(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】印刷物の製造方法、印刷物の製造装置、及び印刷用セット
(51)【国際特許分類】
B41M 5/36 20060101AFI20231129BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20231129BHJP
B32B 38/14 20060101ALI20231129BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20231129BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B41M5/36
C09D11/30
B32B38/14
B41M5/00 100
B41M5/00 120
B41M5/00 132
E04F13/07 B
(21)【出願番号】P 2019231712
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2019044418
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 由貴男
(72)【発明者】
【氏名】臼井 祐馬
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-291596(JP,A)
【文献】特開2008-188826(JP,A)
【文献】特開2014-074263(JP,A)
【文献】特開2010-236113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/36
C09D 11/30
B32B 38/14
B41M 5/00
E04F 13/07
E04F 13/08
E04F 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積膨張剤及び重合性化合物を含有する硬化型組成物を付与して体積膨張層を形成する体積膨張層形成工程と、
色材を含有する色材組成物を付与して色材層を形成する色材層形成工程と、
前記体積膨張層を体積膨張させる箇所以外に体積膨張抑制液を付与する体積膨張抑制液付与工程と、
前記体積膨張層
、前記色材層
、及び前記体積膨張抑制液に対してエネルギーを付与するエネルギー付与工程と、を含
む印刷物の製造方法
であって、
前記体積膨張抑制液が、多官能重合性化合物であることを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項2】
前記エネルギーが熱又は活性エネルギー線であり、前記エネルギーが活性エネルギー線である場合には、
更に前記体積膨張層を加熱して体積を膨張させる体積膨張工程を含む請求項1に記載の印刷物の製造方法。
【請求項3】
前記体積膨張剤が、熱膨張性マイクロカプセル及び熱分解性体積膨張剤の少なくともいずれかである請求項1から2のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項4】
前記体積膨張層の平均厚みが100μm以上である請求項1から3のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項5】
前記色材組成物がインクジェット方式で付与される請求項1から4のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項6】
前記体積膨張抑制液がインクジェット方式で付与される請求項1から5のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項7】
前記硬化型組成物が活性エネルギー線硬化型組成物である請求項1から6のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項8】
前記色材組成物が重合性化合物を含有する請求項1から7のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項9】
基材上に体積膨張層及び色材層を形成し、前記基材が建築用材料である請求項1から8のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項10】
体積膨張剤及び重合性化合物を含有する硬化型組成物を付与して体積膨張層を形成する体積膨張層形成手段と、
色材を含有する色材組成物を付与して色材層を形成する色材層形成手段と、
前記体積膨張層を体積膨張させる箇所以外に体積膨張抑制液を付与する体積膨張抑制液付与手段と、
前記体積膨張層に対してエネルギーを付与するエネルギー付与手段と、を有する印刷物の製造装置であって、
前記体積膨張抑制液が、多官能重合性化合物であることを特徴とする印刷物の製造装置。
【請求項11】
前記エネルギー付与手段が前記体積膨張層、前記色材層、及び前記体積膨張抑制液に対してエネルギーを付与する手段である請求項10に記載の印刷物の製造装置。
【請求項12】
前記エネルギーが熱又は活性エネルギー線であり、前記エネルギーが活性エネルギー線である場合には、
更に前記体積膨張層を加熱して体積を膨張させる体積膨張手段を有する請求項10から11のいずれかに記載の印刷物の製造装置。
【請求項13】
前記体積膨張剤が、熱膨張性マイクロカプセル及び熱分解性体積膨張剤の少なくともいずれかである請求項10から12のいずれかに記載の印刷物の製造装置。
【請求項14】
体積膨張剤及び重合性化合物を含有する硬化型組成物と、
色材を含有する色材組成物と、
多官能重合性化合物である体積膨張抑制液と、
を含むことを特徴とする印刷用セット。
【請求項15】
体積膨張剤及び重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型組成物と、
活性エネルギー線重合性化合物及び色材を含有する色材組成物と、
多官能の活性エネルギー線重合性化合物である体積膨張抑制液と、
を含む請求項14に記載の印刷用セット。
【請求項16】
体積膨張剤及び重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型組成物と、
活性エネルギー線重合性化合物及び色材を含有する色材組成物と、
多官能活性エネルギー線重合性化合物と単官能活性エネルギー線化合物との混合物である体積膨張抑制液と、
を含む請求項14に記載の印刷用セット。
【請求項17】
前記体積膨張剤が、熱膨張性マイクロカプセル及び熱分解性体積膨張剤の少なくともいずれかである請求項14から16のいずれかに記載の印刷用セット。
【請求項18】
前記色材組成物が重合性化合物を含有する請求項15から17のいずれかに記載の印刷用セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の製造方法、印刷物の製造装置、及び印刷用セットに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の床、内壁や天井には、所望の画像を印字し、エンボス加工等により意匠性を付与した床材、壁紙などの部材が使用されている。床材や壁紙に紫外線(UV)硬化材料によるコーティング、電子線硬化材料によるコーティング等を行うことにより、耐久性を向上させる試みがなされている。
【0003】
