(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】半導体ウェーハの反りの測定方法及び測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
G01B11/24 M
(21)【出願番号】P 2020163139
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 透
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-083939(JP,A)
【文献】特開平09-147107(JP,A)
【文献】特開平06-018242(JP,A)
【文献】特開平10-294287(JP,A)
【文献】特開2013-011569(JP,A)
【文献】特開2011-215013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱ランプを有するウェーハ処理装置内に載置した表面が鏡面仕上げされている半導体ウェーハに映る反射像を、前記半導体ウェーハの反りが無い状態で撮像した非反り時の画像と、反りが有る状態で撮像した反り時の画像とで比較して、前記半導体ウェーハの反りを測定する半導体ウェーハの反りの測定方法であって、
前記非反り時の画像において、前記反射像の中から目標物を複数選択し、該目標物を含む部分の画像である複数の非反り時の部分画像を取得し、
該複数の非反り時の部分画像の、前記非反り時の画像の中での位置を示す座標を測定し、
前記反り時の画像において、前記複数の非反り時の部分画像に、各々、最も一致度が高い部分の座標を測定して、複数の反り時の部分画像の位置を示す座標とし、
前記複数の非反り時の部分画像の座標を、各々、前記複数の反り時の部分画像の座標に一致させるよう座標変換を行い、
該座標変換の大きさから、前記半導体ウェーハの反りの大きさ及び方向を測定する
ものであり、前記加熱ランプのフィラメントを前記目標物とすることを特徴とする半導体ウェーハの反りの測定方法。
【請求項2】
前記座標変換を、前記複数の非反り時の部分画像の座標について、各々、第一の回転、拡大縮小、第二の回転、及び並進をすることによって行い、
前記第一の回転は、前記複数の非反り時の部分画像の前記拡大縮小のための方向を調整し、
前記拡大縮小は、前記第一の回転を行った前記複数の非反り時の部分画像同士の相対的な距離が、前記複数の反り時の部分画像同士の相対的な距離と一致するように行い、
前記第二の回転は、前記拡大縮小を行った前記複数の非反り時の部分画像を、前記第一の回転と同じ角度で逆方向に回転し、
前記並進は、前記第二の回転を行った前記複数の非反り時の部分画像の座標が、各々、前記複数の反り時の部分画像の座標に一致するよう平行移動し、
前記第一の回転の大きさから前記半導体ウェーハの反りの方向を測定し、
前記拡大縮小の大きさから前記半導体ウェーハの反りの大きさを測定することを特徴とする請求項
1に記載の半導体ウェーハの反りの測定方法。
【請求項3】
前記第一の回転、拡大縮小、第二の回転及び並進の大きさから、前記複数の非反り時の部分画像と前記複数の反り時の部分画像との不一致度を算出し、
該不一致度が所定の値以上の場合には、前記不一致度が所定の値以上となる原因の前記非反り時の部分画像の座標及び前記反り時の部分画像の座標を、前記座標変換の対象から除外して、改めて前記第一の回転、拡大縮小、第二の回転及び並進の大きさを定めることを特徴とする請求項
2に記載の半導体ウェーハの反りの測定方法。
【請求項4】
加熱ランプを有するウェーハ処理装置内に載置した表面が鏡面仕上げされている半導体ウェーハに映る反射像の画像のうち、前記半導体ウェーハの反りが無い状態である非反り時の画像と、反りが有る状態である反り時の画像とを撮像するカメラを有する半導体ウェーハの反りの測定装置であって、
前記非反り時の画像において、前記反射像の中から目標物を複数選択し、該目標物を含む部分の画像である複数の非反り時の部分画像を取得する非反り時部分画像取得手段と、
該非反り時部分画像取得手段にて取得された前記複数の非反り時の部分画像の、前記非反り時の画像の中での位置を示す座標を測定する非反り時部分画像座標測定手段と、
前記反り時の画像において、前記複数の非反り時の部分画像に、各々、最も一致度が高い部分の座標を測定して、複数の反り時の部分画像の位置を示す座標とする反り時部分画像座標測定手段と、
前記複数の非反り時の部分画像の座標を、各々、前記複数の反り時の部分画像の座標に一致させるよう座標変換を行う座標変換手段と、
該座標変換手段にて行われた前記座標変換の大きさから、前記半導体ウェーハの反りの大きさ及び方向を測定する反り測定手段と、
を有
し、前記加熱ランプのフィラメントを前記目標物とするものであることを特徴とする半導体ウェーハの反りの測定装置。
【請求項5】
前記座標変換手段は、前記座標変換を、前記複数の非反り時の部分画像の座標について、各々、第一の回転、拡大縮小、第二の回転、及び並進をすることによって行うものであり、
前記第一の回転は、前記複数の非反り時の部分画像の前記拡大縮小のための方向を調整するものであり、
前記拡大縮小は、前記第一の回転が行われた前記複数の非反り時の部分画像同士の相対的な距離が、前記複数の反り時の部分画像同士の相対的な距離と一致するように行うものであり、
