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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】紫外線遮蔽ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/25 20060101AFI20231129BHJP
   C03C 17/30 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C03C17/25 A
C03C17/30
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020563872
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2019051182
(87)【国際公開番号】W WO2020141601
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2019000196
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】森田 晋平
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-097535(JP,A)
【文献】特開2012-180260(JP,A)
【文献】特開2013-129576(JP,A)
【文献】特開平07-157336(JP,A)
【文献】特開2007-137748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/00-17/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板と、前記ガラス板の主面に設けられた紫外線遮蔽膜と、を備え、車体開口部に開閉可能に取り付けられる紫外線遮蔽ガラスであって、
前記紫外線遮蔽膜はその膜厚に急変部がない連続膜であり、
前記紫外線遮蔽膜は、平面視で、前記紫外線遮蔽膜の外周縁から内側へ1mmの幅の領域である周縁領域と、前記周縁領域の内周縁から内側へ59mmの幅の領域である中間領域と、前記中間領域に囲まれた中央領域とを有し、
前記周縁領域における前記紫外線遮蔽膜の断面形状が上に凸の曲線を有し、
前記中間領域における前記紫外線遮蔽膜の断面形状が上に凸の曲線を有し、
前記中央領域における前記紫外線遮蔽膜の最大膜厚が1μm~10μmであり、
前記紫外線遮蔽ガラスが車体開口部に取り付けられた場合に、前記紫外線遮蔽膜が車体開口部の面の70%以上に存在し、かつ、前記周縁領域の少なくとも一部が、前記車体開口部に存在し、
前記車体開口部に存在する前記周縁領域において、前記紫外線遮蔽膜の最大膜厚が0.4μm~1.0μmである、紫外線遮蔽ガラス。
【請求項2】
前記紫外線遮蔽ガラスが車体開口部に取り付けられた場合に車体開口部に存在する周縁領域が、紫外線遮蔽ガラス外周縁の、車体開口部に取り付けられた紫外線遮蔽ガラスが開けられた場合に車体開口部周囲のガラス収納部から離れる部分、に沿った周縁領域部分である、請求項1に記載の紫外線遮蔽ガラス。
【請求項3】
前記紫外線遮蔽ガラスが、上下方向に移動して開閉されるように車体開口部に取り付けられる略4辺形の紫外線遮蔽ガラスであって、前記周縁領域部分が該紫外線遮蔽ガラスの上辺に沿った周縁領域部分である、請求項2に記載の紫外線遮蔽ガラス。
【請求項4】
前記紫外線遮蔽ガラスの上辺に沿った周縁領域部分の外周縁と前記ガラス板の外周縁との間に幅5mm~25mmの膜不在域を有する、請求項3に記載の紫外線遮蔽ガラス。
【請求項5】
前記周縁領域における前記紫外線遮蔽膜の断面形状が有する前記凸の曲線において、紫外線遮蔽膜の外周縁と、外周縁から内側へ0.1mmの位置の膜上面とを結ぶ直線の傾きが6μm/mm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の紫外線遮蔽ガラス。
【請求項6】
前記中間領域における前記紫外線遮蔽膜の平均膜厚が1μm~3μmである、請求項1~のいずれか1項に記載の紫外線遮蔽ガラス。
【請求項7】
前記中間領域における前記紫外線遮蔽膜の断面形状が有する前記曲線に接する接線の傾きが2μm/mm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の紫外線遮蔽ガラス。
【請求項8】
前記中央領域の外周縁における前記紫外線遮蔽膜の膜厚が1μm~3μmである、請求項1~のいずれか1項に記載の紫外線遮蔽ガラス。
【請求項9】
前記紫外線遮蔽膜は、前記ガラス板の主面に直接設けられている、請求項1~のいずれか1項に記載の紫外線遮蔽ガラス。
【請求項10】
