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特許7392431液体を吐出する装置、ヘッド駆動制御装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置、ヘッド駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20231129BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 401
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019217387
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021084427
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【弁護士】
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】荒木 理美
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-018423(JP,A)
【文献】特開2019-059131(JP,A)
【文献】特開2000-272119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出させる駆動パルスを含む共通駆動波形を生成出力する駆動波形生成手段と、
前記共通駆動波形の内、前記液体吐出ヘッドの圧力発生素子に与える前記駆動パルスの波形部分を選択する選択手段と、
前記選択手段で選択する波形部分を指定する選択信号を出力する手段と、を備え、
前記駆動パルスは、少なくとも、前記液体吐出ヘッドの圧力室を膨張させる膨張波形要素と、前記膨張波形要素で膨張された状態を保持する保持波形要素と、前記保持波形要素で保持された前記圧力室を収縮させて前記液体を吐出させる収縮波形要素と、を含み、
前記選択信号には、前記駆動パルスの前記保持波形要素の途中から前記収縮波形要素の少なくとも一部に跨る波形部分を非選択にする信号を含む
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出させる駆動パルスを含む共通駆動波形を生成出力する駆動波形生成手段と、
前記共通駆動波形の内、前記液体吐出ヘッドの各圧力発生素子に与える前記駆動パルスの波形部分を選択する選択手段と、
前記選択手段で選択する波形部分を指定する選択信号を出力する手段と、を備え、
前記駆動パルスは、連続する第1パルスと第2パルスとを含み、
前記第1パルスは、前記液体を吐出させるパルスであり、
前記第2パルスは、前記液体吐出ヘッドの圧力室を膨張させる膨張波形要素と、前記膨張波形要素で膨張された状態を保持する保持波形要素と、前記保持波形要素で保持された前記圧力室を収縮させる収縮波形要素と、を含み、
前記第1パルスの終端と前記第2パルスの始端とは、前記第1パルスの終端電位を保持する架橋波形要素で連結され、
前記選択信号には、前記駆動パルスの前記架橋波形要素の途中から前記第2パルスの少なくとも一部に跨る波形部分を非選択にする信号を含む
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項3】
前記選択信号には、前記駆動パルスの前記第2パルスの全部を非選択にする信号を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項4】
前記選択信号には、前記駆動パルスの全部を選択する信号を含む
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項5】
前記選択信号には、前記駆動パルスの一部の波形部分を非選択にし、かつ、前記非選択にする前記波形部分が異なる複数の信号を含む
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項6】
前記液体の吐出速度又は吐出量が所定量を超える前記ノズルの前記圧力発生素子に与えられる印加波形と、前記液体の吐出速度が所定量以下の前記ノズルの前記圧力発生素子に与えられる印加波形とが異なる
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項7】
液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出させる駆動パルスを含む共通駆動波形を生成出力する駆動波形生成手段と、
前記共通駆動波形の内、前記液体吐出ヘッドの圧力発生素子に与える前記駆動パルスの波形部分を選択する選択手段と、
前記選択手段で選択する波形部分を指定する選択信号を出力する手段と、を備え、
前記駆動パルスは、少なくとも、前記液体吐出ヘッドの圧力室を膨張させる第1膨張波形要素と、前記第1膨張波形要素で膨張された状態を保持する第1保持波形要素と、前記第1保持波形要素で保持された前記圧力室を収縮させて前記液体を吐出させる第1収縮波形要素と、を含み、
前記選択信号には、前記駆動パルスの前記第1保持波形要素の途中から前記第1収縮波形要素の少なくとも一部に跨る波形部分を非選択にする信号を含む
ことを特徴とするヘッド駆動制御装置。
【請求項8】
液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出させる駆動パルスを含む共通駆動波形を生成出力する駆動波形生成手段と、
前記共通駆動波形の内、前記液体吐出ヘッドの圧力発生素子に与える前記駆動パルスの波形部分を選択する選択手段と、
前記選択手段で選択する波形部分を指定する選択信号を出力する手段と、を備え、
前記駆動パルスは、連続する第1パルスと第2パルスとを含み、
前記第1パルスは、液体を吐出させるパルスであり、
前記第2パルスは、前記液体吐出ヘッドの圧力室を膨張させる膨張波形要素と、前記膨張波形要素で膨張された状態を保持する保持波形要素と、前記保持波形要素で保持された前記圧力室を収縮させる収縮波形要素と、を含み、
前記第1パルスの終端と前記第2パルスの始端とは、前記第1パルスの終端電位を保持する架橋波形要素で連結され、
前記選択信号には、前記駆動パルスの前記架橋波形要素の途中から前記第2パルスの少なくとも一部に跨る波形部分を非選択にする信号を含む