前記第二の回転は、前記拡大縮小が行われた前記複数の非反り時の部分画像を、前記第一の回転と同じ角度で逆方向に回転するものであり、
前記並進は、前記第二の回転が行われた前記複数の非反り時の部分画像の座標が、各々、前記複数の反り時の部分画像の座標に一致するよう平行移動するものであり、
前記反り測定手段は、前記第一の回転の大きさから前記半導体ウェーハの反りの方向を測定し、前記拡大縮小の大きさから前記半導体ウェーハの反りの大きさを測定するものであることを特徴とする請求項
4に記載の半導体ウェーハの反りの測定装置。
【請求項6】
前記座標変換手段は、前記第一の回転、拡大縮小、第二の回転及び並進の大きさから、前記複数の非反り時の部分画像と前記複数の反り時の部分画像との不一致度を算出し、該不一致度が所定の値以上の場合には、前記不一致度が所定の値以上となる原因の前記非反り時の部分画像の座標及び前記反り時の部分画像の座標を、前記座標変換の対象から除外して、改めて前記第一の回転、拡大縮小、第二の回転及び並進の大きさを定めるものであることを特徴とする請求項
5に記載の半導体ウェーハの反りの測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が鏡面仕上げされている半導体ウェーハの反りの測定方法及び測定装置であり、特に半導体ウェーハ(以下、単にウェーハとも言う)の熱処理装置やエピタキシャル成長装置等のウェーハ処理装置内においてウェーハの反りを測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウェーハ処理装置の一例としてシリコンウェーハのエピタキシャル成長装置が挙げられる。この装置を使用したエピタキシャル成長の例について説明する。
通常シリコンエピタキシャル成長装置は600から900℃程度に維持された反応室内に室温のシリコンウェーハを投入し、エピタキシャル成長に適した1100℃前後の温度まで昇温した後、原料となるガスを反応室に導入してシリコンウェーハの表面にエピタキシャル層を生成させる。
【0003】
このときシリコンウェーハは反応室内のサセプタと呼ばれる皿状の台に置かれるが、その位置がサセプタの所定の位置を外れるとウェーハ周辺部に膜厚の不均一を生じてしまう。ウェーハが置かれる位置が中心を外れる原因のひとつは、室温のウェーハを高温の反応室に投入する際にウェーハに反りが生じ、サセプタ上でウェーハが動くためである。
図9はこのような反りによる載置ズレを示す説明図である。
この反りの問題を解決するには、どのような条件のときに、どのようなタイミングで、どのような大きさの反りが生じているのかを知ることが重要であるが、反りの大きさを効率よく測定する良い方法がなかった。
【0004】
特許文献1の実施形態には反り時と非反り時のウェーハの表面に映るランプと反射板の反射像を比較することで反り量を計測できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で反り量の定義に使われているのは円形の反射板の長軸長さA、短軸長さB、非反り時の直径Lであり、円形の反射板を有しない装置ではこのような定義は利用できないという問題があった。
【0007】
また、反り量の定義に使われる円形の反射板は、自ら発光しないので輪郭が明瞭でない上、通常ランプ加熱の場合はランプの光を有効に使うために円形の反射板の背景となる部分もすべて反射板になっているため、カメラの画像から円形の反射板と背景の反射板の境界を正確に捉えることは実際にはきわめて困難である。なお、特許文献1にはランプの反射像も利用するとの記述があるが、どのように利用するのかは触れられていない。
人間がカメラの画像を見た場合には、円形に配列したランプの内側に円形の反射板が存在しているという「常識」があるため、ランプの反射像をもとに円形の反射板の輪郭をある程度推定することができる。そこで、カメラで撮影した画像を一旦ビデオに録画し、そこから一定間隔の静止画を抽出して、人間が円形の反射板の輪郭を推定すれば、一定間隔の反りの変化を示すグラフを得ることはできる。特許文献1の
図5、
図7はそのようにして得られたものと推測されるが、このような方法では高い精度は得られず、緻密な間隔での情報は得られない。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ウェーハ処理装置が円形の反射板を有しない場合でも(該反射板の有無に関わらず)使用可能で、かつ、ウェーハの反りの大きさ及び方向を正確に効率よく測定できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明では、ウェーハ処理装置内に載置した表面が鏡面仕上げされている半導体ウェーハに映る反射像を、前記半導体ウェーハの反りが無い状態で撮像した非反り時の画像と、反りが有る状態で撮像した反り時の画像とで比較して、前記半導体ウェーハの反りを測定する半導体ウェーハの反りの測定方法であって、前記非反り時の画像において、前記反射像の中から目標物を複数選択し、該目標物を含む部分の画像である複数の非反り時の部分画像を取得し、該複数の非反り時の部分画像の、前記非反り時の画像の中での位置を示す座標を測定し、前記反り時の画像において、前記複数の非反り時の部分画像に、各々、最も一致度が高い部分の座標を測定して、複数の反り時の部分画像の位置を示す座標とし、前記複数の非反り時の部分画像の座標を、各々、前記複数の反り時の部分画像の座標に一致させるよう座標変換を行い、該座標変換の大きさから、前記半導体ウェーハの反りの大きさ及び方向を測定することを特徴とする半導体ウェーハの反りの測定方法を提供する。
