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特許7392647感熱記録材料、およびこれに用いられる感熱記録材料用の中空樹脂粒子
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  • 特許-感熱記録材料、およびこれに用いられる感熱記録材料用の中空樹脂粒子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】感熱記録材料、およびこれに用いられる感熱記録材料用の中空樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/42 20060101AFI20231129BHJP
   B41M 5/44 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B41M5/42 211
B41M5/44 210
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020539541
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2019033705
(87)【国際公開番号】W WO2020045498
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2018160484
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 隆志
(72)【発明者】
【氏名】平田 剛
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 希
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-229556(JP,A)
【文献】特開2009-242477(JP,A)
【文献】特開2003-080846(JP,A)
【文献】特開平11-277900(JP,A)
【文献】特開平07-257036(JP,A)
【文献】国際公開第2016/195076(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/42
B41M 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、1または2以上の中空部を有する非膨張性の中空樹脂粒子を含有する中間層と、ロイコ染料および顕色剤を主成分とする感熱発色層とを順次積層して形成される感熱記録材料であって、
前記中空樹脂粒子は、樹脂部を構成する繰り返し単位として、酸基含有重合性単量体単位を10~60質量%の割合で、架橋性単量体単位を5~65質量%の割合で含有し、
前記中空樹脂粒子は、空隙率が70~90%、個数平均粒子径が0.8~3.5μm、粒子径が10μm以上である粒子の個数割合が1.0%未満であり、
前記中間層の載り量が0.7~15g/mである感熱記録材料。
【請求項2】
前記中空樹脂粒子が、前記酸基含有重合性単量体単位として、(メタ)アクリル酸単量体単位を含む請求項1に記載の感熱記録材料。
【請求項3】
前記中空樹脂粒子が、前記架橋性単量体単位として、ジビニルベンゼン単量体単位およびエチレングリコールジメタクリレート単量体単位から選択される少なくとも1つを含む請求項1または2に記載の感熱記録材料。
【請求項4】
前記中空樹脂粒子の平均円形度が0.950~0.995である請求項1~3のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項5】
前記中間層が、前記中空樹脂粒子と、結着樹脂とを含む請求項1~4のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項6】
支持体上に、中間層と、ロイコ染料および顕色剤を主成分とする感熱発色層とを順次積層して形成される感熱記録材料の前記中間層に用いられる、感熱記録材料用の中空樹脂粒子であって、
樹脂部を構成する繰り返し単位として、酸基含有重合性単量体単位を10~60質量%の割合で、架橋性単量体単位を5~65質量%の割合で含有し、
空隙率が70~90%、個数平均粒子径が0.8~3.5μm、粒子径が10μm以上である粒子の個数割合が、1.0%未満である感熱記録材料用の中空樹脂粒子。
【請求項7】
請求項6に記載の感熱記録材料用の中空樹脂粒子と、結着樹脂と、水系媒体とを含有する中間層用塗工液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録材料、およびこれに用いられる感熱記録材料用の中空樹脂粒子に関し、さらに詳しくは、高感度で印字画像の精細性が高く、印刷適性(特に、印字表面強度)およびヘッドマッチング性に優れた感熱記録材料、およびこれに用いられる感熱記録材料用の中空樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルヘッドを用いた記録装置は、情報処理分野(卓上計算機、コンピューター等のアウトプット)、医療計測用レコーダー分野、ファクシミリ分野、自動券売機分野(乗車券、入場券等)、感熱複写分野、POSシステムのラベル分野、タブ分野等多岐にわたり用いられている。このようなサーマルヘッドを用いた記録装置においては、近年、省エネルギー、印字速度の高速化、印字密度の高度化などの性能向上が求められており、このような記録装置に用いられる感熱記録体には、低い熱エネルギーでも、高感度で高画質な画像が得られることが求められている。
【0003】
このような要求に対応するために、サーマルヘッドからのエネルギーを有効に利用することを目的として、支持体と感熱発色層との間に、微小中空粒子を含有する断熱性の高い中間層を設けることが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1の技術では、熱エネルギーに対する感度や、印字表面強度が十分でなく、さらには、ヘッドマッチング性が十分でないことから、感熱記録材料への印字あるいは印刷加工後の印字においてサーマルヘッドと感熱記録材料とが張り付くスティック現象が起き、バーコード読み取り機での読み取り不良などの障害が発生するという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-221070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、高感度で印字画像の精細性が高く、印刷適性(特に、印字表面強度)およびヘッドマッチング性に優れた感熱記録材料、およびこれに用いられる感熱記録材料用の中空樹脂粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成すべく検討を行ったところ、支持体上に、中間層と、ロイコ染料および顕色剤を主成分とする感熱発色層とを順次積層して形成される感熱記録材料において、中間層を形成するための中空樹脂粒子として、樹脂部を構成する繰り返し単位として、酸基含有重合性単量体単位を10~60質量%、および架橋性単量体単位を5~65質量%の割合で含有し、かつ、空隙率が70~90%、個数平均粒子径が0.8~3.5μm、粒子径が10μm以上である粒子の個数割合が1.0%未満である非膨張性の中空樹脂粒子を用いるとともに、中間層の載り量を0.7~15g/mの範囲に制御することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、支持体上に、1または2以上の中空部を有する非膨張性の中空樹脂粒子を含有する中間層と、ロイコ染料および顕色剤を主成分とする感熱発色層とを順次積層して形成される感熱記録材料であって、
前記中空樹脂粒子は、樹脂部を構成する繰り返し単位として、酸基含有重合性単量体単位を10~60質量%の割合で、架橋性単量体単位を5~65質量%の割合で含有し、
前記中空樹脂粒子は、空隙率が70~90%、個数平均粒子径が0.8~3.5μm、粒子径が10μm以上である粒子の個数割合が1.0%未満であり、
前記中間層の載り量が0.7~15g/mである感熱記録材料が提供される。
【0008】
本発明の感熱記録材料において、前記中空樹脂粒子が、前記酸基含有重合性単量体単位として、(メタ)アクリル酸単量体単位を含むことが好ましい。
本発明の感熱記録材料において、前記中空樹脂粒子が、前記架橋性単量体単位として、ジビニルベンゼン単量体単位およびエチレングリコールジメタクリレート単量体単位から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
本発明の感熱記録材料において、前記中空樹脂粒子の平均円形度が0.950~0.995であることが好ましい。
本発明の感熱記録材料において、前記中間層が、前記中空樹脂粒子と、結着樹脂とを含むことが好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、支持体上に、中間層と、ロイコ染料および顕色剤を主成分とする感熱発色層とを順次積層して形成される感熱記録材料の前記中間層に用いられる、感熱記録材料用の中空樹脂粒子であって、
樹脂部を構成する繰り返し単位として、酸基含有重合性単量体単位を10~60質量%の割合で、架橋性単量体単位を5~65質量%の割合で含有し、
