(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、樹脂硬化膜及び画像表示素子
(51)【国際特許分類】
G03F 7/075 20060101AFI20231129BHJP
G03F 7/033 20060101ALI20231129BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20231129BHJP
C08F 230/08 20060101ALI20231129BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G03F7/075 521
G03F7/033
G03F7/004 505
C08F230/08
C08L33/14
(21)【出願番号】P 2021527555
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2020021925
(87)【国際公開番号】W WO2020261905
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2019117045
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】倉本 拓樹
(72)【発明者】
【氏名】周 正偉
(72)【発明者】
【氏名】川口 恭章
(72)【発明者】
【氏名】木下 健宏
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/110097(WO,A1)
【文献】特開2015-175995(JP,A)
【文献】特開2016-160393(JP,A)
【文献】特開2015-184411(JP,A)
【文献】特開2016-069400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/075
G03F 7/033
G03F 7/004
C08F 230/08
C08L 33/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸基を有する重合性不飽和化合物由来の構成単位(a-1)、下記式(1)又は(2)で表される構成単位(a-2)、並びに他の重合性不飽和化合物由来の構成単位(a-3)を含む共重合体であって、全構成単位の合計を100モル%としたときに構成単位(a-2)を20モル%~80モル%含み、重量平均分子量が1000~50000であり且つ分子量分布(Mw/Mn)が1.5~3.0である共重合体と、
(B)炭素原子数3~10の第一級アルコール及び炭素原子数3~10の第二級アルコールからなる群から選択される少なくとも1種を含む溶剤と、
(C)反応性希釈剤と、
(D)光重合開始剤と、
を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】
【化2】
[式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、nは1~10の整数である。式(2)中、R
2は水素原子又はメチル基を表し、mは1~10の整数である。]
【請求項2】
前記構成単位(a-1)の酸基がカルボキシ基であり、前記(A)共重合体が前記構成単位(a-1)を10モル%~50モル%含み、且つ前記(A)共重合体の酸価が20KOHmg/g~300KOHmg/gである請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)共重合体のシリル基当量が350g/mol~900g/molである請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)溶剤が、炭素原子数3~10の第一級アルコールを含む請求項
1~3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記構成単位(a-3)が、環構造を有する重合性不飽和化合物由来の構成単位である請求項1~
4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記構成単位(a-3)が、スチレン、スチレン誘導体、ビニルトルエン、芳香族基含有(メタ)アクリレート及び環状炭化水素基含有(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種の重合性不飽和化合物由来の構成単位である請求項1~
5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記構成単位(a-3)が、スチレン、ビニルトルエン、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種の重合性不飽和化合物由来の構成単位である請求項1~
6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記構成単位(a-3)を1モル%~70モル%含む請求項1~
7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(B)溶剤を除く成分の総和を100質量部としたときに、前記(A)共重合体の含有量が5質量部~85質量部、前記(C)反応希釈剤の含有量が5質量部~85質量部、前記(D)光重合開始剤の含有量が0.1質量部~30質量部である請求項1~
8のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
(E)着色剤を更に含む請求項1~
9のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする樹脂硬化膜。
【請求項12】
請求項
11に記載の樹脂硬化膜を具備することを特徴とする画像表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、樹脂硬化膜及び画像表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイの普及に伴い、液晶ディスプレイの構成部材として使用されるカラーフィルター、カラーフィルター上に設けられるオーバーコート層、層間絶縁膜等の研究が盛んに行なわれている。
【0003】
例えば、オーバーコート層及び層間絶縁膜は、その性質上、高い表面硬度が要求され、フォトリソグラフ工程で作製される場合にはアルカリ現像性も要求される。そのような性能を有する材料として、特許文献1では、樹脂(A)、シランカップリング剤(B)、重合性化合物(C)、光重合開始剤(D)及び溶剤(E)を含む感光性樹脂組成物が提案されている。
【0004】
一般的に液晶ディスプレイは、個別に作製したカラーフィルター基板とTFT(Thin-Film-Transistor)基板との間に液晶を挟み、これらの基板を貼り合わせることにより製造される。カラーフィルター基板には、液晶を配向させるためのポリイミドフィルム等の配向膜が形成されている。配向膜を形成する際に、カラーフィルター基板は、ポリイミド樹脂に含まれるN-メチルピロリドン(NMP)等の極性の高い溶剤に晒されるため、カラーフィルター基板には耐溶剤性(耐NMP性)が求められる。特許文献2には、特定の構成単位を含み、重量平均分子量が1000~50000であり且つ分子量分布(Mw/Mn)が1.5~3.0である共重合体と、炭素原子数3~10のヒドロキシ基含有溶剤を含む溶剤と、反応性希釈剤と、光重合開始剤と、着色剤とを含むカラーフィルター用感光性樹脂組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら、従来の感光性樹脂組成物では、優れた耐溶剤性を有する樹脂硬化膜を与えることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-53266号公報