ことを特徴とするヘッド駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体を吐出する装置、ヘッド駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドは、製造上のばらつきなどにより、ヘッド間、あるいは、ノズル間で、液体の吐出速度、吐出量にばらつきが生じる。
【0003】
従来、共通駆動波形における圧力室を膨張させる膨張波形要素(立下り波形要素)から保持波形要素までの期間におけるトリミング範囲を調整するようにしたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2018-509320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の構成にあっては、ノズル間における吐出速度や吐出量(吐出特性)のばらつき抑制を十分に行うことができないという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、吐出特性のばらつきを低減するとを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1に係る液体を吐出する装置は、
液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出させる駆動パルスを含む共通駆動波形を生成出力する駆動波形生成手段と、
前記共通駆動波形の内、前記液体吐出ヘッドの圧力発生素子に与える前記駆動パルスの波形部分を選択する選択手段と、
前記選択手段で選択する波形部分を指定する選択信号を出力する手段と、を備え、
前記駆動パルスは、少なくとも、前記液体吐出ヘッドの圧力室を膨張させる膨張波形要素と、前記膨張波形要素で膨張された状態を保持する保持波形要素と、前記保持波形要素で保持された前記圧力室を収縮させて前記液体を吐出させる収縮波形要素と、を含み、
前記選択信号には、前記駆動パルスの前記保持波形要素の途中から前記収縮波形要素の少なくとも一部に跨る波形部分を非選択にする信号を含む
構成とした。
【0008】
本発明によれば、吐出特性のばらつきを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の概略説明図である。
図2】同印刷装置の吐出ユニットの平面説明図である。
図3】ヘッドの一例のノズル配列方向と直交する方向の断面説明図である。
図4】同じくノズル配列方向に沿う断面説明図である。
図5】同印刷装置のヘッド駆動制御装置に係る部分のブロック説明図である。
図6】本発明の第1実施形態における共通駆動波形及び選択信号の説明に供する説明図である。
図7】同実施形態における圧力発生素子に与えられる印加波形の説明に供する説明図である。
図8】同実施形態の作用説明に供する説明図である。
図9】補正前後の吐出速度の説明に供する説明図である。
図10】本発明の第2実施形態における共通駆動波形及び選択信号の説明に供する説明図である。
図11】同実施形態における圧力発生素子に与えられる印加波形の説明に供する説明図である。
図12】本発明の第3実施形態における共通駆動波形及び選択信号の説明に供する説明図である。
図13】同実施形態における圧力発生素子に与えられる印加波形の説明に供する説明図である。
図14】同実施形態の作用説明に供する説明図である。
図15】本発明の第8実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の概略説明図である。
図16】同印刷装置の吐出ユニットの説明図である。
図17】同実施形態におけるヘッドモジュールの一例の分解斜視説明図である。
図18】同ヘッドモジュールのノズル面側から見た分解斜視説明図である。
図19】同実施形態におけるヘッドの一例のノズル面側から見た外観斜視説明図である。
図20】同じくノズル面と反対側から見た外観斜視説明図である。
図21】同じく分解斜視説明図である。
図22】同じく流路構成部材の分解斜視説明図である。
図23図22の要部拡大斜視説明図である。
図24】同じく流路部分の断面斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置について図1及び図2を参照して説明する。図1は同印刷装置の概略説明図、図2は同印刷装置の吐出ユニットの平面説明図である。
【0011】
印刷装置1は、シート材Pを搬入する搬入部10と、前処理部20と、印刷部30と、乾燥部40と、搬出部50とを備えている。印刷装置1は、搬入部10から搬入(供給)されるシート材Pに対し、前処理手段である前処理部20で必要に応じて前処理液を付与(塗布)し、印刷部30で液体を付与して所要の印刷を行い、乾燥部40でシート材Pに付着した液体を乾燥させた後、シート材Pを搬出部50に排出する。
【0012】
搬入部10は、複数のシート材Pを収容する搬入トレイ11(下段搬入トレイ11A、上段搬入トレイ11B)と、搬入トレイ11からシート材Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12(12A、12B)とを備え、シート材Pを前処理部20に供給する。
【0013】
前処理部20は、例えばインクを凝集させ、裏写りを防止する作用効果を有する処理液をシート材Pの印刷面に付与する処理液付与手段である塗布部21などを備えている。
【0014】
印刷部30は、シート材Pを周面に担持して回転する担持部材(回転部材)であるドラム31と、ドラム31に担持されたシート材Pに向けて液体を吐出する液体吐出部32を備えている。
【0015】
また、印刷部30は、前処理部20から送り込まれたシート材Pを受け取ってドラム31との間でシート材Pを渡す渡し胴34と、ドラム31によって搬送されたシート材Pを受け取って反転機構部36に渡す受け渡し胴35を備えている。
【0016】
前処理部20から印刷部30へ搬送されてきたシート材Pは、渡し胴34に設けられた把持手段(シートグリッパ)によって先端が把持され、渡し胴34の回転に伴って搬送される。渡し胴34により搬送されたシート材Pは、ドラム31との対向位置でドラム31へ受け渡される。
【0017】
ドラム31の表面にも把持手段(シートグリッパ)が設けられており、シート材Pの先端が把持手段(シートグリッパ)によって把持される。ドラム31の表面には、複数の吸引穴が分散して形成され、吸引手段によってドラム31の所要の吸引穴から内側へ向かう吸い込み気流を発生させる。
【0018】