近年、インクジェット方式により所望の画像を印刷し、床材や壁紙などに展開することが試みられている。例えば、発泡層、画像形成層、及び表面保護層からなり、発泡層は熱可塑性樹脂及び発泡剤を含有し、画像形成層及び表面保護層が電子線照射により架橋又は硬化させる発泡壁紙の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた凹凸形状による意匠性及び画像品質を有する印刷物が得られると共に、長期間に亘って優れた凹凸形状による意匠性及び画像品質を保持することができる印刷物が得られる印刷物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明の印刷物の製造方法は、体積膨張剤及び重合性化合物を含有する硬化型組成物を付与して体積膨張層を形成する体積膨張層形成工程と、色材を含有する色材組成物を付与して色材層を形成する色材層形成工程と、前記体積膨張層及び前記色材層に対してエネルギーを付与するエネルギー付与工程と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、優れた凹凸形状による意匠性及び画像品質を有する印刷物が得られると共に、長期間に亘って優れた凹凸形状による意匠性及び画像品質を保持することができる印刷物が得られる印刷物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施例1における本発明の印刷物の製造方法で用いる本発明の印刷物の製造装置の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施例3における本発明の印刷物の製造方法で用いる本発明の印刷物の製造装置の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、実施例4における本発明の印刷物の製造方法で用いる本発明の印刷物の製造装置の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、実施例5における本発明の印刷物の製造方法で用いる本発明の印刷物の製造装置の一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、実施例6における印刷物の製造方法で用いる印刷物の製造装置の一例を示す概略図である。
【
図6】
図6は、実施例9における印刷物の製造方法で用いる印刷物の製造装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(印刷物の製造方法及び印刷物の製造装置)
本発明の印刷物の製造方法は、体積膨張剤及び重合性化合物を含有する硬化型組成物を付与して体積膨張層を形成する体積膨張層形成工程と、色材を含有する色材組成物を付与して色材層を形成する色材層形成工程と、前記体積膨張層及び前記色材層に対してエネルギーを付与するエネルギー付与工程と、を含み、体積膨張工程及び体積膨張抑制液付与工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0009】
本発明の印刷物の製造装置は、体積膨張剤及び重合性化合物を含有する硬化型組成物を付与して体積膨張層を形成する体積膨張層形成手段と、色材を含有する色材組成物を付与して色材層を形成する色材層形成手段と、前記体積膨張層に対してエネルギーを付与するエネルギー付与手段と、を有し、体積膨張手段及び体積膨張抑制液付与手段を有することが好ましく、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0010】
本発明の印刷物の製造方法は、本発明の印刷物の製造装置により好適に実施することができ、体積膨張層形成工程は体積膨張層形成手段により行うことができ、色材層形成工程は色材層形成手段により行うことができ、エネルギー付与工程はエネルギー付与手段により行うことができ、体積膨張工程は体積膨張手段により行うことができ、体積膨張抑制液付与工程は体積膨張抑制液付与手段により行うことができ、その他の工程はその他の手段により行うことができる。
【0011】
従来技術では、表面コーティングによる印刷物の保護や熱分解性発泡剤の発泡だけによる意匠性付与では、凹凸形状による意匠性及び画像品質の耐久性が不十分であり、更に、厚さが薄い体積膨張層では凹凸差のある体積膨張層を形成できず、優れた凹凸形状による意匠性を付与できないという課題がある。
【0012】
したがって、本発明においては、体積膨張剤及び重合性化合物を含有する硬化型組成物を付与して体積膨張層を形成する体積膨張層形成工程と、色材を含有する色材組成物を付与して色材層を形成する色材層形成工程と、前記体積膨張層及び前記色材層に対してエネルギーを付与するエネルギー付与工程と、を含み、好ましくは体積膨張工程及び体積膨張抑制液付与工程を含むことにより、適正な三次元架橋構造を形成できるので、体積膨張層の堅牢性と優れた体積膨張性とを両立でき、長期間に亘って優れた凹凸形状による意匠性及び画像品質を両立することができる。
好ましくは、体積膨張抑制液として多官能重合性化合物を用いる。この多官能重合性化合物はエネルギーの付与により3次元架橋するので、体積膨張層を体積膨張させる箇所以外に多官能重合性化合物を付与しエネルギーを付与することで体積膨張のオンオフを制御でき、印刷物に優れた凹凸形状による意匠性を付与することができる。
【0013】
<体積膨張層形成工程及び体積膨張層形成手段>
体積膨張層形成工程は、体積膨張剤及び重合性化合物を含有する硬化型組成物を付与して体積膨張層を形成する工程であり、体積膨張層形成手段により実施される。
【0014】
体積膨張剤及び重合性化合物を含有する硬化型組成物は、基材上に付与することが好ましい。
【0015】
<<基材>>
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プラスチックフィルム、合成繊維からなる合成紙、不織布等のシート、建築用材料などが挙げられる。これらの中でも、耐久性を有する基材が好ましく、建築用材料がより好ましい。
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然紙、合成紙等の紙、プラスチックフィルム、不織布、布、木材、金属薄膜などが挙げられる。
【0016】
前記プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム;ポリプロピレンフィルム;ポリエチレンフィルム;ナイロン、ビニロン、アクリル等のプラスチックフィルム、又は前記フィルムの貼り合わせたものなどが挙げられる。
前記プラスチックフィルムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、強度の点から、一軸又は二軸延伸されていることが好ましい。
【0017】
前記不織布としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン繊維をシート状に散布し、熱圧着させてシート状に形成したものなどが挙げられる。
【0018】
前記建築用材料としては、例えば、床材、壁紙、内装材、壁板材、巾木材、天井材、柱などで使用される熱硬化性樹脂、繊維版、パーティクルボード、又は上記素材の表面に、熱硬化性樹脂、オレフィン、ポリエステル、PVC等の化粧板を設けたものが挙げられる。
【0019】
前記基材上に、硬化型組成物を付与する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ナイフコート法、ノズルコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、グラビアコート法、ロータリースクリーンコート法、リバースロールコート法、ロールコート法、スピンコート法、ニーダーコート法、バーコート法、ブレードコート法、キャスト法、ディップ法、カーテンコート法等の塗工方法、インクジェット方式などが挙げられる。
【0020】
体積膨張層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、250μm以上が更に好ましく、300μm以上500μm以下が特に好ましい。
体積膨張層の平均厚みが100μm以上であると、凹凸差のある体積膨張層を形成することができ、優れた凹凸形状による意匠性を付与することができる。
体積膨張層の体積膨張後の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100μm以上が好ましく、310μm以上がより好ましく、400μm以上が更に好ましく、400μm以上2,000μm以下が特に好ましい。
体積膨張後の平均厚みが100μm以上であると、体積膨張抑制液による凹凸差のある体積膨張層を形成することができ、優れた凹凸形状による意匠性を付与することができる。
【0021】
<<硬化型組成物>>
硬化型組成物は、体積膨張剤及び重合性化合物を含有し、必要があれば重合開始剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
硬化型組成物としては、熱硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型組成物などが挙げられるが、凹凸形状による意匠性の耐久性の点から、活性エネルギー線硬化型組成物がより好適である。