空隙率が70~90%、個数平均粒子径が0.8~3.5μm、粒子径が10μm以上である粒子の個数割合が、1.0%未満である感熱記録材料用の中空樹脂粒子が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高感度で印字画像の精細性が高く、印刷適性(特に、印字表面強度)およびヘッドマッチング性に優れた感熱記録材料、およびこれに用いられる感熱記録材料用の中空樹脂粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(A)は、本実施形態に係る懸濁液調製工程において調製される懸濁液の一例を示す模式図であり、図1(B)は、乳化重合用の分散液を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の感熱記録材料は、支持体上に、中間層と、ロイコ染料および顕色剤を主成分とする感熱発色層とを順次積層して形成される。
【0013】
<支持体>
本発明の感熱記録材料を構成する支持体としては、上質紙や再生紙等の、木材パルプを主成分とする紙や、合成樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0014】
<感熱発色層>
本発明の感熱記録材料を構成する感熱発色層の感熱発色成分としては、ロイコ染料と、電子受容性化合物などの顕色剤とを主成分とするものが挙げられる。
【0015】
本発明の感熱記録材料を構成する感熱発色層は、たとえば、ロイコ染料、顕色剤、および結合剤と、必要に応じて用いられる各種添加剤とを、水中で混合・分散して得られた感熱発色層用塗工液を、後述する中間層の上に塗布し、乾燥することにより形成することができる。
【0016】
ロイコ染料としては、特に限定されないが、たとえば、トリフェニルメタン系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、オーラミン系化合物、スピロピラン系化合物、インドリノフタリド系化合物等が挙げられる。ロイコ染料の具体例としては、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-フタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジエチルアミノフタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-クロルフタリド、3,3-ビス(p-ジブチルアミノフェニル)フタリド、3-シクロヘキシルアミノ-6-クロルフルオラン、3-ジメチルアミノ-5,7-ジメチルフルオラン、3-N-メチル-N-イソブチル-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-エチル-N-イソアミル-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7,8-ベンズフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロルフルオラン、3-(N-エチル-N-p-トリル)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-p-トリル-N-エチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-{N-(3’-トリフルオルメチルフェニル)アミノ}-6-ジエチルアミノフルオラン、2-{3,6-ビス(ジエチルアミノ)-9-(o-クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム}、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(m-トリクロロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロルアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(o-クロルアニリノ)フルオラン、3-N-メチル-N-アミルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-メチル-N-シクロヘキシルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(2’,4’-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-5-メチル-7-(N,N-ジベンジルアミノ)フルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、6’-クロロ-8’-メトキシ-ベンゾインドリノ-ピリロスピラン、6’-ブロモ-3’-メトキシ-ベンゾインドリノ-ピリロスピラン、3-(2’-ヒドロキシ-4’-ジメチルアミノフェニル)-3-(2’-メトキシ-5’-クロルフェニル)フタリド、3-(2’-ヒドロキシ-4’-ジメチルアミノフェニル)-3-(2’-メトキシ-5’-ニトロフェニル)フタリド、3-(2’-ヒドロキシ-4’-ジエチルアミノフェニル)-3-(2’-メトキシ-5’-メチルフェニル)フタリド、3-(2’-メトキシ-4’-ジメチルアミノフェニル)-3-(2’-ヒドロキシ-4’-クロル-5’-メチルフェニル)フタリド、3-モルホリノ-7-(N-プロピル-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-7-トリフルオロメチルアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-5-クロロ-7-(N-ベンジル-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-7-(ジ-p-クロルフェニル)メチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-5-クロル-7-(α-フェニルエチルアミノ)フルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-7-(α-フェニルエチルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-メトキシカルボニルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-5-メチル-7-(α-フェニルエチルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ピペリジノフルオラン、2-クロロ-3-(N-メチルトルイジノ)-7-(p-n-ブチルアニリノ)フルオラン、3-(N-メチル-N-イソプロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)-6’-ジメチルアミノフタリド、3-(N-ベンジル-N-シクロヘキシルアミノ)-5,6-ベンゾ-7-α-ナフチルアミノ-4’-ブロモフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロル-7-アニリノフルオラン、3-N-エチル-N-(2-エトキシプロピル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-メシチジノ-4’,5’-ベンゾフルオラン等が挙げられる。これらは、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
顕色剤としては、ロイコ染料と接触してこれを発色させることのできる電子受容性の化合物であればよく、特に限定されないが、フェノール性化合物、チオフェノール性化合物、チオ尿素誘導体、有機酸およびその金属塩等が挙げられる。顕色剤の具体例としては、4-tert-ブチルフェノール、4-アセチルフェノール、4-tert-オクチルフェノール、4,4’-sec-ブチリデンジフェノール、4-フェニルフェノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-イソプロピリデンジフェノール、4,4’-シクロヘキシリデンジフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン、およびビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸メチル等のフェノール性化合物;4-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシフタル酸ジメチル、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸プロピル、4-ヒドロキシ安息香酸-sec-ブチル、4-ヒドロキシ安息香酸フェニル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4-ヒドロキシ安息香酸トリル、4-ヒドロキシ安息香酸クロロフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル等の、ヒドロキシ基含有のフェノール性化合物;または、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、トリクロル安息香酸、テレフタル酸、サリチル酸、3-tert-ブチルサリチル酸、3-イソプロピルサリチル酸、3-ベンジルサリチル酸、3-(α-メチルベンジル)サリチル酸、3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸等の芳香族カルボン酸、およびこれらフェノール性化合物;芳香族カルボン酸と、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム等の多価金属との塩等の有機酸性物質;N-p-トルエンスルホニル-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレア、N-(p-トルエンスルホニル)-N’-(p-ブトキシカルボイル)ウレア、N-p-トリルスルホニル-N’-フェニルウレア等のウレア化合物;等が挙げられる。これらは、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
