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特許7392643塗布膜形成組成物、及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】塗布膜形成組成物、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 139/04 20060101AFI20231129BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20231129BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20231129BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20231129BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20231129BHJP
   H01L 21/312 20060101ALI20231129BHJP
   C08F 26/04 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C09D139/04
C09D5/02
C09D7/20
H01L21/90 S
H01L21/312 A
C08F26/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020512258
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2019014615
(87)【国際公開番号】W WO2019194175
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2018073623
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 登喜雄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 力丸
(72)【発明者】
【氏名】染谷 安信
(72)【発明者】
【氏名】岸岡 高広
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/156616(WO,A1)
【文献】特開2012-028237(JP,A)
【文献】特開2013-123852(JP,A)
【文献】特開2017-071662(JP,A)
【文献】特開2010-272402(JP,A)
【文献】特開2011-029422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
H01L 21/00-21/98
C08F 26/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記式(1a)又は(1b)で表される構造単位、及び下記式(2)で表される構造単位を含む重合体、並びに
(b)プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル及び乳酸エチルからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を1~30質量%、及び水を70~99質量%含む溶媒
を含む、銅を含む配線層と絶縁層とを有する基板上の該絶縁層上に選択的に塗布膜を形成するための塗布膜形成組成物。
【化1】
(式中、Xは、酢酸、プロピオン酸、スルファミン酸又はハロゲン化水素であり、Y-は、硫酸水素イオン、硫酸メチルイオン、硫酸エチルイオン又はハロゲン化物イオンであり、R1は、水素原子又はメチル基であり、R2及びR3は、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基である。)
【化2】
【請求項2】
(a)成分の含有量が、組成物中0.1~20質量%である請求項記載の塗布膜形成組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の塗布膜形成組成物を、絶縁層と銅を含む配線層とが形成された基板上の該絶縁層及び該配線層の表面に塗布し、ベークして塗布膜を形成する工程、及び水を用いて前記配線層上の該塗布膜を選択的に除去する工程を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁層が、SiO2を主成分とする、請求項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁層が、多孔質シリカを主成分とし、その表面に前記多孔質シリカに由来するシラノール残基を有する、請求項又は記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布膜形成組成物、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細化が進む半導体装置の分野において、半導体の層間絶縁層に配線材料として埋め込まれる銅等の金属成分が拡散するのを防ぐため、樹脂層を形成することが提案されている(特許文献1)。しかし、配線上には樹脂層が形成されないようにし、配線表面における電気的接続を維持することが求められる。非特許文献1には、ポリエチレンイミンを含み、ギ酸でpHを調整した組成物を用いて、SiO2上に選択的に有機膜を形成できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2010/137711号
【非特許文献】
【0004】
【文献】J. Phys. Chem. C 2015, 119, 22882-22888
