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特許7392728接合用銅ペースト、接合体の製造方法及び接合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】接合用銅ペースト、接合体の製造方法及び接合体
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/00 20060101AFI20231129BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20231129BHJP
   B22F 1/068 20220101ALI20231129BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20231129BHJP
   B22F 7/08 20060101ALI20231129BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20231129BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B22F9/00 B
B22F1/00 L
B22F1/068
B22F1/05
B22F7/08 C
H01L21/60 311Q
H01L21/60 321E
H01L21/52 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021550779
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2019038626
(87)【国際公開番号】W WO2021064826
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】根岸 征央
(72)【発明者】
【氏名】中子 偉夫
(72)【発明者】
【氏名】名取 美智子
(72)【発明者】
【氏名】石川 大
(72)【発明者】
【氏名】須鎌 千絵
(72)【発明者】
【氏名】川名 祐貴
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-152176(JP,A)
【文献】特許第6563618(JP,B1)
【文献】国際公開第2016/132814(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188123(WO,A1)
【文献】特開2018-156736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00 - 9/30
B22F 1/00 - 8/00
H01L 21/60
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子と、分散媒と、を含有し、
前記金属粒子として、銅粒子を含み、
前記分散媒として、ジヒドロターピネオールと、沸点が300℃以上である化合物とを含
前記金属粒子の含有量が、接合用銅ペースト全量を基準として、85~90質量%であり、
前記分散媒の含有量が、接合用銅ペースト全量を基準として、10~15質量%であり、
前記ジヒドロターピネオールの含有量が、分散媒の全質量を基準として、60~80質量%であり、
前記沸点が300℃以上である化合物の含有量が、分散媒の全質量を基準として、20~40質量%であり、
25℃における粘度が100~200Pa・sである、接合用銅ペースト。
【請求項2】
前記銅粒子の含有量が、前記金属粒子の全質量を基準として、80~100質量%である、請求項1に記載の接合用銅ペースト。
【請求項3】
スクリーン印刷用である、請求項1又は2に記載の接合用銅ペースト。
【請求項4】
前記銅粒子として、体積平均粒径が0.12~0.8μmであるサブマイクロ銅粒子と、最大径が2~50μmであり、アスペクト比が3.0以上であるフレーク状のマイクロ銅粒子と、を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の接合用銅ペースト。
【請求項5】
前記サブマイクロ銅粒子の含有量は、前記銅粒子の全質量を基準として、30~90質量%であり、
前記マイクロ銅粒子の含有量は、前記銅粒子の全質量を基準として、10~70質量%である、請求項に記載の接合用銅ペースト。
【請求項6】
無加圧接合用である、請求項1~のいずれか一項に記載の接合用銅ペースト。
【請求項7】
第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材及び前記第2の部材を接合する接合部と、を備える接合体の製造方法であって、
前記第1の部材及び前記第2の部材の少なくとも一方の接合面に請求項1、2、4、又は5に記載の接合用銅ペーストを印刷し、前記第1の部材、前記接合用銅ペースト、及び前記第2の部材がこの順に積層されている積層構造を有する積層体を用意する第1の工程と、
前記積層体の前記接合用銅ペーストを焼結する第2の工程と、を備える、接合体の製造方法。
【請求項8】
前記印刷がスクリーン印刷である、請求項に記載の接合体の製造方法。
【請求項9】
前記第2の工程において、前記接合用銅ペーストを無加圧で加熱して焼結する、請求項又はに記載の接合体の製造方法。
【請求項10】
前記第1の部材及び前記第2の部材の少なくとも一方が半導体素子である、請求項7~9のいずれか一項に記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合用銅ペースト、接合体の製造方法及び接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する際、半導体素子とリードフレーム等(支持部材)とを接合させるため、さまざまな接合材が用いられている。半導体装置の中でも、150℃以上の高温で動作させるパワー半導体、LSI等の接合には、接合材として高融点鉛はんだが用いられてきた。近年、半導体素子の高容量化及び省スペース化により動作温度が高融点鉛はんだの融点近くまで上昇しており、接続信頼性を確保することが難しくなってきている。一方で、RoHS規制強化に伴い、鉛を含有しない接合材が求められている。
【0003】
これまでにも、鉛はんだ以外の材料を用いた半導体素子の接合が検討されている。例えば、下記特許文献1には、半導体素子と電極とを接合するための接合材として、平均粒径が1nm~50μmの酸化第2銅粒子及び還元剤を含む接合材が開示されている。また、下記特許文献2には、銅ナノ粒子と、銅マイクロ粒子もしくは銅サブマイクロ粒子、あるいはそれら両方を含む接合材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5006081号
【文献】特開2014-167145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、半導体装置の製造における量産プロセスを考慮すると、接合材には、スクリーン印刷機等の自動印刷機による印刷プロセスに適した印刷性を有していることが求められる。一般に、分散媒に金属粒子を分散させたペーストは、有機溶媒等の分散媒を配合して低粘度化することによって印刷性を向上させることができる。しかし、銅粒子を含むペーストの場合、粒子濃度が低すぎると充分な接合強度が得られにくくなるなど接合性に影響が出ることがあり、自動印刷における印刷条件でカスレや欠けが無く印刷できる印刷性と、接合性とを両立させることは必ずしも容易ではない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、充分な接合性を維持しつつ印刷性の向上を可能とする接合用銅ペースト、並びに、それを用いる接合体の製造方法及び接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、金属粒子と分散媒とを含有し、金属粒子として銅粒子を含み、分散媒としてジヒドロターピネオールを含む接合用銅ペーストに関する。
【0008】
上記接合用銅ペーストは、上記構成を有することにより、充分な接合性を維持しつつ印刷性を向上させることができる。上記接合用銅ペーストによれば、スクリーン印刷機等の自動印刷機を用いる量産プロセスによって接合体を効率よく製造することができる。
【0009】
このような効果が得られる理由は明らかではないが、ジヒドロターピネオールが銅粒子との親和性に優れていることで銅粒子の分散性が向上し、充分な銅粒子濃度において低粘度化が可能となり、印刷性と接合性との両立が可能になったものと考えられる。また、ジヒドロターピネオールがペーストのチクソ性を高めることができることで、印刷時の流動性と、印刷後のペーストの形状保持力とが高水準で両立されることも上記効果が得られる要因の一つであると本発明者らは推察する。
【0010】
上記接合用銅ペーストは、金属粒子の含有量が、接合用銅ペースト全量を基準として、85~98質量%であってもよい。この場合、接合強度を確保しやすくなり、接合する部材の大きさ(例えば、半導体素子のサイズ)が拡大することへの対応が容易となる。
