IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

特許7392514室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及び物品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及び物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20231129BHJP
   C08L 83/00 20060101ALI20231129BHJP
   C08K 5/541 20060101ALI20231129BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231129BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20231129BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231129BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20231129BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20231129BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231129BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C08L83/06
C08L83/00
C08K5/541
C08K3/04
C09D183/04
C09D7/61
C09D7/63
C09J11/04
C09J11/06
C09J183/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020030299
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021134259
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 美早紀
(72)【発明者】
【氏名】坂本 隆文
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-043282(JP,A)
【文献】特開2003-073553(JP,A)
【文献】特開平05-098160(JP,A)
【文献】特開2014-021231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)及び/又は(2)で示されるオルガノポリシロキサン:100質量部、
【化1】
(式中、R1は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、nは10以上の整数である。)
【化2】
(式中、R1及びnは上記の通りであり、R2は炭素数1~6の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、Aは炭素数2~4のアルキレン基又は酸素原子であり、aは独立に0又は1である。)
(B)下記一般式(3)で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物:0.1~30質量部、
【化3】
(式中、R3は独立に炭素数1~12のアルキル基、ビニル基及びフェニル基から選択される一価炭化水素基であり、Xは独立にアルコキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基及びケトオキシム基から選択される基であり、bは2又は3である。)
(C)硬化触媒:0.01~20質量部、
(D)接着促進剤:0.001~30質量部、及び
(E)pHが2~5のファーネスブラック:0.1~500質量部
を含有し、下記一般式
【化4】
(式中、R 1' は同一または異種の非置換または置換の一価炭化水素基を、R 2' はアリール基およびアラルキル基から選ばれる一価基を、R 3' は非置換または置換の一価炭化水素基であって、R 2' がアリール基の場合には炭素数が2以上のアルキル基を示し、n’およびm’はn’+m’が5~1000の範囲の数である)
で表され、かつ前記R 2' 基を含むSiO単位を少なくとも5mol%含有するシリコーンオイルを含有しないものである室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
分散安定性試験において、回転数4,000rpm、遠心分離時間300分のとき、分離率が10%以下である請求項1に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を含有するシール剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を含有するコーティング剤。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を含有する接着剤。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなる成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンブラックの分散性に優れる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(室温硬化性シリコーンゴム組成物)、及び該室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を含有するシール剤、コーティング剤又は接着剤、並びに該室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化して得られるエラストマーの成形物(シリコーンゴム硬化物)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