【文献】国際公開第2018/110097号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、高い硬度及び優れた耐溶剤性を有する樹脂硬化膜を与え、現像性が良好である感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
更に、本発明は、高い硬度及び優れた耐溶剤性を有する樹脂硬化膜、並びにこれを具備する画像表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を含む。
[1](A)酸基を有する重合性不飽和化合物由来の構成単位(a-1)、下記式(1)又は(2)で表される構成単位(a-2)、並びに他の重合性不飽和化合物由来の構成単位(a-3)を含む共重合体であって、全構成単位の合計を100モル%としたときに構成単位(a-2)を20モル%~80モル%含み、重量平均分子量が1000~50000であり且つ分子量分布(Mw/Mn)が1.5~3.0である共重合体と、
(B)炭素原子数3~10の第一級アルコール及び炭素原子数3~10の第二級アルコールからなる群から選択される少なくとも1種を含む溶剤と、
(C)反応性希釈剤と、
(D)光重合開始剤と、
を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【0009】
【0010】
【0011】
[式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、nは1~10の整数である。式(2)中、R2は水素原子又はメチル基を表し、mは1~10の整数である。]
【0012】
[2]前記構成単位(a-1)の酸基がカルボキシ基であり、前記(A)共重合体が前記構成単位(a-1)を10モル%~50モル%含み、且つ前記(A)共重合体の酸価が20KOHmg/g~300KOHmg/gである[1]に記載の感光性樹脂組成物。
【0013】
[3]前記(B)溶剤が、炭素原子数3~10の第一級アルコールを含む[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物。
【0014】
[4]前記構成単位(a-3)が、環構造を有する重合性不飽和化合物由来の構成単位である[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0015】
[5]前記構成単位(a-3)が、スチレン、スチレン誘導体、ビニルトルエン、芳香族基含有(メタ)アクリレート及び環状炭化水素基含有(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種の重合性不飽和化合物由来の構成単位である[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0016】
[6]前記構成単位(a-3)が、スチレン、ビニルトルエン、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種の重合性不飽和化合物由来の構成単位である[1]~[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0017】
[7]前記構成単位(a-3)を1モル%~70モル%含む[1]~[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0018】
[8]前記(B)溶剤を除く成分の総和を100質量部としたときに、前記(A)共重合体の含有量が5質量部~85質量部、前記(C)反応希釈剤の含有量が5質量部~85質量部、前記(D)光重合開始剤の含有量が0.1質量部~30質量部である[1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0019】
[9](E)着色剤を更に含む[1]~[8]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0020】
[10][1]~[9]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする樹脂硬化膜。
【0021】
[11][10]に記載の樹脂硬化膜を具備することを特徴とする画像表示素子。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高い硬度及び優れた耐溶剤性を有する樹脂硬化膜を与え、現像性が良好である感光性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、高い硬度及び優れた耐溶剤性を有する樹脂硬化膜、並びにこれを具備する画像表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0024】
<感光性樹脂組成物>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(A)共重合体と、(B)溶剤と、(C)反応性希釈剤と、(D)光重合開始剤とを含有するものである。本実施形態の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、(E)着色剤を更に含有する。本実施形態の感光性樹脂組成物は、光照射により重合硬化し、樹脂硬化膜を形成する。
【0025】
[(A)共重合体]
本実施形態における(A)共重合体は、酸基を有する重合性不飽和化合物由来の構成単位(a-1)(以下、単に「構成単位(a-1)」とも言う。)と、下記式(1)又は(2)で表される構成単位(a-2)(以下、単に「構成単位(a-2)」とも言う。)と、他の重合性不飽和化合物由来の構成単位(a-3)(以下、単に「構成単位(a-3)」とも言う。)とを有する。
【0026】
【0027】
【0028】
式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、nは1~10の整数である。式(2)中、R2は水素原子又はメチル基を表し、mは1~10の整数である。
【0029】
構成単位(a-1)の原料となる、(A-1)酸基を有する重合性不飽和化合物は、酸基及びエチレン性不飽和基を有するモノマーであれば特に限定されない。(A-1)化合物が有する酸基は、特に限定されないが、カルボキシ基、リン酸基(-O-P(=O)(OH)2)、スルホン酸基(-S(=O)2OH)等が好ましい。現像性の観点から、酸基はカルボキシ基であることが特に好ましい。
【0030】