顕色剤の配合量は、特に限定されないが、ロイコ染料100質量部に対し、好ましくは100~700質量部、より好ましくは150~400質量部である。
【0019】
結着剤としては、たとえば、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、澱粉およびその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド-アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド-アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、カゼイン、ゼラチンおよびそれらの誘導体等の水溶性高分子材料;スチレン-アクリル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-アクリル共重合体、アクリル共重合体、酢酸ビニル樹脂およびポリウレタン樹脂等の疎水性高分子の水性エマルジョン;を挙げることができる。
【0020】
感熱発色層を形成するための感熱発色層用塗工液には、感熱発色層の耐水性を向上させるために、結着剤を三次元硬化させるための架橋剤を含有させてもよい。このような架橋剤としては、グリオキザール等のアルデヒド系化合物、ポリエチレンイミン等のポリアミン系化合物、エポキシ系化合物、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、ジメチロールウレア化合物、アジリジン化合物、ブロックイソシアネート化合物、過硫酸アンモニウムや塩化第二鉄、塩化マグネシウム、四ホウ酸ソーダ、四ホウ酸カリウム等の無機化合物、ホウ酸、ホウ酸トリエステル、ホウ素系ポリマー等などが挙げられる。
【0021】
また、発色記録画像の保存性を向上させるという観点より、感熱発色層を形成するための感熱発色層用塗工液に、画像安定化剤をさらに含有させてもよい。画像安定化剤としては、たとえば、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,1-ビス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、4,4’-〔1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)〕ビスフェノール、4,4’-〔1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)〕ビスフェノール、2,2’-〔4-(4-ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ〕ジエチルエーテル等のフェノール系の化合物;4-ベンジルオキシフェニル-4’-(2-メチル-2,3-エポキシプロピルオキシ)フェニルスルホン、4-(2-メチル-1,2-エポキシエチル)ジフェニルスルホン、4,4’-ビス〔(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン、4-(2-エチル-1,2-エポキシエチル)ジフェニルスルホン等のスルホン化合物;1,3,5-トリス(2,6-ジメチルベンジル-3-ヒドロキシ-4-tert-ブチル)イソシアヌル酸等のイソシアヌル酸化合物;などが挙げられる。これらは、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
また、感熱発色層の発色感度を調節するために、感熱発色層を形成するための感熱発色層用塗工液に、熱可融性物質を増感剤として含有させてもよい。増感剤としては、従来から感熱記録体の増感剤として知られている化合物を使用することができる。具体的には、パラベンジルビフェニル、ジベンジルテレフタレート、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸フェニル、シュウ酸ジベンジル、アジピン酸ジ-o-クロルベンジル、1,2-ジ(3-メチルフェノキシ)エタン、シュウ酸ジ-p-メチルベンジル、シュウ酸ジ-p-クロルベンジル、1,2-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタン、1,3-ビス(2-ナフトキシ)ジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0023】
また、感熱発色層を形成するための感熱発色層用塗工液には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、焼成クレー、シリカ、ケイソウ土、合成ケイ酸アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、表面処理された炭酸カルシウムやシリカ等の無機顔料;尿素-ホルマリン樹脂、スチレン-メタクリル酸共重合樹脂、ポリスチレン樹脂等の有機顔料;ワックス類、金属石鹸、有色染料、有色顔料、蛍光染料等の各種配合剤を適宜配合してもよい。
【0024】
感熱発色層の厚みは、特に限定されないが、好ましくは2~10μm、より好ましくは3~6μmである。また、感熱発色層の載り量は、特に限定されないが、好ましくは1~10g/m、より好ましくは2~6g/m、さらに好ましくは3~5g/mである。
【0025】
<保護層>
また、本発明の感熱記録材料においては、上述した感熱発色層の上に保護層を設けることができる。保護層は、微粒子の無機顔料および結着剤を主体として構成することができ、たとえば、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸亜鉛のような滑剤や、紫外線吸収剤を含有させてもよい。また、光沢のある保護層を設けることにより、製品の付加価値を高めることもできる。
【0026】
<中間層>
本発明の感熱記録材料を構成する中間層は、
1または2以上の中空部を有する非膨張性の中空樹脂粒子であって、
樹脂部を構成する繰り返し単位として、酸基含有重合性単量体単位を10~60質量%の割合で、架橋性単量体単位を5~65質量%の割合で含有し、空隙率が70~90%、個数平均粒子径が0.8~3.5μm、粒子径が10μm以上である粒子の個数割合が1.0%未満であるものを含有する。
【0027】
本発明によれば、感熱記録材料を構成する中間層を、上記特性を有する非膨張性の中空樹脂粒子を含有するものとすることにより、感熱記録材料を、高感度で印字画像の精細性が高く、印刷適性(特に、印字表面強度)およびヘッドマッチング性に優れたものとすることができるものである。
【0028】
なお、本発明において、「中空」とは、一般的な観察方法により、粒子内部において、液体部、気体部、ならびに液体および気体の混合部からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つの存在が確認できる状態を意味する。また、「液体部」とは、液体で満たされた連続部分を意味し、「気体部」とは、気体で満たされた連続部分を意味し、「液体および気体の混合部」とは、液体および気体で満たされた連続部分を意味する。
【0029】
また、本発明で用いる中空樹脂粒子は、1または2以上の中空部を有するものであるが、「中空部」とは、粒子内部に中空が占める部分を意味し、粒子が中空部を有するか否かは、たとえば、対象となる粒子の断面をTEM観察等することにより、あるいは、対象となる粒子をそのままSEM観察等することにより、確認することができる。粒子において樹脂部から構成されるシェルが連通孔を有さず、「中空部」が粒子のシェルによって粒子外部から隔絶されていてもよいし、粒子において樹脂部から構成されるシェルが、1または2以上の連通孔を備え、「中空部」が、当該連通孔を介して粒子外部と繋がっていてもよい。
【0030】
本発明で用いられる中空樹脂粒子は、空隙率が70~90%であり、好ましくは73~87%、より好ましくは75~85%である。中空樹脂粒子の空隙率が低すぎると、中空部の占める割合が低くなり、中間層の断熱性が低くなり、これにより、感度および印字画像の精細性に劣るものとなってしまう。一方、中空樹脂粒子の空隙率が高すぎると、粒子が潰れてしまい、感度、印字画像の精細性、印刷適性およびヘッドマッチング性に劣るものとなってしまう。
【0031】
中空樹脂粒子の空隙率(%)は、中空樹脂粒子の見かけ密度Dと真密度Dを用いて、下記式(1)に従って、算出することができる。
空隙率=100-(見かけ密度D/真密度D)×100 (1)
【0032】
中空樹脂粒子の見かけ密度Dの測定方法としては、たとえば、次の方法が挙げられる。まず、容量100cmのメスフラスコに約30cmの中空樹脂粒子を充填し、充填した中空樹脂粒子の質量(g)を精確に秤量する。次に、中空樹脂粒子の充填されたメスフラスコに、気泡が入らないように注意しながら、イソプロパノールを標線まで精確に満たす。メスフラスコに加えたイソプロパノールの質量(g)を精確に秤量し、下記式(2)に基づき、中空樹脂粒子の見かけ密度D(g/cm)を計算する。
見かけ密度D=[中空樹脂粒子の質量]/(100-[イソプロパノールの質量]÷[測定温度におけるイソプロパノールの比重]) (2)
なお、見かけ密度Dは、中空部が中空樹脂粒子の一部であるとみなした場合の、中空樹脂粒子全体の比重に相当する。
【0033】
また、中空樹脂粒子の真密度Dの測定方法としては、たとえば、次の方法が挙げられる。まず、中空樹脂粒子を予め粉砕した後、容量100cmのメスフラスコに中空樹脂粒子の粉砕片を約10g充填し、充填した粉砕片の質量(g)を精確に秤量する。次いで、上述した見かけ密度Dの測定と同様にイソプロパノールをメスフラスコに加え、イソプロパノールの質量(g)を精確に秤量し、下記式(3)に基づき、中空樹脂粒子の真密度D(g/cm)を計算する。