室温(23℃±10℃)で大気中の湿気により架橋する室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物は、その取り扱いが容易な上、耐候性や電気特性に優れているため、建材用のシーリング材、電気電子分野での接着剤など様々な分野で使用されている。これらのシリコーンゴムを黒色に着色する際、カーボンブラックが着色剤として設計される場合が多い。
【0003】
これらのシリコーンオイル成分(ベースポリマーである液状のジオルガノポリシロキサン成分や可撓性付与剤としての無官能ジオルガノポリシロキサン成分等)とカーボンブラックが均一に分散してなる硬化(架橋)前の室温硬化性(RTV)オルガノポリシロキサン組成物は、チューブやカートリッジなどの小型容器あるいはペール缶やドラム缶などの大型容器など、多種多様の荷姿に充填される。これらの容器に充填された室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、容器内で混合されず充填されたままの状態で保持されることが殆どであるため、使用時にも充填時と同じ状態を保つ必要がある。室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を使用するタイミングは様々であるため、長期に亘り安定した組成物を設計する必要がある。特にカーボンブラックを含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、経時での該室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物からのシリコーンオイル成分(ベースポリマーである液状のジオルガノポリシロキサン成分や可撓性付与剤としての無官能ジオルガノポリシロキサン成分等)の分離・析出が問題となることがある。
なお、本発明に関連する従来技術として、下記文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-073553号公報
【文献】特開昭58-189253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、従来の室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物では達成できなかった、カーボンブラックの分散性に優れる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物並びに該組成物の硬化物(シリコーンゴム)を有する物品などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意努力を行った結果、組成物中に配合するカーボンブラックとして、例えば粒子表面に酸化処理を施す等の手段によって粒子表面に酸素含有官能基を形成させることによりpHが7より小さい領域(即ち、酸性領域)としたファーネスブラックを選択的に使用して、該酸性のファーネスブラックを、ジオルガノポリシロキサン(ベースポリマー)と硬化剤(架橋剤)として加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物とを含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に配合することにより、該組成物中でのカーボンブラックが長期間の分散安定性に優れることを見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及び該組成物を含有するシール剤、コーティング剤又は接着剤、並びに該組成物の硬化物からなる成形物等を提供するものである。
[1]
(A)下記一般式(1)及び/又は(2)で示されるオルガノポリシロキサン:100質量部、
【化1】
(式中、R1は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、nは10以上の整数である。)
【化2】
(式中、R1及びnは上記の通りであり、R2は炭素数1~6の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、Aは炭素数2~4のアルキレン基又は酸素原子であり、aは独立に0又は1である。)
(B)下記一般式(3)で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物:0.1~30質量部、
【化3】
(式中、R3は独立に炭素数1~12のアルキル基、ビニル基及びフェニル基から選択される一価炭化水素基であり、Xは独立にアルコキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基及びケトオキシム基から選択される基であり、bは2又は3である。)
(C)硬化触媒:0.01~20質量部、
(D)接着促進剤:0.001~30質量部、及び
(E)pHが2~5のファーネスブラック:0.1~500質量部
を含有し、下記一般式
【化4】
(式中、R 1' は同一または異種の非置換または置換の一価炭化水素基を、R 2' はアリール基およびアラルキル基から選ばれる一価基を、R 3' は非置換または置換の一価炭化水素基であって、R 2' がアリール基の場合には炭素数が2以上のアルキル基を示し、n’およびm’はn’+m’が5~1000の範囲の数である)
で表され、かつ前記R 2' 基を含むSiO単位を少なくとも5mol%含有するシリコーンオイルを含有しないものである室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

分散安定性試験において、回転数4,000rpm、遠心分離時間300分のとき、分離率が10%以下である[1]に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

[1]又は[2]に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を含有するシール剤。

[1]又は[2]に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を含有するコーティング剤。

