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特許7392805描画データ生成プログラム、マルチ荷電粒子ビーム描画プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】描画データ生成プログラム、マルチ荷電粒子ビーム描画プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20231129BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01L21/30 541W
H01L21/30 541M
H01J37/305 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022172535
(22)【出願日】2022-10-27
(62)【分割の表示】P 2018194505の分割
【原出願日】2018-10-15
(65)【公開番号】P2022186993
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】安井 健一
(72)【発明者】
【氏名】中山田 憲昭
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-249193(JP,A)
【文献】特表平08-504984(JP,A)
【文献】特開2016-076654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01J 37/305
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチ荷電粒子ビーム描画装置で用いられる描画データを生成する描画データ生成プログラムであって、
設計データに含まれる曲線と直線を含む図形の、前記曲線をパラメトリック曲線表現する複数の制御点と、前記曲線及び前記直線の複数の頂点とを算出するステップと、
各制御点及び各頂点の位置を、隣接する制御点又は頂点からのx方向とy方向との2方向における変位で表現して、前記描画データを生成するステップと、
をコンピュータに実行させる、描画データ生成プログラム。
【請求項2】
前記描画データを生成するステップにおいて、前記曲線から構成される曲線部及び前記直線から構成される直線部を、前記図形の原点から該図形を周回するように、順に定義して前記描画データを生成する、請求項1に記載の描画データ生成プログラム。
【請求項3】
前記描画データを生成するステップにおいて、前記描画データ内に、前記図形を囲む最小の矩形のサイズ情報を定義する、請求項1又は2に記載の描画データ生成プログラム。
【請求項4】
前記描画データは、
前記各制御点又は前記各頂点について、隣接する制御点又は頂点からの変位情報と、
前記曲線又は直線を示す辺タイプ情報と、
を有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の描画データ生成プログラム。
【請求項5】
複数の荷電粒子ビームからなるマルチビームを形成し、前記マルチビームのうち、それぞれ対応するビームに対して個別にビームのオン/オフを行い、対象物上に荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する描画部を制御する制御部としてコンピュータを機能させるマルチ荷電粒子ビーム描画プログラムであって、
設計データに含まれる曲線と直線を含む図形の、前記曲線をパラメトリック曲線表現する複数の制御点と、前記曲線及び前記直線の複数の頂点の各々の位置が、隣接する制御点又は頂点からのx方向とy方向との2方向における変位で表現された描画データの入力を受け付けるステップと、
前記変位を用いて前記複数の制御点又は複数の頂点の位置を算出するステップと、
算出した複数の制御点又は複数の頂点の位置に基づいて得られた前記曲線及び前記直線を用いて前記図形を再構成するステップと、
再構成した図形に対しデータ変換処理を施し、前記描画部を制御するステップと、
を前記コンピュータに実行させる、マルチ荷電粒子ビーム描画プログラム。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかの描画データ生成プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画データ生成方法及びマルチ荷電粒子ビーム描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、縮小投影型露光装置を用いて、石英上に形成された高精度の原画パターン(マスク、或いは特にステッパやスキャナで用いられるものはレチクルともいう。)をウェーハ上に縮小転写する手法が採用されている。高精度の原画パターンは、電子ビーム描画装置によって描画され、所謂、電子ビームリソグラフィ技術が用いられている。
