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特許7392667含フッ素エーテル組成物、コーティング液、物品およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】含フッ素エーテル組成物、コーティング液、物品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/00 20060101AFI20231129BHJP
   C09D 171/00 20060101ALI20231129BHJP
   C09D 183/08 20060101ALI20231129BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C08L71/00 Z
C09D171/00
C09D183/08
C09D5/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020572209
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 JP2020004643
(87)【国際公開番号】W WO2020166487
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2019023333
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩田 英史
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/008380(WO,A1)
【文献】特開2002-121277(JP,A)
【文献】特表2014-503380(JP,A)
【文献】国際公開第2018/078906(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/038832(WO,A1)
【文献】特開2000-327772(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043166(WO,A1)
【文献】特開2018-089803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C09D 1/00-10/00、101/00-201/10
C08G 65/00-67/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)で表される化合物(1)と、下式(2)で表される化合物(2)と、を含み、前記式(1)の(OX 11 m11 が(OCF )と(OCF CF )とを有する場合、(OCF )に対する(OCF CF )の比率が0.1~1.5である、含フッ素エーテル組成物。
【化1】

ただし、式(1)中、
11は、ペルフルオロアルキル基であり、
11は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基であり、
m11は、2~200の整数であり、
11およびQ12は、それぞれ独立して2価の連結基であり、
11およびR12は、それぞれ独立して1価の炭化水素基であり、
11およびL12は、それぞれ独立して加水分解性基または水酸基であり、
n11およびn12は、それぞれ独立して0~2の整数であり、
13は、単結合または2価の連結基である。
【化2】

ただし、式(2)中、
21は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基であり、
m21は、2~200の整数であり、
21、Q22、Q31、Q32およびQ24は、それぞれ独立して2価の連結基であり、
21、R22、R31およびR32は、それぞれ独立して1価の炭化水素基であり、
21、L22、L31およびL32は、それぞれ独立して加水分解性基または水酸基であり、
n21、n22、n31およびn32は、それぞれ独立して0~2の整数であり、
23は、単結合または2価の連結基である。
【請求項2】
前記化合物(1)と前記化合物(2)との合計量に対して、前記化合物(2)を1.0~90.0モル%含有する、請求項1に記載の含フッ素エーテル組成物。
【請求項3】
前記X11が炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であり、前記Q13が単結合である、請求項1または2に記載の含フッ素エーテル組成物。
【請求項4】
前記-Si(R11n1111 3-n11および前記-Si(R12n1212 3-n12が、同一の基である、請求項1~3いずれか一項に記載の含フッ素エーテル組成物。
【請求項5】
前記X21が炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であり、前記Q23が単結合であり、前記Q24が炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基である、請求項1~4いずれか一項に記載の含フッ素エーテル組成物。
【請求項6】
前記-Si(R21n2121 3-n21、前記-Si(R22n2222 3-n22、前記-Si(R31n3131 3-n31および-Si(R32n3232 3-n32が同一の基である、請求項1~5いずれか一項に記載の含フッ素エーテル組成物。
【請求項7】
さらに含フッ素オイルを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル組成物。
【請求項8】
前記含フッ素オイルがペルフルオロポリエーテルオイルである、請求項7に記載の含フッ素エーテル組成物。
【請求項9】
前記化合物(1)と前記化合物(2)と前記含フッ素オイルとの合計量に対して、前記含フッ素オイルを0.1~50質量%含有する、請求項7または8に記載の含フッ素エーテル組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル組成物と、液状媒体とを含むことを特徴とするコーティング液。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル組成物から形成された表面層を基材の表面に有することを特徴とする物品。
【請求項12】
タッチパネルの指で触れる面を構成する部材の表面に前記表面層を有する、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル組成物を用いたドライコーティング法によって基材の表面を処理して、前記含フッ素エーテル組成物から形成された表面層を前記基材の表面に形成することを特徴とする物品の製造方法。
【請求項14】
ウェットコーティング法によって請求項10に記載のコーティング液を基材の表面に塗布し、乾燥させて、前記含フッ素エーテル組成物から形成された表面層を前記基材の表面に形成することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素エーテル組成物、コーティング液、物品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素化合物は、高い潤滑性、撥水撥油性等を示すため、表面処理剤に好適に用いられる。該表面処理剤によって基材の表面に撥水撥油性を付与すると、基材の表面の汚れを拭き取りやすくなり、汚れの除去性が向上する。該含フッ素化合物の中でも、ペルフルオロアルキレン鎖の途中にエーテル結合(-O-)が存在するポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖を有する含フッ素エーテル化合物は、柔軟性に優れる化合物であり、特に油脂等の汚れの除去性に優れる。
【0003】
ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖を有し、その片方の末端に、アミド結合を介して加水分解性基が結合したシリル基を2個有する含フッ素エーテル化合物を含む組成物を、防汚剤、撥水撥油剤等の表面処理剤として用いることが知られている(特許文献1および2参照。)。
