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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】塗布膜形成装置、及び塗布膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20231129BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20231129BHJP
   B05D 3/04 20060101ALI20231129BHJP
   B05D 3/10 20060101ALI20231129BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20231129BHJP
   B05C 11/08 20060101ALI20231129BHJP
   B05C 9/14 20060101ALI20231129BHJP
   G03F 7/16 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01L21/30 563
H01L21/30 564C
B05D7/00 K
B05D3/04 Z
B05D3/10 Z
B05D3/00 D
B05C11/08
B05C9/14
G03F7/16 502
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021572805
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2021002126
(87)【国際公開番号】W WO2021149784
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】P 2020010250
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下青木 剛
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-245870(JP,A)
【文献】特開2007-189185(JP,A)
【文献】特開2009-016727(JP,A)
【文献】特開2009-021268(JP,A)
【文献】特開2011-159656(JP,A)
【文献】特開2016-092356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に塗布液を供給して塗布膜を形成する塗布膜形成装置において、
表面に凹部パターンが形成された前記基板を載置する載置部と、
前記載置部に載置された基板の表面に、空気よりも動粘度が高い第1のガスを供給する第1のガス供給部と、
前記凹部内を第1のガスから前記基板の表面における前記塗布液のぬれ性を高める改質液に置換するために、前記基板の表面に当該改質液を供給する改質液供給部と、
前記凹部内に充填されると共に前記基板の表面を被覆する前記塗布膜を形成するために、前記改質液が供給された基板に前記塗布液を供給する塗布液供給部と、
前記第1のガスが供給され、且つ前記改質液が供給される前の前記基板に、前記第1のガスよりも動粘度が低い第2のガスを供給する第2のガス供給部と、
を備える塗布膜形成装置。
【請求項2】
前記第2のガスは、空気より動粘度が高いガスである請求項記載の塗布膜形成装置。
【請求項3】
前記基板に供給される第1のガスの供給量が、前記基板に供給される第2のガスの供給量よりも多くなるように、前記第1のガス供給部、前記第2のガス供給部は、夫々前記第1のガス、前記第2のガスを供給する請求項1または2記載の塗布膜形成装置。
【請求項4】
前記第1のガス供給部は、前記基板の表面に対する距離が第1の距離となる位置で第1のガスを供給する第1の供給口を備え、
前記第2のガス供給部は、前記基板の表面に対する距離が、前記第1の距離よりも大きい第2の距離となる位置で第2のガスを供給する第2の供給口を備える請求項1ないし3のいずれか一つに記載の塗布膜形成装置。
【請求項5】
前記第1の供給口及び前記第2の供給口は、当該第1の供給口及び第2の供給口に共通して設けられると共に前記基板に対して相対的に昇降する昇降体に開口する請求項記載の塗布膜形成装置。
【請求項6】
基板に塗布液を供給して塗布膜を形成する塗布膜形成装置において、
表面に凹部パターンが形成された前記基板を載置する載置部と、
前記載置部に載置された基板の表面に、空気よりも動粘度が高い第1のガスを供給する第1のガス供給部と、
前記凹部内を第1のガスから前記基板の表面における前記塗布液のぬれ性を高める改質液に置換するために、前記基板の表面に当該改質液を供給する改質液供給部と、
前記凹部内に充填されると共に前記基板の表面を被覆する前記塗布膜を形成するために、前記改質液が供給された基板に前記塗布液を供給する塗布液供給部と、
を備え、
前記第1のガス供給部は、前記基板の表面における前記第1のガスの供給位置を、当該基板の表面に対して相対的に移動させる相対移動機構を備え、
前記基板を回転させるために前記載置部を回転させると共に、前記相対移動機構を構成する回転機構を備え、
前記第1のガスが供給され、且つ前記改質液が供給される前の前記基板に、前記第1のガスよりも動粘度が高い第2のガスを供給する第2のガス供給部が設けられ、
前記回転機構により、前記第1のガスの供給中に前記基板が第1の回転数で回転し、
前記回転機構により、前記第2のガスの供給中に前記基板が前記第1の回転数よりも大きい第2の回転数で回転する塗布膜形成装置。
【請求項7】
前記相対移動機構を備え、当該相対移動機構は前記基板に対して第1のガス供給部を移動させる第1のガス供給部移動機構を含む請求項記載の塗布膜形成装置。
【請求項8】
基板に塗布液を供給して塗布膜を形成する塗布膜形成装置において、