そして、渡し胴34からドラム31へ受け渡されたシート材Pは、シートグリッパによって先端が把持されるとともに、吸引手段による吸い込み気流によってドラム31上に吸着担持され、ドラム31の回転に伴って搬送される。
【0019】
液体吐出部32は、液体吐出手段である吐出ユニット33(33A~33D)を備えている。例えば、吐出ユニット33Aはシアン(C)の液体を、吐出ユニット33Bはマゼンタ(M)の液体を、吐出ユニット33Cはイエロー(Y)の液体を、吐出ユニット33Dはブラック(K)の液体を、それぞれ吐出する。また、その他、白色、金色(銀色)などの特殊な液体の吐出を行う吐出ユニットを使用することもできる。
【0020】
吐出ユニット33は、例えば、図2に示すように、複数のノズル11を配列したノズル列を複数列有する複数の液体吐出ヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)1をベース部材331に千鳥状に配置したフルライン型ヘッドである。
【0021】
液体吐出部32の各吐出ユニット33は、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。ドラム31に担持されたシート材Pが液体吐出部32との対向領域を通過するときに、吐出ユニット33から各色の液体が吐出され、当該印刷情報に応じた画像が印刷される。
【0022】
反転機構部36は、受け渡し胴35から渡されたシート材Pに対して両面印刷をおこなうときに、スイッチバック方式で、シート材Pを反転する機構であり、反転されたシート材Pは印刷部30の搬送経路360を通じて渡し胴34よりも上流側に逆送される。
【0023】
乾燥部40は、印刷部30でシート材P上に付着した液体を乾燥させる。これにより液体中の水分等の液分が蒸発し、シート材P上に液体中に含まれる着色剤が定着し、また、シート材Pのカールが抑制される。
【0024】
搬出部50は、複数のシート材Pが積載される搬出トレイ51を備えている。乾燥部40から搬送されてくるシート材Pは、搬出トレイ51上に順次積み重ねられて保持される。
【0025】
なお、本実施形態では、シート材がカットシート材である例で説明しているが、連帳紙、ロール紙などの連続体(ウェブ)を使用する装置、壁紙などのシート材を使用する装置などにも本発明を適用することができる。
【0026】
次に、ヘッドの一例について図3及び図4を参照して説明する。図3は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の断面説明図、図4は同じくノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【0027】
本実施形態のヘッド1は、ノズル板10と、流路板20と、壁面部材としての振動板部材30とを積層接合している。そして、振動板部材30の振動領域(ダイアフラム領域、振動板)31を変位させる圧電アクチュエータ40と、ヘッド1のフレーム部材を兼ねている共通流路部材50とを備えている。
【0028】
ノズル板10は、複数のノズル11を配列したノズル列を有している。
【0029】
流路板20は、複数のノズル11に通じる複数の圧力室21、各圧力室21にそれぞれ通じる流体抵抗部を兼ねる個別供給流路22、1又は複数の個別供給流路22に通じる1又は複数の中間供給流路23を形成している。隣り合う圧力室21、21は隔壁28にて隔てられている。
【0030】
振動板部材30は、流路板20の圧力室21の壁面を形成する変位可能な複数の振動領域31を有する。ここでは、振動板部材30は2層構造(限定されない)とし、流路板20側から薄肉部を形成する第1層30aと、厚肉部を形成する第2層30bで構成されている。
【0031】
そして、薄肉部である第1層30aで圧力室21に対応する部分に変形可能な振動領域31を形成している。振動領域31内には、第2層30bで圧電アクチュエータ40と接合する厚肉部である島状の凸部31aを形成している。また、振動板部材30の圧力室間隔壁28に対応する部位に第2層30bで厚肉部である接合部38を形成している。
【0032】
そして、振動板部材30の圧力室21とは反対側に、振動板部材30の振動領域31を変形させる圧力発生素子(駆動手段、アクチュエータ手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ40を配置している。
【0033】
この圧電アクチュエータ40は、ベース部材44上に接合した圧電部材41にハーフカットダイシングによって溝加工をして、ノズル配列方向において、所要数の柱状の圧電素子42と支柱部43を所定の間隔で櫛歯状に形成している。
【0034】
そして、圧電素子42は、駆動電圧を与えることで振動領域31を変位させる圧電素子である。支柱部43は、駆動電圧を与えないで圧力室21,21間の隔壁28を支える圧電素子である。
【0035】
そして、圧電素子42は、振動板部材30の振動領域31に形成した厚肉部である島状の凸部31aに接着剤で接合している。一方、支柱部43は、振動板部材30の隔壁28に対応する部位に設けた厚肉部である接合部38に接着剤で接合している。
【0036】
圧電部材41は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極(端面電極)に接続され、外部電極にフレキシブル配線部材45が接続される。
【0037】
共通流路部材50は共通供給流路51を形成している。共通供給流路51は、振動板部材30に設けたフィルタ部39を介して中間供給流路23に通じている。
【0038】
このヘッド1においては、例えば圧電素子42を基準電位(中間電位)から下げることによって圧電素子42が収縮し、振動板部材30の振動領域31が引かれて圧力室21の容積が膨張することで、圧力室21内に液体が流入する。
【0039】
その後、圧電素子42に印加する電圧を上げて圧電素子42を積層方向に伸長させ、振動板部材30の振動領域31をノズル11に向かう方向に変形させて圧力室21の容積を収縮させることにより、圧力室21内の液体が加圧され、ノズル11から液体が吐出される。
【0040】
次に、ヘッドを駆動制御するヘッド駆動制御装置に係る部分について図5のブロック説明図を参照して説明する。
【0041】
ヘッド駆動制御装置400は、ヘッド制御部401と、駆動波形生成手段を構成する駆動波形生成部402及び波形データ格納部403と、ヘッドドライバ410と、吐出タイミングを生成するための吐出タイミング生成部404を備えている。
【0042】
