IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

<>
  • 特許-液体吐出装置、及び画像形成方法 図1
  • 特許-液体吐出装置、及び画像形成方法 図2
  • 特許-液体吐出装置、及び画像形成方法 図3
  • 特許-液体吐出装置、及び画像形成方法 図4
  • 特許-液体吐出装置、及び画像形成方法 図5
  • 特許-液体吐出装置、及び画像形成方法 図6
  • 特許-液体吐出装置、及び画像形成方法 図7
  • 特許-液体吐出装置、及び画像形成方法 図8
  • 特許-液体吐出装置、及び画像形成方法 図9
  • 特許-液体吐出装置、及び画像形成方法 図10
  • 特許-液体吐出装置、及び画像形成方法 図11
  • 特許-液体吐出装置、及び画像形成方法 図12
  • 特許-液体吐出装置、及び画像形成方法 図13
  • 特許-液体吐出装置、及び画像形成方法 図14
  • 特許-液体吐出装置、及び画像形成方法 図15
  • 特許-液体吐出装置、及び画像形成方法 図16
  • 特許-液体吐出装置、及び画像形成方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】液体吐出装置、及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/21 20060101AFI20231129BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231129BHJP
   B41J 2/15 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B41J2/21
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/15
B41J2/01 125
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019195629
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2021066165
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 貴彦
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-24991(JP,A)
【文献】特開2020-49783(JP,A)
【文献】特開2016-129966(JP,A)
【文献】特開2013-230695(JP,A)
【文献】特開2005-335132(JP,A)
【文献】特開2010-52228(JP,A)
【文献】特開2020-32600(JP,A)
【文献】特開2015-221583(JP,A)
【文献】特開2011-152648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液体の吐出により記録媒体に形成された第1画像上に、前記第1液体とは異なる第2液体を吐出して第2画像を形成する液体吐出部と、
前記液体吐出部を主走査方向に移動させる主走査移動部と、
前記液体吐出部と前記記録媒体とを相対的に前記主走査方向と直交する副走査方向に移動させる副走査移動部と
前記記録媒体に付着させる前記第2液体の量に基づき、前記第1画像の形成後、前記第2画像の形成を開始するまでの時間間隔を変化させる時間間隔可変部と、を備え、
前記液体吐出部は、
前記副走査方向に配列されて前記第1液体を吐出する複数の第1ノズルと、前記副走査方向に配列されて前記第2液体を吐出する複数の第2ノズルと、を含み、
前記複数の第1ノズルは、
前記副走査方向における前記複数の第2ノズルの上流側に配置され、
前記時間間隔可変部は、
前記記録媒体に付着させる前記第2液体の量に基づき、前記複数の第2ノズルのうちの前記副走査方向における上流側のノズルを吐出対象外とすることで、前記第2液体を吐出させるノズル数を変化させることにより前記時間間隔を変化させる
液体吐出装置。
【請求項2】
第1液体の吐出により記録媒体に形成された第1画像上に、前記第1液体とは異なる第2液体を吐出して第2画像を形成する液体吐出部と、
前記液体吐出部を主走査方向に移動させる主走査移動部と、
前記液体吐出部と前記記録媒体とを相対的に前記主走査方向と直交する副走査方向に移動させる副走査移動部と、
前記記録媒体に付着させる前記第2液体の量に基づき、前記第1画像の形成後、前記第2画像の形成を開始するまでの時間間隔を変化させる時間間隔可変部と、を備え、
前記液体吐出部は、
前記副走査方向に配列されて前記第1液体を吐出する複数の第1ノズルと、前記副走査方向に配列されて前記第2液体を吐出する複数の第2ノズルと、を含み、
前記複数の第1ノズルは、
前記副走査方向における前記複数の第2ノズルの上流側に配置され、
前記時間間隔可変部は、
前記記録媒体に付着させる前記第2液体の量に基づき、前記複数の第1ノズルのうちの前記副走査方向における下流側のノズルを吐出対象外とすることで、前記第1液体を吐出させるノズル数を変化させることにより前記時間間隔を変化させる
液体吐出装置。
【請求項3】
前記記録媒体上の前記第1液体、又は前記記録媒体上の前記第2液体の少なくとも一方を加熱する加熱部を備え、
前記時間間隔可変部は、
さらに前記加熱部による加熱温度に基づき、前記第1液体を吐出させるノズル数、又は前記第2液体を吐出させるノズル数の、少なくとも一方を変化させる
請求項1、又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
第1液体の吐出により記録媒体に形成された第1画像上に、前記第1液体とは異なる第2液体を吐出して第2画像を形成する液体吐出部と、
前記液体吐出部を主走査方向に移動させる主走査移動部と、
前記液体吐出部と前記記録媒体とを相対的に前記主走査方向と直交する副走査方向に移動させる副走査移動部と、
前記記録媒体に付着させる前記第2液体の量に基づき、前記第1画像の形成後、前記第2画像の形成を開始するまでの時間間隔を変化させる時間間隔可変部と、
前記記録媒体上の前記第1液体、又は前記記録媒体上の前記第2液体の少なくとも一方を加熱する加熱部と、を備え、
前記液体吐出部は、
前記副走査方向に配列されて前記第1液体を吐出する複数の第1ノズルと、前記副走査方向に配列されて前記第2液体を吐出する複数の第2ノズルと、を含み、
前記時間間隔可変部は、
さらに前記加熱部による加熱温度に基づき、前記第1液体を吐出させるノズル数、又は前記第2液体を吐出させるノズル数の、少なくとも一方を変化させる
液体吐出装置。
【請求項5】
前記第2液体は、複数色の液体を含み、
前記時間間隔可変部は、
前記記録媒体に付着させる前記複数色の液体量に基づき、前記時間間隔を変化させる
請求項1乃至4の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記時間間隔可変部は、
