(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】積層体およびフィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/20 20060101AFI20231129BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20231129BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20231129BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20231129BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20231129BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20231129BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20231129BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B32B27/20 A
B32B3/30
B32B7/023
B32B27/32 Z
B32B27/36
B32B27/34
C09D11/037
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2019230242
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雅人
(72)【発明者】
【氏名】江原 涼子
(72)【発明者】
【氏名】石井 融
(72)【発明者】
【氏名】桜井 宏子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 康史
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-246348(JP,A)
【文献】特開2002-103832(JP,A)
【文献】特開平10-264345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09D 11/00-13/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷層と第1基材とを含有する積層体であって
印刷層が
アルミ顔料と黄色顔料を含有するインクまたは真鍮顔料を含有するインクで印刷されたものであって、
第1基材の表面が表面樹脂層であって、表面樹脂層の表面が、JIS B-0601に基づく表面粗さ(Ra)が0.5~2.0
μmであり、
当該表面樹脂層に直接印刷層を設けた
ことを特徴とする、積層体。
【請求項2】
表面樹脂層が、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂のいずれかを含有するものである、請求項
1に記載の積層体。
【請求項3】
表面樹脂層の表面が、エンボス加工されたものである、請求項
1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
表面樹脂層が、樹脂(a)と、樹脂(a)と相溶しない樹脂(b)との組成物を含有するものである、請求項
1~3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
表面樹脂層が、樹脂(a)と、樹脂(a)と相溶しない樹脂(b)の相分離構造を有するものである、請求項
4に記載の積層体。
【請求項6】
表面樹脂層が、ポリプロピレン系樹脂(a1)と、メルトフローレートが1g/10分以下の高密度ポリエチレン(b1)とを含有し、前記プロピレン系樹脂(a1)と前記高密度ポリエチレン(b1)との使用割合(質量比)(a1)/(b1)が20/80~70/30の範囲であることを特徴とする、請求項
4または5に記載の積層体。
【請求項7】
印刷層と第1基材表面とが隣接していることを特徴とする、請求項
1~6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
印刷層と第1基材裏面とが隣接していることを特徴とする、請求項
1~6のいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
第1基材と、印刷層と、第2基材とが、この順に積層されていることを特徴とする、請求項
8に記載の積層体。
【請求項10】
第1基材の曇り度が75%以上95%以下であり、且つ第1基材の表面の光沢度が5%以下である、請求項請求項