ヘッド制御部401は、吐出タイミングパルスstbを受信すると、共通駆動波形の生成のトリガーとなる吐出同期信号LINEを駆動波形生成部402へ出力する。また、ヘッド制御部401は、吐出同期信号LINEからの遅延量に当たる吐出タイミング信号CHANGEを駆動波形生成部402へ出力する。
【0043】
駆動波形生成部402は、吐出同期信号LINEと、吐出タイミング信号CHANGEに基づいたタイミングで共通駆動波形Vcomを生成出力する。
【0044】
ヘッド制御部401は、ヘッドドライバ410のアナログスイッチASで構成される選択手段で選択する波形部分を指定する選択信号を出力する手段を兼ねている。
【0045】
ヘッド制御部401は、画像データを受け取り、この画像データをもとに、ヘッド1の各ノズル11から吐出させる液体の大きさ、ノズル11の特性ばらつきに応じて、各ノズル11毎に、共通駆動波形Vcomの所定の所要の波形部分を選択するための選択信号MNを生成する。したがって、選択信号MNは、ノズル11の数だけ出力される。また、選択信号MNは吐出タイミング信号CHANGEに同期したタイミングの信号である。
【0046】
そして、ヘッド制御部401は、画像データSDと、同期クロック信号SCKと、画像データのラッチを命令するラッチ信号LTと、生成した選択信号MNとを、ヘッドドライバ410に転送する。
【0047】
ヘッドドライバ410は、ヘッド制御部401からの各種信号に基づいて、共通駆動波形Vcomの内、液体吐出ヘッド1の各圧力発生素子(圧電素子42)に与える波形部分を選択する選択手段である。
【0048】
このヘッドドライバ410は、シフトレジスタ411、ラッチ回路412、階調デコーダ413、レベルシフタ414、及びアナログスイッチアレイ415を備える。
【0049】
シフトレジスタ411は、ヘッド制御部401から転送される画像データSD及び同期クロック信号SCKを入力する。ラッチ回路412は、シフトレジスタ411の各レジスト値を、ヘッド制御部401から転送されるラッチ信号LTによってラッチする。
【0050】
階調デコーダ413は、ラッチ回路412でラッチした値(画像データSD)と各ノズル11毎の選択信号MNとをデコードして結果を出力する。レベルシフタ414は、階調デコーダ413のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチアレイ415のアナログスイッチASが動作可能なレベルへとレベル変換する。
【0051】
アナログスイッチアレイ415のアナログスイッチASは、レベルシフタ414を介して与えられる階調デコーダ413の出力でオン/オフするスイッチであり、共通駆動波形Vcomの通過/非通過(遮断)を行う手段である。
【0052】
このアナログスイッチASは、ヘッド1が備えるノズル11毎に設けられ、各ノズル11に対応する圧電素子42の個別電極に接続されている。また、アナログスイッチASには、駆動波形生成部402からの共通駆動波形Vcomが入力されている。また、上述したように選択信号MNのタイミングが共通駆動波形Vcomのタイミングと同期している。
【0053】
したがって、レベルシフタ414を介して与えられる階調デコーダ413の出力に応じて適切なタイミングでアナログスイッチASのオン/オフが切り替えられることにより、共通駆動波形Vcomから各ノズル11に対応する圧電素子42に印加される波形部分が選択される。その結果、ノズル11から吐出される滴の大きさなどが制御される。
【0054】
吐出タイミング生成部404は、ドラム31の回転量を検出するロータリエンコーダ405の検出結果から、シート材Pが所定量移動される毎に吐出タイミングパルスstbを生成して出力する。ロータリエンコーダ405は、ドラム31と共に回転するエンコーダホイールと、エンコーダホイールのスリットを読取るエンコーダセンサで構成される。
【0055】
次に、本発明の第1実施形態における駆動波形について図6及び図7を参照して説明する。図6は同実施形態における共通駆動波形及び選択信号の説明に供する説明図、図7は同実施形態における圧力発生素子に与えられる印加波形の説明に供する説明図である。
【0056】
図6(a)に示すように、本実施形態の駆動波形Vcomは、圧力室21を加圧して液体を吐出させる吐出パルスとしての駆動パルスPを含んでいる。駆動パルスPは、例えば、小さな滴(小滴)を吐出させるパルスである。
【0057】
駆動パルスPは、圧力室21を膨張させる膨張波形要素aと、膨張波形要素aで膨張された状態を保持する保持波形要素bと、保持波形要素bで保持されている状態から圧力室21を収縮させて液体を吐出させる収縮波形要素cとで構成される。
【0058】
膨張波形要素aは、中間電位(又は基準電位)Vmから電位V1(V1<Vm)まで立ち下がる波形である。
【0059】
保持波形要素bは、膨張波形要素aの終端電位である電位V1を保持する波形である。
【0060】
収縮波形要素cは、本実施形態では、2段階収縮を行う波形であり、保持された電位V1から電位V2(Vm>V2>V1)まで立ち上がり、電位V2を所定時間保持した後、更に中間電位Vmまで立ち上がる。
【0061】
本実施形態において、収縮波形要素cは、電位V1から電位V2まで立ち上がる第1段収縮波形要素c1と、電位V2を保持する中間保持波形要素c2と、電位V2から中間電位Vmまで立ち上がる第2段収縮波形要素c3とで構成される。
【0062】
一方、ヘッド制御部401から出力される駆動パルスPを選択する選択信号MNは、図6(b)に示すように、複数種類(ここでは3つ)の選択信号A、B、Cを含んでいる。ヘッド制御部401は、ノズル11毎に予め定められた選択信号A、B、Cのいずれか1つを選択信号MNとして出力する。
【0063】
本実施形態では、選択信号A、B、Cが「L」であるとき、共通駆動波形VcomはアナログスイッチASを通過し、選択信号A、B、Cが「H」であるとき、共通駆動波形VcomはアナログスイッチASを通過しない(非通過となる)ものとしている。つまり、選択信号A~Cを「ON」にすることで、アナログスイッチAS(選択手段)で選択する波形部分を指定する。
【0064】
選択信号Aは、膨張波形要素aの立下り開始(始端)前の波形要素である中間電位保持波形要素dの途中(時点t0)で「H」から「L」に遷移する。そして、選択信号Aは、収縮波形要素cが終了して中間電位Vmまで立ち上がった後の波形要素である中間電位保持波形要素eの途中(時点t4)で「L」から「H」に遷移する。
【0065】
