(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ヘッドユニット、印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231129BHJP
B41J 2/155 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/155
(21)【出願番号】P 2019137299
(22)【出願日】2019-07-25
【審査請求日】2022-05-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】中沢 祐哉
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/104126(WO,A1)
【文献】特開2009-262540(JP,A)
【文献】特開2001-191508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するヘッドと、
前記ヘッドを取り付け可能なベース部材と、
前記ベース部材に対して前記ヘッドを押し付ける押し付け部材と、を備え、
前記押し付け部材は、
前記ヘッドを前記ベース部材の面直方向に押し付ける弾性変形可能な押し付け手段と、
前記ヘッドを前記ベース部材の面内方向に押圧する弾性変形可能な押圧手段と、を有し、
前記押し付け手段は、前記ヘッドを前記ベース部材の開口部に挿入する途中で退避移動し、前記ヘッドの前記ベース部材への取付けが完了した状態では押し付け位置に移動しており、
前記押圧手段は、前記ヘッドを前記ベース部材の開口部に挿入する途中で退避移動し、前記ヘッドの前記ベース部材への取り付けが完了した状態では押圧位置に移動
し、
複数の前記ヘッドが千鳥状に配列され、
前記押し付け部材は、各ヘッド列の同じ側に配置されている
ことを特徴とするヘッドユニット。
【請求項2】
液体を吐出するヘッドと、
前記ヘッドを取り付け可能なベース部材と、
前記ベース部材に対して前記ヘッドを押し付ける押し付け部材と、を備え、
前記押し付け部材は、
前記ヘッドを前記ベース部材の面直方向に押し付ける弾性変形可能な押し付け手段と、
前記ヘッドを前記ベース部材の面内方向に押圧する弾性変形可能な押圧手段と、を有し、
前記押し付け手段は、前記ヘッドを前記ベース部材の開口部に挿入する途中で退避移動し、前記ヘッドの前記ベース部材への取付けが完了した状態では押し付け位置に移動しており、
前記押圧手段は、前記ヘッドを前記ベース部材の開口部に挿入する途中で退避移動し、前記ヘッドの前記ベース部材への取り付けが完了した状態では押圧位置に移動し、
複数の前記ヘッドが千鳥状に配列され、
一方のヘッド列には、両側に前記押し付け部材が配置されている
ことを特徴とす
るヘッドユニット。
【請求項3】
前記ヘッドには、前記ベース部材に対して面直方向で対向するつば部を有し、
前記押し付け部材の前記押し付け手段は、前記ヘッドのつば部を前記ベース部材に対してヘッド挿入方向に押し付ける
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載のヘッドユニット。
【請求項4】
前記ヘッドは前記ベース部材に対して着脱可能に取付けられている
ことを特徴とする請求項1ないし
3のいずれかに記載のヘッドユニット。
【請求項5】
請求項1ないし
4のいずれかに記載のヘッドユニットを備えている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
シート材を搬送する回転体を有し、
前記回転体の周囲に、前記ヘッドユニットが傾斜した状態で配置されている
ことを特徴とする請求項
5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記ヘッドユニットの傾斜角度に応じて前記押し付け部材の前記押し付け手段の押し付け力が異なる
ことを特徴とする請求項
6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記押し付け部材の前記押し付け手段は、傾斜方向で前記ヘッドの上側に配置されている
ことを特徴とする請求項
6又は
7に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドユニット、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のヘッドをベース部材に並べて配置してヘッドユニット(ヘッドアレイ、ヘッドモジュール)を構成することがある。
【0003】