【0022】
-体積膨張剤-
体積膨張剤としては、熱膨張性マイクロカプセル又は熱分解性体積膨張剤が用いられる。これらの中でも、高体積膨張倍率を有し、均一で小さい独立気泡を形成できる点から、熱膨張性マイクロカプセルが好ましい。なお、体積膨張剤は発泡剤と称することもある。
【0023】
熱膨張性マイクロカプセルは、体積膨張剤を熱可塑性樹脂で包み込んだコアシェル構造の粒子であり、加熱により外殻の熱可塑性樹脂が軟化を始めると共に、内包された体積膨張化合物の蒸気圧が上昇して粒子を変形させるのに十分な圧力となり、外殻の熱可塑性樹脂が引き伸ばされて膨張する。体積膨張化合物としては、例えば、低沸点の脂肪族炭化水素などが挙げられる。
【0024】
熱膨張性マイクロカプセルとしては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、積水化学工業株式会社製のアドバンセルEMシリーズ、AkzoNovel社製のExpancellDU、WU、MB、SL、FGシリーズ(日本国内では日本フィライト株式会社が販売)、松本油脂製薬株式会社製のマツモトマイクロスフェアーF、FNシリーズ、株式会社クレハ製のクレハマイクロスフェアーH750、H850、H1100などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
熱分解性体積膨張剤としては、有機系体積膨張剤又は無機系体積膨張剤が用いられる。
有機系体積膨張剤としては、例えば、アゾジカルボン酸アミド(ADCA)、アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
無機系体積膨張剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩と有機酸塩の組合せなどが挙げられる。
【0027】
前記体積膨張剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硬化型組成物の全量に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0028】
<<重合性化合物>>
重合性化合物としては、単官能モノマー及び多官能モノマーを含む。
【0029】
-単官能モノマー-
単官能モノマーは、ビニル基、アクリロイル基、又はメタクリロイル基を分子構造中に1つ有する。
単官能モノマーとしては、例えば、γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ホルマール化トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、(メタ)アクリロイルモルフォリン、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジシクロペンタジエンビニルエーテル、トリシクロデカンビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、エチルオキセタンメチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、エトキシ(4)ノニルフェノール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ガラス転移温度(Tg)が高く、堅牢性が良好な点から、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。
単官能モノマーの含有量は、硬化型組成物の全量に対して、80質量%以上99.5質量%以下が好ましく、90質量%以上95質量%以下がより好ましい。
【0030】
-多官能モノマー-
多官能モノマーは、ビニル基、アクリロイル基、又はメタクリロイル基を分子構造中に2つ以上有する化合物である。
多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート〔CH2=CH-CO-(OC2H4)n-OCOCH=CH2(n≒9)、同(n≒14)、同(n≒23)〕、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクレート〔CH2=C(CH3)-CO-(OC3H6)n-OCOC(CH3)=CH2(n≒7)〕、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルペンタ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリウレタントリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタンペンタ(メタ)アクリレート、ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、エトキシ化(4)ビスフェノールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記多官能モノマーの[分子量/官能数量]は250以上であることが、体積膨張性と堅牢性を両立できる点から好ましい。
硬化型組成物における多官能モノマーの含有量は、重合性化合物の全量に対して、10質量%以下であり、1質量%以下が好ましい。また、多官能モノマーの含有量は、重合性化合物の全量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。多官能モノマーの含有量は、重合性化合物の全量に対して、10質量%以下であると、意匠性(体積膨張性)と堅牢性を両立できるという利点がある。
【0032】
-重合開始剤-
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。これらの中でも、凹凸形状による意匠性及び画像品質の耐久性の点から、光重合開始剤がより好ましい。
光重合開始剤としては、活性エネルギー線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物の重合を開始させることが可能なものであればよい。このような重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、これらの中でも、ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
重合開始剤の含有量は、十分な硬化速度を得るために、硬化型組成物の全量に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(例えば、チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物などが挙げられる。
【0033】
また、上記重合開始剤に加え、重合促進剤(増感剤)を併用することもできる。
重合促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルベンジルアミン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミン化合物などが挙げられる。
重合促進剤の含有量は、特に制限はなく、使用する重合開始剤やその量に応じて適宜設定すればよい。
【0034】
-その他の成分-
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、充填剤、体積膨張促進剤、分散剤、色材、有機溶媒、ブロッキング防止剤、増粘剤、防腐剤、安定剤、脱臭剤、蛍光剤、紫外線遮断剤などが挙げられる。
【0035】
--充填剤--
前記充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化第一鉄、塩基性炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛、珪砂、クレー、タルク、シリカ類、二酸化チタン、珪酸マグネシウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましい。
【0036】
--体積膨張促進剤--