さらに前記液体吐出装置の環境湿度に基づき、前記第1液体を吐出させるノズル数、又は前記第2液体を吐出させるノズル数の、少なくとも一方を変化させる
請求項1乃至5の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記副走査移動部は、前記記録媒体を前記副走査方向に移動させる
請求項1乃至6の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記副走査移動部は、前記液体吐出部を前記副走査方向に移動させる
請求項1乃至6の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
記録媒体に複数の第1ノズルから構成される第1ノズル群から第1体を吐出させることによって、第1画像を形成する工程と、
前記記録媒体を副走査方向に移動させる工程と、
前記第1画像を形成する工程の後に所定の乾燥時間だけ放置する工程と、
前記所定の乾燥時間放置する工程の後に前記記録媒体に形成された第1画像上に、前記第1ノズル群の前記副走査方向の下流側に位置する複数の第2ノズルから構成される第2ノズル群から第2体を吐出させることによって、第2画像を形成する工程と、を含み、
前記所定の乾燥時間放置する工程は、前記第2液体の量に基づき、前記第2ノズル群の前記副走査方向における上流側のノズルを吐出対象外とすることによって前記乾燥時間を調整する
像形成方法。
【請求項10】
記録媒体に複数の第1ノズルから構成される第1ノズル群から第1液体を吐出させることによって、第1画像を形成する工程と、
前記記録媒体を副走査方向に移動させる工程と、
前記第1画像を形成する工程の後に所定の乾燥時間だけ放置する工程と、
前記所定の乾燥時間放置する工程の後に前記記録媒体に形成された第1画像上に、前記第1ノズル群の前記副走査方向の下流側に位置する複数の第2ノズルから構成される第2ノズル群から第2液体を吐出させることによって、第2画像を形成する工程と、を含み、
前記所定の乾燥時間放置する工程は、前記第2液体の量に基づき、前記第1ノズル群の前記副走査方向における下流側のノズルを吐出対象外とすることによって前記乾燥時間を調整する
画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドのノズルから記録媒体にインク等の液体を吐出して画像形成を行う液体吐出装置で、記録媒体に形成した背景画像等の所定の画像上に、カラー画像等の他の画像を重ねて多層画像を形成するものが知られている。
【0003】
また、背景画像用インク及びカラー画像用インクを記録媒体に吐出するヘッドにより、背景画像の形成に引き続いてカラー画像の形成を行う装置において、カラー画像形成のためのインク吐出量に応じて複数回のカラー画像記録パス間に、退避位置でヘッドを待機させる待機時間を変化させるものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、カラー画像形成のために記録媒体に付着させるインク量によらず、一律に待機時間を設けるため、不要な待機時間が生じることに起因して生産性が低下する場合があった。
【0005】
本発明は、多層画像形成の生産性を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る液体吐出装置は、第1液体の吐出により記録媒体に形成された第1画像上に、前記第1液体とは異なる第2液体を吐出して第2画像を形成する液体吐出部と、前記液体吐出部を主走査方向に移動させる主走査移動部と、前記液体吐出部と前記記録媒体とを相対的に前記主走査方向と直交する副走査方向に移動させる副走査移動部と前記記録媒体に付着させる前記第2液体の量に基づき、前記第1画像の形成後、前記第2画像の形成を開始するまでの時間間隔を変化させる時間間隔可変部と、を備え、前記液体吐出部は、前記副走査方向に配列されて前記第1液体を吐出する複数の第1ノズルと、前記副走査方向に配列されて前記第2液体を吐出する複数の第2ノズルと、を含み、前記複数の第1ノズルは、前記副走査方向における前記複数の第2ノズルの上流側に配置され、前記時間間隔可変部は、前記媒体に付着させる前記第2液体の量に基づき、前記複数の第2ノズルのうちの前記副走査方向における上流側のノズルを吐出対象外とすることで、前記第2液体を吐出させるノズル数を変化させることにより前記時間間隔を変化させる
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、多層画像形成の生産性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る画像形成システムの構成例を示す図である。
図2】画像形成装置の構成例を示す斜視図である。
図3】同装置の吐出ヘッドの構成例を示す図である。
図4】同装置における吐出ヘッドユニットの構成例及び動作例を示す図である。
図5】多層画像例を説明するであり、(a)は単層画像を示す図、(b)は多層画像を示す図である。
図6】記録媒体上のインクドットの状態例を示す図である。
図7】乾燥時間に伴うインクドットの変化例を示す図である。
図8】画像処理装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図9】画像形成装置の制御部のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図10】画像処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図11】第1実施形態に係る画像形成装置の制御部の機能構成例のブロック図である。
図12】時間間隔ΔTを変更した動作例を示す図であり、(a)は時間間隔ΔTを長くした場合を示す図(b)は時間間隔ΔTを短くした場合を示す図である。
図13】カラーインク全体の付着量と使用ノズル数との関係例を示す図である。
図14】色毎のインク付着量と使用ノズル数との関係例を示す図である。
図15】第1実施形態に係る画像形成システムの動作例のシーケンス図である。
図16】第2実施形態に係る画像形成装置の制御部の機能構成例のブロック図である。
図17】第2実施形態に係る画像形成システムの動作例のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
以下では、液体吐出装置の一例としての画像形成装置と、画像処理装置とを備える画像形成システムを一例として実施形態を説明する。また、実施形態に係る画像形成装置は、多層画像を形成するものである。
【0011】
ここで、多層画像とは、複数の層で形成された画像をいう。多層画像には、記録媒体上に背景画像等の所定の画像上にカラー画像等の他の画像が重ねて形成された画像等が挙げられる。
【0012】
また背景画像とは、カラー画像の背景(下地)となる画像をいう。背景画像には、色付の記録媒体上や透明な記録媒体(フィルム等)上に白インクで形成された白一色の塗り潰し画像等が挙げられる。
【0013】