前記紫外線遮蔽膜は、ISO13837:2008Aに準拠して測定される膜厚が1.5μmにおける紫外線透過率が0~5%である、請求項1~9のいずれか1項に記載の紫外線遮蔽ガラス。
【請求項11】
前記周縁領域及び前記中間領域は、触針式表面形状測定器を用いて測定される最大断面高さが100nm以上の凹凸を有さない、請求項1~10のいずれか1項に記載の紫外線遮蔽ガラス。
【請求項12】
前記中央領域は、ISO13837:2008Aに準拠して測定される紫外線透過率が0%~15%である、請求項1~11のいずれか1項に記載の紫外線遮蔽ガラス。
【請求項13】
前記車体開口部に取り付けられた場合に、前記車体開口部に存在する前記周縁領域は、前記ガラス板の上辺、前方側辺及び後方側辺から選ばれる1以上の少なくとも一部に沿って存在する、請求項1~12のいずれか1項に記載の紫外線遮蔽ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線遮蔽ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板の表面に紫外線遮蔽膜を設けた紫外線遮蔽ガラスが、知られている。
また、塗膜つきガラスが開閉可能な窓ガラスとして用いられる場合、窓ガラスの端部から所定の幅をあけて塗膜を設け、塗膜の膜厚を1μm以上とした塗膜つきガラス(特許文献1)が提案されている。さらに、ガラス板と塗膜とのなす角度を所定の範囲にした塗膜つきガラス(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-129576号公報
【文献】特開2018-104218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、膜厚が1μm以上である紫外線遮蔽膜が、窓ガラスの端部から所定の幅をあけて設けられた場合、紫外線遮蔽膜の外周縁が目視で目立ちやすい。紫外線遮蔽膜の外周縁が目視で目立ちやすいことを改善するため、特許文献2のように、紫外線遮蔽膜の端部に膜厚徐変部を設け、ガラス板と塗膜とのなす角度を所定の範囲にした場合、紫外線遮蔽膜の外周近辺で目視による歪が発生しやすいことを、本発明者らは見出した。そこで、本発明は、紫外線遮蔽性及び外観に優れる紫外線遮蔽ガラスの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、紫外線遮蔽膜の外周近辺に発生する歪が、紫外線遮蔽膜の端部の断面構造に起因することを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
ガラス板と、前記ガラス板の主面に設けられた紫外線遮蔽膜と、を備え、車体開口部に開閉可能に取り付けられる紫外線遮蔽ガラスであって、
前記紫外線遮蔽膜はその膜厚に急変部がない連続膜であり、
前記紫外線遮蔽膜は、平面視で、前記紫外線遮蔽膜の外周縁から内側へ1mmの幅の領域である周縁領域と、前記周縁領域の内周縁から内側へ59mmの幅の領域である中間領域と、前記中間領域に囲まれた中央領域とを有し、
前記中央領域における前記紫外線遮蔽膜の最大膜厚が1μm~10μmであり、
前記紫外線遮蔽ガラスが車体開口部に取り付けられた場合に、前記紫外線遮蔽膜が車体開口部の面の70%以上に存在し、かつ、前記周縁領域の少なくとも一部が、前記車体開口部に存在し、
前記車体開口部に存在する前記周縁領域において、前記紫外線遮蔽膜の最大膜厚が0.4μm~1.0μmである、紫外線遮蔽ガラス。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、紫外線遮蔽性及び外観に優れる紫外線遮蔽ガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の紫外線遮蔽ガラス10の一例を示す平面図である。
図2】本発明の紫外線遮蔽膜12の一例を示す平面図である。
図3図1のA-A’線切断部端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書における以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。また、図1図3における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
(紫外線遮蔽ガラス)
本発明の紫外線遮蔽ガラスは、ガラス板とその主面に設けられた紫外線遮蔽膜とを備えた、車体開口部に開閉可能に取り付けられる紫外線遮蔽ガラスである。
本発明の紫外線遮蔽ガラスが有する紫外線遮蔽膜は、その膜厚に急変部がない連続膜であり、ガラス板の2つの主面のうち片方の主面(車体開口部に取り付けられた場合に車内側となる面)のほぼ全面に設けられている。
