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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】運動学習システム
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/00 20060101AFI20231129BHJP
   A63B 69/40 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A63B69/00 505Z
A63B69/00 504K
A63B69/40 501Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021571082
(86)(22)【出願日】2020-01-14
(86)【国際出願番号】 JP2020000890
(87)【国際公開番号】W WO2021144847
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 真澄
(72)【発明者】
【氏名】那須 大毅
(72)【発明者】
【氏名】木村 聡貴
【審査官】関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-029529(JP,A)
【文献】特開昭53-056526(JP,A)
【文献】特開平09-322956(JP,A)
【文献】特開2008-086524(JP,A)
【文献】特開2017-151075(JP,A)
【文献】三上 弾 DANN MIKAMI,スポーツ脳科学,NTT技術ジャーナル 第30巻 第1号,日本,一般社団法人電気通信協会,2018年01月01日,P.22-25
【文献】巨人VRトレ導入を検討 得点力アップの秘密兵器!どこでも投手と対戦OK/野球,デイリースポーツ online,2018年01月18日,https://web.archive.org/web/20180118060142/https://www.daily.co.jp/baseball/2018/01/11/0010886540.shtml,検索日 2020.03.04,特に「仮想現実で投手と対戦。投球フォームや球筋を確認し」との記載等を参照
【文献】ITをスポーツの現場でどう活用するか,NTTデータ,2016年10月04日,https://www.nttdata.com/jp/ja/data-insight/2016/100401/,検索日 2020.03.04,特に「フォームの違いなども見比べまられます」との記載等を参照
【文献】柏野 牧夫 Makio Kashino,スポーツ競技とAI,人工知能 第34巻 第4号 Journal of the Japanese Society for Artificial Intelligence,日本,(一社)人工知能学会 JSAI(The Japanese Society fo,2017年07月02日,P.525-530
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B69/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投手が複数種類の投球属性から何れかを選択して投げた球に対して、打者が打撃を行う競技における、投手の投球属性ごとの投球動作の癖を打者が学習するための運動学習システムであって、
前記競技の規則で定められたホームベースと、前記競技の規則で定められたバッターボックスと、前記競技の規則で定められたピッチャープレートの位置に配置されたピッチングマシンと、前記ピッチングマシンの前記ホームベース側に隣接して配置されたスクリーンと、前記スクリーンに投射するプロジェクタと、音響提示部と、前記ピッチングマシンと前記プロジェクタに接続された運動学習装置と、を含み、
前記運動学習装置は、
対戦相手となる可能性があるチームのある投手が実際に行った複数の投球それぞれについての、ホームベース方向から見た投手の投球動作の映像(以下、投球動作映像という)と、当該投球動作により投げられた球と略同じ動きの球を前記ピッチングマシンが発射するための前記ピッチングマシンが球に与える回転、速度および球の発射方向を制御する情報(以下、投球軌道情報という)と、前記投手が当該投球をしたときに発した音を少なくとも含む投球音響情報と、を対応付けて予め記憶した情報記憶部を含み、
前記情報記憶部に記憶された前記投球動作映像と前記投球軌道情報と前記投球音響情報との組を読み出して、読み出した前記投球動作映像を前記プロジェクタに出力し、読み出した前記投球軌道情報を前記ピッチングマシンに出力し、読み出した前記投球音響情報を前記音響提示部に出力し、前記スクリーンに表示される前記投球動作映像における前記投手のボールリリースの時刻と前記ピッチングマシンが前記投球軌道情報の球を発射する時刻とが一致するように前記プロジェクタと前記ピッチングマシンの動作タイミングを制御し、前記スクリーンに表示される前記投球動作映像と前記音響提示部が提示する前記投球音響情報の音とが同期するように前記プロジェクタが前記投球動作映像を表示する動作を開始する時刻と前記音響提示部が前記投球音響情報の音を出力する動作を開始する時刻を制御し、
前記プロジェクタは、
前記運動学習装置に制御された動作タイミングで、前記投球動作映像が前記スクリーンに表示されるように、前記投球動作映像を前記スクリーンに投射し、
前記スクリーンは、
表示される前記投球動作映像における前記投手のボールリリースの位置に、前記ピッチングマシンが発射した球が通過できる穴を備え、
前記プロジェクタが投射した前記投球動作映像を表示し、
前記ピッチングマシンは、
前記運動学習装置に制御された動作タイミングで、前記スクリーンに表示された前記投球動作映像における前記投手のボールリリースの位置から、前記投球軌道情報の球を発射し、
前記音響提示部は、
前記投球音響情報の音を放出し、
前記音響提示部がスピーカである、
運動学習システム。
【請求項2】
請求項1に記載の運動学習システムであって、
前記投球音響情報には、前記投手が当該投球をしたときに球場で発せられた音も含まれる、
ことを特徴とする運動学習システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の運動学習システムであって、
前記情報記憶部には、前記複数の投球それぞれについて、前記投球動作映像と前記投球軌道情報と前記投球音響情報と対応付けられて、前記投球動作により投げられた球の予め定めた属性の情報または値(以下、投球属性情報という)も予め記憶されており、
前記運動学習装置が、さらに、
前記情報記憶部に記憶された前記投球動作映像と前記投球軌道情報と前記投球音響情報と対応付けられた前記投球属性情報を読み出して、
読み出した前記投球属性情報を表す画像を前記プロジェクタに出力し、
前記プロジェクタが、さらに、
前記運動学習装置に制御された動作タイミングで、前記投球属性情報が前記スクリーンに表示されるように、前記投球属性情報の画像を前記スクリーンに投射し、
前記スクリーンが、さらに、
前記プロジェクタが投射した前記投球属性情報を表す画像を表示する
運動学習システムであり、
前記運動学習装置は、前記情報記憶部から、前記投手の2種類以上の球種それぞれの複数の投球についての、前記投球動作映像と前記投球軌道情報と前記投球音響情報と前記投球属性情報の組をランダムな順で読み出して、出力し、
読み出した前記投球属性情報を表す画像を予め定めた時間長で前記プロジェクタに出力し、当該出力を完了してから、読み出した前記投球動作映像を前記プロジェクタに出力する、
ことを特徴とする運動学習システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の運動学習システムであって、
前記情報記憶部には、前記複数の投球それぞれについて、前記投球動作映像と前記投球軌道情報と前記投球音響情報と対応付けられて、前記投球動作により投げられた球の予め定めた属性の情報または値(以下、投球属性情報という)も予め記憶されており、
前記運動学習装置が、さらに、
前記情報記憶部に記憶された前記投球動作映像と前記投球軌道情報と前記投球音響情報と対応付けられた前記投球属性情報を読み出して、読み出した前記投球属性情報を表す音声を前記音響提示部に出力し、
前記音響提示部が、さらに、
前記投球属性情報を表す音声を放出する、
運動学習システムであり、
前記運動学習装置は、前記情報記憶部から、前記投手の2種類以上の球種それぞれの複数の投球についての、前記投球動作映像と前記投球軌道情報と前記投球音響情報と前記投球属性情報の組をランダムな順で読み出して、出力し、
読み出した前記投球属性情報を表す音声の前記音響提示部による放出を完了してから、読み出した前記投球動作映像を前記プロジェクタに出力するように制御する、
ことを特徴とする運動学習システム。
【請求項5】
請求項1または2に記載の運動学習システムであって、
前記情報記憶部には、前記複数の投球それぞれについて、前記投球動作映像と前記投球軌道情報と前記投球音響情報と対応付けられて、前記投球動作により投げられた球の予め定めた属性の情報または値(以下、投球属性情報という)も予め記憶されており、