【0004】
さらに、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖を有し、その両方の末端に、アミド結合を介して加水分解性基が結合したシリル基を2個ずつ有する含フッ素エーテル化合物を含む組成物を、上記同様に、防汚剤、撥水撥油剤等の表面処理剤として用いることが知られている(特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-327772号公報
【文献】国際公開第2018/043166号
【文献】特開2002-121277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者は、特許文献1や2に記載の組成物から得られる表面層においては、撥水撥油性の耐候性が不充分であると知見した。また、特許文献3に記載の組成物から得られる表面層においては、より高いレベルで撥水撥油性が要求される用途に適さない場合があることを確認した。
【0007】
本発明は、基材の表面に優れた撥水撥油性を付与できるとともに、撥水撥油性の耐摩擦性および耐候性に優れる表面層を形成できる含フッ素エーテル組成物および該含フッ素エーテル組成物を含むコーティング液の提供を目的とする。本発明はさらに、該含フッ素エーテル組成物から形成された表面層を有する物品およびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を有する含フッ素エーテル組成物、コーティング液、物品および物品の製造方法を提供する。
【0009】
[1]下式(1)で表される化合物(1)と、下式(2)で表される化合物(2)と、を含むことを特徴とする含フッ素エーテル組成物。
【化1】
ただし、式(1)中、
11は、ペルフルオロアルキル基であり、
11は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基であり、
m11は、2~200の整数であり、
11およびQ12は、それぞれ独立して2価の連結基であり、
11およびR12は、それぞれ独立して1価の炭化水素基であり、
11およびL12は、それぞれ独立して加水分解性基または水酸基であり、
n11およびn12は、それぞれ独立して0~2の整数であり、
13は、単結合または2価の連結基である。
【化2】
ただし、式(2)中、
21は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基であり、
m21は、2~200の整数であり、
21、Q22、Q31、Q32およびQ24は、それぞれ独立して2価の連結基であり、
21、R22、R31およびR32は、それぞれ独立して1価の炭化水素基であり、
21、L22、L31およびL32は、それぞれ独立して加水分解性基または水酸基であり、
n21、n22、n31およびn32は、それぞれ独立して0~2の整数であり、
23は、単結合または2価の連結基である。
【0010】
[2]前記化合物(1)と前記化合物(2)との合計量に対して、前記化合物(2)を1.0~90.0モル%含有する、[1]の含フッ素エーテル組成物。
[3]前記X11が炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であり、前記Q13が単結合である、[1]または[2]の含フッ素エーテル組成物。
[4]前記-Si(R11n1111 3-n11および前記-Si(R12n1212 3-n12が、同一の基である、[1]~[3]のいずれかの含フッ素エーテル組成物。
[5]前記X21が炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であり、前記Q23が単結合であり、前記Q24が炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基である、[1]~[4]のいずれかの含フッ素エーテル組成物。
[6]前記-Si(R21n2121 3-n21、前記-Si(R22n2222 3-n22、前記-Si(R31n3131 3-n31および-Si(R32n3232 3-n32が同一の基である、[1]~[5]のいずれかの含フッ素エーテル組成物。
[7]さらに含フッ素オイルを含む、[1]~[6]のいずれかの含フッ素エーテル組成物。
[8]前記含フッ素オイルがペルフルオロポリエーテルオイルである、[7]の含フッ素エーテル組成物。
[9]前記化合物(1)と前記化合物(2)と前記含フッ素オイルとの合計量に対して、前記含フッ素オイルを0.1~50質量%含有する、[7]または[8]の含フッ素エーテル組成物。
【0011】
[10]前記[1]~[9]のいずれかの含フッ素エーテル組成物と、液状媒体とを含むことを特徴とするコーティング液。
[11]前記[1]~[9]のいずれかの含フッ素エーテル組成物から形成された表面層を基材の表面に有することを特徴とする物品。
[12]タッチパネルの指で触れる面を構成する部材の表面に前記表面層を有する、[11]の物品。
[13]前記[1]~[9]のいずれかの含フッ素エーテル組成物を用いたドライコーティング法によって基材の表面を処理して、前記含フッ素エーテル組成物から形成された表面層を前記基材の表面に形成することを特徴とする物品の製造方法。
[14]ウェットコーティング法によって[10]のコーティング液を基材の表面に塗布し、乾燥させて、前記含フッ素エーテル組成物から形成された表面層を前記基材の表面に形成することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の含フッ素エーテル組成物および該含フッ素エーテル組成物を含むコーティング液によれば、基材の表面に優れた撥水撥油性を付与できるとともに、耐摩擦性および耐候性に優れることで、長期使用において撥水撥油性が低下しにくい表面層を形成できる。
本発明の物品は、本発明の含フッ素エーテル組成物から形成された表面層を有することで、優れた撥水撥油性を有し、該撥水撥油性は耐摩擦性および耐候性に優れ、長期使用においても撥水撥油性が低下しにくい。
【0013】
本発明の物品の製造方法によれば、基材の表面に優れた撥水撥油性を付与できるとともに、該撥水撥油性は耐摩擦性および耐候性に優れ、長期使用においても撥水撥油性が低下しにくい表面層を有する物品を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、式(1)で表される化合物を化合物(1)と表すと同様に、他の式で表される化合物も式番号を付して表す。
【0015】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「エーテル性酸素原子」とは、炭素-炭素原子間においてエーテル結合(-O-)を形成する酸素原子を意味する。
「表面層」とは、本発明の含フッ素エーテル組成物から、基材の表面に形成される層を意味する。
【0016】
「2価のオルガノポリシロキサン残基」とは、下式で表される基である。下式におけるRは、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、または、フェニル基である。また、g1は、1以上の整数であり、1~9の整数が好ましく、1~4の整数が特に好ましい。
【化3】
【0017】
含フッ素エーテル化合物の「数平均分子量」は、NMR分析法を用い、H-NMRおよび19F-NMRによって、末端基を基準にしてオキシフルオロアルキレン基の数(平均値)を求めることによって算出される。
【0018】
[含フッ素エーテル組成物]
本発明の含フッ素エーテル組成物(以下、「本組成物」とも記す。)は、化合物(1)と化合物(2)を含有する。
【0019】
化合物(1)はポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖を有し、その片方の末端に、アミド結合を介して、加水分解性基および水酸基の少なくともいずれかが結合したシリル基(以下、「反応性シリル基Y」とも記す。)を2個有する含フッ素エーテル化合物である。化合物(2)はポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖を有し、その両方の末端に、アミド結合を介して、反応性シリル基Yを2個ずつ、計4個有する含フッ素エーテル化合物である。