真密度D=[中空樹脂粒子の粉砕片の質量]/(100-[イソプロパノールの質量]÷[測定温度におけるイソプロパノールの比重]) (3)
なお、真密度Dは、中空樹脂粒子のうちシェル部分のみの比重に相当する。また、上記測定方法から明らかなように、真密度Dの算出にあたっては、中空部は中空樹脂粒子の一部とはみなされない。
【0034】
また、本発明で用いる中空樹脂粒子は、個数平均粒子径(Dn)が0.8~3.5μmであり、好ましくは1.0~3.3μm、より好ましくは2.0~3.1μmである。中空樹脂粒子の個数平均粒径が小さすぎると、中空樹脂粒子の空隙率が制限されてしまい、これにより、感度および印字画像の精細性に劣るものとなってしまう。一方、中空樹脂粒子の個数平均粒径が大きすぎると、感熱記録体の平滑性が低く、サーマルヘッドとの接触面積が小さくなり、感度、印字画像の精細性、印刷適性およびヘッドマッチング性に劣るものとなってしまう。
【0035】
中空樹脂粒子の個数平均粒径(Dn)は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置により中空樹脂粒子の粒径を測定し、その個数平均を算出し、得られた値をその粒子の個数平均粒径(Dn)とすることができる。
【0036】
また、本発明で用いる中空樹脂粒子は、中空樹脂粒子に占める、粒子径が10μm以上である粒子の個数割合が、1.0%未満であり、好ましくは0.8%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.2%以下である。なお、粒子径が10μm以上である粒子の個数割合の下限は、特に限定されないが、好ましくは0%(実質的に含有しない)である。中空樹脂粒子に占める、粒子径が10μm以上である粒子の個数割合、すなわち、粗大粒子の割合が多すぎると、中間層中において、粗大粒子に起因する隙間の割合が増大してしまい、感度、印字画像の精細性、印刷適性およびヘッドマッチング性に劣るものとなってしまう。
【0037】
本発明で用いる中空樹脂粒子は、樹脂部を構成する繰り返し単位として、酸基含有重合性単量体単位を10~60質量%の割合で、架橋性単量体単位を5~65質量%の割合で、それぞれ含有するものである。
【0038】
酸基含有重合性単量体単位を構成する酸基含有重合性単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸および/またはメタクリル酸の意。以下、同様。)、エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アリルマロン酸、テラコン酸等のカルボキシル基含有単量体が好適に挙げられる。これらは、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、(メタ)アクリル酸が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。
【0039】
樹脂部を構成する繰り返し単位中における、酸基含有重合性単量体単位の割合は、10~60質量%であり、好ましくは15~50質量%、より好ましくは20~40質量%である。酸基含有重合性単量体単位の割合が少なすぎる、あるいは多すぎると、2種類以上の単量体による共重合が不安定となり、中空樹脂粒子の凝集が顕著となり、感度、および印字画像の精細性に劣るものとなってしまう。
【0040】
架橋性単量体単位を構成する架橋性単量体としては、重合可能な官能基を2つ以上有していれば特に制限されない。架橋性単量体の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジアリルフタレートおよびこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2個以上の水酸基またはカルボキシル基を持つ化合物に炭素-炭素二重結合を有する化合物が2つ以上エステル結合したエステル化合物;N,N-ジビニルアニリン、ジビニルエーテル等のその他ジビニル化合物;等が挙げられる。これらのなかでも、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより好ましい。これらは、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
樹脂部を構成する繰り返し単位中における、架橋性単量体単位の割合は、5~65質量%であり、好ましくは30~60質量%、より好ましくは40~55質量%である。架橋性単量体単位の割合が少なすぎると、中空樹脂粒子の強度が低下してしまい、感度、および印字画像の精細性に劣るものとなってしまう。一方、架橋性単量体単位の割合が多すぎると、粒子中に炭化水素系溶剤が残留するため、粒子内で熱媒体となり、熱が粒子全体に伝搬することで、断熱性が低下してしまい、感度に劣るものとなってしまう。
【0042】
本発明で用いる中空樹脂粒子は、樹脂部を構成する繰り返し単位として、上述した酸基含有重合性単量体単位および架橋性単量体単位に加えて、これらの単量体単位を構成する単量体と共重合可能な単量体の単位を含有していてもよい。
【0043】
このような共重合可能な単量体としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシ(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート等のアクリル系モノビニル単量体;スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のモノオレフィン単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有単量体;アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド等のアミド基含有単量体;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリオキシエチレン基含有単量体;等が挙げられる。これらは、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、アクリル系モノビニル単量体が好ましく、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルがより好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0044】
樹脂部を構成する繰り返し単位中における、共重合可能な単量体の単位の含有割合は、特に限定されないが、好ましくは0~60重量%、より好ましくは5~45重量%、さらに好ましくは15~30重量%である。
【0045】
本発明で用いる中空樹脂粒子の形状は、内部に中空部が形成されていれば特に限定されず、たとえば、球形、楕円球形、不定形等が挙げられる。これらの中でも、製造の容易さから球形が好ましい。
本発明で用いる中空樹脂粒子は、1または2以上の中空部を有する。粒子内部は、中空部が確保できていれば、多孔質状となっていてもよい。粒子内部は、中空樹脂粒子の高い空隙率と、中空樹脂粒子の圧縮強度との良好なバランスを維持するために、中空部を、5個以下有するものが好ましく、より好ましくは3個以下、さらに好ましくは2個以下、1個のみ有するものが特に好ましい。
【0046】
中空樹脂粒子の平均円形度は、好ましくは0.950~0.995、より好ましくは0.970~0.995、さらに好ましくは0.980~0.995である。円形度は、粒子像と同じ投影面積を有する円の周囲長を、粒子の投影像の周囲長で除した値として定義される。また、平均円形度は、中空樹脂粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、中空樹脂粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、平均円形度は中空樹脂粒子が完全な球形の場合に1を示し、中空樹脂粒子の表面形状が複雑になるほど小さな値となる。
【0047】
本発明で用いる中空樹脂粒子は、非膨張性の中空樹脂粒子である。ここで、従来より、発泡剤等の膨張剤により膨張させることで、中空粒子を得る方法が知られているが、このような方法では、空隙率の制御が難しく、得られる粒子の空隙率が安定せず、十分な耐熱性が得ることができないという問題がある。そのため、本発明においては、中空樹脂粒子として、発泡剤等の膨張剤により膨張させることにより得られた膨張性の中空粒子ではなく、非膨張性の中空樹脂粒子を用いるものである。
【0048】
本発明で用いる中空樹脂粒子の製造方法は、特に限定されず、空隙率、個数平均粒子径、粒子径が10μm以上である粒子の個数割合、ならびに、樹脂部における、酸基含有重合性単量体単位および架橋性単量体単位の割合が上記範囲である、非膨張性の中空樹脂粒子が製造できる方法であれば、特に限定されないが、たとえば、以下に説明する本発明の一実施形態に係る中空樹脂粒子の製造方法などが挙げられる。
【0049】
すなわち、本発明の一実施形態に係る中空樹脂粒子の製造方法は、
酸基含有重合性単量体、架橋性単量体、油溶性重合開始剤、炭化水素系溶剤、懸濁安定剤、および水系媒体を含む混合液を調製する工程(混合液調製工程)と、
上記混合液を懸濁させることにより、炭化水素系溶剤を含むモノマー液滴が水系媒体中に分散した懸濁液を調製する工程(懸濁液調製工程)と、
上記懸濁液を重合させることにより、炭化水素系溶剤を内包した中空樹脂粒子前駆体を含む前駆体組成物を調製する工程(重合工程)と、