なお、実施形態の用語における画像形成、印刷、印字、及び記録は何れも同義とする。また、各図面において、矢印で示されているX方向は主走査方向を示し、Y方向は主走査方向と直交する副走査方向を示す。
【0014】
[第1実施形態]
<画像形成システム100の全体構成>
まず、第1実施形態に係る画像形成システム100の構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、画像形成システム100の全体構成の一例を説明する図、図2は、画像形成システム100の備える画像形成装置2の構成の一例を説明する斜視図である。図1に示すように、画像形成システム100は、画像処理装置1と画像形成装置2とを備えている。
【0015】
これらのうち、画像処理装置1は、クライアントPCや管理サーバ等から入力した印刷ジョブに基づき、RIP(Raster Image Processor)エンジンにより生成された描画データを画像形成装置2に出力する装置である。画像処理装置1として、DFE(Digital Front End)等が挙げられる。
【0016】
一方、画像形成装置2は、液体吐出部の一例としての吐出ヘッドユニット3をキャリッジ部4により複数回走査させながら、液体の一例としてのインクを吐出して、記録媒体上に画像を形成するマルチ走査方式(シリアル方式)の画像形成装置である。
【0017】
画像形成装置2は、吐出ヘッドユニット3と、キャリッジ部4と、主走査モータ5と、ギヤ6と、加圧コロ7と、タイミングベルト8と、ガイドロッド9と、エンコーダセンサ10と、エンコーダシート11と、プラテン12と、面状ヒータ13とを備えている。
【0018】
吐出ヘッドユニット3は、複数の吐出ヘッドを含んでキャリッジ部4に固定されている。複数の吐出ヘッドのうちの一部の吐出ヘッドは、第1液体の一例としての白(W)インクを吐出し、他の吐出ヘッドは第2液体の一例としてのプロセスカラーインクを吐出する。ここで、プロセスカラーとは、画像形成用で基本となる4色をいい、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)等をいう。K,C,M,Yのインクは複数色の液体の一例である。
【0019】
主走査移動部の一例としての主走査モータ5は、ギヤ6と、加圧コロ7と、タイミングベルト8を介して、回転に伴う駆動力をキャリッジ部4に伝達する。キャリッジ部4は、主走査モータ5から駆動力を受け、ガイドロッド9に沿って、主走査方向(X方向)に往復移動する。キャリッジ部4の主走査方向の往復移動により、吐出ヘッドユニット3の主走査方向における位置が変化される。
【0020】
また、エンコーダシート11は、主走査方向における位置を示すリニアスケールを備えている。キャリッジ部4に設けられたエンコーダセンサ10は、キャリッジ部4の主走査方向への走査の際に、エンコーダシート11のリニアスケールを読み取り、主走査方向における位置を検出できる。
【0021】
一方、記録媒体14は、画像形成装置2の備える記録媒体供給部から所定の搬送経路に沿って、副走査移動部の一例としての副走査モータ121(図2参照)の回転に伴う駆動力によって、副走査方向(Y方向)に搬送され、プラテン12の位置に到達する。
【0022】
複数の吐出ヘッドは、主走査方向に走査されながら、記録媒体14に向けてインクを吐出し、記録媒体14に付着させる。吐出ヘッドユニット3の主走査方向への1回の走査が完了すると、画像形成装置2は、記録媒体14を副走査方向に所定量だけ搬送する。そして、搬送が完了すると、複数の吐出ヘッドは再度、主走査方向に走査されながら記録媒体14に向けてインクを吐出し、記録媒体14に付着させる。
【0023】
このような複数の吐出ヘッドの主走査方向への走査と、該走査中における複数の吐出ヘッドによるインクの吐出と、記録媒体14の副走査方向への搬送とが繰り返されることで、記録媒体14上に画像が形成される。
【0024】
また、プラテン12には、加熱部の一例としての面状ヒータ13が設けられている。この面状ヒータ13は、記録媒体14に接触して記録媒体14を加熱することで、複数の吐出ヘッドにより吐出され、記録媒体14上に着弾したインクを加熱する。換言すると、面状ヒータ13は、記録媒体14上の白インク、又はプロセスカラーインクの少なくとも一方を加熱する。これにより、記録媒体14上のインクの乾燥を促進し、画像形成の高速化を図っている。
【0025】
<吐出ヘッドユニット3の構成例及び動作例>
図3は、吐出ヘッドユニット3に含まれる1つの吐出ヘッド31Wの構成の一例を説明する図であり、インクの吐出方向からみた吐出ヘッド31Wを示している。
【0026】
図3に示すように、吐出ヘッド31Wは、4つのノズル列が形成されたノズル板17を備えている。各ノズル列は、副走査方向(Y方向)に複数のノズル16Wが等間隔に64個配列され、構成されている。この吐出ヘッド31Wは、全てのノズルから白インクを吐出する。
【0027】
また、吐出ヘッド31Wにおける各ノズル列は、ノズル16W間の間隔の半分に該当する距離だけ、隣接するノズル列に対して副走査方向にずれて配置(千鳥配置)されている。このようにノズル列を千鳥配置にすることで、副走査方向における画像形成の密度(解像度)を向上させることができる。
【0028】
吐出ヘッド31Pも、図3に示した吐出ヘッド31Wと同様の構成をしている。但し、次述するように、吐出ヘッド31Pは4つのノズル列毎で異なる色のインクを吐出する点が異なっている。なお、以下では、吐出ヘッド31Pと吐出ヘッド31Wを区別しない場合は吐出ヘッド31と表記する。
【0029】
次に、図4は、画像形成装置2における吐出ヘッドユニット3の構成と動作の一例を説明する図であり、インクの吐出方向からみた吐出ヘッドユニット3を示している。図4に示すように、吐出ヘッドユニット3は、吐出ヘッド31Wと、吐出ヘッド31Pとを備えている。
【0030】
吐出ヘッド31W,31Pのそれぞれは、4列のノズル列を備えている。吐出ヘッド31Wは、上述したように、全てのノズルから白インクを吐出する。一方、吐出ヘッド31Pはノズル列31Kと、ノズル列31Cと、ノズル列31Mと、ノズル列31Yとを備え、ノズル列31Kから黒、ノズル列31Cからシアン、ノズル列31Mからマゼンタ、ノズル列31Yからイエローの各色のインクを吐出する。
【0031】
ここで、吐出ヘッド31Wに含まれるノズル16Wは第1ノズルの一例であり、吐出ヘッド31Pに含まれるノズル16Pは第2ノズルの一例である。
【0032】
吐出ヘッドユニット3は、キャリッジ部4により主走査方向に移動されることで、プラテン12上に載置された記録媒体14(図1参照)に対する主走査方向の相対位置を変化させることができる。また、吐出ヘッドユニット3は、記録媒体14が副走査方向に搬送されることで、記録媒体14に対する副走査方向の相対位置を変化させることができる。
【0033】
吐出ヘッド31Wは、主走査方向(X方向)における吐出ヘッド31Pの上流側、且つ副走査方向(Y方向)における吐出ヘッド31Pの上流側に、吐出ヘッド31Pに対してずれて配置されている。
【0034】