【0020】
本組成物は、化合物(1)および化合物(2)が有する反応性シリル基Yの反応により硬化して基材表面に表面層を形成する。反応性シリル基Yが加水分解性基を有する場合、該加水分解性基が加水分解してシラノール基(Si-OH)を形成し、該シラノール基が分子間で縮合反応してSi-O-Si結合により硬化する。反応性シリル基Yがケイ素原子に結合する水酸基を有する、すなわちシラノール基を有する場合、該シラノール基が分子間で縮合反応してSi-O-Si結合により硬化する。
また、このような硬化に際して、例えば、基材がガラス基材のように表面にシラノール基を有する場合には、該シラノール基と、化合物(1)および化合物(2)が有する、または、化合物(1)および化合物(2)から生成した、シラノール基とが反応してSi-O-Si結合が形成される。これにより、得られる表面層は基材に密着される。
【0021】
化合物(1)の場合、硬化により、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖の片末端が基材表面または表面層の内部に固定され、もう一方の末端は典型的には表面層中の大気側に存在して表面層に撥水撥油性を与える、と考えられる。一方、化合物(2)においては、硬化により、典型的には、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖の両方の末端が基材表面または表面層の内部に固定されるため、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖の中央部が表面層の撥水撥油性に寄与すると考えられる。このような、硬化状態から、表面層の形成に化合物(1)のみを用いた場合、初期において高い撥水撥油性が得られ、化合物(2)のみを用いた場合、化合物(1)のみを用いた場合に比べて、初期の撥水撥油性が低いが、耐候性および耐摩耗性に優れると想定される。
【0022】
本組成物は、このような、化合物(1)と化合物(2)を含有することで、得られる表面層に優れた撥水撥油性を付与するとともに、該撥水撥油性に優れた耐摩擦性および耐候性を付与することを可能とした。特に、化合物(1)と化合物(2)との合計量に対して化合物(2)を1.0~90.0モル%含有することで、上記効果は顕著である。
【0023】
(化合物(1))
化合物(1)は、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖である(OX11m11を有し、そのX11側の端は、基Q13を介してアミド基と結合し、アミド基のNは、基Q11、Q12を介して、反応性シリル基Yとそれぞれ結合している。ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖のO側の端は、基A11と結合している。
【0024】
【化4】
【0025】
ただし、式(1)中、
11は、ペルフルオロアルキル基であり、
11は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基であり、
m11は、2~200の整数であり、
11およびQ12は、それぞれ独立して2価の連結基であり、
11およびR12は、それぞれ独立して1価の炭化水素基であり、
11およびL12は、それぞれ独立して加水分解性基または水酸基であり、
n11およびn12は、それぞれ独立して0~2の整数であり、
13は、単結合または2価の連結基である。
【0026】
11において、ペルフルオロアルキル基中の炭素数は、表面層の耐摩擦性がより優れる点から、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましく、1~3が特に好ましい。ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが、発明の効果がより優れる点から、直鎖状が好ましい。
【0027】
ペルフルオロアルキル基の具体例としては、CF-、CFCF-、CFCFCF-、CFCFCFCF-、CFCFCFCFCF-、CFCFCFCFCFCF-、CFCF(CF)-が挙げられる。ペルフルオロアルキル基としては、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、CF-、CFCF-、CFCFCF-が好ましい。
【0028】
(OX11m11は、(OX11)で表される単位(以下、「単位(1)」とも記す。)がm11個結合してなる。
【0029】
11は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基である。フルオロアルキレン基の炭素数は1~6が好ましい。フルオロアルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが、本発明の効果がより優れる点から、直鎖状が好ましい。
【0030】
フルオロアルキレン基のフッ素原子数は、1個以上であり、表面層の耐摩擦性および撥水撥油性がより優れる点から、(X11炭素数と同数)~(X11の炭素数の2倍)であることが好ましく、ジフルオロメチレン基、および、X11の炭素数が2以上である場合において(X11の炭素数の2倍-2)~(X11の炭素数の2倍)であることがより好ましい。フルオロアルキレン基としては、ペルフルオロアルキレン基(すなわち、フッ素原子の数がX11の炭素数の2倍であるフルオロアルキレン基)が特に好ましい。
【0031】
単位(1)の具体例としては、-OCHF-、-OCFCHF-、-OCHFCF-、-OCFCH-、-OCHCF-、-OCFCFCHF-、-OCHFCFCF-、-OCFCFCH-、-OCHCFCF-、-OCFCFCFCH-、-OCHCFCFCF-、-OCFCFCFCFCH-、-OCHCFCFCFCF-、-OCFCFCFCFCFCH-、-OCHCFCFCFCFCF-、-OCF-、-OCFCF-、-OCFCFCF-、-OCF(CF)CF-、-OCFCFCFCF-、-OCF(CF)CFCF-、-OCFCFCFCFCF-、-OCFCFCFCFCFCF-が挙げられる。
【0032】
(OX11m11に含まれる単位(1)の数m11は2~200の整数であり、5~150の整数が好ましく、5~100の整数がより好ましく、10~50の整数が特に好ましい。
【0033】
(OX11m11は、1種のみの単位(1)を含んでいても2種以上の単位(1)を含んでいてもよい。2種以上の単位(1)としては、例えば、炭素数の異なる2種以上の単位(1)、炭素数が同じであっても側鎖の有無や側鎖の種類が異なる2種以上の単位(1)、炭素数が同じであってもフッ素原子の数が異なる2種以上の単位(1)が挙げられる。2種以上の単位(1)のそれぞれの数は同じであっても異なっていてもよい。2種以上の単位(1)を有する場合、各単位(1)の数の合計がm11である。
なお、(OX11m11が2種以上の単位(1)を含む場合、2種以上の単位(1)の結合順序は限定されず、ランダム、交互、ブロックに配置されてもよい。このような構成の(OX11m11は、表面層の滑り性の向上に貢献できる。
【0034】
(OX11m11が(OCF)と(OCFCF)とを有する場合、(OCF)に対する(OCFCF)の比率は0.1~10が好ましく、0.2~5がより好ましく、0.2~2がさらに好ましく、0.2~1.5が特に好ましく、0.2~0.85が最も好ましい。また、(OX11m11は、(OCF)と(OCFCF)とがランダムに配置された鎖であることが好ましい。
(OX11m11が(OCFCF)と(O(CF)とを有する場合(ただし、kは3以上の整数である。)、(OX11m11は、(OCFCF)と(O(CF)とが交互に配置された鎖であることが好ましい。kは3~8の整数が好ましく、(O(CF)としては、(OCFCFCFCF)がより好ましい。
このような構成の(OX11m11は、表面層の高い撥水撥油性と耐摩擦性の向上に貢献できる。
【0035】