したがって、選択信号Aが出力されたときには、図6(c)に実線で示すように、駆動パルスPの全部が通過する。これにより、図7(a)に示す印加波形PAが圧電素子42に与えられる。なお、「印加波形」とは圧電素子42に印加される駆動波形である。
【0066】
選択信号Bは、中間電位保持波形要素dの途中(時点t0)で「H」から「L」に遷移し、保持波形要素bの途中(時点t1)で「L」から「H」に遷移し、収縮保持波形要素c2の途中(時点t2)で再度「H」から「L」に遷移する。そして、選択信号Bは、中間電位保持波形要素eの途中(時点t4)で「L」から「H」に遷移する。
【0067】
このように、選択信号Bが保持波形要素bの途中で「L」から「H」に遷移することで、共通駆動波形Vcomが非通過になると、圧電素子42の印加電圧はそのときの保持電位V1に保持される。そして、選択信号Bが「H」から「L」に遷移したとき、保持電位V1から遷移したときの収縮波形要素cの電位まで立ち上がることになる。
【0068】
したがって、選択信号Bが出力されたときには、図6(c)に一点鎖線で示すように、駆動パルスPの時点t1までの波形部分が通過し、時点t1~t2間では電位V1が保持され、時点t2で収縮波形要素cの中間保持波形要素c2の電位V2まで立ち上がる。これにより、図7(b)に示す印加波形PBが圧電素子42に与えられる。
【0069】
選択信号Cは、中間電位保持波形要素dの途中(時点t0)で「H」から「L」に遷移し、保持波形要素bの途中(時点t1)で「L」から「H」に遷移し、第2段収縮波形要素c3の終了時(時点t3)で「L」から「H」に遷移する。そして、選択信号Cは、中間電位保持波形要素eの途中(時点t4)で「L」から「H」に遷移する。
【0070】
したがって、選択信号Bの場合と同様にして、選択信号Cが出力されたときには、図6(c)に二点鎖線で示すように、駆動パルスPの時点t1までの波形部分が通過し、時点t1~t3間では電位V1が保持され、時点t3で中間電位Vmまで立ち上がる。これにより、図7(c)に示す印加波形PCが圧電素子42に与えられる。
【0071】
つまり、本実施形態では、選択信号B、Cは、いずれも、駆動パルスPの保持波形要素bの途中から収縮波形要素cの少なくとも一部に跨る波形部分を非選択にする信号である。そして、本実施形態では、駆動パルスPの保持波形要素bの途中から収縮波形要素cの少なくとも一部に跨る波形部分を非選択にする選択信号には、異なる波形部分を非選択にする2つの選択信号B、Cが含まれる。
【0072】
印加波形PA~PCは、図7に示すように、保持波形要素bの時間をパルス幅PwA~PwCとするとき、PwA<PwB<PwC、の関係になる。
【0073】
そこで、ノズル11の吐出特性に応じた選択信号A~Cを当該ノズル11の圧電素子42に与えることで、ノズル11から吐出される液体(液滴)の吐出速度(滴速度)を調整してばらつきを抑制できる。
【0074】
次に、本実施形態の作用の一例について図8及び図9を参照して説明する。図8は3つのノズルと選択信号及び印加波形の関係の一例を説明する説明図、図9は補正前後の吐出速度の説明に供する説明図である。
【0075】
ここで、図9に示すように、3つのノズルn1~n3からそれぞれ液滴D1~D3が吐出されるものとする。3つのノズルn1~n3に対して、駆動パルスPの全部(印加波形PA)を与えた場合、図9(a)に示すように、ノズルn1の液滴D1の吐出速度が最も速く、ノズルn2の液滴D2、ノズルn3の液滴D3の順に遅くなる。
【0076】
また、印加波形PCのパルス幅PwCを圧力室21に対して最も効率良く吐出速度を速められる時間に設定している。
【0077】
そこで、図8に示すように、各ノズルn1~n3について選択信号A~Cを割り当てる。最も吐出速度が速い特性を有するノズルn1には印加波形PAを印加し、次に吐出速度が速い特性を有するノズルn2には印加波形PBを印加する。そして、吐出速度が最も遅い特性を有するノズルn3には印加波形PCを印加する。
【0078】
これにより、図9(b)に示すように、各ノズルn1~n3から吐出される液滴D1~D3の吐出速度のばらつきが低減して、ほぼ同じ(同一を含む。)吐出速度になるように調整(補正)することができる。
【0079】
この場合、同じ共通駆動波形Vcomによって3種類の印加波形を切り出しているので、波形長を長くすることなく、吐出特性のばらつきを低減できる。また、ノズル毎に駆動波形生成回路を備える必要もない。なお、選択信号は3種類に限るものではなく、2種類、あるいは、4種類以上とすることができる。
【0080】
次に、本発明の第2実施形態について図10及び図11を参照して説明する。図10は同実施形態における共通駆動波形及び選択信号の説明に供する説明図、図11は同実施形態における圧力発生素子に与えられる印加波形の説明に供する説明図である。
【0081】
図10(a)に示すように、本実施形態の駆動波形Vcomは、圧力室21を加圧して液体を吐出させる吐出パルスとしての駆動パルスPを含んでいる。駆動パルスPは、例えば、小さな滴(小滴)を吐出させるパルスである。
【0082】
駆動パルスPは、圧力室21を膨張させる膨張波形要素aと、膨張波形要素aで膨張された状態を保持する保持波形要素bと、保持波形要素bで保持されている状態から圧力室21を収縮させて液体を吐出させる収縮波形要素cとで構成される。
【0083】
膨張波形要素aは、中間電位(又は基準電位)Vmから電位V1(V1<Vm)まで立ち下がる波形である。保持波形要素bは、膨張波形要素aの終端電位である電位V1を保持する波形である。収縮波形要素cは、本実施形態では、1段階収縮を行う波形であり、保持された電位V1から中間電位Vmまで立ち上がる。
【0084】
一方、ヘッド制御部401から出力される駆動パルスPを選択する選択信号MNは、図10(b)に示すように、複数種類(ここでは4つ)の選択信号A、B、C、Dを含んでいる。ヘッド制御部401は、ノズル11毎に予め定められた選択信号A、B、C、Dのいずれか1つを選択信号MNとして出力する。
【0085】
本実施形態では、選択信号A、B、C、Dが「L」であるとき、共通駆動波形VcomはアナログスイッチASを通過し、選択信号A、B、C、Dが「H」であるとき、共通駆動波形VcomはアナログスイッチASを通過しない(非通過となる)ものとしている。
【0086】
選択信号Aは、膨張波形要素aの立下り開始前の中間電位保持波形要素dの途中(時点t0)で「H」から「L」に遷移し、収縮波形要素cが終了して中間電位Vmまで立ち上がった後の中間電位保持波形要素eの途中(時点t5)で「L」から「H」に遷移する。