【0003】
電子ビーム描画装置として、例えば、マルチビームを用いて一度に多くのビームを照射し、スループットを向上させたマルチビーム描画装置が知られている。このマルチビーム描画装置では、例えば、電子銃から放出された電子ビームが、複数の穴を有するアパーチャ部材を通過することでマルチビームが形成され、各ビームがブランキングプレートにおいてブランキング制御される。遮蔽されなかったビームが、光学系で縮小され、描画対象のマスク上の所望の位置に照射される。
【0004】
マルチビーム描画装置を用いて電子ビーム描画を行う場合、まず、半導体集積回路のレイアウトが設計され、レイアウトデータとして設計データが生成される。そして、この設計データに含まれる多角形図形を、複数の台形に分割することで、マルチビーム描画装置に入力される描画データが生成される。この描画データは、各台形について、1つの頂点を配置原点とし、この配置原点の座標データと、配置原点から他の3つの頂点までの変位を示すデータとを有する。
【0005】
設計データに楕円形図形のような曲線を持った図形や、曲線と直線が混在する図形が含まれる場合、この図形を多角形に近似して描画データが作成される。近似を高精度に行うと、頂点数や図形数が増加し、描画データのデータ量が多大なものになるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-283390号公報
【文献】特開平5-175107号公報
【文献】特開昭63-249193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、曲線及び直線が混在する図形が含まれている設計データから、データ量及びマルチ荷電粒子ビーム描画装置内での計算量を抑制できる描画データを生成する描画データ生成方法及びマルチ荷電粒子ビーム描画装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による描画データ生成方法は、マルチ荷電粒子ビーム描画装置で用いられる描画データを生成する描画データ生成方法であって、設計データに含まれる曲線と直線を含む図形の、前記曲線を表現する複数の制御点と、前記曲線及び前記直線の複数の頂点とを算出し、各制御点及び各頂点の位置を、隣接する制御点又は頂点からの変位で表現して、前記描画データを生成するものである。
【0009】
本発明の一態様による描画データ生成方法では、前記曲線から構成される曲線部及び前記直線から構成される直線部を、前記図形の原点から該図形を周回するように、順に定義して前記描画データを生成する。
【0010】
本発明の一態様による描画データ生成方法では、前記描画データ内に、前記図形を囲む矩形のサイズ情報を定義する。
【0011】
本発明の一態様による描画データ生成方法において、前記描画データは、前記各制御点又は前記各頂点について、隣接する制御点又は頂点からの変位情報と、前記曲線又は直線を示す辺タイプ情報と、を有する。
【0012】
本発明の一態様によるマルチ荷電粒子ビーム描画装置は、複数の荷電粒子ビームからなるマルチビームを形成し、前記マルチビームのうち、それぞれ対応するビームに対して個別にビームのオン/オフを行い、対象物上に荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する描画部と、設計データに含まれる曲線と直線を含む図形の、前記曲線を表現する複数の制御点と、前記曲線及び前記直線の複数の頂点の各々の位置が、隣接する制御点又は頂点からの変位で表現された描画データが入力され、前記変位を用いて前記複数の制御点又は複数の頂点の位置を算出し、算出した複数の制御点又は複数の頂点の位置に基づいて得られた前記曲線及び前記直線を用いて前記図形を再構成し、再構成した図形に対しデータ変換処理を施し、前記描画部を制御する制御部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、曲線及び直線が混在する図形が含まれている設計データから、データ量及びマルチ荷電粒子ビーム描画装置内での計算量を抑制可能な描画データを生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るマルチ荷電粒子ビーム描画装置の概略図である。