(A-1)化合物の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ビニルスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等が挙げられる。これらの中でも、入手のし易さ及び(A)共重合体を製造する際の反応性の観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、メタクリル酸及びアクリル酸から選択される少なくとも1種を意味し、「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートから選択される少なくとも1種を意味し、「(メタ)アクリロイル」は、メタクリロイル及びアクリロイルから選択される少なくとも1種を意味する。
【0031】
構成単位(a-2)の原料となる、(A-2)化合物は、下記式(3)又は(4)で表される化合物である。
【0032】
【0033】
式(3)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、nは1~10の整数である。R1はメチル基であることが好ましい。nは2~6の整数であることが好ましく、3であることがより好ましい。
【0034】
【0035】
式(4)中、R2は水素原子又はメチル基を表し、mは1~10の整数である。R2はメチル基であることが好ましい。mは2~6の整数であることが好ましく、3であることがより好ましい。
【0036】
前記(A-2)化合物の具体例としては、[(メタ)アクリロイルオキシ]メチルトリエトキシシラン、[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリエトキシシラン、[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリエトキシシラン、[(メタ)アクリロイルオキシ]オクチルトリエトキシシラン、[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルメチルジエトキシシラン、[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルメチルジエトキシシラン、[(メタ)アクリロイルオキシ]ノニルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、入手しやすさの観点から、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリエトキシシラン及び3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルメチルジエトキシシランが好ましい。
【0037】
(A)共重合体は、構成単位(a-2)を含むことにより、所望の硬度及び耐溶剤性を有する樹脂硬化膜が得られる。また、経時変化が少なく安定した(A)共重合体を得ることができ、感光性樹脂組成物としたときの保存安定性も良好である。
【0038】
構成単位(a-3)の原料となる、(A-3)他の重合性不飽和化合物は、(A-1)化合物及び(A-2)化合物以外の重合性不飽和化合物であって、酸基及びアルコキシシリル基を有さず、且つ(A-1)化合物及び(A-2)化合物と共重合可能な重合性不飽和化合物である。
(A-3)他の重合性不飽和化合物の具体例としては、例えば、スチレン;スチレンのα-、o-、m-、p-アルキル、ニトロ、シアノ、アミド誘導体;ビニルトルエン;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリフェニルメチル(メタ)アクリレート、ナフタレン(メタ)アクリレート、アントラセン(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリレート;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状炭化水素基含有(メタ)アクリレート;
【0039】
メチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート; 2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3-イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート等のイソシアナト基含有(メタ)アクリレート;前記イソシアナト基含有(メタ)アクリレートのイソシアナト基を、ブロック剤を用いてブロック化したブロックイソシアナト基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N,N-ジイソプロピルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド類;クミル(メタ)アクリレート、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、グリセリロールモノ(メタ)アクリレート、ブタントリオールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;
【0040】
ブタジエン等のジエン類;ノルボルネン、ノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン)、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、ジシクロペンタジエン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10.01,6]ドデカ-3-エン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ-4-エン等の不飽和環状炭化水素化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ビニルピリジン、酢酸ビニル、ビニルトルエン等のビニル化合物;シトラコン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等の不飽和ジカルボン酸ジエステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和多塩基酸無水物等が挙げられる。
【0041】
これらの中でも、樹脂硬化膜の硬度の観点から、(A-3)他の重合性不飽和化合物は、環構造を有する重合性不飽和化合物であることが好ましい。環構造とは、芳香環及び飽和の脂環式構造である。環構造の数は1又は2であることが好ましい。飽和脂環式構造の炭素数は5~8であることが好ましい。具体的には、スチレン、スチレン誘導体、ビニルトルエン、芳香族基含有(メタ)アクリレート、環状炭化水素基含有(メタ)アクリレート、不飽和環状炭化水素化合物等の環構造を有する重合性不飽和化合物が好ましく、スチレン、スチレン誘導体、ビニルトルエン、芳香族基含有(メタ)アクリレート及び環状炭化水素基含有(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。樹脂硬化膜の硬度及び耐溶剤性、並びに感光性樹脂組成物としての保存安定性の観点から、(A-3)他の重合性不飽和化合物は、スチレン、ビニルトルエン、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種であることが最も好ましい。
これらの(A-3)化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