本発明において、紫外線遮蔽膜は、平面視で、紫外線遮蔽膜外周縁から内側へ1mmの幅の領域である周縁領域と、周縁領域の内周縁から内側へ59mmの幅の領域である中間領域と、中間領域に囲まれた中央領域とを有するものとする。本発明の紫外線遮蔽ガラスにおいて、中央領域における紫外線遮蔽膜の最大膜厚は1μm~10μmである。
【0011】
また、本発明の紫外線遮蔽ガラスが車体開口部に取り付けられた場合、紫外線遮蔽ガラスの周縁は車体開口部周囲のガラス収納部内に存在する。したがって、紫外線遮蔽膜がガラス板の周縁まで存在する場合は、その部分の紫外線遮蔽膜周縁はガラス収納部内に存在する。紫外線遮蔽膜がガラス板の周縁からガラス収納部の深さを超える距離離れた場合、車体開口部に取り付けられた紫外線遮蔽ガラスの紫外線遮蔽膜周縁と車体開口部周囲との間に紫外線遮蔽膜が存在しない部分が生じる。本発明の紫外線遮蔽ガラスは、それが車体開口部に取り付けられた場合には、車体開口部の面の70%以上に紫外線遮蔽膜が存在する。この車体開口部面に対する車体開口部に存在する紫外線遮蔽膜の割合は、80%以上であることが好ましく、90%以上がより好ましく、100%であってもよい。この面積が広いことにより、紫外線遮蔽ガラスとしての機能が充分発揮される。
【0012】
加えて、本発明の紫外線遮蔽ガラスにおいて、その紫外線遮蔽ガラスが車体開口部に取り付けられた場合、紫外線遮蔽膜の前記周縁領域の少なくとも一部は、車体開口部に存在する。すなわち、紫外線遮蔽ガラスが車体開口部に取り付けられた場合、紫外線遮蔽ガラス周縁の少なくとも一部において、紫外線遮蔽膜が車体開口部周囲のガラス収納部から離れているか、前記周縁領域の幅が1mmであることより、1mm未満の幅でガラス収納部内に存在している。本発明において、このガラス収納部から離れている前記周縁領域及び1mm未満の幅でガラス収納部内に存在している前記周縁領域の最大膜厚は0.4μm~1.0μmである。
上記車体開口部に存在する周縁領域または1mm未満の幅でガラス収納部内に存在している周縁領域としては、車体開口部に開閉可能に取り付けられた紫外線遮蔽ガラスが開けられた場合にガラス収納部から離れる紫外線遮蔽ガラス周縁部に沿った周縁領域であることが好ましい。例えば、略4辺形の紫外線遮蔽ガラスが車体開口部に上下方向に開閉可能に取り付けられ、開けられた場合、通常、紫外線遮蔽ガラスの上辺がガラス収納部から離れて下方に移動し、両側辺及び下辺はガラス収納部内にあって下方に移動する。このような紫外線遮蔽ガラスにおいて、上辺に沿う紫外線遮蔽膜の周縁領域の少なくとも一部が、前記車体開口部に存在することが好ましい。加えて、両側辺及び下辺の少なくとも一部に沿う周縁領域もまた上辺と同様に車体開口部に存在してもよい。
【0013】
本発明の紫外線遮蔽ガラスにおける板ガラスの大略の形状は、4辺形であることが好ましいが、これに限られず、3辺形、5辺形等の形状であってもよい。また、辺はすべて直線状であってもよいが、辺の一部は曲線状であってもよく、凹凸のある辺であってもよい。以下、大略形状が4辺形であり、上辺が上に凸の曲線状、下辺に車体開口部への取り付け等のための凸部を有する形状の板ガラスを使用した、上下方向に開閉される紫外線遮蔽ガラスを例に本発明を説明する。
【0014】
図1は、本発明の紫外線遮蔽ガラス10の一例を示す平面図である。車体開口部に上下方向に開閉可能に取り付けられる紫外線遮蔽ガラス10は、ガラス板11及び該ガラス板11の主面に設けられた紫外線遮蔽膜12を有する。ガラス板11は、上辺31、下辺32、前方側辺33及び後方側辺34の4辺からなる外周を有する。
【0015】
図2は、本発明の紫外線遮蔽ガラスにおける紫外線遮蔽膜12の一例を模式的に示す平面図である。紫外線遮蔽膜12は、その膜厚に急変部がない連続膜であり、周縁領域21と、中間領域22と、中央領域23とを有する。周縁領域21は、平面視で、紫外線遮蔽膜12の外周縁から内側へ1mmの幅の領域である。なお、本発明において、ガラス板における内側とは、ガラス板の面内の重心方向を意味する。中間領域22は、周縁領域21の内周縁から内側へ59mmの幅の領域である。中央領域23は、中間領域22に囲まれた領域である。中央領域23における紫外線遮蔽膜12の最大膜厚は、1μm~10μmである。
【0016】
図1に示す紫外線遮蔽ガラス10における紫外線遮蔽膜12は、ガラス板11の上辺31に沿い、上辺31から一定の幅をあけてそれより下方に設けられており、上辺31に沿って一定幅の膜不在部分が存在している。膜不在部分の幅は、5mm~25mmであることが好ましい。紫外線遮蔽膜12の周縁領域21の幅が1mmであることより、紫外線遮蔽ガラス10が車体開口部に取り付けられた場合、膜不在部分の幅がガラス収納部の深さマイナス1mmを超えると、上辺31に沿う周縁領域21の幅方向の少なくとも一部が車体開口部に存在する。膜不在部分の幅がガラス収納部の深さマイナス1mmを超えガラス収納部の深さ未満である場合、上辺31に沿う周縁領域21の幅方向の一部がガラス収納部内に存在することとなるが、その幅が狭いことより紫外線遮蔽ガラス10のスムーズな動きを維持できる。