[1]又は[2]に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を含有する接着剤。

[1]又は[2]に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなる成形物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、所定のカーボンブラックを(E)成分として含有する。これにより本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、カーボンブラックの分散性に優れ、分散安定性試験において、回転数4,000rpm、遠心分離時間300分のとき、分離率が10%以下である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳しく説明する。
[(A)成分]
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の(A)成分は、下記一般式(1)及び/又は(2)で示される直鎖状のジオルガノポリシロキサンであり、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物において主剤(ベースポリマー)として作用するものである。該オルガノポリシロキサンは室温(23℃±10℃)において液状であることが好ましい。
【化4】
(式中、R1は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、nは10以上の整数である。)
【化5】
(式中、R1及びnは上記の通りであり、R2は炭素数1~6の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、Aは炭素数2~4のアルキレン基又は酸素原子であり、aは独立に0又は1である。)
【0010】
式(1)、(2)中、R1は炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;及びこれらの基の水素原子が部分的にハロゲン原子で置換された基、例えば3,3,3-トリフルオロプロピル基等である。これらの中では、特にメチル基、フェニル基が好ましい。式(1)、(2)中の複数のR1は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0011】
また式(1)、(2)中のnは10以上の整数であり、特にジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が25~500,000mPa・sの範囲、好ましくは500~100,000mPa・sの範囲となる整数であることが好ましい。なお、本発明において、粘度は、例えば、回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメータ等)により測定することができる(以下、同じ)。
なお、上記式(1)、(2)中において、2官能性のジオルガノシロキサン単位((R12SiO2/2)の繰り返し数(又は重合度)を示すnの値は、10以上の整数であるが、通常は、10~2,000の整数、好ましくは50~1,200の整数、より好ましくは100~1,000程度の整数であればよい。なお、本発明において重合度は、例えば、トルエン等を展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
【0012】
また、式(2)中のR2は炭素数1~6の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基等のアルケニル基;フェニル基等が挙げられるが、特にメチル基が好ましい。
Aは炭素数2~4のアルキレン基又は酸素原子であり、アルキレン基としては、エチレン基(-CH2CH2-)、プロピレン基(トリメチレン基;-CH2CH2CH2-、メチルエチレン基;-CH(CH3)CH2-)、テトラメチレン基(-CH2CH2CH2CH2-)等が挙げられる。Aとしては、エチレン基(-CH2CH2-)、トリメチレン基(-CH2CH2CH2-)、酸素原子が好ましい。
aは独立に0又は1であり、特に0が好ましい。
(A)成分は、1種又は2種以上の混合物であってもよい。
【0013】
[(B)成分]
(B)成分は、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物において硬化剤(架橋剤)として作用するものであり、下記一般式(3)で示される、ケイ素原子に結合した加水分解性基として、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基及びケトオキシム基から選択される基を1分子中に2個以上(2個又は3個、好ましくは3個)有し、かつケイ素原子に結合した残余の基が炭素数1~12のアルキル基、ビニル基及びフェニル基から選択される一価炭化水素基である加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物(即ち、該加水分解性オルガノシラン化合物を部分的に加水分解・縮合して得られる、分子中に残存加水分解性基を平均2個以上、好ましくは3個以上有するオルガノシロキサンオリゴマー)である。
【化6】
(式中、R3は独立に炭素数1~12のアルキル基(好ましくは炭素数1~10のアルキル基)、ビニル基及びフェニル基から選択される一価炭化水素基であり、Xは独立にアルコキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基及びケトオキシム基から選択される基であり、bは2又は3である。)
【0014】
式(3)中のR3における炭素数1~12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられるが、これらのうち炭素数1~10のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、デシル基がより好ましい。