前記運動学習装置が、さらに、
前記情報記憶部に記憶された前記投球動作映像と前記投球軌道情報と前記投球音響情報と対応付けられた前記投球属性情報を読み出して、
読み出した前記投球属性情報を表す画像を前記プロジェクタに出力し、
前記プロジェクタが、さらに、
前記運動学習装置に制御された動作タイミングで、前記投球属性情報が前記スクリーンに表示されるように、前記投球属性情報の画像を前記スクリーンに投射し、
前記スクリーンが、さらに、
前記プロジェクタが投射した前記投球属性情報を表す画像を表示する
運動学習システムであり、
前記運動学習装置は、前記情報記憶部から、前記投手の2種類以上の球種それぞれの複数の投球についての、前記投球動作映像と前記投球軌道情報と前記投球音響情報と前記投球属性情報の組をランダムな順で読み出して、出力し、
読み出した前記投球軌道情報に対応する球が前記ホームベースの近傍に到達した後に、読み出した前記投球属性情報を表す画像を予め定めた時間長で前記プロジェクタに出力するように制御する、
ことを特徴とする運動学習システム。
【請求項6】
請求項1または2に記載の運動学習システムであって、
前記情報記憶部には、前記複数の投球それぞれについて、前記投球動作映像と前記投球軌道情報と前記投球音響情報と対応付けられて、前記投球動作により投げられた球の予め定めた属性の情報または値(以下、投球属性情報という)も予め記憶されており、
前記運動学習装置が、さらに、
前記情報記憶部に記憶された前記投球動作映像と前記投球軌道情報と前記投球音響情報と対応付けられた前記投球属性情報を読み出して、読み出した前記投球属性情報を表す音声を前記音響提示部に出力し、
前記音響提示部が、さらに、
前記投球属性情報を表す音声を放出する、
運動学習システムであり、
前記運動学習装置は、前記情報記憶部から、前記投手の2種類以上の球種それぞれの複数の投球についての、前記投球動作映像と前記投球軌道情報と前記投球音響情報と前記投球属性情報の組をランダムな順で読み出して、出力し、
読み出した前記投球軌道情報に対応する球が前記ホームベースの近傍に到達した後に、読み出した前記投球属性情報を表す音声を前記音響提示部に出力するように制御する、
ことを特徴とする運動学習システム。
【請求項7】
相手選手が複数種類の属性から何れかを選択して発した球に対応する運動を自選手が行う競技における、属性ごとの相手選手の動作の癖を自選手が学習するための運動学習システムであって、
前記競技の規則で定められた範囲のうちの何れかの位置に配置された発射装置と、前記発射装置の利用者側に隣接して配置されたスクリーンと、前記スクリーンに投射するプロジェクタと、音響提示部と、前記発射装置と前記プロジェクタに接続された運動学習装置と、を含み、
前記運動学習装置は、
対戦相手となる可能性があるチームのある相手選手が実際に球を発した複数のときそれぞれについての、前記利用者の方向から見た前記相手選手の球を発する動作の映像(以下、相手選手動作映像という)と、当該動作により発せられた球と略同じ動きの球を前記発射装置が発射するための前記発射装置が球に与える回転、速度および球の発射方向を制御する情報(以下、球軌道情報という)と、前記相手選手が当該球を発したときに発した音を少なくとも含む音響情報と、を対応付けて予め記憶した情報記憶部を含み、
前記情報記憶部に記憶された前記相手選手動作映像と前記球軌道情報と前記音響情報との組を読み出して、読み出した前記相手選手動作映像を前記プロジェクタに出力し、読み出した前記球軌道情報を前記発射装置に出力し、読み出した前記音響情報を前記音響提示部に出力し、前記スクリーンに表示される前記相手選手動作映像における前記相手選手が球を発する時刻と前記発射装置が前記球軌道情報の球を発射する時刻とが一致するように前記プロジェクタと前記発射装置の動作タイミングを制御し、前記スクリーンに表示される前記相手選手動作映像と前記音響提示部が提示する前記音響情報の音とが同期するように前記プロジェクタが前記相手選手動作映像を表示する動作を開始する時刻と前記音響提示部が前記音響情報の音を出力する動作を開始する時刻を制御し、
前記プロジェクタは、
前記運動学習装置に制御された動作タイミングで、前記相手選手動作映像が前記スクリーンに表示されるように、前記相手選手動作映像を前記スクリーンに投射し、
前記スクリーンは、
表示される前記相手選手動作映像における前記相手選手が球を発する位置に、前記発射装置が発射した球が通過できる穴を備え、
前記プロジェクタが投射した前記相手選手動作映像を表示し、
前記発射装置は、
前記運動学習装置に制御された動作タイミングで、前記スクリーンに表示される前記相手選手動作映像における前記相手選手が球を発する位置から、前記球軌道情報の球を発射し、
前記音響提示部は、
前記音響情報の音を放出し、
前記音響提示部がスピーカである、
運動学習システム。
【請求項8】
請求項7に記載の運動学習システムであって、
前記音響情報には、前記相手選手が当該球を発したときに競技場で発せられた音も含まれる、
ことを特徴とする運動学習システム。
【請求項9】
請求項7または8に記載の運動学習システムであって、
前記情報記憶部には、前記球を発した複数のときそれぞれについて、前記相手選手動作映像と前記球軌道情報と前記音響情報と対応付けられて、前記球を発する動作により発せられた球の予め定めた属性の情報または値(以下、球属性情報という)も予め記憶されており、
前記運動学習装置が、さらに、
前記情報記憶部に記憶された前記相手選手動作映像と前記球軌道情報と前記音響情報と対応付けられた前記球属性情報を読み出して、読み出した前記球属性情報を表す画像を前記プロジェクタに出力し、
前記プロジェクタが、さらに、
前記運動学習装置に制御された動作タイミングで、前記球属性情報が前記スクリーンに表示されるように、前記球属性情報の画像を前記スクリーンに投射し、
前記スクリーンが、さらに、
前記プロジェクタが投射した前記球属性情報を表す画像を表示する
運動学習システムであり、
前記運動学習装置は、前記情報記憶部から、前記相手選手の2種類以上の球種それぞれの複数の球を発する動作についての、前記相手選手動作映像と前記球軌道情報と前記音響情報と前記球属性情報の組をランダムな順で読み出して、出力し、
読み出した前記球属性情報を表す画像を予め定めた時間長で前記プロジェクタに出力し、当該出力を完了してから、読み出した前記相手選手動作映像を前記プロジェクタに出力する、
ことを特徴とする運動学習システム。
【請求項10】
請求項7または8に記載の運動学習システムであって、
前記情報記憶部には、前記球を発した複数のときそれぞれについて、前記相手選手動作映像と前記球軌道情報と前記音響情報と対応付けられて、前記球を発する動作により発せられた球の予め定めた属性の情報または値(以下、球属性情報という)も予め記憶されており、
前記運動学習装置が、さらに、
前記情報記憶部に記憶された前記相手選手動作映像と前記球軌道情報と前記音響情報と対応付けられた前記球属性情報を読み出して、読み出した前記球属性情報を表す音声を前記音響提示部に出力し、
前記音響提示部が、さらに、
前記球属性情報を表す音声を放出する、
運動学習システムであり、
前記運動学習装置は、前記情報記憶部から、前記相手選手の2種類以上の球種それぞれの複数の球を発する動作についての、前記相手選手動作映像と前記球軌道情報と前記音響情報と前記球属性情報の組をランダムな順で読み出して、出力し、
読み出した前記球属性情報を表す音声の前記音響提示部による放出を完了してから、読み出した前記相手選手動作映像を前記プロジェクタに出力するように制御する、
ことを特徴とする運動学習システム。
【請求項11】
請求項7または8に記載の運動学習システムであって、
前記情報記憶部には、前記球を発した複数のときそれぞれについて、前記相手選手動作映像と前記球軌道情報と前記音響情報と対応付けられて、前記球を発する動作により発せられた球の予め定めた属性の情報または値(以下、球属性情報という)も予め記憶されており、
前記運動学習装置が、さらに、
前記情報記憶部に記憶された前記相手選手動作映像と前記球軌道情報と前記音響情報と対応付けられた前記球属性情報を読み出して、読み出した前記球属性情報を表す画像を前記プロジェクタに出力し、
前記プロジェクタが、さらに、
前記運動学習装置に制御された動作タイミングで、前記球属性情報が前記スクリーンに表示されるように、前記球属性情報の画像を前記スクリーンに投射し、
前記スクリーンが、さらに、
前記プロジェクタが投射した前記球属性情報を表す画像を表示する
運動学習システムであり、
前記運動学習装置は、前記情報記憶部から、前記相手選手の2種類以上の球種それぞれの複数の球を発する動作についての、前記相手選手動作映像と前記球軌道情報と前記音響情報と前記球属性情報の組をランダムな順で読み出して、出力し、
読み出した前記球軌道情報に対応する球が前記自選手の近傍に到達した後に、読み出した前記球属性情報を表す画像を予め定めた時間長で前記プロジェクタに出力するように制御する、
ことを特徴とする運動学習システム。
【請求項12】
請求項7または8に記載の運動学習システムであって、
前記情報記憶部には、前記球を発した複数のときそれぞれについて、前記相手選手動作映像と前記球軌道情報と前記音響情報と対応付けられて、前記球を発する動作により発せられた球の予め定めた属性の情報または値(以下、球属性情報という)も予め記憶されており、