構成単位(a-2)の割合は、(A)共重合体の全構成単位の合計を100モル%としたときに、20モル%~80モル%であり、20モル%~70モル%であることが好ましく、25モル%~50モル%であることがより好ましい。構成単位(a-2)の割合が、20モル%未満であると、樹脂硬化膜の所望の硬度及び耐溶剤性が得られない。一方、構成単位(a-2)の割合が、80モル%超であると、構成単位(a-1)の割合が不足して良好な現像性が得られず、また感光性樹脂組成物の保存安定性が劣る。
【0043】
構成単位(a-1)の割合は、(A)共重合体の全構成単位の合計を100モル%としたときに、10モル%~50モル%であることが好ましく、20モル%~40モル%であることがより好ましく、25モル%~35モル%であることが最も好ましい。構成単位(a-1)の割合が上記範囲であると、良好な現像性が得られる。また、構成単位(a-3)の割合は、(A)共重合体の全構成単位の合計を100モル%としたときに、1モル%~70モル%であることが好ましく、10モル%~60モル%であることがより好ましく、25モル%~50モル%であることが最も好ましい。構成単位(a-3)の割合が上記範囲であると、良好な現像性、樹脂硬化膜の硬度及び耐溶剤性が得られる。
【0044】
(A)共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1000~50000であり、2000~30000であることが好ましく、3000~15000であることがより好ましい。(A)共重合体の重量平均分子量(Mw)が1000未満であると、樹脂硬化膜の耐溶剤性が悪くなったり、現像後の露光部残膜率が低下したりする。一方、(A)共重合体の重量平均分子量(Mw)が50000超であると、現像時間が長くなり過ぎて実用性が失われる。本実施形態における(A)共重合体の重量平均分子量(Mw)の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記条件にて測定し、ポリスチレン換算にて算出されるものである。
カラム:ショウデックス(登録商標)LF-804+LF-804(昭和電工株式会社製)
カラム温度:40℃
試料:(A)共重合体の含有量が0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液
展開溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:示差屈折計(商品名:ショウデックス(登録商標)RI-71S、昭和電工株式会社製)
流速:1mL/分
【0045】
本実施形態における(A)共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、1.5~3.0であり、1.5~2.5であることが好ましく、1.5~2.0であることがより好ましい。(A)共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.5未満であると、重量平均分子量(Mw)、酸価等の目標とする数値範囲の最適化、(A)共重合体を製造する際の反応条件等をピンポイントで設定しなければならず、検討の手間と得られる効果とのバランスから現実的ではない。一方、(A)共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が3.0超であると、現像性にばらつきが発生する。分子量分布(Mw/Mn)は、上記GPC測定のクロマトグラムから測定する。
【0046】
本実施形態における(A)共重合体の酸価は、特に限定されないが、20KOHmg/g~300KOHmg/gであることが好ましく、40KOHmg/g~200KOHmg/gであることがより好ましく、60KOHmg/g~150KOHmg/gであることが最も好ましい。(A)共重合体の酸価が20KOHmg/g以上であれば、より良好な現像性が得られる。一方、(A)共重合体の酸価が300KOHmg/g以下であれば、アルカリ現像液に対して露光部分(光硬化部分)が溶解しない。
なお、(A)共重合体の酸価とは、JIS K6901 5.3に従ってブロモチモールブルーとフェノールレッドとの混合指示薬を用いて測定された値であって、(A)共重合体1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を意味する。
【0047】
本実施形態における(A)共重合体が不飽和基を有する場合、その不飽和基当量は、特に限定されないが、100g/mol~4000g/molであることが好ましく、200g/mol~3000g/molであることがより好ましい。(A)共重合体の不飽和基当量が100g/mol以上であれば、耐熱分解性及び耐熱黄変性をより高めるのに効果的である。一方、(A)共重合体の不飽和基当量が4000g/mol以下であれば、感度をより高めるのに効果的である。
【0048】
本実施形態における(A)共重合体のシリル基当量は、特に限定されないが、300g/mol~1000g/molであることが好ましく、350g/mol~900g/molであることがより好ましく、400g/mol~800g/molであることが最も好ましい。(A)共重合体のシリル基当量が300g/mol以上であれば、感光性樹脂組成物の保存安定性をより高めるのに効果的である。一方、(A)共重合体のシリル基当量が1000g/mol以下であれば、樹脂硬化膜の硬度及び耐溶剤性をより高めるのに効果的である。
なお、(A)共重合体のシリル基当量(g/mol)は、(A)共重合体の質量平均分子量を、(A)共重合体1分子当たりのシリル基の平均個数で割った(A)共重合体の分子量であり、後述の(A-2)化合物の仕込み量に基づいて算出される計算値とする。
【0049】
上記の(A)共重合体は、溶剤の存在下で、(A-1)化合物、(A-2)化合物及び(A-3)化合物からなるモノマー混合物を、当該技術分野において公知のラジカル重合方法に従って共重合させることにより調製することができる。例えば、(A-1)化合物、(A-2)化合物及び(A-3)化合物を(B)溶剤に溶解して、溶液を調製した後、その溶液に重合開始剤を添加し、50℃~130℃にて1時間~20時間反応させればよい。(A)共重合体における、それぞれの化合物の繰り返し数や、それぞれの化合物が結合する順番は特に限定されない。また、構成単位(a-1)、構成単位(a-2)及び構成単位(a-3)のいずれかを含まない共重合体を調製した後に、不足する構成単位を変性反応により共重合体内に導入することで、構成単位(a-1)、構成単位(a-2)及び構成単位(a-3)を含む(A)共重合体を調製してもよい。
【0050】
(A)共重合体を製造するためのモノマーの配合割合は、上記構成単位(a-1)~(a-3)の含有比率を規定したのと同様の理由で、規定することができる。すなわち、(A-2)化合物の配合割合は、(A-1)~(A-3)化合物の合計を100モル%としたとき、20モル%~80モル%であり、25モル%~70モル%であることが好ましく、30モル%~50モル%であることがより好ましい。(A-1)化合物の配合割合は、10モル%~50モル%であることが好ましく、15モル%~45モル%であることがより好ましく、20モル%~40モル%であることが最も好ましい。(A-3)化合物の配合割合は、1モル%~70モル%であることが好ましく、15モル%~60モル%であることがより好ましく、30モル%~50モル%であることが最も好ましい。
【0051】