【0011】
上記接合用銅ペーストは、分散媒として、沸点が300℃以上である化合物を更に含むことができる。この場合、焼結開始直前まで接合用銅ペーストに可塑性と密着性が付与され、無加圧での接合が容易になる。
【0012】
上記接合用銅ペーストは、25℃における粘度が100~200Pa・sであってもよい。この場合、自動印刷機への適合性が更に向上する。
【0013】
銅粒子の含有量は、金属粒子の全質量を基準として、80~100質量%であってもよい。
【0014】
上記接合用銅ペーストは、スクリーン印刷用であってもよい。
【0015】
なお、本明細書においてスクリーン印刷とは、ステンシル印刷とも称し、孔(開口)を有する版にペーストを擦りつける印刷方式を意味する。スキージ及びスクレーパー等については特に限定されず、公知のものを適宜適用することができる。
【0016】
接合用銅ペーストは、銅粒子として、体積平均粒径が0.12~0.8μmであるサブマイクロ銅粒子と、最大径が2~50μmであり、アスペクト比が3.0以上であるフレーク状のマイクロ銅粒子とを含んでいてもよい。この場合、無加圧での接合に好適である。
【0017】
なお、本明細書において無加圧とは、接合用銅ペーストが、接合する部材の重さのみ(すなわち、部材の重さ以外の圧力を受けていない)、又はその重さに加え、0.01MPa以下の微圧力を受けている状態を意味する。
【0018】
接合用銅ペーストにおける上記サブマイクロ銅粒子の含有量は、銅粒子の全質量を基準として、30~90質量%であり、上記マイクロ銅粒子の含有量は、銅粒子の全質量を基準として、10~70質量%であってもよい。
【0019】
接合用銅ペーストは、無加圧接合用であってよい。
【0020】
本発明の他の側面は、第1の部材と、第2の部材と、第1の部材及び第2の部材を接合する接合部と、を備える接合体の製造方法であって、第1の部材及び第2の部材の少なくとも一方の接合面に上記接合用銅ペーストを印刷し、第1の部材、接合用銅ペースト、及び第2の部材がこの順に積層されている積層構造を有する積層体を用意する第1の工程と、積層体の接合用銅ペーストを焼結する第2の工程と、を備える接合体の製造方法に関する。この製造方法によれば、上記接合用銅ペーストを用いることにより、印刷性と接合性との両立が可能となり、接合体を効率よく製造することができる。
【0021】
上記印刷はスクリーン印刷であってもよい。
【0022】
上記第2の工程において、接合用銅ペーストを無加圧で加熱して焼結してもよい。この場合、無加圧接合によって接合される部材へのダメージを低減できる。
【0023】
上記の第1の部材及び第2の部材の少なくとも一方は半導体素子であってよい。この場合、接合体として半導体装置を得ることができる。
【0024】
本発明の他の側面は、第1の部材、第2の部材、及び、第1の部材と第2の部材とを接合する接合部を備え、接合部が、上記接合用銅ペーストの焼結体からなる接合体に関する。
【0025】
上記の第1の部材及び第2の部材の少なくとも一方は半導体素子であってよい。すなわち、接合体は半導体装置であってよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、充分な接合性を維持しつつ印刷性の向上を可能とする接合用銅ペースト、並びに、それを用いる接合体の製造方法及び接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】スクリーン印刷について説明するための模式図である。
図2】本実施形態の接合用銅ペーストを用いて製造される接合体の一例を示す模式断面図である。
図3】本実施形態の接合用銅ペーストを用いて製造される半導体装置の一例を示す模式断面図である。
図4図2に示す接合体の製造方法を説明するための模式断面図である。
図5図3に示す半導体装置の製造方法を説明するための模式断面図である。
図6】本実施形態の接合用銅ペーストを用いて製造される接合体の一例を示す模式断面図である。
図7図6に示す接合体の製造方法を説明するための模式断面図である。
図8】本実施形態の接合用銅ペーストを用いて製造される接合体の一例を示す模式断面図である。
図9図8に示す接合体の製造方法を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、本実施形態の接合用銅ペーストの詳細について説明する。
【0029】
<接合用銅ペースト>
本実施形態の接合用銅ペーストは、金属粒子と、分散媒とを含有し、金属粒子として銅粒子を含み、分散媒としてジヒドロターピネオールを含む。なお、本明細書では、便宜上、複数の銅粒子の集合も「銅粒子」と称する。銅粒子以外の金属粒子についても同様である。
【0030】
(銅粒子)
銅粒子としては、サブマイクロ銅粒子、マイクロ銅粒子、及びこれら以外の銅粒子が挙げられる。
【0031】
[サブマイクロ銅粒子]
サブマイクロ銅粒子は、0.01μm以上1.00μm未満の粒径を有する銅粒子である。サブマイクロ銅粒子は、好ましくは、150℃以上300℃以下の温度範囲で焼結性を有する。サブマイクロ銅粒子は、粒径が0.01~0.80μmの銅粒子を含むことが好ましい。サブマイクロ銅粒子は、粒径が0.01~0.80μmの銅粒子を10質量%以上含んでいてよく、20質量%以上含んでいてもよく、30質量%以上含んでいてもよく、100質量%含んでいてもよい。銅粒子の粒径は、例えば、SEM像から算出することができる。銅粒子の粉末を、SEM用のカーボンテープ上にスパチュラで載せ、SEM用サンプルとする。このSEM用サンプルをSEM装置により5000倍で観察する。このSEM像の銅粒子に外接する四角形を画像処理ソフトにより作図し、その一辺をその粒子の粒径とする。
【0032】
サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径は、好ましくは0.01~0.80μmである。サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径が0.01μm以上であれば、サブマイクロ銅粒子の合成コストの抑制、良好な分散性、表面処理剤の使用量の抑制といった効果が得られやすくなる。サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径が0.80μm以下であれば、サブマイクロ銅粒子の焼結性が優れるという効果が得られやすくなる。上記効果がより一層奏される観点から、サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径は、0.02μm以上、0.05μm以上、0.10μm以上、0.11μm以上、0.12μm以上、0.15μm以上、0.2μm以上又は0.3μm以上であってもよい。また、上記効果がより一層奏される観点から、サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径は、0.60μm以下、0.50μm以下、0.45μm以下又は0.40μm以下であってもよい。サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径は、例えば、0.01~0.60μm、0.01~0.50μm、0.02~0.80μm、0.05~0.80μm、0.10~0.80μm、0.11~0.80μm、0.12~0.80μm、0.15~0.80μm、0.15~0.60μm、0.20~0.50μm、0.30~0.45μm、又は、0.30~0.40μmであってよい。
【0033】
本明細書において体積平均粒径とは、50%体積平均粒径を意味する。金属粒子(例えば銅粒子)の体積平均粒径は、例えば、以下の方法で測定することができる。まず、原料となる金属粒子、又は、金属ペーストから揮発成分を除去して得られる乾燥金属粒子を、分散剤を用いて分散媒に分散させる。次いで、得られた分散体の体積平均粒径を光散乱法粒度分布測定装置(例えば、島津ナノ粒子径分布測定装置(SALD-7500nano、株式会社島津製作所製))で測定する。光散乱法粒度分布測定装置を用いる場合、分散媒としては、ヘキサン、トルエン、α-テルピネオール、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン等を用いることができる。
【0034】
サブマイクロ銅粒子の形状は、特に限定されるものではない。サブマイクロ銅粒子の形状としては、例えば、球状、塊状、針状、柱状、フレーク状、略球状及びこれらの凝集体が挙げられる。分散性及び充填性の観点から、サブマイクロ銅粒子の形状は、球状、略球状又はフレーク状であってよく、燃焼性、分散性、フレーク状のマイクロ粒子(例えば、フレーク状のマイクロ銅粒子)との混合性等の観点から、球状又は略球状であってもよい。本明細書において、「フレーク状」とは、板状、鱗片状等の平板状の形状を包含する。
【0035】