図2】同実施形態に係る描画データ生成方法を説明するフローチャートである。
図3】曲線と直線が混在する図形の表現の一例を示す図である。
図4】描画データのデータ構造の例を示す図である。
図5】バウンディングボックスの例を示す図である。
図6】別の実施形態による描画データのデータ構造の例を示す図である。
図7】パターン検査装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本実施形態による描画データを用いて描画を行うマルチ荷電粒子ビーム描画装置の概略図である。本実施形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の他の荷電粒子ビームでもよい。
【0017】
図1に示す描画装置1は、マスクやウェーハ等の対象物に電子ビームを照射して所望のパターンを描画する描画部10と、描画部10による描画動作を制御する制御部50とを備える。描画部10は、電子ビーム鏡筒12及び描画室30を有している。
【0018】
電子ビーム鏡筒12内には、電子銃14、照明レンズ16、アパーチャ部材18、ブランキングプレート20、縮小レンズ22、制限アパーチャ部材24、対物レンズ26、及び偏向器28が配置されている。描画室30内には、XYステージ32が配置される。XYステージ32上には、描画対象基板となるマスクブランク34が載置されている。対象物として、例えば、ウェーハや、ウェーハにエキシマレーザを光源としたステッパやスキャナ等の縮小投影型露光装置や極端紫外線露光装置を用いてパターンを転写する露光用のマスクが含まれる。また、描画対象基板には、例えば、既にパターンが形成されているマスクも含まれる。例えば、レベンソン型マスクは2回の描画を必要とするため、1度描画されマスクに加工された物に2度目のパターンを描画することもある。XYステージ32上には、さらに、XYステージ32の位置測定用のミラー36が配置される。
【0019】
制御部50は、制御計算機52、偏向制御回路54,56、及びステージ位置検出器58を有している。制御計算機52、偏向制御回路54,56、及びステージ位置検出器58は、バスを介して互いに接続されている。
【0020】
電子銃14から放出された電子ビーム40は、照明レンズ16によりほぼ垂直にアパーチャ部材18全体を照明する。アパーチャ部材18には、穴(開口部)が所定の配列ピッチでマトリクス状に形成されている。電子ビーム40は、アパーチャ部材18のすべての穴が含まれる領域を照明する。これらの複数の穴を電子ビーム40の一部がそれぞれ通過することで、図1に示すようなマルチビーム40a~40eが形成されることになる。
【0021】
ブランキングプレート20には、アパーチャ部材18の各穴の配置位置に合わせて通過孔が形成され、各通過孔には、対となる2つの電極からなるブランカが、それぞれ配置される。各通過孔を通過する電子ビーム40a~40eは、それぞれ独立に、ブランカが印加する電圧によって偏向される。かかる偏向によってブランキング制御される。このように、複数のブランカが、アパーチャ部材18の複数の穴を通過したマルチビームのうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う。
【0022】
ブランキングプレート20を通過したマルチビーム40a~40eは、縮小レンズ22によって縮小され、制限アパーチャ部材24に形成された中心の穴に向かって進む。ここで、ブランキングプレート20のブランカにより偏向された電子ビームは、制限アパーチャ部材24の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ部材24によって遮蔽される。一方、ブランキングプレート20のブランカによって偏向されなかった電子ビームは、制限アパーチャ部材24の中心の穴を通過する。
【0023】
このように、制限アパーチャ部材24は、ブランキングプレート20のブランカによってビームOFFの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに制限アパーチャ部材24を通過したビームが、1回分のショットのビームとなる。制限アパーチャ部材24を通過したマルチビーム40a~40eは、対物レンズ26により焦点が合わされ、所望の縮小率のパターン像となる。制限アパーチャ部材24を通過した各ビーム(マルチビーム全体)は、偏向器28によって同方向にまとめて偏向され、各ビームのマスクブランク34上のそれぞれの照射位置に照射される。