前記運動学習装置が、さらに、
前記情報記憶部に記憶された前記相手選手動作映像と前記球軌道情報と前記音響情報と対応付けられた前記球属性情報を読み出して、読み出した前記球属性情報を表す音声を前記音響提示部に出力し、
前記音響提示部が、さらに、
前記球属性情報を表す音声を放出する、
運動学習システムであり、
前記運動学習装置は、前記情報記憶部から、前記相手選手の2種類以上の球種それぞれの複数の球を発する動作についての、前記相手選手動作映像と前記球軌道情報と前記音響情報と前記球属性情報の組をランダムな順で読み出して、出力し、
読み出した前記球軌道情報に対応する球が前記自選手の近傍に到達した後に、読み出した前記球属性情報を表す音声を前記音響提示部に出力するように制御する、
ことを特徴とする運動学習システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対戦型の競技における対戦相手の選手の癖を学習するためのシステムや装置や学習方法、例えば、ソフトボールや野球の打者が対戦相手の投手の癖を学習するためのシステムや装置や学習方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトボールや野球の打撃においては、打者は、投手が投げた高速で向かってくる球に対して、短時間で球種などを見極めて、どのような運動を行うべきかを判断し、正確に目標とする運動を行う必要がある。打者は、投手が球を投げる前の時点で球種などがわかると、その時点からどのような運動を行うべきかの判断を開始でき、結果として良い打撃をできる可能性が高くなる。そこで、投手は、打者が良い打撃をできる可能性を低くするために、球種間での投球動作(いわゆる「投球フォーム」)の異なりが少なくなるように訓練されている。
【0003】
しかしながら、異なる球種の球を投げるためには、投手が投げる際に球に与える速度や回転などを異ならせる必要があることから、球種が異なれば投手の投球動作は必ず異なる。すなわち、投手の投球動作には、投げる球種に特化した部分が必ず含まれる。投手の投球動作に含まれる球種に特化した部分は、一般的には「癖」と呼ばれている。癖は、打者が打撃をする際に、球種を見極めるための情報として利用される。
【0004】
各チームでは、事前に情報分析の担当者などが、対戦相手となるチームの投手の投球動作を見て癖を把握し、把握した癖を言葉や文字などの文言で表現して自チームの打者に伝えておく。そして、実際に対戦する際には、相手チームの投手の癖の情報を各打者が打撃の際の情報として利用している。例えば、「カーブを投げるときには、構えたときにグローブからボールが半分はみ出して見える」、「ライズボールの投球動作では、引き手の上がり方がストレートの投球動作よりも大きい」、などのように文言で表現した癖の情報が打撃の際の情報として実際に利用されたことが知られている。
【0005】
一方、非特許文献1に記載されているように、一部の打者は、投手の投球動作を見て文言で表現できない癖を見抜いて、見抜いた癖の情報を打撃の際の情報として利用する能力を獲得していること、が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Toshitaka Kimura, Daiki Nasu, Masumi Yamaguchi, Makio Kashino, "Availability of pitching motion information in batting timing control revealed by virtual reality". Society for Neuroscience 48th Annual Meeting, 2018/11/3-7, San Diego, USA.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した能力を投手との実際の対戦経験などによって獲得できた打者は、癖の情報を自らの打撃に用いることができるものの、その癖の情報は文言で表現できないことから、ほかの打者に癖の情報を伝達することができず、自チームのほかの打者は癖の情報を利用できない、という課題があった。この課題は、投手が投げた球に対して打者が打撃を行うソフトボールや野球などの対戦型の競技に限られず、対戦相手の選手(以下、「相手選手」ともいう)の運動によって動きを与えられた物に対して選手(以下、「自選手」ともいう)が運動を行う対戦型の競技にも存在している。
【0008】
本発明は、相手選手の運動によって動きを与えられた物に対して自選手が運動を行う対戦型の競技における相手選手の癖を、その癖が文言で表現できないものであったとしても、自選手が利用することができるようになるための学習をすることができるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様によれば、運動学習システムは、投手が複数種類の投球属性から何れかを選択して投げた球に対して、打者が打撃を行う競技における、投手の投球属性ごとの投球動作の癖を打者が学習するための運動学習システムである。運動学習システムは、競技の規則で定められたホームベースと、競技の規則で定められたバッターボックスと、競技の規則で定められたピッチャープレートの位置に配置されたピッチングマシンと、ピッチングマシンのホームベース側に隣接して配置されたスクリーンと、スクリーンに投射するプロジェクタと、ピッチングマシンとプロジェクタに接続された運動学習装置と、を含む。運動学習装置は、対戦相手となる可能性があるチームのある投手が実際に行った複数の投球それぞれについての、ホームベース方向から見た投手の投球動作の映像(以下、投球動作映像という)と、当該投球動作により投げられた球と略同じ動きの球をピッチングマシンが発射するための情報(以下、投球軌道情報という)と、を対応付けて予め記憶した情報記憶部を含み、情報記憶部に記憶された投球動作映像と投球軌道情報との組を読み出して、読み出した投球動作映像をプロジェクタに出力し、読み出した投球軌道情報をピッチングマシンに出力し、スクリーンに表示される投球動作映像における投手のボールリリースの時刻とピッチングマシンが投球軌道情報の球を発射する時刻とが一致するようにプロジェクタとピッチングマシンの動作タイミングを制御し、プロジェクタは、運動学習装置に制御された動作タイミングで、投球動作映像がスクリーンに表示されるように、投球動作映像をスクリーンに投射し、スクリーンは、表示される投球動作映像における投手のボールリリースの位置に、ピッチングマシンが発射した球が通過できる穴を備え、プロジェクタが投射した投球動作映像を表示し、ピッチングマシンは、運動学習装置に制御された動作タイミングで、スクリーンに表示された投球動作映像における投手のボールリリースの位置から、投球軌道情報の球を発射する。
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の他の態様によれば、運動学習システムは、投手が複数種類の投球属性から何れかを選択して投げた球に対して、打者が打撃を行う競技における、投手の投球属性ごとの投球動作の癖を打者が学習するための運動学習システムである。運動学習システムは、三次元映像を表示するヘッドマウントディスプレイと、ヘッドマウントディスプレイに接続された運動学習装置と、を含む。運動学習装置は、対戦相手となる可能性があるチームのある投手が実際に行った複数の投球それぞれについての、投球動作の三次元映像と、当該投球動作により投げられた球と略同じ動きの球をコンピュータグラフィックスによって生成した三次元映像と、を連続させた三次元映像(以下、連続三次元映像という)として予め記憶した情報記憶部を含み、情報記憶部に記憶された連続三次元映像を読み出して、読み出した連続三次元映像をヘッドマウントディスプレイに出力し、ヘッドマウントディスプレイは、連続三次元映像を提示する。
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の他の態様によれば、運動学習システムは、相手選手が複数種類の属性から何れかを選択して発した球に対応する運動を自選手が行う競技における、属性ごとの相手選手の動作の癖を自選手が学習するための運動学習システムである。運動学習システムは、競技の規則で定められた範囲のうちの何れかの位置に配置された発射装置と、発射装置の利用者側に隣接して配置されたスクリーンと、スクリーンに投射するプロジェクタと、発射装置とプロジェクタに接続された運動学習装置と、を含む。運動学習装置は、対戦相手となる可能性があるチームのある相手選手が実際に球を発した複数のときそれぞれについての、利用者の方向から見た相手選手の球を発する動作の映像(以下、相手選手動作映像という)と、当該動作により発せられた球と略同じ動きの球を発射装置が発射するための情報(以下、球軌道情報という)と、を対応付けて予め記憶した情報記憶部を含み、情報記憶部に記憶された相手選手動作映像と球軌道情報との組を読み出して、読み出した相手選手動作映像をプロジェクタに出力し、読み出した球軌道情報を発射装置に出力し、スクリーンに表示される相手選手動作映像における相手選手が球を発する時刻と発射装置が球軌道情報の球を発射する時刻とが一致するようにプロジェクタと発射装置の動作タイミングを制御し、プロジェクタは、運動学習装置に制御された動作タイミングで、相手選手動作映像がスクリーンに表示されるように、相手選手動作映像をスクリーンに投射し、スクリーンは、表示される相手選手動作映像における相手選手が球を発する位置に、発射装置が発射した球が通過できる穴を備え、プロジェクタが投射した相手選手動作映像を表示し、発射装置は、運動学習装置に制御された動作タイミングで、スクリーンに表示される相手選手動作映像における相手選手が球を発する位置から、