【0010】
このような本発明の半導体ウェーハの反りの測定方法は、円形の反射板の有無に関わらず使用可能であり、目標物の位置を基にして半導体ウェーハの反りの大きさ及び方向を正確かつ効率よく測定することができる。
【0011】
また、前記ウェーハ処理装置として加熱ランプを有するものを用い、該加熱ランプのフィラメントを前記目標物とすることができる。
加熱ランプのフィラメントは自ら発光しているので、他の構成部品とより明瞭に区別でき、ウェーハの反りを計測する際の目標物として好適である。
【0012】
また、前記座標変換を、前記複数の非反り時の部分画像の座標について、各々、第一の回転、拡大縮小、第二の回転、及び並進をすることによって行い、前記第一の回転は、前記複数の非反り時の部分画像の前記拡大縮小のための方向を調整し、前記拡大縮小は、前記第一の回転を行った前記複数の非反り時の部分画像同士の相対的な距離が、前記複数の反り時の部分画像同士の相対的な距離と一致するように行い、前記第二の回転は、前記拡大縮小を行った前記複数の非反り時の部分画像を、前記第一の回転と同じ角度で逆方向に回転し、前記並進は、前記第二の回転を行った前記複数の非反り時の部分画像の座標が、各々、前記複数の反り時の部分画像の座標に一致するよう平行移動し、前記第一の回転の大きさから前記半導体ウェーハの反りの方向を測定し、前記拡大縮小の大きさから前記半導体ウェーハの反りの大きさを測定することができる。
このようにすれば、より簡便に座標変換を行い、半導体ウェーハの反りの方向及び大きさを測定することができる。
【0013】
また、前記第一の回転、拡大縮小、第二の回転及び並進の大きさから、前記複数の非反り時の部分画像と前記複数の反り時の部分画像との不一致度を算出し、該不一致度が所定の値以上の場合には、前記不一致度が所定の値以上となる原因の前記非反り時の部分画像の座標及び前記反り時の部分画像の座標を、前記座標変換の対象から除外して、改めて前記第一の回転、拡大縮小、第二の回転及び並進の大きさを定めることができる。
このようにすれば、上記原因の部分画像を座標変換の対象から除外することができ、それ以外の部分画像からウェーハの反りについて測定できるため、より精度の高い測定となる。
【0014】
また、本発明では、ウェーハ処理装置内に載置した表面が鏡面仕上げされている半導体ウェーハに映る反射像の画像のうち、前記半導体ウェーハの反りが無い状態である非反り時の画像と、反りが有る状態である反り時の画像とを撮像するカメラを有する半導体ウェーハの反りの測定装置であって、前記非反り時の画像において、前記反射像の中から目標物を複数選択し、該目標物を含む部分の画像である複数の非反り時の部分画像を取得する非反り時部分画像取得手段と、該非反り時部分画像取得手段にて取得された前記複数の非反り時の部分画像の、前記非反り時の画像の中での位置を示す座標を測定する非反り時部分画像座標測定手段と、前記反り時の画像において、前記複数の非反り時の部分画像に、各々、最も一致度が高い部分の座標を測定して、複数の反り時の部分画像の位置を示す座標とする反り時部分画像座標測定手段と、前記複数の非反り時の部分画像の座標を、各々、前記複数の反り時の部分画像の座標に一致させるよう座標変換を行う座標変換手段と、該座標変換手段にて行われた前記座標変換の大きさから、前記半導体ウェーハの反りの大きさ及び方向を測定する反り測定手段と、を有することを特徴とする半導体ウェーハの反りの測定装置を提供する。
【0015】
このような本発明の半導体ウェーハの反りの測定装置であれば、円形の反射板の有無に関わらず適用でき、目標物の位置を基にして半導体ウェーハの反りの大きさ及び方向を正確かつ効率よく測定することができる。
【0016】
また、前記ウェーハ処理装置が、加熱ランプを有するものとすることができる。
このようなものであれば、加熱ランプのフィラメントを目標物として利用することができるので、他の構成部品とより明瞭に区別できる。
【0017】
また、前記座標変換手段は、前記座標変換を、前記複数の非反り時の部分画像の座標について、各々、第一の回転、拡大縮小、第二の回転、及び並進をすることによって行うものであり、前記第一の回転は、前記複数の非反り時の部分画像の前記拡大縮小のための方向を調整するものであり、前記拡大縮小は、前記第一の回転が行われた前記複数の非反り時の部分画像同士の相対的な距離が、前記複数の反り時の部分画像同士の相対的な距離と一致するように行うものであり、前記第二の回転は、前記拡大縮小が行われた前記複数の非反り時の部分画像を、前記第一の回転と同じ角度で逆方向に回転するものであり、前記並進は、前記第二の回転が行われた前記複数の非反り時の部分画像の座標が、各々、前記複数の反り時の部分画像の座標に一致するよう平行移動するものであり、前記反り測定手段は、前記第一の回転の大きさから前記半導体ウェーハの反りの方向を測定し、前記拡大縮小の大きさから前記半導体ウェーハの反りの大きさを測定するものとすることができる。
このようなものであれば、より簡便に座標変換を行い、半導体ウェーハの反りの方向及び大きさを測定することができる座標変換手段及び反り測定手段となる。
【0018】