表面に凹部パターンが形成された前記基板を載置する載置部と、
前記載置部に載置された基板の表面に、空気よりも動粘度が高い第1のガスを供給する第1のガス供給部と、
前記凹部内を第1のガスから前記基板の表面における前記塗布液のぬれ性を高める改質液に置換するために、前記基板の表面に当該改質液を供給する改質液供給部と、
前記凹部内に充填されると共に前記基板の表面を被覆する前記塗布膜を形成するために、前記改質液が供給された基板に前記塗布液を供給する塗布液供給部と、
前記第1のガスの動粘度を上昇させるために、前記第1のガスの供給前または当該第1のガスの供給中の第1の期間に、前記載置部に載置された基板を加熱する加熱機構と、
を備える塗布膜形成装置。
【請求項9】
前記加熱機構は、前記基板に光照射して加熱する光照射部を備える請求項記載の塗布膜形成装置。
【請求項10】
前記光照射部は、前記改質液の前記基板への供給開始から前記基板への塗布液の供給を終了するまでの第2期間の光強度が、前記第1の期間及び前記基板への塗布液の供給停止後の第3の期間の光強度より小さくなるように光照射を行う請求項記載の塗布膜形成装置。
【請求項11】
前記第1のガスはヘリウムガスである請求項1ないし10のいずれか一つに記載の塗布膜形成装置。
【請求項12】
基板に塗布液を供給して塗布膜を形成する塗布膜形成装置において、
表面に凹部パターンが形成された前記基板を載置する載置部と、
前記載置部に載置された基板の表面に、空気よりも動粘度が高い第1のガスを供給する第1のガス供給部と、
前記凹部内を第1のガスから前記基板の表面における前記塗布液のぬれ性を高める改質液に置換するために、前記基板の表面に当該改質液を供給する改質液供給部と、
前記凹部内に充填されると共に前記基板の表面を被覆する前記塗布膜を形成するために、前記改質液が供給された基板に前記塗布液を供給する塗布液供給部と、
前記第1のガスが供給され、且つ前記改質液が供給される前の前記基板に、前記第1のガスよりも動粘度が高い第2のガスを供給する第2のガス供給部と、
を備え、
前記第2のガスはアルゴンガスである塗布膜形成装置。
【請求項13】
基板に塗布液を供給して塗布膜を形成する塗布膜形成方法において、
表面に凹部パターンが形成された前記基板を載置部に載置する工程と、
前記載置部に載置された当該基板の表面に、空気よりも動粘度が高い第1のガスを供給する工程と、
前記基板の表面に、前記基板の表面における前記塗布液のぬれ性を高める改質液を供給して、前記凹部内を第1のガスから当該改質液に置換する工程と、
前記改質液が供給された前記基板に前記塗布液を供給し、前記凹部内に充填されると共に前記基板の表面を被覆する前記塗布膜を形成する工程と、
前記第1のガスが供給され、且つ前記改質液が供給される前の前記基板に、前記第1のガスよりも動粘度が低い第2のガスを供給する工程と、
を備える塗布膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板に塗布液を供給して塗布膜を形成する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)に塗布液を塗布して塗布膜を形成する処理が行われる。塗布膜としては、例えば特許文献1に記載されているようにレジストパターンを形成するためのレジスト膜が知られている。レジスト膜は、例えばスピンチャックに保持されたウエハを回転させながら、このウエハの中心部にノズルからレジスト液を吐出することによりレジスト液がウエハの表面全体に塗り広げられて形成される。
【0003】
特許文献1には、基板に塗布液を塗布する塗布装置において、ウエハの表面に雰囲気ガスよりも動粘性係数(動粘度)の大きい層流形成用ガスを供給するガスノズルを設けた装置が記載されている。そしてウエハの表面に雰囲気ガスのダウンフローを形成し、ウエハ雰囲気ガスの表面を流れる雰囲気ガスに層流形成用ガスを混合するようにしている。これによりウエハの表面の雰囲気の動粘度を上昇させ、ウエハの表面の層流が形成される領域を広げている。ウエハの表面を塗布液で被覆した後、このように層流を形成し、塗布液の乾燥により形成される塗布膜に塗布ムラ(風車マーク)が形成されることが抑制されるように装置が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-189185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、基板に形成された凹部パターンを埋め込むように塗布膜を形成するにあたって、塗布膜の埋め込み性を改善する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の塗布膜形成装置は、基板に塗布液を供給して塗布膜を形成する塗布膜形成装置において、
表面に凹部パターンが形成された前記基板を載置する載置部と、
前記載置部に載置された基板の表面に、空気よりも動粘度が高い第1のガスを供給する第1のガス供給部と、
前記凹部内を第1のガスから前記基板の表面における前記塗布液のぬれ性を高める改質液に置換するために、前記基板の表面に当該改質液を供給する改質液供給部と、
前記凹部内に充填されると共に前記基板の表面を被覆する前記塗布膜を形成するために、前記改質液が供給された基板に前記塗布液を供給する塗布液供給部と、
前記第1のガスが供給され、且つ前記改質液が供給される前の前記基板に、前記第1のガスよりも動粘度が低い第2のガスを供給する第2のガス供給部と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば基板に形成された凹部パターンを埋め込むように塗布膜を形成するにあたって、塗布膜の埋め込み性を改善する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係るレジスト膜形成装置を示す縦断側面図である。