体積膨張促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ナフテン酸亜鉛、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、2-エチルペンタン酸亜鉛、2-エチル-4-メチルペンタン酸亜鉛、2-メチルヘキサン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、イソオクチル酸亜鉛、n-オクチル酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、イソデカン酸亜鉛、n-デカン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、イソステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、リノ一ル酸亜鉛、リノレイン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、安息香酸亜鉛、o、m又はp-トルイル酸亜鉛、p-t-ブチル安息香酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、フタル酸亜鉛、フタル酸モノアルキル(C4~18)エステルの亜鉛塩、デヒドロ酢酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、アミノクロトン酸亜鉛、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、ジンクピリチオン、尿素又はジフェニル尿素の亜鉛錯体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
--増粘剤--
増粘剤としては、例えば、ポリシアノアクリレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリアクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。
【0038】
--防腐剤--
防腐剤は、従来から使用されモノマーの重合を開始させないもの、例えば、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、クロロクレゾールなどが挙げられる。
【0039】
--安定剤--
安定剤は、貯蔵中のモノマーの重合を抑制する目的を果たし、アニオン性安定剤、フリーラジカル安定剤などが挙げられる。
アニオン性安定剤としては、例えば、メタリン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アルキルスルホン酸、五酸化リン、塩化鉄(III)、酸化アンチモン、2,4,6-トリニトロフェノール、チオール、アルキルスルホニル、アルキルスルホン、アルキルスルホキシド、亜硫酸アルキル、スルトン、二酸化硫黄、三酸化硫黄などが挙げられる。
フリーラジカル安定剤としては、例えば、ヒドロキノン、カテコール、又はこれらの誘導体などが挙げられる。
【0040】
<硬化型組成物の調製>
本発明に用いられる硬化型組成物は、上述した各種成分を用いて調製することができ、その調製手段や条件については特に限定されない。
【0041】
<色材層形成工程及び色材層形成手段>
色材層形成工程は、色材を含有する色材組成物を付与して色材層を形成する工程であり、色材層形成手段により実施される。
【0042】
<<色材組成物>>
前記色材組成物は、色材を含有し、凹凸形状による意匠性及び画像品質の耐久性の点から、重合性化合物及び重合開始剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0043】
-色材-
色材としては、本発明における色材組成物の目的や要求特性に応じて、ブラック、ホワイト、マゼンタ、シアン、イエロー、グリーン、オレンジ、金や銀等の光沢色などを付与する種々の顔料や染料を用いることができる。
色材の含有量は、所望の色濃度や組成物中における分散性等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、色材組成物の全量に対して、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンなどが挙げられる。
有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(例えば、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料などが挙げられる。
また、顔料の分散性をより良好なものとするため、分散剤を更に含んでもよい。
分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散物を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。
染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
-重合性化合物-
重合性化合物としては、上記体積膨張層における硬化型組成物の重合性化合物と同様のものを用いることができる。
【0045】
-重合開始剤-
重合開始剤としては、上記体積膨張層における硬化型組成物の重合開始剤と同様のものを用いることができる。
【0046】
<その他の成分>
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機溶媒、界面活性剤、重合禁止剤、レべリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、粘度安定化剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、増粘剤などが挙げられる。
【0047】
--有機溶媒--
本発明に用いられる色材組成物は、有機溶媒を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。有機溶媒、特に揮発性の有機溶媒を含まない(VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)組成物であれば、当該組成物を扱う場所の安全性がより高まり、環境汚染防止を図ることも可能となる。なお、「有機溶媒」とは、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエンなどの一般的な非反応性の有機溶媒を意味するものであり、反応性モノマーとは区別すべきものである。また、有機溶媒を「含まない」とは、実質的に含まないことを意味し、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0048】
-色材組成物の調製-
本発明に用いられる色材組成物は、上述した各種成分を用いて作製することができ、その調製手段や条件は特に限定されないが、例えば、色材としての顔料、分散剤等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させて顔料分散液を調製し、当該顔料分散液に、更に重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合させることにより調製することができる。
【0049】
<粘度>
本発明に用いられる色材組成物の粘度は、用途や適用手段に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、当該組成物をノズルから吐出させるような吐出手段を適用する場合には、20℃から65℃の範囲における粘度、望ましくは25℃における粘度が3mPa・s以上40mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上15mPa・s以下がより好ましく、6mPa・s以上12mPa・s以下が特に好ましい。また当該粘度範囲を、上記有機溶媒を含まずに満たしていることが特に好ましい。なお、上記粘度は、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE-22Lにより、コーンロータ(1°34’×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を20℃~65℃の範囲で適宜設定して測定することができる。循環水の温度調整にはVISCOMATE VM-150IIIを用いることができる。