また、前記座標変換手段は、前記第一の回転、拡大縮小、第二の回転及び並進の大きさから、前記複数の非反り時の部分画像と前記複数の反り時の部分画像との不一致度を算出し、該不一致度が所定の値以上の場合には、前記不一致度が所定の値以上となる原因の前記非反り時の部分画像の座標及び前記反り時の部分画像の座標を、前記座標変換の対象から除外して、改めて前記第一の回転、拡大縮小、第二の回転及び並進の大きさを定めるものとすることができる。
このようなものであれば、上記原因の部分画像を座標変換の対象から除外することができ、それ以外の部分画像からウェーハの反りについて測定できるため、より精度の高い測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、ウェーハ処理装置が円形の反射板を有しない場合でも、ウェーハの反りの大きさ及び方向をより正確に効率よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の半導体ウェーハの反りの測定方法の工程の一例を示すフロー図である。
【
図2】本発明の半導体ウェーハの反りの測定装置の一例を示す正面縦断面図である。
【
図3】一致度の測定方法の一例を示す説明図である。
【
図4】第一の回転、拡大縮小、第二の回転、及び並進による座標変換の手順を示す説明図である。
【
図5】半導体ウェーハの反りの形状による画像の変化を示す説明図である。
【
図6】半導体ウェーハの反りによる変形を示す概略図である。
【
図7】実施例2のシステムによる部分画像の取得手順を示す説明図である。
【
図8】実施例2による測定結果の一例を示すグラフである。
【
図9】従来の半導体ウェーハの反りによる載置ズレを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
本発明は、ウェーハ処理装置内に載置された、表面が鏡面仕上げされている半導体ウェーハの反りの測定に広く用いることができるが、以下は最も典型的な例としてシリコンウェーハのエピタキシャル成長装置を用いる場合について説明する。ただしこれに限定されず、熱処理装置の場合にも適用可能である。
【0023】
図2は本発明の半導体ウェーハの反りの測定装置1の一例を示す正面縦断面図である。エピタキシャル成長装置も併せて図示している。
まず、ランプ加熱式のシリコンエピタキシャル成長装置2において、反応室の中心にはサセプタ3と呼ばれるウェーハWを載置するための皿状の台があり、サセプタサポート4と呼ばれる軸で下方から回転可能かつ昇降可能に支持されている。また、サセプタ3には搬入されてきたウェーハWを搬入ロボットから受け取るためのリフトピン5が設けられており、下方から昇降可能に支持されている。サセプタ3の上方および下方は光を透過する透明石英製の窓6となっている。サセプタ3の側面は不透明石英製の断熱材7で囲われ、その不透明石英製の断熱材7は、さらにその外側の水冷されたステンレス製の構造部材8で支持されている。上下の透明石英製の窓6は側面のステンレス製の構造部材8にオーリング9をはさんで固定されており、全体として気密な反応室を形成している。透明な石英製の窓6の外側の上部、および下部にはそれぞれハロゲンランプ(加熱ランプ)10が円形に配列されており、これらの発する光によってウェーハWは加熱される。ハロゲンランプ10の外側は光を反射するように表面が鏡面仕上げされ、金メッキが施されている。円形に配列されたハロゲンランプ10の内側は、反射面を冷却するためのエアーの流路となるように筒状になっており、その中央にはウェーハWの温度を測定するためのパイロメータ11が取り付けられている。
【0024】
そして本発明は、カメラ12と例えばコンピュータ14を備えている。ウェーハWを撮影するカメラ12はハロゲンランプ10の内側の冷却エアーの筒状の流路のうち、パイロメータ11の視野を遮らない中心を少し外れたところに、金メッキされたステンレスの保護管13に収容された状態で設置されている。保護管13の先端にはカメラ12がウェーハWを撮影するための開口部を設け、過剰な光でカメラ12が損傷しないように反射型NDフィルタと熱線吸収フィルタを配し、その後方にカメラ12を設置している。また、保護管13の後端からドライエアーを注入し、保護管13の先端開口部とフィルタの間に設けた隙間から排出されるようにすることで、カメラ12とフィルタの温度が上がらないようになっている。このようなカメラ12により、ウェーハWを撮像でき、反り時の画像及び非反り時の画像を入手できる。
【0025】
そしてコンピュータ14には、カメラ12により撮像される画像に基づき処理を行うプログラムが組まれている。その機能的内容から大きく分けて、非反り時部分画像取得手段14a、非反り時部分画像座標測定手段14b、反り時部分画像座標測定手段14c、座標変換手段14d、反り測定手段14eを有する。非反り時部分画像取得手段14aは、非反り時の画像において、反射像の中から目標物を複数選択し、該目標物を含む部分の画像である複数の非反り時の部分画像を取得するものである。非反り時部分画像座標測定手段14bは、非反り時部分画像取得手段14aにて取得された複数の非反り時の部分画像の、非反り時の画像の中での位置を示す座標を測定するものである。反り時部分画像座標測定手段14cは、複数の非反り時の部分画像に、各々、最も一致度(画像一致度)が高い部分の座標を測定して、複数の反り時の部分画像の位置を示す座標とするものである。座標変換手段14dは、複数の非反り時の部分画像の座標を、各々、複数の反り時の部分画像の座標に一致させるよう座標変換を行うものである。反り測定手段14eは、座標変換手段14dにて行われた座標変換の大きさから、半導体ウェーハの反りの大きさ及び方向を測定するものである。