化合物(1)は、反応性シリル基Yとして、-Si(R11n1111 3-n11と-Si(R12n1212 3-n12を有する。-Si(R11n1111 3-n11と-Si(R12n1212 3-n12は、同じであっても異なっていてもよい。原料の入手容易性や含フッ素エーテル化合物の製造容易性の点から、両者は、同じであることが好ましい。
【0036】
11およびR12は、それぞれ独立して1価の炭化水素基であり、1価の飽和炭化水素基が好ましい。R11およびR12の炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が特に好ましい。
【0037】
11およびL12は、それぞれ独立して加水分解性基または水酸基である。L11およびL12における加水分解性基の具体例としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシル基、イソシアナート基(-NCO)が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。
【0038】
11およびL12としては、化合物(1)の製造がより容易である点から、炭素数1~4のアルコキシ基およびハロゲン原子が好ましい。L11およびL12としては、塗布時のアウトガスが少なく、化合物(1)を含む本組成物の保存安定性がより優れる点から、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、化合物(1)を含む本組成物の長期の保存安定性が必要な場合にはエトキシ基が特に好ましく、塗布後の反応時間を短時間とする場合にはメトキシ基が特に好ましい。
【0039】
n11およびn12は、独立して、0~2の整数である。n11およびn12は、0または1であることが好ましく、0であることが特に好ましい。L11およびL12が複数存在することによって、表面層の基材への密着性がより強固になる。n11およびn12が0または1である場合、1分子中に存在する複数のL11およびL12は同じであっても異なっていてもよい。原料の入手容易性や含フッ素エーテル化合物の製造容易性の点から、両者は、同じであることが好ましい。n11およびn12が2である場合、1分子中に存在する複数のR11およびR12は同じであっても異なっていてもよい。原料の入手容易性や含フッ素エーテル化合物の製造容易性の点から、両者は、同じであることが好ましい。
【0040】
化合物(1)において、Q11およびQ12は、それぞれ独立して2価の連結基である。Q11およびQ12は、例えば、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間に、2価のオルガノポリシロキサン残基、エーテル性酸素原子もしくは-NH-を有する基である。
【0041】
11またはQ12で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。Q11またはQ12で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間に、2価のオルガノポリシロキサン残基、エーテル性酸素原子または-NH-を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0042】
11およびQ12としては、化合物を製造しやすい点から、-CHCHCH-、-CHCHOCHCHCH-、-CHCHNHCHCHCH-が好ましい(ただし、右側がSiに結合する。)。
【0043】
13は、単結合または2価の連結基である。2価の連結基としては、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-もしくは-NH-を有する基が挙げられる。
【0044】
13で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6が特に好ましい。Q13で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-または-NH-を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0045】
13としては、化合物を製造しやすい点から、単結合、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHOCHCH-、-CHNHCHCH-、-CHCHOC(O)CHCH-が好ましく(ただし、右側がC(O)に結合する。)、単結合が特に好ましい。
【0046】
化合物(1)の数平均分子量(Mn)は、表面層の耐摩擦性の点から、500~20,000が好ましく、800~10,000がより好ましく、1,000~8,000が特に好ましい。本組成物が含有する化合物(1)は1種でも2種以上でもよい。
【0047】
化合物(1)の数平均分子量(Mn)は、NMR分析法を用い以下の方法で得られる値である。すなわち、19F-NMR(溶媒:CDCl、内部標準:CFCl)により、(OX11m11の繰り返し単位を同定するとともに、繰り返し単位の数を算出し、一分子あたりの(OX11m11の分子量の平均値を算出する。次に、1H-NMR(溶媒:CDCl、内部標準:TMS)により、末端基の同定および定量を行い、末端基のモル数に基づいて、化合物(1)の数平均分子量(Mn)を算出する。以下、数平均分子量を単に「Mn」で示す場合もある。
【0048】
化合物(1)の具体例としては、例えば、特開2000-327772号公報に記載のペルフルオロポリエーテル変性アミノシラン、国際公開第2018/043166号に記載の含フッ素エーテル化合物が挙げられる。
【0049】
化合物(1)は、例えば、A11(OX11m11-Q13-C(O)N[Q-CH=CH][Q-CH=CH](Q、Qは単結合または2価の連結基)と、加水分解性基と水素原子がケイ素原子に結合したシラン化合物、例えば、HSi(R11n1111 3-n11やHSi(R12n1212 3-n12とをヒドロシリル化することで得られる。反応させるシラン化合物は1種のみであることが好ましい。
【0050】
(化合物(2))
化合物(2)は、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖である(OX21m21を有し、そのX21側の端は、基Q23を介してアミド基と結合し、アミド基のNは、基Q21、Q22を介して、反応性シリル基Yとそれぞれ結合している。ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖のO側の端は、基Q24を介してアミド基と結合し、アミド基のNは、基Q31、Q32を介して、反応性シリル基Yとそれぞれ結合している。
【0051】
【化5】
【0052】
ただし、式(2)中、
21は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基であり、
m21は、2~200の整数であり、
21、Q22、Q31、Q32およびQ24は、それぞれ独立して2価の連結基であり、
21、R22、R31およびR32は、それぞれ独立して1価の炭化水素基であり、
21、L22、L31およびL32は、それぞれ独立して加水分解性基または水酸基であり、
n21、n22、n31およびn32は、それぞれ独立して0~2の整数であり、
23は、単結合または2価の連結基である。
【0053】
(OX21m21は、(OX21)で表される単位(以下、「単位(2)」とも記す。)がm21個結合してなる。単位(2)は化合物(1)における単位(1)と、好ましい態様を含めて同様にできる。m21は化合物(1)におけるm11と、好ましい態様を含めて同様にできる。化合物(1)の(OX11m11と化合物(2)の(OX21m21は同じであっても異なっていてもよい。
【0054】