球軌道情報の球を発射する。
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の他の態様によれば、運動学習システムは、相手選手が複数種類の属性から何れかを選択して発した球に対応する運動を自選手が行う競技における、属性ごとの相手選手の動作の癖を自選手が学習するための運動学習システムである。運動学習システムは、三次元映像を表示するヘッドマウントディスプレイと、ヘッドマウントディスプレイに接続された運動学習装置と、を含む。運動学習装置は、対戦相手となる可能性があるチームのある相手選手が実際に球を発した複数のときそれぞれについての、相手選手の球を発する動作の三次元映像と、当該動作により発せられた球と略同じ動きの球をコンピュータグラフィックスによって生成した三次元映像と、を連続させた三次元映像(以下、連続三次元映像という)を予め記憶した情報記憶部を含み、情報記憶部に記憶された連続三次元映像を読み出して、読み出した連続三次元映像をヘッドマウントディスプレイに出力し、ヘッドマウントディスプレイは、連続三次元映像を提示する。
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の他の態様によれば、運動学習システムは、相手選手が複数種類の属性から何れかを選択して動かした物に対応する運動を自選手が行う競技における、属性ごとの相手選手の動作の癖を自選手が学習するための運動学習システムである。運動学習システムは、三次元映像を表示するヘッドマウントディスプレイと、ヘッドマウントディスプレイに接続された運動学習装置と、を含む。運動学習装置は、対戦相手となる可能性があるチームのある相手選手が実際に物を動かした複数のときそれぞれについての、相手選手の物を動かす動作の三次元映像と、当該動作により動かされた物と略同じ動きの物をコンピュータグラフィックスによって生成した三次元映像と、を連続させた三次元映像(以下、連続三次元映像という)を予め記憶した情報記憶部を含み、情報記憶部に記憶された連続三次元映像を読み出して、読み出した連続三次元映像をヘッドマウントディスプレイに出力し、ヘッドマウントディスプレイは、連続三次元映像を提示する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、相手選手の運動によって動きを与えられた物に対して自選手が運動を行う対戦型の競技における相手選手の癖を、その癖が文言で表現できないものであったとしても、自選手が利用することができるようになるための学習をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、ソフトボール用の運動学習システム10の例を模式的に示す図である。
図2図2は、スクリーン142を模式的に示す正面図である。
図3図3は、運動学習システム10の機能構成を例示する図である。
図4図4は、情報記憶部110の記憶内容を例示する図である。
図5図5は、コンピュータの機能構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、対戦型の競技がソフトボールである場合の例を用いて、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0017】
<第1実施形態>
第1実施形態の運動学習システムは、投手の癖の情報を打撃に用いることができるようにするための学習に打者が利用する運動学習システムであって、投手が実際に行った投球動作の映像を打者が見ながら、その投球動作のときに投手が実際に投げた球と略同じ動きの球を打者が視認したり打撃したりできるようにしたものである。
【0018】
第1実施形態の運動学習システム10は、図1に模式的に例示するように、例えば汎用のPCである運動学習装置100と、運動学習装置100に接続されたプロジェクタ141と、競技規則で定められたホームベース200と、運動学習システム10を利用して学習する打者(以下、「利用者」という)が立つ競技規則で定められたバッターボックス210と、競技規則で定められたホームベースの前端からピッチャープレートまでの距離Lだけホームベース200から離れた位置に配置されたピッチングマシンである対象物提示部150と、対象物提示部150のホームベース200側に隣接して配置されてプロジェクタ141が投射した映像や画像を表示するスクリーン142と、を含む。運動学習システム10は、図1に破線で例示するように、利用者が受聴可能な位置に配置されて音を放出するスピーカである音響提示部160を含んでもよい。
【0019】
スクリーン142は、図2に正面図を模式的に示すように、対象物提示部150から発射された球が通過できる大きさの穴1422があけられた投影面1421を備える。プロジェクタ141とスクリーン142は、例えば、ホームベース方向から見た投手の投球動作の映像を実際の大きさと略同じ大きさで表示するように調整される。投手の投球動作の映像の大きさは、当該映像を利用者が視認したときに人間の運動であることを違和感なく感じられる大きさであることが重要であり、実際の大きさより小さくてもよいし、実際の大きさより大きくてもよいし、利用者の求めに応じて調整されるようにしてもよい。対象物提示部150の球を発射する機構の位置とスクリーン142の穴1422の位置は、スクリーン142に表示される投手のボールリリースの位置と一致するようにされている。すなわち、対象物提示部150の球を発射する機構の位置とスクリーン142の穴1422の位置は、投手の実際のボールリリースの位置と同じ位置である。なお、図1に例示したプロジェクタ141とスクリーン142は後述する機能構成部である映像提示部140であり、プロジェクタ141とスクリーン142に代えて、穴1422を備えたプラズマや液晶などのディスプレイ装置をスクリーン142の位置に配置して映像提示部140としてもよい。なお、穴1422は、映像の表示をなるべく妨げないように、対象物提示部150から出力された球が通過できる最小限の大きさとするとよい。
【0020】
第1実施形態の運動学習システム10の機能構成は、図3に例示する通りであり、運動学習装置100、映像提示部140、対象物提示部150を含み、図3に破線で例示するように音響提示部160を含んでもよい。
【0021】
運動学習装置100は、例えば、中央演算処理装置(CPU: Central Processing Unit)、主記憶装置(RAM: Random Access Memory)などを有する公知又は専用のコンピュータに特別なプログラムが読み込まれて構成された特別な装置である。運動学習装置100は、例えば、中央演算処理装置の制御のもとで各処理を実行する。運動学習装置100に入力されたデータや各処理で得られたデータは、例えば、主記憶装置に格納され、主記憶装置に格納されたデータは必要に応じて読み出されて他の処理に利用される。また、運動学習装置100の各処理部の少なくとも一部が集積回路等のハードウェアによって構成されていてもよい。
【0022】
運動学習装置100は、情報記憶部110、提示内容決定部120、提示制御部130、を含む。以下、各部について説明する。
【0023】
[情報記憶部110]
情報記憶部110には、対戦相手となる可能性があるチームの投手が実際に行った複数の投球それぞれについての、投球動作の情報と、投げられた球の動きの情報と、投げられた球の属性情報と、を対応付けて予め記憶しておく。投球動作の情報は、投手がその投球をしたときの動作の映像である。投手がその投球をしたときの動作の映像は、打席方向から見た投手の投球動作の映像であり、投手が投球モーションを開始した時点から投球モーションを終了した時点(ボールリース後のフォロースルーが終了した時点)までを少なくとも含み、その間の投手の全身を含む。ホームベース方向から見た投手の投球動作の映像は、例えば、バックネット裏に配置した1つのカメラで撮像した映像であってもよいし、複数箇所それぞれに配置した複数個のカメラにより撮像した映像から周知の任意視点映像生成技術により生成した映像であってもよい。投げられた球の動きの情報は、投手がその投球をしたときの球と略同じ動きの球を対象物提示部150であるピッチングマシンが発射するための制御情報であり、例えば、球に与えられる回転、球に与えられる速度、球の発射方向、を制御するための情報であり、具体的には例えば、ピッチングマシンの各回転子に与える回転の情報である。投げられた球の属性情報は、投げられた球についての予め定めた各属性の情報または値であり、予め定めた属性とは、例えば、球種、球速、打撃位置(例えば、五角形のホームベースの投手側にある辺を含む直線上の位置)における球の横方向の位置情報(いわゆる「コース」)と縦方向の位置情報(いわゆる「高さ」)、である。以下では、投球動作の情報を「投球動作情報」とも呼び、投げられた球の動きの情報を「投球軌道情報」とも呼び、投げられた球の属性を「投球属性」とも呼び、投げられた球の属性情報を「投球属性情報」とも呼ぶ。なお、学習方法次第では、投球属性情報については情報記憶部110に記憶しておかないでよい場合もある。