図2】第1の実施形態に係るレジスト膜形成装置を示す平面図である。
図3】第1の実施形態に用いられる基板の表面構造を示す縦断側面図である。
図4】第1の実施形態に係る塗布膜形成方法を示す説明図である。
図5】第1の実施形態に係る塗布膜形成方法を示す説明図である。
図6】第1の実施形態に係る塗布膜形成方法を示す説明図である。
図7】第1の実施形態に係る塗布膜形成方法を示す説明図である。
図8】第1の実施形態に係る塗布膜形成方法を示す説明図である。
図9】第1の実施形態に係る塗布膜形成方法を示す説明図である。
図10】第1の実施形態に係る塗布膜形成方法を示す説明図である。
図11】第1の実施形態に係る塗布膜形成方法を示す説明図である。
図12】第1の実施形態に係る塗布膜形成方法を示す説明図である。
図13】レジスト膜形成装置の他の例を示す側面図である。
図14】レジスト膜形成装置の他の例を示す平面図である。
図15】レジスト膜形成装置の他の例を示す側面図である。
図16】レジスト膜形成装置の他の例を示す平面図である。
図17】レジスト膜形成装置の他の例を示す平面図である。
図18】レジスト膜形成装置の他の例を示す平面図である。
図19】レジスト膜形成装置の他の例を示す平面図である。
図20】第2の実施形態に係るレジスト膜形成装置を示す縦断面図である。
図21】第2の実施形態に係る塗布膜形成方法を示す説明図である。
図22】第2の実施形態に係る塗布膜形成方法を示す説明図である。
図23】第2の実施形態に係る塗布膜形成方法を示す説明図である。
図24】第2の実施形態に係る塗布膜形成方法を示す説明図である。
図25】第2の実施形態に係る塗布膜形成方法を示す説明図である。
図26】実施例に係る基板の表面の様子を示す断面図である。
図27】比較例に係る基板の表面の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施の形態]
第1の実施形態にかかる塗布膜形成方法を実施し、基板であるウエハWにレジスト膜を形成するレジスト膜形成装置について説明する。図1図2に示すようにレジスト膜形成装置1は、ウエハWの裏面側中央部を吸着し、ウエハWが水平に載置される載置部であるスピンチャック31を備えている。このスピンチャック31は軸部32を介して回転機構である駆動部33に接続されており、この駆動部33を介してウエハWを保持した状態で鉛直軸周りに回転自在かつ昇降自在に構成されている。
【0010】
図1中の符号34は、前記スピンチャック31に保持されたウエハWの周縁外側に当該ウエハWを囲むように設けられた、上部側が開口したカップである。カップ34の底部側には凹部状をなす液受け部35がウエハWの周縁下方側において全周に亘って設けられている。この液受け部35は外側領域と内側領域とに区画されており、外側領域の底部には排液口36が設けられている。また前記内側領域の底部には排気口37が設けられており、排気口37には夫々排気管39の一端が接続されている。排気管39の他端は、バルブV1を介して例えば工場の排気路などの排気手段に接続されている。またカップ34の上方には、下方に空気を供給して、ダウンフローを形成するためのフィルタユニット80が設けられている。従って、カップ34の周囲は、大気雰囲気である。
【0011】
レジスト膜形成装置1は、ウエハWに粘度が50cP以上、例えば粘度100cPのレジスト液を供給するレジストノズル4を備えている。またレジスト膜形成装置1は、レジスト液などの塗布液のウエハW表面におけるぬれ性を高める改質液であるシンナーを供給する改質液供給部であるシンナーノズル5が設けられている。さらにレジスト膜形成装置1には、ウエハWに向けて第1のガスであるヘリウム(He)ガスを供給する第1のガス供給部であるHeガスノズル6、ウエハWに向けて第2のガスであるアルゴン(Ar)ガスを供給する第2のガス供給部であるArガスノズル7が設けられている。
【0012】
レジストノズル4にはレジスト供給管41の一端が接続されている。またレジスト供給管41の他端はバルブV2及び流量制御部42を介してレジスト液が貯留されたレジスト供給源43に接続されている。シンナーノズル5にはシンナー供給管51の一端が接続されている。またシンナー供給管51の他端はバルブV3及び流量制御部52を介してシンナーが貯留されたシンナー供給源53に接続されている。Heガスノズル6にはHeガス供給管61の一端が接続されている。またHeガス供給管61の他端はバルブV4及び流量制御部62を介してHeガスが貯留されたHeガス供給源63に接続されている。Arガスノズル7にはArガス供給管71の一端が接続されている。またArガス供給管71の他端はバルブV5及び流量制御部72を介してArガスが貯留されたArガス供給源73に接続されている。
【0013】
図2に示すようにレジストノズル4、シンナーノズル5は、夫々アーム44、54の先端に支持されている。アーム44、54の基端側は、夫々ガイドレール8に沿って移動自在に構成された移動体45、55に昇降自在に接続され、レジストノズル4、シンナーノズル5はウエハWの中心部の上方位置とカップ34の外部の図示しない待機位置との間で移動自在に構成されている。
【0014】
またHeガスノズル6、及びArガスノズル7も夫々同様にアーム64、74の先端に支持されている。各アーム64、74の基端側は、夫々移動体65、75に昇降自在に接続されている。そして移動体65、75は、ガイドレール81に沿って移動し、ウエハWの中心部の上方位置とカップ34の外部における図示しない待機位置との間で移動自在に構成されている。アーム64、移動体65、及びガイドレール81は、基板の表面における第1のガスの供給位置を、当該基板の表面に対して移動させる第1のガス供給部移動機構に相当する。また第1のガス供給部移動機構と、スピンチャック31の駆動部33と、は、基板の表面に対して基板の表面における第1のガスの供給位置を相対的に移動させる相対移動機構に相当する。なお第1の実施形態に係るレジスト膜形成装置1は、同様の構成のHeガスノズル6、及びArガスノズル7を2本ずつ備えているが、図1図2では、2本のうち1本を省略した。