化合物(2)は、反応性シリル基Yとして、-Si(R21n2121 3-n21、-Si(R22n2222 3-n22、-Si(R31n3131 3-n31、-Si(R32n3232 3-n32を有する。化合物(2)が有する4個の反応性シリル基Yは、化合物(1)が有する2個の反応性シリル基Yである、-Si(R11n1111 3-n11、-Si(R12n1212 3-n12と、好ましい態様を含めて同様にできる。化合物(2)が有する4個の反応性シリル基Yはそれぞれが異なっても、同じであってもよい。さらに、化合物(1)の2個の反応性シリル基Yと化合物(2)の4個の反応性シリル基Yは同じであっても異なっていてもよい。原料の入手容易性や含フッ素エーテル化合物の製造容易性の点から、4個の反応性シリル基Yは、同じであることが好ましい。
【0055】
化合物(2)において、Q21、Q22、Q31およびQ32は、それぞれ独立して2価の連結基であり、化合物(1)が有するQ11およびQ12と、好ましい態様を含めて同様にできる。また、化合物(2)におけるQ23は、化合物(1)におけるQ13と、好ましい態様を含めて同様にできる。
【0056】
化合物(2)におけるQ24は2価の連結基であり、フッ素原子で置換されていてもよいアルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-もしくは-NH-を有する基が挙げられる。
【0057】
24で表されるフッ素原子で置換されていてもよいアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6が特に好ましい。Q24で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-または-NH-を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0058】
24としては、化合物を製造しやすい点から、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CF-、-CFCF-、-CFCFCF-、-CHCHOCH-、-CHCHNHCH-、-CHCHC(O)OCHCH-が好ましい(ただし、左側がCに結合する。)。X11がペルフルオロアルキレン基の場合、Q24はペルフルオロアルキレン基であることが特に好ましい。
【0059】
化合物(2)の数平均分子量(Mn)は、表面層の耐摩擦性の点から、500~20,000が好ましく、800~10,000がより好ましく、1,000~8,000が特に好ましい。なお、化合物(2)のMnは、化合物(1)のMnと同様の方法で得られる。本組成物が含有する化合物(2)は1種でも2種以上でもよい。
【0060】
化合物(2)の具体例としては、例えば、特開2002-121277号公報に記載のペルフルオロポリエーテル変性アミノシランが挙げられる。
【0061】
化合物(2)は、化合物(1)と同様に、例えば、[CH=CH-Qd’][CH=CH-Qc’]N(O)C-Q24-(OX11m11-Q23-C(O)N[Q-CH=CH][Q-CH=CH](Q、Q、Qc’、Qd’は単結合または2価の連結基)と、加水分解性基と水素原子がケイ素原子に結合したシラン化合物、例えば、HSi(R21n2121 3-n21、HSi(R22n2222 3-n22、HSi(R31n3131 3-n31、HSi(R32n3232 3-n32とをヒドロシリル化することで得られる。反応させるシラン化合物は1種のみであることが好ましい。
【0062】
(本組成物)
本組成物は、化合物(1)と化合物(2)とを混合することで製造できる。本組成物が含有する化合物(1)と化合物(2)の割合は、化合物(1)と化合物(2)との合計量に対して、化合物(2)が1.0~90.0モル%が好ましい。化合物(1)と化合物(2)との合計量に対する化合物(2)の割合はより好ましくは2.0~50.0モル%である。
【0063】
本組成物においては、化合物(1)と化合物(2)とを上記割合で含有することで、得られる表面層に優れた撥水撥油性を付与するとともに、該撥水撥油性に優れた耐摩擦性および耐候性を付与する効果がより顕著である。
【0064】
本組成物における化合物(1)と化合物(2)との合計量に対する化合物(2)の割合は、得られる表面層に求められる特性に応じて適宜調整できる。例えば、表面層に特に高い耐候性を付与することを目的とする場合は、上記割合は10.0~50.0モル%が好ましい。また、表面層に特に高い耐摩擦性および特に高い耐候性を付与することを目的とする場合は、5.0~50.0モル%が好ましい。表面層に特に高い撥水撥油性を付与することを目的とする場合は、上記割合は、2.0~30.0モル%が好ましい。
【0065】
本組成物における化合物(1)と化合物(2)の組み合わせは、化合物(1)と化合物(2)のポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖である(OX11m11と(OX21m21が同様の構造である組合せが好ましい。
【0066】
また、(OX11m11および(OX21m21が、単位(1)、単位(2)として(OCF)と(OCFCF)を有する場合、化合物(1)と化合物(2)との合計量に対する化合物(2)の割合が10.0~50.0モル%が好ましい。それにより、得られる表面層に優れた撥水撥油性を付与するとともに、該撥水撥油性に優れた耐摩擦性および耐候性を付与する効果がより顕著である。
【0067】
(OX11m11および(OX21m21が、単位(1)、単位(2)として(OCFCF)と(O(CF)を交互に有する場合、化合物(1)と化合物(2)との合計量に対する化合物(2)の割合が5.0~30.0モル%が好ましい。それにより、得られる表面層に優れた撥水撥油性を付与するとともに、該撥水撥油性に優れた耐摩擦性および耐候性を付与する効果がより顕著である。
【0068】
本組成物において化合物(1)および化合物(2)はそれぞれ、化合物自体が含有されてもよく、化合物が有する反応性シリル基Yが加水分解性基を有する場合はその一部が加水分解反応した状態、さらに反応性シリル基Yがシラノール基を有する場合はそのシラノール基が、または上記加水分解反応で生成したシラノール基が部分的に縮合した状態で含まれていてもよい。
【0069】
本組成物が含有する化合物(1)と化合物(2)の合計含有量は、組成物全量に対して50~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましく、99~100質量%がさらに好ましく、99.5~100質量%が特に好ましい。
【0070】
本組成物は本発明の効果を損なわない範囲で任意成分を含有できる。任意成分としては、例えば、含フッ素オイル、界面活性剤、化合物(1)および化合物(2)が有する反応性シリル基Yの加水分解と縮合反応を促進する酸触媒や塩基性触媒等の公知の添加剤が挙げられる。酸触媒としては、塩酸、硝酸、酢酸、硫酸、燐酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が挙げられる。
【0071】
含フッ素エーテル組成物に含まれる任意成分としては、含フッ素オイルが好ましい。含フッ素オイルとしては、ペルフルオロポリエーテルオイルが好ましい。ペルフルオロポリエーテルオイルとしては、(OX11)や(OX21)と同様のオキシペルフルオロアルキレン単位からなるペルフルオロポリエーテル鎖とその両端に位置するペルフルオロアルキル基とを有する化合物が好ましい。ペルフルオロポリエーテルオイルとしては、例えば、ソルベイ社製のFOMBLIN(登録商標)MシリーズまたはZシリーズ等が挙げられる。
【0072】
任意成分は、化合物(1)および化合物(2)の製造工程で生成した副生成物や製造工程における未反応物等の不純物を含んでもよい。不純物としては、例えば、FCCFCF-OCF(CF)-C(O)N[-CH-CH=CH、前記A11(OX11m11-Q13-C(O)N[Q-CH=CH][Q-CH=CH]、前記[CH=CH-Qd’][CH=CH-Qc’]N(O)C-Q24-(OX11m11-Q23-C(O)N[Q-CH=CH][Q-CH=CH]、テトラメチルジビニルシロキサン等が挙げられる。
【0073】