【0024】
例えば、情報記憶部110には、図4に例示するように、チームAの投手ap1について、ライズボールを投げたとき(ID=R1のとき)の投手ap1の動作の映像R1.aviを投球動作情報とし、そのライズボールと略同じ動きの球を対象物提示部150であるピッチングマシンが発射するための制御情報R1.xxxを投球軌道情報とし、そのライズボールの予め定めた各属性の情報、例えば、球種=ライズボール、球速=100km/h、横方向の位置情報=ストライクゾーンのインコース、縦方向の位置=ストライクゾーンの高め、を投球属性情報として、対応付けて、ライズボールを投げた別のとき(ID=R2のとき)の投手ap1の動作の映像R2.aviを投球動作情報とし、そのライズボールと略同じ動きの球を対象物提示部150であるピッチングマシンが発射するための制御情報R2.xxxを投球軌道情報とし、そのライズボールの予め定めた各属性の情報、例えば、球種=ライズボール、球速=100km/h、横方向の位置情報=ストライクゾーンのアウトコース、縦方向の位置=ストライクゾーンの低め、を投球属性情報として、対応付けて、・・・、のように予め記憶しておく。なお、チームAの1人または複数人の別の投手それぞれについて、投球動作情報と投球軌道情報と投球属性情報を対応付けて情報記憶部110に記憶しておいてもよい。また、チームAとは別のチームの1人または複数人の投手それぞれについて、投球動作情報と投球軌道情報と投球属性情報を対応付けて情報記憶部110に記憶しておいてもよい。
【0025】
なお、投手がその投球をしたときの音である投球音響情報も運動学習システム10が提示する場合には、情報記憶部110には、投球動作情報と投球軌道情報と投球属性情報に加えて、投球音響情報も対応付けて記憶しておく。投球音響情報は、投手がその投球をしたときに発した音を少なくとも含み、投手がその投球をしたときに球場で発せられた音を含んでもよい。投球音響情報は、図4に例示するように、投手ap1がID=R1のライズボールを投げたときに収音された音響信号R1.wav、投手ap1がID=R2のライズボールを投げたときに収音された音響信号R2.wav、・・・、のように記憶しておけばよい。
【0026】
[提示内容決定部120]
提示内容決定部120は、利用者に提示する内容を決定し、決定した内容に対応する投球動作情報と投球軌道情報を情報記憶部110から1組ずつ読み出して提示制御部130に出力する。運動学習システム10が投球音響情報も提示する場合には、提示内容決定部120は、投球音響情報も情報記憶部110から読み出して提示制御部130に出力する。
【0027】
また、提示内容決定部120は、決定した内容次第では、各組について、投球属性情報も情報記憶部110から読み出して、投球動作情報を提示する前に提示する投球属性情報の画像および/または音声、および/または、投球動作情報と投球軌道情報を提示した後に提示する投球属性情報の画像および/または音声、も提示制御部130に出力する。投球属性情報の画像は、情報記憶部110から読み出した投球属性情報の全部または一部を文字として含めばよいが、例えば、ストライクゾーンを長方形やマトリクス状の図形として含む二次元領域内の位置で横方向の位置と縦方向の位置を表すものであってもよく、球種を丸や三角などの図形で表すものであってもよく、要するに、投球属性情報を特定できる画像であればどのような画像であってもよい。投球属性情報の音声は、情報記憶部110から読み出した投球属性情報の全部または一部を音声として含めばよく、情報記憶部110から読み出した投球属性情報から周知の音声合成技術により生成した音声を用いればよい。
【0028】
[提示制御部130]
提示制御部130は、提示内容決定部120から入力された投球動作情報を映像提示部140に出力し、提示内容決定部120から入力された投球軌道情報を対象物提示部150に出力する。提示制御部130は、投球動作情報と投球軌道情報を出力する際には、投球動作情報である映像を映像提示部140が提示したときの映像中のボールリリースの時刻と、投球軌道情報に対応する球を対象物提示部150が発射する時刻と、が一致するように、映像提示部140が映像を出力するための動作を開始する時刻と、対象物提示部150が球を発射するための動作を開始する時刻と、の制御も行う。この制御により、映像提示部140が提示する投球動作の映像中のボールリリースの時刻に対象物提示部150が球を発射することができる。すなわち、この制御により、映像提示部140が提示する投球動作の映像中のボールリリースと、対象物提示部150による球の発射と、のタイミングを一致させることができる。
【0029】
提示内容決定部120から投球音響情報も入力された場合には、提示制御部130は、投球音響情報を音響提示部160に出力する。この場合には、提示制御部130は、投球動作情報を映像提示部140が提示したときの映像と、投球音響情報を音響提示部160が提示したときの音と、が同期するように、映像提示部140が投球動作情報の映像を出力するための動作を開始する時刻と、音響提示部160が投球音響情報の音を出力するための動作を開始する時刻と、の制御も行う。
【0030】
投球動作情報を提示する前に提示する投球属性情報の画像も提示内容決定部120から入力された場合には、提示制御部130は、投球属性情報の画像も映像提示部140に出力し、映像提示部140が投球属性情報の画像を予め定めた時間長で出力する。この場合には、提示制御部130は、投球属性情報の画像の予め定めた時間長での出力を完了してから映像提示部140が投球動作情報の映像を出力するように、映像提示部140が投球動作情報の映像を出力するための動作と、映像提示部140が投球属性情報の画像を出力するための動作と、の制御も行う。
【0031】
投球動作情報と投球軌道情報を提示した後に提示する投球属性情報の画像も提示内容決定部120から入力された場合には、提示制御部130は、投球属性情報の画像も映像提示部140に出力し、映像提示部140が投球属性情報の画像を予め定めた時間長で出力する。この場合には、提示制御部130は、映像提示部140が投球動作情報の映像の出力を完了し、かつ、対象物提示部150が発射した投球軌道情報に対応する球がホームベース200の近傍に到達した後に、投球属性情報の画像の出力を開始するように、映像提示部140が投球動作情報の映像を出力するための動作、および/または、対象物提示部150が球を発射するための動作、と、映像提示部140が投球属性情報の画像を出力するための動作と、の制御も行う。
【0032】
投球動作情報を提示する前に提示する投球属性情報の音声も提示内容決定部120から入力された場合には、提示制御部130は、投球属性情報の音声を音響提示部160に出力する。この場合には、提示制御部130は、音響提示部160が投球属性情報の音声の出力を完了してから映像提示部140が投球動作情報の映像を出力するように、映像提示部140が投球動作情報の映像を出力するための動作と、音響提示部160が投球属性情報の音声を出力するための動作と、の制御も行う。
【0033】
投球動作情報と投球軌道情報を提示した後に提示する投球属性情報の音声も提示内容決定部120から入力された場合には、提示制御部130は、投球属性情報の音声を音響提示部160に出力する。この場合には、提示制御部130は、映像提示部140が投球動作情報の映像の出力を完了し、かつ、対象物提示部150が発射した投球軌道情報に対応する球がホームベース200の近傍に到達した後に、音響提示部160が投球属性情報の音声の出力を開始するように、映像提示部140が投球動作情報の映像を出力するための動作、および/または、対象物提示部150が球を発射するための動作、と、音響提示部160が投球属性情報の音声を出力するための動作と、の制御も行う。
【0034】
[映像提示部140]
映像提示部140は、提示制御部130から入力された投球動作情報の映像を出力する動作を提示制御部130により制御された時刻に開始して、投球動作情報の映像を表示する。提示制御部130から投球属性情報の画像も入力された場合には、映像提示部140は、投球属性情報の画像を出力する動作を提示制御部130により制御された通りに行い、投球属性情報の画像を予め定めた時間長で表示する。
【0035】
[対象物提示部150]
対象物提示部150は、球を出力するための動作を提示制御部130により制御された時刻に開始して、提示制御部130から入力された投球軌道情報に対応する球を発射する。
【0036】
[音響提示部160]
音響提示部160は、提示制御部130から投球音響情報が入力された場合には、提示制御部130から入力された投球音響情報の音を放出する動作を提示制御部130により制御された時刻に開始して、提示制御部130から入力された投球音響情報の音を放出する。また、音響提示部160は、提示制御部130から投球属性情報の音声が入力された場合には、投球属性情報の音声を放出する動作を提示制御部130により制御された通りに行い、投球属性情報の音声を放出する。