従来、ヘッドのベース部材における面内方向(主走査方向及び副走査方向)の位置調整を行えるようにしたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ヘッドをベース部材に固定しない構成にあっては、ヘッドのベース部材おける面内方向の位置を規制するだけでは、ベース部材が傾けて配置されるときにヘッドがベース部材から浮き上がるという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ベース部材からのヘッドの浮き上がりを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1に係るヘッドユニットは、
液体を吐出するヘッドと、
前記ヘッドを取り付け可能なベース部材と、
前記ベース部材に対して前記ヘッドを押し付ける押し付け部材と、を備え、
前記押し付け部材は、
前記ヘッドを前記ベース部材の面直方向に押し付ける弾性変形可能な押し付け手段と、
前記ヘッドを前記ベース部材の面内方向に押圧する弾性変形可能な押圧手段と、を有し、
前記押し付け手段は、前記ヘッドを前記ベース部材の開口部に挿入する途中で退避移動し、前記ヘッドの前記ベース部材への取付けが完了した状態では押し付け位置に移動しており、
前記押圧手段は、前記ヘッドを前記ベース部材の開口部に挿入する途中で退避移動し、前記ヘッドの前記ベース部材への取り付けが完了した状態では押圧位置に移動し、
複数の前記ヘッドが千鳥状に配列され、
前記押し付け部材は、各ヘッド列の同じ側に配置されている
構成とした。
【0008】
本発明によれば、ベース部材からのヘッドの浮き上がりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る印刷装置の概略説明図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るヘッドユニットをノズル面側から見た平面説明図である。
【
図3】同ヘッドユニットをノズル面と反対側から見た平面説明図である。
【
図4】
図5のA-A線に相当する同ヘッドユニットの断面説明図である。
【
図5】同ヘッドユニットのヘッド取付け部材の平面説明図である。
【
図6】同じく
図5のA-A線に沿う断面説明図である。
【
図8】同じくドラムに対する配置状態を説明する正面説明図である。
【
図9】ヘッドの位置調整の説明に供する説明図である。
【
図10】ヘッド取付け部材を傾斜配置することによるヘッド位置決めに対する影響の説明に供する説明図である。
【
図11】ヘッドの浮き上がりによるヘッド位置調整への影響の説明に供する説明図である。
【
図12】同ヘッドユニットの押し付け部材がヘッドを押し付けている状態の側面説明図である。
【
図15】同押し付け部材による浮き上がり抑制作用の説明に供する説明図である。
【
図16】同押し付け部材によるY方向位置決め作用の説明に供する側面説明図である。
【
図18】本発明の第2実施形態に係るヘッドユニットの平面説明図である。
【
図20】同ヘッドユニットをドラムの周囲に配置した状態の説明図である。
【
図21】ヘッド取付け面の傾斜角度と押し付け力の関係の説明に供する説明図である。
【
図22】ヘッドの位置調整を行うときの作業者のアクセス領域の説明に供する説明図である。
【
図23】本発明の第3実施形態に係るヘッドユニットをドラムの周囲に配置した状態の説明図である。
【
図24】本発明の第4実施形態に係るヘッドユニットの押し付け部材の説明に供する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る印刷装置について
図1を参照して説明する。
図1は同印刷装置の概略説明図である。
【0011】
印刷装置1は、シート材Pを搬入する搬入部10と、前処理部20と、印刷部30と、乾燥部40と、搬出部50と、反転機構部60を備えている。印刷装置1は、搬入部10から搬入(供給)されるシート材Pに対し、前処理手段である前処理部20で必要に応じて前処理液を付与(塗布)し、印刷部30で液体を付与して所要の印刷を行い、乾燥部40でシート材Pに付着した液体を乾燥させた後、シート材Pを搬出部50に排出する。
【0012】
搬入部10は、複数のシート材Pを収容する搬入トレイ11(下段搬入トレイ11A、上段搬入トレイ11B)と、搬入トレイ11からシート材Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12(12A、12B)とを備え、シート材Pを前処理部20に供給する。
【0013】
前処理部20は、例えばインクを凝集させ、裏写りを防止する作用効果を有する処理液をシート材Pの印刷面に付与する処理液付与手段である塗布部21などを備えている。
【0014】
印刷部30は、シート材Pを周面に担持して回転する担持部材(回転体)であるドラム31と、ドラム31に担持されたシート材Pに向けて液体を吐出する液体吐出部32を備えている。
【0015】
また、印刷部30は、前処理部20から送り込まれたシート材Pを受け取ってドラム31との間でシート材Pを渡す渡し胴34と、ドラム31によって搬送されたシート材Pを受け取って反転機構部60に渡す受け渡し胴35を備えている。