このように吐出ヘッド31Wが吐出ヘッド31Pの上流側に配置されることで、吐出ヘッド31Wは、吐出ヘッド31Pに対して早いタイミングで吐出できる。そして、吐出ヘッド31Wによる白インクの吐出で、下地となる背景画像を形成後に、吐出ヘッド31Pによる吐出で背景画像上にカラー画像を形成することが可能になっている。
【0035】
なお、吐出ヘッド31Pと吐出ヘッド31Wとのずれ量は、任意であってよい。図4の例では、吐出ヘッド31Wは、主走査方向における吐出ヘッド31の長さ分だけ主走査方向にずれ、また副走査方向における吐出ヘッド31の長さ分だけ副走査方向にずれて配置されている。
【0036】
<多層画像例>
次に、記録媒体14上に形成された多層画像について、図5を参照して説明する。図5は、多層画像の一例を説明する図であり、記録媒体14へのインク付着部分の断面図である。また(a)は比較例としての単層画像を示し、(b)は多層画像を示している。
【0037】
図5(a)に示すように、単層画像は、記録媒体14上にカラーインクを付着させて形成されたカラー画像Spである。なお、カラーインクは、K,C,M,Y等のインクである。また、記録媒体14上で異なる色のカラーインクが重なって画像が形成された場合でも、形成されたカラー画像は単層画像に含まれる。
【0038】
一方、図5(b)に示すように、多層画像は、記録媒体14上に白インクを付着させて形成された背景画像Swと、この背景画像Sw上にカラーインクを付着させて形成されたカラー画像Spとを含んで構成される。ここで、背景画像Swは第1画像の一例、カラー画像Spは第2画像の一例である。
【0039】
このような多層画像では、背景画像Sw上にカラー画像Spを形成するため、白インク等の背景画像用インクの乾燥状態によって、背景画像Sw上に着弾したカラーインクの着弾滴(ドット)の広がり方が異なる場合がある。
【0040】
例えば、白インクが記録媒体14上に着弾した後の経過時間が短く、乾燥させるための時間(乾燥時間)が短い場合は、背景画像Swに液状の部分が多くなる。液状部分が多いと、カラーインクの着弾滴は液状部分内に埋没することで、乾燥してインクが固化した背景画像Sw上に着弾した場合と比較して、カラーインクの着弾滴は背景画像Sw上で広がりにくくなる。着弾滴が広がらない結果、着弾滴による所望のインクドットの大きさが得られなくなる。一方、乾燥時間が長い場合は、カラーインクの着弾滴は背景画像上で広がりやすくなり、着弾滴が広がった結果、着弾滴による所望のインクドットの大きさが得られる。
【0041】
図6及び図7は、白インクの乾燥時間とインクドットの大きさの関係例を説明する図である。図6は、背景画像Sw上のインクドットの状態の一例を示す図、図7は、乾燥時間に伴うインクドットの変化の一例を示す図である。
【0042】
図6の横軸は乾燥時間を示し、右方に向かうほど乾燥時間が長いことを示している。また、Skは背景画像Sw上に着弾した黒インクドットを表し、Scは背景画像Sw上に着弾したシアンインクドットを表している。図6は、複数の乾燥時間毎での背景画像Sw上のインクを、インク吐出方向に沿う方向からみた図である。
【0043】
また、図7は、横軸を乾燥時間とし、縦軸をインクドットの大きさとして、乾燥時間に伴う、黒インクドットSkの大きさ(実線)と、シアンインクドットScの大きさ(破線)とを示している。なお、乾燥時間の単位は秒(sec)であり、インクドットの大きさの単位はミクロン(μm)である。
【0044】
図6及び図7に示すように、乾燥時間が長いほど、記録媒体14上に着弾したインクドットは大きくなっている。また、黒インクドットSkとシアンインクドットScでは、乾燥時間に伴う大きさの変化が異なるものとなっている。このように、色に応じたインク組成の違い等に起因して、乾燥時間に伴うインクドットの大きさの変化が必ずしも同じにならない場合がある。
【0045】
<ハードウェア構成例>
次に、画像処理装置1と、画像形成装置2の処理、及び動作を制御するための制御部500のそれぞれのハードウェア構成について、図8及び図9を参照して説明する。
【0046】
(画像処理装置1のハードウェア構成例)
まず、図8は、画像処理装置1のハードウェア構成の一例を説明するブロック図である。図8に示すように、画像処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、メモリ104と、I/F(Interface)105とを備えている。
【0047】
CPU101は、プロセッサ等で構成され、画像処理装置1の処理、及び動作の全体を制御する。ROM102は、不揮発性半導体記憶装置等で構成され、CPU101が画像形成動作を制御するためのプログラム、その他の固定データを格納する。
【0048】
RAM103は、揮発性半導体記憶装置等で構成され、CPU101のワークエリアとして使用される。また画像データ等を一時格納する記憶領域を提供する。
【0049】
メモリ104は、揮発性又は不揮発性の半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置で構成される。なお、メモリ104が、ROM102及び/又はRAM103を含んでもよい。
【0050】
プログラムは、ROM102又はメモリ104等に予め保持されている。プログラムは、CPU101によって、ROM102等からRAM103に読み出されて展開される。CPU101は、RAM103に展開されたプログラム中のコード化された各命令を実行する。なお、プログラムは、ROM102及びメモリ104に限らず、例えば記録ディスク等の記録媒体に格納されていてもよい。また、プログラムは、有線ネットワーク、無線ネットワーク又は放送等を介して伝送され、RAM103に取り込まれてもよい。
【0051】
I/F105は、外部のクライアントPC(Personal Computer)等に接続され、クライアントPC等との間でデータ及び信号を送受信する。クライアントPC等から送られてくるデータには、画像データが含まれる。なお、I/F105はクライアントPC等に直接接続されるのでなくインターネットやイントラネット等のネットワークに接続されてもよい。
【0052】
(画像形成装置2の制御部500のハードウェア構成例)
次に、図9は、画像形成装置2の備える制御部500のハードウェア構成の一例を説明するブロック図である。図9に示すように、制御部500は、CPU501と、ROM502と、RAM503と、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)504と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)505と、I/F506と、I/O(Input Output)507とを備えている。
【0053】
CPU501は、プロセッサ等で構成され、画像形成装置2の処理、及び動作の全体を制御する。ROM502は、不揮発性半導体記憶装置等で構成され、CPU501が画像形成動作を制御するためのプログラム、その他の固定データを格納する。
【0054】