【0015】
レジスト膜形成装置1には、例えばコンピュータからなる制御部9が設けられている。制御部9は、プログラム格納部を有しており、プログラム格納部には、外部の搬送機構と、スピンチャック31と、の間のウエハWの受け渡しや、スピンチャック31の回転、Heガス、Arガス、レジスト液やシンナーの供給シーケンスが実施されるように命令が組まれた、プログラムが格納される。このプログラムは、例えばコンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)及びメモリーカードなどの記憶媒体により格納されて制御部9にインストールされる。
【0016】
図3は、塗布膜形成装置であるレジスト膜形成装置1で処理するウエハWの表面の一例を示す縦断側面図である。このウエハWの表面には、凹部100によって構成されるパターン(凹部パターン)が形成されている。この凹部パターンは、例えば複数並ぶ溝を含む。当該ウエハWは、例えば3DNAND構造のデバイスの製造工程に用いられ、凹部100のアスペクト比は比較的大きい。凹部100の高さ、幅を夫々L1、L2とすると、例えば当該アスペクト比(L1/L2)は、20以上である。
【0017】
レジスト膜形成装置1では、シンナーによりウエハWの表面を濡らし、レジスト液のウエハWの表面におけるぬれ性が向上するように改質する、いわゆるプリウエットが行われる。プリウエットは、ウエハWの中心部に供給した液を、当該ウエハWの回転により周縁部に広げるスピンコーティングによって行われる。このシンナーのプリウエット後に、レジスト液がスピンコーティングによって塗布される。プリウエットを行うことで、レジスト液は、スピンコーティングによりウエハW表面を淀まずに速やかに展伸される。このプリウエットを行わないとした場合は、スピンコーティング時のレジスト液の展伸性が低いことにより、レジスト液がウエハW表面の空気を巻き込み、レジスト膜が気泡を含んでしまうおそれがある。つまり、プリウエットにより、そのようなレジスト膜への気泡の混入が抑制される。
【0018】
レジスト膜形成装置1では、HeガスをウエハWに供給してから上記のプリウエットを行うが、仮にこのHeガスをウエハWに供給せずに、プリウエットを行うものとする。ウエハWの凹部100については、例えば上記のようなアスペクト比が比較的大きい形状とされる場合が有る。凹部100内は、レジスト膜形成装置1の雰囲気を形成する空気で満たされている。その状態でプリウエットを行うとすると、シンナーは凹部100内に進入して、当該凹部100内の空気を押し出しつつ、ウエハWの周縁部へ向けて流れることになるが、上記のような凹部100の形状によって、押し出される空気の流れは乱れる。その結果、シンナーが空気を巻き込んだ状態で凹部100に留まり、プリウエット後の凹部100内に気泡が残ってしまうおそれが有る。その状態でレジストの塗布を行えば、その気泡がレジスト膜にも残ってしまう。
【0019】
そこで、上記したようにレジスト膜形成装置1ではウエハWにHeガスを供給し、凹部100内の空気を、当該空気よりも動粘度が高いHeガスに置換する。動粘度が高いと、流体における流れを示す指標であるレイノルズ数Re=vL/νが小さくなる(流体の相対的な平均速度v、流体の流れる距離L、動粘度ν)。また動粘度ν=μ/ρであり(粘性係数μ、密度ρ)、動粘度が高いことは、密度が比較的小さい傾向を持つことになる。従って、動粘度が高いHeガスについては、凹部100からシンナーに押し出されてウエハW表面を流れるにあたり、Reが低いことにより流れに乱れが生じることが抑制され、且つその密度の小ささにより、ウエハWの表面を移動しやすい。つまり、シンナーに巻き込まれて凹部100内に気泡として残ることが抑制される。
【0020】
またレジスト膜形成装置1では、Heガスの供給後、プリウエットの前にArガスを供給する。このArガスは、Heガスよりも動粘度が低いため、ウエハW表面に供給された後、Heガスに比べてウエハW表面を流れ難い。即ち、ウエハ表面に留まりやすいことから、当該Arガスは、凹部100を塞ぐように層を形成する。即ち、Heガスの当該凹部100からの放出を抑制する蓋の役割を果たす。また、このArガスは、空気よりも動粘度が低い。従って、上記のようにカップ34にはFFU80により空気が供給されるが、その空気の流れに影響され、ウエハWの表面から除去されることが抑制されるので、上記した蓋のように用いるにあたり、好ましい。なお、動粘度が高い、低いとは、ウエハWに処理が行われる同じ温度環境下で比較した場合に動粘度が高い、低いということである。
【0021】
なお、説明の理解を容易にするために、凹部100のアスペクト比が比較的大きいウエハWをレジスト膜形成装置1で処理するように説明したが、レジスト膜形成装置1による処理で、アスペクト比が小さいウエハWについても、より確実に気泡が残ることを防ぐことができる。つまり、ウエハWの凹部パターンの形状によらず、処理を行うことができる。
【0022】
以下、レジスト膜形成装置1にて行われる処理を、順を追って説明する。カップ34内が比較的小さい第1の排気量で排気された状態で、図示しない搬送機構によってウエハWがスピンチャック31に載置され、裏面側中心部が吸着される。続いて、2本のHeガスノズル6がカップ34の外側から移動し、ウエハWの中心部上方、周縁部上方に夫々位置する。また、2本のArガスノズル7もカップ34の外側から移動し、Heガスノズル6の近傍に位置する。
【0023】