任意成分の含有量は本組成物全量に対して50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。任意成分が含フッ素オイルの場合には、含フッ素オイルの含有量は本組成物全量に対して、0.1~50質量%が好ましく、1~45質量%がより好ましく、10~40質量%がさらに好ましく、15~35質量%が特に好ましく、20~33質量%が最も好ましい。なお、任意成分が含フッ素オイルの場合には、化合物(1)と化合物(2)の合計含有量は、組成物全量に対して50~99.9質量%が好ましく、55~99質量%がより好ましく、60~90質量%がさらに好ましく、65~85質量%が特に好ましく、67~80質量%が最も好ましい。
【0074】
[コーティング液]
本発明のコーティング液(以下、「本コーティング液」とも記す。)は、本組成物と液状媒体とを含む。本コーティング液は、液状であればよく、溶液であっても分散液であってもよい。
【0075】
本コーティング液における本組成物の含有量は、本コーティング液のうち、0.001~50質量%が好ましく、0.001~20質量%がより好ましく、0.001~10質量%がさらに好ましく、0.01~1質量%が特に好ましい。
【0076】
(液状媒体)
液状媒体としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒は、含フッ素有機溶媒でも非フッ素有機溶媒でもよく、両溶媒を含んでもよい。
【0077】
含フッ素有機溶媒としては、フッ素化アルカン、フッ素化芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フッ素化アルキルアミン、フルオロアルコール等が挙げられる。
【0078】
フッ素化アルカンとしては、炭素数4~8の化合物が好ましい。市販品としては、C13H(AGC社製、アサヒクリン(登録商標)AC-2000)、C13(AGC社製、アサヒクリン(登録商標)AC-6000)、CCHFCHFCF(ケマーズ社製、バートレル(登録商標)XF)等が挙げられる。
【0079】
フッ素化芳香族化合物としては、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ペルフルオロトルエン、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0080】
フルオロアルキルエーテルとしては、炭素数4~12の化合物が好ましい。市販品としては、CFCHOCFCFH(AGC社製、アサヒクリン(登録商標)AE-3000)、COCH(3M社製、ノベック(登録商標)7100)、COC(3M社製、ノベック(登録商標)7200)、CCF(OCH)C(3M社製、ノベック(登録商標)7300)等が挙げられる。
【0081】
フッ素化アルキルアミンとしては、ペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミン等が挙げられる。
【0082】
フルオロアルコールとしては、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール等が挙げられる。
【0083】
非フッ素有機溶媒としては、水素原子および炭素原子のみからなる化合物と、水素原子、炭素原子および酸素原子のみからなる化合物が好ましく、炭化水素、アルコール、ケトン、エーテル、エステルが挙げられる。
【0084】
液状媒体は、単独媒体であっても、2種以上を混合した混合媒体であってもよい。混合媒体としては、例えば、AC-6000とAE-3000の1:99~99:1(質量比)の混合媒体、ノベック7200とノベック7100の1:99~99:1(質量比)の混合媒体、AC-6000と2,2,3,3-テトラフルオロプロパノールの50:50~99:1(質量比)の混合媒体が挙げられる。
【0085】
液状媒体の含有量は、本コーティング液のうち、50~99.999質量%が好ましく、80~99.999質量%がより好ましく、90~99.999質量%がさらに好ましく、99~99.99質量%が特に好ましい。
【0086】
[物品]
本発明の物品(以下、「本物品」とも記す。)は、本組成物から形成された表面層を基材の表面に有する。
【0087】
表面層の厚さは、0.1~100nmが好ましく、0.1~50nmが特に好ましい。表面層の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、表面処理による効果が充分に得られやすい。表面層の厚さが上記範囲の上限値以下であれば、利用効率が高い。表面層の厚さは、薄膜解析用X線回折計(RIGAKU社製、ATX-G)を用いて、X線反射率法によって反射X線の干渉パターンを得て、干渉パターンの振動周期から算出できる。
【0088】
基材としては、撥水撥油性の付与が求められている基材が挙げられる。基材の材料としては、金属、樹脂、ガラス、サファイア、セラミック、石、これらの複合材料が挙げられる。ガラスは化学強化されていてもよい。ガラスとしては、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラス、石英ガラスが好ましく、化学強化したソーダライムガラス、化学強化したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス、および化学強化したホウ珪酸ガラスが特に好ましい。透明樹脂としては、アクリル樹脂、ポリカーボネートが好ましい。
【0089】
基材の表面にはSiO膜等の下地膜が形成されていてもよい。基材は本物品の用途に応じて適宜選択される。
【0090】
[物品の製造方法]
本物品の製造方法において、本組成物を用いて基材の表面に表面層を形成する方法は、ドライコーティング法であってもウェットコーティング法であってもよい。
【0091】
ドライコーティング法により表面層を形成する場合、本組成物を用いてドライコーティング法により基材の表面を処理する方法が好ましい。ウェットコーティング法により表面層を形成する場合、本コーティング液を基材の表面に塗布し、乾燥させて、表面層を形成する方法が好ましい。
【0092】
ドライコーティング法としては、物理的蒸着法(真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法)、化学的蒸着法(熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法)、イオンビームスパッタリング法等が挙げられる。本組成物中の化合物の分解を抑制できる点、および装置の簡便さの点から、真空蒸着法が特に好ましい。真空蒸着時には、鉄、鋼等の金属多孔体に本組成物を含浸させたペレット状物質を用いてもよい。本コーティング液を鉄、鋼等の金属多孔体に含浸させ、液状媒体を乾燥除去させて、本組成物が含浸したペレット状物質を用いてもよい。
【0093】
ウェットコーティング法において本コーティング液を基材の表面に塗布する方法としては、スピンコート法、ワイプコート法、スプレーコート法、スキージーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法、フローコート法、ロールコート法、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0094】
ドライコーティング法またはウェットコーティング法により表面層を形成する際には、表面層の耐摩擦性を向上させるために、必要に応じて、加熱、加湿、光照射等の後処理を行って表面層を得てもよい。これにより、例えば、表面層中に化合物(1)および化合物(2)の反応性シリル基Yに由来する未反応のケイ素原子に結合した加水分解性基や水酸基、または加水分解後のシラノール基等が存在していた場合に、それらの加水分解反応や加水分解性基の縮合反応が促進され、充分に硬化した、表面層が得られる。
【0095】
本物品が基材上に有する表面層は、優れた撥水撥油性を有するとともに、該撥水撥油性は耐摩擦性および耐候性に優れ、長期使用においても撥水撥油性が低下しにくい特性を有する。
【実施例
【0096】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下、「%」は特に断りのない限り「質量%」である。
【0097】