RAM503は、揮発性半導体記憶装置等で構成され、CPU101のワークエリアとして使用される。また描画データ等を一時格納する記憶領域を提供する。CPU501、ROM502、及びRAM503によって、上記プログラムに従った処理を実行する主制御部500Aが構築されている。
【0055】
NVRAM504は、画像形成装置2の電源が遮断されている間もデータを保持することができるメモリである。ASIC505は、描画データに対する各種信号処理等を行う画像処理やその他、画像形成装置2全体を制御するための入出力信号を処理することができる。
【0056】
プログラムは、ROM502又はNVRAM504等に予め保持されている。プログラムは、CPU501によって、ROM502等からRAM503に読み出されて展開される。CPU501は、RAM503に展開されたプログラム中のコード化された各命令を実行する。なお、プログラムは、ROM502及びNVRAM504に限らず、例えば記録ディスク等の記録媒体に格納されていてもよい。また、プログラムは、有線ネットワーク、無線ネットワーク又は放送等を介して伝送され、RAM503に取り込まれてもよい。
【0057】
I/F506は、画像処理装置1等に接続され、画像処理装置1等との間でデータ及び信号を送受信する。画像処理装置1等から送られてくるデータには、描画データが含まれる。なお、I/F506は外部の画像処理装置1等に直接接続されるのでなくインターネットやイントラネット等のネットワークに接続されてもよい。
【0058】
I/O507は、センサ525に接続され、センサ525から検出信号を入力することができる。このセンサ525には、画像形成装置2の周辺の湿度(環境湿度)を検出するための湿度センサが含まれている。
【0059】
また、制御部500には、画像形成装置2に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル524が接続されている。
【0060】
さらに、制御部500は、CPU501又はASIC505の命令によって動作するヘッド駆動回路511、モータ駆動回路512、ヒータ駆動回路513、及びメンテナンス駆動回路514等を備えている。
【0061】
ヘッド駆動回路511は、吐出ヘッドユニット3の吐出ヘッド31へ画像信号と駆動電圧を出力することにより、吐出ヘッド31によるインクの吐出を制御する。この場合、ヘッド駆動回路511は、吐出ヘッド31内でインクを貯留するサブタンクの負圧を形成する機構、及び押圧を制御する機構へ駆動電圧を出力する。なお、吐出ヘッド31にも基板が搭載されており、この基板で画像信号等により駆動電圧をマスクすることで駆動信号を生成してもよい。
【0062】
モータ駆動回路512は、吐出ヘッドユニット3のキャリッジ部4を主走査方向に移動させる主走査モータ5へ駆動信号を出力することにより、主走査モータ5を駆動させる。また、モータ駆動回路512は、記録媒体14を副走査方向に搬送させる副走査モータ121へ駆動電圧を出力することにより、副走査モータ121を駆動させる。
【0063】
ヒータ駆動回路513は、面状ヒータ13へ駆動電圧を出力することにより、面状ヒータ13のオン,オフ制御、及び温度制御を行う。
【0064】
メンテナンス駆動回路514は、メンテナンス機構580へ駆動信号を出力することにより、メンテナンス機構580を駆動させることができる。
【0065】
以上の各構成は、アドレスバスやデータバス等により相互に電気的に接続されている。
【0066】
<機能構成例>
次に、画像処理装置1と、画像形成装置2の制御部500のそれぞれの機能構成について、図10及び図11を参照して説明する。
【0067】
(画像処理装置1の機能構成例)
まず、画像処理装置1の機能構成について説明する。図10は、画像処理装置1の機能構成の一例を説明するブロック図である。図10に示すように、画像処理装置1は、受信部111と、解像度変換処理部112と、色変換処理部113と、色変換テーブル114と、ハーフトーン処理部115と、ラスタライズ処理部116と、ドット構成データ抽出部117と、送信部118とを備えている。
【0068】
これらのうち、解像度変換処理部112、色変換処理部113、ハーフトーン処理部115、及びラスタライズ処理部116の機能は、CPU101が所定のプログラムを実行すること等により実現される。また、受信部111及び送信部118の機能は、I/F105等により実現され、色変換テーブル114の機能は、メモリ104等により実現される。なお、RIPエンジンは、上記したもののうちのラスタライズ処理部116及び色変換処理部113を含んで構成される。
【0069】
受信部111は、クライアントPC等で生成された印刷ジョブを受信し、印刷ジョブにおける画像データ及び画像形成条件等を解像度変換処理部112に出力する。
【0070】
解像度変換処理部112は、入力した画像データを、必要に応じて画像形成装置2の仕様に対応した解像度、或いは画像形成システム100のユーザの所望する解像度に変換し、変換後の画像データを色変換処理部113に出力する。
【0071】
色変換処理部113は、入力した画像データをCMYK形式に変換する。但し、画像データがもともとCMYK形式である場合はこの変換は行わない。また、色変換処理部113は、色変換テーブル114に格納されたガンマカーブを参照して、CMYK形式の画像データを階調変換する。ここで、ガンマカーブとは、画像データにおける色の階調値と、記録媒体14への画像形成色(画像形成濃度)との関係を示すデータをいう。色変換処理部113は、処理後の画像データをハーフトーン処理部115に出力する。
【0072】
ハーフトーン処理部115は、必要に応じて画像データに対してハーフトーン処理を実行し、処理後の画像データをラスタライズ処理部116に出力する。なお、ハーフトーン処理とは、輝度が0と255の色だけを用いてハーフトーン(中間色)を表現するようにデータ変換する処理をいう。
【0073】
ラスタライズ処理部116は、入力した画像データをラスタ形式に変換して描画データを生成し、生成した描画データをドット構成データ抽出部117に出力する。
【0074】
ドット構成データ抽出部117は、描画データを構成する各画素を4種類のインク滴の体積で表現する処理を実行する。インク滴の体積は、小滴、中滴、大滴、及び滴無の4種類等である。小滴は最も体積が小さいインク滴であり、中滴は2滴の小滴を結合させて形成したインク滴であり、大滴は3滴の小滴を結合させて形成した最も体積が大きいインク滴である。これらに、インク滴を吐出させない滴無を加えた4種類、すなわち2ビットで各画素を表現する。
【0075】
ドット構成データ抽出部117は、処理後の描画データを、送信部118を介して画像形成装置2に送信する。
【0076】
(制御部500の機能構成例)
次に、画像形成装置2における制御部500の機能構成について説明する。図11は、制御部500の機能構成の一例を説明するブロック図である。図11に示すように、制御部500は、描画データ入力部531と、カラーインク付着量取得部532と、時間間隔可変部533と、ヘッド駆動部534とを備えている。