【0087】
したがって、選択信号Aが出力されたときには、図10(c)に実線で示すように、駆動パルスPの全部が通過する。これにより、図11(a)に示す印加波形PAが圧電素子42に与えられる。
【0088】
選択信号Bは、中間電位保持波形要素dの途中(時点t0)で「H」から「L」に遷移し、保持波形要素bの途中(時点t1)で「L」から「H」に遷移し、収縮波形要素cの途中(時点t2)で再度「H」から「L」に遷移する。そして、中間電位保持波形要素eの途中(時点t5)で「L」から「H」に遷移する。
【0089】
したがって、選択信号Bが出力されたときには、図10(c)に一点鎖線で示すように、駆動パルスPの時点t1までの波形部分が通過し、時点t1~t2間では電位V1が保持され、時点t2の収縮波形要素cの電位まで立ち上がる。これにより、図11(b)に示す印加波形PBが圧電素子42に与えられる。
【0090】
選択信号Cは、中間電位保持波形要素dの途中(時点t0)で「H」から「L」に遷移し、保持波形要素bの途中(時点t1)で「L」から「H」に遷移し、収縮波形要素cの終了時(時点t3)で「L」から「H」に遷移する。そして、中間電位保持波形要素eの途中(時点t5)で「L」から「H」に遷移する。
【0091】
したがって、選択信号Cが出力されたときには、図10(c)に二点鎖線で示すように、駆動パルスPの時点t1までの波形部分が通過し、時点t1~t3間では電位V1が保持され、時点t3の収縮波形要素cの電位まで立ち上がる。これにより、図11(c)に示す印加波形PCが圧電素子42に与えられる。
【0092】
選択信号Dは、中間電位保持波形要素dの途中(時点t0)で「H」から「L」に遷移し、保持波形要素bの途中(時点t1)で「L」から「H」に遷移し、収縮波形要素cの終了時(時点t4)で「L」から「H」に遷移する。そして、中間電位保持波形要素eの途中(時点t5)で「L」から「H」に遷移する。
【0093】
したがって、選択信号Dが出力されたときには、図10(c)に破線で示すように、駆動パルスPの時点t1までの波形部分が通過し、時点t1~t4間では電位V1が保持され、時点t4の収縮波形要素cの電位まで立ち上がる。これにより、図11(d)に示す印加波形PDが圧電素子42に与えられる。
【0094】
つまり、本実施形態では、選択信号B、C、Dは、いずれも、駆動パルスPの保持波形要素bの途中から収縮波形要素cの少なくとも一部に跨る波形部分を非選択にする信号である。そして、本実施形態では、駆動パルスPの保持波形要素bの途中から収縮波形要素cの少なくとも一部に跨る波形部分を非選択にする選択信号には、異なる波形部分を非選択にする3つの選択信号B、C、Dが含まれる。
【0095】
ここで、例えば、複数のノズル11を吐出速度を基にして4グループに分け、吐出速度が速い順に選択信号A、B、C、Dを割り当てる。
【0096】
印加波形PA~PDの順に収縮波形要素cの電圧変化が急になるので、印加波形PAは吐出速度を相対的に最も遅く、印加波形PDは吐出速度を相対的に最も速く補正できる。
【0097】
このようにして、複数のノズル11をグループ分けして選択信号を割り振ることで、吐出速度のばらつきを低減できる。
【0098】
なお、第1実施形態でも、同様にグループ化できる。
【0099】
次に、本発明の第3実施形態について図12ないし図14を参照して説明する。図12は同実施形態における共通駆動波形及び選択信号の説明に供する説明図、図13は同実施形態における圧力発生素子に与えられる印加波形の説明に供する説明図である。図14は同実施形態の作用説明に供する説明図である。
【0100】
図12(a)に示すように、本実施形態の駆動波形Vcomは、圧力室21を加圧して液体を吐出させる吐出パルスとしての駆動パルスPを含んでいる。駆動パルスPは、例えば、小さな滴(小滴)を吐出させるパルスである。
【0101】
駆動パルスPは、液体を吐出させる第1パルス(第1波形部分)P1と、液体を吐出させない第2パルス(第2波形部分)P2とで構成されている。
【0102】
駆動パルスPの第1パルスP1は、圧力室21を膨張させる膨張波形要素aと、膨張波形要素aで膨張された状態を保持する保持波形要素bと、保持波形要素bで保持されている状態から圧力室21を収縮させて液体を吐出させる収縮波形要素cとで構成される。
【0103】
膨張波形要素aは、中間電位(又は基準電位)Vmから電位V1(V1<Vm)まで立ち下がる波形である。保持波形要素bは、膨張波形要素aの終端電位である電位V1を保持する波形である。収縮波形要素cは、本実施形態では、1段階収縮を行う波形であり、保持された電位V1から中間電位Vmまで立ち上がる波形である。
【0104】
駆動パルスPの第2パルスP2は、圧力室21を膨張させる膨張波形要素fと、膨張波形要素fで膨張された状態を保持する保持波形要素gと、保持波形要素gで保持されている状態から圧力室21を収縮させる(液体は吐出させない)収縮波形要素hとで構成される。
【0105】
膨張波形要素fは、中間電位(又は基準電位)Vmから電位V3(V1<V3<Vm)まで立ち下がる波形である。保持波形要素gは、膨張波形要素fの終端電位である電位V3を保持する波形である。収縮波形要素gは、保持された電位V3から中間電位Vmまで立ち上がる波形である。
【0106】
第1パルスP1の収縮波形要素cの終端と第2パルスP2の膨張波形要素fの始端との間は、収縮波形要素cの終端電位を保持する架橋波形要素iで連結されている。なお、架橋波形要素iで保持している電位は、本実施形態では、中間電位Vmであるが、第1パルスP1の収縮波形要素cの終端電位(2段階収縮を行う場合は最終の電位)は中間電位Vmより高い電位とし、当該電位を保持することもできる。
【0107】
一方、ヘッド制御部401から出力される駆動パルスPを選択する選択信号MNは、図12(b)に示すように、複数種類(ここでは4つ)の選択信号A、B、Cを含んでいる。ヘッド制御部401は、ノズル11毎に予め定められた選択信号A、B、Cのいずれか1つを選択信号MNとして出力する。
【0108】
本実施形態では、選択信号A、B、Cが「L」であるとき、共通駆動波形VcomはアナログスイッチASを通過し、選択信号A、B、Cが「H」であるとき、共通駆動波形VcomはアナログスイッチASを通過しない(非通過となる)ものとしている。
【0109】
選択信号Aは、膨張波形要素aの立下り開始前の中間電位保持波形要素dの途中(時点t0)で「H」から「L」に遷移し、第2収縮波形要素hが終了して中間電位Vmまで立ち上がった後の中間電位保持波形要素eの途中(時点t3)で「L」から「H」に遷移する。