式(3)中のX、即ち(B)成分の加水分解性オルガノシラン化合物及びその部分加水分解物が有する加水分解性基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基などの炭素数1~4のアルコキシ基、アセトキシ基、プロピオノキシ基等の炭素数2~4のアシルオキシ基、ビニロキシ基、アリロキシ基、プロペノキシ基、イソプロペノキシ基等の炭素数2~4のアルケニルオキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、メチルイソブチルケトオキシム基などの炭素数3~8のケトオキシム基等が挙げられ、アルコキシ基、イソプロペノキシ基が好ましい。
bは2又は3であり、好ましくは3である。
なお、(B)成分は、一般式(3)において加水分解性基X以外にケイ素原子に結合するR3が、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含有する官能性基を含まない非置換の一価炭化水素基である点において、通常、接着性付与剤等として配合されるいわゆるシランカップリング剤などのカーボンファンクショナル加水分解性オルガノシラン化合物(CFシラン化合物)とは明確に区別されるものである。
【0015】
(B)成分の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシランなどのアセトキシシラン等のアシルオキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、エチルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、フェニルトリイソプロペノキシシランなどのイソプロペノキシシラン等のアルケニルオキシシラン、メチルトリス(ジメチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、エチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン等のケトオキシムシラン、並びにこれらのシランの部分加水分解縮合物が挙げられる。
(B)成分は、1種又は2種以上の混合物であってもよい。
【0016】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1~30質量部、好ましくは0.5~20質量部、特に好ましくは1~15質量部の範囲で使用される。0.1質量部未満では、十分な架橋性(硬化性)が得られず、目的とするゴム弾性を有する硬化物(シリコーンゴム)を与える組成物が得難い。また30質量部を超えると、得られる硬化物(シリコーンゴム)は機械特性が低下し易い。
【0017】
[(C)成分]
(C)成分は、硬化触媒であり、(C-1)非金属系有機触媒及び/又は(C-2)金属系触媒が挙げられる。
【0018】
(C-1)非金属系有機触媒は特に制限されないが、縮合硬化型オルガノポリシロキサン組成物の硬化促進剤として公知のものを使用することができる。例えば、N,N,N’,N’,N'',N''-ヘキサメチル-N'''-(トリメチルシリルメチル)-ホスホリミディックトリアミド等のホスファゼン含有化合物;ヘキシルアミン、リン酸ドデシルアミン等のアミン化合物又はその塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の第4級アンモニウム塩;ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン;N,N,N’,N’-テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、N,N,N’,N’-テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、N,N,N’,N’-テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有するシラン及びシロキサン等が挙げられる。また、非金属系有機触媒は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0019】
(C-2)金属系触媒は特に制限されないが、縮合硬化型オルガノポリシロキサン組成物の硬化触媒として公知のものを使用することができる。例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエート、ジオクチルスズジネオデカノエート、ジ-n-ブチル-ジメトキシスズ等のアルキルスズエステル化合物;テトライソプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル又はチタンキレート化合物;ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛-2-エチルオクトエート;アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブチレートなどのアルコレートアルミニウム化合物;アルミニウムアルキルアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート等のアルミニウムキレート化合物;ネオデカン酸ビスマス(III)、2-エチルヘキサン酸ビスマス(III)、クエン酸ビスマス(III)、オクチル酸ビスマス、鉄-2-エチルヘキソエート、コバルト-2-エチルヘキソエート、マンガン-2-エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト等の有機金属化合物;酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、シュウ酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩が挙げられる。金属系触媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0020】
(C)成分の硬化触媒の配合量は少量の触媒量でよい。(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.01~20質量部であり、特に0.05~10質量部が好ましく、更に0.05~5質量部が好ましい。(C)成分の配合量が0.01質量部未満であると良好な硬化性を得ることができないため、硬化速度が遅くなる不具合を生じる。20質量部を超えると、組成物の硬化速度が速すぎるため、組成物塗布後の作業できる時間が短くなったり、得られるゴムの機械特性が低下したりするおそれがある。
