(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】水処理管理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20230101AFI20231129BHJP
【FI】
C02F1/00 D
C02F1/00 V
C02F1/00 A
(21)【出願番号】P 2019185356
(22)【出願日】2019-10-08
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】長尾 信明
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-265428(JP,A)
【文献】特開昭62-172236(JP,A)
【文献】特開2005-250557(JP,A)
【文献】特開2015-233236(JP,A)
【文献】特開2003-269889(JP,A)
【文献】特開2003-114718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
G05B 23/00 - 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理設備と、
該水処理設備に設けられた
、水質を測定するためのセンサと、
該水処理設備に設けられた被検水のサンプリング手段と、
該被検水を受け入れて分析する分析センタと、
サンプリングされた被検水
を該分析センタへ運搬する運搬手段と、
前記センサの検出値が予め設定した所定値を超えるか、又は所定範囲を逸脱したときに該センサの検出値が異常である
と判断する異常判定手段と、
該異常判定手段の異常判定結果に基づいて前記サンプリング手段にサンプリング作動指令信号を与えると共に前記運搬手段に運搬指令信号を与える手段と
、
該分析センタの分析データと前記センサの検出値とを対照して該センサ検出値が真値であるか否かを判定する対照手段と
を備えてなる水処理管理システム。
【請求項2】
少なくとも前記センサの検出値データを含む水処理設備の稼働データと、前記対照手段の対照結果データとを記憶する記憶手段を備えたことを特徴とする請求項
1の水処理管理システム。
【請求項3】
前記対照手段の対照結果に基づいてアラームを発生させるアラーム発生手段を備えたことを特徴とする請求項
1又は
2の水処理管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水処理設備の稼働を管理するための水処理管理システムに係り、特に水処理設備で採水された被検水を水質測定機関に運搬するプロセスを実行させる水処理設備の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、センシング情報と手分析による情報とから水処理設備の稼働状態を解析し、適切な運転状態とするようにアドバイスやメンテナンス情報を提供するシステムが開示されている。上記特許文献1では、水処理設備の制御部の稼働状況データを管理部に送信する。また、水処理設備で被検水を採取して分析センターに送り、分析センターでの分析データが管理部に送信される。
特許文献3には、サンプリング水をリアルタイムで分析するために、リアルタイムデータを分析システムに伝送する手段が開示されている。特許文献4には、小型オンライン水質計が開示されており、その0003、0004段落には、配水水質を連続的に測定して定期的にテレメータでセンタに信号伝送したり、配水管末端部分又は需要家側の配水の水質測定手段として手分析による水質計測や可搬式の水質計でのオフライン計測を行うことが記載されている。
【0003】
特許文献5,6には、水処理設備に設置されたセンサで水質を監視し、センサ検出値に異常が生じた場合に被検水を自動的にサンプリングし、被検水を詳細に分析し、センサ検出値と対比することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-265428号公報
【文献】特開2001-265426号公報
【文献】特表2018-526614号公報
【文献】特開2000-275241号公報
【文献】特開平11-6826号公報
【文献】特開2009-192340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来はセンシングデータやサンプリングデータをオンラインで分析設備等に送信して稼働状態を分析したり、手分析によるデータを基に稼働状態を詳細に分析したりしていた。
【0006】
サンプリングされた水を分析するには、設備の管理者や分析担当者がサンプリング水を適時回収する必要がある。管理者や担当者が直接サンプリングする場合は、設備に異常が生じた際の水をリアルタイムで回収することができない。自動サンプリング手段でサンプリングした場合であっても、突発的に生じる異常に対してサンプリングが何時行われるかを知るすべがなく、サンプリング水が採取されてから2日や1週間も放置され、結果として水質が変化してしまうこともあった。