サブマイクロ銅粒子のアスペクト比は、分散性、充填性、及びフレーク状のマイクロ粒子(例えば、フレーク状のマイクロ銅粒子)との混合性の観点から、5.0以下であってよく、3.0以下であってもよく、2.5以下であってもよく、2.0以下であってもよい。本明細書において、「アスペクト比」とは、「粒子の長辺/粒子の厚さ」を示す。粒子の長辺及び粒子の厚さは、例えば、粒子のSEM像から求めることができる。
【0036】
サブマイクロ銅粒子は、サブマイクロ銅粒子の分散性の観点から、表面処理剤で処理されていてもよい。表面処理剤は、例えば、サブマイクロ銅粒子の表面に水素結合等によって吸着していてよく、サブマイクロ銅粒子と反応してサブマイクロ銅粒子の表面に結合していてもよい。すなわち、サブマイクロ銅粒子が特定の表面処理剤由来の化合物を有していてもよい。表面処理剤は、接合用銅ペーストに含まれる有機化合物に包含される。
【0037】
表面処理剤としては、例えば、炭素数2~18の有機酸が挙げられる。炭素数2~18の有機酸としては、例えば、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、メチルヘプタン酸、エチルヘキサン酸、プロピルペンタン酸、ペラルゴン酸、メチルオクタン酸、エチルヘプタン酸、プロピルヘキサン酸、カプリン酸、メチルノナン酸、エチルオクタン酸、プロピルヘプタン酸、ブチルヘキサン酸、ウンデカン酸、メチルデカン酸、エチルノナン酸、プロピルオクタン酸、ブチルヘプタン酸、ラウリン酸、メチルウンデカン酸、エチルデカン酸、プロピルノナン酸、ブチルオクタン酸、ペンチルヘプタン酸、トリデカン酸、メチルドデカン酸、エチルウンデカン酸、プロピルデカン酸、ブチルノナン酸、ペンチルオクタン酸、ミリスチン酸、メチルトリデカン酸、エチルドデカン酸、プロピルウンデカン酸、ブチルデカン酸、ペンチルノナン酸、ヘキシルオクタン酸、ペンタデカン酸、メチルテトラデカン酸、エチルトリデカン酸、プロピルドデカン酸、ブチルウンデカン酸、ペンチルデカン酸、ヘキシルノナン酸、パルミチン酸、メチルペンタデカン酸、エチルテトラデカン酸、プロピルトリデカン酸、ブチルドデカン酸、ペンチルウンデカン酸、ヘキシルデカン酸、ヘプチルノナン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸、エチルシクロヘキサンカルボン酸、プロピルシクロヘキサンカルボン酸、ブチルシクロヘキサンカルボン酸、ペンチルシクロヘキサンカルボン酸、ヘキシルシクロヘキサンカルボン酸、ヘプチルシクロヘキサンカルボン酸、オクチルシクロヘキサンカルボン酸、ノニルシクロヘキサンカルボン酸等の飽和脂肪酸;オクテン酸、ノネン酸、メチルノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、パルミトレイン酸、サビエン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレイン酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸;テレフタル酸、ピロメリット酸、o-フェノキシ安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、ブチル安息香酸、ペンチル安息香酸、ヘキシル安息香酸、ヘプチル安息香酸、オクチル安息香酸、ノニル安息香酸等の芳香族カルボン酸が挙げられる。有機酸は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。このような有機酸と上記サブマイクロ銅粒子とを組み合わせることで、サブマイクロ銅粒子の分散性と焼結時における有機酸の脱離性を両立できる傾向にある。
【0038】
表面処理剤の処理量は、サブマイクロ銅粒子の分散性の観点から、表面処理後のサブマイクロ銅粒子の全質量を基準として、0.07~2.10質量%、0.10~1.60質量%又は0.20~1.10質量%であってよい。表面処理剤の処理量は、表面処理後のサブマイクロ銅粒子の全質量を基準として、0.07質量%以上、0.10質量%以上又は0.20質量%以上であってよい。表面処理剤の処理量は、表面処理後のサブマイクロ銅粒子の全質量を基準として、2.10質量%以下、1.60質量%以下又は1.10質量%以下であってよい。
【0039】
表面処理剤の処理量は、サブマイクロ銅粒子の表面に一分子層~三分子層付着する量であってもよい。この処理量は、以下の方法により測定される。大気中、700℃で2時間処理したアルミナ製るつぼ(例えば、アズワン製、型番:1-7745-07)に、表面処理されたサブマイクロ銅粒子をW1(g)量り取り、大気中700℃で1時間焼成する。その後、水素中、300℃で1時間処理し、るつぼ内の銅粒子の質量W2(g)を計測する。次いで、下記式に基づき、表面処理剤の処理量を算出する。
表面処理剤の処理量(質量%)=(W1-W2)/W1×100
【0040】
サブマイクロ銅粒子としては、市販されているものを用いることができる。市販されているサブマイクロ銅粒子を含む材料としては、例えば、CH-0200(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.36μm)、HT-14(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.41μm)、CT-500(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.72μm)、Tn-Cu100(太陽日産株式会社製、体積平均粒径0.12μm)及びCu-C-40(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径0.2μm)が挙げられる。
【0041】
サブマイクロ銅粒子の含有量は、接合用銅ペーストに含まれる銅粒子の全質量を基準として、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上又は50質量%以上であってよく、90質量%以下又は85質量%以下であってよい。また、サブマイクロ銅粒子の含有量は、接合用銅ペーストに含まれる銅粒子の全質量を基準として、30~90質量%、35~90質量%、40~85質量%又は50~85質量%であってよい。サブマイクロ銅粒子の含有量が上記範囲内であれば、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となる。接合用銅ペーストをマイクロデバイスの接合に用いる場合は、マイクロデバイスが良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。
【0042】
[マイクロ銅粒子]
マイクロ銅粒子は、1μm以上50μm未満の粒径を有する銅粒子である。マイクロ銅粒子は、粒径が2.0~50μmの銅粒子を含むことが好ましい。マイクロ銅粒子は、粒径が2.0~50μmの銅粒子を50質量%以上含んでいてよく、70質量%以上含んでいてもよく、80質量%以上含んでいてもよく、100質量%含んでいてもよい。
【0043】
マイクロ銅粒子の体積平均粒径は、好ましくは2.0~50μmである。マイクロ銅粒子の体積平均粒径が上記範囲内であれば、接合用銅ペーストを焼結した際の体積収縮、ボイドの発生等を低減でき、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となる。接合用銅ペーストをマイクロデバイスの接合に用いる場合は、マイクロデバイスが良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。上記効果がより一層奏される観点から、マイクロ銅粒子の体積平均粒径は、2.0~20μm、2.0~10μm、3.0~20μm又は3.0~10μmであってもよい。マイクロ銅粒子の体積平均粒径は、2.0μm以上又は3.0μm以上であってよい。マイクロ銅粒子の体積平均粒径は、50μm以下、20μm以下又は10μm以下であってよい。
【0044】
マイクロ銅粒子の形状は、特に限定されるものではない。マイクロ銅粒子の形状としては、例えば、球状、塊状、針状、フレーク状、略球状、及びこれらの凝集体が挙げられる。これらの中でも、好ましいマイクロ銅粒子の形状はフレーク状である。マイクロ銅粒子は、フレーク状のマイクロ銅粒子を50質量%以上含んでいてよく、70質量%以上含んでいてもよく、80質量%以上含んでいてもよく、100質量%含んでいてもよい。
【0045】
フレーク状のマイクロ銅粒子を用いることで、接合用銅ペースト内のマイクロ銅粒子が、接合面に対して略平行に配向することとなり、接合用銅ペーストを焼結させたときの接合面方向の体積収縮を抑制でき、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となる。接合用銅ペーストをマイクロデバイスの接合に用いる場合は、マイクロデバイスが良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。上記効果がより一層奏される観点から、フレーク状のマイクロ銅粒子のアスペクト比は、好ましくは3.0以上であり、より好ましくは4.0以上であり、更に好ましくは6.0以上である。