(A)共重合体を製造する際に用いる溶剤は、重合反応に不活性の溶剤であれば特に限定されない。後述する感光性樹脂組成物に含まれる溶媒と同じものを使用すれば、重合反応用溶媒を分離、除去する必要が無いので好ましい。また、炭素原子数3~10の第一級アルコール及び炭素原子数3~10の第二級アルコールからなる群から選択される少なくとも1種の溶剤を用いることにより、(A)共重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を所定の範囲に制御すると共に、所望の保存安定性を有する感光性樹脂組成物を容易に得ることができる。炭素原子数3~10の第一級アルコール及び第二級アルコールを含有しない溶剤を用いて、(A)共重合体を製造すると、ゲル化が生じたり、得られる共重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)が所定の範囲内とならない上に、感光性樹脂組成物の保存安定性が低下したりする場合がある。感光性樹脂組成物の保存安定性の観点から、炭素原子数3~10の第一級アルコール又は炭素原子数3~10の第二級アルコールを主成分とする溶剤を用いることが好ましく、炭素原子数3~10の第一級アルコールを主成分とする溶剤を用いることがより好ましい。
【0052】
炭素原子数3~10の第一級アルコール及び炭素原子数3~10の第二級アルコールの具体例としては、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ドデシルアルコール、ベンジルアルコール等のモノアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類等が挙げられる。これらの中でも、入手のし易さ及び(A)共重合体を製造する際の安定性の観点から、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類が好ましい。これらのアルコールは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記したアルコールには、各種異性体が含まれるが、第三級アルコールに該当する異性体は含まない。例えば、プロピルアルコールには、1-プロピルアルコールの他に、2-プロピルアルコールが含まれる。
【0053】
(A)共重合体を製造する際に用いる溶剤には、その他の溶剤が含まれていてもよい。その他の溶剤としては、例えば、tert-ブチルアルコール、ダイアセトンアルコール等の第三級アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸メチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸i-アミル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸i-プロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソ酪酸エチル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド類等が挙げられる。これらの中でも、(A)共重合体を製造する際の安定性の観点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート系溶剤が好ましい。
【0054】
(A)共重合体を製造する際に用いる溶剤中の、炭素原子数3~10の第一級アルコール及び炭素原子数3~10の第二級アルコールからなる群から選択される少なくとも1種の含有量は、10質量%~100質量%であることが好ましく、20質量%~100質量%であることがより好ましい。炭素原子数3~10の第一級アルコール及び炭素原子数3~10の第二級アルコールからなる群から選択される少なくとも1種の含有量が上記範囲内であると、(A)共重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を所定の範囲に制御し易く、感光性樹脂組成物の保存安定性をより向上させることができる。
【0055】
(A)共重合体を製造する際に用いる溶剤の量は、特に限定されないが、(A-1)化合物、(A-2)化合物及び(A-3)化合物の仕込み量の合計を100質量部としたときに、30質量部~1000質量部であることが好ましく、50質量部~800質量部であることがより好ましい。溶剤の使用量を30質量部以上とすることにより、異常な重合反応を防止し、重合反応を安定して行うことができると共に、(A)共重合体の着色やゲル化を防止することもできる。また、溶剤の使用量を1000質量部以下とすることにより、連鎖移動作用による(A)共重合体の分子量の低下を抑制し、且つ(A)共重合体の粘度を適切な範囲に制御することができる。
【0056】
(A)共重合体を製造する際に用いることができる重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
(A)共重合体を製造する際に用いる重合開始剤の量は、特に限定されないが、(A-1)化合物、(A-2)化合物及び(A-3)化合物の仕込み量の合計を100質量部としたときに、0.1質量部~20質量部であることが好ましく、0.5質量部~16質量部であることがより好ましい。
【0058】
本実施形態の感光性樹脂組成物における(A)共重合体の配合量は、当該感光性樹脂組成物中の(B)溶剤を除く成分の総和を100質量部としたときに、5質量部~85質量部であることが好ましく、15質量部~75質量部であることがより好ましく、20質量部~65質量部であることが最も好ましい。(A)共重合体の配合量が、上記範囲内であると、感光性樹脂組成物の硬化性がより適切になる。
【0059】
[(B)溶剤]
本実施形態の感光性樹脂組成物に配合される(B)溶剤は、上記した(A)共重合体を製造する際(共重合反応)に用いた溶剤をそのまま用いることができ、上記で例示した溶剤をさらに加えることもできる。また、その他の成分を加える際に、そこに共存している溶剤であってもよい。
【0060】
本実施形態の感光性樹脂組成物における(B)溶剤の配合量は、当該感光性樹脂組成物中の(B)溶剤を除く成分の総和を100質量部としたときに、30質量部~1000質量部であることが好ましく、50質量部~800質量部であることがより好ましく、100質量部~700質量部であることが最も好ましい。(B)溶剤の配合量が、上記範囲内であると、感光性樹脂組成物の粘度がより適切になる。
【0061】
[(C)反応性希釈剤]
本実施形態の感光性樹脂組成物に配合される(C)反応性希釈剤としては、エチレン性不飽和二重結合を含んでいる化合物であれば特に限定されないが、ビニル基及び(メタ)アクリロイルオキシ基からなる群から選択される少なくとも1種を含むものが好ましい。(C)反応性希釈剤の具体例としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、α-クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等の芳香族ビニル系モノマー類;酢酸ビニル、アジピン酸ビニル等のポリカルボン酸モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、β-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリアリルシアヌレート等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリロイル基を複数個有する多官能(メタ)アクリレート類が特に好ましい。これらの(C)反応性希釈剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