これらの手段については特に限定されないが、前述したように例えば、カメラ12に接続されたコンピュータ14上でのプログラムを用いたものとすることができる。
【0026】
なお、ウェーハ処理装置2は特に限定されないが、
図2に示すような加熱ランプを有するものとすることができる。
そして、非反り時部分画像取得手段14aにおいては、例えば加熱ランプのフィラメントを目標物とするものとすることができる。フィラメントであれば、他の構成部品とより明瞭に区別できるため好ましい。
【0027】
また、座標変換手段14dは、座標変換を、複数の非反り時の部分画像の座標について、各々、第一の回転、拡大縮小、第二の回転、及び並進をすることによって行うものとすることができる。第一の回転は、複数の非反り時の部分画像の拡大縮小のための方向を調整するものである。拡大縮小は、第一の回転が行われた複数の非反り時の部分画像同士の相対的な距離が、複数の反り時の部分画像同士の相対的な距離と一致するように行うものである。第二の回転は、拡大縮小が行われた複数の非反り時の部分画像を、第一の回転と同じ角度で逆方向に回転するものである。並進は、第二の回転が行われた複数の非反り時の部分画像の座標が、各々、複数の反り時の部分画像の座標に一致するよう平行移動するものである。このようなものの場合、反り測定手段14eは、第一の回転の大きさから半導体ウェーハの反りの方向を測定し、拡大縮小の大きさから半導体ウェーハの反りの大きさを測定するものとすることができる。
このようなものであれば、より簡便に座標変換を行い、半導体ウェーハの反りの方向及び大きさを測定することができる座標変換手段及び反り測定手段となる。
【0028】
また、座標変換手段14dは、上記第一の回転、拡大縮小、第二の回転及び並進の大きさから、複数の非反り時の部分画像と複数の反り時の部分画像との不一致度(座標不一致度)を算出し、第一の回転、拡大縮小、第二の回転及び並進の大きさをどのように定めても(すなわち、不一致度が最小となるよう定めても)不一致度が所定の値以上の場合には、不一致度が所定の値以上となる原因の非反り時の部分画像の座標及び反り時の部分画像の座標を、座標変換の対象から除外して、改めて第一の回転、拡大縮小、第二の回転及び並進の大きさを定めるようプログラムされたものとすることができる。
このようなものであれば、上記原因の部分画像を座標変換の対象から除外することができ、それ以外の部分画像からウェーハの反りについて測定できるため、より精度の高い測定を行うことができる。
【0029】
以下、
図2に示すような本発明の半導体ウェーハの反りの測定装置1を用いた、本発明の半導体ウェーハの反りの測定方法について説明する。
図1は本発明の半導体ウェーハの反りの測定方法の概略を示すフロー図である。
まず、
図1の工程1のように、ウェーハ処理装置2内に載置した表面が鏡面仕上げされている半導体ウェーハWに映る反射像の、全体もしくは一部を撮影するカメラ12により、半導体ウェーハの反りが無い平坦な状態のときの画像を撮像し、「非反り時の画像」として記録する。
【0030】
次に、
図1の工程2のように、非反り時の画像において、鏡面仕上げされている半導体ウェーハWには加熱ランプ(ハロゲンランプ10)などのウェーハ処理装置2を構成する部品が反射像として写りこんでいるが、その中から周囲と区別が容易な目標物を複数選択し、その目標物を含む部分の画像である複数の「非反り時の部分画像」を取得し、画像データとして保存する(非反り時部分画像取得手段14a)。さらに、非反り時の画像全体の中でのその部分画像の座標を測定し、「非反り時の部分画像の座標」としてそれぞれの部分画像に関連付けて記録する(非反り時部分画像座標測定手段14b)。
【0031】
目標物については特に限定されないが、例えば、
図2のようにウェーハ処理装置2が加熱ランプを有するものであれば、加熱ランプのフィラメントを目標物とすることができる。
特に加熱ランプのフィラメントは自ら発光しているので、他の構成部品とより明瞭に区別でき、ウェーハの反りを計測する際の目標物として好適である。
加熱ランプのフィラメントのような明瞭な目標物がない場合は、半導体ウェーハに映り込む位置に、反り測定のための専用の目標物を設けても良い。例えば、周囲と反射率の異なる短い線分をカメラの周囲に配置したり、光ファイバで光を導いてカメラの周囲に光る点のパターンを配置したりすることができる。これらの目標物はウェーハ全体に分散して映っていることが好ましいが、円形に配列している必要はない。
【0032】
次に、
図1の工程3のように、半導体ウェーハの反りが有る状態の画像を撮像し、「反り時の画像」として記録する。
次に、
図1の工程4のように、反り時の画像の中から、工程2で取得した複数の「非反り時の部分画像」に、各々、最も一致度(画像一致度)が高い部分の画像を探し出し、その座標を測定して、「反り時の部分画像の座標」としてそれぞれの部分画像に関連付けて記録する(反り時部分画像座標測定手段14c)。