【0046】
フレーク状のマイクロ銅粒子の最大径及び平均最大径は、2.0~50μm、3.0~50μm又は3.0~20μmであってよい。フレーク状のマイクロ銅粒子の最大径及び平均最大径は、例えば、粒子のSEM像から求めることができる。フレーク状のマイクロ銅粒子の最大径及び平均最大径は、例えば、フレーク状のマイクロ銅粒子の長径X及び長径の平均値Xavとして求められる。長径Xは、フレーク状のマイクロ銅粒子の三次元形状において、フレーク状のマイクロ銅粒子に外接する平行二平面のうち、この平行二平面間の距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離である。
【0047】
マイクロ銅粒子において、表面処理剤の処理の有無は特に限定されるものではない。分散安定性及び耐酸化性の観点から、マイクロ銅粒子は表面処理剤で処理されていてもよい。すなわち、マイクロ銅粒子が表面処理剤由来の化合物を有していてもよい。表面処理剤は、マイクロ銅粒子の表面に水素結合等によって吸着していてよく、マイクロ銅粒子と反応してマイクロ銅粒子の表面に結合していてもよい。
【0048】
表面処理剤は、接合時の加熱により除去されるものであってもよい。このような表面処理剤としては、例えば、ドデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、リノール酸、リノレイン酸、オレイン酸等の脂肪族カルボン酸;テレフタル酸、ピロメリット酸、o-フェノキシ安息香酸等の芳香族カルボン酸;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソボルニルシクロヘキサノール、テトラエチレングリコール等の脂肪族アルコール;p-フェニルフェノール等の芳香族アルコール;オクチルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン等のアルキルアミン;ステアロニトリル、デカンニトリル等の脂肪族ニトリル;アルキルアルコキシシラン等のシランカップリング剤;ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、シリコーンオリゴマー等の高分子処理材などが挙げられる。表面処理剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
マイクロ銅粒子としては、市販されているものを用いることができる。市販されているマイクロ銅粒子を含む材料としては、例えば、1050YF(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径1.7μm)、MA-C025KFD(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径7.5μm)、3L3(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径8.0μm)、2L3N(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径9.9μm)、3L3N(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径7μm)及び1110F(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径3.8μm)が挙げられる。
【0050】
マイクロ銅粒子の含有量は、接合用銅ペーストに含まれる銅粒子の全質量を基準として、10質量%以上、15質量%以上又は20質量%以上であってよく、70質量%以下、50質量%以下、45質量%以下又は40質量%以下であってよい。また、マイクロ銅粒子の含有量は、接合用銅ペーストに含まれる銅粒子の全質量を基準として、10~70質量%、10~65質量%、10~50質量%、15~60質量%、15~50質量%、又は15~45質量%であってよい。マイクロ銅粒子の含有量が、上記範囲内であれば、接合部(例えば焼結体)の剥離、ボイド及びクラックの発生を抑制して接合強度を確保することができる。接合用銅ペーストをマイクロデバイスの接合に用いる場合は、マイクロデバイスが良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。フレーク状のマイクロ銅粒子の含有量は、上記のマイクロ銅粒子の含有量の範囲と同じであってよい。フレーク状のマイクロ銅粒子の含有量がこのような範囲にある場合、上記効果がより一層奏される傾向がある。
【0051】
[その他の銅粒子]
サブマイクロ銅粒子及びマイクロ銅粒子以外の銅粒子としては、銅ナノ粒子が挙げられる。銅ナノ粒子とは、0.01μm未満の粒径を有する銅粒子を指す。銅ナノ粒子は一般的に表面にカルボン酸やアミンで被覆(表面被覆材という)されている。銅ナノ粒子は銅マイクロ粒子に比べて比表面積が大きく、単位質量当たりに占める表面被覆材の割合が増加する傾向にある。そのため焼結時(加熱時)に脱離する表面被覆材が多くなるため、銅マイクロ粒子に比べて焼結時の体積収縮が増える傾向ある。体積収縮を少なくする観点から、銅ナノ粒子の含有量は、銅粒子の全質量を基準として、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、含まないことがさらに好ましい。
【0052】
本実施形態の接合用銅ペーストにおける銅粒子の含有量は、接合用銅ペーストに含まれる金属粒子の全質量を基準として、80~100質量%であってもよく、90~100質量%であってもよく、95~100質量%であってもよい。
【0053】
本実施形態の接合用銅ペーストは、サブマイクロ銅粒子及びマイクロ銅粒子を含むことがより好ましい。サブマイクロ銅粒子とマイクロ銅粒子とを併用する場合、乾燥に伴う体積収縮及び焼結収縮が抑制されやすく、焼結時に接合用銅ペーストが接合面から剥離しにくくなる。すなわち、サブマイクロ銅粒子とマイクロ銅粒子とを併用することで、接合用銅ペーストを焼結させたときの体積収縮が抑制され、接合体はより充分な接合強度を有することができる。サブマイクロ銅粒子とマイクロ銅粒子とを併用した接合用銅ペーストをマイクロデバイスの接合に用いる場合は、マイクロデバイスがより良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向がある。
【0054】
サブマイクロ銅粒子の含有量及びマイクロ銅粒子の含有量の合計は、接合用銅ペーストに含まれる金属粒子の全質量を基準として、80~100質量%であってよい。サブマイクロ銅粒子の含有量及びマイクロ銅粒子の含有量の合計が上記範囲内であれば、接合用銅ペーストを焼結した際の体積収縮を充分に低減でき、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となる。接合用銅ペーストをマイクロデバイスの接合に用いる場合は、マイクロデバイスが良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。上記効果が一層奏される観点から、サブマイクロ銅粒子の含有量及びマイクロ銅粒子の含有量の合計は、金属粒子の全質量を基準として、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0055】
本実施形態の接合用銅ペーストは、体積平均粒径が0.12~0.8μmであるサブマイクロ銅粒子と、最大径が2~50μmであり、アスペクト比が3.0以上であるフレーク状のマイクロ銅粒子とを含んでいてもよい。この場合、無加圧での接合に好適である。この場合の接合用銅ペーストにおける上記サブマイクロ銅粒子の含有量は、銅粒子の全質量を基準として、30~90質量%であり、上記マイクロ銅粒子の含有量は、銅粒子の全質量を基準として、10~70質量%であってもよい。
【0056】
[その他の金属粒子]
本実施形態の接合用銅ペーストは、銅粒子以外の金属粒子(「その他の金属粒子」ともいう。)を含むことができる。
【0057】
その他の金属粒子としては、例えば、亜鉛、ニッケル、銀、金、パラジウム、白金等の粒子が挙げられる。その他の金属粒子の体積平均粒径は、0.01~10μm、0.01~5μm又は0.05~3μmであってよい。その他の金属粒子の形状は、特に限定されるものではない。その他の金属粒子の含有量は、充分な接合性を得る観点から、接合用銅ペーストに含まれる金属粒子の全質量を基準として、20質量%未満であってよく、10質量%以下であってもよく、5質量%以下であってもよく、1質量%以下であってもよく、0質量%であってもよい。
【0058】
本実施形態の接合用銅ペーストにおける金属粒子の含有量は、接合用銅ペースト全量を基準として、85~98質量%であってもよく、85~95質量%であってもよく、85~90質量%であってもよく、87~89質量%であってもよい。
【0059】
(分散媒)