【0016】
前処理部20から印刷部30へ搬送されてきたシート材Pは、渡し胴34に設けられた把持手段(シートグリッパ)によって先端が把持され、渡し胴34の回転に伴って搬送される。渡し胴34により搬送されたシート材Pは、ドラム31との対向位置でドラム31へ受け渡される。
【0017】
ドラム31の表面にも把持手段(シートグリッパ)が設けられており、シート材Pの先端が把持手段(シートグリッパ)によって把持される。ドラム31の表面には、複数の吸引穴が分散して形成され、吸引手段によってドラム31の所要の吸引穴から内側へ向かう吸い込み気流を発生させる。
【0018】
そして、渡し胴34からドラム31へ受け渡されたシート材Pは、シートグリッパによって先端が把持されるとともに、吸引手段による吸い込み気流によってドラム31上に吸着担持され、ドラム31の回転に伴って搬送される。
【0019】
液体吐出部32は、液体吐出手段である本発明に係るヘッドユニットで構成した吐出ユニット33(33A~33D)を備えている。例えば、吐出ユニット33Aはシアン(C)の液体を、吐出ユニット33Bはマゼンタ(M)の液体を、吐出ユニット33Cはイエロー(Y)の液体を、吐出ユニット33Dはブラック(K)の液体を、それぞれ吐出する。また、その他、白色、金色(銀色)などの特殊な液体の吐出を行う吐出ユニットを使用することもできる。
【0020】
液体吐出部32の各吐出ユニット33は、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。ドラム31に担持されたシート材Pが液体吐出部32との対向領域を通過するときに、吐出ユニット33から各色の液体が吐出され、当該印刷情報に応じた画像が印刷される。
【0021】
反転機構部60は、受け渡し胴35から渡されたシート材Pに対して両面印刷をおこなうときに、スイッチバック方式で、シート材Pを反転する機構であり、反転されたシート材Pは印刷部30の搬送経路61を通じて渡し胴34よりも上流側に逆送される。
【0022】
乾燥部40は、印刷部30でシート材P上に付着した液体を乾燥させる。これにより液体中の水分等の液分が蒸発し、シート材P上に液体中に含まれる着色剤が定着し、また、シート材Pのカールが抑制される。
【0023】
搬出部50は、複数のシート材Pが積載される搬出トレイ51を備えている。乾燥部40から搬送されてくるシート材Pは、搬出トレイ51上に順次積み重ねられて保持される。
【0024】
次に、本発明の第1実施形態に係るヘッドユニットについて
図2ないし
図4を参照して説明する。
図2は同ヘッドユニットをノズル面側から見た平面説明図、
図3は同ヘッドユニットをノズル面と反対側から見た平面説明図、
図4は
図5のA-A線に相当する同ヘッドユニットの断面説明図である。
【0025】
ヘッドユニット300は、液体を吐出する複数のヘッド100を千鳥状にヘッド取付け部材302に並べて配置したものである。千鳥配置されたヘッド100の列の一方の列をヘッド列100Aとし、他方の列をヘッド列100Bとする。
【0026】
ヘッド100は、液体を吐出する複数のノズル104が配列されたノズル列を複数列(ここでは2列を例にしているが、限定されない。)有している。また、ヘッド100は、ヘッド取付け部材302を構成するベース部材303(303A、303B)に対して面直方向(
図3のZ方向)で対向するつば部110を有している。
【0027】
ヘッド100は、ベース部材303の開口部304に挿入されてベース部材303に取付けらえる(保持されている)。
【0028】
ヘッド取付け部材302には、ヘッド100のつば部110をヘッド挿入方向に向けてベース部材303のヘッド取付け面331に押し付ける押し付け手段351を有する押し付け部材305を取り付けている。
【0029】
ここでは、千鳥配置された複数のヘッド100のヘッド列100Aとヘッド列100Bとの間に、それぞれのヘッド列100A、100Bに対応して、押し付け部材305、305を配置している。
【0030】
次に、ヘッド取付け部材について
図5ないし
図8を参照して説明する。
図5は同ヘッド取付け部材の平面説明図、
図6は同じく
図5のA-A線に沿う断面説明図、
図7は同じく正面説明図、
図8は同じくドラムに対する配置状態を説明する正面説明図である。
【0031】
ヘッド取付け部材302は、ヘッド100を挿入する開口部304が形成されたベース部材303(303A、303B)を有する。ベース部材303A、202Bは1枚の板材を折り曲げて形成してもよく、あるいは、2つの板材で形成して、側板303a、302bに固定してもよい。
【0032】
ベース部材303A及びベース部材303Bとは、それぞれ、
図8に示すように、ヘッド取付け面331(331a、331b)がドラム31の接線方向と平行になるように配置される。
【0033】
次に、ヘッドの位置調整について