各ガスノズルが移動する一方で、ウエハWは所定の回転数で回転し、周囲の雰囲気の温度になじみ、面内各部の温度が均一化される。然る後、図4に示すようにウエハWを比較的低い第1の回転数、例えば0rpm~100rpm、より具体的には例えば10rpmの回転数で回転させると共に、各Heガスノズル6から、ウエハWの中心部及び周縁部にHeガス101を吐出する。Heガス101は、遠心力によるウエハWの周縁部へ向けた広がりと、ウエハWの回転による供給位置の変更と、によって、ウエハWの表面全体に供給される。そして、図5に示すように、ウエハWの凹部100内の空気が当該Heガス101により置換され、当該凹部100内にHeガス101が充填される。
【0024】
例えば5秒間、2本のHeガスノズル6併せてHeガスを5~100L供給すると、Heガスの供給が停止し、Heガスノズル6がウエハWの中心部上、周縁部上から夫々退避する。そのHeガスノズル6の移動と共に、Arガスノズル7が当該ウエハWの中心部上、周縁部上に位置し、図6に示すようにウエハWの中心部及び周縁部にArガス102を供給すると共に、ウエハWの回転数が比較的高い第2の回転数、例えば100rpm~300rpm、より具体的には例えば200rpmとなるように上昇する。Arガス102は、遠心力によるウエハWの周縁部へ向けた広がりと、ウエハWの回転による供給位置の変更と、によって、ウエハWの表面全体に供給され、図7に示すように、凹部100を塞ぐようにウエハW表面に滞留する。例えば1秒間、2本のArガスノズル7併せてArガスを0.5~2L供給すると、Arガス102の供給が停止し、Arガスノズル7はカップ34外に退避する。
【0025】
続いて図8に示すようにシンナーノズル5をウエハWの中心部上に位置させ、シンナー103をウエハWの中心部上に吐出すると共に、例えばウエハWの回転数を第2の回転数より低く、第1の回転数より大きい第3の回転数、例えば30rpmとする。また、そのように回転数を変更すると共にバルブV1の開度を大きくし、カップ34内の排気量を大きくして、第2の排気量で排気する。遠心力によりシンナー103は、ウエハWの中心部から周縁部へ向けて広がる。このように広がる際に、凹部100内のHeガス101を凹部100から押し出すと共にウエハWの周縁部へ押しやる。Arガス102についてもHeガス101と共に、ウエハWの周縁へ押しやる。Heガス101については、流れが乱れることなく凹部100内から速やかに押し出され、図9に示すように凹部100内のHeガス101はシンナー103に置換される。なお、Heガス101についてそのように流れが乱れないことは、このHeガス101に接するシンナー103についても流れが乱れないということである。そして、シンナー103はウエハWの周縁部に達し、ウエハWの表面全体を被覆すると共に各凹部100内に気泡が残らないように充填される。
【0026】
続いて、シンナーノズル5からのシンナー103の供給が停止し、レジストノズル4がウエハWの中心部上に移動する。そして、図10に示すようにウエハWの中心部にレジスト液104を吐出すると共にウエハWの回転数が上昇する。スピンコーティングにより、レジスト液104はシンナー103によって改質されたウエハWの表面を周縁部へ向けて広がり、ウエハWの表面全体に塗布される。塗布されたレジスト液104は、凹部100内のシンナー103と混ざり合うことで、凹部100内に進入する。上記のように、予め凹部100内を空隙ができないようにシンナー103で満たしているため、図11に示すようにレジスト液104が凹部100内に、空隙が形成されないように充填される。
【0027】
その後、レジスト液104の供給が停止した後、ウエハWの面内のレジスト液104の液膜の厚さを均一化するために当該ウエハWが比較的低い回転数、例えば100rpmで回転した後、図12に示すようにウエハWの回転数が上昇して例えば1500rpmとなり、レジスト液104の乾燥が進行する。この回転数の上昇と共に、バルブV1の開度が小さくなり、カップ34内の排気量が、再び比較的低い第1の排気量となる。上記のように凹部100内には、レジスト液104が気泡を含まないように充填されている。従って、当該レジスト液104が乾燥することで、凹部100内に隙間無く埋め込まれるように、ウエハWの表面全体を覆うレジスト膜が形成される。その後、ウエハWの回転が停止し、ウエハWは、図示しない搬送機構に受け渡されて、レジスト膜形成装置1から取り出される。
【0028】
この第1の実施形態のレジスト膜形成装置1によれば、ウエハWの表面の凹部100に、空気よりも動粘度が高いHeガス101を充填した上で、ウエハWの中心部に供給したシンナー103をウエハW表面に展伸させ、凹部100内をHeガス101からシンナー103に置換する。その後に、レジスト液104の塗布を行っている。従って、凹部100から排出されるガスの流れ、このガスに接するシンナー103の流れが夫々安定する。これにより凹部100に流れ込むシンナー103にガスが巻き込まれにくくなり、凹部100がシンナー103により隙間なく充填される。従って、続いてレジスト液104を塗布したときに当該レジスト液104を凹部100内に隙間なく満たすことができ、凹部100におけるレジスト膜の埋め込み性(充填性)を高くすることができる。また、レジスト膜形成装置1によれば、Arガス102を供給することで、上記のHeガス101の凹部100内からの離脱が抑制されるため、好ましい。なお、Heガスの供給後、速やかにシンナープリウエットを行うことで、このArガスの供給が行われないように処理を行ってもよい。
【0029】
また、Heガスノズル6、Arガスノズル7を複数設けており、Heガス101、Arガス102を夫々ウエハWの複数箇所に吐出する。従って、速やかにウエハWの表面全体にこれらの各ガスを供給することができるので、プリウエット時にHeガスが凹部100内により確実に滞留した状態となる。つまり、凹部100内のレジスト膜の充填性を、より確実に高くすることができるので好ましい。
【0030】