分散媒は、金属粒子を分散する機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、揮発性のものであってもよい。揮発性の分散媒としては、例えば、1価アルコール、多価アルコール等のアルコール類、エーテル類、エステル類、酸アミド、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。具体的には、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、α-ターピネオール(α-テルピネオール)、ジヒドロターピネオール(ジヒドロテルピネーオール)等のアルコール類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DPMA)、乳酸エチル、乳酸ブチル、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン等のエステル類;N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等の酸アミド;シクロヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。
【0060】
本実施形態の接合用銅ペーストは、印刷性と接合性とを両立させる観点から、分散媒として、ジヒドロターピネオールを含む。
【0061】
分散媒の含有量は、接合用銅ペーストの全質量を基準として、2質量%以上、5質量%以上又は10質量%以上であってよく、50質量%以下、30質量%以下、20質量%以下又は15質量%以下であってもよい。例えば、分散媒の含有量は、接合用銅ペーストの全質量を基準として、2~50質量%であってよく、5~30質量%であってもよく、5~20質量%であってもよい。また、分散媒の含有量は、接合用銅ペーストに含まれる金属粒子の全質量を100質量部として、2~50質量部であってよく、5~50質量部であってよく、2~15質量部であってよく、5~15質量部であってよく、10~15質量部であってよく、11~13質量部であってよい。分散媒の含有量が上記範囲内であれば、接合用銅ペーストをより適切な粘度に調整でき、また、銅粒子の焼結を阻害しにくい。
【0062】
本実施形態の接合用銅ペーストにおけるジヒドロターピネオールの含有量は、分散媒の全質量を基準として、50~100質量%であってもよく、50~90質量%であってもよく、60~80質量%であってもよく、100質量%であってもよい。
【0063】
接合用銅ペーストは、分散媒として、300℃以上の沸点を有する化合物(以下、高沸点分散媒という場合もある)を含むことが好ましい。高沸点分散媒を含むことで、焼結開始直前まで接合用銅ペーストに可塑性と密着性が付与され、無加圧での接合が容易になる。高沸点分散媒の沸点は、接合用銅ペーストの焼結時において、焼結及び緻密化を妨げず、接合温度に達した際に速やかに蒸発し除去される観点から、300~450℃であってもよく、305~400℃であってもよく、310~380℃であってもよい。なお、沸点は、大気圧下(1気圧)における温度を指す。。また、本明細書において、300℃未満の沸点を有する分散媒を低沸点分散媒という場合もある。
【0064】
高沸点分散媒としては、イソボルニルシクロヘキサノール(MTPH、日本テルペン化学株式会社製)、ステアリン酸ブチル、エキセパールBS(花王株式会社製)、ステアリン酸ステアリル、エキセパールSS(花王株式会社製)、ステアリン酸2-エチルヘキシル、エキセパールEH-S(花王株式会社製)、ステアリン酸イソトリデシル、エキセパールTD-S(花王株式会社製)、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘネイコサン、ドコサン、メチルヘプタデカン、トリデシルシクロヘキサン、テトラデシルシクロヘキサン、ペンタデシルシクロヘキサン、ヘキサデシルシクロヘキサン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、ペンタデシルベンゼン、ヘキサデシルベンゼン、ヘプタデシルベンゼン、ノニルナフタレン、ジフェニルプロパン、オクタン酸オクチル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エチル、リノール酸メチル、ステアリン酸メチル、トリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサン酸)、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジブチル、メトキシフェネチルアルコール、ベンジルフェノール(C13H12O)、ヘキサデカンニトリル、ヘプタデカンニトリル、安息香酸ベンジル、シンメチリン、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)等が挙げられる。無加圧での接合が一層容易になる観点から、高沸点分散媒が、イソボルニルシクロヘキサノール、トリブチリン、ステアリン酸ブチル及びオクタン酸オクチルからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0065】
高沸点分散媒の含有量は、接合用銅ペーストの全質量を基準として、2質量%以上、2.2質量%以上又は2.4質量%以上であってよく、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、20質量%以下、10質量%以下又は5質量%以下であってもよい。例えば、300℃以上の沸点を有する化合物の含有量は、接合用銅ペーストの全質量を基準として、2~50質量%であってよく、2~20質量%であってよく、2~5質量%であってよい。
【0066】
高沸点分散媒の含有量は、分散媒の全質量を基準として、10~50質量%であってもよく、20~40質量%であってもよく、25~35質量%であってもよい。
【0067】
(その他の成分)
接合用銅ペーストは、添加剤として、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の濡れ向上剤;表面張力調整剤;アルキルアミン、アルキルカルボン酸等の分散剤;シリコーン油等の消泡剤;無機イオン交換体等のイオントラップ剤;飽和高級アルコールなどを含有することができる。添加剤の含有量は、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜調整することができる。
【0068】
上述した接合用銅ペーストの粘度は特に限定されないが、スクリーン印刷等の手法、特には自動印刷機の印刷条件への適合の観点から、25℃における粘度が100~250Pa・sであってよく、100~200Pa・sであってよく、100~170Pa・sであってよい。
【0069】
接合用銅ペーストの粘度は、JISで規格されているソルダーペーストの粘度測定方法(JIS Z 3284-1:2014)に基づき測定することができ、上記粘度は、粘度計TV-33(東機産業(株)製、製品名)と、測定用冶具としてSPPローターを用い、回転数2.5rpm、計測時間144秒の条件で測定したときの値を示す。
【0070】
本実施形態の接合用銅ペーストによれば、充分な接合性を維持しつつ印刷性を向上させることができる。そのため、本実施形態の接合用銅ペーストによれば、スクリーン印刷機等の自動印刷機を用いる量産プロセスによって接合体を効率よく製造することができる。また、本実施形態の接合用銅ペーストは無加圧接合用であってもよい。
【0071】
<接合用銅ペーストの調製>
接合用銅ペーストは、上述の銅粒子と、分散媒と、場合により含有されるその他の金属粒子及び添加剤とを混合して調製することができる。各成分の混合後に、撹拌処理を行ってもよい。接合用銅ペーストは、分級操作により分散液の最大粒径を調整してもよい。このとき、分散液の最大粒径は20μm以下とすることができ、10μm以下とすることもできる。上記サブマイクロ銅粒子等の金属粒子は、表面処理剤で処理されたものを用いてよい。
【0072】
銅粒子として、サブマイクロ銅粒子及びマイクロ銅粒子を用いる場合、接合用銅ペーストは、例えば、以下の方法で調製してよい。まず、分散媒に、必要に応じて分散剤を加えた上で、サブマイクロ銅粒子を混合し、分散処理を行う。次いで、マイクロ銅粒子及び必要に応じてその他の金属粒子を加え、分散処理を行う。サブマイクロ銅粒子とマイクロ銅粒子では分散に適した分散方法及び分散条件が異なる場合がある。一般に、サブマイクロ銅粒子はマイクロ銅粒子よりも分散し難く、サブマイクロ銅粒子を分散させるためには、マイクロ銅粒子を分散させる際に加える強度よりも高い強度が必要である。一方、マイクロ銅粒子は、分散しやすいだけでなく、分散させるために高い強度を加えると変形を生じる場合がある。そのため、上記のような手順とすることで、良好な分散性が得られやすく、接合用銅ペーストの性能をより向上させることができる。
【0073】
分散処理は、分散機又は攪拌機を用いて行うことができる。分散機及び攪拌機としては、例えば、石川式攪拌機、シルバーソン攪拌機、キャビテーション攪拌機、自転公転型攪拌装置、超薄膜高速回転式分散機、超音波分散機、ライカイ機、二軸混練機、ビーズミル、ボールミル、三本ロールミル、ホモミキサー、プラネタリーミキサー、超高圧型分散機及び薄層せん断分散機が挙げられる。