図3は一致度の測定方法(一致度の定義)の一例を示す説明図である。上段左図の非反り時の1つの部分画像(3×3マス)に最も一致度が高い部分を、上段右図にある反り時の画像から探し出す手順について説明している。中段左図に示すように、該図中の左上の部分では画像が一致しているのは9マス中5マス(白い部分が一致)なので、一致度は「5」となる。同様に、1マス右にずらした場合では中段中図に示すように一致度は「6」、2マス右にずらした場合では中段右図に示すように一致度は「7」となる。このようにして反り時の画像全体で一致度を測定した結果、下段図に示すように最も一致度が高い「9」となる部分の座標が、反り時の部分画像の座標となる。
実際の計算では、例えば、以下のような「零平均正規化相互相関」と呼ばれる統計量ZNCC(Zero means Normalized Cross Correlation)で一致度を評価することができる。反り時の画像中での走査位置を(d
x,d
y)とすると、ZNCC(d
x,d
y)は以下の式で計算できる。
【0033】
【0034】
ここで、I(x,y):入力画像(反り時の部分画像)の画素値、
T(x,y):テンプレート画像(非反り時の部分画像)の画素値、
w:非反り時の部分画像の幅、h:非反り時の部分画像の高さ、
μI:反り時の部分画像の画素値の平均値、μT:非反り時の部分画像の画素値の平均値、である。
ZNCCの値は-1.0~1.0に収まり、最大値1.0に最も近くなった走査位置が、非反り時の部分画像に最も一致する部分の画像となる。
【0035】
次に、
図1の工程5のように、複数の「非反り時の部分画像の座標」を、各々、複数の「反り時の部分画像の座標」に一致させるよう座標変換を行う(座標変換手段14d)。
【0036】
座標変換の方法については特に限定されないが、例えば、第一の回転、拡大縮小、第二の回転、及び並進をすることによって行うことができる。これらの各変換の手順について以下に説明する。
【0037】
図4は、第一の回転、拡大縮小、第二の回転、及び並進による座標変換の手順を示す説明図である。ここでは分かりやすいように、具体例として、上段左図に示すように、非反り時の画像において4個の部分画像がそれぞれ正方形(領域Aとする)の頂点の位置に存在し、それらの部分画像が反り時の画像において、それぞれ上段右図に示すような45度傾いたひし形(領域Bとする)の頂点の位置に存在する場合に、それぞれの座標が一致するよう変換する手順について述べる。なお、ここでは、原点の位置、Xの方向(横軸)、Yの方向(縦軸)は
図4に示すように設けているが、これに限定されない。
【0038】
まず、第一の回転は、非反り時の部分画像の拡大縮小のための方向を調整する。すなわち、中段左図に示すように、非反り時と反り時の画像を比較し、XY方向に拡大縮小して、領域Aの形状を領域Bの形状に一致させる(位置や傾きは別として)のに適切な角度に回転させる。
次に、拡大縮小は、複数の非反り時の部分画像同士の相対的な距離が、複数の反り時の部分画像同士の相対的な距離と一致するように行う。すなわち、中段右図に示すように、非反り時の領域Aの形状が、反り時の領域Bの形状に一致するようにX方向、Y方向にそれぞれ拡大縮小する。X方向とY方向の拡大縮小の順はどちらを先に行っても良い。なお、この時に図形の原点からの距離も拡大縮小するため、領域Aの中心が移動してしまう。
【0039】
次に、第二の回転は、拡大縮小が行われた複数の非反り時の部分画像を、第一の回転と同じ角度で逆方向に回転する。すなわち、下段左図に示すように、第一の回転により変更された領域Aの向きを、元の向きに修正する。なお、通常はウェーハの反りにより領域Aの回転が観測されることはないが、もしウェーハに複雑な変形が起きて回転が観測された場合には、第二の回転時にその回転の修正も合わせて行うことができる。
最後に、並進は、複数の非反り時の部分画像の座標が、各々、複数の反り時の部分画像の座標に一致するよう平行移動する。すなわち、下段右図に示すように、第一の回転、拡大縮小、第二の回転を経て移動した領域Aの位置を、X方向、Y方向にそれぞれ平行移動し、反り時の領域Bの位置に一致させる。X方向とY方向の並進の順はどちらを先に行っても良い。
【0040】
以上のようにして、領域Aの各頂点に位置していた複数の非反り時の部分画像の座標を、各々、領域Bの各頂点に位置する複数の反り時の部分画像の座標に一致させるよう座標変換を行うことができる。このようなものであれば、より簡便に座標変換を行うことができる。なお、本発明の座標変換の方法は特に限定されず、例えば、数学的に同等な他の変換手順を用いることができる。
【0041】
また、第一の回転、拡大縮小、第二の回転及び並進の大きさから、複数の非反り時の部分画像と複数の反り時の部分画像との不一致度(座標不一致度)を算出し、第一の回転、拡大縮小、第二の回転及び並進の大きさをどのように定めても(すなわち、不一致度が最小となるよう定めても)不一致度が所定の値以上の場合には、不一致度が所定の値以上となる原因の非反り時の部分画像の座標及び反り時の部分画像の座標を、座標変換の対象から除外して、改めて第一の回転、拡大縮小、第二の回転及び並進の大きさを定めることができる。すなわち、すべての部分画像を用いると不一致度が高くなり、かえって測定精度が悪くなると考えられる場合には、不一致度を極端に上げている部分画像の座標を除いてから再度各変換の大きさを定める計算を行う。
このようにすれば、非反り時の画像においてウェーハに映っていた反射像が、反り時の画像にはもはやウェーハに映っていない場合など、「反り時の画像」の中から「非反り時の部分画像」を探し出すのに失敗した場合の情報を、座標変換の対象から除外することができ、より精度の高い測定を行うことができる。