前駆体組成物を固液分離することにより中空樹脂粒子前駆体を得る工程(固液分離
工程)と、
上記中空樹脂粒子前駆体に内包される炭化水素系溶剤を除去することにより中空樹脂粒子を得る工程(溶剤除去工程)と、を含む。
【0050】
(1)混合液調製工程
まず、酸基含有重合性単量体および架橋性単量体を含む単量体、油溶性重合開始剤、炭化水素系溶剤、懸濁安定剤、および水系媒体を含む混合液を調製する。
【0051】
単量体としては、酸基含有重合性単量体および架橋性単量体を少なくとも含むものとすればよく、必要に応じて、上述した共重合可能な単量体を含ませることもできる。酸基含有重合性単量体、架橋性単量体および共重合可能な単量体としては、上述したものを用いることができる。
【0052】
油溶性重合開始剤は、水に対する溶解度が0.2質量%以下の親油性の開始剤であれば特に制限されない。油溶性重合開始剤としては、たとえば、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t一ブチルペルオキシド一2-エチルヘキサノエート、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0053】
油溶性重合開始剤の使用量は、酸基含有重合性単量体および架橋性単量体を含む単量体の総量100質量部に対し、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~7質量部、さらに好ましくは1~5質量部である。油溶性重合開始剤の使用量を上記範囲とすることにより、重合反応終了後に油溶性重合開始剤が残存することによる、予期せぬ副反応の進行を抑制しながら、重合反応を十分に進行させることできる。
【0054】
炭化水素系溶剤は、粒子内部に中空を形成するために用いられる。炭化水素系溶剤としては、特に限定されないが、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の比較的揮発性が高い溶剤が挙げられる。
【0055】
また、炭化水素系溶剤としては、20℃における比誘電率が3以下であるものが好ましい。比誘電率は、化合物の極性の高さを示す指標の1つである。炭化水素系溶剤の比誘電率が3以下と十分に小さい場合には、モノマー液滴中で相分離が速やかに進行し、中空が形成されやすいと考えられる。
20℃における比誘電率が3以下の溶剤の例は、以下の通りである。カッコ内は比誘電率の値である。
ヘプタン(1.9)、シクロヘキサン(2.0)、ベンゼン(2.3)、トルエン(2.4)。
20℃における比誘電率に関しては、公知の文献(たとえば、日本化学会編「化学便覧基礎編」、改訂4版、丸善株式会社、平成5年(1993年)9月30日発行、II-498~II-503ページ)に記載の値、及びその他の技術情報を参照できる。20℃における比誘電率の測定方法としては、例えば、JISC 2101:1999の23に準拠し、かつ測定温度を20℃として実施される比誘電率試験等が挙げられる。
【0056】
また、炭化水素系溶剤は、炭素数5~7の炭化水素化合物であってもよい。炭素数5~7の炭化水素化合物は、重合工程時に中空樹脂粒子前駆体中に容易に内包され、かつ溶剤除去工程時に中空樹脂粒子前駆体中から容易に除去することができる。中でも、炭化水素系溶剤は、炭素数6の炭化水素化合物であることが好ましい。
【0057】
炭化水素系溶剤の使用量は、酸基含有重合性単量体および架橋性単量体を含む単量体の総量100質量部に対し、好ましくは100~900質量部、より好ましくは150~700質量部、さらに好ましくは200~500質量部である。炭化水素系溶剤の使用量を調整することにより、得られる中空樹脂粒子の空隙率を制御することができるものであり、炭化水素系溶剤の使用量を上記範囲とすることにより、中空樹脂粒子の機械的特性を損なうことなく、中空樹脂粒子の空隙率を好適に制御することができる。
【0058】
懸濁安定剤は、後述する懸濁重合法における懸濁液中の懸濁状態を安定化させる作用を奏する。懸濁安定剤としては、界面活性剤を好適に用いることができ、界面活性剤を使用することにより、後述する懸濁重合法において、酸基含有重合性単量体、架橋性単量体および必要に応じて用いられる共重合可能な単量体、油溶性重合開始剤、ならびに、炭化水素系溶剤を内包するミセルを形成することができる。
【0059】
界面活性剤としては、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のいずれも用いることができ、それらを組み合わせて用いることもできる。これらの中でも、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤が好ましく、陰イオン性界面活性剤がより好ましい。
陰イオン性界面活性剤としては、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物塩などが挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルなどが挙げられる。
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
懸濁安定剤としては、界面活性剤に代えて、あるいは、界面活性剤とともに、難水溶性無機化合物や水溶性高分子等を用いてもよい。
【0060】
懸濁安定剤の使用量は、酸基含有重合性単量体および架橋性単量体を含む単量体の総量100質量部に対し、好ましくは2.6~7質量部、より好ましくは2.7~6質量部であり、さらに好ましくは2.8~5.5質量部である。懸濁安定剤の使用量を調整することにより、得られる中空樹脂粒子の個数平均粒子径を制御することができるものであり、懸濁安定剤の使用量を上記範囲とすることにより、炭化水素系溶剤を除去する工程における発泡の発生を有効に抑制しながら、中空樹脂粒子の個数平均粒子径を好適に制御することができる。
【0061】
また、水系媒体としては、水、親水性溶媒、または水および親水性溶媒の混合物が挙げられる。親水性溶媒としては、水と十分に混ざり合い相分離を起こさないものであればよく、特に制限されない。親水性溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン(THF);ジメチルスルフォキシド(DMSO)等が挙げられる。水系媒体の中でも、その極性の高さから、水を用いることが好ましい。水と親水性溶媒の混合物を用いる場合には、モノマー液滴を形成する観点から、当該混合物全体の極性が低くなりすぎないことが重要である。たとえば、水と親水性溶媒との混合比(質量比)を、水:親水性溶媒=99:1~50:50等としてもよい。
【0062】
混合液調製工程において調製される混合液は、酸基含有重合性単量体および架橋性単量体を含む単量体、油溶性重合開始剤、炭化水素系溶剤、懸濁安定剤、ならびに、水系媒体を単に混合し、適宜攪拌等をした状態の混合物であるが、この混合液中においては、酸基含有重合性単量体および架橋性単量体を含む単量体、油溶性重合開始剤、ならびに炭化水素系溶剤を含む油相が、水系媒体中において、粒径数mm程度の大きさで分散した状態となる。混合液におけるこれら材料の分散状態は、材料の種類によっては、肉眼でも観察が可能である。
【0063】
(2)懸濁液調製工程
懸濁液調製工程においては、上述した混合液調製工程において得られた混合液を懸濁させることにより、炭化水素系溶剤を含むモノマー液滴が水系媒体中に分散した懸濁液を調製する工程である。
【0064】
懸濁液調製工程において調製される懸濁液においては、酸基含有重合性単量体および架橋性単量体を含む単量体、油溶性重合開始剤、ならびに、炭化水素系溶剤を含み、かつ、0.8~3.5μm程度の粒径を持つモノマー液滴が、水系媒体中に均一に分散したものとすることができる。このようなモノマー液滴は肉眼では観察が難しく、たとえば光学顕微鏡等の公知の観察機器により観察できる。
【0065】
ここで、本実施形態に係る製造方法においては、乳化重合法ではなく、油溶性重合開始剤を用いた懸濁重合法を採用するものであるが、本実施形態に係る、油溶性重合開始剤を用いた懸濁重合法について、乳化重合法と対比しながら、説明する。
【0066】
図1(B)は、乳化重合用の分散液を示す模式図である。図1(B)中のミセル60は、その断面を模式的に示したものとする。図1(B)においては、水系媒体51中に、ミセル60、ミセル前駆体60a、溶媒中に溶出した単量体53a、および水溶性重合開始剤54が分散している様子を示している。ミセル60は、油溶性の単量体組成物53の周囲を、界面活性剤52が取り囲むことにより構成される。単量体組成物53中には、重合体の原料となる単量体等が含まれるが、重合開始剤は含まれない。
【0067】
一方、ミセル前駆体60aは、界面活性剤52の集合体ではあるものの、その内部に十分な量の単量体組成物53を含んでいない。ミセル前駆体60aは、溶媒中に溶出した単量体53aを内部に取り込んだり、他のミセル60等から単量体組成物53の一部を調達したりすることにより、ミセル60へと成長する。水溶性重合開始剤54は、水系媒体51中を拡散しつつ、ミセル60やミセル前駆体60aの内部に侵入し、これらの内部の油滴の成長を促す。したがって、乳化重合法においては、各ミセル60は水系媒体51中に単分散しているものの、ミセル60の粒径は数百nmまで成長することが予測される。
【0068】
これに対し、図1(A)は、本実施形態に係る懸濁液調製工程において調製される懸濁液の一例を示す模式図である。図1(A)中のミセル10は、その断面を模式的に示したものとする。なお、図1(A)はあくまで模式図であり、本実施形態における懸濁液は、必ずしも図1(A)に示すものに限定されない。
【0069】