8または9に記載の積層体。
【請求項11】
請求項
1~10のいずれかに記載の積層体を有するフィルム。
【請求項12】
包装材料である、請求項
11に記載のフィルム。
【請求項13】
食品用包装材料である、請求項
12に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高級感および高意匠性を有する積層体、および、該積層体を有するフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、包装の分野において、包装材料には保護性に加えて高意匠性が高く求められるようになっている。特に、高級感を提供可能な包装材料は、消費者への訴求性が高いことから様々な試みがなされている。
包装材料の高級感を引き出す一つの方法として、金調印刷を施すことが行われている。金色を呈するインクで印刷を行うことで疑似的に金箔調を提供することにより、簡便に高級感を提供できるものである。例えば、金調印刷用のインクとしては、金属粉を配合する方法や、無機顔料に金属を被覆した顔料を配合したもの等が知られている。
【0003】
しかし、表面が平滑な基材に金調印刷を行った場合、正反射による光沢の影響で、ぎらついてしまって逆に高級感が損なわれてしまう課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-165544号
【文献】特開2005-68186号
【文献】特開2006-264125号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、安価な金調印刷を用いつつ、高級感および高意匠性を呈する積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、印刷層と第1基材とを含有し、ある特定の光学特性を有し積層体が前記課題を解決可能であることを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、印刷層と第1基材とを含有する積層体であって、その積層体の光学特性が下記条件a)である特徴とする積層体を提供するものである。
a)積層体の分光反射率の測定において、
積層体に対し光源から光を入射する方向が、入射天頂角が45°であって、
積層体からの反射光を受光する方向が、受光天頂角が0°~30°の範囲であって、受光方位角が入射方位角に対して180°である時に、
下記条件(b)で表される相対分光反射率の400nm~460nmにおける平均値が0.25以上0.45以下であって、
540nm~700nmの相対分光反射率の平均値が0.85以上1.00以下である。
条件b) 受光天頂角X°にて反射光を波長400-700nmの範囲で測定したとき、波長(y)における相対分光反射率を以下の式で定義する。
相対分光反射率f(y)=分光反射率R(y)/最大分光反射率R(Max)
【0008】
また本発明は、前記積層体を有するフィルム、および包装材料を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層体は、特定の光学を有することで、高級感や高意匠性を提供することができる。また、本発明の積層体を有するフィルムは、高級感や高意匠性を提供可能な包装材料、特に食品包装材料として好適に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】本発明の包装材料で包装したどら焼きパッケージ
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、印刷層と基板とを含有する積層体であって、その積層体の光学特性が下記条件a)である特徴とする積層体に関する。
a)積層体の分光反射率の測定において、
積層体に対し光源から光を入射する方向が、入射天頂角が45°であって、
積層体からの反射光を受光する方向が、受光天頂角が0°~30°の範囲であって、受光方位角が入射方位角に対して180°である時に、
下記条件(b)で表される相対分光反射率の400nm~460nmにおける平均値が0.25以上0.45以下であって、
540nm~700nmの相対分光反射率の平均値が0.85以上1.00以下である。
条件b) 受光天頂角X°にて反射光を波長400-700nmの範囲で測定したとき、波長(y)における相対分光反射率を以下の式で定義する。
相対分光反射率f(y)=分光反射率R(y)/最大分光反射率R(Max)
【0012】
本発明は、上記光学特性を有することで高級感や高意匠性を提供することが可能である。
【0013】
<光学特性>
本発明の積層体は、条件a)として、積層体の分光反射率の測定において、