【0021】
[(D)成分]
(D)成分は、接着促進剤として配合されるシランカップリング剤である。(D)成分の接着促進剤としては、公知のシランカップリング剤が好適に使用される。
シランカップリング剤の例としては、炭素官能性基含有加水分解性シラン(いわゆるカーボンファンクショナルシラン)等が好適に使用され、(メタ)アクリルシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤、イソシアネートシランカップリング剤、イソシアヌレートシランカップリング剤などが例示される。具体的には、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン;β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン(ただし、グアニジル基含有加水分解性シランを除く);γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン;γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネートシラン;下記式で示される化合物等のイソシアヌレートシランなど、並びにこれらが部分的に加水分解され縮合した化合物が例示される。
【化7】
(式中、Meはメチル基である。)
【0022】
これらの(D)成分の具体例の内、特にγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;イソシアネートシラン;イソシアヌレートシランが好ましい。
【0023】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.001~30質量部であり、特に0.1~20質量部配合することが好ましい。(D)成分の配合量が0.001質量部より少ないと、本発明の組成物から形成される硬化物に十分な接着性を与えることができない。また(D)成分の配合量が30質量部より多いと経済的に不利となるばかりでなく、組成物の保存安定性が悪くなる。
【0024】
[(E)成分]
(E)成分は、pHが7より小さいファーネスブラックであり、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物における特徴となる成分である。
(E)成分のpHは7より小さいもの(酸性領域)であればよいが、好ましくはpHが5以下、より好ましくはpHが4以下であることが望ましい。なお、(E)成分のpHの下限は特に制限されないが、pH2以上であることが好ましい。pHが7以上の場合、該ファーネスブラックはオルガノポリシロキサン組成物中への分散性が悪く、均一に分散させ難くなる。そのため経時でのオルガノポリシロキサン組成物におけるファーネスブラックの沈降が発生する。
当該pHは、ファーネスブラック粒子の表面上のpHを示す指標で、ファーネスブラックを蒸留水(pH7.0)中に添加し、pHをガラス電極pHメーターで測定することによって求めることができる。
なお、(E)成分の分散安定性は、pHが7より小さいファーネスブラックに特有のものであって、たとえpHが7より小さい酸性領域を示すカーボンブラックであっても、ファーネスブラック以外のカーボンブラック(例えば、pHが2~5程度の酸性領域を示すチャンネルブラック等)では、優れた長期分散安定性は得られない。
【0025】
pHが7より小さいファーネスブラックは、種々のカーボンブラックの中でも特異的に、未硬化の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物中での分散安定性に優れるため、長期間の保存後であっても室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物における経時でのファーネスブラックの沈降(ファーネスブラックとシリコーンオイル成分との分離)が起こらない。室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物中における上記の分散安定性は、(E)成分である酸性のファーネスブラックに特有のものであって、たとえpHが酸性領域を示すカーボンブラックであっても、ファーネスブラック以外のカーボンブラック(例えば、pHが2~5程度の酸性領域を示すチャンネルブラック等)では、(E)成分の優れた長期分散安定性(即ち、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の長期保存安定性)は得られないものである。
従って、(E)成分の特定のファーネスブラックを選択的に組成物中に所定量配合したカーボンブラック含有の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、特異的に長期間の保存安定性に優れるものである。
【0026】
(E)成分の製造方法としては、例えば表面未処理のファーネスブラック(通常、pHが7~10程度)の粒子表面に酸化処理を施す等の手段によって該粒子表面に酸素含有官能基を形成させることにより、pHが7より小さい領域(即ち、酸性領域)としたファーネスブラックを得ることができる。
【0027】
酸化処理の方法としては、空気接触による酸化法では窒素酸化物やオゾンとの反応による気相酸化法、また、硝酸、過マンガン酸カリウム、重クロム酸カリウム等の酸化剤を用いる液相法等が挙げられる。(E)成分の製造方法は、上記の所定のpH領域を示すファーネスブラックを製造できる限り、上記に例示する方法に限定されない。
【0028】
酸素含有官能基とは、親水性の官能基であり、通常、ファーネスブラックの粒子表面を酸化処理することで形成されるものであり、具体的にはヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エーテル基等が挙げられる。これらの種々の酸素含有官能基が1種又は2種以上、全体として混在して表面に存在することにより、通常、表面未処理の状態ではpHが7~10程度の塩基性領域を示すファーネスブラックが、pH7未満、好ましくはpH2~5程度、より好ましくはpH2~4程度の酸性領域を示すものと考えられる。