【0050】
前記体積膨張層上に、上記色材組成物を付与する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクジェット方式が、生産性や少ロット多品種へのフレキシブル対応が可能な点から好ましい。
インクジェット方式としては、例えば、吐出ヘッドの駆動方式としては、PZT等を用いた圧電素子アクチュエータ、熱エネルギーを作用させる方式、静電気力を利用したアクチュエータなどを利用したオンデマンド型のヘッドを用いることもできるし、連続噴射型の荷電制御タイプのヘッドなどを用いることもできる。
【0051】
<体積膨張抑制液付与工程及び体積膨張抑制液付与手段>
体積膨張抑制液付与工程は、体積膨張層を体積膨張させる箇所以外に体積膨張抑制液を付与する工程であり、体積膨張抑制液付与手段により実施される。
【0052】
体積膨張抑制液としては、多官能重合性化合物が用いられる。
多官能重合性化合物としては、上記体積膨張層の硬化型組成物における多官能モノマーと同様のものを用いることができ、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレ-ト、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、ジエチレンクリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレートなどが挙げられる。また、異なる多官能モノマーの混合物、多官能モノマーと単官能モノマーを混合物や、多官能を有するオリゴマーと単官能モノマーの混合物、単官能モノマー、多官能モノマー、多官能を有するオリゴマーとの混合物を用いることができる。
体積膨張抑制液が多官能重合性化合物であることにより、多官能重合性化合物はエネルギー付与により3次元架橋するので、体積膨張層の任意の場所に多官能重合性化合物を付与しエネルギーを付与することで体積膨張のオンオフを制御でき、印刷物に優れた凹凸形状による意匠性を付与することができるという利点がある。
【0053】
体積膨張抑制液を付与する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクジェット方式が、様々な体積膨張パターン(体積膨張抑制パターン)に対してフレキシブルに対応できる点から好ましい。
インクジェット方式としては、例えば、吐出ヘッドの駆動方式としては、PZT等を用いた圧電素子アクチュエータ、熱エネルギーを作用させる方式、静電気力を利用したアクチュエータなどを利用したオンデマンド型のヘッドを用いることもできるし、連続噴射型の荷電制御タイプのヘッドなどを用いることもできる。
体積膨張抑制液の付与量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、体積膨張層の表面積に対して0.01pL/μm2~2.25pL/μm2が好ましい。
【0054】
体積膨張剤及び重合性化合物を含有する硬化型組成物は、狙いの粘度、膜厚に応じて、ローラー、カーテンコーター、ダイコーター等の既存の塗布手段により塗布することができる。
色材を含有する色材組成物や体積膨張抑制液はインクジェット法により付与することが可能である。
また、各組成物の塗布方法の組み合わせとしては、
図1から
図6に示すようなものが挙げられる。ただし、水性の色材組成物を塗布する場合、その後の活性エネルギー線照射は無くてもよい。具体的には、以下の組み合わせが挙げられる。
(A)ローラーにて硬化型組成物を塗布、体積膨張抑制液と色材組成物をインクジェット(IJ)法で付与、活性エネルギー線照射後、加熱する方法、(B)ローラーにて硬化型組成物を塗布、体積膨張抑制液をインクジェット(IJ)法で付与、活性エネルギー線照射後、色材組成物をインクジェット(IJ)法で付与、活性エネルギー線照射後、加熱する方法、(C)ローラーにて硬化型組成物を塗布、体積膨張抑制液をインクジェット(IJ)法で付与、活性エネルギー線照射後、ローラーにて中間層塗工液を塗布、色材組成物をインクジェット(IJ)法で付与、その後、活性エネルギー線照射する方法などが挙げられる。更に、上記の組み合わせの中で、色材組成物はディスペンサ、硬化型組成物はディスペンサ、体積膨張抑制液はインクジェット(IJ)法で付与する組み合わせも挙げられる。
【0055】
<エネルギー付与工程及びエネルギー付与手段>
エネルギー付与工程は、体積膨張層及び色材層に対してエネルギーを付与する工程であり、エネルギー付与手段により実施される。
エネルギーとしては、例えば、熱、活性エネルギー線などが挙げられる。
【0056】
エネルギーが熱エネルギーである場合には、熱エネルギーを体積膨張層に付与することにより、体積膨張層は硬化すると共に、体積膨張する。また、体積膨張層に体積膨張抑制液が付与された箇所も3次元架橋する。また、色材層が重合性化合物を含有している場合には、熱エネルギーの付与により色材層が硬化する。色材層が重合性化合物を含有していない場合には、熱エネルギーの付与により色材層が乾燥される。
熱エネルギーの付与は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、赤外線ヒーター、温風ヒーター、加熱ローラーなどが挙げられる。
前記加熱の温度としては、体積膨張層及び色材層の熱硬化が可能であり、かつ体積膨張剤の熱分解温度以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100℃以上200℃以下が好ましい。
【0057】
エネルギーが活性エネルギー線である場合には、活性エネルギー線を体積膨張層に照射することにより体積膨張層が硬化する。また、色材層が重合性化合物を含む場合には、活性エネルギー線の照射により色材層が硬化する。色材層が重合性化合物を含まない場合には、活性エネルギー線の照射により色材層は変化しない。エネルギーが活性エネルギー線である場合には、更に前記体積膨張層を加熱して体積膨張させる体積膨張工程を含むことが好ましい。
【0058】
-活性エネルギー線-
活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
【0059】
硬化条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、紫外線の場合には、照射距離2mmにおいて6W/cm以上の強度で照射できる照射装置を用いることが好ましい。
電子線の場合には、硬化させたい電子線照射装置から最も遠い箇所に15kGy以上の線量となる加速電圧であることが好ましい。
【0060】
<体積膨張工程及び体積膨張手段>
体積膨張工程は、体積膨張層を加熱して体積膨張させる工程であり、体積膨張手段により実施される。
体積膨張手段としては、加熱により体積膨張層の体積膨張剤を体積膨張させることができる手段であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、赤外線ヒーター、温風ヒーター、加熱ローラーなどが挙げられる。
前記加熱の温度としては、体積膨張剤の熱分解温度以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100℃以上200℃以下が好ましい。
【0061】
<その他の工程及びその他の手段>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エンボス加工工程、制御工程などが挙げられる。
その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エンボス加工手段、制御手段などが挙げられる。
【0062】
<<エンボス加工工程及びエンボス加工手段>>
前記エンボス加工工程は、体積膨張層及び色材層に凹凸模様を形成する工程であり、エンボス加工手段により実施される。
前記凹凸模様としては、通常、壁紙、化粧材等に凹凸を付与する目的で使用されるエンボス加工、ケミカルエンボス加工、ロータリースクリーン加工、又は盛り上げ印刷等の方法を選択使用することができる。