積層体に対し光源から光を入射する方向が、入射天頂角が45°であって、
積層体からの反射光を受光する方向が、受光天頂角が0°~30°の範囲であって、受光方位角が入射方位角に対して180°である時に、
相対分光反射率の400nm~460nmにおける平均値が0.25以上0.45以下であって、
540nm~700nmの相対分光反射率の平均値が0.85以上1.00以下であること特徴とする。
【0014】
試料の視覚的印象にたいし、反射光は非常に大きく影響を及ぼす。とくに、金調印刷においては、光沢感とマット感のバランスが高級感を与えることから、反射光の影響は特に大きい影響を持つ。
ここで、本発明における反射光とは、入射した光が試料にあたって反射した光のことを言い、本発明では表面反射光と拡散反射光を含むこととする。
【0015】
本発明の積層体は、上記条件a)を充足することを特徴とする。ここで、積層体において、入射する光は400-700nmの範囲の波長を含有する光であることが好ましい。入射天頂角が45°の状態から積層体に光を入射し、反射させる。反射光を受光し分光反射率を測定するが、積層体からの反射光を受光する方向は、受光天頂角が0°~30°、受光方位角が入射方位角に対して180°で行う。この範囲であると、視覚情報と反射光の相関が非常に高いからである。
【0016】
受光した反射光について、分光反射率を測定する。分光反射率とは、反射した放射束または光束の分光密度と、入射した放射の分光密度との比のことを言う。具体的には、400~700nmの範囲で分光反射率を測定する。
さらに、得られた分光反射率から、さらに相対分光反射率を算出する。
相対分光反射率とは分光反射率を最大分光反射率で除算した値のことを言う。本発明において、波長(y)における相対分光反射率を以下の式で定義する。
相対分光反射率f(y)=分光反射率R(y)/最大分光反射率R(Max)
例えば、最大分光反射率が600nmの波長で得られるときの、400nmにおける相対分光反射率f(400nm)は、以下の式で求められる。
f(400nm)=R(400nm)/R(600nm)
【0017】
本発明の積層体は、上記で得られる相対分光反射率について、400nm~460nmにおける平均値が0.25以上0.45以下であって、
540nm~700nmの相対分光反射率の平均値が0.85以上1.00以下であることを特徴とする。
【0018】
相対分光反射率が前記範囲を充足する場合、金調印刷の光沢感とマット感のバランスに優れることから、本物の金箔により相似した印象を与えることができる。それにより、高級感を呈することから高意匠性の積層体となる。
【0019】
400nm~460nmにおける相対分光反射率の算出は、好ましくは20nm刻みで測定することが好ましく、さらに好ましくは10nm刻みで測定することである。本発明の400nm~460nmにおける相対分光反射率の平均値は、0.25以上0.45以下であり、さらに好ましくは0.30以上0.40以下である。
【0020】
540nm~700nmにおける相対分光反射率の算出は、好ましくは20nm刻みで測定することが好ましく、さらに好ましくは10nm刻みで測定することである。本発明の540nm~700nmにおける相対分光反射率の平均値は、0.85以上1.00以下であり、さらに好ましくは0.90以上1.00以下であり、特に好ましくは0.95以上1.00以下である。
【0021】
相対分光反射率の算出に用いる分光反射率の測定方法としては、光源からの光の入射方向および測定試料からの反射光の受光方向を請求項記載の方向に設定できる分光測色機器を用いればよい。
入射方向および受光方向を請求項記載の方向に設定できる分光測色測定機器としては、X-Rite社製多角度分光測色計MA94、MA96、MA98、BYK社製メタリックカラー用測色計BYK-mac、BYK-mac i、村上色彩技術研究所製三次元変角分光測色システムGCMS-3B、GCMS-4B、GCMS-11などを例示することができるが、これらには限定されない。
【0022】
<印刷層>
本発明の印刷層は、金調インクを有することを特徴とする。金調インクは、金色を呈するインクであればよく、鱗片状金属や板状金属等の特殊顔料を用いたものでもよいが、通常用いられる金調インクであっても高級感を提供することができる。
金調インクが有する顔料としては、例えば単体で金色を呈する金属または金属酸化物顔料や、金属顔料と有機顔料の組み合わせ、無機基材に金属または金属酸化物を被覆した複合顔料としては等が挙げられる。
【0023】
単体で金色を呈する金属または金属酸化物顔料としては、例えば真鍮顔料等が挙げられる。
【0024】
金属顔料と有機顔料の組み合わせにおける金属顔料としては、例えばアルミ顔料、銀顔料、ニッケルおよびニッケル合金顔料、真鍮顔料等が挙げられる。