【0029】
(E)成分の吸油量(OAN)は、好ましくは30~200g/100gであり、30~150g/100gがより好ましい。当該吸油量(OAN)は、ASTM D 2414に準拠し、ファーネスブラックのストラクチャーの発展度合いを示す指標で、パラフィン油などを所定量のファーネスブラックに添加し、最大粘度に達した際のパラフィン油の滴下量により評価できる。ファーネスブラック100gあたりの吸油量が30g未満の場合、ファーネスブラックのストラクチャーの発展度合いが低く、経時で凝集してしまうおそれがある。上記の吸油量が200gを超える場合、ファーネスブラックは分散性が悪く、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物中に均一に分散させ難くなるおそれがある。そのため室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の粘度が高くなり、作業性が悪くなる場合がある。
【0030】
(E)成分のBET比表面積は、好ましくは650m2/g以下であり、5~300m2/gがより好ましい。(E)成分のBET比表面積は、ASTM D 6556に準拠して、ファーネスブラックの表面に窒素を吸着させることによって測定できる。BET比表面積が650m2/gを超える場合、ファーネスブラックを組成物中に均質に分散させ難くなるおそれがある。
【0031】
(E)成分の平均一次粒径は、好ましくは10~300nmであり、20~290nmがより好ましい。(E)成分の平均一次粒径は、ファーネスブラックを電子顕微鏡にて測定し、測定値から算出した平均値と定義される。当該平均一次粒径が10nm未満の場合、分散性はよいが、2次凝集を起こし易くなる。300nmを超える場合、分散性が悪くなり、組成物中に均一に分散させ難くなるおそれがある。
【0032】
(E)成分のファーネスブラックとしては、市販品を用いることができ、例えば、旭カーボン株式会社製のファーネスブラックSBXシリーズ(SBX55、SBX45、SBX25)、三菱ケミカル株式会社製のファーネスブラックMA8等を使用し得る。
(E)成分は、1種単独でも2種以上を混合して使用してもよい。
【0033】
(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1~500質量部であり、0.1~100質量部であることがより好ましい。(E)成分を500質量部よりも多量に配合すると、組成物の粘度が増大して作業性が悪くなるばかりでなく、硬化後のゴム強度が低下してゴム弾性が得難くなる。(E)成分の配合量が0.1質量部より少ないと、得られる硬化物の黒色度を十分高くすることができない。
【0034】
(E)成分は分散性に優れるため、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物における該ファーネスブラックの配合量が多くても、また室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の粘度が小さくても、経時での室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物におけるファーネスブラックの沈降が起こらない。
【0035】
[その他の成分]
また、本発明には上記成分以外に、一般的に知られている充填剤を配合してもよい。この充填剤は、補強性を増す作用をするものである。
充填剤としては、煙霧質シリカ、湿式シリカ、沈降性シリカ、炭酸カルシウム等の補強性充填剤、ガラスビーズ、ガラスバルーン、樹脂ビーズ、樹脂バルーンなどが挙げられる。これらの充填剤は表面処理されていなくても、公知の処理剤で表面処理されていてもよい。
公知の処理剤としては、例えば、特開2000-256558号公報記載の加水分解性基含有ポリシロキサンが好ましいが、これに限定されるものではない。
これらの充填剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して100質量部以下(0~100質量部)、好ましくは50質量部以下(0~50質量部)、特に好ましくは30質量部以下(0~30質量部)である。
【0036】
また上記成分以外に、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の添加剤として公知の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。例えば、チキソトロピー向上剤としてのポリエーテル、可塑剤としての非反応性ジメチルシリコーンオイル(両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン)、イソパラフィン、架橋密度向上剤としてのトリメチルシロキシ((CH33SiO1/2)単位とSiO2単位とからなる3次元網状ポリシロキサン等が挙げられる。
【0037】
更に、必要に応じて、顔料、染料、蛍光増白剤等の着色剤、防かび剤、抗菌剤、ブリードオイルとしての非反応性フェニルシリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、シリコーンと非相溶の有機液体等の表面改質剤、トルエン、キシレン、溶剤揮発油、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、低沸点イソパラフィン等の溶剤も、本発明の目的を損なわない範囲で添加してよい。
【0038】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、例えば、上記(A)~(E)成分、及び必要に応じてその他の成分を、プラネタリミキサー、品川ミキサー等の公知の混合機を用いて湿気を遮断した状態(乾燥雰囲気中や減圧下)で常法に準じて均一に混合することにより調製することができる。
また、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、25℃における粘度が50~100,000mPa・s、特に500~100,000mPa・s程度であることが好ましい。