前記エンボス加工工程としては、例えば、エンボス版を用いる加工、ケミカルエンボス加工、ロータリースクリーン、又は盛り上げ印刷により凹凸を付与する方法などが挙げられる。
【0063】
前記エンボス加工手段としては、加熱後冷却ローラーでエンボス加工する手段、及び熱ローラエンボスを用いて一度にエンボス加工する手段のいずれであっても構わない。
前記エンボス加工によるエンボスの深さとしては、0.08mm以上0.50mm以下が好ましい。前記エンボスの深さが、0.08mm以上であると、立体感を出すことができ、0.50mm以下であると、表面の摩耗強さを向上できる。
エンボス加工により形成される凹凸模様の形状としては、例えば、木目版導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝などが挙げられる。
【0064】
(印刷用セット)
本発明の印刷用セットは、体積膨張剤及び重合性化合物を含有する硬化型組成物と、
色材を含有する色材組成物と、
多官能重合性化合物である体積膨張抑制液と、を含む。
前記体積膨張剤が、熱膨張性マイクロカプセル及び熱分解性体積膨張剤の少なくともいずれかであることが好ましい。
前記色材組成物が重合性化合物を含有することが好ましく、更に重合開始剤を含有することがより好ましい。
【0065】
本発明の印刷用セットは、体積膨張剤及び重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型組成物と、活性エネルギー線重合性化合物及び色材を含有する色材組成物と、多官能の活性エネルギー線重合性化合物である体積膨張抑制液と、を含むことが好ましい。
【0066】
本発明の印刷用セットは、体積膨張剤及び重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型組成物と、活性エネルギー線重合性化合物及び色材を含有する色材組成物と、多官能活性エネルギー線重合性化合物と単官能活性エネルギー線化合物との混合物である体積膨張抑制液と、を含むことが好ましい。
【0067】
本発明の印刷用セットによると、優れた凹凸形状による意匠性及び画像品質を有する印刷物が得られる。
【0068】
ここで、本発明の印刷物の製造方法に用いられる本発明の印刷物の製造装置について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の印刷物の製造装置の一例を示す概略図である。この
図1の印刷物の製造装置100は、基材19上に硬化型組成物を塗布する塗布ローラー10と、その下流に体積膨張抑制液用ヘッド11、ブラック用ヘッド12、シアン用ヘッド13、マゼンタ用ヘッド14、及びイエロー用ヘッド15からなる吐出ヘッド16と、活性エネルギー線照射装置17と、加熱装置18とを有している。なお、
図1中、20は搬送ベルト、21は塗布ローラー10と対向する送り出しローラーであり、22は巻取りローラーである。
【0069】
基材19は巻取りローラー22で搬送ベルト20が巻き取られることにより、
図1中矢印方向に搬送される。
まず、基材表面に、硬化型組成物を塗布ローラー10により塗布して、体積膨張層を形成する。
次に、体積膨張層が形成された基材19を所定の速度で走査させ、体積膨張抑制液用ヘッド11から体積膨張層を体積膨張させる箇所以外に体積膨張抑制液を吐出する。次いで、ブラック用ヘッド12、シアン用ヘッド13、マゼンタ用ヘッド14、及びイエロー用ヘッド15の各色用ヘッドから、ブラック用、シアン用、マゼンタ用、及びイエロー用の色材組成物をインクジェット方式で吐出して、色材層を形成する。
次に、体積膨張層に対して活性エネルギー線照射装置17を用い、所定の照射条件で活性エネルギー線を照射し、硬化する。
次に、得られた硬化物に対して、加熱装置18により加熱すると、加熱した箇所の体積膨張層が体積膨張し、優れた凹凸形状による意匠性及び画像品質を有する印刷物が得られる。
【0070】
本発明の印刷物の製造方法及び本発明の印刷物の製造装置により製造される印刷物は、優れた凹凸形状による意匠性及び画像品質を有する印刷物が得られると共に、長期間に亘って優れた凹凸形状による意匠性及び画像品質を保持することができるので、例えば、床材、壁紙、内装材、壁材、巾木材、天井材、柱等の建築用材料などの用途に好適である。
【実施例】
【0071】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
図1は、実施例1で用いる本発明の印刷物の製造装置を示す概略図である。この
図1の印刷物の製造装置100は、基材19上に硬化型組成物Aを塗布する塗布ローラー10と、その下流に体積膨張抑制液用ヘッド11、ブラック用ヘッド12、シアン用ヘッド13、マゼンタ用ヘッド14、及びイエロー用ヘッド15からなる吐出ヘッド16と、活性エネルギー線照射装置17と、加熱装置18とを有している。なお、
図1中、20は搬送ベルト、21は塗布ローラー10と対向する送り出しローラーであり、22は巻取りローラーである。基材19は巻取りローラー22で搬送ベルト20が巻き取られることにより、
図1中矢印方向に搬送される。
【0073】
吐出ヘッド16としては、株式会社リコープリンティングシステムズ製のGEN4ヘッド(MH2420)を用い、体積膨張抑制液用ヘッド11と、ブラック用ヘッド12と、シアン用ヘッド13と、マゼンタ用ヘッド14と、イエロー用ヘッド15とを5つずつ並列に配置し、吐出ヘッド16を45℃に加温して、20pLの液滴サイズで描画できるよう、周波数をコントロールした。
活性エネルギー線照射装置17としては、岩崎電気株式会社製のEC300/30/30mAを用い、不活性ガスブランケット内は、不活性ガス源として、コンプレッサー付きN2ガス発生装置(Maxi-Flow30、Inhouse Gas社製)を0.2MPa・sの圧力で接続し、2L/分~10L/分の流量でN2をフローさせ、酸素濃度が500ppm以下となるように設定した。
【0074】
加熱装置18としては、日立産機システム株式会社製のルテックスブロアGシリーズ、株式会社関西電熱製の高温熱風発生用電気式ヒーターXS-2、株式会社関西電熱製ハイブローノズル50ALを組み合わせて作製した加熱装置をノズル先端からの風速30m/secとなるように調整したものを用いた。
【0075】
まず、基材19として、質量80g/m2の用紙(オストリッチダイヤ ハイグレード普通紙RJPH-03)の表面に、下記の硬化型組成物Aを塗布ローラー10により平均厚みが100μmとなるように塗布し、体積膨張層を形成した。
次に、体積膨張層が形成された基材を15m/minの速度で走査させ、体積膨張抑制液用ヘッド11から下記の体積膨張抑制液Aを、体積膨張層を体積膨張させる箇所以外に吐出した。次いで、ブラック用ヘッド12、シアン用ヘッド13、マゼンタ用ヘッド14、及びイエロー用ヘッド15から、下記のブラック用、シアン用、マゼンタ用、及びイエロー用の色材組成物A1~A4をインクジェット方式により25%画像(各色フィルムの4分1の幅)を描画し、色材層を形成した。
次に、体積膨張層及び色材層に対して活性エネルギー線照射装置17を用い、加速電圧30kV、30線量kGyの照射条件で活性エネルギー線を照射し、硬化させた。
次に、得られた硬化物に対して、加熱装置18により170℃で10秒間加熱すると、体積膨張層の加熱した箇所が体積膨張した。以上により、実施例1の印刷物が得られた。
【0076】
<硬化型組成物Aの調製>
メトキシトリエチレングリコール#400アクリレート(新中村化学工業株式会社製)90質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(巴工業株式会社製)10質量部からなる重合性化合物94質量%に対して、体積膨張剤としてのアゾジカルボン酸アミド(永和化成工業株式会社製)3質量%及び体積膨張促進剤としてのナフテン酸亜鉛(東京化成工業株式会社製)3質量%を添加し、撹拌することにより、硬化型組成物Aを調製した。
【0077】
<体積膨張抑制液A>
体積膨張抑制液Aとして、多官能モノマー(1,6-ヘキサンジオールジアクリレ-ト)からなる液を用いた。
【0078】
<ブラック用色材組成物A1の調製>
アクリロイルモルフォリン(東京化成工業株式会社製)60質量部、ベンジルアクリレート(東京化成工業株式会社製)20質量部、及び色材としてのSPECIAL BLACK 250(ブラック顔料、BASFジャパン社製)40質量部を撹拌することにより、ブラック用色材組成物A1を調製した。