金属顔料と有機顔料の組み合わせにおける有機顔料としては、黄色顔料が挙げられ、公知慣用の黄色顔料等が挙げられる。
【0025】
無機基材に金属または金属酸化物を被覆した複合顔料において、無機基材としては、アルミ、銀、銅、鉄、ニッケルおよびニッケル合金、アルミナ、タルク、シリカ、マイカ、ガラス等が挙げられる。金属または金属酸化物としては、酸化チタン、酸化鉄、マンガン酸化物、錫酸化物等が挙げられる
【0026】
中でも、入手が容易で印刷しやすいことから、金属顔料と有機顔料の組み合わせと単体で金色を呈する金属または金属酸化物顔料を用いることが好ましい。
金属顔料と有機顔料の組み合わせとして特に好ましくは、アルミ顔料と黄色顔料である。
単体で金色を呈する金属または金属酸化物顔料として特に好ましくは、真鍮顔料である。
【0027】
印刷層は、金調インクを一部または全部用いて印刷されることが好ましい。金調インクを一部のみ印刷する場合、その他のインクは公知慣用のインクを用途に応じて用いればよい。
また、印刷層は複数層を形成していても構わない。例えば白べたインクで印刷した上に金調インクで印刷し、その上から透明インクを印刷するという方法を用いてもよい。
【0028】
印刷方法に限定はなく、公知慣用の印刷法を用いてよい。例えば、凸版式としては、凸版、フレキソ、ドライオフセット、凹版としてはグラビア、グラビアオフセット、パッド、平版としてはオフセット、孔版としてはスクリーン、これらに加えてインクジェットを例示することができるが、これらには限定されない。
インキの固着方法としては、蒸発乾燥型、酸化重合型、2液反応型、紫外線硬化型、電子線硬化型、浸透乾燥型などを例示することができるが、これらには限定されない。
【0029】
<積層体>
本発明の積層体は、印刷層と第1基材とを含有し、光学特性条件として前述した条件a)を満たすことを特徴とする。
印刷層と第1基材は、隣接していることが好ましい。この時、印刷層が第1基材表面に隣接している場合は第1基材の色味や素材に限定はないが、第1基材裏面に印刷層が形成される場合には、印刷層が可視化できる程度の透明度を有していることが好ましい。
【0030】
本発明の積層体が、条件a)を満たす方法は様々あるが、ひとつは第1基材の表面が表面樹脂層であって、表面樹脂層の表面粗さ(Ra)が0.5~2.0とする場合である。
この時、反射光がある一定の乱雑さを呈することから、印刷面、特に金調印刷部分のぎらつきが抑えられつつ、適度な金属光沢を呈することから、高級感を想起させる積層体となる。
また、表面樹脂層の表面粗さ(Ra)が0.5~2.0であると、積層体はマット調を呈することから、一般の透明平滑フィルムに比べて和紙に近い風合いを提供することが可能であり、消費者に高級感を与えることが可能である。
【0031】
第1基材が表面に表面樹脂層を有する場合、第1基材は表面樹脂層単層であってよく、異なるまたは同一の素材からなる他の層と組み合わせた複層であってよい。
【0032】
表面樹脂層を形成する樹脂としては特に限定はなく、公知慣用の樹脂を用いればよい。例えばフィルムとして用いる場合であれば、成形性や強度の面から、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂のいずれかを含有することが好ましい。また、樹脂種は1種類であっても複数種を組み合わせたものであっても構わない。
【0033】
また、第1基材が複層である場合、表面樹脂層以外の層としては、例えば樹脂、木材、金属、紙、シリコン又は変性シリコン等が挙げられ、異なる素材を接合して得られた基材であってもよく、例えばフィラーを配合した樹脂であったり金属と樹脂の接合体であってもよい。基材の形状は特に制限はなく、平板、シート状、又は3次元形状全面に、若しくは一部に、曲率を有するもの等目的に応じた任意の形状であってよい。また、基材の硬度、厚み等にも制限はない。
また、第1基材が複層である場合、表面樹脂層以外の層として、各種機能を有する層を用いてもよい。例えばガスバリア層、シーラント層、接着剤層、ハードコート層、光保護層、遮光層、遮熱層、耐熱層、強化繊維層、本発明の印刷層以外の印刷層等である。これらは本発明の効果を損ねない範囲において、用途に応じ自由に組み合わせることができる。
【0034】
但し、後述するとおり、印刷層と第1基材裏面が隣接する積層体である場合、第1基材を通して印刷層が可視化できる必要があるため、第1基材はある程度の透明度を有していた方が良い。好ましくは、第1基材の曇り度が75%以上95%以下であり、且つ第1基材表面の光沢度が5%以下である場合、第1基材を通した印刷層の外観が優れることから好ましい。特に好ましくは、第1基材の曇り度が80%以上90%以下の場合である。