不一致度の算出方法は特に限定されないが、例えば、以下の式(1)で求めることができる。
【0042】
【0043】
ここで、(xpi,ypi):非反り時の部分画像の座標、iは部分画像の番号、
(xwi,ywi):反り時の画像の中で、非反り時の部分画像と最も一致度が高い部分の画像の座標、
a:第一の回転の角度、b:X方向の拡大率、c:Y方向の拡大率、d:第二の回転の角度、e:X方向の並進距離、f:Y方向の並進距離、である。
これは、非反り時の部分画像の座標に、第一の回転、XY方向の拡大縮小、第二の回転、XY方向の並進による座標変換(アフィン変換)を行い、反り時の部分画像の座標との差を不一致度として算出する式である。このような不一致度が最小となるようにa~fの値を求めることで、最も一致する座標変換の大きさを求めることができる。不一致度が最小となるaからfの値の求め方は特に限定されないが、例えば、極小値問題の解法として知られる準ニュートン法を用いることができる。
【0044】
このような不一致度があらかじめ定めた基準の値以上になった場合は、不一致度を大きくしている部分画像を調べ、その部分画像の座標を除外してから改めてaからfを定めることで、より精度の高い測定を行うことができる。
【0045】
最後に、
図1の工程6のように、座標変換の大きさから、半導体ウェーハの反りの大きさ及び方向を測定する(反り測定手段14e)。前述した
図4のような座標変換を行った場合、X方向の拡大率bとY方向の拡大率cは半導体ウェーハの反りの大きさを示している。
図5は、半導体ウェーハの反りの形状による画像の変化を示す説明図である。左図に示すように、半導体ウェーハがカメラの方向に対して凹になっている場合、非反り時の画像よりも目標物の位置が拡大された画像となるため、拡大縮小の倍率は1より大きくなる。右図に示すように、凸になっている場合は、拡大縮小の倍率は1より小さくなる。
また、第一の回転の角度aは、半導体ウェーハの反りの方向が座標軸に対してどれだけ傾いているかを示している。
図6は、半導体ウェーハの反りによる変形を示す概略図である。左図に示す8個の非反り時の部分画像が、反り時の画像において右図のように移動した場合、倍率の最も大きい方向が長軸15、倍率の最も小さい方向が短軸16、長軸15の画面右からの角度(0度以上180度未満)が長軸の方向(X軸からの角度)17を示す。
なお、上記のように拡大率の大きい軸のX軸からの角度(長軸の方向17)を反りの方向と定義すると、X方向の拡大率bがY方向の拡大率cよりも大きいか等しい場合は第一の回転の角度aが反りの方向となる。ただし、もしaがゼロ度未満の場合はゼロ度以上となるまで180を繰り返し加え、もしaが180度以上の場合は180度未満となるまで180を繰り返し差し引いた値を反りの方向とする。
Y方向の拡大率cがX方向の拡大率bよりも大きい場合は第一の回転の角度aから90を引いた値a’が反りの方向となる。ただし、もしa’がゼロ度未満の場合はゼロ度以上となるまで180を繰り返し加え、もしa’が180度以上の場合は180度未満となるまで180を繰り返し差し引いた値を反りの方向とする。
【0046】
このような方法で半導体ウェーハの反りを測定すると、従来の方法で必要とした円形の反射板を不要とすることもできる上に、検出が極めて困難な反射板の輪郭に変えて、例えば加熱ランプのフィラメントなどのより明瞭な目標物の位置を基にして半導体ウェーハの反りの大きさ及び方向を測定することができるので、測定精度が大きく向上する。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
図2に示すようなランプ加熱式のシリコンエピタキシャル成長装置2に設置された本発明の半導体ウェーハの反りの測定装置1を用いて行った。
まず、反応室に水素ガスを流通させた状態でランプ加熱を開始し、サセプタ3の温度をパイロメータ11で計測して、800℃になるようにハロゲンランプ10の出力を調整した。
次にロボットを用いてウェーハWを反応室に搬入し、リフトピン5を上昇させてウェーハWをリフトピン5上に載せ替え、ロボットを後退させた後にリフトピン5を下降させてウェーハWをサセプタ3上に載置した。
ウェーハWの反りが回復するのを待ってからカメラ12を起動し、ウェーハW表面に映ったハロゲンランプ10のフィラメントの反射像が最も鮮明に見えるようにカメラ12の位置と感度を調整したのち、その画像を「非反り時の画像」として記録した。
【0049】
続いて、カメラの位置と感度の調整に用いたウェーハWを反応室から搬出し、カメラ12を動画撮影に切り替えて記録を開始した後、別のウェーハWを反応室に搬入した。
搬入したウェーハWをリフトピン上に載せかえるとすぐにウェーハWに反りが生じ、リフトピン5を下降させてサセプタ3上に載置した後、しばらくしてから反りが解消した。
反りが解消したのを確認したら動画の記録を終了し、「非反り時の画像」とともに画像分析を行った。
画像分析はまず、「非反り時の画像」の中からウェーハWに映るハロゲンランプ10のフィラメントを目標物とし、その部分を「非反り時の部分画像」として20箇所取得し、それらの部分画像と位置を記録した。このとき、「非反り時の画像」の左下を原点とし、右側をX方向、上方をY方向と定め、原点からの画素数を座標とすることにした。また、部分画像は長方形とし、その長方形の左下の座標を「非反り時の部分画像の座標」として測定した。