【0024】
XYステージ32が連続移動している時、ビームの照射位置がXYステージ32の移動に追従するように偏向器28によって制御される。XYステージ32の移動は図示しないステージ制御部により行われ、XYステージ32の位置はステージ位置検出器58により検出される。
【0025】
一度に照射されるマルチビームは、理想的にはアパーチャ部材18の複数の穴の配列ピッチに上述した所望の縮小率を乗じたピッチで並ぶことになる。この描画装置は、ショットビームを連続して順に照射していくラスタースキャン方式で描画動作を行い、所望のパターンを描画する際、パターンに応じて必要なビームがブランキング制御によりビームONに制御される。XYステージ32が連続移動している時、ビームの照射位置がXYステージ32の移動に追従するように偏向器28によって制御される。
【0026】
制御計算機52は、記憶装置60から描画データD1を読み出し、複数段のデータ変換処理を行って装置固有のショットデータを生成する。ショットデータには、各ショットの照射量及び照射位置座標等が定義される。例えば、制御計算機52は、描画データ内に定義された図形パターンを対応する画素に割り当てる。そして、制御計算機52は、画素毎に、配置される図形パターンの面積密度を算出する。
【0027】
制御計算機52は、画素毎に、1ショットあたりの電子ビームの照射量を算出する。例えば、画素の面積密度に比例した照射量を求め、近接効果、かぶり効果、ローディング効果等による寸法変動を考慮して照射量を補正する。
【0028】
制御計算機52は、ショットデータに基づき各ショットの照射量を偏向制御回路54に出力する。偏向制御回路54は、入力された照射量を電流密度で割って照射時間tを求める。そして、偏向制御回路54は、対応するショットを行う際、照射時間tだけブランカがビームONするように、ブランキングプレート20の対応するブランカに偏向電圧を印加する。
【0029】
また、制御計算機52は、ショットデータが示す位置(座標)に各ビームが偏向されるように、偏向位置データを偏向制御回路56に出力する。偏向制御回路56は、偏向量を演算し、偏向器28に偏向電圧を印加する。これにより、その回にショットされるマルチビームがまとめて偏向される。
【0030】
次に、描画データD1の生成方法を図2に示すフローチャートに沿って説明する。まず、半導体集積回路のレイアウトが設計され、レイアウトデータとなる設計データ(CADデータ)D0が生成され、変換装置70に入力される(ステップS1)。そして、設計データD0が変換装置70で変換され、描画装置1の制御計算機52に入力される描画データD1が生成される。
【0031】
設計データD0には、曲線の辺と直線の辺とが混在した図形が含まれている。変換装置70は、曲線部分について、曲線を表現(パラメトリック曲線表現)するための複数の制御点を算出し、制御点の位置や曲線種類の情報を求める(ステップS2)。変換装置70は、各制御点について、隣接する制御点からの変位を求める(ステップS3)。また、変換装置70は、直線部分を抽出し、直線の一端から他端までの変位を求める(ステップS4)。そして、変換装置70は、1つの頂点(図形配置原点)から図形を1周するように、各制御点の位置を隣接する制御点からの変位で表現し、直線の一端の頂点の位置を他端の頂点の位置からの変位で表現することで、各辺に関する情報を定義して、描画データD1を生成する(ステップS5)。
【0032】
図3は、曲線と直線とが混在する図形の例を示す。この図形は、曲線C1,C2と、直線S1~S11とで囲まれている。
【0033】
図3に示す例では、曲線C1は、4個の制御点P0,P1,P2,P3で定義される曲線で表現(近似)される。曲線のタイプとしては、例えば、Bスプライン曲線やベジェ曲線等を使用することができる。変換装置70は、図形の曲線部を表現する制御点を算出し、制御点の位置を、隣接する制御点からの変位で表現して、描画データD1を生成する。
【0034】
例えば、図3に示す例では、頂点(制御点)P0の座標(x0、y0)が、この図形の図形配置原点として定義される。
【0035】
曲線C1の制御点のうち、制御点P0に続く(制御点P0の次の)制御点P1の位置は、制御点P0からみたx方向の変位δx1と、y方向の変位δy1で定義される。
【0036】
制御点P1に続く制御点P2の位置は、制御点P1からみたx方向の変位δx2と、y方向の変位δy2で定義される。
【0037】