また、上記のようにHeガスのウエハWへの供給量は、ArガスのウエハWへの供給量よりも多い。そのように供給量を設定しているため、Heガス101は、より確実に凹部100内に供給されると共に、そのHeガス101がArガス102によって凹部100内から押し出されて除去されてしまうことが防止されるので好ましい。またHeガス101を供給した後は、時間経過に従い、徐々に凹部100からHeガス101が離脱することも考えられる。そのためArガス102を速やか供給することが好ましく、Arガス102の供給時間について、上記のようにHeガス101の供給時間よりも短くすることが好ましい。
【0031】
さらに、Heガス101のウエハWへの供給時の第1の回転数は、Arガス102のウエハWへの供給時の第2の回転数よりも低い。従って、Heガス101についてウエハWの回転の遠心力によりウエハWから除去されてしまうことが抑制され、且つArガス102については、ウエハWの表面を遠心力によって速やかに広がり、当該表面を被覆してHeガス101の凹部100内からの放出を抑制するため好ましい。
【0032】
さらにHeガス101及びArガス102を供給するときには、凹部100を満たすHeガス101及び凹部100の上部に滞留するArガス102が拡散してしまうことを避けるため、シンナー103及びレジスト液104を供給するときの第2の排気量よりも少ない第1の排気量で排気しているので、好ましい。この第1の排気量としては、排気量を0とする、即ち排気を停止するようにしてもよい。
なお、比較的厚い膜厚のレジスト膜を形成するには、レジスト液の粘度を高くする必要が有る。一般的にレジスト液の粘度が高いほど、凹部100への充填が難しくなるが、レジスト膜形成装置1では、上記のようにシンナーを確実性高く凹部100に充填し、レジスト膜の凹部100への充填性を高くすることができる。つまり、例えば既述した比較的高い粘度のレジスト液を用いて、比較的膜厚が大きいレジスト膜を形成できるという利点も有る。
【0033】
Heガスノズル6及びArガスノズル7については、図1図2に示した例では互いに分離しているが、このような構成例とすることには限られない。図13図14に示すようにHeガスノズル6と、Arガスノズル7、とを一体化したガス供給ユニット70としてもよい。具体的には、ガス供給ユニット70は1本のHeガスノズル6と、1本のArガスノズル7とがウエハWの径方向に沿うように、横方向に連接されて構成されている。そして、ウエハWの周縁部へのガス供給用、及びウエハWの中心部へのガス供給用に、ガス供給ユニット70は2つ設けられ、図2に示したアーム64に各々接続される。このように各ノズルが連接された構成とされることで、Heガスノズル6からのガス吐出後、当該Heガスノズル6がHeガスを吐出した位置へ、Arガスノズル7が速やかに移動し、Arガスを吐出することができる。
【0034】
またHeガス及びArガスを供給するガス供給部としては、シャワー状に供給するガス供給部60としてもよい。つまり、ガス供給部としてはノズルに限られず、シャワーヘッドとして構成してもよい。図15図16に示すように、例えばガス供給部60の下面に第1のガス供給口66、及び第2のガス供給口76を各々複数並べて配置する。図16では、第1のガス供給口66及び第2のガス供給口76を白塗り、及び影塗りで区別している。なお以下図17から図19においても第1のガス供給口66、及び第2のガス供給口76を白塗り、及び影塗りで区別する。
【0035】
そしてガス供給部60の内部に互いに区画されたHeガス流路67、Arガス流路77を形成し、Heガス流路67、Arガス流路77の下流端を、各々上記の第1のガス供給口66、及び第2のガス供給口76に夫々接続する。またHeガス流路67、Arガス流路77の上流端に、第1の実施形態にて説明したHeガス供給管61及びArガス供給管71を接続する。さらにガス供給部60を既述のアーム64の先端に接続し、ガス供給部60を昇降自在、移動自在に構成する。ガス供給部60は昇降体に相当する。このガス供給部60を設けた場合の装置の動作例について、後に説明する。
【0036】
またHeガス及びArガスをシャワー状に供給するガス供給部60は、図17に示すように、例えばウエハWを径方向に横断する領域に向けてガスを吐出する構成でも良い。あるいは、図18に示すようにガス供給部60からウエハWの全面に向けてガスを供給するように構成してもよい。
【0037】
さらには、図19に示すように例えばウエハWの中心に向けてガスを供給するHeガスノズル6及びArガスノズル7と、ウエハWの周縁寄りの領域にシャワー状にガスを供給するガス供給部60と、を組み合わせた構成でも良い。ところで、ガス供給部を図18に示すようにウエハWの表面全体にHeガス及びArガスを供給する構成とした場合、Arガス及びHeガスをウエハWに供給するにあたり、ウエハWを回転させなくてもよい。また、後に第2の実施形態で示すようなガス供給中のガス供給部60の移動も行わなくてよい。つまり、各ガスをウエハWに供給するにあたり、ウエハWに対してガス供給部60を移動させる構成とすることには限られない。そして、図18のガス供給部60のように、ウエハWを回転させずに当該ウエハW表面全体にガスを供給できる構成とする場合、遠心力によってHeガス及びArガスがウエハWの表面から外側に拡散してしまうことが防止されるので、好ましい。なお、図19の構成においても、ウエハWの中心部についてはHeガスノズル6及びArガスノズル7から吐出された各ガスの広がりを利用して各ガスを供給することで、ウエハWを回転させなくてもよい。ところで、各ガス供給部についてHeガスの流路と、Arガスの流路とが別個に形成されているが、共通の流路として構成してもよい。
【0038】
[第2の実施形態]
続いて第2の実施形態に係るレジスト膜形成装置10について、レジスト膜形成装置1との構成の差異点を中心に説明する。レジスト膜形成装置10は、図20に示すようにウエハWを加熱するための加熱機構として、ウエハWに光を照射して加熱する光照射部であるLED(light emitting diode)光源群91を備える点でレジスト膜形成装置1と異なる。また第2実施形態にかかるレジスト膜形成装置は、Heガスノズル6、Arガスノズル7に代えてガス供給部60が設けられている。