【0017】
図3は、上辺31を横切る図1のA-A’線切断部端面図の一部である。ガラス板11の主面に直接設けられた紫外線遮蔽膜12は、周縁領域21と、中間領域22と、中央領域23とを有する。上辺31に沿う図に示す周縁領域21の幅方向の少なくとも一部は、紫外線遮蔽ガラス10が車体開口部に取り付けられた場合に車体開口部に存在する。
【0018】
図1~3に示す紫外線遮蔽ガラス10において、紫外線遮蔽ガラス10が車体開口部に取り付けられた場合に、上辺31に沿う周縁領域21の少なくとも一部は車体開口部に存在し、車体開口部に存在する周縁領域21において、紫外線遮蔽膜12の最大膜厚(L)は、0.4μm~1.0μmである。
【0019】
図1に示すように、紫外線遮蔽膜12は、前方側辺33及び後方側辺34に沿って近接して設けられており、それら辺に沿う膜不在部分は実質的にない。したがって、車体開口部に取り付けられた場合、通常、前方側辺33及び後方側辺34に沿う周縁領域21は紫外線遮蔽ガラス10の開閉にかかわらず、常に車体開口部周囲のガラス収納部内に存在する。また、下辺32においても、下方に突出した部分を除き、紫外線遮蔽膜12は下辺32に沿って近接して設けられており、下辺32に沿う膜不在部分は実質的にない。したがって、側辺の場合と同様に、通常、下辺32に沿う周縁領域21は、紫外線遮蔽ガラス10の開閉にかかわらず、常に車体開口部周囲のガラス収納部内に存在する。
しかし、本発明の紫外線遮蔽ガラスは図示したものに限られない。例えば、前方側辺33、後方側辺34及び下辺32から選ばれる少なくとも1つの辺に沿って、上辺31に沿う膜不在部と同様の膜不在部を設けてもよい。膜不在部を設けた場合、膜不在部を設けた辺に沿う周縁領域の少なくとも一部は、紫外線遮蔽ガラスが車体開口部に取り付けられた場合に車体開口部に存在することが好ましい。
さらに、車体開口部に取り付けられた紫外線遮蔽ガラスが開けられた場合に、上辺31と共に前方側辺33または後方側辺34の少なくとも一部がガラス収納部から離れる場合(例えば、紫外線遮蔽ガラスが斜め下方に移動して開けられる構造を有する場合)、上辺に加えてガラス収納部から離れる側辺に沿う膜不在部を設けて、上辺に沿う周縁領域に加えてその側辺に沿う周縁領域の少なくとも一部もまた車体開口部に存在させることも好ましい。
【0020】
(ガラス板)
ガラス板11は、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、無アルカリガラスが挙げられ、ソーダライムガラスであることが好ましい。
ガラス板11の厚さは、0.5mm~5.0mmであることが好ましく、1.5mm~4.5mmであることがより好ましく、2.0~4.0mmであることが特に好ましい。
また、ガラス板は、ガラス板と紫外線遮蔽膜との間に黒色セラミックス層等の中間層が存在するように、紫外線遮蔽膜が形成される主面の一部に中間層を有していてもよい。
【0021】
(紫外線遮蔽膜)
図2に示すように、紫外線遮蔽膜12は、平面視で、紫外線遮蔽膜12の外周縁から内側へ1mmの幅の領域である周縁領域21と、周縁領域21の内周縁から内側へ59mmの幅の領域である中間領域22と、中間領域22に囲まれた中央領域23と、を有する。
紫外線遮蔽膜はその膜厚に急変部がない連続膜であり、周縁領域21と中間領域22との境界および中間領域22と中央領域23との境界において隣接する2つの領域の膜厚は同一である。ただし、これら境界における膜厚は、境界の長さ方向に変化があってもよい。
また、後述のように、周縁領域21における紫外線遮蔽膜12の断面形状は上に凸の曲線を有することが好ましく、中間領域22における紫外線遮蔽膜12の断面形状もまた上に凸の曲線を有することが好ましい。中央領域23の膜厚は一定であることが好ましいが、多少の膜厚変化があってもよい。
【0022】
中央領域23における紫外線遮蔽膜12の最大膜厚は、1μm~10μmである。中央領域23における紫外線遮蔽膜12の最大膜厚が該範囲であると、紫外線遮蔽ガラス10は、優れた紫外線遮蔽性及び耐摩耗性を確保できる。中央領域23における紫外線遮蔽膜12の最大膜厚は、1.5μm~6μmであることが好ましく、2μm~5μmであることがより好ましく、2μm~4μmであることが特に好ましい。中央領域23における紫外線遮蔽膜12の最小膜厚は、0.8μmであることが好ましく、1μmであることがより好ましい。
【0023】