制御点P2に続く制御点P3の位置は、制御点P2からみたx方向の変位δx3と、y方向の変位δy3で定義される。このように、曲線部の制御点の位置は、1つ前の制御点からみたx方向の変位及びy方向の変位で順に定義される。
【0038】
直線S1は、頂点(制御点)P3で曲線C1に連なっている。直線S1は、頂点P3と頂点P4とを結ぶ。頂点P4の位置は、頂点P3からみたx方向の変位δx4と、y方向の変位δy4で定義される。変換装置70は、頂点P3及び頂点P4の位置と、頂点P3と頂点P4とが直線で結ばれるという情報により、直線S1を表現して、描画データD1を生成する。
【0039】
直線S2は、頂点P4で直線S1に連なっている。直線S2は、頂点P4と頂点P5とを結ぶ。頂点P5の位置は、頂点P4からみたx方向の変位δx5と、y方向の変位δy5で定義される。変換装置70は、頂点P4及び頂点P5の位置と、頂点P4と頂点P5とが直線で結ばれるという情報により、直線S2を表現して、描画データD1を生成する。
【0040】
直線S3は、頂点P5で直線S2に連なっている。直線S3は、頂点P5と頂点P6とを結ぶ。頂点P6の位置は、頂点P5からみたx方向の変位δx6と、y方向の変位δy6で定義される。変換装置70は、頂点P5及び頂点P6の位置と、頂点P5と頂点P6とが直線で結ばれるという情報により、直線S3を表現して、描画データD1を生成する。
【0041】
直線S4は、頂点P6で直線S3に連なっている。直線S4は、頂点P6と頂点P7とを結ぶ。頂点P7の位置は、頂点P6からみたx方向の変位δx7と、y方向の変位δy7で定義される。変換装置70は、頂点P6及び頂点P7の位置と、頂点P6と頂点P7とが直線で結ばれるという情報により、直線S4を表現して、描画データD1を生成する。
【0042】
直線S5は、頂点P7で直線S4に連なっている。直線S5は、頂点P7と頂点P8とを結ぶ。頂点P8の位置は、頂点P7からみたx方向の変位δx8と、y方向の変位δy8で定義される。変換装置70は、頂点P7及び頂点P8の位置と、頂点P7と頂点P8とが直線で結ばれるという情報により、直線S5を表現して、描画データD1を生成する。
【0043】
直線S6は、一端側の頂点P8で直線S5に連なっている。直線S6の他端は、直線S7の一端と接続され、直線S6と直線S7とは直角をなしている。直線S7の他端の頂点P9の位置は、頂点P8からみたx方向の変位δx9と、y方向の変位δy9で定義される。変換装置70は、頂点P8及び頂点P9の位置と、頂点P8と頂点P9とが直角タイプ(マンハッタンタイプ)の直線で結ばれるという情報により、直線S6及びS7を表現して、描画データD1を生成する。
【0044】
直線S8は、一端側の頂点P9で直線S7に連なっている。直線S8の他端は、直線S9の一端と接続され、直線S8と直線S9とは直角をなしている。直線S9の他端の頂点P10の位置は、頂点P9からみたx方向の変位δx10と、y方向の変位δy10で定義される。変換装置70は、頂点P9及び頂点P10の位置と、頂点P9と頂点P10とが直角タイプ(マンハッタンタイプ)の直線で結ばれるという情報により、直線S8及びS9を表現して、描画データD1を生成する。
【0045】
直線S10は、一端側の頂点P10で直線S9に連なっている。直線S10の他端は、直線S11の一端と接続され、直線S10と直線S11とは直角をなしている。直線S11の他端の頂点P11の位置は、頂点P10からみたx方向の変位δx11と、y方向の変位δy11で定義される。変換装置70は、頂点P10及び頂点P11の位置と、頂点P10と頂点P11とが直角タイプ(マンハッタンタイプ)の直線で結ばれるという情報により、直線S10及びS11を表現して、描画データD1を生成する。
【0046】
曲線C2は、頂点P0とP11とを結び、5個の制御点P11,P12,P13,P14,P0で定義される曲線で表現(近似)される。制御点(頂点)P11に続く制御点P12の位置は、制御点P11からみたx方向の変位δx12と、y方向の変位δy12で定義される。
【0047】
制御点P12に続く制御点P13の位置は、制御点P12からみたx方向の変位δx13と、y方向の変位δy13で定義される。
【0048】
制御点P13に続く制御点P14の位置は、制御点P13からみたx方向の変位δx14と、y方向の変位δy14で定義される。
【0049】
制御点P14に続く制御点P0は図形配置原点である。
【0050】
図4に、曲線及び直線が混在する図形を定義する描画データD1のデータ構造の一例を示す。描画データD1は、ヘッダ部及びボディ部を有する。ヘッダ部は図形コード(Code)、セクション数(N)、及びその他の情報(other info)が定義されている。