【0074】
分級操作は、例えば、ろ過、自然沈降及び遠心分離により行うことができる。ろ過用のフィルタとしては、例えば、水櫛、金属メッシュ、メタルフィルター及びナイロンメッシュが挙げられる。
【0075】
攪拌処理は、攪拌機を用いて行うことができる。攪拌機としては、例えば、石川式攪拌機、自転公転型攪拌装置、ライカイ機、二軸混練機、三本ロールミル及びプラネタリーミキサーが挙げられる。
【0076】
<接合体の製造方法>
本実施形態の接合体の製造方法は、第1の部材と、第2の部材と、第1の部材及び第2の部材を接合する接合部と、を備える接合体の製造方法であって、第1の部材及び第2の部材の少なくとも一方の接合面に本実施形態の接合用銅ペーストを印刷し、第1の部材、接合用銅ペースト、及び第2の部材がこの順に積層されている積層構造を有する積層体を用意する第1の工程と、積層体の接合用銅ペーストを焼結する第2の工程と、を備える。
【0077】
第1の部材及び第2の部材としては、例えば、IGBT、ダイオード、ショットキーバリヤダイオード、MOS-FET、サイリスタ、ロジック、センサー、アナログ集積回路、LED、半導体レーザー、発信器等の半導体素子;リードフレーム;金属板貼付セラミックス基板(例えばDBC);LEDパッケージ等の半導体素子搭載用基材;銅リボン及び金属フレーム等の金属配線;金属ブロック等のブロック体;端子等の給電用部材;放熱板;水冷板などが挙げられる。
【0078】
第1の部材及び第2の部材の接合用銅ペーストの焼結体と接する面及びは金属を含んでいてもよい。金属としては、例えば、銅、ニッケル、銀、金、パラジウム、白金、鉛、錫、コバルト等が挙げられる。金属は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、焼結体と接する面は、上記金属を含む合金であってもよい。合金に用いられる金属としては、上記金属の他に、亜鉛、マンガン、アルミニウム、ベリリウム、チタン、クロム、鉄、モリブデン等が挙げられる。焼結体と接する面に金属を含む部材としては、例えば、各種金属メッキを有する部材(金属メッキを有するチップ、各種金属メッキを有するリードフレーム等)、ワイヤ、ヒートスプレッダ、金属板が貼り付けられたセラミックス基板、各種金属からなるリードフレーム、銅板、銅箔などが挙げられる。
【0079】
部材の接合面に本実施形態の接合用銅ペーストを印刷する方法としては、スクリーン印刷(ステンシル印刷)、転写印刷、オフセット印刷、凸版印刷、凹版印刷、グラビア印刷、ステンシル印刷、ジェット印刷等が挙げられる。また、ディスペンサ(例えば、ジェットディスペンサ、ニードルディスペンサ)、カンマコータ、スリットコータ、ダイコータ、グラビアコータ、スリットコート、バーコータ、アプリケータ、スプレーコータ、スピンコータ、ディップコータ等を用いる方法、ソフトリソグラフィによる方法、粒子堆積法、電着塗装による方法などを用いてもよい。
【0080】
接合用銅ペーストの厚さは、1μm以上、5μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上又は50μm以上であってよく、3000μm以下、1000μm以下、500μm以下、300μm以下、250μm以下又は150μm以下であってよい。例えば、接合用銅ペーストの厚さは、1~1000μmであってよく、10~500μmであってもよく、50~200μmであってもよく、10~3000μmであってもよく、15~500μmであってもよく、20~300μmであってもよく、5~500μmであってもよく、10~250μmであってもよく、15~150μmであってもよい。
【0081】
本実施形態においては、量産プロセスの観点から、本実施形態の接合用銅ペーストをスクリーン印刷により印刷することができ、印刷速度向上、マスクの開口の面積拡大等に対応することができる。マスクの開口面積は、例えば、4mm以上であってもよく、9mm以上であってもよく、25mm以上であってもよく、49mm以上であってもよく、100mm以上であってもよい。
【0082】
図1は、スクリーン印刷について説明するための模式図である。図1の(a)~(d)は、マスク32と、スキージ36を備えるスクリーン印刷機とを用いて、ステージ35上に配置された第1の部材30上に、本実施形態の接合用銅ペースト34を印刷するときの一連のプロセスを示す。このプロセスでは、2つのスキージを用いて往復印刷する。まず、マスク32の一端にペースト34を供給する(図1の(a))。次に、マスク32に一方のスキージ36を所定の印圧で押圧しながら一方向に移動させて、マスク32の開口部にペースト34を印刷(コート)する(図1の(b))。ここで、必要に応じてペーストをコート終端部に供給してもよい。次に、コート終端位置にて他方のスキージ36を所定の印圧で押圧しながら逆方向に移動させて、ペースト34を印刷(プリント)する(図1の(c))。その後、第1の部材30をマスク32から取り外し、印刷が完了する(図1の(d)。こうして、第1の部材30上に所定の形状を有する接合用銅ペースト38が印刷される。
【0083】
印圧は、例えば、0.01~0.3MPaとすることができる。印刷速度は、例えば、15~300mm/sの範囲で調整することができる。
【0084】
本実施形態においては、2つのスキージに代えて、スクレーパーとスキージを取り付け、スクレーパーでペーストをマスクの開口部に充填し、スキージで充填されたペーストを部材上に転写することで印刷を行ってもよい。
【0085】
部材上に印刷された接合用銅ペーストは、焼結時の流動及びボイドの発生を抑制する観点から、適宜乾燥させてもよい。乾燥時のガス雰囲気は大気中であってよく、窒素、希ガス等の無酸素雰囲気中であってもよく、水素、ギ酸等の還元雰囲気中であってもよい。乾燥方法は、常温放置(例えば10~30℃)による乾燥であってよく、加熱乾燥であってもよく、減圧乾燥であってもよい。加熱乾燥又は減圧乾燥には、例えば、ホットプレート、温風乾燥機、温風加熱炉、窒素乾燥機、赤外線乾燥機、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉、マイクロ波加熱装置、レーザー加熱装置、電磁加熱装置、ヒーター加熱装置、蒸気加熱炉、熱板プレス装置等を用いることができる。乾燥の温度及び時間は、使用した揮発成分(例えば、1価脂肪族アルコール及び溶剤成分)の種類及び量に合わせて適宜調整してもよい。乾燥条件(乾燥の温度及び時間)は、例えば、50~180℃で1~120分間乾燥させる条件であってよい。
【0086】
積層体は、一方の部材を他方の部材上に配置する方法によって得ることができる。具体的な方法(例えば、接合用銅ペーストが印刷された第2の部材上に第1の部材を配置する方法)としては、例えば、チップマウンター、フリップチップボンダー、カーボン製又はセラミックス製の位置決め冶具等を用いる方法が挙げられる。
【0087】
第2の工程においては、積層体を加熱処理することで、接合用銅ペーストの焼結を行うことができる。これにより接合部となる焼結体が得られる。加熱処理には、例えば、ホットプレート、温風乾燥機、温風加熱炉、窒素乾燥機、赤外線乾燥機、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉、マイクロ波加熱装置、レーザー加熱装置、電磁加熱装置、ヒーター加熱装置、蒸気加熱炉等を用いることができる。
【0088】
焼結時のガス雰囲気は、焼結体、部材(例えば、第1の部材及び第2の部材)の酸化抑制の観点から、無酸素雰囲気であってもよい。焼結時のガス雰囲気は、接合用銅ペースト中の銅粒子の表面酸化物を除去するという観点から、還元雰囲気であってもよい。無酸素雰囲気としては、例えば、窒素、希ガス等の無酸素ガス雰囲気、又は真空が挙げられる。還元雰囲気としては、例えば、純水素ガス雰囲気、フォーミングガスに代表される水素及び窒素の混合ガス雰囲気、ギ酸ガスを含む窒素雰囲気、水素及び希ガスの混合ガス雰囲気、ギ酸ガスを含む希ガス雰囲気等が挙げられる。
【0089】
加熱処理時の温度(例えば、到達最高温度)は、部材(例えば、第1の部材及び第2の部材)への熱ダメージを低減できる観点及び歩留まりを向上させる観点から、170℃以上、190℃以上又は200℃以上であってよく、250℃以下、250℃未満、225℃以下又は225℃未満であってよい。例えば、到達最高温度は、170~250℃であってもよく、170℃以上250℃未満であってもよく、190~225℃であってもよく、190℃以上225℃未満であってもよく、200~225℃であってもよく、200℃以上225℃未満であってもよい。
【0090】
第2の工程において、接合用銅ペーストを無加圧で加熱して焼結してもよい。すなわち、接合用銅ペーストに積層した部材(例えば、第1の部材)による重さのみ、又は積層した部材の重さに加え、0.01MPa以下、好ましくは0.005MPa以下の圧力を受けた状態で積層体を焼結することができ、このような場合であっても、充分な接合強度を得ることができる。焼結時に受ける圧力が上記範囲内であれば、特別な加圧装置が不要なため歩留まりを損なうこと無く、ボイドの低減、ダイシェア強度及び接続信頼性をより一層向上させることができる。接合用銅ペーストが0.01MPa以下の圧力を受ける方法としては、例えば、鉛直方向上側に配置される部材(例えば第1の部材)上に重りを載せる方法等が挙げられる。