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載されている技術では、組成物にpH調整剤としてギ酸を添加する必要がある。ギ酸は、日本では毒物及び劇物取締法における劇物に指定されているため、ギ酸を含む材料の使用は工業化には適していない。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、ギ酸等の使用が制限される化学物質を用いずに、銅を含む配線層と酸化ケイ素等に代表される絶縁層とを有する基板上の該絶縁層上に選択的に塗布膜を形成し得る塗布膜形成組成物、及びこれを用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、所定のジアリルアミン系重合体、及び所定の有機溶媒と水との混合溶媒を含む組成物によって、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、下記塗布膜形成組成物、及び半導体装置の製造方法を提供する。
1.(a)下記式(1a)又は(1b)で表される構造単位を含む重合体、並びに
(b)プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル及び乳酸エチルからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を1~49質量%、及び水を51~99質量%含む溶媒
を含む塗布膜形成組成物。
【化1】
(式中、Xは、酢酸、プロピオン酸、スルファミン酸又はハロゲン化水素であり、Y-は、硫酸水素イオン、硫酸メチルイオン、硫酸エチルイオン又はハロゲン化物イオンであり、R1は、水素原子又はメチル基であり、R2及びR3は、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基である。)
2.前記重合体が、更に下記式(2)で表される構造単位を含む1の塗布膜形成組成物。
【化2】
3.(b)溶媒が、前記有機溶媒を1~30質量%及び水を70~99質量%含む1又は2の塗布膜形成組成物。
4.1~3のいずれかの塗布膜形成組成物を、絶縁層と銅を含む配線層とが形成された基板上の該絶縁層及び該配線層の表面に塗布し、ベークして塗布膜を形成する工程、及び水を用いて前記配線層上の該塗布膜を選択的に除去する工程を含む、半導体装置の製造方法。
5.前記絶縁層が、SiO2を主成分とする、4の半導体装置の製造方法。
6.前記絶縁層が、多孔質シリカを主成分とし、その表面に前記多孔質シリカに由来するシラノール残基を有する、4又は5の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗布膜形成組成物は、ギ酸等の使用が制限される化学物質を含まないため、工業的に使用できる。また、本発明の塗布膜形成組成物を用いることで、絶縁層上に選択的に、簡便な方法で塗布膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[(a)成分]
本発明の塗布膜形成組成物の(a)成分は、ジアリルアミン系重合体であり、下記式(1a)又は(1b)で表される構造単位を含むものである。
【化3】
【0011】
式(1a)中、Xは、酢酸、プロピオン酸、スルファミン酸又はハロゲン化水素である。前記ハロゲン化水素としては、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等が挙げられる。Xとしては、酢酸又はスルファミン酸が好ましい。
【0012】
式(1b)中、Y-は、硫酸水素イオン、硫酸メチルイオン、硫酸エチルイオン又はハロゲン化物イオンである。前記ハロゲン化物イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等が挙げられる。Y-としては、硫酸エチルイオンが好ましい。
【0013】
式(1a)中、R1は、水素原子又はメチル基である。式(1b)中、R2及びR3は、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基である。
【0014】
前記重合体は、更に、下記式(2)で表される構造単位を含むことが好ましい。
【化4】
【0015】
前記重合体が、式(1a)又は(1b)で表される構造単位と式(2)で表される構造単位とを含む共重合体の場合、該共重合体は、式(1a)又は(1b)で表される構造単位と式(2)で表される構造単位とが交互に結合している交互共重合体でもよく、これらの構造単位がランダムに結合しているランダム共重合体でもよいが、交互共重合体が特に好ましい。
【0016】
前記重合体は、前述した構造単位以外の構造単位(以下、その他の構造単位という。)を含んでもよい。その他の構造単位としては、例えば、(メタ)アクリルアミドに由来するもの、アリルアミン、N-メチルアリルアミン、N,N-ジメチルアリルアミン等のモノアリルアミンに由来するもの、モノアリルアミンの酢酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、プロピオン酸、スルファミン酸等の酸付加塩に由来するものが挙げられる。
【0017】
(a)成分の重合体が前記共重合体の場合、式(1a)又は(1b)で表される構造単位と式(2)で表される構造単位との含有比は、モル比で、99/1~50/50の範囲付近が好ましく、90/10~50/50の範囲付近がより好ましく、50/50又はその近傍がより一層好ましい。また、その他の構造単位を含む場合、その含有割合は、全構造単位中、通常10モル%以下であるが、5モル%以下が好ましい。
【0018】
(a)成分の重合体の重量平均分子量(Mw)は、300~1,000,000が好ましく、500~500,000がより好ましく、800~100,000がより一層好ましく、1,000~50,000が更に好ましい。なお、本発明において(a)成分の重合体のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール換算測定値である。
【0019】
(a)成分の重合体としては、従来公知の方法で合成することができ、又は市販品を使用することができる。前記市販品としては、ニットーボーメディカル(株)製、PAA-D11-HCL、PAA-D41-HCL、PAA-D19-HCL、PAA-D19A、PAS-21CL、PAS-M-1L、PAS-M-1、PAS-22SA-40、PAS-M-1A、PAS-H-1L、PAS-H-5L、PAS-H-10L、PAS-24、PAS-92、PAS-92A、PAS-2401、PAS-2201CL、PAS-A-1、PAS-A-5、PAS-2141CL、PAS-J-81L、PAS-J-81、PAS-J-41、PAS-880等が挙げられる。