【0039】
LED光源群91は例えば、スピンチャック31に載置されたウエハWの上側、下側に夫々配置される上側LED光源群91Aと、下側LED光源群91Bとからなる。例えば、これらの光源群91A、91Bは、各々多数のLED光源90により構成されている。上側LED光源群91Aは、ウエハWの径方向に沿って並んだ多数のLED光源90の列が、ウエハWの周方向に間隔を空けて設けられることで構成されている。下側LED光源群91Bは、上側LED光源群91Bと同様に、ウエハWの径方向に沿って並んだ多数のLED光源90の列が、ウエハWの周方向に間隔を空けて設けられることで構成されており、当該列はスピンチャック31を囲むように設けられている。ウエハWの回転中、上側LED光源群91A、下側LED光源群91Bによって夫々ウエハWの表面、裏面に光が照射され、ウエハWの面内全体が加熱される。
【0040】
LED光源群91は、ウエハWをカップ21内の雰囲気の温度、例えば23℃よりも若干高い温度、例えば30℃以下の温度になるように加熱する。そのようにウエハWを加熱することで、既述のようにウエハWに供給されるHeガスを加熱する。ガスは一般的に温度が上昇することで粘性係数μが高くなる。動粘度νは、ν=μ/ρで示され、温度の上昇に従い粘性係数μが上昇することで動粘度νが上昇する。つまり、Heガスを加熱し、その動粘度を上昇させることができる。それにより、凹部100を満たすHeガスの流れをより安定させ、凹部100に流れ込むシンナー103の埋め込み性をさらに向上させる。なお、ウエハWの温度が高くなりすぎると、シンナー及びレジスト液を供給したときに、これらの薬液の気化量が大きくなってしまうので、ウエハWの処理に要するこれらの薬液の量が多くなってしまう。そのため、上記した周囲の雰囲気よりも若干高い温度となるように、ウエハWを加熱することが好ましい。
【0041】
以下、レジスト膜形成装置10による処理について、レジスト膜形成装置1による処理との差異点を中心に説明する。ウエハWがスピンチャック31に受け渡された後、レジスト膜形成装置1と同様に所定の回転数で回転して、ウエハWの面内各部の温度が均一化される。その後、図21に示すようにLED光源群91から光が照射されると共に、ウエハWが所定の回転数、例えば1000rpmで回転し、当該ウエハWが加熱される。
【0042】
ウエハWが加熱される一方で、ガス供給部60がカップ34の外部からウエハWの中心部上方に移動し、ウエハWの表面との間隔が比較的狭い高さに位置する。そしてLED光源群91からの光照射が停止し、図22に示すようにウエハWが例えば10rpmの回転数で回転すると共に、ガス供給部60が第1のガス供給口66からHeガスを供給しながら、ウエハWの周縁部上に向かって水平移動する。このHeガス供給時のガス供給部60における第1の供給口66とウエハWの表面との距離を第1の距離とすると、上記のようにガス供給部60とウエハWとの間隔が狭いため、当該第1の距離は比較的小さい。そのため、供給されたHeガスはウエハWの外側へ放出されてしまうことが抑制され、凹部100内により確実に進入する。
【0043】
ガス供給部60がウエハWの周縁部上に移動し、ウエハWの表面全体にHeガスが供給されると、Heガスの供給が停止し、ガス供給部60がウエハWの中心部上方に移動する。そして、ガス供給部60が上昇し、ウエハWの表面とガス供給部60との間隔が大きくなる。そして図23に示すようにウエハWを例えば200rpmの回転数で回転させ、第2のガス供給口76からArガスを供給しながら、ガス供給部60がウエハWの周縁部上に向かって水平移動する。このArガス供給時のガス供給部60における第2の供給口76とウエハWの表面との距離を第2の距離とすると、この第2の距離は上記の第1の距離よりも大きい。そのように第2の距離が比較的大きいため、ArガスがウエハWに衝突する勢いは小さいことから、Arガスによる凹部100からのHeガスの押し出しが抑制される。従って、Arガスの供給後、より確実に凹部100内にHeガスが充填された状態となる。
【0044】
Arガスを供給するガス供給部60がウエハWの周縁部上に移動し、ウエハWの表面全体にArガスが供給されると、Arガスの供給が停止し、ガス供給部60はカップ34外へ退避する。以降、第1の実施形態と同様に、ウエハWにシンナーが供給され、プリウエットが行われる(図24)。その際に既述のようにウエハWに供給されたHeガスの動粘度νが高められている。そのためHeガスの流れがより安定し、シンナー103が凹部100内に、より確実に充填される。その後、第1の実施形態と同様に、レジスト液がウエハWの表面全体に塗布され、レジスト液のウエハWへの供給が停止した後、ウエハWの回転数がウエハWの面内のレジスト液膜の厚さを均一化するための比較的低い回転数となる。その後、ウエハWの回転数が、比較的高い回転数、例えば1500rpmとなるように上昇する。この回転数の上昇と共に、LED光源群91からウエハWへの光照射が再開され、ウエハWが再度加熱される(図25)。このウエハWの加熱によってレジスト液が加熱されて、その流動性が高くなり、当該レジスト液が凹部100内、及び凹部100外から凹部100内において移動し、より確実に凹部100内に隙間無く充填される。そして、ウエハWの加熱とウエハWの回転とにより、レジスト液が次第に乾燥して、レジスト膜が形成される。
【0045】