【0091】
更に、図面を参照して本実施形態の接合体の製造方法について説明する。
【0092】
図2は、本実施形態の接合用銅ペーストを用いて製造される接合体の一例を示す模式断面図である。
【0093】
図2に示す接合体100は、第1の部材2と、第2の部材3と、第1の部材2と第2の部材3とを接合する接合部1とを備え、接合部1は上記接合用銅ペーストの焼結体からなる。
【0094】
第1の部材2及び第2の部材3については上述したものを挙げることができる。本実施形態の接合用銅ペーストを用いることにより、スクリーン印刷機等の自動印刷機を用いる量産プロセスによっても、充分な接合強度を有する接合体を効率よく製造することができる。
【0095】
接合体100のダイシェア強度は、第1の部材2及び第2の部材3を充分に接合する観点から、15MPa以上であってよく、20MPa以上であってもよく、25MPa以上であってもよく、30MPa以上であってもよい。ダイシェア強度は、ユニバーサルボンドテスタ(Royce 650, Royce Instruments社製)又は万能型ボンドテスタ(4000シリーズ、DAGE社製)等を用いて測定することができる。
【0096】
接合用銅ペーストの焼結体1の熱伝導率は、放熱性及び高温化での接続信頼性の観点から、100W/(m・K)以上であってよく、120W/(m・K)以上であってもよく、150W/(m・K)以上であってもよい。熱伝導率は、接合用銅ペーストの焼結体の熱拡散率、比熱容量、及び密度から、算出することができる。
【0097】
上記接合体100において、第1の部材2が半導体素子である場合、上記接合体100は半導体装置となる。得られる半導体装置は充分なダイシェア強度及び接続信頼性を有することができる。
【0098】
図3は、本実施形態の接合用銅ペーストを用いて製造される半導体装置の一例を示す模式断面図である。図3に示す半導体装置110は、本実施形態に係る接合用銅ペーストの焼結体11と、リードフレーム15aと、リードフレーム15bと、ワイヤ16と、焼結体11を介してリードフレーム15a上に接続された半導体素子18と、これらをモールドするモールドレジン17と、を備える。半導体素子18は、ワイヤ16を介してリードフレーム15bに接続されている。
【0099】
本実施形態に係る半導体装置としては、例えば、ダイオード、整流器、サイリスタ、MOSゲートドライバ、パワースイッチ、パワーMOSFET、IGBT、ショットキーダイオード、ファーストリカバリダイオード等のパワーモジュール;発信機;増幅器;高輝度LEDモジュール;センサーなどが挙げられる。
【0100】
図4図4(a)及び図4(b))は、接合体100の製造方法を説明するための模式断面図である。本実施形態に係る接合体100の製造方法は、第1の部材2、該第1の部材2の重さが働く方向側に、上記接合用銅ペースト10、及び第1の部材3がこの順に積層された積層体50を用意する第1の工程(図4(a))と、接合用銅ペースト10を、第1の部材2の重さを受けた状態、又は第1の部材2の重さ及び0.01MPa以下の圧力を受けた状態で、所定の温度で焼結する第2の工程を備える。これにより接合体100が得られる(図4(b))。第1の部材2の重さが働く方向とは、重力が働く方向ということもできる。
【0101】
本実施形態に係る第1の工程及び第2の工程は、上述した第1の工程及び第2の工程と同様に実施することができる。
【0102】
本実施形態に係る半導体装置110は、上述した接合体100の製造方法と同様にして製造することができる。すなわち、半導体装置の製造方法は、第1の部材及び第2の部材の少なくとも一方に半導体素子を用い、第1の部材、該第1の部材の重さが働く方向側に、上記接合用銅ペースト、及び第2の部材がこの順に積層された積層体を用意し、接合用銅ペーストを、第1の部材の重さを受けた状態、又は第1の部材の重さ及び0.01MPa以下の圧力を受けた状態で、所定の温度で焼結する工程を備える。
【0103】
例えば、図5図5(a)~図5(c))に示すように、リードフレーム15a上に接合用銅ペースト20を印刷し、半導体素子18を配置して積層体60を得た後(図5(a))、この積層体60を加熱し、接合用銅ペースト20を焼結させることにより接合体105を得る(図5(b))。次いで、得られた接合体105におけるリードフレーム15bと半導体素子18とをワイヤ16によって接続し、封止樹脂によりこれらを封止する。以上の工程により半導体装置110が得られる(図5(c))。得られる半導体装置110は、無加圧での接合を行った場合であっても、充分なダイシェア強度及び接続信頼性を有することができる。本実施形態の半導体装置は、充分な接合力を有し、熱伝導率及び融点が高い銅を含む接合用銅ペーストの焼結体を備えることにより、充分なダイシェア強度を有し、接続信頼性に優れるとともに、パワーサイクル耐性にも優れたものになり得る。また、印刷性及び接合性に優れた本実施形態の接合用銅ペーストが用いられることにより、上記の半導体装置を効率よく製造することができる。
【0104】
以上、本実施形態の接合用銅ペーストを用いて製造される接合体及び半導体装置の一例を説明したが、本実施形態の接合用銅ペーストを用いて製造される接合体及び半導体装置は上記実施形態に限られない。本実施形態の接合用銅ペーストを用いて製造される接合体は、例えば、図6及び図8に示す接合体であってもよい。
【0105】
図6に示す接合体120は、第1の部材2と、第2の部材3と、第3の部材4と、第4の部材5と、第1の部材2と第2の部材3とを接合する上記接合用銅ペーストの焼結体(接合部)1aと、第1の部材2と第3の部材4とを接合する上記接合用銅ペーストの焼結体(接合部)1bと、第3の部材4と第4の部材5とを接合する上記接合用銅ペーストの焼結体(接合部)1cと、を備える。
【0106】
このような接合体120は、例えば、図7図7(a)及び図7(b))に示すように、第3の部材4、該第3の部材4の重さが働く方向側に、第2の接合用銅ペースト10b、第1の部材2、第1の接合用銅ペースト10a、及び第2の部材3がこの順に積層された積層部分と、第3の部材4、該第3の部材4の重さが働く方向側に、第3の接合用銅ペースト10c、及び第4の部材5がこの順に積層された積層部分とを有する積層体70を用意し(図7(a))、上記接合体100の製造方法と同様にして、第1の接合用銅ペースト10a、第2の接合用銅ペースト10b及び第3の接合用銅ペースト10cを焼結する工程を備える方法で得ることができる(図7(b))。上記方法において、第1の接合用銅ペースト10a、第2の接合用銅ペースト10b及び第3の接合用銅ペースト10cは本実施形態に係る接合用銅ペーストであり、第1の接合用銅ペースト10aが焼結することにより焼結体1aが得られ、第2の接合用銅ペースト10bが焼結することにより焼結体1bが得られ、第3の接合用銅ペースト10cが焼結することにより焼結体1cが得られる。
【0107】
また、接合体120は、例えば、上記接合体100を得た後、第3の部材4、該第3の部材4の重さが働く方向側に、第2の接合用銅ペースト10b、及び第1の部材2がこの順に積層された積層部分と、第3の部材4、該第3の部材4の重さが働く方向側に、第3の接合用銅ペースト10c、及び第4の部材5がこの順に積層された積層部分とを形成し、上記接合体100の製造方法と同様にして、第2の接合用銅ペースト10b及び第3の接合用銅ペースト10cを焼結する工程を備える方法で得ることもできる。
【0108】
図8に示す接合体130は、第1の部材2と、第2の部材3と、第3の部材4と、第4の部材5と、第5の部材6と、第1の部材2と第2の部材3とを接合する上記接合用銅ペーストの焼結体(接合部)1aと、第3の部材4と第4の部材5とを接合する上記接合用銅ペーストの焼結体(接合部)1cと、第1の部材2と第5の部材6とを接合する上記接合用銅ペーストの焼結体(接合部)1dと、第3の部材4と第5の部材6とを接合する上記接合用銅ペーストの焼結体(接合部)1eと、を備える。
【0109】
このような接合体130は、例えば、図9図9(a)及び図9(b))に示すように、第3の部材4、該第3の部材4の重さが働く方向側に、第5の接合用銅ペースト10e、第5の部材6、第4の接合用銅ペースト10d、第1の部材2、第1の接合用銅ペースト10a、及び第2の部材3がこの順に積層された積層部分と、第3の部材4、該第3の部材4の重さが働く方向側に、第3の接合用銅ペースト10c、及び第4の部材5がこの順に積層された積層部分とを有する積層体80を用意し(図9(a))、上記接合体100の製造方法と同様にして、第1の接合用金属ペースト10a、第3の接合用銅ペースト10c、第4の接合用銅ペースト10d及び第5の接合用銅ペースト10eを焼結する工程を備える方法で得ることができる(図9(b))。上記方法において、第1の接合用銅ペースト10a、第3の接合用銅ペースト10c、第4の接合用銅ペースト10d及び第5の接合用銅ペースト10eは本実施形態に係る接合用銅ペーストであり、第1の接合用銅ペースト10aが焼結することにより焼結体1aが得られ、第3の接合用銅ペースト10cが焼結することにより焼結体1cが得られ、第4の接合用銅ペースト10dが焼結することにより焼結体1dが得られ、第5の接合用銅ペースト10eが焼結することにより焼結体1eが得られる。