【0037】
<第2実施形態>
第1実施形態の運動学習システム10は、投手が実際に投げた球と略同じ動きの球をピッチングマシンである対象物提示部150が発射するものであったが、投手が実際に投げた球と略同じ動きの球の映像を提示するようにしてもよい。この形態を第2実施形態として説明する。第2実施形態の運動学習システムは、投手の癖の情報を打撃に用いることができるようにするための学習に打者が利用する運動学習システムであって、投手が実際に行った投球動作の映像を打者が見ながら、その投球動作のときに投手が実際に投げた球と略同じ動きの球の映像を打者が視認できるようにしたものである。
【0038】
第2実施形態の運動学習システム10の機能構成は、第1実施形態の運動学習システム10と同様に図3に例示する通りであり、運動学習装置100、映像提示部140、対象物提示部150を含み、図3に破線で例示するように音響提示部160を含んでもよい。運動学習装置100は、情報記憶部110、提示内容決定部120、提示制御部130、を含む。以下、各部について、第1実施形態と同様の説明は省略して、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0039】
第2実施形態の映像提示部140および対象物提示部150は、利用者が装着するためのヘッドマウントディスプレイ、すなわち、利用者が首振りや移動によりどの位置からどの方向を見たとしても、投手が実際に行った投球動作の映像と、その投球動作のときに投手が実際に投げた球と略同じ動きの球の映像と、について実物と略同じ大きさ・奥行・動きを利用者が見ることができるようにした三次元映像を提示する装置である。すなわち、第2実施形態の運動学習システム10では、1つのヘッドマウントディスプレイを共用して映像提示部140および対象物提示部150として用いる。ただし、三次元映像を実物と略同じ大きさで利用者が見ることは必須ではなく、当該三次元映像を利用者が視認したときに人間の運動や球の動きであることを違和感なく感じられる大きさであることが重要であり、実際の大きさより小さくてもよいし、実際の大きさより大きくてもよいし、利用者の求めに応じて調整されるようにしてもよい。
【0040】
[情報記憶部110]
情報記憶部110に記憶しておく投球動作の情報(投球動作情報)は、投手が投球をしたときの動作の三次元映像(以下、「投球動作三次元映像」という)であり、情報記憶部110に記憶しておく投げられた球の動きの情報(投球軌道情報)は、投手がその投球をしたときの実際に投げた球と略同じ動きの球(例えば、軌道が同じ球)をコンピュータグラフィックス(CG)により生成した三次元映像(以下、「投球三次元映像」という)である。投球動作三次元映像と投球三次元映像は、連続した三次元映像(以下、「連続三次元映像」という)として情報記憶部110に記憶しておけばよい。
【0041】
[提示内容決定部120]
提示内容決定部120は、利用者に提示する内容を決定し、決定した内容に対応する連続三次元映像を情報記憶部110から1つずつ順次読み出して提示制御部130に出力する。運動学習システム10が投球音響情報も提示する場合には、提示内容決定部120は、投球音響情報も情報記憶部110から読み出して提示制御部130に出力する。また、運動学習システム10が投球動作情報(本実施形態の場合は、実際には、投球動作情報を含む映像である連続三次元映像)を提示する前および/または投球動作情報と投球軌道情報(本実施形態の場合は、実際には、投球動作情報と投球軌道情報を含む映像である連続三次元映像)を提示した後に投球属性情報の画像および/または音声を提示する場合には、提示内容決定部120は、投球属性情報を情報記憶部110から読み出して、投球属性情報の画像および/または音声を提示制御部130に出力する。
【0042】
[提示制御部130]
提示制御部130は、提示内容決定部120から入力された連続三次元映像を映像提示部140と対象物提示部150であるヘッドマウントディスプレイに出力する。提示内容決定部120から投球音響情報も入力された場合には、提示制御部130は、投球音響情報を音響提示部160に出力する。この場合、音響提示部160は、例えば、ヘッドマウントディスプレイに含まれるスピーカである。
【0043】
投球動作情報を提示する前に提示する投球属性情報の画像、および/または、投球動作情報と投球軌道情報を提示した後に提示する投球属性情報の画像、も提示内容決定部120から入力された場合には、提示制御部130は、投球属性情報の画像もヘッドマウントディスプレイに出力する。この場合には、提示制御部130は、ヘッドマウントディスプレイが連続三次元映像を提示する前および/または連続三次元映像を提示した後に投球属性情報の画像を予め定めた時間長で出力するように、制御する。
【0044】
投球動作情報を提示する前に提示する投球属性情報の音声、および/または、投球動作情報と投球軌道情報を提示した後に提示する投球属性情報の音声、も提示内容決定部120から入力された場合には、投球属性情報の音声を音響提示部160に出力する。この場合には、提示制御部130は、ヘッドマウントディスプレイが連続三次元映像を提示する前に音響提示部160が投球属性情報の音声の出力を完了するように、および/または、ヘッドマウントディスプレイが連続三次元映像を出力した後に音響提示部160が投球属性情報の音声の出力を開始するように、制御する。
【0045】
<第3実施形態>
第3実施形態では、第1実施形態および第2実施形態の運動学習システム10により行われる学習方法について説明する。第1実施形態および第2実施形態の運動学習システム10は、対戦相手となる可能性があるチームの一人の投手の投球について、例えば図4に例示したチームAの投手ap1の投球について、第3実施形態で説明する様々な学習方法に従って、提示内容決定部120が利用者に提示する内容を決定することで、利用者はそれぞれの学習方法による学習を行うことができる。学習方法や球種などの選択を可能とする場合には、例えば、図3に破線で示すように、運動学習装置100に入力部170と表示部180も備えて、表示部180が、提示内容決定部120内の図示しない記憶部に記憶された複数の学習方法を選択肢として表示したり、各学習方法における球種などの選択肢を表示したりして、入力部170が、表示部180に表示された選択肢に対する利用者などによる選択操作を受け付けて、提示内容決定部120が、入力部170が受け付けた選択操作に対応する学習方法や球種などに従って利用者に提示する内容を決定するようにすればよい。
【0046】
〔第1の学習方法〕
第1の学習方法は、ある投手のある1つの球種の投球が連続して行われる状況で利用者が学習する方法である。例えば、投手ap1のライズボールのみを連続して利用者が学習する方法であり、より具体的に例示すると、図4の投球IDがR1,R2,・・・の順の投球について利用者が打撃練習を行う方法である。この学習方法によれば、その投手のその球種の投球動作に対する適切な打撃を利用者が習得することができる。
【0047】
この学習方法とする場合は、例えば、提示内容決定部120は、情報記憶部110に記憶された投球属性情報に含まれる複数の球種を選択肢として表示部180に表示させ、入力部170が受け付けた選択操作に対応する球種を学習用の球種として決定し、決定された球種に対応する投球動作情報と投球軌道情報の組を情報記憶部110から1組ずつ読み出して、読み出した投球動作情報と投球軌道情報を提示制御部130に出力するようにすればよい。なお、提示内容決定部120は、情報記憶部110に記憶された読み出し対象の組の数が学習に必要な回数より少ない場合には、情報記憶部110に記憶された読み出し対象の組を順次繰り返して出力するようにすればよい。
【0048】
例えば、情報記憶部110の記憶内容が図4に例示したものである場合には、提示内容決定部120は、ライズボールとスピードボールとチェンジアップを選択肢として表示部180に表示させればよい。そして、入力部170が受け付けた選択操作に対応する球種がライズボールである場合には、提示内容決定部120は、投球動作情報R1.aviと投球軌道情報R1.xxxの組を読み出して提示制御部130に出力し、次に、投球動作情報R2.aviと投球軌道情報R2.xxxの組を読み出して提示制御部130に出力し、・・・、情報記憶部110に記憶されたライズボールについての組を一通り読み出し終えたら、さらに、投球動作情報R1.aviと投球軌道情報R1.xxxの組を読み出して提示制御部130に出力し、次に、投球動作情報R2.aviと投球軌道情報R2.xxxの組を読み出して提示制御部130に出力し、・・・のように動作すればよい。
【0049】
〔第2の学習方法〕
第2の学習方法は、2種類以上の球種の投球が同じ順に繰り返して行われる状況で利用者が学習する方法である。例えば、投手ap1のライズボールとスピードボールを交互に利用者が学習する方法であり、より具体的に例示すると、図4の投球IDがR1,S1,R2,S2,・・・の順の投球について利用者が打撃練習を行う方法である。この学習方法によれば、複数の球種の投球フォームの規則的な繰り返しにより、球種による投球フォームの違いを利用者が自然に習得することが期待される。