図1(A)には、水系媒体1中に、ミセル10および水系媒体中に分散した単量体4a(酸基含有重合性単量体および架橋性単量体を含む単量体)が分散している様子が示されている。ミセル10は、油溶性の単量体組成物4の周囲を、界面活性剤3が取り囲むことにより構成される。単量体組成物4中には油溶性重合開始剤5、ならびに、単量体(酸基含有重合性単量体および架橋性単量体を含む単量体)および炭化水素系溶剤(いずれも図示せず)が含まれる。
【0070】
図1(A)に示すように、本実施形態に係る懸濁液調製工程においては、ミセル10の内部に単量体組成物4を含む微小油滴を予め形成した上で、油溶性重合開始剤5により、重合開始ラジカルが微小油滴中で発生する。したがって、微小油滴を成長させ過ぎることなく、目的とする粒径の中空樹脂粒子前駆体を製造することができる。
【0071】
また、図1(A)に示す懸濁重合と、図1(B)に示す乳化重合との比較からも明らかなように、図1(A)に示す懸濁重合においては、油溶性重合開始剤5が、水系媒体1中に分散した単量体4aと接触する機会は存在しない。したがって、油溶性重合開始剤を使用することにより、目的としている中空樹脂粒子の他に、余分なポリマー粒子が生成することを防止できる。本実施形態によれば、このような懸濁重合を採用することにより、最終的に得られる中空樹脂粒子を、粗大粒子の生成を抑制しつつ、個数平均粒子径を小さいものとしながら、空隙率を高くすることでき、これにより、空隙率、個数平均粒子径、および粒子径が10μm以上である粒子の個数割合が上述した範囲とされた中空樹脂粒子を好適に得ることができるものである。
【0072】
そして、本実施形態に係る懸濁液調製工程においては、酸基含有重合性単量体および架橋性単量体を含む単量体、油溶性重合開始剤、炭化水素系溶剤、懸濁安定剤、ならびに、水系媒体を含む混合液を、強攪拌し懸濁することで、モノマー液滴を形成することができる。モノマー液滴を形成する方法としては、特に限定されないが、たとえば、(インライン型)乳化分散機(大平洋機工社製、商品名:マイルダー)、高速乳化分散機(プライミクス株式会社製、商品名:T.K.ホモミクサー MARK II型)等の強攪拌が可能な装置を用いて行うことができる。特に、本実施形態に係る懸濁液調製工程においては、モノマー液滴中に相分離が生じるため、極性の低い炭化水素系溶剤がモノマー液滴の内部に集まりやすくなる。その結果、得られるモノマー液滴は、その内部に炭化水素系溶剤が、その周縁に炭化水素系溶剤以外の材料が分布することとなる。
【0073】
(3)重合工程
重合工程においては、上述した懸濁液調製工程において得られた懸濁液を重合させることにより、炭化水素系溶剤を内包した中空樹脂粒子前駆体を含む前駆体組成物を調製する工程である。ここで、中空樹脂粒子前駆体とは、酸基含有重合性単量体および架橋性単量体を含む単量体を共重合させることにより形成される粒子である。
【0074】
重合方式としては、特に限定されないが、たとえば、回分式(バッチ式)、半連続式、連続式等を採用することができる。重合温度は、好ましくは40~80℃であり、さらに好ましくは50~70℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1~20時間であり、さらに好ましくは2~15時間である。本実施形態においては、炭化水素系溶剤を内部に含むモノマー液滴を用いており、かつ、共重合により得られた前駆体組成物には、親水性を呈する酸基含有重合性単量体に由来の単位が含まれることとなるため、得られる中空樹脂粒子前駆体においては、共重合により得られた前駆体組成物が、親水性を呈する酸基含有重合性単量体に由来の単位の作用によりシェルを形成するとともに、このシェルの内部に、炭化水素系溶剤を内包したものとなる。
【0075】
(4)固液分離工程
固液分離工程は、上述した前駆体組成物を固液分離することにより中空樹脂粒子前駆体を得る工程である。
【0076】
前駆体組成物を固液分離する方法としては、特に限定されず、中空樹脂粒子前駆体に内包される炭化水素系溶剤が実質的に除去されることなく、中空樹脂粒子前駆体を含む固形分と、水系媒体を含む液体分を分離する方法であれば特に限定されず、公知の方法を用いることができる。固液分離の方法としては、たとえば、遠心分離法、ろ過法、静置分離等が挙げられ、この中でも、遠心分離法、ろ過法のいずれであってもよいが、操作の簡便性の観点から遠心分離法を採用することが好ましい。
【0077】
固液分離工程後、後述する溶剤除去工程を実施する前に、予備乾燥工程等の任意の工程を実施してもよい。予備乾燥工程としては、たとえば、固液分離工程後に得られた固形分を、乾燥機等の乾燥装置や、ハンドドライヤー等の乾燥器具により予備乾燥する工程が挙げられる。
【0078】
(5)溶剤除去工程
溶剤除去工程は、中空樹脂粒子前駆体に内包される炭化水素系溶剤を除去することにより中空樹脂粒子を得る工程である。
【0079】
溶剤除去工程における、炭化水素系溶剤の除去は、特に限定されず、気中において行ってもよいし、あるいは、液中において行ってもよい。以下においては、気中において炭化水素系溶剤の除去を行う方法を例示して、説明を行う。なお、溶剤除去工程における「気中」とは、中空樹脂粒子前駆体の外部に液体分が全く存在しない環境下、あるいは、中空樹脂粒子前駆体の外部に、炭化水素系溶剤の除去に影響しない程度のごく微量の液体分しか存在しない環境下を意味する。「気中」とは、中空樹脂粒子前駆体がスラリー中に存在しない状態と言い替えることもできるし、中空樹脂粒子前駆体が乾燥粉末中に存在する状態と言い替えることもできる。
【0080】
中空樹脂粒子前駆体中の炭化水素系溶剤を気中にて除去する方法は、特に限定されず、公知の方法が採用できる。当該方法としては、たとえば、減圧乾燥法、加熱乾燥法、気流乾燥法またはこれらの方法の併用が挙げられる。特に、加熱乾燥法を用いる場合には、加熱温度は炭化水素系溶剤の沸点以上、かつ中空樹脂粒子のシェル構造が崩れない最高温度以下とする必要がある。したがって、中空樹脂粒子前駆体中のシェルの組成と炭化水素系溶剤の種類によるが、たとえば、加熱温度を50~150℃としてもよく、60~130℃としてもよく、70~100℃としてもよい。気中における乾燥操作によって、中空樹脂粒子前駆体内部の炭化水素系溶剤が、外部の気体により置換される結果、中空部分を気体が占める中空樹脂粒子が得られる。
【0081】
乾燥雰囲気は特に限定されず、中空樹脂粒子の用途によって適宜選択することができる。乾燥雰囲気としては、たとえば、空気、酸素、窒素、アルゴン等が考えられる。また、一度、気体により中空樹脂粒子内部を満たした後、減圧乾燥することにより、一時的に内部が真空である中空樹脂粒子も得られる。
【0082】
なお、上記した一実施形態に係る方法においては、固液分離工程において、前駆体組成物を固液分離することにより中空樹脂粒子前駆体を得た後、溶剤除去工程において、中空樹脂粒子前駆体中の炭化水素系溶剤を気中にて除去する方法としたが、前駆体組成物について、予め固液分離を行うことなく、水系媒体を含む液体分と、前駆体組成物に内包された炭化水素系溶剤とを、減圧乾燥法、加熱乾燥法、気流乾燥法またはこれらの方法の併用により、同時に除去するような方法を採用してもよい。この場合には、水系媒体および炭化水素系溶剤を除去せずに、前駆体組成物に、後述する結着樹脂を直接配合することで、中間層用塗工液を得て、これを支持体上に塗布し、必要に応じて乾燥することにより、中間層を形成する方法を採用することもできる。
【0083】
本発明の感熱記録材料を構成する中間層は、たとえば、上述した中空樹脂粒子と、結着樹脂と、水系媒体とを含有する中間層用塗工液を、支持体上に塗布し、必要に応じて乾燥することにより、形成することができる。支持体上に塗布する方法としては、特に限定されず、エアーナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、およびエクストルージョン法などの既知の塗布方法のいずれを利用してもよい。
なお、この際において、上記一実施形態に係る製造方法にしたがって得られた中空樹脂粒子を使用し、これに結着樹脂と、水系媒体とを配合することで、中間層用塗工液を得る方法を採用してもよいし、あるいは、中空樹脂粒子として、水系媒体および炭化水素系溶剤を除去していない状態のものを使用して、中間層用塗工液を得る方法、すなわち、前駆体組成物に、結着樹脂を直接配合することで、中間層用塗工液を得る方法を採用してもよい。
【0084】
結着樹脂としては、特に限定されないが、たとえば、スチレン-アクリル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-アクリル共重合体、アクリル共重合体、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂等の水性エマルションを用いることができる。これらのなかでも、スチレン-ブタジエン共重合体の水性エマルションが好適である。
【0085】
また、水系媒体としては、水、親水性溶媒、または水および親水性溶媒の混合物が挙げられる。親水性溶媒としては、水と十分に混ざり合い相分離を起こさないものであればよく、特に制限されない。親水性溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン(THF);ジメチルスルフォキシド(DMSO)等が挙げられる。
【0086】
中間層用塗工液中における、結着樹脂の配合量は、中空樹脂粒子100質量部に対し、好ましくは10~100質量部、より好ましくは15~80質量部、さらに好ましくは20~60質量部である。
【0087】
また、中間層用塗工液中には、塗布適性や平滑性付与などの目的で、必要に応じて、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、焼成クレー、シリカ、ケイソウ土、合成ケイ酸アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、表面処理された炭酸カルシウムやシリカ等の無機顔料、分散剤、消泡剤、離型剤、粘性調整剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0088】