本発明は、水処理設備で採取された被検水を検査機関に運搬すべきことを指示する信号が発生する水処理管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水処理管理システムは、水処理設備と、該水処理設備に設けられたセンサと、 該水処理設備に設けられた被検水のサンプリング手段と、サンプリングされた被検水の運搬手段と、該センサの検出値が異常であるか否かを判断する異常判定手段と、該異常判定手段の異常判定結果に基づいて前記サンプリング手段にサンプリング作動指令信号を与えると共に前記運搬手段に運搬指令信号を与える手段とを備えてる。
【0008】
本発明の一態様では、前記運搬手段から前記被検水を受け入れて分析する分析センタと、該分析センタから送信される分析データと前記センサの検出値とを対照する対照手段と
を備える。
【0009】
本発明の一態様では、少なくとも前記センサの検出値データを含む水処理設備の稼働データと、前記対照手段の対照結果データとを記憶する記憶手段を備える。
【0010】
本発明の一態様では、前記対照手段の対照結果に基づいてアラームを発生させるアラーム発生手段を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、水処理設備で被検水を自動的に採取し、採取した被検水を運搬すべきことを示す指示信号が発生するので、被検水の検査機関での検査を遅滞なく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る水処理管理システムについて説明する。この実施形態に係る水処理管理システムは、例えば
図1にその概略的な構成を示すように冷却水系またはボイラ水系からなる水処理設備1の稼働状態を、当該水処理設備1が設けられた現場とは異なる場所に設けられた管理センタ2において管理するように構成される。この管理センタ2と水処理設備1とはインターネット、電話回線等の所定の通信回線3を介して結ばれ、管理センタ2は通信回線3を介して水処理設備1の稼働状態を示す情報を収集する如く構成される。
【0014】
管理センタ2が管理する水処理設備1については、ここでは1つだけを示しているが、一般的には互いに異なる場所にそれぞれ設置された複数の水処理設備1が存在する。管理センタ2はこれらの水処理設備1からそれぞれ通信回線3を介してその稼働情報を示す情報を収集しながら、各水処理設備1の稼働状態を個別に管理する。
【0015】
水処理設備1は、基本的には
図2に示すように制御盤11の制御の下で駆動されるポンプ12により、給水タンク13から供給される処理水をボイラ/冷却塔14に供給して所定の水処理(熱交換)を行う如く構成される。そしてボイラ/冷却塔14やその配管系に組み込まれた各種センサ15(15a~15d)により検出される水質情報やスライム・スケール情報等に従い、制御処理部10からその処理対象水系にスライム除去剤等の薬液を注入(薬注)するように構成される。
【0016】
制御処理部10は、薬液タンク21に準備された薬液を処理対象水系に注入するポンプ22や、各種センサ15(15a,~15f)を介して処理対象水の水質等を検出するセンシング部23、このセンシング部23にて検出された情報に従って前記ポンプ22の作動、即ち、薬注を制御するCPU24等を備えている。そしてCPU24は、キーボード等の操作部25から入力される処理動作の指示や、メモリ26に登録された薬注制御条件を示す設定値(制御パラメータ)等に従って薬注動作を制御する。またCPU24は通信端末27を作動させることで、上述した如く検出したセンシング情報や該制御処理部16の動作状態等の情報を、所定の通信回線3を介して前記管理センタ2に通知する機能を備えている。
【0017】
前記管理センタ2は、コンピュータにより各種の処理機能を構築した管理部4を主体として構成される。この管理部4は、水処理設備1からその稼働状態を示す情報(設備稼働情報)を前述した通信回線3を介して定期的に収集するデータ機能、そして収集した設備稼働情報に従って当該水処理設備1の稼働状態を監視する稼働状態監視機能を備える。またこの管理センタ2には、管理対象とする水処理設備1の前述したボイラ/冷却塔14の形式等からなる設備仕様の情報を予め登録したデータベース5や、各種設備における種々の稼働状態において生じた不具合等の情報、更にその不具合に対して施された最適なメンテナンス法等の事例等の情報を登録したデータベース6が設けられている。
【0018】
前記管理部4が水処理設備1から収集する設備稼働情報は、該水処理設備1が冷却水系である場合には、設備機能としてタイマ薬注やバッチ薬注の情報、その設備情報として薬注量や運転時間、電気伝導度、ブロー量、給水量、また処理水のポリマ濃度や塩化物イオン濃度、更には処理水に生じたスライムやスケールの情報、および汚れの情報等からなる。また水処理設備1がボイラ水系である場合には、設備機能として給水量や給水温度に応じた薬注の情報や希釈の情報、その設備情報として薬注量や運転時間、電気伝導度、ブロー量、給水量、更には軟水量やスケール化の要因となる水質硬度等の情報からなる。