紫外線遮蔽膜12の周縁領域21の少なくとも一部(図1において上辺31に沿った周縁領域部分やその一部)は、紫外線遮蔽ガラス10が車体開口部に取り付けられた場合に、車体開口部に存在する。車体開口部に存在する周縁領域21において、紫外線遮蔽膜12の最大膜厚は、0.4μm~1.0μmである。車体開口部に存在する周縁領域21において、紫外線遮蔽膜12の最大膜厚が0.4μm~1.0μmであると、紫外線遮蔽ガラス10の外周近辺に歪が発生することを抑制できる。詳細は明らかでないが、周縁領域21における紫外線遮蔽膜12の最大膜厚を0.4μm以上にすると、中間領域22における紫外線遮蔽膜形成時のレベリングが起きやすくなり、中間領域22の平滑性が高まり、歪の発生が抑制されると本発明者らは考えている。周縁領域21における紫外線遮蔽膜12の最大膜厚を1.0μm以下にすると、紫外線遮蔽膜12の外周が目視で目立ちにくくなる。車体開口部に存在する周縁領域21において、紫外線遮蔽膜12の最大膜厚は、0.4μm~0.9μmであることが好ましく、0.4μm~0.8μmであることがより好ましく、0.4μm~0.7μmであることが特に好ましい。
【0024】
車体開口部に取り付けられた場合に車体開口部に存在する周縁領域21は、ガラス板11の上辺31、前方側辺33及び後方側辺34から選ばれる1以上の辺の少なくとも一部に沿って存在する、周縁領域21であることが好ましい。紫外線遮蔽膜12の車体開口部に存在する周縁領域21が、ガラス板11の上辺31、前方側辺33及び後方側辺34から選ばれる1以上の辺の少なくとも一部に沿って存在すると、紫外線遮蔽ガラス10の外観を常に優れたものとできる。
【0025】
周縁領域21における紫外線遮蔽膜12の断面形状は、基板11を下側、紫外線遮蔽膜12を上側としたとき、上に凸の曲線を有することが好ましい。周縁領域21における紫外線遮蔽膜12の断面形状が、上に凸の曲線を有すると、周縁領域21における最大膜厚が0.4μm以上となり、紫外線遮蔽膜12の外周近辺に歪が発生することを抑制できる。凸の曲線において、紫外線遮蔽膜の外周縁と、外周縁から内側へ0.1mmの位置の膜上面とを結ぶ直線の傾きは、6μm/mm以下であることが好ましい。この傾きが6μm/mm以下であると、紫外線遮蔽膜12の外周が目立ちにくくなる。この傾きは、4μm/mm以下であることがより好ましく、3μm/mm以下であることが特に好ましい。
【0026】
周縁領域21と中間領域22の境界における中間領域側の膜厚は、周縁領域側の膜厚と同一である。この境界における周縁領域側の膜厚は、通常、前記周縁領域の最大膜厚の範囲内にあることより、この境界における中間領域側の膜厚も前記周縁領域の最大膜厚の範囲内にあることが好ましい。
中間領域22における紫外線遮蔽膜12の平均膜厚は、1μm~3μmであることが好ましい。本発明において、平均膜厚は、ランダムに選択された5か所における膜厚の平均値である。中間領域22における紫外性遮蔽膜12の平均膜厚が1μm~3μmであると、中間領域22における紫外線遮蔽膜形成時のレベリングが起きやすくなり、紫外線遮蔽膜12の外周近辺に歪が発生することを抑制できる。中間領域22における紫外線遮蔽膜12の平均膜厚は、1μm~2μmであることがより好ましい。
【0027】
中間領域22における紫外線遮蔽膜12の断面形状は、基板11を下側、紫外線遮蔽膜12を上側としたとき、上に凸の曲線を有することが好ましい。中間領域22における紫外線遮蔽膜12の断面形状が、上に凸の曲線を有すると、中間領域22における紫外線遮蔽膜形成時のレベリングが起きやすくなり、中間領域22の平滑性が高まり、紫外線遮蔽膜12の外周近辺に歪が発生することを抑制できる。凸の曲線に接する接線の傾きは、2μm/mm以下であることが好ましい。凸の曲線に接する接線の傾きが2μm/mm以下であると、中間領域22における紫外線遮蔽膜形成時のレベリングが起きやすくなり、紫外線遮蔽膜12の外周近辺に歪が発生することを抑制できる。凸の曲線に接する接線の傾きは、1μm/mm以下であることがより好ましく、0.5μm/mm以下であることが特に好ましい。
【0028】
中央領域22における前記紫外線遮蔽膜の最大膜厚は1μm~10μmである。
また、中間領域22と中央領域23の境界における中央領域側の膜厚は、中間領域側の膜厚と同一である。この境界線である中央領域23の外周縁における紫外線遮蔽膜12の膜厚は、1μm~3μmであることが好ましい。この境界線の近傍を除き、中央領域22の膜厚は3μmを超えてもよい。
中央領域23における紫外線遮蔽膜12の最大膜厚が、1μm~10μmであると、中央領域23が紫外線遮蔽膜12の主要な領域であることより、紫外線遮蔽ガラス10は優れた紫外線遮蔽性を確保できる。
【0029】
紫外線遮蔽膜12は、ガラス板11の主面に直接設けられていることが好ましい。紫外線遮蔽膜12がガラス板11の主面に直接設けられることで、ガラスとの優れた密着性を確保できる。
【0030】