本発明の感熱記録材料を構成する中間層の載り量は、感度、印字画像の精細性、印刷適性およびヘッドマッチング性の観点より、0.7~15g/mであり、好ましくは1.0~10g/m、より好ましくは1.5~7g/m、さらに好ましくは2~5g/mである。
【0089】
<下引き層>
また、本発明の感熱記録体は、支持体と中間層との間に、感熱発色層とサーマルヘッドとの接触をより高めるため、たとえば、吸油量が50ml/100g以上の無機顔料と、結着剤とを主体とする塗工液によって下引き層を設けることができる。結着剤としては、上述した感熱発色層と同様のものを用いることができる。
【実施例
【0090】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に断りのない限り重量基準である。
各種の測定については、以下の方法に従って行った。
【0091】
<中空樹脂粒子の個数平均粒径、粒子径が10μm以上である粒子の個数割合>
レーザー回析式粒度分布測定器(島津製作所社製、商品名:SALD-2000)を用いて粒子の粒径を測定し、その個数平均をそれぞれ算出し、得られた値をその粒子の個数平均粒径とした。また、得られた粒径の測定結果より、中空樹脂粒子中に占める、粒子径が10μm以上である粒子の個数割合を算出した。
【0092】
<平均円形度>
容器中に、予めイオン交換水10mLを入れ、その中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸)0.02gを加え、さらに中空樹脂粒子0.02gを加え、超音波分散機で60W、3分間分散処理を行った。測定時の中空樹脂粒子濃度が3,000~10,000個/μLとなるように調整し、0.4μm以上の円相当径の中空樹脂粒子1,000~10,000個についてフロー式粒子像分析装置(シメックス社製、商品名:FPIA-2100)を用いて測定した。得られた測定値から、下記式にしたがって、円形度を求め、求めた円形度の数平均値を算出し、これを平均円形度とした。
(円形度)=(粒子の投影面積に等しい円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
【0093】
<中空樹脂粒子の密度の測定、および空隙率の算出>
(I)粒子の見かけ密度の測定
まず、容量100cmのメスフラスコに約30cmの中空樹脂粒子を充填し、充填した中空樹脂粒子の質量(g)を精確に秤量した。次に、中空樹脂粒子の充填されたメスフラスコに、気泡が入らないように注意しながら、イソプロパノールを標線まで精確に満たした。メスフラスコに加えたイソプロパノールの質量(g)を精確に秤量し、下記式(2)に基づき、中空樹脂粒子の見かけ密度D(g/cm)を計算した。
見かけ密度D=[中空樹脂粒子の質量]/(100-[イソプロパノールの質量]÷[測定温度におけるイソプロパノールの比重]) (2)
【0094】
(II)中空樹脂粒子の真密度の測定
予め中空樹脂粒子を粉砕した後、容量100cmのメスフラスコに粒子の粉砕片を約10g充填し、充填した粉砕片の質量(g)を精確に秤量した。
次いで、上記見かけ密度の測定と同様にイソプロパノールをメスフラスコに加え、イソプロパノールの質量(g)を精確に秤量し、下記式(3)に基づき、中空樹脂粒子の真密度D(g/cm)を計算した。
真密度D=[中空樹脂粒子の粉砕片の質量]/(100-[イソプロパノールの質量]÷[測定温度におけるイソプロパノールの比重]) (3)
【0095】
(III)空隙率の算出
上記にて得られた見かけ密度D、真密度Dから、下記式(1)に従って、空隙率(%)を算出した。
空隙率=100-(見かけ密度D/真密度D)×100 (1)
【0096】
<中空樹脂粒子の圧縮強度>
微小圧縮試験機(MCTM-500、島津製作所社製)を用いて、圧子の種類:FLAT50、対物レンズ倍率:50、負荷速度:0.8924mN/secの条件の下、中空樹脂粒子の10%圧縮強度を測定した。
【0097】
<記録濃度(感度)>
得られた感熱記録紙に対し、イシダ社製のラベルプリンターBP-4000を用いて、ドット密度:12dots/mm、印字速度:325mm/secで、印字エネルギーを最大エネルギー100%とし、各10%ずつエネルギーを低下させて記録した。そして、各エネルギーにおける光学濃度を、X-Rite社製の「SpectroEye LT」濃度計でそれぞれ測定した。感度の良否は、50%エネルギーで記録した時の光学濃度の大きさで評価し、以下の基準で評価した。なお、光学濃度の値が相対的に大きいほど、低い熱エネルギーで、高感度で、光学濃度の高い高画質(高精細)の画像が得られたといえる。
AA:光学濃度が1.2以上
A:光学濃度が0.9以上、1.2未満
B:光学濃度が0.6以上、0.9未満
C:光学濃度が0.6未満
【0098】
<印刷表面強度>
得られた感熱記録紙に対し、RI印刷試験機で記録を行い、ドライピック(紙剥け)の発生の有無を確認することで、印刷強度の評価を行った。具体的には、記録を、インクタック15、インク盛り量0.7g/mにて行い、印刷面のピッキング(印刷時に発生する紙の毛羽立ち紙剥け)の発生の度合いを観測し、下記の基準で評価した。
A:紙の毛羽立ちも、紙剥けも全く認められない。
B:紙の毛羽立ちが認められたが、実用上問題はない。
C:紙剥けが認められた。
【0099】
<マッチング性(スティッキング性)>
得られた感熱記録紙、およびハンディープリンター(タイプFHT205B、富士通社製)を22℃、65%RH環境下に1時間放置して調湿した後、印字(印字条件は、モード6印字)を行った。印字長は、プリンターによって特定の印字パターンを印字した際の印字スタート部から印字ラスト部までの印字の長さであり、スティッキング性が優れている場合は印字パターンが正確に印字されるのに対し、スティッキング性が劣っている場合は感熱記録材料の同一部分に重複して印字され、また感熱記録材料の蛇行などが発生するため、スティッキング性が劣っている場合の印字長は、スティッキング性に優れ、これにより良好な搬送性を示す場合における印字長に比べ短くなる。また、目視による印字品質確認も実施し、下記の基準によりスティッキングの評価を行った。
A:スティッキングの発生がない。
B:スティッキングの発生がわずかにある。
C:スティッキングの発生が多く認められる。
【0100】
<実施例1>
[中空樹脂粒子の製造]
(1)混合液調製工程
まず、メタクリル酸30部、メタクリル酸メチル20部、エチレングリコールジメタクリレート50部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(油溶性重合開始剤、和光純薬社製、商品名:V-65)3部、およびシクロヘキサン300部を混合し、これを油相とした。
次いで、イオン交換水800部に、界面活性剤3部を混合し、これを水相とした。
そして、水相と油相とを混合することにより、混合液を調製した。
【0101】
(2)懸濁液調製工程
上記混合液調製工程で得られた混合液を、インライン型乳化分散機(大平洋機工社製、商品名:マイルダー)により、回転数15,000rpmの条件下で5分間攪拌して懸濁させ、シクロヘキサンを内包したモノマー液滴が水中に分散した懸濁液を調製した。
【0102】
(3)重合工程
上記懸濁液調製工程で得られた懸濁液を、窒素雰囲気で65℃の温度条件下で4時間攪拌し、重合反応を行った。この重合反応により、シクロヘキサンを内包した中空樹脂粒子前駆体を含む前駆体組成物を調製した。
【0103】
(4)固液分離工程
上記重合工程で得られた前駆体組成物につき、冷却高速遠心機(コクサン社製、商品名:H-9R)により、ローターMN1、回転数3,000rpm、遠心分離時間20分間の条件で遠心分離を行い、固形分を脱水した。脱水後の固形分を乾燥機にて40℃の温度で乾燥させ、シクロヘキサンを内包した中空樹脂粒子前駆体を得た。
【0104】
(5)溶剤除去工程
上記固液分離工程で得られた中空樹脂粒子前駆体を、真空乾燥機にて、気中で80℃、15時間加熱処理することで、中空樹脂粒子を得た。得られた中空樹脂粒子について、上記方法にしたがって、個数平均粒径、平均円形度、粒子径が10μm以上である粒子の個数割合、空隙率および圧縮強度の測定を行った。結果を表1に示す。なお、得られた中空樹脂粒子は、走査型電子顕微鏡の観察結果および空隙率の値から、これらの粒子が球状であり、かつ中空部を1つのみ有するものであることが確認され、また、その樹脂部を構成する単量体単位の割合は、仕込み量とほぼ同じであった(後述する実施例2~7、比較例1~11においても同様。)。
【0105】
[感熱記録紙の製造]
(1)中間層用塗工液の調製
上記にて得られた中空樹脂粒子100部に対して、スチレン-ブタジエン重合体ラテックス(固形分濃度48%)96部と、水1400部とを混合し、固形分濃度9.2%の中間層用塗工液を得た。
【0106】
(2)感熱発色層用塗工液の調製
3-ジ(n-ブチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン(ロイコ染料)20部、部分鹸化PVA(商品名:ゴーセランL-3266、日本合成化学社製)の5%水溶液10部、および水10部からなる混合液を調製し、これをサンドミルで平均粒子径が1.0μmになるまで粉砕することで、A液を得た。
これとは別に、4,4’-イソプロピリデンジフェノール(顕色剤)20部、部分鹸化PVA(商品名:ゴーセランL-3266、日本合成化学社製)の5%水溶液10部、および水10部からなる混合液を調製し、これをサンドミルで平均粒子径が1.0μmになるまで粉砕することで、B液を得た。
