って示す。
図3は異方導電材料の一部を有機絶縁体層の膜面方向から示したものである。
図3は、
図1のフローチャートによれば、S180の工程を完了した状態である。上記異方導電材料は、有機絶縁体層と上記有機絶縁体層を貫通する複数の導体を含む。
【0023】
本発明の異方導電材料の製造方法を用いて、各種素子を製造することができる。
本発明の異方導電材料は、接合構造体としてもよい。接合構造体は、電気的な導通端子となる突起部を有する第1の部材と、電気的な導通端子となる突起部を有する第2の部材と、第1の部材と第2の部材との間に設けられた樹脂組成物を用いて形成された膜とを有し、第1の部材の突起部と第2の部材の突起部とが電気的に接合している。
【0024】
本実施形態の接合構造体において、第1の部材および第2の部材の一方が絶縁性基材と、絶縁性基材の厚み方向に貫通し、互いに絶縁された状態で設けられた導電性部材からなる複数の導通部とを有することが好ましい。複数の導通路は、絶縁性基材の表面から突出した突起部を有する異方導電性部材であってもよく、突起部を有しない、いわゆる面一の構造であってもよい。また、他方が配線基板であることが好ましい。
【0025】
配線基板としては、支持体と、高さが10μm以下の複数の電極とを有し、さらに必要に応じて、その他の部材を有するものなどが挙げられる。ここで、電極の高さは、配線基板の断面を電解放出型走査型電子顕微鏡により10000倍の倍率で観察し、電極の高さを10点で測定した平均値をいう。また、配線基板は、基板(例えば、シリコン基板)上に集積回路が実装された半導体チップであってもよい。半導体チップとしては、メモリ、イメージセンサー、ロジック、パワー半導体等が挙げられる。
【0026】
配線基板における支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プラスチック基板、ガラス基板などが挙げられる。また、支持体の形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0027】
以下に実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。下記実施例の製造過程を
図1のフローチャートと
図2の断面図とで示している。
【0028】
基材準備(
図1のS110)
8インチ(1インチは2.54cmである)の厚さのシリコンウエハに、スパッタリング装置を使用し、銅(Cu)を100nmの厚みで製膜した。
【0029】
剥離層(
図1のS120)
セプトン4033((株)クラレ製、ポリスチレン系エラストマー)
25.86質量%
Irganox 1010(BASFジャパン(株)製)0.26質量%
Sumilizer TP-D (住友化学(株)製) 0.26質量%
TSF4446
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
0.01質量%
1,3,5-トリメチルベンゼン 73.61質量%
上記の混合液をスピンコーターで塗布し、銅基板上に剥離層を形成した。
【0030】
異方導電層形成工程
有機絶縁体層の作製(
図1のS130)
(ポリマー前駆体)
A:ポリイミド前駆体 37質量部
【化1】
国際公開第2017/146152号の合成例1の記載に従って合成した。
B:IRGACURE OXE 01(BASF社製) 1.5質量部
C:SR-209(Arkema 社製) 6質量部
D:N-メチルピロリドン 54質量部
E:下記化合物 0.3質量部
【化2】
F:下記化合物 1.0質量部
【化3】
Etはエチル基である。
G:4-メトキシフェノール 0.1質量部
H:1,2,4-トリアゾール 0.1質量部
【0031】
ポリイミドの硬化(
図1のS140)
上記有機絶縁体層作製用の組成物を、先の剥離層上にスピンコーターで塗布し、乾燥後、i線ステッパーを使用し、500mJ/cm
2の露光量で全面露光したのち、昇温プログラム式キュア炉(VF-2000型、光洋リンドバーグ社製)を用いて、窒素雰囲気化にて250℃で2時間加熱硬化し、ポリイミド膜(有機絶縁体層)を得た。硬化後のポリイミド膜厚は、10μmであった。
【0032】
フォトレジストの積層とパターニング(
図1のS150)
下記樹脂 37.16質量部
【化4】
各構成単位の比率は、モル比である。
下記光酸発生剤 0.76質量部
【化5】
トリオクチルアミン 0.02質量部
界面活性剤 PF-6320(OMNOVA社製) 0.06質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 62.00質量部
【0033】
上記混合液をポリイミド膜(有機絶縁体層)上にスピン塗布、乾燥し、レジスト膜を作製した。この際、乾燥後のレジスト膜の膜厚が10μmとなるように作製した。
【0034】
このレジスト膜に対し、直径が2μm(
図3、d2)の円状の透過領域が、隣接する円の直径どうしの距離が4μm(
図3、d1)となるよう縦横に並んで配置されているマスクを介して、KrFエキシマレーザースキャナー(ASML製、PAS5500/850C波長248nm)を用いて、パターン露光した。照射後に130℃にて60秒ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて60秒間浸漬した後、30秒間、純水でリンスして乾燥して、等間隔で直径2μmの穴が形成されたレジストパターンを作製した。
【0035】
エッチング(
図1のS160)
得られたレジストパターン/有機絶縁体層/基材の積層体を、以下の条件で、非マスクパターン部を基材の銅部分が現れるまでドライエッチングを実施した。
ガス:CF
4(流量200ml/min)、Ar(流量800ml/min)、O
2(流量50ml/min)
ソースパワー:800W
ウェハバイアス:600W
アンテナバイアス:100W
ESC電圧:400V
【0036】
金属充填工程(
図1のS170)
以下に示す組成の銅めっき液を使用し、定電流電解を施すことにより、構造体の内部に銅が充填された金属充填微細構造体を作製した。
ここで、定電流電解は、株式会社山本鍍金試験器社製のめっき装置を用い、北斗電工株式会社製の電源(HZ-3000)を用い、めっき液中でサイクリックボルタンメトリを行って析出電位を確認した後に、以下に示す条件で処理を施した。
(銅めっき液組成および条件)
硫酸銅 100g/L
硫酸 50g/L
塩酸 15g/L
温度 25℃
電流密度 10A/dm
2
【0037】
剥離工程(
図1のS180)
残った積層体をメシチレン中に浸漬したのち、有機絶縁体層と基板の導通部(銅)の間にカッターナイフの刃を差し込み、物理的に剥離層にてはがすことにより目的とする有機絶縁体層1および導体2からなる異方導電層10の積層体を取り出した。
【符号の説明】
【0038】
1 有機絶縁体層(ポリイミド)
2 導体(銅)
3 剥離層
4 導通部(銅)
5 支持体(シリコンウエハ、ガラス基板等)
6 レジスト
7 穴(凹部)
8 基材
10 異方導電層