【0077】
これらのうち、カラーインク付着量取得部532及び時間間隔可変部533の機能は、CPU501が所定のプログラムを実行することで実現される。また、描画データ入力部531の機能はI/F506により、ヘッド駆動部534の機能はヘッド駆動回路511により、それぞれ実現される。
【0078】
カラーインク付着量取得部532は、画像処理装置1から描画データ入力部531を介して入力した描画データに基づき、記録媒体14に形成された背景画像Sw上の単位面積当たりに付着させる各色のインク量情報を取得する。より具体的には、カラーインク付着量取得部532は、背景画像Sw上の単位面積内で、描画データを構成する各画素のインク滴の体積を加算することで、各色のインク量情報を取得できる。カラーインク付着量取得部532は、取得した各色のインク量情報を時間間隔可変部533に出力する。
【0079】
時間間隔可変部533は、各色のインク量情報に基づき、背景画像を形成後、カラー画像の形成を開始するまでの時間間隔ΔTを変化させる機能を備える。
【0080】
より具体的には、時間間隔可変部533は、吐出ヘッド31Wに含まれる複数のノズル16Wのうちの白インクを吐出させるノズル数、又は吐出ヘッド31Pに含まれる複数のノズル16Pのうちのカラーインクを吐出させるノズル数の少なくとも一方を変化させることで、時間間隔ΔTを変化させる。これらのノズル数は、時間間隔可変部533の備えるノズル数決定部5331により決定される。
【0081】
例えば、白インクの場合、ノズル数決定部5331は、複数のノズル16Wのうち、副走査方向における下流側のノズル16Wを吐出対象外とすることで、白インクを吐出させるノズル数が減少するように変化させる。換言すると、複数のノズル16Wのうち、比較的遅いタイミングで白インクを吐出させるノズルを吐出させないようにする。
【0082】
一方、カラーインクの場合、ノズル数決定部5331は、吐出ヘッド31Pに含まれる複数のノズル16Pのうち、副走査方向における上流側のノズル16Pを吐出対象外とすることで、カラーインクを吐出させるノズル数が減少するように変化させる。換言すると、複数のノズル16Pのうち、比較的早いタイミングでカラーインクを吐出させるノズルを吐出させないようにする。
【0083】
時間間隔可変部533は、吐出ヘッド31W,31Pのそれぞれにおける吐出対象のノズルを特定する情報をヘッド駆動部534に出力する。ヘッド駆動部534は、時間間隔可変部533から入力した情報に基づき、吐出対象ノズルのみからインクを吐出させる。
【0084】
これにより、吐出ヘッド31Wが白インクを吐出するタイミングを相対的に早め、吐出ヘッド31Pがカラーインクを吐出するタイミングを相対的に遅らせることで、時間間隔ΔTを長くすることができる。
【0085】
背景画像Sw上に付着させるカラーインクの量が多い場合に、時間間隔ΔTを長くして白インクの乾燥時間を長くすると、白インクの乾燥時間が長くなり、背景画像Sw上でインク滴が広がりやすくなる。これにより、カラーインクのドットを所望の大きさにすることができる。
【0086】
逆に、時間間隔ΔTを短くする場合には、ノズル数決定部5331は、吐出ヘッド31Wに含まれる複数のノズルのうち、副走査方向における下流側のノズルを吐出対象にすることで、白インクを吐出させるノズル数が増加するように変化させる。また、吐出ヘッド31Pに含まれる複数のノズルのうち、副走査方向における上流側のノズルを吐出対象にすることで、カラーインクを吐出させるノズル数が増加するように変化させる。
【0087】
これにより、吐出ヘッド31Wが白インクを吐出するタイミングを相対的に遅くし、吐出ヘッド31Pがカラーインクを吐出するタイミングを相対的に早めることができ、時間間隔ΔTを短くすることができる。背景画像Swに付着させるカラーインクの量が少ない場合は、記録媒体14上でインク滴が広がりにくくてもよいため、この場合には時間間隔ΔTを短くする。
【0088】
<時間間隔可変部533によるノズル数変更の作用>
ここで、時間間隔可変部533によるノズル数変更の作用について、図12図14を参照してより詳しく説明する。
【0089】
図12は、時間間隔可変部533により時間間隔ΔTを変更した動作の一例を示す図であり、(a)は時間間隔ΔTを長くした場合を示す図(b)は時間間隔ΔTを短くした場合を示す図である。
【0090】
図12(a),(b)において、吐出ヘッド31Wにおける一点鎖線で示した枠32W内に含まれるノズルは吐出対象のノズルであり、枠32W外のノズルは吐出対象外のノズルである。換言すると、複数のノズル16Wのうち、副走査方向(Y方向)における下流側のノズル16Wは吐出対象外になっている。
【0091】
また、吐出ヘッド31Pにおける一点鎖線で示した枠32P内に含まれるノズルは吐出対象のノズルであり、枠32P外のノズルは吐出対象外のノズルである。換言すると、複数のノズル16Pのうち、副走査方向における上流側のノズル16Pは吐出対象外になっている。
【0092】
図12(a)では、枠32W内のノズルと、枠32P内のノズルとの距離が離れることで、両者の吐出の時間差に対応する時間間隔ΔTが長くなる。これに伴い、背景画像を構成する白インクの乾燥時間が長くなる。
【0093】
一方、図12(b)では、枠32W内のノズルと、枠32P内のノズルとの距離が近づくことで、両者の吐出の時間差に対応する時間間隔ΔTが短くなる。これに伴い、背景画像を構成する白インクの乾燥時間が短くなる。
【0094】
次に、図13は、背景画像Sw上に付着させるカラーインク全体の量と、カラー画像形成に使用するノズル数との関係の一例を示す図である。図13の横軸は、背景画像Sw上に付着させる単位面積当たりのカラーインク全体の量を示している。縦軸はカラー画像形成に使用する吐出ヘッド31Pのノズル数を示している。なお、横軸の単位はピコリットル(pl)であり、縦軸の単位は個数である。
【0095】
このような関係を示す情報は、実験またはシミュレーションで予め取得され、NVRAM504等に格納されている。ノズル数決定部5331は、カラーインク付着量取得部532が取得したカラーインク付着量の情報に基づき、カラーインク全体の量とカラー画像形成に使用するノズル数との関係情報を参照してノズル数を決定できる。また、時間間隔可変部533は、決定されたノズル数に基づき、吐出対象のノズル16Pを特定できる。
【0096】
なお、図13では、吐出ヘッド31Pのノズル数の場合を示したが、吐出ヘッド31Wでも、背景画像Sw上に付着させる単位面積当たりのカラーインク全体の量と、吐出ヘッド31Wのノズル数との関係を示す情報を予め取得しておき、ノズル数決定部5331はこれを参照することもできる。
【0097】
また、図14は、背景画像Sw上に付着させるK,Cインクのそれぞれの量と、カラー画像形成に使用するノズル数との関係の一例を示す図である。図の見方は図13と同様である。また、図14における実線のグラフはKインク、破線のグラフはCインクをそれぞれ示している。
【0098】