【0050】
この学習方法とする場合は、例えば、提示内容決定部120は、情報記憶部110に記憶された投球属性情報に含まれる複数の球種を選択肢として表示部180に表示させ、入力部170が受け付けた選択操作に対応する複数の球種を学習用の複数の球種として決定し、決定された学習用の複数の球種の提示順を決定し、決定された提示順に対応する球種の投球動作情報と投球軌道情報の組を情報記憶部110から順次読み出して、読み出した投球動作情報と投球軌道情報を提示制御部130に出力するようにすればよい。なお、提示内容決定部120は、情報記憶部110に記憶された読み出し対象の組の数が学習に必要な回数より少ない場合には、情報記憶部110に記憶された読み出し対象の組を順次繰り返して出力するようにすればよい。
【0051】
例えば、情報記憶部110の記憶内容が図4に例示したものである場合には、提示内容決定部120は、ライズボールとスピードボールとチェンジアップを選択肢として表示部180に表示させればよい。そして、入力部170が受け付けた選択操作に対応する球種がライズボールとスピードボールである場合には、提示内容決定部120は、投球動作情報R1.aviと投球軌道情報R1.xxxの組を読み出して提示制御部130に出力し、次に、投球動作情報S1.aviと投球軌道情報S1.xxxの組を読み出して提示制御部130に出力し、その次に、投球動作情報R2.aviと投球軌道情報R2.xxxの組を読み出して提示制御部130に出力し、その次に、投球動作情報S2.aviと投球軌道情報S2.xxxの組を読み出して提示制御部130に出力し、・・・、情報記憶部110に記憶されたライズボールについての組とスピードボールについての組を一通り読み出し終えたら、さらに、投球動作情報R1.aviと投球軌道情報R1.xxxの組を読み出して提示制御部130に出力し、次に、投球動作情報S1.aviと投球軌道情報S1.xxxの組を読み出して提示制御部130に出力し、・・・のように動作すればよい。
【0052】
〔第3の学習方法〕
第3の学習方法は、2種類以上の球種の投球がランダムに行われる状況で利用者が学習する方法である。この第3の学習方法によっても、第2の学習方法と同様に、球種による投球フォームの違いを利用者が自然に習得することが期待される。ただし、第3の学習方法のほうが第2の学習方法よりも、学習効率が良く、持続効果が大きい。
【0053】
この学習方法とする場合は、提示内容決定部120は、情報記憶部110に記憶された投球動作情報と投球軌道情報の組をランダムに1組ずつ読み出して、読み出した投球動作情報と投球軌道情報を提示制御部130に出力する。利用者などに球種を指定される場合には、例えば、提示内容決定部120は、情報記憶部110に記憶された投球属性情報に含まれる複数の球種を選択肢として表示部180に表示させ、入力部170が受け付けた選択操作に対応する複数の球種を学習用の複数の球種として決定し、決定された学習用の複数の球種について、情報記憶部110に記憶された投球動作情報と投球軌道情報の組をランダムに1組ずつ読み出して、読み出した投球動作情報と投球軌道情報を提示制御部130に出力するようにすればよい。
【0054】
〔第4の学習方法〕
第4の学習方法は、第3の学習方法と同様に2種類以上の球種の投球がランダムに行われる状況で利用者が学習する方法であるが、球種の情報を含む投球属性情報を利用者が投球の前に知らされる点が第3の学習方法と異なる。この学習方法によれば、利用者は各投球に対する打撃を予め球種などがわかった上で行うので、打撃のタイミングをとりやすいことなどにより打撃の成功率が上がり、打撃の成功体験と合わせた投手の投球フォームの学習をすることが期待できる。
【0055】
この学習方法とする場合は、提示内容決定部120は、情報記憶部110に記憶された投球動作情報と投球軌道情報と投球属性情報の組をランダムに1組ずつ読み出して、読み出した投球動作情報と投球軌道情報に加えて、投球動作情報を提示する前に提示する投球属性情報の画像および/または音声も、提示制御部130に出力する。提示内容決定部120は、投球属性情報の画像および/または音声には、情報記憶部110に記憶された投球属性情報の一部のみを含めるようにしてもよい。すなわち、運動学習システム10が画像および/または音声で提示する投球属性情報は、情報記憶部110に記憶された全部としてもよいし一部としてもよく、例えば、球種と球速のみを提示するようにしてもよいし、横方向の位置情報と縦方向の位置情報も提示するようにしてもよい。
【0056】
〔第5の学習方法〕
第5の学習方法は、第3および第4の学習方法と同様に2種類以上の球種の投球がランダムに行われる状況で利用者が学習する方法であるが、球種の情報を含む投球属性情報を利用者が投球の後に知らされる点が第3および第4の学習方法と異なる。この学習方法によれば、球種が何であったかという事実を明確に利用者に通知することで、誤学習を防止する効果がある。また、利用者がある投球の打撃に失敗した後にその投球の球種を知ることで、失敗した理由を推察するヒントを利用者に与え、次の打撃の成功につながりやすくする効果がある。
【0057】
この学習方法の場合は、提示内容決定部120は、情報記憶部110に記憶された投球動作情報と投球軌道情報と投球属性情報の組をランダムに1組ずつ読み出して、読み出した投球動作情報と投球軌道情報に加えて、投球動作情報と投球軌道情報を提示した後に提示する投球属性情報の画像および/または音声も、提示制御部130に出力する。提示内容決定部120は、投球属性情報の画像および/または音声には、情報記憶部110に記憶された投球属性情報の一部のみを含めるようにしてもよい。すなわち、運動学習システム10が画像および/または音声で提示する投球属性情報は、情報記憶部110に記憶された全部としてもよいし一部としてもよく、例えば、球種と球速のみを提示するようにしてもよいし、横方向の位置情報と縦方向の位置情報も提示するようにしてもよい。
【0058】
〔第6の学習方法〕
第6の学習方法は、第3から第5の学習方法と同様に2種類以上の球種の投球がランダムに、行われる状況で利用者が学習する方法であるが、投球の前と後の両方に投球属性情報を知らされる点が第3から第5の学習方法と異なる。この学習方法の場合は、提示内容決定部120は、情報記憶部110に記憶された投球動作情報と投球軌道情報と投球属性情報の組をランダムに1組ずつ読み出して、読み出した投球動作情報と投球軌道情報に加えて、投球動作情報を提示する前に提示する投球属性情報の画像および/または音声、投球動作情報と投球軌道情報を提示した後に提示する投球属性情報の画像および/または音声、も提示制御部130に出力する。提示内容決定部120は、投球属性情報の画像および/または音声には、情報記憶部110に記憶された投球属性情報の一部のみを含めるようにしてもよい。すなわち、運動学習システム10が画像および/または音声で提示する投球属性情報は、情報記憶部110に記憶された全部としてもよいし一部としてもよく、例えば、球種と球速のみを提示するようにしてもよいし、横方向の位置情報と縦方向の位置情報も提示するようにしてもよい。
【0059】
また、提示内容決定部120は、投球動作情報を提示する前に提示する投球属性情報の画像および/または音声と、投球動作情報と投球軌道情報を提示した後に提示する投球属性情報の画像および/または音声と、に含める投球属性情報の全部または一部を異ならせてもよい。すなわち、運動学習システム10が画像および/または音声で提示する投球属性情報は、投球の前と投球の後で全部または一部が異なる情報であってもよく、例えば、投球の前には横方向の位置情報と縦方向の位置情報を提示するようにし、投球の後には球種と球速を提示するようにしてもよい。
【0060】
また、提示内容決定部120は、投球動作情報を提示する前に提示する投球属性情報の画像および/または音声に含める投球属性情報よりも、投球動作情報と投球軌道情報を提示した後に提示する投球属性情報の画像および/または音声に含める投球属性情報のほうが多くなるようにしてもよい。すなわち、運動学習システム10が画像および/または音声で提示する投球属性情報は、投球の前よりも投球の後のほうが多くてもよく、例えば、投球の前には横方向の位置情報と縦方向の位置情報を提示するようにし、投球の後には球種と球速と横方向の位置情報と縦方向の位置情報を提示するようにしてもよい。
【0061】
〔第7の学習方法〕
第7の学習方法は、第3から第6の学習方法と同様に2種類以上の球種の投球がランダムに行われる状況で利用者が学習する方法であるが、学習が進むにつれて知らされる投球属性情報が少なくなる点が第3から第6の学習方法と異なる。この学習方法の場合は、提示内容決定部120は、情報記憶部110に記憶された投球動作情報と投球軌道情報の組をランダムに1組ずつ読み出して、読み出した投球動作情報と投球軌道情報を提示制御部130に出力する。この場合は、提示内容決定部120は、投球属性情報の画像および/または音声に含める投球属性情報を、投球数が多くなるほど少なくなるようにすることから、情報記憶部110から投球属性情報を読み出して投球動作情報を提示する前に提示する投球属性情報の画像および/または音声、および/または、投球動作情報と投球軌道情報を提示した後に提示する投球属性情報の画像および/または音声、も提示制御部130に出力することもあれば、情報記憶部110から投球属性情報を読み出さず提示制御部130に投球属性情報の画像も音声も出力しないこともある。例えば、提示内容決定部120は、投球属性情報の画像および/または音声には、最初の20球では情報記憶部110に記憶された投球属性情報の全部を含め、次の20球では情報記憶部110に記憶された投球属性情報のうちの球種と球速のみを含め、その次の20球は投球属性情報の画像および/または音声を出力しないようにしてもよい。すなわち、運動学習システム10は、最初の20球では情報記憶部110に記憶された投球属性情報の全部を画像および/または音声で提示し、次の20球では情報記憶部110に記憶された投球属性情報のうちの球種と球速を画像および/または音声で提示し、次の20球では投球属性情報の提示をしないようにしてもよい。