【0051】
図形コードは、どのような図形を定義しているかを示す情報である。曲線と直線が混在する図形の場合は、図形コードに“辺混在タイプ”を示す情報が記載される。
【0052】
変換装置70は、曲線部と直線部とを、異なるセクションに分けて描画データD1を生成する。また、変換装置70は、任意角タイプ(非直角タイプ)の直線が連続する部分を1セクションにまとめる。同様に、変換装置70は、直角タイプの直線が連続する部分を1セクションにまとめる。
【0053】
図3に示す図形の例では、曲線C1を表現するための制御点P1~P3の位置情報を第1セクション、任意角タイプの直線S1~S5を表現するための頂点P4~P8の位置情報を第2セクション、直角タイプの直線S6~S11を表現するための頂点P9~P11の位置情報を第3セクション、曲線C2を表現するための制御点P12~P14の位置情報を第4セクションに分類する。
【0054】
その他の情報(other info)には、図5に示すような、図形を囲む最小の矩形(バウンディングボックス)のサイズw、hが定義される。バウンディングボックスの情報があることで、他の図形との重なりの有無を容易に判定できる。また、曲線タイプ、次数、knotベクトル情報、端点情報などのパラメトリック曲線を決めるためのパラメータが設定される。
【0055】
ボディ部には、まず、図形配置位置原点P0の座標(x0、y0)が記載される。図形配置位置原点に続いて、各セクションの情報が順に定義される。
【0056】
各セクションのセクションヘッダSHには、ポイント数n、辺タイプ、バイト長、バウンディングボックスサイズが定義される。ポイント数nは、セクションに含まれる制御点や頂点の数を示す。例えば、第1セクションはポイント数nが3であり、第2セクションはポイント数nが5である。
【0057】
辺タイプは、表現する辺のタイプ(曲線、任意角タイプの直線、又は直角タイプの直線)を示す。バイト長は、頂点や制御点の位置情報(変位情報)のデータ長を示す。バウンディングボックスサイズは、このセクションで定義される辺を囲むバウンディングボックスのサイズを示す。
【0058】
第1セクションでは、セクションヘッダにおいて曲線タイプであることが定義され、セクションヘッダに続いて、制御点P1~P3の位置情報が定義される。具体的には、制御点P1の位置情報として、図形配置原点(x0、y0)からみたx方向の変位δx1及びy方向の変位δy1が定義される。制御点P2の位置情報として、制御点P1からみたx方向の変位δx2及びy方向の変位δy2が定義される。制御点P3の位置情報として、制御点P2からみたx方向の変位δx3及びy方向の変位δy3が定義される。
【0059】
第2セクションでは、セクションヘッダにおいて任意角タイプの直線であることが定義され、セクションヘッダに続いて、頂点P4~P8の位置情報が順に定義される。頂点の位置情報は、1つ前の頂点からのx方向の変位及びy方向の変位である。
【0060】
第3セクションでは、セクションヘッダにおいて直角タイプの直線であることが定義され、セクションヘッダに続いて、頂点P9~P11の位置情報が順に定義される。頂点の位置情報は、1つ前の頂点からのx方向の変位及びy方向の変位である。
【0061】
第4セクションでは、セクションヘッダにおいて曲線タイプであることが定義され、セクションヘッダに続いて、制御点P12~P14の位置情報が順に定義される。制御点の位置情報は、1つ前の制御点からのx方向の変位及びy方向の変位である。
【0062】
従来の手法のように曲線で囲まれた部分を多角形で近似すると、頂点数が多くなり、描画データのデータ量が多大なものとなる。
【0063】
一方、本実施形態では、複数の制御点を用いたパラメトリック曲線で図形の曲線部分を表現する。制御点の数は、曲線を多角形近似した場合の頂点数よりも少ないため、描画データD1のデータ量を低減することができる。
【0064】
制御計算機52は、描画データD1を読み出し、図形を再構成する。例えば、制御計算機52は、描画データD1の座標(x0、y0)から図形配置位置原点となる制御点P0の位置を決定する。
【0065】
制御計算機52は、第1セクションに定義された情報から、制御点P1~P3の位置を順に算出し、曲線C1を算出する。
【0066】
続いて、制御計算機52は、第2セクションに定義された情報から、頂点P4~P8の位置を算出し、直線S1~S5を算出する。
【0067】