【0110】
したがって、選択信号Aが出力されたときには、図13(a)に示す印加波形PAが圧電素子42に与えられる。
【0111】
選択信号Bは、中間電位保持波形要素dの途中(時点t0)で「H」から「L」に遷移し、第1パルスP1と第2パルスP2との間の架橋波形要素iの途中(時点t1)で「L」から「H」に遷移する。そして、選択信号Bは、第2パルスP2の保持波形要素gの途中(時点t2)で「H」から「L」に遷移し、収縮波形要素hが終了して中間電位Vmまで立ち上がった後の中間電位保持波形要素eの途中(時点t3)で「L」から「H」に遷移する。
【0112】
したがって、選択信号Bが出力されたときには、図13(b)に示す印加波形PBが圧電素子42に与えられる。
【0113】
選択信号Cは、中間電位保持波形要素dの途中(時点t0)で「H」から「L」に遷移し、第1パルスP1と第2パルスP2との間の架橋波形要素iの途中(時点t1)で「L」から「H」に遷移する。
【0114】
したがって、選択信号Cが出力されたときには、図13(c)に示す印加波形PCが圧電素子42に与えられる。
【0115】
つまり、本実施形態では、選択信号B、Cは、いずれも、駆動パルスPの第1パルスP1の第1収縮波形要素cが終了した後の架橋波形要素iの途中(第2パルスP2の第2膨張波形要素gの開始前)から第2パルスP2の少なくとも一部に跨る波形部分を非選択にする信号である。そして、本実施形態では、駆動パルスPの架橋波形要素iの途中から第2パルスP2の少なくとも一部に跨る波形部分を非選択にする選択信号には、異なる波形部分を非選択にする2つの選択信号B、Cが含まれる。
【0116】
印加波形PA~PCは、図13に示すように、第1パルスP1と第2パルスP2との間の架橋波形要素iの時間を間隔Twとするととき、TwA<TwB<TwC=0、の関係になる。
【0117】
ここで、本実施形態における第2パルスP2は、第1パルスP1によって液体が吐出されているときに、膨張波形要素gで圧力室21を膨張させることで、吐出滴(ノズル11から伸びる液柱)の後半を圧力室21内に引き戻し、吐出量を小さくすることができるパルスである。
【0118】
また、第1パルスP1と第2パルスP2の間隔(架橋波形要素iの期間)Twが短いほど吐出量は小さくなり、間隔Twが十分長ければ、あるいは、第2パルスPが無ければ(TwC=0であれば)、吐出量は大きくなる。
【0119】
したがって、印加波形Aの吐出量が最も少なく、印加波形Cの吐出量が最も多くなり、印加波形Bの吐出量は中間となる。
【0120】
ここで、図14に示すように、印加波形Aを与えたとき、グループ1のノズル群の吐出量が大、グループ2のノズル群の吐出量が中、グループ3のノズル群の吐出量が小であるとする。
【0121】
そこで、グループ1のノズル群には選択信号Aを割り当てて印加波形Aを与え、グループ2のノズル群には選択信号Bを割り当てて印加波形Bを与え、グループ3のノズル群には選択信号Cを割り当てて印加波形Cを与える。これにより、各ノズル間での吐出量のばらつきを低減することができる。
【0122】
また、本実施形態では、第2パルスP2が液体を吐出させないパルスとしているが、液体を吐出させるパルスとすることもできる。
【0123】
本実施形態においても、同じ共通駆動波形Vcomによって3種類の印加波形を切り出しているので、波形長を長くすることなく、吐出特性のばらつきを低減できる。また、ノズル毎に駆動波形生成回路を備える必要もない。なお、選択信号は3種類に限るものではなく、2種類、あるいは、4種類以上とすることができる。
【0124】
なお、上記各実施形態においては、選択信号MNに2種類以上の信号(選択信号A~Dなど)が含まれる例で説明しているが、1種類の選択信号MNによって複数の波形部分の指定ができるようにしても良い。
【0125】
次に、本発明の第8実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置について図15及び図16を参照して説明する。図15は同印刷装置の概略説明図、図16は同印刷装置の吐出ユニットの説明図である。
【0126】
印刷装置500は、連続体、ロール紙、ウェブなどのシート材Pを搬入する搬入部510と、搬入部510から搬入されたシート材Pを印刷部530に案内搬送する案内搬送部570と、シート材Pに対して液体を吐出して印刷を行う印刷部530と、シート材Pを乾燥する乾燥部540と、シート材Pを搬出する搬出部550などを備えている。
【0127】
シート材Pは搬入部510の元巻きローラ591から送り出され、搬入部510、案内搬送部570、乾燥部540、搬出部550の各ローラによって案内、搬送されて、搬出部550の巻取りローラ592にて巻き取られる。
【0128】
このシート材Pは、印刷部530において、吐出ユニット533に対向して搬送され、吐出ユニット533から吐出される液体によって画像が印刷される。
【0129】
ここで、吐出ユニット533は、2つのヘッドモジュール100A、100Bを共通ベース部材113に備えている。
【0130】
そして、ヘッドモジュール100の搬送方向と直交する方向におけるヘッド1の並び方向をヘッド配列方向とするとき、ヘッドモジュール100Aのヘッド列1A1,1A2で同じ色の液体を吐出する。同様に、ヘッドモジュール100Aのヘッド列1B1、1B2を組とし、ヘッドモジュール100Bのヘッド列1C1、1C2を組とし、ヘッド列1D1、1D2を組として、それぞれ所要の色の液体を吐出する。
【0131】
次に、本実施形態におけるヘッドモジュールの一例について図17及び図18を参照して説明する。図17は同ヘッドモジュールの分解斜視説明図、図18は同ヘッドモジュールのノズル面側から見た分解斜視説明図である。
【0132】
ヘッドモジュール100は、液体を吐出する液体吐出ヘッドである複数のヘッド1と、複数のヘッド1を保持するベース部材103とを備えている。
【0133】
また、ヘッドモジュール100は、放熱部材104と、複数のヘッド1に対して液体を供給する流路を形成しているマニホールド105と、フレキシブル配線部材101と接続するプリント基板(PCB)106と、モジュールケース107とを備えている。
【0134】
次に、本実施形態におけるヘッドの一例について図19ないし図24を参照して説明する。図19は同ヘッドをノズル面側から見た外観斜視説明図、図20は同じくノズル面と反対側から見た外観斜視説明図、図21は同じく分解斜視説明図、図22は同じく流路構成部材の分解斜視説明図、図23図22の要部拡大斜視説明図、図24は同じく流路部分の断面斜視説明図である。