本実施形態の感光性樹脂組成物における(C)反応性希釈剤の配合量は、当該感光性樹脂組成物中の(B)溶剤を除く成分の総和を100質量部としたときに、5質量部~85質量部であることが好ましく、15質量部~75質量部であることがより好ましく、20質量部~65質量部であることが最も好ましい。(C)反応性希釈剤の配合量が、上記範囲内であると、感光性樹脂組成物の粘度及び光硬化性がより適切になる。
【0063】
[(D)光重合開始剤]
本実施形態の感光性樹脂組成物に配合される(D)光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、4-(1-t-ブチルジオキシ-1-メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のアルキルフェノン類;2-メチルアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4-(1-t-ブチルジオキシ-1-メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラキス(t-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(o-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル],1-(o-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;キサントン類等が挙げられる。これらの(D)光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
本実施形態の感光性樹脂組成物における(D)光重合開始剤の配合量は、当該感光性樹脂組成物中の(B)溶剤を除く成分の総和を100質量部としたときに、0.1質量部~30質量部であることが好ましく、0.5質量部~20質量部であることがより好ましく、1質量部~15質量部であることが最も好ましい。(D)光重合開始剤の配合量が、上記範囲内であると、感光性樹脂組成物の光硬化性がより適切になる。
【0065】
[(E)着色剤]
本実施形態の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、(E)着色剤を含有してもよい。(E)着色剤としては、公知の染料及び顔料を用いることができる。(E)着色剤として染料を用いる場合には、顔料を用いた場合に比べて、輝度の高い着色パターンを得ることができ、また、良好なアルカリ現像性を示す。
【0066】
染料としては、(B)溶剤やアルカリ現像液に対する溶解性、感光性樹脂組成物中の他の成分との相互作用、耐熱性等の観点から、カルボキシル基等の酸性基を有する酸性染料、酸性染料の窒素化合物との塩、酸性染料のスルホンアミド体等を用いることが好ましい。このような染料としては、例えば、acid alizarin violet N;acid black1、2、24、48;acid blue1、7、9、25、29、40、45、62、70、74、80、83、90、92、112、113、120、129、147;acid chrome violet K;acid Fuchsin;acid green1、3、5、25、27、50;acid orange6、7、8、10、12、50、51、52、56、63、74、95;acid red1、4、8、14、17、18、26、27、29、31、34、35、37、42、44、50、51、52、57、69、73、80、87、88、91、92、94、97、103、111、114、129、133、134、138、143、145、150、151、158、176、183、198、211、215、216、217、249、252、257、260、266、274;acid violet 6B、7、9、17、19;acid yellow1、3、9、11、17、23、25、29、34、36、42、54、72、73、76、79、98、99、111、112、114、116; food yellow 3及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらの中でも、アゾ系、キサンテン系、アントラキノン系又はフタロシアニン系の酸性染料が好ましい。これらの染料は、目的とする画素の色に応じて、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、15、16、17、20、24、31、53、83、86、93、94、109、110、117、125、128、137、138、139、147、148、150、153、154、166、173、194、214等の黄色顔料;C.I.ピグメントオレンジ13、31、36、38、40、42、43、51、55、59、61、64、65、71、73等の橙色顔料;C.I.ピグメントレッド9、97、105、122、123、144、149、166、168、176、177、180、192、209、215、216、224、242、254、255、264、265等の赤色顔料;C.I.ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、60等の青色顔料;C.I.ピグメントバイオレット1、19、23、29、32、36、38等のバイオレット色顔料;C.I.ピグメントグリーン7、36、58等の緑色顔料;C.I.ピグメントブラウン23、25等の茶色顔料;C.I.ピグメントブラック1、7、カーボンブラック、チタンブラック、酸化鉄等の黒色顔料等が挙げられる。これらの顔料は、目的とする画素の色に応じて、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、染料と顔料とを併用してもよい。
【0068】
本実施形態の感光性樹脂組成物における(E)着色剤の配合量は、当該感光性樹脂組成物中の(B)溶剤を除く成分の総和を100質量部としたときに、5質量部~75質量部であることが好ましく、5質量部~65質量部であることがより好ましく、10質量部~55質量部であることが最も好ましい。
【0069】
(E)着色剤として、顔料を用いる場合、顔料の分散性を向上させる観点から、感光性樹脂組成物に公知の分散剤を配合してもよい。分散剤としては、経時の分散安定性に優れる高分子分散剤を用いることが好ましい。高分子分散剤としては、例えば、ウレタン系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレングリコールジエステル系分散剤、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤、脂肪族変性エステル系分散剤等が挙げられる。このような高分子分散剤としては、EFKA(エフカーケミカルズビーブイ(EFKA)社製)、Disperbyk(ビックケミー社製)、ディスパロン(楠本化成株式会社製)、SOLSPERSE(ゼネカ社製)等の商品名で市販されているものを用いてもよい。
着色剤を含有する感光性樹脂組成物における分散剤の配合量は、顔料等の種類に応じて適宜調整される。