図9を参照して説明する。
図9は同説明に供する説明図であり、(a)は正面説明図、(b)は同じく平面説明図である。
【0034】
ヘッド取付け部材302のベース部材303には、ヘッド100のヘッド並び方向(ドラム31の軸方向;X方向)の位置を決める位置決め手段311と、ヘッド100の並び方向と直交する方向(搬送方向;Y方向)の位置を決める2つの位置決め手段312とが設けられている。
【0035】
そして、ヘッド100に対して、位置決め手段311に押し付ける押圧力Fxを加え、位置決め手段312に押し付ける押圧力Fyを加えることで、ヘッド100のX,Y方向の位置を決める。この場合、位置決め手段311、312のサイズ(外径)を変更することで、ヘッド100の位置、スキューを調整することができる。
【0036】
次に、ヘッド取付け部材を傾斜配置することによるヘッド位置決めに対する影響について
図10を参照して説明する。
図10は同説明に供する説明図である。
【0037】
前述したようにドラム31によってシートPを搬送しながら液体を吐出して画像を形成する印刷装置1においては、ドラム31の周囲にヘッド取付け部材302を配置するため、ベース部材303は傾斜した状態で配置することになる。
【0038】
ここで、ヘッド100をヘッド取付け部材302に固定していない状態では、ヘッド取付け部材302(ベース部材303)を傾けて配置することで、
図10の破線図示の位置から実線図示のようにヘッド100が傾斜方向下側に倒れ、ベース部材303から浮き上がることになる。
【0039】
このとき、ヘッド100の周辺部には取り付け作業を行う者が手を入れるほどの十分なスペースがなく、ヘッド100を押さえるのが困難になる。
【0040】
次に、ヘッドの浮き上がりによるヘッド位置調整への影響について
図11を参照して説明する。
図11は同説明に供する説明図である。
【0041】
図11(a)に示すように、ヘッド100がヘッド取付け面331から浮き上がっていない状態でヘッド100の位置調整を行うときには、ヘッド100の端面は位置決め手段312に正確に当接している。
【0042】
これに対し、
図11(b)に示すように、ヘッド100がヘッド取付け面331から浮き上がっている状態でヘッド100の位置調整を行うと、ヘッド100のつば部110の端面が位置決め手段312に斜めに当接しているため、位置ずれgが生じる。
【0043】
次に、押し付け部材について
図12ないし
図14を参照して説明する。
図12は押し付け部材がヘッドを押し付けている状態の側面説明図、
図13は同じく平面説明図、
図14は押し付け部材の斜視説明図、である。
【0044】
本実施形態では、ヘッド取付け部材302に、ヘッド100のつば部110をZ方向に押し付ける押し付け手段351と、ヘッド100をベース部材303の面内方向におけるY方向に押圧する押圧手段352とを有する押し付け部材305を備えている。
【0045】
この押し付け部材305は、全体がばね材で形成されており、押し付け手段351及び押圧手段352はいずれも弾性変形可能である。また、押し付け手段351及び押圧手段352はいずれも2カ所に設けられている。
【0046】
次に、押し付け部材による浮き上がり抑制作用について
図15も参照して説明する。
図15は同作用説明に供する説明図である。
【0047】
図15(a)に示すように、ヘッド100をベース部材303の開口部304に上方から挿入する。このとき、
図15(b)に示すように、ヘッド100のつば部110が押し付け部材305の自由状態にある押し付け手段351に当接して、押し付け手段351を実線図示の位置へ退避移動(変形)させる。
【0048】
そして、
図15(c)に示すように、ヘッド100のつば部110がヘッド取付け面331に当接するまで開口部304に挿入したときには、押し付け手段351が復元しながらつば部110の上側の角部に当接する。
【0049】
これにより、押し付け手段351がつば部110をヘッド取付け面331に向けて、
図12に示す押し付け力Fzで押し付ける。なお、このとき、押し付け手段351の押し付け方向は斜め下方向となり、Z方向への押し付け力FzとY方向への押し付け力の両方が生じる。
【0050】
このように、押し付け手段351は、ヘッド100をベース部材303の開口部304に挿入する途中で退避移動し、ヘッド100のベース部材303への取付けが完了した状態では押し付け位置に復元している。なお、「押し付け位置に復元」とは、押し付け手段351がヘッド100をベース部材303に押し付ける位置に移動することを意味し、最終的に押し付け手段351がヘッド100をベース部材303に押し付けていれば、押し付け位置に移動するタイミングは限定されない。
【0051】
これより、ベース部材303のヘッド取付け面331からのヘッド100の浮き上がりが抑制される。
【0052】