次に、制御計算機52は、第3セクションに定義された情報から、頂点P9~P11の位置を算出し、頂点間を直角タイプの辺で結ぶ直線S6~S11を算出する。
【0068】
続いて、制御計算機52は、第4セクションに定義された情報から、制御点P12~P14の位置を算出し、頂点P0とP11とを結ぶ曲線C2を算出する。これにより、曲線C1、C2、直線S1~S11で囲まれた図形が再構成される。
【0069】
このように、曲線及び直線が混在した図形を表現した描画データD1は、描画装置1の制御計算機52内でのデータ処理が容易であり、計算量を抑制することができる。描画装置1が曲線フォーマットに対応することで、OPC(Optical Proximity Correction:光近接効果補正)などを含む上流データパスにおいて曲線を扱うことができるようになり、上流のプロセスにおいてもTAT(Turn Around Time)を短縮できる。
【0070】
上記実施形態では、曲線部と直線部とを異なるセクションに分け、セクションヘッダに辺タイプを定義して描画データD1を生成する例について説明したが、図6に示すように、各頂点(制御点)が属する辺のタイプを示すフラグ(flag)と、1つ前の頂点(制御点)からの変位とを、図形配置原点から図形を周回するように順番に定義してもよい。この場合、ヘッダ部のNは、頂点及び制御点の総数を示す。
【0071】
例えば、フラグが0の場合はマンハッタン(直角タイプの直線)、1の場合は任意角タイプの直線、2の場合は曲線を示す。
【0072】
制御点P1~P3は、曲線を表すための点であるので、フラグは2となる。頂点P4~P8は任意角タイプの直線を表すための点であるので、フラグは1となる。頂点P9~P11は直角タイプの直線を表すための点であるので、フラグは0となる。制御点P12~P14は曲線を表すための点であるので、フラグは2となる。
【0073】
上記実施形態による変換装置70により生成された描画データD1は、パターン検査装置に入力されてもよい。例えば、図7に示すように、パターン検査装置80には、変換装置70により生成された描画データD1(第1描画データ)と、図1に示す描画装置1が描画データD1に基づいて描画対象基板に実際に描画したパターンに基づいて作成された描画データD2(第2描画データ)とが入力される。描画データD2は、図示しない記憶装置から有線又は無線ネットワークを介してパターン検査装置80に入力される。
【0074】
パターン検査装置80は、入力された描画データD1、D2に基づいて、描画装置1により描画対象基板に実際に描画されたパターンを検査する。この検査では、例えば、描画データD1と描画データD2とを比較するような検査が行われる。なお、検査には、描画条件などの各種情報がさらに用いられる。
【0075】
変換装置70により生成される描画データD1はデータ量が小さく、かつデータ処理が容易なものであるため、パターン検査装置80の処理効率を向上させることができる。
【0076】
変換装置70は、パターン検査装置80内に設けられていてもよい。その場合、パターン検査装置80は、入力された設計データD0に基づいて描画データD1を生成する変換部と、描画データD1と描画データD2とを比較して描画対象基板に実際に描画されたパターンの検査を行う検査部とを備えたものとなる。
【0077】
上記実施形態による描画データD1の生成は描画装置1の制御計算機52内で行ってもよい。
【0078】
上述した実施形態で説明した描画データD1を生成する変換装置70の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、変換装置70の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0079】
また、変換装置70の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0080】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 描画装置
10 描画部
12 電子ビーム鏡筒
14 電子銃
16 照明レンズ
18 アパーチャ部材
20 ブランキングプレート
22 縮小レンズ
24 制限アパーチャ部材
26 対物レンズ
28 偏向器
30 描画室
32 XYステージ
34 マスクブランク
36 ミラー
50 制御部
52 制御計算機
54、56 偏向制御回路
58 ステージ位置検出器
70 変換装置
80 パターン検査装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7