紫外線遮蔽膜12は、中央領域22において、紫外線光透過率が、0%~15%であることが好ましく、0%~10%であることがより好ましく、0%~5%であることがさらに好ましく、0~1%であることが特に好ましい。なお、本発明において、該紫外線光透過率は、ISO13837:2008Aに準拠して測定される値を指す。
【0031】
(紫外線遮蔽膜12を形成する組成物)
車体開口部に存在する周縁領域21の紫外線遮蔽膜12は、紫外線遮蔽膜12を形成する液状組成物の表面張力、組成物のガラス板11に対する接触角、及び組成物の粘度を適宜設計することで得られる。なお、この表面張力、接触角、及び粘度を調整した液状組成物は、車体開口部に存在する周縁領域21以外の紫外線遮蔽膜12の形成にも使用される。すなわち、通常、この液状組成物を用いて、紫外線遮蔽膜12全体が形成される。
【0032】
紫外線遮蔽膜12を形成する組成物の表面張力は、22mN/m~30mN/mであることが好ましい。本発明において、組成物の表面張力は、固形分濃度が30質量%である組成物を、20℃で測定したときの値を指す。組成物の表面張力が22mN/m以上であると、紫外線遮蔽膜12の周縁領域21における最大膜厚を0.4μm以上にできる。組成物の表面張力が30mN/m以下であると、紫外性遮蔽膜12の周縁領域21における最大膜厚を1.0μm以下にできる。組成物の表面張力は、紫外線遮蔽膜12を構成する材料、表面調整剤、溶剤、濃度等により設計できる。組成物の表面張力は、23mN/m~28mN/mであることがより好ましく、24mN/m~27mN/mであることが特に好ましい。
【0033】
紫外線遮蔽膜12を形成する組成物のガラス板11に対する接触角は、18°~35°であることが好ましい。本発明において、組成物の接触角は、固形分濃度が30質量%である組成物を、20℃で測定したときの値を指す。組成物のガラス板11に対する接触角が18°以上であると、紫外線遮蔽膜12の周縁領域21における最大膜厚を0.4μm以上にできる。組成物のガラス板11に対する接触角が35°以下であると、紫外線遮蔽膜12の周縁領域21における最大膜厚を1.0μm以下にできる。組成物のガラス板11に対する接触角は、ガラスの洗浄、組成物に含まれる材料、表面調整剤、溶剤、濃度等により設計できる。組成物のガラス板11に対する接触角は、20°~30°であることがより好ましく、21°~27°であることが特に好ましい。
【0034】
紫外線遮蔽膜12を形成する組成物の粘度は、0.5mPa・s~5mPa・sであることが好ましい。本発明において、組成物の粘度は、固形分濃度が30質量%である組成物を、E型粘度計(RE-85、東機産業社製)を用いて25℃で測定した時の値を指す。組成物の粘度が0.5mPa・s以上であると、組成物の降伏値を適正な範囲に制御することができ、紫外線遮蔽膜12の周縁領域21における最大膜厚を0.4μm以上にできる。組成物の粘度が5mPa・s以下であると、組成物の降伏値を適正な範囲に制御することができ、紫外線遮蔽膜12の周縁領域21における最大膜厚を1.0μm以下にできる。組成物の粘度は、紫外線遮蔽膜12を構成する材料、表面調整剤、溶剤、濃度等により設計できる。組成物の粘度は、1mPa・s~3mPa・sであることがより好ましく、1.4mPa・s~2.5mPa・sであることが特に好ましい。
【0035】
紫外線遮蔽膜12を形成する組成物は、紫外線吸収剤及び硬化性シランを含むことが好ましい。硬化性シランとは、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を少なくとも1個有し、かつかかるケイ素原子を1個以上有するケイ素化合物をいう。加水分解性基は、加水分解して水酸基となりうる基であり、アルコキシ基、塩素原子、アシル基、アシルオキシ基等が挙げられる。硬化性シランとしては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を少なくとも2個有するアルコキシシランが好ましく、アルコキシ基としては炭素数1~4のアルコキシ基が好ましい。
【0036】
紫外線吸収剤としては、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アゾメチン系紫外線吸収剤、インドール系紫外線吸収剤、ベンゾジチオール系紫外線吸収剤、及びオキサゾロン系紫外線吸収剤が挙げられる。特に、紫外線吸収剤は、アゾメチン系紫外線吸収剤、インドール系紫外線吸収剤及びベンゾジチオール系紫外線吸収剤から選ばれる1種以上であることが好ましい。紫外線吸収剤が、アゾメチン系紫外線吸収剤、インドール系紫外線吸収剤及びベンゾジチオール系紫外線吸収剤から選ばれる1種以上であると、380nm~400nmの紫外線を効率的に遮蔽することができ、ISO13837:2008Aに準拠して測定される、紫外線遮蔽膜12の紫外線透過率を、膜厚が1.5μmにおいて、0%~5%とできる。