[化合物(1)および化合物(2)の製造]
(化合物(1-1)の製造)
<工程1>
化合物(1-1)の原料として、化合物(1-1a)を、国際公開第2013/121984号の実施例11に記載の方法(具体的には例11-1~11-3)によって得た。
【0098】
【化6】
m1の平均値:13、数平均分子量:5,050。
【0099】
<工程2>
50mLの3つ口フラスコ内に、工程1で得た化合物(1-1a)の10.1g、ジアリルアミン(関東化学社製)の0.97g、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6トリデカフルオロオクタン(AGC社製、アサヒクリン(登録商標)AC-6000)の10.0gを入れ、室温で8時間撹拌した。反応粗液の全量を窒素雰囲気下でろ過をして副生成物のジアリルアミンフッ酸塩を除去した後に、エバポレータで濃縮し、粗生成物の9.8gを得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィに展開して、化合物(1-1b)の9.5g(収率99%)を分取した。シリカゲルカラムクロマトグラフィにおいては、展開溶媒はAC-6000を使用した。目的物を回収の際には、展開溶媒をロータリーエバポレーターで留去し、回収して展開溶媒に再利用した。
【0100】
【化7】
m1の平均値:13。
【0101】
<工程3>
温度計、還流冷却器および撹拌機を取り付けた100mLのナスフラスコに、工程2で得た化合物(1-1b)の5.0g、白金/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金含有量:2質量%)の0.03g、トリメトキシシランの0.36g、アニリンの0.01gおよびAC6000の2.0gを入れ、室温で8時間撹拌した。溶媒等を減圧留去し、孔径0.5μmのメンブランフィルタでろ過し、化合物(1-1)の5.2g(収率99%)を得た。
【0102】
【化8】
m1の平均値:13、数平均分子量:5,040。
【0103】
(化合物(1-2)の製造)
<工程1>
化合物(1-2)の原料として、化合物(1-2a)を、国際公開第2017/038830号の実施例1-3に記載の方法(具体的には化合物(13-1))によって得た。
【0104】
【化9】
m5の平均値:21、m6の平均値:20、数平均分子量:4,550。
【0105】
<工程2>
化合物(1-1)の製造例の工程2(化合物(1-1b)の合成時)において、化合物(1-1a)の代わりに化合物(1-2a)を用いる以外は同様の操作を行い、化合物(1-2b)を得た。
【0106】
【化10】
m5の平均値:21、m6の平均値:20。
【0107】
<工程3>
化合物(1-1)の製造例の工程3において、化合物(1-1b)の代わりに化合物(1-2b)を用いる以外は同様の操作を行い、化合物(1-2)を得た。
【0108】
【化11】
m5の平均値:21、m6の平均値:20、数平均分子量:4,540。
【0109】
(化合物(2-1)の製造)
<工程1>
国際公開第2013-121984号の実施例の例1-1に記載の方法にしたがって化合物(2-1a)を得た。
CF=CFO-CFCFCFCHOH ・・・(2-1a)
【0110】
<工程2>
200mLのナスフラスコに、HO-CHCFCFCH-OHの16.2g、炭酸カリウムの13.8gを入れ、120℃で撹拌し、工程1で得た化合物(2-1a)の278gを加えて120℃で2時間撹拌した。25℃に戻し、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン(AGC社製、アサヒクリン(登録商標)AC-2000)および塩酸をそれぞれ50g入れ、分液し、有機相を濃縮した。得られた反応粗液をカラムクロマトグラフィにて精製し、HO-CHCFCFCH-OHと化合物(2-1a)の反応物として化合物(2-1b)の117.7g(収率40%)を得た。
【0111】
<工程3>
還流冷却器を接続した100mLのナスフラスコに、工程2で得た化合物(2-1b)の10.0g、フッ化ナトリウム粉末の1.20g、ジクロロペンタフルオロプロパン(CFCFCHCl:3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパンと1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパンの混合溶媒、AGC社製、アサヒクリン(登録商標)AK-225)の80.0gを取り入れ、CFCFCFOCF(CF)COFの9.9gを加えた。窒素雰囲気下、40℃で24時間撹拌した後、室温で終夜撹拌した。加圧ろ過器でフッ化ナトリウム粉末を除去した後、過剰のCFCFCFOCF(CF)COFとAK-225を減圧留去した。シリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:AK-225)で高極性の不純物を除去し、化合物(2-1b)とCFCFCFOCF(CF)COFの反応物として化合物(2-1c)の9.0g(収率75%)を得た。
【0112】
<工程4>
オートクレーブ(ニッケル製、内容積500mL)を用意し、オートクレーブのガス出口に、0℃に保持した冷却器、NaFペレット充填層、および-10℃に保持した冷却器を直列に設置した。また-10℃に保持した冷却器から凝集した液をオートクレーブに戻す液体返送ラインを設置した。
【0113】
オートクレーブにトリクロロトリフルオロエタン(CClFCClF;R-113)の312gを投入し、25℃に保持しながら撹拌した。オートクレーブに窒素ガスを25℃で1時間吹き込んだ後、20%フッ素ガスを、25℃、流速2.0L/時間で1時間吹き込んだ。次いで、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、オートクレーブに、工程3で得た化合物(2-1c)の8.4gをR-113の84gに溶解した溶液を、3.6時間かけて注入した。
【0114】
次いで、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、オートクレーブの内圧を0.15MPa(ゲージ圧)まで加圧した。オートクレーブ内に、R-113中に0.015g/mLのベンゼンを含むベンゼン溶液の9mLを、25℃から40℃にまで加熱しながら注入し、オートクレーブのベンゼン溶液注入口を閉めた。15分撹拌した後、再びベンゼン溶液の6mLを、40℃を保持しながら注入し、注入口を閉めた。同様の操作をさらに3回繰り返した。ベンゼンの注入総量は0.33gであった。
【0115】
さらに、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、1時間撹拌を続けた。次いで、オートクレーブ内の圧力を大気圧にして、窒素ガスを1時間吹き込んだ。オートクレーブの内容物をエバポレータで濃縮し、化合物(2-1d)の8.8g(収率99%)を得た。
【0116】
【化12】
m4の平均値:10。
【0117】
<工程5>
化合物(1-1)の製造例の工程2(化合物(1-1b)の合成時)において、化合物(1-1a)の代わりに化合物(2-1d)を用いる以外は同様の操作を行い、化合物(2-1e)を得た。
【0118】
【化13】
m4の平均値:10。
【0119】
<工程6>
化合物(1-1)の製造例の工程3において、化合物(1-1b)の代わりに化合物(2-1e)を用いる以外は同様の操作を行い、化合物(2-1)を得た。
【0120】
【化14】
m4の平均値:10、数平均分子量:4,490。
【0121】
(化合物(2-2)の製造)
<工程1>
化合物(2-2b)(Fluorolink D4000、ソルベイ社製)を用意した。
HOCH(CFO)m7(CFCFO)m8CFCHOH ・・・(2-2b)
m7+m8の平均値:44、数平均分子量:4,080。
【0122】
<工程2>
化合物(2-1)の製造例の工程3(化合物(2-1c)の合成時)において、化合物2-1bの代わりに化合物(2-2b)を用いる以外は同様の操作を行い、化合物(2-2c)を得た。
【0123】
【化15】