【0110】
また、接合体130は、第3の部材4、該第3の部材4の重さが働く方向側に、第5の接合用銅ペースト10e、第5の部材6、第4の接合用銅ペースト10d、第1の部材2、第1の接合用銅ペースト10a、及び第2の部材3がこの順に積層された積層体を用意し、上記接合体100の製造方法と同様にして、第1の接合用銅ペースト10a、第4の接合用銅ペースト10d及び第5の接合用銅ペースト10eを焼結した後、第3の部材4、該第3の部材4の重さが働く方向側に、第3の接合用銅ペースト10c、及び第4の部材5がこの順に積層された積層部分を形成し、上記接合体100の製造方法と同様にして、第3の接合用銅ペースト10cを焼結する工程を備える方法で得ることもできる。
【0111】
また、接合体130は、上記接合体100を得た後、第3の部材4、該第3の部材4の重さが働く方向側に、第5の接合用銅ペースト10e、第5の部材6、第4の接合用銅ペースト10d、及び第1の部材2がこの順に積層された積層部分と、第3の部材4、該第3の部材4の重さが働く方向側に、第3の接合用銅ペースト10c、及び第4の部材5がこの順に積層された積層部分とを形成し、上記接合体100の製造方法と同様にして、第3の接合用銅ペースト10c、第4の接合用銅ペースト10d及び第5の接合用銅ペースト10eを焼結する工程を備える方法で得ることもできる。
【0112】
上記変形例において、第3の部材4、第4の部材5及び第5の部材6の例としては、第2の部材3の例と同一である。また、第3の部材4、第4の部材5及び第5の部材6の接合用銅ペーストの焼結体と接する面は金属を含んでいていてもよい。含みうる金属の例は、第1の部材及び第2の部材が接合用銅ペーストの焼結体と接する面に含みうる金属の例と同一である。また、上記変形例において用いる第1の接合用銅ペースト10a、第2の接合用銅ペースト10b、第3の接合用銅ペースト10c、第4の接合用銅ペースト10d、第5の接合用銅ペースト10eは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【実施例
【0113】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0114】
<接合用銅ペーストの調製>
(実施例1)
サブマイクロ銅粒子を含む材料としてCH-0200(三井金属鉱業(株)製、製品名、50%体積平均粒径:0.3μm)60.7質量部、ジヒドロターピネオール(日本テルペン化学(株)製)8.0質量部、トリブチリン(沸点:305℃、富士フィルム和光純薬(株)製)3.6質量部、及びファインオキソコール-180T(富士フィルム和光純薬(株)製)0.4質量部を、2000rpm、1分間の条件で株式会社シンキー製攪拌機(商品名:「あわとり練太郎 ARE-310」、以下同様。)にて混合した。その後、3本ロールミルで10回分散処理を行い、混合物を得た。
【0115】
分散処理により得た混合物をポリエチレン製の容器に移した後、フレーク状マイクロ銅粒子を含む材料として3L3N(三井金属鉱業(株)製、製品名、50%体積平均粒径:7μm)27.1質量部を容器に加え、2000rpm、1分間の条件で株式会社シンキー製攪拌機にて混合した。その後、3本ロールミルで5回分散処理を行い、接合用銅ペーストを得た。
【0116】
(実施例2及び参考例1)
実施例2は、実施例1におけるペーストの溶媒量を減らして、金属粒子濃度を89質量%に調整した。参考例1は、接合用銅ペーストの組成を表1に示す組成(数値の単位は質量部)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして接合用銅ペーストを調製した。
【0117】
<接合用銅ペーストの評価>
上記で得られた接合用銅ペーストについて、下記の方法に従って、粘度、印刷性、及び接合性の評価を行った。粘度の結果を表1に示す。
【0118】
(粘度)
接合用銅ペーストの粘度は、JISで規格されているソルダーペーストの粘度測定方法(JIS Z 3284-1:2014)に準拠し、粘度計TV-33(東機産業(株)製、製品名)と、測定用冶具としてSPPローターを用い、回転数2.5rpm、計測時間144秒の条件で測定した。
【0119】
(印刷性)
銅板上に、下記の条件でスクリーン印刷機による印刷を行い、印刷性を評価した。なお、開口サイズは、3mm□、5mm□、7mm□、及び10mm□とした。
【0120】
銅板上に、各印刷形状(3mm□、5mm□、7mm□、及び10mm□)の開口を有するステンレス製のメタルマスク(厚さ:200μm)を載せ、メタルスキージを備えるステンシル印刷により、往路:速度150mm/s、印圧0.2MPa、復路:100mm/s、印圧0.1MPaの条件で接合用銅ペーストを印刷した。
【0121】
実施例1及び2では、全ての開口サイズで良好に印刷できた。参考例1では、印刷領域中に開口エッジ部の欠落と印刷面の荒れが見られた。
【0122】
(接合性)
接合用銅ペーストの接合性を、下記の方法で作製した接合体の接合面積率(%)により評価した。
【0123】
<接合体の作製>
銅板上に、各印刷形状(3mm□、5mm□、7mm□、及び10mm□)の開口を有するステンレス製のメタルマスク(厚さ:200μm)を載せ、メタルスキージを用いたステンシル印刷により、往路:速度150mm/s、印圧0.2MPa、復路:100mm/s、印圧0.1MPaの条件で接合用銅ペーストを印刷した。印刷した銅ペーストに、Ni層が形成されたSiチップを載せ、ホットプレート(アズワン製、製品名「EC-1200N」)を用い、60℃にて5分間又は10分間の乾燥を行った。次に、チップを載せたサンプルをチューブ炉(株式会社アールデック製)にセットし、アルゴンガスを3L/min、5分間流して置換した。その後、水素ガスを500mL/minで流し、30分間で接合温度まで昇温した。昇温後、水素ガスを流しながら225℃で60分保持した後、200℃まで15分間かけて冷却した。最後にアルゴンガスを0.3L/minで流しながら、チューブ炉の外側からエアブローで強制冷却してサンプル温度が60℃以下になってから、サンプルを空気中に取り出した。
【0124】
<接合面積率>
接合体のサンプルについて、超音波探傷装置(インサイト(株)製、Insight-300)により分析し、接合部の超音波探傷像(SAT像)を得た。得られたSAT像を二値化処理し、チップ面積に対する接合面積率(area%)を算出した。
【0125】
実施例1及び2では、全ての開口サイズで接合面積率が99%以上であった。
【0126】
【表1】
【0127】
表中の各成分の詳細は下記のとおりである。
(銅粒子)
サブマイクロ銅粒子A:CH-0200(三井金属鉱業(株)製、製品名、50%体積平均粒径:0.3μm)
マイクロ銅粒子A:3L3N(福田金属箔粉工業(株)製、製品名、50%体積平均粒径:7μm)
(その他の金属粒子)
亜鉛粒子A:Zinc powder(Alfa Aesar社製、製品名、50%体積平均粒径:4μm)
(分散媒)
ジヒドロターピネオール:日本テルペン化学(株)製、製品名、沸点208℃
ターピネオールC:日本テルペン化学(株)製、製品名、沸点220℃
トリブチリン:富士フィルム和光純薬(株)製、製品名、沸点305℃
(添加剤)
添加剤A:ファインオキソコール-180T(富士フィルム和光純薬(株)製、イソオクタデカノール)
【0128】
表1に示されるように、実施例1及び2の接合用銅ペーストは、自動印刷を想定した印刷条件において、開口サイズ3~10mm□で良好に印刷することができ、充分な接合性を達成できることが確認された。ジヒドロターピネオールは、ターピネオールの分子構造に含まれる二重結合を水素添加して一重結合にしたものであり、分子構造や特性はターピネオールと非常に似ていると思われるところ、銅ペーストの粘度を大きく低減することができ、充分な接合性が得られることは予想外の効果といえる。
【符号の説明】
【0129】
1,1a,1b,1c,1d,1e,11…接合用銅ペーストの焼結体(接合部)、2…第1の部材、3…第2の部材、10,10a,10b,10c,10d,10e,20…接合用銅ペースト、15a,15b…リードフレーム、16…ワイヤ、17…モールドレジン、18…半導体素子、30…第1の部材、32…マスク、34,38…接合用銅ペースト、35…ステージ、36…スキージ、50,60,70,80…積層体、100,105,120,130…接合体、110…半導体装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9