【0035】
印刷層と第1基材裏面が隣接する積層体であって、第1基材が複層である場合、表面樹脂層以外の層としては、透明材料であることが好ましく、透明樹脂、ガラス、透明金属蒸着層、透明金属酸化物蒸着層等が好ましい。
【0036】
印刷層と第1基材は、隣接していることが好ましい。第1基材の表面樹脂層は表面粗さ(Ra)が0.5~2.0である非平滑面を有する。非平滑面は、第1基材の表面に形成される。第1基材裏面は、平滑面であってよいし、こちらも非平滑面であっても構わない。また、樹脂層裏面は、表面粗さ(Ra)が0.5~2.0以外の範囲である非平滑面であってもよい。
【0037】
印刷層と第1基材の隣接方法として、印刷層と第1基材表面とが隣接していてもよいし、印刷層と第1基材裏面が隣接していても構わない。
【0038】
印刷層と第1基材表面が隣接している場合、非平滑面が形成された表面樹脂層に直接印刷をすることによって積層体とすることができる。
【0039】
印刷層と第1基材裏面が隣接している場合、第1基材裏面に直接印刷をすることで積層体を形成してよい。
また、第2基材に印刷層を形成したうえで第1基材を積層して積層体を形成しても構わない。この場合、第1基材と、印刷層と、第2基材とが、この順に積層してなる積層体が形成される。
第2基材としては、例えば樹脂、木材、金属、紙、シリコン又は変性シリコン等が挙げられ、異なる素材を接合して得られた基材であってもよく、例えばフィラーを配合した樹脂であったり金属と樹脂の接合体であってもよい。基材の形状は特に制限はなく、平板、シート状、又は3次元形状全面に、若しくは一部に、曲率を有するもの等目的に応じた任意の形状であってよい。また、基材の硬度、厚み等にも制限はない。
【0040】
第1基材の表面が表面樹脂層であって、表面樹脂層の表面粗さ(Ra)としては0.5~2.0であると好ましいが、0.6~1.9であるとさらに好ましく、0.7~1.8であると特に好ましい。
なお、表面粗さ(Ra)の測定方法としては、JIS B-0601に準拠して測定することができる。
【0041】
表面樹脂層の表面粗さ(Ra)を調整する方法として、いくつかの方法が挙げられる。
ひとつめは、表面樹脂層の表面にエンボス加工を施すことによって、表面粗さ(Ra)を規定の値にする場合である。この場合、樹脂の素材に寄らずに表面粗さ(Ra)を調整できることができる。
【0042】
ふたつめは、樹脂の配合により相分離構造を形成する方法である。樹脂(a)と、樹脂(a)と相溶しない樹脂(b)とを配合することにより、樹脂同士が相分離を起こし、海島構造を形成する。樹脂(a)と、樹脂(a)と相溶しない樹脂(b)の種類や配合量を調整することで、、表面樹脂層表面の表面粗さ(Ra)が調整される。
相分離構造によって表面粗さ(Ra)を調整する方法であると、エンボス加工のような二次加工等が不要となり、コスト面でもメリットがあることから好ましい。
【0043】
樹脂(a)と、樹脂(a)と相溶しない樹脂(b)の組み合わせとしては、特に限定はなく本発明の効果を奏するものであればよい。
好ましくは、ポリプロピレン系樹脂(a1)と、メルトフローレート(MFR)が1g/10分以下の高密度ポリエチレン(b1)の組み合わせである。この組み合わせであると、高い剛性と機械的な強度を有することから、高意匠性だけでなく強度も兼ね備えた積層体及び包装材料とすることができる。
【0044】
ポリプロピレン系樹脂(a1)と、メルトフローレートが1g/10分以下の高密度ポリエチレン(b1)の配合比としては、相分離する比率であることが好ましく、前記プロピレン系樹脂(a1)と前記高密度ポリエチレン(b1)との質量比(a1)/(b1)が20/80~70/30であることが好ましい。さらに好ましくは、質量比(a1)/(b1)が25/75~65/35の範囲である。
【0045】
前記プロピレン系樹脂(a1)としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、たとえばプロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。得られる積層フィルムにおけるマット感と、表面粗さの調整が容易である点から、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体を用いることが好ましく、これらを混合使用することが特に好ましい。
【0046】
また、これらのプロピレン系樹脂(a1)は、MFR(230℃)が0.5~30.0g/10分で、融点が120~165℃であるものが好ましく、より好ましくは、MFR(230℃)が2.0~15.0g/10分で、融点が125~162℃のものである。MFR及び融点がこの範囲であれば、製袋時のフィルムの収縮が少なく、更にフィルムの成膜性も向上する。