【0020】
本発明の組成物中、(a)成分の含有量は、成膜性の観点から、0.1~20質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。
【0021】
[(b)溶媒]
(b)成分の溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル及び乳酸エチルからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を1~49質量%、並びに水を51~99質量%含むものである。前記有機溶媒の含有量が1質量%未満であると、塗布性が低下することがあり、49質量%を超えると、(a)成分の重合体の溶解度が低下することがある。
【0022】
前記有機溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
【0023】
(b)溶媒中、前記有機溶媒の含有量は、1~30質量%が好ましく、5~25質量%がより好ましく、10~20質量%がより一層好ましい。水の含有量は、70~99質量%が好ましく、75~95質量%がより好ましく、80~90質量%がより好ましい。
【0024】
[その他の成分]
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、前述した成分以外の成分(以下、その他の成分という。)を含んでもよい。その他の成分としては、界面活性剤等の各種添加剤が挙げられる。界面活性剤は、基板に対する本発明の組成物の塗布性を向上させるための添加物である。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤のような公知の界面活性剤を用いることができる。
【0025】
[半導体装置の製造方法]
本発明の半導体装置の製造方法は、前述した塗布膜形成組成物を、絶縁層と銅を含む配線層(以下、銅配線層という。)とが形成された基板上の該絶縁層及び該銅配線層の表面に塗布し、ベークして塗布膜を形成する工程、及び水を用いて前記銅配線層上の該塗布膜を選択的に除去する工程を含むものである。
【0026】
前記絶縁層としては、例えば、SiO2を含むものや、多孔質シリカ、SiOF、SiOC、水素化シルセスキオキサン、メチル化シルセスキオキサン等のlow-k材料を含むものが挙げられる。前記絶縁層は、これらのうち、SiO2を主成分とするもの、又は多孔質シリカを主成分とし、その表面に前記多孔質シリカに由来するシラノール残基を有するものが好ましい。なお、本発明において主成分とは、含有比率が最も大きい成分を意味する。
【0027】
前記絶縁層と銅配線層とが形成された基板としては、例えば、シリコン等の半導体基板上の絶縁層に形成されたパターンに、電解メッキ等の方法で銅配線を形成し、化学機械研磨(CMP)によって平坦化して得られるものが挙げられる。また、前記絶縁層と銅配線層とが形成された基板として、CMP後、更に絶縁層等を設けて多層化し、トレンチやビアを形成したものも挙げられる。
【0028】
前記塗布膜形成組成物を塗布する方法としては、従来公知の方法でよく、スピンコート法、キャストコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法等が挙げられる。
【0029】
前記塗布膜形成組成物を基板上の該絶縁層及び該銅配線層の表面に塗布した後、ベークして塗布膜を形成する。このとき、ベーク温度は、50~300℃が好ましく、70~250℃がより好ましい。また、ベーク時間は、10秒~10分が好ましく、30秒~2分がより好ましい。
【0030】
得られる塗布膜の厚さは、0.1~200nmが好ましく、1~100nmがより好ましい。
【0031】
塗布膜を形成した後、水を用いて前記銅配線層上の該塗布膜を選択的に除去する。塗布膜の除去方法としては、水を前記塗布膜上に塗布し、前記銅配線層上の該塗布膜を溶解させ、除去する方法が挙げられる。このとき、水の塗布方法としては、スピンコート法、キャストコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法等が挙げられる。
【0032】
以上説明した方法によって、絶縁層の表面に選択的に有機膜を形成することができる。前記有機膜は、配線の金属成分が絶縁層へ拡散するのを防止し、また、絶縁層の保護膜としても機能する。
【実施例
【0033】
以下、合成例及び実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0034】
[合成例1]
テレフタル酸ジグリシジルエステル(ナガセケムテックス(株)製、デナコール(登録商標)EX711)5.00g、5-ヒドロキシイソフタル酸(東京化成工業(株)製)3.15g及びベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(東京化成工業(株)製)0.20gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル35.60gに加え、溶解させた。反応容器を窒素置換した後、135℃で4時間反応させ、ポリマー溶液を得た。当該ポリマーは、プロピレングリコールモノメチルエーテルに対する溶解性が良好であり、その溶液は、室温に冷却しても白濁等を生じることはなかった。GPC分析(溶離液:テトラヒドロフラン、検量線:標準ポリスチレン)を行ったところ、得られた溶液中のポリマーのMwは15,673、分散度は3.39であった。本合成例で得られたポリマーは、下記式(3)で表される構造単位及び下記式(4)で表される構造単位を有するものであった。
【化5】
【0035】
[1]塗布膜形成組成物の調製
[実施例1-1]
ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄共重合体を0.15g含む水溶液(ニットーボーメディカル(株)製、PAS-92A)0.80gに、超純水11.2g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル3gを加え、塗布膜形成組成物Aを作製した。
【0036】
[比較例1-1]
合成例1で得た、ポリマー固形分を0.24g含むポリマー溶液1.3gに、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル12.8g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート5.9gを加え、塗布膜形成組成物Bを作製した。本比較例の塗布膜形成組成物Bに含まれるポリマーは、前記式(1a)又は(1b)で表される構造単位を含む重合体に該当しない。
【0037】
[比較例1-2]
ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄共重合体を0.15g含む水溶液(ニットーボーメディカル(株)製、PAS-92A)0.80gに、超純水14.2gを加え、塗布膜形成組成物Cを作製した。本比較例の塗布膜形成組成物Cに含まれる溶媒は、有機溶媒の含有量が1質量%未満(0質量%)である。
【0038】
[比較例1-3]
ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄共重合体を0.15g含む水溶液(ニットーボーメディカル(株)製、PAS-92A)0.80gに、超純水6.8g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル7.4gを加え、塗布膜形成組成物を作製した。しかし、本比較例で作製した塗布膜形成組成物は、ポリマーの沈殿が発生した。本比較例の塗布膜形成組成物に含まれる溶媒は、有機溶媒の含有量が49質量%を超える。
【0039】
[2]塗布膜形成評価
300nmの厚さに酸化ケイ素が蒸着された基板(以下、SiO2基板という。)に対し、サムコ(株)製のエッチャーを用いて10分間、O2アッシングを行った。その後、得られたSiO2基板を3cm角にカットし、絶縁層への塗布性評価に用いた。また、接触角計DM-701(協和界面科学(株)製)を用いて前記SiO2基板の水の接触角を測定し、膜形成前の水の接触角とした。
【0040】
100nmの厚さに銅が蒸着された基板(以下、Cu基板という。)を、0.5mol/Lの硫酸溶液に5分間浸漬させ、その後超純水で洗浄し、乾燥させた。その後、得られたCu基板を3cm角にカットし、配線層への塗布性評価に用いた。また、接触角計DM-701(協和界面科学(株)製)を用いて前記Cu基板の水の接触角を測定し、膜形成前の水の接触角とした。
【0041】
[実施例2-1]
塗布膜形成組成物Aを、3cm角にカットした前記SiO2基板及びCu基板上に、スピンコーター(ブリューワーサイエンス社製)を用いて塗布し、100℃で60秒間ベークし、塗布膜を形成した。その後、前記塗布膜上に超純水をスピンコーター(ブリューワーサイエンス社製)を用いて塗布し、60秒間保持し、前記SiO2基板上及びCu基板上の塗布膜を除去後、接触角計DM-701(協和界面科学(株)製)を用いて水の接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0042】
[比較例2-1]
塗布膜形成組成物Bを、3cm角にカットした前記SiO2基板及びCu基板上に、スピンコーター(ブリューワーサイエンス社製)を用いて塗布し、100℃で60秒間ベークし、塗布膜を形成した。その後、前記塗布膜上にプロピレングリコールモノメチルエーテル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=7/3(質量比)をスピンコーター(ブリューワーサイエンス社製)を用いて塗布し、60秒間保持し、前記SiO2基板及びCu基板上の塗布膜を除去後、接触角計DM-701(協和界面科学(株)製)を用いて水の接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
[実施例2-2]
ベーク温度を200℃にした以外は、実施例2-1と同様の方法で水の接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0045】
[比較例2-2]
ベーク温度を200℃にした以外は、比較例2-1と同様の方法で水の接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
[比較例2-3]
塗布膜形成組成物Cを、前記方法により前記SiO2基板上及びCu基板上に塗布しようとしたが、いずれの基板上にも均一に塗布できなかった。
【0048】
実施例2-1及び2-2より、本発明の塗布膜形成組成物Aを用いてSiO2基板上に塗布膜を形成した場合は、該塗布膜形成前後で接触角が変化していることから、水によって該塗布膜が除去されず、SiO2基板上に残っていることが示された。一方、Cu基板上に塗布膜を形成した場合は、該塗布膜形成前後で接触角がほとんど変化していないことから、水によって該塗布膜が除去されることが示された。
【0049】
比較例2-1及び2-2より、塗布膜形成組成物Bを用いてCu基板上に塗布膜を形成した場合は、その形成前後で接触角が変化していることから、プロピレングリコールモノメチルエーテル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=7/3(質量比)によって該塗布膜が除去されず、Cu基板上に残っていることが示された。すなわち、塗布膜形成組成物Bから得られた塗布膜は、プロピレングリコールモノメチルエーテル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=7/3(質量比)によってCu基板上から除去されないことが示された。
【0050】
以上の結果より、本発明の組成物を用いることで、絶縁層上に選択的に塗布膜を形成できることが示された。