【0070】
本実施形態の感光性樹脂組成物には、上記の成分に加えて、所定の特性を付与するために、公知のレベリング剤、熱重合禁止剤等の公知の添加剤を配合してもよい。感光性樹脂組成物におけるこれらの添加剤の配合量は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されない。
【0071】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、公知の混合装置を用い、上記の成分を混合することによって調製してもよいし、あるいは先に、(A)共重合体及び(B)溶剤を含む組成物を調製した後、即ち、(A-1)化合物、(A-2)化合物及び(A-3)化合物からなるモノマー混合物を、(B)溶剤の存在下で共重合させた後、(C)反応性希釈剤、(D)光重合開始剤及び任意成分の(E)着色剤を添加し、混合することによって調製してもよい。後者の調製方法では、必要に応じて、共重合後に(B)溶剤を追加で添加してもよい。
【0072】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、アルカリ現像性を有しているので、アルカリ水溶液を用いることによって現像を行うことができる。特に、本実施形態の感光性樹脂組成物は、感度及び現像性に優れると共に、耐溶剤性に優れたパターンを与えることができる。そのため、本実施形態の感光性樹脂組成物は、有機EL表示装置、液晶表示装置、固体撮像素子に組み込まれるカラーフィルター及びそのオーバーコート、層間絶縁膜を製造するために用いられるレジストとして好適に用いられる。
【0073】
<樹脂硬化膜>
本実施形態の樹脂硬化膜は、上述の感光性樹脂組成物を塗布して、光硬化させ、ベーキングすることにより形成される。フォトリソグラフィ法によりパターンを形成する場合には、上述の感光性樹脂組成物を基材に塗布して塗布膜を形成した後、所定のパターンのフォトマスクを介して、塗布膜を露光して露光部分を光硬化させる。そして、未露光部分をアルカリ水溶液で現像した後、ベーキングすることにより、所定のパターンを有する樹脂硬化膜を形成することができる。
【0074】
感光性樹脂組成物の塗布方法としては、特に限定されないが、スクリーン印刷法、ロールコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、スピンコート法、スリットコート法等が用いられる。
【0075】
感光性樹脂組成物を塗布して塗布膜を形成した後、必要に応じて、循環式オーブン、赤外線ヒーター、ホットプレート等の加熱手段を用いて、塗布膜を加熱することにより、(B)溶剤を揮発させてもよい。加熱条件は、特に限定されず、感光性樹脂組成物の組成に応じて適宜設定される。例えば、塗布膜を、50℃~120℃の温度にて、30秒~30分加熱すればよい。
【0076】
感光性樹脂組成物からなる塗布膜の露光に用いられる光源としては、特に限定されないが、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が用いられる。また、露光量も、特に限定されず、感光性樹脂組成物の組成に応じて適宜設定される。
【0077】
現像に用いられるアルカリ水溶液としては、特に限定されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液;エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン系化合物の水溶液;水酸化テトラメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩の水溶液;3-メチル-4-アミノ-N,N-ジエチルアニリン、3-メチル-4-アミノ-N-エチル-N-β-ヒドロキシエチルアニリン、3-メチル-4-アミノ-N-エチル-N-β-メタンスルホンアミドエチルアニリン、3-メチル-4-アミノ-N-エチル-N-β-メトキシエチルアニリン及びこれらの硫酸塩、塩酸塩又はp-トルエンスルホン酸塩等のp-フェニレンジアミン系化合物の水溶液等が用いられる。これらの中でも、p-フェニレンジアミン系化合物の水溶液を用いることが好ましい。なお、これらのアルカリ水溶液には、必要に応じて、消泡剤や界面活性剤を添加してもよい。また、上記のアルカリ水溶液による現像の後、水洗して乾燥させることが好ましい。
【0078】
ベーキングの条件は、特に限定されず、感光性樹脂組成物の組成に応じて加熱処理を行えばよい。例えば、130℃~250℃の温度にて、10分~60分間加熱すればよい。
【0079】
感光性樹脂組成物に(E)着色剤を配合し、ブラックマトリックスやカラーフィルター等の樹脂硬化膜を形成する場合には、色ごとに塗布、露光、現像及びベーキングの工程を繰り返すことにより、所望の着色パターン(画素)を順次形成することができる。
【0080】
[画像表示素子]
本実施形態の画像表示素子は、上述した樹脂硬化膜を具備する。本実施形態の画像表示素子としては、上述した樹脂硬化膜を具備していれば特に限定されないが、例えば、液晶表示素子、有機EL表示素子等が挙げられる。本実施形態の画像表示素子は、上述した樹脂硬化膜を具備するため、高い硬度及び優れた耐溶剤性を有する。
【実施例】
【0081】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、シリル基当量は、1分子当たりのシリル基の平均個数で割った(A)共重合体の分子量であり、(A-2)化合物の仕込み量に基づいて算出した計算値である。
【0082】
(A)共重合体の合成例を以下に示す。
【0083】
[合成例1]
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、3-メトキシ-1-ブタノール750.0gを入れ、窒素ガスで置換しながら攪拌し、88℃に昇温した。
次に、メタクリル酸33.3g(0.39モル)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製)149.7g(0.52モル)及びスチレン40.3g(0.39モル)からなるモノマー混合物に、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(重合開始剤)26.8gを添加したものを、滴下ロートから前記フラスコ中に2時間かけて滴下した。
滴下終了後、88℃にて5時間攪拌して共重合反応を行い、試料1(重量平均分子量(Mw):4500、数平均分子量(Mn):2700、分子量分布(Mw/Mn):1.7、酸価:87KOHmg/g、シリル基当量:480g/mol)を得た。
【0084】
[合成例2~17、比較合成例1~7]
表1~3に記載の原料を用いる以外は合成例1と同様にして、共重合反応を行い、試料2~24を得た。得られた試料の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、酸価(KOHmg/g)及びシリル基当量(g/mol)を、表1~3に示す。また、(A)共重合体を調製するのに用いた(A-1)化合物~(A-3)化合物のモル%を表4~6に示す。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
<(A)共重合体の評価>
(1)保存安定性
得られた試料1~24を用いて、以下の方法に従い、保存安定性の評価を行った。