【0039】
このようにして得られた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、分散安定性試験において、回転数4,000rpm、遠心分離時間300分のとき、分離率が10%以下であることが好ましく、特には1%以下であることが好ましい。該分離率が10%を超えると長期間(10か月又はそれ未満)の静置保管条件下においても組成物中でカーボンブラックが分離する場合がある。なお、本発明において、分散安定性試験による分離率の測定は、組成物保管時におけるカーボンブラックの分離状態及び程度を評価するものであって、特開2018-77165号公報に記載された方法により行うことができ、具体的には、下記手順により行うことができる。
【0040】
(手順1)本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を波長865nmの測定光の透過する遠心分離セル(ポリアミド樹脂製やポリカーボネート製の筒状の透明容器)の中に入れる。
(手順2)該室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が入った遠心分離セルを300分間、回転数4,000rpmで高速遠心回転させ、長期保管の促進試験を行う。
(手順3)300分間高速遠心分離した後に更に高速遠心回転を継続し、この高速遠心回転中に、遠心分離セルには波長865nmの測定光を照射しつづけ、遠心分離セルの遠心方向に沿った波長865nmの測定光の透過率をプロファイルとして測定する。
測定に際しては、上記測定領域の遠心分離セルに対して所定位置(例えば、上方)から波長865nmの測定光を該測定領域に照射し、該遠心分離セルの照射側とは反対側に配置した受光素子(例えば、CCDセンサ)で遠心分離セルの遠心方向の位置ごとに遠心分離セルを透過した光を受光してその透過光量を検知し、透過率を測定することを行う。このとき、測定領域に対して遠心方向に線状の測定光を一度に照射してもよいし、測定領域に対して点状の測定光を遠心方向に走査しながら照射するようにしてもよい。
なお、300分間高速遠心分離した直後に回転を停止した状態で上記プロファイルを得る測定を行ってもよい。
(手順4)透過率プロファイルにおいて特定される室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が存在しない空間部分の波長865nmの測定光の透過率(X0)に対する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物における分離成分部分の波長865nmの測定光の透過率(X1)の相対値である分離率Y(%)=(X1/X0)×100を室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の分散安定性の指標とする。
【0041】
なお、分離率を上記値とするためには、(E)成分のファーネスブラックのpHが7より小さいことが必須であり、好ましくは、更に(E)成分の吸油量(OAN)が30~200g/100gであり、BET比表面積が650m2/g以下であり、平均一次粒径が10~300nmであることが望ましい。
【0042】
また、得られた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、例えば室温(23℃±10℃)で放置することにより硬化するが、その成形方法、硬化条件などは、組成物の種類に応じた公知の方法、条件を採用することができ、例えば、23℃/50%RHの条件下で大気中に数時間~数日間(例えば、6時間~7日間)程度静置することにより硬化させることができる。
【0043】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、カーボンブラックの分散性に優れることから、シール剤、コーティング剤、接着剤、及び該組成物の硬化物からなる成形物等として好適に用いることができる。特に、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、金属基板のコーティング剤として好適に使用し得る。
【実施例
【0044】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、下記例において、粘度は25℃において回転粘度計により測定した値である。
【0045】
[実施例1]
分子鎖両末端がシルエチレン基を介してトリメトキシシリル基で封鎖され、25℃における粘度が600mPa・sのジメチルポリシロキサン(一般式(2)において、R1=R2=メチル基、A=-CH2CH2-、a=0、n=約180に相当する、以下同じ)を45質量部と、pHが3.0のファーネスブラック(旭カーボン株式会社製 SBX55、吸油量:77g/100g、BET比表面積:84m2/g、平均一次粒径:25nmのファーネスブラック)10質量部を20分混合した後、3本ロールに3回通し、分子鎖両末端がシルエチレン基を介してトリメトキシシリル基で封鎖され、25℃における粘度が600mPa・sのジメチルポリシロキサン45質量部を添加し、20分混合した後、減圧条件(-0.08MPa以下、以下同じ)下で20分混合し、ベース1を得た。
次いで、このベース1を4質量部と、分子鎖両末端がシルエチレン基を介してトリメトキシシリル基で封鎖され、25℃における粘度が600mPa・sのジメチルポリシロキサン26.4質量部を減圧条件下30分混合した。次いで、分子鎖両末端がシルエチレン基を介してトリメトキシシリル基で封鎖され、25℃における粘度が600mPa・sのジメチルポリシロキサン30質量部を減圧条件下20分混合した。次いで、分子鎖両末端がシルエチレン基を介してトリメトキシシリル基で封鎖され、25℃における粘度が600mPa・sのジメチルポリシロキサン40質量部と、25℃における粘度が300mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン3.6質量部を減圧条件下20分混合した。次いで、デシルトリメトキシシラン1質量部と、下記式(4)で示される化合物1.5質量部を加えて常圧下10分攪拌した後、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)2質量部を加え、常圧下10分攪拌した後、減圧条件下30分混合して粘度が800mPa・sの組成物1を得た。