また、本実施形態のように構成することで、押し付け手段351をヘッド100と別個に操作することなく、少ない手順(ワンタッチ)でヘッド100をベース部材304へ取り付けることができる。
【0053】
次に、押し付け部材によるY方向位置決め作用について
図16及び
図17も参照して説明する。
図16は同作用説明に供する側面説明図、
図17は同じく説明図である。
【0054】
図17(a)に示すように、ヘッド100をベース部材303の開口部304に上方から挿入する。このとき、
図17(b)に示すように、ヘッド100のつば部110が押し付け部材305の自由状態にある押圧手段352に当接して、押圧手段352を実線図示の位置へ退避変形させる。
【0055】
そして、
図17(c)に示すように、ヘッド100のつば部110がヘッド取付け面331に当接したときに、押圧手段352がつば部110の端面に当接して位置決め手段312に向けて、
図16に示す押圧力Fyで押圧する。
【0056】
これより、ヘッド100のY方向の位置決めが行われる。
【0057】
このように、押圧手段352は、ヘッド100をベース部材303の開口部304に挿入する途中で退避移動し、ヘッド100のベース部材303への取り付けが完了した状態では押圧位置に復元している。なお、ここでも、最終的に押圧手段352がヘッド100を位置決め手段312に向けて押圧していれば、押圧位置に移動するタイミングは限定されない。
【0058】
本実施形態では、押し付け手段351と押圧手段352とを備えているので、前述したように、ワンタッチの挿入動作だけで、Z方向の押し付けとY方向の押圧が同時に完了する。
【0059】
なお、押圧手段352の作用箇所はヘッド100を挟んで位置決め手段312に対向した位置である。
【0060】
また、ヘッド100はベース部材303に対して着脱可能であり、押し付け部材305の押し付け手段351、押圧手段352の押し付け力、押圧力は、ヘッド100の着脱を阻害しない範囲とする。
【0061】
次に、本発明の第2実施形態に係るヘッドユニットについて
図18ないし
図20を参照して説明する。
図18は同ヘッドユニットの平面説明図、
図19は同じく押し付け部材の斜視説明図、
図20は同ヘッドユニットをドラムの周囲に配置した状態の説明図である。
【0062】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、ヘッド列100A、100B間に押し付け部材305を配置するとともに、一方のヘッド列100Bのヘッド100に対しては、位置決め手段312側に押し付け部材306を配置している。
【0063】
押し付け部材306は、ヘッド100のつば部110をヘッド取付け面331に向けて押し付ける押し付け手段361を有している。
【0064】
押し付け部材306は、
図20に示すように、位置決め手段312がベース部材303の傾斜方向で上側に配置されるときに位置決め手段312側に配置する。
【0065】
つまり、ベース部材303が傾斜して配置される場合、ヘッド100は傾斜方向で上側になる部分が浮き上がりやすくなる。この例では、ヘッド列100A、100B間に押し付け部材305を配置しているため、ベース部材303Bのヘッド100については、傾斜方向において、ヘッド100の下側(ドラム31の回転方向で上流側)に押し付け部材305が配置される。そのため、下側に配置した押し付け部材305では十分な押し付け力を作用させることができないことがある。
【0066】
そこで、ヘッド100の傾斜方向で上側になる部分ついて押し付け部材306を設けて押し付けることで、ヘッド100の浮き上がりを確実に抑えるようにしている。
【0067】
なお、押し付け部材306を各ヘッド列100A、100Bに配置することもできる。
【0068】
次に、ヘッド取付け面の傾斜角度と押し付け力の関係について
図21を参照して説明する。
図21は同説明に供する説明図である。
【0069】
ヘッド取付け部材302のベース部材303Aと303Bとは、前述したようにドラム31の軸心に対してヘッド取付け面331a、331bが接線方向と平行になるように傾斜させて配置している。このとき、ヘッド取付け面331a、331bは、設置状態では傾斜角度が異なる。
【0070】
つまり、ヘッド取付け部材302の傾斜角度をB°、ヘッド取付け面331bの押し付け部材305Bの角度をA°、ヘッド取付け面331aの押し付け部材305Aの角度をC°とするとき、A<B<C、の関係になる。
【0071】
ここで、傾斜方向下側に位置するヘッド取付け面331aに設置される押し付け部材305Aは、傾斜方向上側に位置するヘッド取付け面331bに設置される押し付け部材305Bよりも押し付け力が小さくてよい。
【0072】
また、傾斜方向下側に位置するヘッド取付け面303aに設置される押し付け部材305Aは、傾斜方向上側に位置するヘッド取付け面303bに設置される押し付け部材306よりも押し付け力が大きい。
【0073】