【0037】
硬化性シランとしては、テトラアルコキシシラン及びビスアルコキシシランが好ましい。テトラアルコキシシランとしては、テトラエトキシシランやテトラメトキシシランが挙げられる。ビスアルコキシシランとしては、下式(1)で表される化合物であることが好ましい。
1 n1 3-nSi-Q-SiR2 m2 3-m (1)
1及びR2は、それぞれ独立して、炭素原子数1~3の1価の炭化水素基であり、X1及びX2は、それぞれ独立して、アルコキシ基であり、Qは、炭素原子数3~8の直鎖状又は分岐状の2価の炭化水素基であり、n及びmは、それぞれ独立して、0、1又は2である。
【0038】
紫外線遮蔽膜12を形成する組成物が、紫外線吸収剤及びシランを含み、紫外線吸収剤が、アゾメチン系紫外線吸収剤、インドール系紫外線吸収剤及びベンゾジチオール系紫外線吸収剤から選ばれる1種以上であり、シランが、テトラアルコキシシラン及び式(1)で表されるビスアルコキシシランである場合、紫外線遮蔽膜12を形成する組成物の表面張力を22mN/m~30mN/mとすることが容易になり、紫外線遮蔽膜12の外周近辺に歪が発生することを抑制できる。
【0039】
紫外線遮蔽膜12を形成する組成物は、硬化性シランとしてテトラアルコキシシランと式(1)で表されるビスアルコキシシランの両者を含むことが好ましい。この場合、テトラアルコキシシランに対する、式(1)で表されるビスアルコキシシランの比は、質量比で0.05~0.2であることが好ましい。テトラアルコキシシランに対する、式(1)で表されるビスアルコキシシランの比が0.05以上であると、アルカリ溶液に浸漬した際の紫外線遮蔽膜12の溶出を抑制できる。テトラアルコキシシランに対する、式(1)で表されるビスアルコキシシランの比が0.2以下であると、紫外線遮蔽膜12の硬度が高まり、紫外線遮蔽ガラス10は耐摩耗性及び耐擦傷性に優れる。テトラアルコキシシランに対する、式(1)で表されるビスアルコキシシランの比は、0.05~0.15であることがより好ましく、0.06~0.13であることが特に好ましい。
【0040】
硬化性シランとしてテトラアルコキシシランと式(1)で表されるビスアルコキシシランを併用する場合、紫外線吸収剤に対する、式(1)で表されるビスアルコキシシランの比は、質量比で0.5~2であることが好ましい。紫外線吸収剤に対する、式(1)で表されるビスアルコキシシランの比が0.5以上であると、紫外線吸収剤が均一分散した紫外線遮蔽膜12を得られる。紫外線吸収剤に対する、式(1)で表されるビスアルコキシシランの比が2以下であると、紫外線遮蔽膜12の硬度が高まり、紫外線遮蔽ガラス10は耐候性及び耐擦傷性に優れる。紫外線吸収剤に対する、式(1)で表されるビスアルコキシシランの比は、0.6~1.7であることがより好ましく、0.7~1.5であることが特に好ましい。
【0041】
紫外線遮蔽膜12を形成する組成物は、さらに赤外線吸収剤、樹脂、表面調整剤、キレート剤、酸及び溶媒を含むことが好ましい。
【0042】
(紫外線遮蔽ガラス10の製造方法)
紫外線遮蔽膜12は、得られた組成物を塗布し、乾燥し、硬化することで、ガラス板11の表面に形成されることが好ましい。組成物の塗布方法としては、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、ロールコート法、メニスカスコート法及びダイコート法が挙げられる。
【0043】
組成物の乾燥方法としては、加熱処理及び減圧乾燥処理が挙げられる。組成物の乾燥方法が加熱処理である場合、20℃~100℃で3秒~60秒で乾燥させることが好ましい。この乾燥条件であると、紫外性遮蔽膜12の周縁領域21の少なくとも一部において、最大膜厚が0.4μm~1.0μmである紫外線遮蔽膜12を得ることが容易になる。
【0044】
組成物の硬化方法としては、加熱処理及び減圧乾燥処理が挙げられる。組成物の硬化方法が加熱処理である場合、60℃~230℃で2分から20分で硬化させることが好ましい。
【0045】
以上、本発明の一実施形態による紫外線遮蔽ガラス10の構成要素及び製造方法について、説明した。これらは単なる一例であって、本発明の紫外線遮蔽ガラス10が他の実施形態を有していてもよいことは、当業者に明らかである。
【実施例
【0046】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。例1~5は実施例であり、例6~8は比較例である。
【0047】
(例1)
丸底フラスコに、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(BASF社製、Uvinul3050)を2.09g、エポキシシラン(信越化学社製、KBM-403)を5.24g、酢酸ブチルを4.25g、塩化ベンジルトリエチルアンモニウムを0.03g加え、105℃に加熱して4時間撹拌して、調合液Aを得た。