図14に示したような色毎のインク付着量とカラー画像形成に使用する色毎のノズル数との関係情報を予め取得しておき、ノズル数決定部5331は、これを参照してノズル数を決定するようにしてもよい。
【0099】
<画像形成システム100の動作例>
次に、画像形成システム100の動作例について、図15を参照して説明する。図15は、画像形成装置2の動作の一例を示すシーケンス図である。
【0100】
まず、ステップS151において、受信部111は、クライアントPC等で生成された印刷ジョブを受信し、印刷ジョブにおける画像データ及び画像形成条件等を解像度変換処理部112に出力する。
【0101】
続いて、ステップS152において、解像度変換処理部112は、入力した画像データを、必要に応じて画像形成装置2の仕様に対応した解像度、或いは画像形成システム100のユーザの所望する解像度に変換し、変換後の画像データを色変換処理部113に出力する。その後、色変換処理部113は、入力した画像データをCMYK形式に変換し、処理後の画像データをハーフトーン処理部115に出力する。
【0102】
その後、ハーフトーン処理部115は、必要に応じて画像データに対してハーフトーン処理を実行し、処理後の画像データをラスタライズ処理部116に出力する。その後、ラスタライズ部116は、入力した画像データをラスタ形式に変換して描画データを生成し、生成した描画データをドット構成データ抽出部117に出力する。
【0103】
その後、ドット構成データ抽出部117は、入力した描画データを構成する各画素を4種類のインク滴の体積で表現する処理を実行する。
【0104】
続いて、ステップS153において、ドット構成データ抽出部117は、送信部118を介して、処理後の描画データを画像形成装置2に送信する。
【0105】
続いて、ステップS154において、カラーインク付着量取得部532は、画像処理装置1から描画データ入力部531を介して入力した描画データに基づき、背景画像Sw上の単位面積当たりに付着させる各色のインク量情報を取得する。そして、取得結果を時間間隔可変部533に出力する。
【0106】
続いて、ステップS155において、時間間隔可変部533は、各色のインク量情報に基づき、複数のノズル16Wのうちの白インクを吐出させるノズル数、又は複数のノズル16Pのうちのカラーインクを吐出させるノズル数の少なくとも一方を変化させる。その後、時間間隔可変部533は、吐出ヘッド31W,31Pにおける吐出対象ノズルを特定する情報をヘッド駆動部534に出力する。
【0107】
続いて、ステップS156において、ヘッド駆動部534は、時間間隔可変部533から入力した情報に基づき、吐出対象ノズルのみからインクを吐出させ、画像形成を実行する。
【0108】
このようにして画像形成システム100は、記録媒体14に画像を形成することができる。
【0109】
<画像形成装置2の作用効果>
以上説明してきたように、本実施形態では、画像データに基づき、背景画像Sw上の単位面積当たりに付着させる各色のインク量情報を取得し、各色のインク量情報に基づき、背景画像を形成後、カラー画像の形成を開始するまでの時間間隔ΔTを変化させる。
【0110】
より具体的には、複数のノズル16Wのうちの白インクを吐出させるノズル数、又は複数のノズル16Pのうちのカラーインクを吐出させるノズル数の少なくとも一方を変化させて、時間間隔ΔTを変化させる。
【0111】
背景画像Sw上に付着させるカラーインクの量が多い場合には、時間間隔ΔTを長くすることで白インクの乾燥時間を長くして、記録媒体14上でインク滴が広がりやすくする。これにより、インクドットを所望の大きさにして、所望の画質を確保できる。一方、背景画像Sw上に付着させるカラーインクの量が少ない場合には、長い乾燥時間は不要であるため、時間間隔ΔTを短くして白インクの乾燥時間を短くする。これにより、吐出ヘッド31に画像形成動作を無駄に待機させる時間を抑え、生産性の低下を抑制できる。
【0112】
このように、背景画像Sw上に付着させるカラーインク量に応じて、白インクの乾燥時間を変化させることで、吐出ヘッド31に画像形成動作を無駄に待機させる不要な時間を生じさせることなく、所望の画質で画像形成を行うことができ、多層画像形成の生産性を確保できる。
【0113】
また、本実施形態では、吐出ヘッド31Wに含まれる複数のノズルのうち、副走査方向における下流側のノズルを吐出対象外とし、或いは、吐出ヘッド31Pに含まれる複数のノズルのうち、副走査方向における上流側のノズルを吐出対象外とする。これにより、上記の時間間隔ΔTを適切に変化させることができる。
【0114】
また、カラーインクの色毎で、インク組成の違い等に起因して、乾燥時間に応じた背景画像Sw上での着弾滴の広がりが異なる場合がある。これに対し、本実施形態では、記録媒体14に付着させるカラーインクの色毎の液体量に基づき、時間間隔ΔTを変化させる。このようにすることで、カラーインクの色毎で、白インクの乾燥時間を適切に設定することができる。
【0115】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る画像形成システム100aについて説明する。画像形成システム100aは、制御部500aを含む画像形成装置2aを備えている。
【0116】
ここで、記録媒体14上の白インクの乾燥時間は、面状ヒータ13により白インクを加熱して乾燥を促進することで、より短縮することができる。また、該乾燥時間は、画像形成装置2周辺の環境湿度によっても、乾燥時間が変化する。
【0117】
そこで、本実施形態では、背景画像Sw上に付着させるカラーインクの各色のインク量に加え、面状ヒータ13による加熱温度情報、及び湿度センサにより検出された環境湿度情報にも基づいて、時間間隔ΔTを変化させるようにする。
【0118】
図16は、画像形成装置2aに含まれる制御部500aの機能構成の一例を説明するブロック図である。図16に示すように、制御部500aは、ヒータ温度取得部535と、環境湿度取得部536と、時間間隔可変部533aとを備えている。
【0119】
これらのうち、ヒータ温度取得部535の機能はヒータ駆動回路513等により実現され、環境湿度取得部536の機能はI/O507等により実現される。また、時間間隔可変部533aの機能はCPU501が所定のプログラムを実行すること等で実現される(図9参照)。
【0120】
ヒータ温度取得部535は、面状ヒータ13による加熱温度情報を取得し、時間間隔可変部533aに出力する。また、環境湿度取得部536はセンサ525に含まれる湿度センサ525aから環境湿度情報を取得し、時間間隔可変部533aに出力する。
【0121】
時間間隔可変部533aは、カラーインク付着量取得部532から入力した記録媒体14に付着させるカラーインクの各色のインク量と、上記の加熱温度情報と、上記の環境湿度情報とに基づき、時間間隔ΔTを変化させる。
【0122】