試料を20mlのガラス容器に10gずつ計り取ってサンプルとし、粘度を測定した。なお、本明細書において、粘度とは、E型粘度計(RE-80、東機産業製、ロータ種類:標準コーン1°34’×R24、ロータコード:1)を使用して25℃で測定した値を意味する。続いて、ガラス容器に蓋をして密閉し、これらのサンプルをそれぞれ40℃に保った恒温器の中に1週間静置して保存した後、再び粘度を測定した。保存安定性試験前後の粘度を用いて、下記式(1)より増粘率を求めた。
式(1):増粘率(%)=(([試験後の粘度]-[試験前の粘度])/[試験前の粘度])×100
この評価の基準は以下の通りである。
○:増粘率20%未満
×:増粘率20%以上
上記の保存安定性の評価結果を表7~9に示す。
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
得られた試料1~24を用いて、以下の方法に従って、感光性樹脂組成物を調製した。
【0096】
<感光性樹脂組成物の調製>
表10に示す配合成分及び配合割合に従って、感光性樹脂組成物を調製した。
なお、表10における(A)共重合体の配合量は、(A)共重合体を合成する際に用いた溶剤を含んでおらず、表10における(B)溶剤の配合量は、(A)共重合体を合成する際に用いた溶剤と追加で配合したプロピレングリコールモノメチルエーテルとを合算したものである。
【0097】
【0098】
<感光性樹脂組成物の評価>
(1)鉛筆硬度
調製された感光性樹脂組成物を、5cm角のガラス基板(無アルカリガラス基板)上に、ベーキング後の厚さが2.5μmとなるようにスピンコートした後、90℃にて3分間加熱することで溶剤を揮発させ、ガラス基板上に塗布膜を形成した。
次に、塗布膜に波長365nmの光を200mJ/m2の露光量で露光し、露光部分を光硬化させた後、ベーキング温度230℃の乾燥器中に空気雰囲気下で30分間放置して、硬化塗膜を作製した。JIS K5600-5-4に従い、鉛筆硬度計(No.553-M、安田精機製作所製)を用いて、得られた硬化塗膜の鉛筆硬度を測定した。
この評価の基準は以下の通りである。
○:鉛筆硬度3H以上
×:鉛筆硬度3H未満
上記の鉛筆硬度の評価結果を表7~9に示す。
【0099】
得られた試料1~24を用いて、以下の方法に従って、着色剤含有感光性樹脂組成物を調製した。
【0100】
<着色剤含有感光性樹脂組成物の調製>
表11に示す配合成分及び配合割合に従って、(E)着色剤として、染料(VALIFAST BLUE 2620)を用いた着色剤含有感光性樹脂組成物を調製した。
なお、表11における(A)共重合体の配合量は、(A)共重合体を合成する際に用いた溶剤を含んでおらず、表11における(B)溶剤の配合量は、(A)共重合体を合成する際に用いた溶剤と追加で配合したプロピレングリコールモノメチルエーテルとを合算したものである。
【0101】
【0102】
<着色剤含有感光性樹脂組成物の評価>
(1)アルカリ現像性
調製された着色剤含有感光性樹脂組成物を、5cm角のガラス基板(無アルカリガラス基板)上に、露光後の厚さが2.5μmとなるようにスピンコートした後、90℃にて3分間加熱することで溶剤を揮発させ、ガラス基板上に塗布膜を形成した。
次に、塗布膜から100μmの距離に所定のパターンのフォトマスクを配置し、このフォトマスクを介して、塗布膜を露光(露光量150mJ/cm2)し、露光部分を光硬化させた。
次に、0.1質量%の水酸化カリウムを含む水溶液を、温度23℃及び圧力0.3MPaでスプレーすることにより、未露光部分を溶解して現像する際、パターンが見え始めるまでに要する時間、即ち、現像開始時間を測定した。
この評価の基準は以下の通りである。
○:現像開始時間60秒未満
×:現像開始時間60秒以上
上記のアルカリ現像性の評価結果を表7~9に示す。
【0103】
(2)耐溶剤性
調製された着色剤含有感光性樹脂組成物を、5cm角のガラス基板(無アルカリガラス基板)上に、ベーキング後の厚さが2.5μmとなるようにスピンコートした後、90℃にて3分間加熱することで溶剤を揮発させ、ガラス基板上に塗布膜を形成した。
次に、塗布膜に波長365nmの光を150mJ/m2の露光量で露光し、露光部分を光硬化させた後、ベーキング温度230℃の乾燥器中に空気雰囲気下で30分間放置して、硬化塗膜を作製した。
容量500mLの蓋付きガラス瓶に、200mLのN-メチル-2-ピロリドンを入れ、60℃の条件下に静置した。その中に上記の硬化塗膜付き試験片を浸漬した後、60℃に維持した状態で、30分静置した。
試験片のN-メチル-2-ピロリドンへの浸漬前後の色変化(ΔE*ab)を分光光度計(UV-1650PC、島津製作所製)にて測定した。
この評価の基準は以下の通りである。
○:ΔE*abが3.0未満
×:ΔE*abが3.0以上
上記の耐溶剤性の評価結果を表7~9に示す。
【0104】
表7及び8の結果から、合成例1~17で得られた(A)共重合体は、優れた保存安定性を示し、合成例1~17で得られた(A)共重合体を用いた感光性樹脂組成物は、高い硬度を有する樹脂硬化膜を与え、更に、合成例1~17で得られた(A)共重合体を用いた着色剤含有感光性樹脂組成物は、アルカリ現像性及び耐溶剤性に優れたパターンを与えた(実施例1~17)。
【0105】
これに対して、(A-2)化合物の代わりに3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン及び3-(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシランを用いた比較合成例1及び2の(A)共重合体は、保存安定性が十分ではなかった(比較例1及び2)。メトキシ型のアルコキシシリル基は、エトキシ型に比べて反応性が高いためだと推察される。また、炭素原子数3~10の第一級アルコール又は第二級アルコールのいずれかを少なくとも含む溶剤を用いない比較合成例3及び4の(A)共重合体も、保存安定性が十分ではなかった(比較例3及び4)。第三級アルコール溶剤や非アルコール溶剤は水への溶媒和が弱く、アルコキシシリル基の加水分解反応が進行しやすいためであると推察される。
【0106】
(A-1)化合物を含まない比較合成例5の(A)共重合体を用いた着色感光性樹脂組成物は、耐溶剤性は良好であったが、アルカリ現像性が不十分であった(比較例5)。(A-2)化合物の含有比率が10モル%である比較合成例6の(A)共重合体を用いた感光性樹脂組成物は、硬度が不十分であり、比較合成例6の(A)共重合体を用いた着色感光性樹脂組成物は、アルカリ現像性は良好であったが、耐溶剤性が不十分であった(比較例6)。また、(A-2)化合物の含有比率が90モル%である比較合成例7の(A)共重合体を用いた感光性樹脂組成物は、耐溶剤性は良好であったが、アルカリ現像性が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明によれば、高い硬度及び優れた耐溶剤性を有する樹脂硬化膜を与え、現像性が良好であると共に、保存安定性にも優れる感光性樹脂組成物が提供される。また、高い硬度及び優れた耐溶剤性を有する樹脂硬化膜、これを具備する画像表示素子が提供される。該感光性樹脂組成物は、透明膜、保護膜、絶縁膜、オーバーコート、フォトスペーサー、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、カラーフィルター用のレジストとして好ましく用いることができる。