【0019】
管理部4が備える稼働状態監視機能は、上述した如き設備管理情報を所定の周期で定期的に収集しながら、その設備管理情報に従って当該水処理設備1の稼働状態を逐次認識し、例えば異常や不具合の発生を検知し、或いは予知したり、薬注タンク21における薬液の残量をモニタする等してその稼働状態の変化を逐次的に管理するものとなっている。
【0020】
前記管理部4は、水処理設備1からサンプリング装置30で採取され、運搬手段31によって分析センタ7に運搬された被検水の分析結果を分析センタ7から入手し、その分析結果に従って当該水処理設備1の稼働状態を解析する稼働状態解析機能を備えている。上記分析センタ7は、水処理設備1から採取された処理水のサンプルを電気的、或いは化学的に定性・定量分析してその水質等を調べる役割を担うもので、通常、上記水処理設備1や管理センタ2とは独立した機関として設立されている。そして分析センタ7においては、例えば管理センタ2からの依頼の下で、水処理設備1にて採取された処理水のサンプルを分析処理し、その分析結果データをとりまとめて管理センタ2に送信することでその役割を果たす。
【0021】
管理部4における稼働状態解析機能は、このようにして分析センタ7から報告される、前記水処理設備1から採取した処理水(被処理物)の分析結果を取り込み、その分析結果を解析・評価することで当該水処理設備1の稼働状態を解析し、その解析結果に基づいて水処理設備1の稼働状態の全体的な動向を調べている。またこの稼働状態解析機能により、水処理設備1において所定の水質基準を満たすべく、前述した各種センシング情報に従って処理制御が行われる目標値(水質)と、該水処理設備1において実際に得られる水質とのずれを求める等の評価も行われるようになっている。
【0022】
このような稼働状態監視機能および稼働状態解析機能に加えて、前記管理部4は更に前述したデータベース5,6にそれぞれ蓄積された設備仕様や事例等の情報を参照しながら、前述した如く求めた水処理設備1の稼働状態に従って当該水処理設備1を稼働するに有用な情報(価値情報)を作成し、この情報を水処理設備1に対して提示する情報提示機能を備えている。水処理設備1を稼働するに有用な情報(価値情報)は、前述した如く収集した稼働状態を示す情報や分析結果そのものではなく、データベース5,6を参照しながら上記各情報を解析して求められた情報(加工した情報)からなる。具体的には水処理設備1の稼働状態を評価する上で着目した主要なセンシング情報とその制御目標値や、当該水処理設備1をメンテナンスするに必要な作業の種別(形態)とそのメンテナンス手順、更には各種制御目標の設定変更値等の情報からなる。
【0023】
CPU24は、前記センサ15a~15dのうち水質を測定するセンサの検出値が予め設定した所定値を超えるか、又は所定範囲を逸脱したときに、水系から採取した被検水の分析データとセンサ検出値とを対照するために、サンプリング手段30に対し信号線32を介してサンプリング指令信号を与え、被検水をサンプリング容器に採取する。また、CPU24は、運搬手段31に対し運搬指令信号を信号線33を介して与え、採取された被検水を収容した該容器を分析センタ7に運搬する。
【0024】
なお、運搬手段は、コンベア、運搬ロボット等であってもよく、人であってもよい。運搬手段がコンベア、ロボット等の場合には、そのコントローラに対して運搬指令信号が与えられる。運搬手段が人である場合には、当該人の携帯端末や、当該人が運転する車両に対し運搬指令信号が与えられる。
【0025】
分析センタ7から被検水の実際の分析データを受信した管理部4では、センサ検出値と被検水分析データとを対比し、センサ出力値の異常値が真値であるのか(即ち、異常な出力値は実際に生じた水質異常に起因するのか)、あるいはセンサの誤作動、故障等に起因したものであるかを判定する。
【0026】
管理部4は、この判定結果をデータベースに記録すると共に、実際に水質異常が生じているか、あるいはセンサに異常が生じているかを表わすアラームをメンテナンス担当部署に送信する。
【0027】
このようにして、水質測定センサの出力値に異常が生じた場合、自動的かつ速やかに被検水のサンプリング及び分析センタへの運搬が行われ、水処理施設やセンサを適切に保守管理することが可能となる。
【0028】
なお、前記センサ検出値が異常であるか否かは、例えば、センサ検出値が予め設定した値を超えたり予め設定した範囲を逸脱するかどうか;センサ検出値が規定変化速度以上で変化するかどうか;又は、センサ検出値が規定時間以上、殆ど変化しないか否か(即ちセンサがフリーズしているか否か;等)を判定することにより行うことができるが、これに限定されない。
【符号の説明】
【0029】
1 水処理設備
2 管理センタ
7 分析センタ
30 サンプリング装置
31 運搬手段