【化8】
(式中、Meはメチル基である。)
【0046】
[実施例2]
分子鎖両末端がトリメトキシシリル基で封鎖され、25℃における粘度が900mPa・sのジメチルポリシロキサン(一般式(2)において、R1=R2=メチル基、A=酸素原子、a=0、n=約210に相当する、以下同じ)を20質量部と、pHが3.0のファーネスブラック(旭カーボン株式会社製 SBX55、吸油量:77g/100g、BET比表面積:84m2/g、平均一次粒径:25nmのファーネスブラック)10質量部と、25℃における粘度が100mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン15質量部と、湿式シリカ0.5質量部を減圧条件下にて150℃/2時間熱処理混合した。熱処理後、3本ロールに3回通し、ベース2を得た。
次いで、このベース2を44.7質量部と、分子鎖両末端がトリメトキシシリル基で封鎖され、25℃における粘度が900mPa・sのジメチルポリシロキサン80.4質量部を減圧条件下15分混合した。次いで、デシルトリメトキシシラン5.5質量部と、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)4.0質量部と、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1.4質量部と、テトラ-n-ブトキシチタン0.7質量部を加え、減圧条件下20分混合して粘度が1,100mPa・sの組成物2を得た。
【0047】
[比較例1]
実施例1に記載のpHが3.0のファーネスブラック10質量部に代えて、表面に酸化処理をしていないファーネスブラック(旭カーボン株式会社製 SB335、pH:7.5、吸油量:113g/100g、BET比表面積:68m2/g、平均一次粒径:31nmのファーネスブラック)10質量部を用いること以外は、実施例1と同様にして粘度が800mPa・sの組成物3を得た。
【0048】
[比較例2]
実施例2に記載のpHが3.0のファーネスブラック10質量部に代えて、表面に酸化処理をしていないファーネスブラック(旭カーボン株式会社製 SB335、pH:7.5、吸油量:113g/100g、BET比表面積:68m2/g、平均一次粒径:31nmのファーネスブラック)10質量部を用いること以外は、実施例2と同様にして粘度が1,100mPa・sの組成物4を得た。
【0049】
[比較例3]
実施例1に記載のpHが3.0のファーネスブラック10質量部に代えて、表面に酸化処理をしていないチャンネルブラック(Orion社製 Printex V、pH:4.5、吸油量:115g/100g、BET比表面積:92m2/g、平均一次粒径:25nm)10質量部を用いること以外は、実施例1と同様にして粘度が900mPa・sの組成物5得た。
【0050】
なお、上記ファーネスブラックは乾式酸化法により表面酸化処理されたものであり、またpH値は中和滴定法により測定したものである。
【0051】
調製した組成物1~5を用いて、以下の特性を測定した。
【0052】
[分散安定性]
調製した組成物1~5の分離率Y(%)を定量した。詳しくは、粒度分布・分散安定性分析装置(装置名;LUMiFuge、LUM社製)を用いて、各組成物を回転数4,000rpm/300分遠心分離させた後に遠心分離セルにおけるオルガノポリシロキサン組成物が存在しない空間部分から該組成物が存在する部分までの領域に波長865nmの測定光を照射し、該領域の遠心方向の位置ごとの透過率のプロファイルを測定し、これから該組成物が存在しない空間部分の波長865nmの測定光の透過率(X0)に対する該組成物における分離成分部分の波長865nmの測定光の透過率(X1)の相対値である分離率Y(%)=(X1/X0)×100を求めた。分離率Yが10%超の場合には対象のオルガノポリシロキサン組成物の分散安定性(保存性)が不良であり、10%以下の場合に対象のオルガノポリシロキサン組成物の分散安定性(保存性)が良好であると判定する。得られた結果を表1に示す。
【0053】
次に、組成物1~5をそれぞれ330mlのポリエチレン製筒状カートリッジに充填、密封し、23℃/50%RH条件下で直立させた状態で6か月保管した。6か月保管後、カートリッジの先端から組成物1~5を押し出し、分離成分の有無(シリコーンオイル成分(分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン)とカーボンブラックとの分離の程度)を目視にて確認した。その結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
[ゴム物性]
調製した組成物1~5について、調製直後(初期)、及び6か月保管後のそれぞれについて、23℃/50%RHの環境下に7日間暴露して硬化させ、厚さ3mmのシリコーンゴムシート(シリコーンゴム硬化物)を作製し、該シリコーンゴムシートについて、JIS K-6249に準拠してゴム物性(硬度(硬さ)、切断時伸び、引張強度(引張り強さ))を評価した。その結果を表2に示す。なお、6か月保管後において分離成分の存在が認められた組成物3~5(比較例1~3)については、再度振とう・攪拌して均一な組成物に戻してから硬化して作製したシリコーンゴムシートについてゴム物性を評価した。
【0056】
【表2】
【0057】
実施例1、2と比較例1~3との比較により、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は分散性に優れていることがわかった。また、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、汎用性の高い材料からなる配合で、工業的に有利に製造できるものである。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術思考と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術範囲に包含される。