【0062】
なお、上述した第1から第7の方法の説明においては、球種に着目した説明を行ったが、上述した第1から第7の方法の「球種」を球種以外の属性に読み替えて実施してもよいし、複数の属性の組み合わせに読み替えて実施してもよい。
【0063】
<第4実施形態>
本発明の運動学習システムと学習方法は、上述したソフトボールに限られず、相手選手の運動によって発せられた球に対して自選手が運動を行う対戦型の競技であれば実施できる。このような対戦型競技用の第1実施形態と同様の運動学習システムについて、第4実施形態として説明する。このような対戦型競技の例は、テニス、卓球、バドミントン、バレーボール、ハンドボール、サッカーである。例えば、テニスや卓球やバレーボールにおけるチャンスボールに対する打ち返しやサーブ、ハンドボールのペナルティスロー、サッカーのペナルティキック、の際には、どのような球種の球を発しようとしているのか(打とうとしているのか、蹴ろうとしているのか、投げようとしているのか、など)、どのような位置に到達させようとしているか、などの属性によって、球を発する動作に属性に特化した部分が含まれる。バドミントンは、球として羽を備えたシャトルを用いるが、上述したテニスや卓球やバレーボールなどの競技と同様である。また、これらの競技の練習用には、ソフトボールや野球のピッチングマシンと同様に、様々な属性の球を発射できる発射装置が存在している。すなわち、競技規則で定められた範囲(コート、フィールド、などの相手選手がいる可能性がある範囲)のうちの何れかの位置(相手選手が打とう、投げよう、蹴ろう、などとしていると仮定される位置)に発射装置である対象物提示部を配置し、対象物提示部の利用者側に隣接してスクリーンを備えれば、上述した何れの競技であっても第1実施形態の運動学習システム10と同様の運動学習システムを実現することができ、第1実施形態の運動学習システム10による第3実施形態の学習方法を実施することができる。
【0064】
すなわち、第4実施形態の運動学習システムは、相手選手が複数種類の属性から何れかを選択して発した球に対応する運動を自選手が行う競技における、属性ごとの相手選手の動作の癖を自選手が学習するための運動学習システムであって、競技の規則で定められた範囲のうちの何れかの位置に配置された発射装置と、発射装置の利用者側に隣接して配置されたスクリーンと、スクリーンに投射するプロジェクタと、発射装置とプロジェクタに接続された運動学習装置と、を含む。運動学習装置は、対戦相手となる可能性があるチームのある相手選手が実際に球を発した複数のときそれぞれについての、利用者の方向から見た相手選手の球を発する動作の映像(以下、相手選手動作映像という)と、当該動作により発せられた球と略同じ動きの球を発射装置が発射するための情報(以下、球軌道情報という)と、を対応付けて予め記憶した情報記憶部を含む。そして、運動学習装置は、情報記憶部に記憶された相手選手動作映像と球軌道情報との組を読み出して、読み出した相手選手動作映像をプロジェクタに出力し、読み出した球軌道情報を発射装置に出力し、スクリーンに表示される相手選手動作映像における球を発する時刻と発射装置が球軌道情報の球を発射する時刻とが一致するようにプロジェクタと発射装置の動作タイミングを制御する。プロジェクタは、運動学習装置に制御された動作タイミングで、相手選手動作映像がスクリーンに表示されるように、相手選手動作映像をスクリーンに投射する。スクリーンは、表示される相手選手動作映像における相手選手が球を発する位置に、発射装置が発射した球が通過できる穴を備え、プロジェクタが投射した前記相手選手動作映像を表示する。発射装置は、運動学習装置に制御された動作タイミングで、スクリーンに表示される相手選手動作映像における相手選手が球を発する位置から、球軌道情報の球を発射する。
【0065】
<第5実施形態>
第4実施形態で説明した対戦型競技用の第2実施形態と同様の運動学習システムについて、第5実施形態として説明する。
【0066】
第5実施形態の運動学習システムは、相手選手が複数種類の属性から何れかを選択して発した球に対応する運動を自選手が行う競技における、属性ごとの相手選手の動作の癖を自選手が学習するための運動学習システムであって、三次元映像を表示するヘッドマウントディスプレイと、ヘッドマウントディスプレイに接続された運動学習装置と、を含む。運動学習装置は、対戦相手となる可能性があるチームのある相手選手が実際に球を発した複数のときそれぞれについての、相手選手の球を発する動作の三次元映像と、当該動作により発せられた球と略同じ動きの球をコンピュータグラフィックスによって生成した三次元映像と、を連続させた三次元映像(以下、連続三次元映像という)を予め記憶した情報記憶部を含む。そして、運動学習装置は、情報記憶部に記憶された連続三次元映像を読み出して、読み出した連続三次元映像をヘッドマウントディスプレイに出力する。ヘッドマウントディスプレイは、入力された連続三次元映像を提示する。
【0067】
<第6実施形態>
第5実施形態の運動学習システムの相手選手の運動によって発せられた球に代えて、相手選手の運動によって動きを与えられた物を用いてもよい。すなわち、本発明の運動学習システムと学習方法は、相手選手の運動によって動きを与えられた物に対して自選手が運動を行う対戦型の競技であれば実施できる。このような対戦型競技用の第5実施形態と同様の運動学習システムについて、第6実施形態として説明する。
【0068】
第6実施形態の運動学習システムは、相手選手が複数種類の属性から何れかを選択して動かした物に対応する運動を自選手が行う競技における、属性ごとの相手選手の動作の癖を自選手が学習するための運動学習システムであって、三次元映像を表示するヘッドマウントディスプレイと、ヘッドマウントディスプレイに接続された運動学習装置と、を含む。運動学習装置は、対戦相手となる可能性があるチームのある相手選手が実際に物を動かした複数のときそれぞれについての、相手選手の物を動かす動作の三次元映像と、当該動作により動かされた物と略同じ動きの物をコンピュータグラフィックスによって生成した三次元映像と、を連続させた三次元映像(以下、連続三次元映像という)を予め記憶した情報記憶部を含む。そして、運動学習装置は、情報記憶部に記憶された連続三次元映像を読み出して、読み出した連続三次元映像をヘッドマウントディスプレイに出力する。ヘッドマウントディスプレイは、入力された連続三次元映像を提示する。
【0069】
[プログラム、記録媒体]
上記実施形態で説明した各運動学習装置における各種の処理機能をコンピュータによって実現する場合、各運動学習装置が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムを図5に示すコンピュータの記憶部1020に読み込ませ、演算処理部1010、入力部1030、出力部1040などに動作させることにより、上記各運動学習装置における各種の処理機能がコンピュータ上で実現される。
【0070】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、例えば、非一時的な記録媒体であり、具体的には、磁気記録装置、光ディスク、等である。
【0071】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD-ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0072】
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の非一時的な記憶装置である補助記録部1050に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の非一時的な記憶装置である補助記録部1050に格納されたプログラムを記憶部1020に読み込み、読み込んだプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを記憶部1020に読み込み、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【0073】
また、この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、本装置を構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5