【0079】
<シアン用色材組成物A2の調製>
アクリロイルモルフォリン(東京化成工業株式会社製)60質量部、ベンジルアクリレート(東京化成工業株式会社製)20質量部、及び色材としてのIRGALITE BLUE GLVO(シアン顔料、BASFジャパン社製)40質量部を撹拌することにより、シアン用色材組成物A2を調製した。
【0080】
<マゼンタ用色材組成物A3の調製>
アクリロイルモルフォリン(東京化成工業株式会社製)60質量部、ベンジルアクリレート(東京化成工業株式会社製)20質量部、及び色材としてのCINQUASIA MAGENTA RT-355-D(マゼンタ顔料、BASFジャパン社製)40質量部を撹拌することにより、マゼンタ用色材組成物A3を調製した。
【0081】
<イエロー用色材組成物A4の調製>
アクリロイルモルフォリン(東京化成工業株式会社製)60質量部、ベンジルアクリレート(東京化成工業株式会社製)20質量部、及び色材としてのNOVOPERM YELLOW H2G(イエロー顔料、クラリアント社製)40質量部を撹拌することにより、イエロー用色材組成物A4を調製した。
【0082】
(実施例2)
実施例1において、硬化型組成物Aを、以下の硬化型組成物Bに代えた以外は、実施例1と同様にして、印刷物を作製した。
【0083】
<硬化型組成物Bの調製>
メトキシトリエチレングリコール#400アクリレート(新中村化学工業株式会社製)90質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(巴工業株式会社製)10質量部、及び体積膨張剤としてのクレハマイクロスフェアー(株式会社クレハ製、H750)15質量部を撹拌することにより、硬化型組成物Bを調製した。
【0084】
(実施例3)
図2に示す印刷物の製造装置を用い、光源としてピーク波長385nmのLED光源ユニット(LEDZero Solidcure、Integration Technolohy社製)を有する活性エネルギー線照射装置37を、体積膨張抑制液用ヘッド11の下流に設置し、実施例2において、硬化型組成物Aを以下の硬化型組成物Cに代えた以外は、実施例2と同様にして、印刷物を作製した。
【0085】
<硬化型組成物Cの調製>
イソボルニルアクリレート(巴工業株式会社製)90質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(巴工業株式会社製)10質量部、体積膨張剤としてのクレハマイクロスフェアー(株式会社クレハ製、H750)15質量部、及び光重合開始剤(IGM Resins B.V.社製、Omnirad TPO H)1質量部を撹拌することにより、硬化型組成物Cを調製した。
【0086】
(実施例4)
図3に示す印刷物の製造装置を用い、光源としてピーク波長385nmのLED光源ユニット(LEDZero Solidcure、Integration Technolohy社製)を有する活性エネルギー線照射装置37を、体積膨張抑制液用ヘッド11の下流、ブラック用ヘッド12の下流、シアン用ヘッド13の下流、及びマゼンタ用ヘッド14の下流に、それぞれ設置し、実施例2において、硬化型組成物Aを以下の硬化型組成物Cに代え、ブラック用、シアン用、マゼンタ用、及びイエロー用の色材組成物A1~A4をブラック用、シアン用、マゼンタ用、及びイエロー用の色材組成物B1~B4に代えた以外は、実施例2と同様にして、印刷物を作製した。
【0087】
<硬化型組成物Cの調製>
イソボルニルアクリレート(巴工業株式会社製)90質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(巴工業株式会社製)10質量部、体積膨張剤としてのクレハマイクロスフェアー(株式会社クレハ製、H750)15質量部、及び光重合開始剤(IGM Resins B.V.社製、Omnirad TPO H)1質量部を撹拌することにより、硬化型組成物Cを調製した。
【0088】
<ブラック用色材組成物B1の調製>
アクリロイルモルフォリン(東京化成工業株式会社製)60質量部、ベンジルアクリレート(東京化成工業株式会社製)20質量部、光重合開始剤(IGM Resins B.V.製、Omnirad TPO H)1質量部、色材としてのSPECIAL BLACK 250(ブラック顔料、BASFジャパン社製)40質量部を撹拌することにより、ブラック用色材組成物B1を調製した。
【0089】
<シアン用色材組成物B2の調製>
アクリロイルモルフォリン(東京化成工業株式会社製)60質量部、ベンジルアクリレート(東京化成工業株式会社製)20質量部、光重合開始剤(IGM Resins B.V.製、Omnirad TPO H)1質量部、及び色材としてのIRGALITE BLUE GLVO(シアン顔料、BASFジャパン社製)40質量部を撹拌することにより、シアン用色材組成物B2を調製した。
【0090】
<マゼンタ用色材組成物B3の調製>
アクリロイルモルフォリン(東京化成工業株式会社製)60質量部、ベンジルアクリレート(東京化成工業株式会社製)20質量部、光重合開始剤(IGM Resins B.V.製、Omnirad TPO H)1質量部、及び色材としてのCINQUASIA MAGENTA RT-355-D(マゼンタ顔料、BASFジャパン社製)40質量部を撹拌することにより、マゼンタ用色材組成物B3を調製した。
【0091】
<イエロー用色材組成物B4の調製>
アクリロイルモルフォリン(東京化成工業株式会社製)60質量部、ベンジルアクリレート(東京化成工業株式会社製)20質量部、光重合開始剤(IGM Resins B.V.製、Omnirad TPO H)1質量部、及び色材としてのNOVOPERM YELLOW H2G(イエロー顔料、クラリアント社製)40質量部を撹拌することにより、イエロー用色材組成物B4を調製した。
【0092】
(実施例5)
図4に示す印刷物の製造装置を用い、実施例3において、塗布ローラー28を、体積膨張抑制液用ヘッド11の下流の活性エネルギー線照射装置27の下流に設置した以外は、実施例3と同様にして、印刷物を作製した。
【0093】
(実施例6)
図5に示す印刷物の製造装置を用い、実施例2において、ブラック用、シアン用、マゼンタ用、及びイエロー用の色材組成物A1~A4を、下記の市販のソルベントインクD1~D4に代え、イエロー用ヘッド15の下流の活性エネルギー線照射装置17を除去し、体積膨張抑制液用ヘッド11の下流に活性エネルギー線照射装置17を配置した以外は、実施例2と同様にして、印刷物を作製した。
【0094】
<ソルベントインクD1~D4>
・シアン用ソルベントインクD1(ミマキ株式会社製、SPC-0440C)
・マゼンタ用ソルベントインクD2(ミマキ株式会社製、SPC-0440M)
・イエロー用ソルベントインクD3(ミマキ株式会社製、SPC-0440Y)
・ブラック用ソルベントインクD4(ミマキ株式会社製、SPC-0440K)
【0095】
(実施例7)
実施例2において、硬化型組成物Aを塗布ローラー10により平均厚みが400μmとなるように塗布し、体積膨張層を形成した以外は、実施例2と同様にして、実施例7の印刷物を得た。
【0096】
(実施例8)
実施例2において、発泡抑制液Aとしての多官能モノマー(1,6-ヘキサンジオールジアクリレート)を、発泡抑制液Bとしての単官能モノマー(イソボルニルアクリレート(巴工業株式会社製)とした以外は、実施例2と同様にして、実施例8の印刷物を得た。
【0097】
(実施例9)
実施例2において、
図6に示す印刷物の製造装置を用い、体積膨張抑制液用ヘッド11aの下流に活性エネルギー線照射装置17aを配置し、更に下流に下記の市販の白インクを中間層塗布ローラー23に配置し、ブラック用、シアン用、マゼンタ用、及びイエロー用の色材組成物A1~A4を、下記の市販のソルベントUVインクE1~E4に代え、イエロー用ヘッド15の下流に活性エネルギー線照射装置17bを配置し、更に下流に加熱装置18、下記のトップコート用インクT1を吐出するトップコート用ヘッド11b、及び活性エネルギー線照射装置17cを配置した以外は、実施例2と同様にして、印刷物を作製した。
【0098】
<中間層塗工液>
・白インク(ミマキ株式会社製、SS21)