【0050】
次に、撮影した動画の中から一秒ごとの静止画を「反り時の画像」として取り出し、それぞれについて複数の「非反り時の部分画像」に最も一致度が高い部分を見つけ、その位置を示す座標を「反り時の部分画像の座標」として測定し記録した。「非反り時の部分画像」に最も一致度が高い部分を見つけるに際し、一致度の定義として前述したZNCC(d
x,d
y)の式を用いた。
次に、「非反り時の部分画像の座標」に対し、
図4に示すような第一の回転の角度a、X方向の拡大率b、Y方向の拡大率c、第二の回転の角度d、X方向の並進距離e、Y方向の並進距離fによるアフィン変換をこの順に施し、変換後の座標が「反り時の部分画像の座標」に最も一致するようにaからfの値を定めた。具体的には、式(1)で定義される不一致度を最小とするように、準ニュートン法を用いてaからfの値を定めた。
このとき、座標の不一致度が3ピクセル
2未満(ここでは座標を画素ピッチ単位として表し、不一致度は式(1)に示すように距離の2乗と定義したので、不一致度の単位はピクセル
2となる)にならなかった場合(言いかえると、3ピクセル
2以上の場合)は、不一致度を大きくしている部分画像を調べ、その部分画像を排除してからaからfを再計算した。求めた値のうち、aが反りの方向、b,cが反りの大きさを示している。
aからfの値を定める作業を、動画の中から一秒ごとに取り出した静止画すべてに適用することで、反りの方向と大きさが時々刻々変化した様子を定量化して示すことができた。
【0051】
(実施例2)
実施例1の結果を基にして、時間経過に伴うウェーハの反りの変化をリアルタイムで計測できるシステムを作成した。また、このシステムを実行する際にコンピュータ14を使用した。
図7は、このシステムによる部分画像の取得手順を示す説明図である。
システムを起動すると、最初に「非反り時の画像」を更新するかどうかの質問が現れるようにし、もしランプの交換や反射板の交換が行われて「非反り時の画像」に変化が予想される場合には、システムを開始する前に「非反り時の画像」を撮影しなおし、「非反り時の部分画像」と「非反り時の部分画像の座標」を更新できるようにした。
図7の上図に示すように、撮影した動画の中から反りの無い画面を静止画として取り出し、「非反り時の画像」とした。
システムを開始すると、カメラ12の画像がコンピュータ14に取得され、モニタ画面に常時カメラの画像が表示されるようにした。
また、
図7の中図に示す「非反り時の部分画像」に一致する場所が常時探し出され、aからfの変換の大きさが計算されるようにした。
このとき、座標の不一致度が3ピクセル
2以上の場合は、座標の不一致度を最も大きくしている部分画像を調べ、その部分画像を除外して再度aからfの変換の大きさを計算し、再び座標の不一致度が3ピクセル
2以上の場合は、再び座標の不一致度を最も大きくしている部分画像を調べて除外することを繰り返し、
図7の下図に示すように残った部分画像の数が6以上で不一致度が3ピクセル
2未満になった場合にはウェーハが存在していると判断して、反りの向きa(またはa’)と反りの大きさb,cをモニタ画面上に数値で表示し、同時に値をファイルまたはデータベースに記録するようにした。画面右下の数値がそれぞれ上から順に反りの向きa(またはa’)(長軸の方向)、反りの大きさb(長軸の長さ)、反りの大きさc(短軸の長さ)を示す。画面左下の数値は経過時間を示す。なお、残った部分画像の数が6以上で不一致度が3ピクセル
2未満にならなかった場合は、ウェーハが存在しないと判断し、反りの向きa(またはa’)と反りの大きさb,cは表示しないようにした。
【0052】
以上の時間経過に伴うリアルタイム処理により、ウェーハの反りの変化を高い精度で、かつ緻密な間隔で容易に取得してできるようになり、ドーパント濃度の違い、裏面処理の違い、加熱条件の違いなどのさまざまな条件下で比較できるようになった。
図8は、実施例2による測定結果の一例を示すグラフである。横軸は時間を表し、時間経過による反りの変化を示している。左縦軸は反りの大きさである長軸及び短軸の倍率を表し、時間の経過とともに徐々に倍率が1に収束している。右縦軸は反りの方向である長軸方向の角度を表し、時間の経過とともに角度が0°になっている。このように、ドーパント濃度の異なる2種類のウェーハについて、時間経過による反りの変化を高い精度で測定できた。
【0053】
以上のように本発明の半導体ウェーハの反りの測定方法及び測定装置は、従来のような円形の反射板の有無に関わらず使用可能で、かつ、ウェーハの反りの大きさ及び方向をより正確に効率よく測定できる。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0055】
1…本発明の半導体ウェーハの反りの測定装置、
2…シリコンエピタキシャル成長装置、 3…サセプタ、 4…サセプタサポート、
5…リフトピン、 6…透明石英製の窓、 7…不透明石英製の断熱材、
8…ステンレス製の構造部材、 9…オーリング、 10…ハロゲンランプ、
11…パイロメータ、 12…カメラ、 13…保護管、 14…コンピュータ、
14a…非反り時部分画像取得手段、 14b…非反り時部分画像座標測定手段、
14c…反り時部分画像座標測定手段、 14d…座標変換手段、
14e…反り測定手段、 15…長軸、 16…短軸、 17…長軸の方向、
W…ウェーハ。