このように第2の実施形態によれば、ウエハWの温度が調整されることで、レジスト膜の凹部100への埋め込みを、より確実に行うことができる。また、この第2の実施形態によればウエハWの回転と、ガス供給部60との移動により、ウエハWの面内でHeガス及びArガスが供給される位置を移動させることで、Heガスの凹部100への充填、ArガスによるウエハW表面の被覆がより確実且つ速やかに行われる。また、上記した各高さのHeガスの供給口66及びArガスの供給口76からガスを供給することで、さらに確実にHeガスを凹部100内に充填することができる。この第2の実施形態で用いられるガス供給部60以外の、図14図19で示した他のガス供給部や第1の実施形態で述べた各ノズルについても、この第2の実施形態と同様に高さを調整して用いることができる。なお、ウエハWとHeガスの供給口66及びArガスの供給口76との距離を調整するにあたり、ガス供給部60のウエハWに対する高さを調整しているが、ウエハWのガス供給部60に対する高さを調整してもよい。つまり、スピンチャック31及び駆動部33を昇降機構に接続して、ガス供給部60に対するウエハWの高さが変更されるようにしてもよい。
【0046】
ところで、上記の処理例でLED光源群91による光照射をウエハWへのHeガスの供給前に停止しているが、これらHeガスの供給中においても光照射を行い、ウエハWを加熱してもよい。Heガスの供給前または当該Heガス供給中の期間を第1の期間とする。また、シンナーのウエハWへの供給開始からレジスト液のウエハWへの供給を終えるまでの期間を第2の期間とする。レジスト液の吐出終了後の期間を第3の期間とする。シンナー及びレジストの気化を防ぐために、上記の処理例のように第2の期間におけるLED群91からの光照射は停止するか、あるいは低い光強度とすることが好ましい。従って、第1の期間及び第3の期間の光強度よりも、第2の期間の光強度が小さくなるようにすることが好ましい。
【0047】
また加熱機構は、LED光源群91に限らず、例えば電熱線により加熱するヒータでも良い。ただし光照射による加熱とすることで、ウエハWを速やかに昇温させることができるので、装置のスループットを向上させる観点から、当該光照射による加熱を行うことが好ましい。またLED光源群91は、LED光源群91を点灯、消灯させたり光強度を調整するための設備の設置に大きな領域を必要とせず装置の大型化を抑制できる効果もある。なお、レジスト膜形成装置10の外部の加熱装置においてウエハWを加熱し、加熱されたウエハWをレジスト膜形成装置10に搬送して、Heガスを供給してもよい。ただし、Heガスを供給する装置においてLEDによる加熱を行うレジスト膜形成装置10の構成とすることで、処理に要する設備の大型化を防ぐことができる。
【0048】
また第1のガスは、空気よりも動粘度νが高いガスであればよく、例えば水素ガスでも良い。また第2のガスは、空気よりも動粘度νが低いガスであればよく、例えばクリプトン(Kr)ガスを用いてもよい。
また第1のガスをガス供給部から基板に向けて供給する構成に限らない。例えば、既述のレジスト膜形成装置1において、第1のガスノズル6を設けることに代えて、当該レジスト膜形成装置1を密閉されたチャンバ内に設けてもよい。そしてチャンバ内に第1のガスを供給できるように構成して、チャンバ内の雰囲気を第1のガスに置換することにより、凹部100内に第1のガスを満たす。その後ウエハWに改質液の塗布と、塗布液の塗布とを行うように構成してもよい。
【0049】
さらに本開示にかかる塗布膜形成装置は、レジスト膜を形成する装置に限らず、例えば層間絶縁膜などを形成する装置であってもよい。つまり、塗布液として層間絶縁膜形成用の薬液を塗布するようにしてもよい。その他に反射防止膜形成用の薬液などを塗布するようにしてもよい。
なお、Heガスの供給後、シンナーを塗布するにあたっては、既述のようにウエハWの中心部から周縁部に広げることに限られない。例えば、長尺な吐出口を有するノズルからウエハWの半径に沿ってシンナーを吐出すると共にウエハWを回転させて、ウエハW表面全体にシンナーを供給してもよい。その他、ウエハWの直径よりも長い吐出口を備えるノズルからシンナーを吐出しながら、ウエハWの一端から他端に当該ノズルを移動させて、ウエハW表面全体にシンナーを供給してもよい。例えば、レジスト液についてもシンナーと同様に供給することができ、第1及び第2の実施形態で述べたようにレジスト液をウエハWに供給することには限られない。
【0050】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更及び組み合わせが行われてもよい。
【実施例
【0051】
本開示の効果を検証するために図1、2に示したレジスト膜形成装置を用い、図3に示す凹部100が形成されたウエハWに実施の形態に示したレジスト液の塗布膜形成方法を行いウエハWの表面部の断面を電子顕微鏡にて撮影した例を実施例とした。
またウエハWに第1のガスを供給する工程と、第2のガスを供給する工程と、を含まないことを除いて実施例と同様に塗布膜形成処理を行った例を比較例とした。図26図27は、夫々実施例及び比較例におけるウエハWの表面部の断面の様子を示している。
図26に示すように実施例においては、レジスト液104を凹部100に隙間なく充填することができた。一方図27に示すように比較例においては、凹部100の内部のレジスト液104が十分に充填されず空隙105が形成されていた。
【0052】
この結果によれば、ウエハWに改質液及び塗布液を塗布する前に、ウエハWに第1のガスを供給する工程と、次いでウエハWに第2のガスを供給する工程と、を行うことにより凹部100における塗布膜の埋め込み性が良くなることが分かる。従って本開示によれば、凹部100が形成された基板に塗布液を塗布するにあたって、凹部100における塗布液の埋め込み性を改善できると言える。
【符号の説明】
【0053】
1 レジスト膜形成装置
31 スピンチャック
100 凹部
101 Heガス
103 シンナー
104 レジスト液
W ウエハ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
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図25
図26
図27