m7+m8の平均値:44。
【0124】
<工程3>
化合物(2-1)の製造例の工程4(化合物(2-1d)の合成時)において、化合物(2-1c)の代わりに化合物(2-2c)を用いる以外は同様の操作を行い、化合物(2-2d)を得た。
【0125】
【化16】
m7+m8の平均値:44。
【0126】
<工程4>
化合物(1-1)の製造例の工程2(化合物(1-1b)の合成時)において、化合物(1-1a)の代わりに化合物(2-2d)を用いる以外は同様の操作を行い、化合物(2-2e)を得た。
【0127】
【化17】
m7+m8の平均値:44。
【0128】
<工程5>
化合物(1-1)の製造例の工程3において、化合物(1-1b)の代わりに化合物(2-2e)を用いる以外は同様の操作を行い、化合物(2-2)を得た。
【0129】
【化18】
m7+m8の平均値:44、数平均分子量:4,755。
【0130】
[含フッ素オイル]
化合物(3-1)(ソルベイ社製のFOMBLIN M15)を用意した。
CF(OCFm9(OCFCFm10OCF3 ・・・(3-1)
m9+m10の平均値:105、数平均分子量:9,700。
【0131】
[例1~22]
上記で得た化合物(1-1)、(1-2)、化合物(2-1)、(2-2)および含フッ素オイルを表1に示す組み合わせ、割合で混合して例1~22の含フッ素エーテル組成物を製造した。例1~18が実施例であり、例19~22が比較例である。例1で得た含フッ素エーテル組成物を以下「組成物1」と表記する。他の例により得られた含フッ素エーテル組成物も同様に表記する。
【0132】
【表1】
※1:化合物1と化合物2との合計量に対する化合物1の割合
※2:化合物1と化合物2との合計量に対する化合物2の割合
※3:化合物1と化合物2と含フッ素オイルとの合計量に対する含フッ素オイルの割合
【0133】
[例23]
組成物1を用いて、ドライコーティング(真空蒸着法)により、基材の表面処理を行い、表面層付き基材21を得た。基材としては化学強化ガラス(ドラゴントレイル:製品名、AGC社製、50mm×50mm、厚さ0.5mm)を用いた。
【0134】
真空蒸着は、真空蒸着装置(昭和真空社製、SGC-22WA)を用いて行った。組成物1の35mgを真空蒸着装置内のモリブデン製ボートに充填し、真空蒸着装置内を5×10-3Pa以下に排気した。組成物1を配置したボートを加熱し、組成物1を基材の表面に堆積することによって、基材の表面に表面膜を形成した。表面膜が形成された基材を、温度:25℃、湿度:40%RHの条件で一晩放置し、基材の表面に表面層を有する表面層付き基材21を得た。表面層の厚さは10nmであった。例23は実施例である。
【0135】
[例24~44]
組成物1の代わりに組成物2~22を用いた以外は例23と同様にして表面層付き基材を得た。表面層の厚さは、いずれも10nmであった。例24~40が実施例であり、例41~44が比較例である。
【0136】
[評価]
上記例23~44で得た表面層付き基材の表面層について、以下の方法で、初期の水接触角、摩擦試験後の水接触角、耐候試験後の水接触角を測定し評価した。なお、以下の評価において表面層の表面は、いずれも、表面層の空気側の表面である。結果を表2に示す。
【0137】
(水接触角測定方法)
表面層の表面に置いた、約2μLの蒸留水を、接触角測定装置DM-500(協和界面科学社製)を用いて測定した。表面層の表面における異なる5箇所で測定を行い、その平均値を算出した。接触角の算出には2θ法を用いた。
【0138】
<初期水接触角>
表面層の表面について、初期の水接触角を上記測定方法で測定した。
【0139】
<耐候試験後水接触角>
JIS Z2381:2001に準拠して屋外暴露試験(耐候試験)を行った。すなわち、評価サンプルの表面層が水平に対して30度の角度で南向きになるよう屋外に3ヶ月設置した。耐候試験後の表面層の表面について、水接触角を上記測定方法で測定した。
【0140】
また、耐候試験前後における水接触角の変化量を算出した。耐候試験前後における水接触角の変化量は、初期水接触角-耐候試験後水接触角で求められる。
【0141】
<摩擦試験後水接触角>
表面層について、JIS L0849:2013(ISO 105-X12:2001)に準拠して往復式トラバース試験機(ケイエヌテー社製)を用い、スチールウールボンスター(番手:♯0000、寸法:5mm×10mm×10mm)を圧力:98.07kPa、速度:320cm/分で5000回往復させる摩擦試験を行った。摩擦試験後の表面層の表面について、水接触角を上記測定方法で測定した。
【0142】
また、摩擦試験前後における水接触角の変化量を算出した。摩擦試験前後における水接触角の変化量は、初期水接触角-摩擦試験後水接触角で求められる。
【0143】
このようにして測定される初期の水接触角は95度以上が好ましい。耐候試験前後における水接触角の変化量は15度以下が好ましい。また、摩擦試験前後における水接触角の変化量は13度以下が好ましい。上記測定結果を表2に示す。
【0144】
なお、表面層の初期の水接触角および摩擦試験後の水接触角はいずれも100度以上が特に好ましい。なお、表面層の水接触角は、高いほど好ましいため、上限値は特に限定されない。
【0145】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0146】
本組成物は、潤滑性や撥水撥油性の付与が求められている各種の用途に用いることができる。例えば、輸送機器用物品、精密機器用物品、光学機器用物品、建築用物品または電子機器用物品に用いるのが好ましい。
【0147】
輸送機器用物品の具体例としては、電車、自動車、船舶および航空機等における、外装部材、内装部材、ガラス(例えば、フロントガラス、サイドガラスおよびリアガラス)、ミラー、タイヤホイールが挙げられる。精密機器用物品の具体例としては、撮影機器における窓材が挙げられる。光学機器用物品の具体例としては、レンズが挙げられる。建築用物品の具体例としては、窓、床材、壁材、ドア材が挙げられる。電子機器用物品の具体例は、通信用端末または画像表示装置におけるディスプレイ用ガラス、ディスプレイ用保護フィルム、反射防止フィルム、指紋センサー、タッチパネルが挙げられる。
【0148】
本組成物のより具体的な使用例としては、タッチパネル等の表示入力装置、透明なガラス製または透明なプラスチック製部材の表面保護コート、キッチン用防汚コート、電子機器、熱交換器、電池等の撥水防湿コートや防汚コート、トイレタリー用防汚コート、導通しながら撥液が必要な部材へのコート、熱交換機の撥水・防水・滑水コート、振動ふるいやシリンダ内部等の表面低摩擦コート等が挙げられる。
【0149】
さらに、ディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板、あるいはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの、携帯電話、携帯情報端末等の機器のタッチパネルシートやタッチパネルディスプレイ等人の指あるいは手のひらで画面上の操作を行う表示入力装置を有する各種機器、トイレ、風呂、洗面所、キッチン等の水周りの装飾建材、配線板用防水コーティング熱交換機の撥水・防水コート、太陽電池の撥水コート、プリント配線板の防水・撥水コート、電子機器筐体や電子部品用の防水・撥水コート、送電線の絶縁性向上コート、各種フィルタの防水・撥水コート、電波吸収材や吸音材の防水性コート、風呂、厨房機器、トイレタリー用防汚コート、熱交換機の撥水・防水・滑水コート、振動ふるいやシリンダ内部等の表面低摩擦コート、機械部品、真空機器部品、ベアリング部品、自動車部品、工具等の表面保護コートが挙げられる。
【0150】
本組成物は、上記特性を有することから、これらの用途の中でも特にタッチパネルにおいて、指で触れる面を構成する部材の該面に表面層を有するタッチパネルとすれば、効果は顕著である。
なお、2019年02月13日に出願された日本特許出願2019-023333号の明細書、特許請求の範囲および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。