【0047】
又、前記高密度ポリエチレン(b1)は、メルトフローレート(190℃、21.18N)が1g/10分以下であることを必須とするものである。メルトフローレートが1g/10分を超えると、成膜性が劣り、均一なフィルムが得られにくくなる。特に好ましいメルトフローレートは0.05~0.8g/10分の範囲である。
【0048】
更に前記高密度ポリエチレン(b1)の密度としては、0.935~0.970g/cm2の範囲であるが、得られる積層フィルムのマット感・機械的な強度・フィルムの均一性等の観点から0.940~0.965g/cm2の範囲であることがより好ましい。
【0049】
前記表面粗さ(Ra)の範囲にするためには、前述のように前記プロピレン系樹脂(a1)と前記高密度ポリエチレン(b1)とを、前述の割合で用いればよく、特に調整を必要とするものではないが、より簡便に所望の表面粗さにするためには、(a1)としてプロピレン単独重合体と、(b1)としてプロピレン-エチレンブロック共重合体とを併用することが好ましい。
【0050】
本発明の積層体における表面樹脂層は、必要に応じて、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤等の成分を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0051】
<フィルム>
本発明の積層体をフィルムとして用いる場合、第1基材が複層であることが好ましい。第1基材が複層である場合、表面樹脂層以外の層としては、樹脂が好ましく、例えばポリプロピレン系樹脂、プロピレン-エチレンブロック共重合体、オレフィン系樹脂、例えば、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン-アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン-メタクリル酸共重合体のアイオノマー等を用いてもよい。
【0052】
特に、包装材料として用いる場合には、表面樹脂層以外の層としていわゆる中間層(i)とシール層(ii)とからなる構成を有するものであると、ヒートシール性と機械的強度を両立可能なフィルムとなることが好ましい。
【0053】
前記中間層(i)は、第1基材において、シール層(ii)と表面樹脂層との中間にある層であり、得られるフィルムの強度・剛性を高めるとともに、表面樹脂層のマット感をより強調できる点から、プロピレン-エチレンブロック共重合体と直鎖状低密度ポリエチレンとの混合物を用いることが好ましい。このときの使用割合としては、プロピレン-エチレンブロック共重合体/直鎖状低密度ポリエチレン=95/5~70/30の範囲であることがより好ましい。
【0054】
前記シール層(ii)は、積層フィルムのシール層(ii)同士、又はその他の材質からなる容器等にヒートシール際に容易にシール強度が得られるように設計するものであり、得られる積層フィルムの用途によって、樹脂種を選択することができる。特に包装袋として用い、シール層(ii)同士をヒートシールする場合に、適度なシール強度が得られる点から、プロピレン-エチレンランダム共重合体を含有するものであることが好ましい。更に、シール強度を調整するためには、エチレン-α-オレフィン共重合体を併用することも可能である。
【0055】
本発明のフィルムは、単体でもフィルムとして充分な強度を有するために、その全
厚として20~50μmの範囲であることが好ましく、特にパン等の比較的軽量な内容物
の包装用等に使用する場合には、25~40μmであることが好ましい。
【0056】
フィルムに対して十分な高意匠性を与えるためには、樹脂層が全厚の10~30%になるようにすることが好ましい。
【0057】
本発明のフィルムを有する包装材料としては、食品、薬品、工業部品、雑貨、雑誌等の用途に用いる包装袋、容器、容器の蓋材等が挙げられる。特に、マット感が従来になく優れる点から、和紙等に似た包装材料を提供できるうえ、より好ましい金調の意匠を提供できることから、高級感を引き出すために用いる食品用包装材料に特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0058】
調製例1 第1基材の作成
表面樹脂層用の樹脂として、プロピレン単独重合体(密度:0.90g/cm3、MFR:9g/10分間)40部と高密度ポリエチレン(密度:0.955g/cm3、MFR:0.35g/10分間)60部とからなる混合物1を用意した。