【0135】
液体吐出ヘッド1は、ノズル板10と、流路板(個別流路部材)20と、振動板部材30と、共通流路部材50と、ダンパ部材60と、共通流路部材70、フレーム部材80と、配線部材(フレキシブル配線基板)45などを備えている。配線部材45にはヘッドドライバ(ドライバIC)410が実装されている。
【0136】
ノズル板10には、液体を吐出する複数のノズル11を有している。複数のノズル11は、二次元状にマトリクス配置されている。
【0137】
個別流路部材20は、複数のノズル11に各々連通する複数の圧力室(個別液室)21と、複数の圧力室21に各々通じる複数の個別供給流路22と、複数の圧力室21に各々通じる複数の個別回収流路23とを形成している。1つの圧力室21及びこれに通じる個別供給流路22と個別回収流路23を併せて個別流路25と称する。
【0138】
振動板部材30は、圧力室21の変形な可能な壁面である振動板31を形成し、振動板31には圧電素子42が一体に設けられている。また、振動板部材30には、個別供給流路22に通じる供給側開口32と、個別回収流路23に通じる回収側開口33とが形成されている。圧電素子42は、振動板31を変形させて圧力室21内の液体を加圧する圧力発生手段である。
【0139】
なお、個別流路部材20と振動板部材30とは、部材として別部材であることに限定さるものではない。例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板を使用して個別流路部材20及び振動板部材30を同一部材で一体に形成することができる。つまり、シリコン基板上に、シリコン酸化膜、シリコン層、シリコン酸化膜の順に成膜されたSOI基板を使用し、シリコン基板を個別流路部材20とし、シリコン酸化膜、シリコン層及びシリコン酸化膜とで振動板31を形成することができる。この構成では、SOI基板のシリコン酸化膜、シリコン層及びシリコン酸化膜の層構成が振動板部材30となる。このように、振動板部材30は個別流路部材20の表面に成膜された材料で構成されるものを含む。
【0140】
共通流路部材50は、共通流路支流部材であり、2以上の個別供給流路22に通じる複数の共通供給流路支流52と、2以上の個別回収流路23に通じる複数の共通回収流路支流53とを交互に隣接して形成している。
【0141】
共通流路部材50には、個別供給流路22の供給側開口32と共通供給流路支流52を通じる供給口54となる貫通孔と、個別回収流路23の回収側開口33と共通回収流路支流53を通じる回収口55となる貫通孔が形成されている。
【0142】
また、共通流路部材50は、複数の共通供給流路支流52に通じる1又は複数の共通供給流路本流56の一部56aと、複数の共通回収流路支流53に通じる1又は複数の共通回収流路本流57の一部57aを形成している。
【0143】
ダンパ部材60は、共通供給流路支流52の供給口54と対面する(対向する)供給側ダンパ62と、共通回収流路支流53の回収口55と対面する(対向する)回収側ダンパ63を有している。
【0144】
ここで、共通供給流路支流52及び共通回収流路支流53は、同じ部材である共通流路部材50に交互に並べて配列された溝部を、変形可能な壁面を形成するダンパ部材60で封止することで構成している。
【0145】
共通流路部材70は、共通流路本流部材であり、複数の共通供給流路支流52に通じる共通供給流路本流56と、複数の共通回収流路支流53に通じる共通回収流路本流57を形成する。
【0146】
フレーム部材80には、通供給流路本流56の一部56bと、共通回収流路本流57の一部57bが形成されている。共通供給流路本流56の一部56bはフレーム部材80に設けた供給ポート81に通じ、共通回収流路本流57の一部57bはフレーム部材80に設けた回収ポート82に通じている。
【0147】
このヘッド1においては、液体は共通供給流路本流56から共通供給流路支流52を通り、供給口54から圧力室21へ供給され、ノズル11から液体が吐出される。ノズル11から吐出されない液体は、回収口55から共通回収流路支流53を通り、共通回収流路本流57に流れ、回収ポート82から外部の循環装置を経て供給ポート81を通じて、再度、共通供給流路本流56に供給される。
【0148】
このように、ノズル11が2次元マトリクス配置されたヘッド1を備える場合にも、前記第1ないし第4実施形態によるヘッド駆動制御を適用することができる。
【0149】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0150】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0151】
また、「液体を吐出する装置」には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0152】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0153】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0154】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0155】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0156】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0157】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0158】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0159】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0160】
1 印刷装置
10 搬入部
20 前処理部
30 印刷部
40 乾燥部
50 搬出部
21 塗布部
33 吐出ユニット
100 液体吐出ヘッド(ヘッド)
106 圧力室
112 圧電素子
400 ヘッド駆動制御装置
401 ヘッド制御部
402 駆動波形生成部
403 波形データ格納部
410 ヘッドドライバ
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