また、時間間隔可変部533aに含まれるノズル数決定部5331aは、カラーインクの各色のインク量と、上記の加熱温度情報と、上記の環境湿度情報とに基づき、複数のノズル16Wのうちの白インクを吐出させるノズル数、又は複数のノズル16Pのうちのカラーインクを吐出させるノズル数の少なくとも一方を決定する。時間間隔可変部533aは、決定されたノズル数に応じて吐出させるノズルを変化させることで、時間間隔ΔTを変化させる。
【0123】
このような機能は、背景画像Sw上に付着させる各色のインク量と、カラー画像形成に使用するノズル数との関係を示す情報(「インク量-ノズル数情報」という)を、加熱温度毎、及び環境湿度毎に取得しておき、取得した加熱温度及び環境湿度に応じた「インク量-ノズル数情報」を参照することで実現できる。
【0124】
図17は、画像形成システム100aの動作の一例を示すシーケンス図である。図17におけるステップS171~ステップS174の動作は図15のステップS151~S154の動作と同様である。また、ステップS178の動作は図15のステップS156の動作と同様である。そのため、これらの重複する説明を省略する。
【0125】
ステップS175において、ヒータ温度取得部535は、面状ヒータ13による加熱温度情報を取得し、該情報を時間間隔可変部533aに出力する。
【0126】
続いて、ステップS176において、環境湿度取得部536は湿度センサ525aから環境湿度情報を取得し、該情報を時間間隔可変部533aに出力する。
【0127】
続いて、ステップS177において、時間間隔可変部533aは、各色のインク量情報と、上記の加熱温度情報と、上記の環境湿度情報とに基づき、複数のノズル16Wのうちの白インクを吐出させるノズル数、又は複数のノズル16Pのうちのカラーインクを吐出させるノズル数の少なくとも一方を変化させる。その後、時間間隔可変部533は、吐出ヘッド31W,31Pにおける吐出対象ノズルを特定する情報をヘッド駆動部534に出力する。
【0128】
このようにして画像形成システム100aは、記録媒体14に画像を形成することができる。
【0129】
以上説明したように、本実施形態では、背景画像Sw上に付着させるカラーインクの各色のインク量と、面状ヒータ13による加熱温度情報と、湿度センサ525aにより検出された環境湿度情報とに基づいて、時間間隔ΔTを変化させる。
【0130】
これにより、面状ヒータ13を用いて乾燥を促進させる場合や、環境湿度が変動した場合においても、適切に白インクの乾燥時間を変化させることができる。そして、吐出ヘッド31に画像形成動作を無駄に待機させる不要な時間を生じさせることなく、所望の画質で画像形成を行うことができ、多層画像形成の生産性を確保できる。
【0131】
以上、実施形態に係る液体吐出装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
【0132】
なお、実施形態では、第1液体を白インクとし、第2液体をC,M,Y,Kのカラーインクとする例を示したが、これに限定されるものではない。背景画像を白以外のインクで形成してもよいし、背景画像上に形成する画像をモノクロ画像や、C,M,Y,K以外の色を用いる画像を形成してもよい。
【0133】
また、実施形態では、カラーインク付着量取得部532が記録媒体14上の単位面積当たりに付着させる各色のインク量情報に基づき、時間間隔ΔTを変化させる例を示したが、これに限定されるものではない。カラーインク付着量取得部532は、記録媒体14上の単位面積当たりに付着させるカラーインク全体のインク量情報に基づき、時間間隔ΔTを変化させることもできる。
【0134】
また、画像処理装置1の機能の一部を画像形成装置2の制御部500が備えてもよい。逆に、画像形成装置2の制御部500の機能の一部を画像処理装置1が備えてもよい。
【0135】
また、実施形態では、記録媒体が副走査方向に搬送されることで、副走査方向における吐出ヘッドユニット3と記録媒体の相対位置を変化させる例を示したが、吐出ヘッドユニット3を副走査方向に移動させて、副走査方向における吐出ヘッドユニット3と記録媒体の相対位置を変化させてもよい。
【0136】
また、実施形態では、吐出ヘッドユニット3を主走査方向に移動させて、主走査方向における吐出ヘッドユニット3と記録媒体の相対位置を変化させる例を示したが、記録媒体を主走査方向に移動させて、主走査方向における吐出ヘッドユニット3と記録媒体の相対位置を変化させてもよい。
【0137】
さらに、本実施形態は、画像形成方法も含む。例えば、画像形成方法は、記録媒体に複数の第1ノズルから構成される第1ノズル群から第1の液体を吐出させることによって、第1画像を形成する工程と、前記第1画像を形成する工程の後に所定の乾燥時間だけ放置する工程と、前記所定の乾燥時間放置する工程の後に前記記録媒体に形成された第1画像上に、複数の第2ノズルから構成される第2ノズル群から第2の液体を吐出させることによって、第2画像を形成する工程と、を含み、前記所定の乾燥時間放置する工程は、前記第2液体の量に基づき、前記第1ノズル群および前記第2ノズル群のうち少なくとも一方のノズルの数および位置を特定することによって前記乾燥時間を調整する。このような画像形成方法によれば、上記の液体吐出装置と同様の効果を得ることができる。
【0138】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0139】
1 画像処理装置
2 画像形成装置(液体吐出装置の一例)
3 吐出ヘッドユニット(液体吐出部の一例)
31W 吐出ヘッド(背景画像用)
31P 吐出ヘッド(カラー画像用)
4 キャリッジ部
5 主走査モータ(主走査移動部の一例)
6 ギヤ
7 加圧コロ
8 タイミングベルト
9 ガイドロッド
10 エンコーダセンサ
11 エンコーダシート
12 プラテン
121 副走査モータ(副走査移動部の一例)
13 面状ヒータ(加熱部の一例)
14 記録媒体
16W ノズル(第1ノズルの一例)
16P ノズル(第2ノズルの一例)
17 ノズル板
100 画像形成システム
111 受信部
112 解像度変換処理部
113 色変換処理部
114 色変換テーブル
115 ハーフトーン処理部
116 ラスタライズ処理部
117 ドット構成データ抽出部
118 送信部
500 制御部
501 CPU
502 ROM
503 RAM
504 NVRAM
505 ASIC
506 I/F
507 I/O
511 ヘッド駆動回路
512 モータ駆動回路
513 ヒータ駆動回路
514 メンテナンス駆動回路
524 操作パネル
525 センサ
531 描画データ入力部
532 カラーインク付着量取得部
533 時間間隔可変部
5331 ノズル数決定部
534 ヘッド駆動部
535 ヒータ温度取得部
536 環境湿度取得部
X 主走査方向
Y 副走査方向
Sw 背景画像(第1画像の一例)
Sp カラー画像(第2画像の一例)
Sc シアンインクドット
Sk 黒インクドット
ΔT 時間間隔
【先行技術文献】
【特許文献】
【0140】
【文献】特開2013-203034号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17