また、中間層(i)として、プロピレン-エチレンブロック共重合体(密度:0.91g/cm3、MFR:7g/10分間)90部と直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.905g/cm3、MFR:4g/10分)10部とからなる混合物2を用意した。
更に、シール層(ii)としてプロピレン-エチレン共重合体(エチレン由来成分含量:5.8%、密度:0.90g/cm3、MFR:6g/10分間)75部と結晶性エチレン-1-オクテン共重合体(密度:0.88g/cm3、MFR:3g/10分)25部とからなる混合物3を用意した。
これらをそれぞれ3台の押出機に供給し、表面樹脂層と中間層(i)とシール層(ii)の平均厚さの比が3:5:2となるように共押出して、厚さ30μmの3層フィルムを成形した。次いで、得られた3層フィルムの表面樹脂層に、表面エネルギーが36mN/mになるようにコロナ放電処理を施して、第1基材を作成した。
また、得られた第1基材について、表面粗さ(Ra)、曇り度、光沢度を以下の方法にて測定した。
【0059】
<表面粗さ(Ra)の測定>
JIS B-0601に基づき、得られた第1基材について東京精密社製 SURFCOM 1400Dを用いて表面粗さ(Ra)を測定した。
【0060】
<曇り度の測定>
JIS K7105に基づき、得られた第1基材についてヘーズメーター(日本電飾工業株式会社製)を用いて曇り度(単位:%)測定した。
【0061】
<光沢度の測定>
JIS K7105に基づき、得られた第1基材について光沢計(スガ試験機株式会社製)を用いて光沢度(単位:%)を測定した。
【0062】
実施例1
金調インキ(アルティマLT サンゴールドY DIC株式会社製)をメチルシクロヘキサン/IPA/酢酸エチル=50/30/20からなる混合希釈用剤で希釈し、離合社製ザーンカップNO.3で17秒になるように調整した。DIC株式会社製卓上型グラビアオートプルファー「DICOM PROOFER DP-III」で調製例1にて得られた第1基材に印刷して、積層体1を得た。
【0063】
得られた積層体について、下記の試験及び評価を行った。
<分光反射率および相対分光反射率>
X-Rite社製多角度分光測色計MA94を用い、積層体に対して400nmから700nmまでの光を入射天頂角45°から入射し、入射方位角に対して180°の受光方位角における受光天頂角0°、20°、30°で受光した際の400-700nm反射光を10nm刻みで測定し、積層体の分光反射率を得た。計測は下地の影響を除外するため、400-700nm反射光の分光反射率が1%以下の黒色板に重ね合わせながら測定した。
各波長の分光反射率から下記条件b)にて400nm~460nm、540nm~700nm、それぞれの範囲をおける相対分光反射率の平均値を得た。
条件b) 受光天頂角X°にて反射光を波長400-700nmの範囲で測定したとき、波長(y)における相対分光反射率を以下の式で定義する。
相対分光反射率f(y)=分光反射率R(y)/最大分光反射率R(Max)
【0064】
視覚効果評価(見た目の高級感)
得られた積層体についてシール層が内側になるようにして横ピロー包装機〔フジキカイ株式会社製「FW-3400/B αV」〕にセットし、底部の上シールバー温度130℃、下シールバー温度130℃、センター(背貼り部)シール温度を140℃、製袋速度60個/分の条件で、ピロー包装袋(縦180mm、横150mm)を作製して、どら焼きを内包した包装を作成した。
これらを検体とし、目視による高級感の順位付けを以下のアンケート調査による評価方法で実施した。
被験者 本研究と関係のない20代から50代の男女11名
評価方法 最も高級に見えるものを1位とし、1~4位まで順位をつけた。
配点は1位が5点、2位は3点、3位は2点、4位は1点として集計し、この平均値を評価基準とした。
【0065】
比較例1
第1基材をヒートシールピロー包装用マットフィルムであるDIFAREN 180T(DIC株式会社製)に代えた以外は実施例1と同様に行い積層体2を得た。
【0066】
比較例2
第1基材をヒートシールピロー包装用平滑フィルムであるDIFAREN B1130TA (DIC株式会社製)に代えた以外は実施例1と同様に行い積層体3を得た。
【0067】
比較例3
印刷層を形成していないDIFAREN B1130TA (DIC株式会社製)のみを積層体4とした。
【0068】
表1に評価結果を示す。
【0069】
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の積層体は、特定の光学を有することで、高級感や高意匠性を提供することができる。また、本発明の積層体を有するフィルムは、高級感や高意匠性を提供可能な包装材料、特に食品用包装材料として好適に使用可能である。