【0099】
<ソルベントUVインクE1~E4>
・シアン用ソルベントUVインクE1(ミマキ株式会社製、SU100-60-C)
・マゼンタ用ソルベントUVインクE2(ミマキ株式会社製、SU100-60-M)
・イエロー用ソルベントUVインクE3(ミマキ株式会社製、SU100-60-Y)
・ブラック用ソルベントUVインクE4(ミマキ株式会社製、SU100-60-K)
【0100】
<トップコート用インクT1>
トップコート用インクT1(ミマキ株式会社製、LUS17-CL-BA)
【0101】
(比較例1)
実施例1において、硬化型組成物Aを下記の硬化型組成物Dに変更した以外は、実施例1と同様にして、印刷物の製造を行った。
【0102】
<硬化型組成物Dの調製>
イソボルニルアクリレート(巴工業株式会社製)90質量部、及びトリメチロールプロパントリアクリレート(巴工業株式会社製)10質量部を撹拌することにより、硬化型組成物Dを調製した。
【0103】
次に、得られた実施例1~9及び比較例1の各印刷物について、以下のようにして、凹凸形状による意匠性及び画像品質の耐久性を評価した。結果を表1に示した。
【0104】
<凹凸形状による意匠性>
得られた印刷部を目視、手触りにより体積膨張抑制液の塗布パターン対して凹凸形状による意匠性がどの程度あるかを、下記基準で評価した。
[評価基準]
A:体積膨張抑制液塗布パターンと凹凸形状が一致しており、凹凸差が目視だけで明確に確認できる
B:体積膨張抑制液塗布パターンと凹凸形状が一致しており、凹凸差が目視だけで見える
C:体積膨張抑制液塗布パターンに対する凹凸形状が目視ではわからないが、手触りによって一致していると感じる
D:体積膨張抑制液塗布パターンに対する凹凸形状が目視、手触りでも凹凸形状があること判断できない
【0105】
<凹凸形状による意匠性及び画像品質の耐久性の評価方法>
得られた印刷物表面をカッターにより傷をつけた後、水、エタノール、アセトン、トルエンを吹き付け12時間放置した後、紙で印刷物表面を10回擦り、摩擦後の画像部、体積膨張状態の程度を顕微鏡及び目視観察し、下記基準で凹凸形状による意匠性及び画像品質の耐久性を判定した。
[評価基準]
A:画像部の滲み、体積膨張層の基材からの剥離が発生せず非常に良好なレベル
B:画像部の滲み、体積膨張層の基材からの剥離がほとんど発生せず良好なレベル
C:画像部の滲み、体積膨張層の基材からの剥離がやや発生したが、実施可能なレベル
D:画像部の滲みが擦過部位全体に広がり、体積膨張層の剥離も擦過部位全体に広がっており、実施不可能なレベル
【0106】
【表1】
*表1中の比較例1の「-」は、体積膨張層が体積膨張せず、凹凸形状による意匠性が付与されていなかったことを示す。
【0107】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 体積膨張剤及び重合性化合物を含有する硬化型組成物を付与して体積膨張層を形成する体積膨張層形成工程と、
色材を含有する色材組成物を付与して色材層を形成する色材層形成工程と、
前記体積膨張層及び前記色材層に対してエネルギーを付与するエネルギー付与工程と、
を含むことを特徴とする印刷物の製造方法である。
<2> 前記エネルギーが熱又は活性エネルギー線であり、前記エネルギーが活性エネルギー線である場合には、
更に前記体積膨張層を加熱して体積を膨張させる体積膨張工程を含む前記<1>に記載の印刷物の製造方法である。
<3> 前記体積膨張剤が、熱膨張性マイクロカプセル及び熱分解性体積膨張剤の少なくともいずれかである前記<1>から<2>のいずれかに記載の印刷物の製造方法である。
<4> 前記体積膨張層の平均厚みが100μm以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載の印刷物の製造方法である。
<5> 前記色材組成物がインクジェット方式で付与される前記<1>から<4>のいずれかに記載の印刷物の製造方法である。
<6> 前記体積膨張層を体積膨張させる箇所以外に体積膨張抑制液を付与する体積膨張抑制液付与工程を含む前記<1>から<5>のいずれかに記載の印刷物の製造方法である。
<7> 前記体積膨張抑制液が多官能重合性化合物である前記<6>に記載の印刷物の製造方法である。
<8> 前記体積膨張抑制液がインクジェット方式で付与される前記<6>から<7>のいずれかに記載の印刷物の製造方法である。
<9> 前記硬化型組成物が活性エネルギー線硬化型組成物である前記<1>から<8>のいずれかに記載の印刷物の製造方法である。
<10> 前記色材組成物が重合性化合物を含有する前記<1>から<9>のいずれかに記載の印刷物の製造方法である。
<11> 基材上に体積膨張層及び色材層を形成し、前記基材が建築用材料である前記<1>から<10>のいずれかに記載の印刷物の製造方法である。
<12> 体積膨張剤及び重合性化合物を含有する硬化型組成物を付与して体積膨張層を形成する体積膨張層形成手段と、
色材を含有する色材組成物を付与して色材層を形成する色材層形成手段と、
前記体積膨張層に対してエネルギーを付与するエネルギー付与手段と、
を有することを特徴とする印刷物の製造装置である。
<13> 前記エネルギー付与手段が前記体積膨張層及び前記色材層に対してエネルギーを付与する手段である前記<12>に記載の印刷物の製造装置である。
<14> 前記エネルギーが熱又は活性エネルギー線であり、前記エネルギーが活性エネルギー線である場合には、
更に前記体積膨張層を加熱して体積を膨張させる体積膨張手段を有する前記<12>から<13>のいずれかに記載の印刷物の製造装置である。
<15> 前記体積膨張剤が、熱膨張性マイクロカプセル及び熱分解性体積膨張剤の少なくともいずれかである前記<12>から<14>のいずれかに記載の印刷物の製造装置である。
<16> 前記体積膨張層を体積膨張させる箇所以外に体積膨張抑制液を付与する体積膨張抑制液付与手段を有する前記<12>から<15>のいずれかに記載の印刷物の製造装置である。
<17> 前記体積膨張抑制液が多官能重合性化合物である前記<16>に記載の印刷物の製造装置である。
<18> 体積膨張剤及び重合性化合物を含有する硬化型組成物と、
色材を含有する色材組成物と、
多官能重合性化合物である体積膨張抑制液と、
を含むことを特徴とする印刷用セットである。
<19> 体積膨張剤及び重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型組成物と、
活性エネルギー線重合性化合物及び色材を含有する色材組成物と、
多官能の活性エネルギー線重合性化合物である体積膨張抑制液と、
を含む前記<18>に記載の印刷用セットである。
<20> 体積膨張剤及び重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型組成物と、
活性エネルギー線重合性化合物及び色材を含有する色材組成物と、
多官能活性エネルギー線重合性化合物と単官能活性エネルギー線化合物との混合物である体積膨張抑制液と、
を含む前記<18>に記載の印刷用セットである。
<21> 前記体積膨張剤が、熱膨張性マイクロカプセル及び熱分解性体積膨張剤の少なくともいずれかである前記<18>から<20>のいずれかに記載の印刷用セットである。
<22> 前記色材組成物が重合性化合物を含有する前記<19>から<21>のいずれかに記載の印刷用セットである。
【0108】
前記<1>から<11>のいずれかに記載の印刷物の製造方法、前記<12>から<17>のいずれかに記載の印刷物の製造装置、及び前記<18>から<22>のいずれかに記載の印刷用セットによると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0109】
10 塗布ローラー
11 体積膨張抑制液用ヘッド
12 ブラック用ヘッド
13 シアン用ヘッド
14 マゼンタ用ヘッド
15 イエロー用ヘッド
16 吐出ヘッド
17 活性エネルギー線照射装置
18 加熱装置
19 基材
20 搬送ベルト
21 送り出しローラー
22 巻取りローラー
27 活性エネルギー線照射装置
37 活性エネルギー線照射装置
47 活性エネルギー線照射装置
100 印刷物の製造装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0110】