次に、ヘッドの位置調整を行うときの作業者のアクセス領域について
図22を参照して説明する。
図22は同説明に供する説明図である。
【0074】
ヘッド取付け部材302は、ヘッド100の周辺に手を差し入れるほどの十分なスペースはなく、Y方向におけるヘッド列100A、100B間は外部からアクセスできないアクセス不可領域401となっている。
【0075】
そこで、押し付け部材305、305はヘッド100を開口部304に挿入する前に予めベース部材303上に設置する。
【0076】
一方、ヘッド列100A,100Bの間と反対側(外側)はそれぞれアクセス可能領域402、402であるので、位置決め手段312へは外部からアクセスすることができる。
【0077】
次に、本発明の第3実施形態に係るヘッドユニットついて
図23を参照して説明する。
図23は同ヘッドユニットをドラムの周囲に配置した状態の説明図である。
【0078】
本実施形態では、押し付け部材305は、Y方向において同じ側、すなわち、各ヘッド列100A、100Bで同じ側に配置している。ここでは、ドラム31の周囲にヘッド取付け部材302を傾けて配置したときに、傾斜方向上側になる側に押し付け部材305を配置している。
【0079】
これにより、ヘッド100の浮き上がりが生じやすい側で、押し付け部材305によってヘッド100のつば部110を押えることができ、両側に押し付け部材305、306を設けないでもよくなる。
【0080】
次に、本発明の第4実施形態に係るヘッドユニットついて
図24を参照して説明する。
図24は同ヘッドユニットの押し付け部材の説明に供する説明図である。
【0081】
本実施形態では、押し付け手段307は、筒状部材371と、筒状部材371の先端部に移動自在に嵌め込んだ当接部材372と、当接部材372を突出方向に付勢する付勢部材373とを備えている。当接部材372は、ヘッド100のつば部110の上面に当接する当接面372aと側面に当接する当接面372bとを有している。
【0082】
そして、筒状部材371をヘッド取付け部材302の側壁部302cに取付け、ヘッド100のつば部110に斜め上方向(矢印a方向)から当接部材372が当接するように配置している。
【0083】
そこで、ヘッド100をベース部材303の開口部304に挿入するとき、ヘッド100のつば部110が当接部材372を押すことで、当接部材372は付勢部材372の付勢力に抗して矢印a方向と反対方向に退避移動する。そして、ヘッド100がベース部材303の開口部304への取付けが完了した状態で、当接部材372がヘッド100のつば部110に上面及び側面に当接する押し付け位置及び押圧位置に復元する(移動する)。
【0084】
これにより、ヘッド100に対しては、Z方向の押し付け力Fxと、Y方向の押圧力Fyとが作用し、浮き上がりが防止されるとともに、Y方向の位置決め行われる。
【0085】
このように、本実施形態でも、ヘッド100をワンタッチでベース部材304に取付けることができる。
【0086】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0087】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0088】
また、「液体を吐出する装置」には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0089】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0090】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0091】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0092】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0093】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0094】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0095】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0096】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0097】
1 印刷装置
10 搬入部
20 前処理部
30 印刷部
31 ドラム
40 乾燥部
50 搬出部
60 反転機構部
33 吐出ユニット
100 液体吐出ヘッド(ヘッド)
302 ヘッド取付け部材
303、303A、303B ベース部材
304 開口部
305 押し付け部材
306 押し付け部材
307 押し付け手段
351 押し付け手段
352 押圧手段
361 押し付け手段