得られた調合液Aに、メチルエチルケトンを39.44g、メタノールを8.87g、純水を13.80g、テトラエトキシシランを10.80g、ビスアルコキシシラン(信越化学社製、KBM3066)を0.86g、酢酸水溶液(90質量%)を9.52g、エポキシ樹脂(阪本薬品工業社製、SR-SEP)を0.95g、ポリマレイン酸水溶液(日油社製、ノンポールPMA-50W)を0.17g、マレイン酸を0.01g、表面調整剤(ビックケミー社製、BYK377)を0.06g加え、50℃で2時間撹拌した。最後に、ITO分散液(三菱マテリアル社製、濃度30質量%ITO分散液)を3.87g加え、固形分濃度12.5%の組成物1を得た。
組成物1を、ガラス板を垂直に立てた状態で、ガラス板の上端から数mm~数十mmをあけてガラス板の上辺に沿ってコート液を流しかけて、ガラス板の凹面に塗布し、大気雰囲気で200℃20分間加熱し、紫外線遮蔽膜を有する紫外線遮蔽ガラス1を得た。なお、ガラス板は、670mm(縦)×910mm(横)×3.1mm(厚さ)のサイズのガラス板(AGC社製、高熱線吸収グリーンガラス)を使用した。
【0048】
(例2~8)
例1に記載の調合液Aの代わりに、調合液B~Dを調合した。表1に調合液Aと共に調合液B~Dの組成(数値の単位はg)を示す。なお、調合液B~Dに使用した紫外線吸収剤は以下のものである。
ベンゾジチオール系紫外線吸収剤:1,2-ジブチル-4-(4,7-ジヒドロキシ-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン)ピラゾリジン-3,5-ジオン
アゾメチン系紫外線吸収剤:オリエント化学工業社製、BONASORB UA-3701
インドール系紫外線吸収剤:オリエント化学工業社製、BONASORB UA-3911
【表1】
【0049】
調合液A~Dを用いて、例1の組成物1と同様に組成物2~8を製造した。表2に組成物1と共に組成物2~8の組成(数値の単位はg)を示す。なお、組成物2~8に使用した表面調整剤は以下のものである。
BYK307:ビックケミージャパン社製、BYK-307
DN900:楠本化成社製、ディスパロンDN-900
BYK302:ビックケミージャパン社製、BYK-302
BYK348:ビックケミージャパン社製、BYK-348
BYK381:ビックケミージャパン社製、BYK-381
【表2】
【0050】
得られた組成物1~8の表面張力、ガラス板に対する接触角及び粘度は、表3に示す通りであった。なお、表面張力、ガラス板に対する接触角及び粘度は、固形分濃度を30質量%とした組成物を用いて、測定した。
【表3】
【0051】
表2に示す組成物2~8を用い、ガラス板の立てかけ角度を変えた以外は、例1と同様にして、紫外線遮蔽ガラス2~8を得た。得られた紫外線遮蔽ガラス1~8の評価結果を表4に示す。
なお、ガラス板の立てかけ角度は、塗布面が上を向いて水平に置かれた状態を0°、
ガラスが垂直に立てられた状態を90°、塗布面が下を向いて水平に置かれた状態を180°と表現した。また、周縁領域における傾きとは、紫外線遮蔽膜の外周縁と外周縁から内側へ0.1mmの位置の膜上面とを結ぶ直線の傾きをいう。
【0052】
(各領域における膜厚)
触針式表面形状測定器(ULVAC社製、Dektak150)を用いて、紫外線遮蔽ガラスの上端側の各領域における紫外線遮蔽膜の膜厚(μm)を測定した。
(外周の視認性評価)
目視観察にて、外周がはっきり確認できたものを×とし、それ以外を○とした。
【0053】
(外周近辺の歪評価)
得られた紫外線遮蔽ガラスの表面に対し、7m離れた位置からプロジェクター(EB-1776W、EPSON社製)の光を照射した時に、紫外線遮蔽膜の外周付近に歪みが視認できたものを×とし、それ以外を○とした。但し、外周付近の歪評価が目視で判定できなかった場合には、触針式表面形状測定器(ULVAC社製、Dektak150)を用いて、周縁領域及び中間領域を測定し、最大断面高さが100nm以上の凹凸があった場合を×とし、それ以外を○とした。
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の紫外線遮蔽ガラスは、紫外線遮蔽性及び外観に優れる紫外線遮蔽ガラスであるため、自動車や鉄道等の車両に適用され、特に自動車に好ましく適用される。
なお、2019年01月04日に出願された日本特許出願2019-000196号の明細書、特許請求の範囲、要約書および図面の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0055】
10:紫外線遮蔽ガラス
11:ガラス板
12:紫外線遮蔽膜
21:周縁領域
22:中間領域
23:中央領域
31:上辺
32:下辺
33:前方側辺
34:後方側辺
図1
図2
図3