そして、シリカ(商品名:ミズカシルP-527、水沢化学社製)の30%分散液60部、上記にて調製したA液40部、上記にて調製したB液120部、滑剤としてステアリン酸亜鉛の水分散液(商品名:ハイドリンZ-7-30、固形分31.5%、中京油脂社製)30部、および完全鹸化PVA(商品名:ポバール105、分子量500、クラレ社製)の15%水溶液150部を混合することで、感熱発色層用塗工液を得た。
【0107】
(3)中間層の形成
上記にて得られた中間層用塗工液を、日本製紙パピリア社製(銘柄名:白銀)65g/mの上質紙の表面に、乾燥後の載り量が1g/mとなるように塗布し、乾燥することで中間層を形成した。
【0108】
(4)感熱発色層の形成
上記にて中間層を形成した上質紙の中間層上に、上記にて調製した感熱発色層用塗工液を、乾燥後の載り量が4g/mとなるように塗布し、乾燥することで感熱発色層を形成することで、感熱記録紙を得た。
【0109】
そして、得られた感熱記録紙について、記録濃度(感度)、印刷表面強度、およびマッチング性(スティッキング性)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0110】
<実施例2>
中間層を形成する際の中間層用塗工液の塗工量を、乾燥後の載り量が2g/mとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして、感熱記録紙を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0111】
<実施例3>
中空樹脂粒子を製造する際に、シクロヘキサンの使用量を300部から250部に変更した以外は、実施例1と同様にして、中空樹脂粒子および感熱記録紙を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0112】
<実施例4>
中空樹脂粒子を製造する際に、メタクリル酸メチルの使用量を20部から65部に、エチレングリコールジメタクリレートの使用量を50部から5部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、中空樹脂粒子および感熱記録紙を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0113】
<実施例5>
中空樹脂粒子を製造する際に、メタクリル酸メチルの使用量を20部から10部に、エチレングリコールジメタクリレートの使用量を50部から60部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、中空樹脂粒子および感熱記録紙を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0114】
<実施例6>
中空樹脂粒子を製造する際に、シクロヘキサンの使用量を300部から250部に、界面活性剤の使用量を3部から4部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、中空樹脂粒子を得た。そして、中間層を形成する際の中間層用塗工液の塗工量を、乾燥後の載り量が5g/mとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして、感熱記録紙を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0115】
<実施例7>
中空樹脂粒子を製造する際に、シクロヘキサンの使用量を300部から250部に、界面活性剤の使用量を3部から5部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、中空樹脂粒子を得た。そして、中間層を形成する際の中間層用塗工液の塗工量を、乾燥後の載り量が5g/mとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして、感熱記録紙を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0116】
<比較例1>
中空樹脂粒子を製造する際に、シクロヘキサンの使用量を300部から150部に変更した以外は、実施例1と同様にして、中空樹脂粒子および感熱記録紙を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0117】
<比較例2>
中空樹脂粒子を製造する際に、シクロヘキサンの使用量を300部から900部に変更した以外は、実施例1と同様にして、中空樹脂粒子および感熱記録紙を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0118】
<比較例3>
中間層を形成する際の中間層用塗工液の塗工量を、乾燥後の載り量が0.5g/mとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして、感熱記録紙を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例4>
中間層を形成する際の中間層用塗工液の塗工量を、乾燥後の載り量が20g/mとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして、感熱記録紙を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0119】
<比較例5>
中空樹脂粒子を製造する際に、メタクリル酸メチルの使用量を20部から68部に、エチレングリコールジメタクリレートの使用量を50部から2部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、中空樹脂粒子および感熱記録紙を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0120】
<比較例6>
中空樹脂粒子を製造する際に、メタクリル酸メチルを使用せず、かつ、エチレングリコールジメタクリレートの使用量を50部から70部に更した以外は、実施例1と同様にして、中空樹脂粒子および感熱記録紙を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0121】
<比較例7>
中空樹脂粒子を製造する際に、メタクリル酸の使用量を30部から10部に、メタクリル酸メチルの使用量を20部から40部に、懸濁液調製工程において撹拌時間を5分から1分に変更した以外は、実施例1と同様にして、中空樹脂粒子および感熱記録紙を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0122】
<比較例8>
中空樹脂粒子を製造する際に、「(1)混合液調製工程」で得られた混合液を、細孔径0.2μmのシラス多孔質ガラス膜を備えた、膜乳化システム(SPGテクノ社製、型番:MN-20)に供給することで、懸濁液を得た。
そして、得られた懸濁液を使用した以外は、実施例1と同様にして、中空樹脂粒子および感熱記録紙を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0123】
<比較例9>
中空樹脂粒子を製造する際に、「(1)混合液調製工程」で得られた混合液を、細孔径5μmのシラス多孔質ガラス膜を備えた、膜乳化システム(SPGテクノ社製、型番:MN-20)に供給することで、懸濁液を得た。
そして、得られた懸濁液を使用し、中間層を形成する際の中間層用塗工液の塗工量を、乾燥後の載り量が5g/mとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして、中空樹脂粒子および感熱記録紙を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0124】
<比較例10>
中空樹脂粒子を製造する際に、「(1)混合液調製工程」で得られた混合液を、細孔径7μmのシラス多孔質ガラス膜を備えた、膜乳化システム(SPGテクノ社製、型番:MN-20)に供給することで、懸濁液を得た。
そして、得られた懸濁液を使用した以外は、実施例1と同様にして、中空樹脂粒子および感熱記録紙を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0125】
<比較例11>
中空樹脂粒子を製造する際に、界面活性剤の使用量を3部から2.5部に変更した以外は、実施例1と同様にして、中空樹脂粒子を得た。そして、中間層を形成する際の中間層用塗工液の塗工量を、乾燥後の載り量が5g/mとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして、感熱記録紙を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
表1より、中空樹脂粒子として、樹脂部を構成する繰り返し単位として、酸基含有重合性単量体単位を10~60質量%の割合で、架橋性単量体単位を5~65質量%の割合で含有し、空隙率が70~90%、個数平均粒子径が0.8~3.5μm、粒子径が10μm以上である粒子の個数割合が1.0%未満であるものを用い、かつ、載り量が0.7~15g/mにて、中間層を形成することにより、高感度で印字画像の精細性が高く、印刷適性(特に、印字表面強度)およびヘッドマッチング性(スティッキング性)に優れた感熱記録材料が得られることが確認できる(実施例1~7)。
【0128】
一方、中空樹脂粒子として、本発明所定の範囲外の粒子を使用した場合や、中間層の載り量を0.7g/m未満、あるいは、15g/m超とした場合には、感度、印刷適性、およびヘッドマッチング性(スティッキング性)のいずれかに劣る結果となった(比較例1~11)。
図1