(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】計測装置、計測方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 19/28 20100101AFI20231129BHJP
G01S 19/47 20100101ALN20231129BHJP
【FI】
G01S19/28
G01S19/47
(21)【出願番号】P 2022518506
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2020018164
(87)【国際公開番号】W WO2021220420
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 誠史
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-139933(JP,A)
【文献】特開2020-012650(JP,A)
【文献】国際公開第2020/040053(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0283674(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00-19/55
G01C 21/26-21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の方位及び傾きを計測する方位・傾き計測部と、
前記物体の方位及び傾きに応じて、天空の開空間の領域のうち、GNSSアンテナから見て、遮られる領域を示す方位マスクを生成する方位マスク生成部と、
前記方位マスク
により可視衛星信号
であると判断された複数の衛星信号のうち、受信品質が閾値以下である衛星信号を除外した可視衛星信号を用いた測位又は時刻同期を絶対位置測位部に実行させる測位制御部と
を備える計測装置。
【請求項2】
前記方位マスク生成部は、前記物体に備えられた構造物により遮られる領域を示す方位マスクを生成する
請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記方位マスク生成部は、前記構造物により遮られる領域を、前記物体を基準として相対的に表したデータであるマスクデータと、前記物体の方位及び傾きとに基づいて前記方位マスクを生成する
請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記方位マスク生成部は、前記物体が位置する斜面により遮られる領域を示す方位マスク、又は、当該斜面による前記物体の傾きにより前記GNSSアンテナの受信品質の劣化が生じる領域を示す方位マスクを生成する
請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項5】
前記物体における部位の絶対位置を、当該部位と前記GNSSアンテナとの間の相対的な位置関係と、前記絶対位置測位部による測位結果とに基づいて算出する部位位置算出部
を更に備える請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項6】
計測装置が実行する計測方法であって、
物体の方位及び傾きを計測する方位・傾き計測ステップと、
前記物体の方位及び傾きに応じて、天空の開空間の領域のうち、GNSSアンテナから見て、遮られる領域を示す方位マスクを生成する方位マスク生成ステップと、
前記方位マスク
により可視衛星信号
であると判断された複数の衛星信号のうち、受信品質が閾値以下である衛星信号を除外した可視衛星信号を用いた測位又は時刻同期を絶対位置測位部に実行させる測位制御ステップと
を備える計測方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の計測装置における方位マスク生成部、及び測位制御部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GNSSによる測位及び時刻同期を高精度に行う技術に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、航法衛星システム、GNSS(Global Navigation Satellite System)による測位及び時刻同期が幅広いアプリケーションにおいて活用されている。
【0003】
GNSSによる物体の測位や時刻同期を行うために、GNSSアンテナが当該物体に搭載され、GNSSアンテナにより受信したGNSS衛星信号(以降、衛星信号)を用いて測位及び時刻同期の処理が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GNSSアンテナの設置位置の周囲に存在する構造物等により衛星信号の見通し状態での受信が遮られる場合がある。その場合、当該衛星信号は、GNSSアンテナにおいて必要な信号強度で受信されないか、又は、GNSSアンテナの設置位置の周囲に存在する構造物等により反射・回折するマルチパスにより、不可視衛星信号として受信されることになる。その結果、GNSSによる測位性能及び時刻同期性能が劣化するという課題がある。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、GNSSアンテナの設置位置の周囲に存在する構造物等により衛星信号が遮られる場合でも、精度良く、GNSSによる測位及び時刻同期を行うことを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術によれば、物体の方位及び傾きを計測する方位・傾き計測部と、
前記物体の方位及び傾きに応じて、天空の開空間の領域のうち、GNSSアンテナから見て、遮られる領域を示す方位マスクを生成する方位マスク生成部と、
前記方位マスクにより可視衛星信号であると判断された複数の衛星信号のうち、受信品質が閾値以下である衛星信号を除外した可視衛星信号を用いた測位又は時刻同期を絶対位置測位部に実行させる測位制御部と
を備える計測装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、GNSSアンテナの設置位置の周囲に存在する構造物等により衛星信号が遮られる場合でも、精度良く、GNSSによる測位及び時刻同期を行うことを可能とする技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】物体における構造物により衛星信号が遮られる場合の状況を示す図である。
【
図2】第1の実施の形態における位置計測装置の構成図である。
【
図3】方位を決定する方法の例を説明するための図である。
【
図8】位置計測装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図9】方位マスクの生成例を説明するための図である。
【
図10】方位マスクの生成例を説明するための図である。
【
図13】方位マスクの生成例を説明するための図である。
【
図15】実施例3における位置計測装置の構成図である。
【
図16】部位の位置の算出の例を説明するための図である。
【
図17】部位の位置の算出の例を説明するための図である。
【
図18】装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施の形態)を説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限定されるわけではない。
【0011】
以下の説明において、位置、方位、傾き、仰角は、地球を基準とする絶対的なものであるとする。これらを絶対位置、絶対方位、絶対傾き、絶対仰角と称してもよい。地球以外の物体を基準とする場合は、相対位置、相対方位、相対傾き、相対仰角等と記載する。
【0012】
以下の説明における物体は、特定の物に限られないが、例えば、自動車、鉄道の車両、パーソナルモビリティ、AGV(Automated Guided Vehicle)、建機、重機、ドローン、等である。
【0013】
(実施の形態の概要)
図1は、本発明の実施の形態における物体10の例を示している。
図1に示すように、物体10は移動体1に構造物2が付加された構成を有する。また、物体10には、GNSSアンテナ110を接続した位置計測装置100が備えられている。なお、位置計測装置を「計測装置」と称してもよい。
【0014】
物体10は、例えば車両である。構造物2は、例えば車両の屋根の上に、GNSSアンテナ110の近くに取り付けられた物である。
【0015】
位置計測装置100により、精度良く測位及び時刻同期を行うには、GNSSアンテナ110が多くのGNSS衛星(少なくとも4機)から可視衛星信号を受信することが望ましい。可視衛星信号とは、GNSSアンテナ110の位置において見通し状態にあるGNSS衛星から直接に届く衛星信号である。
【0016】
しかし、
図1に示すように、例えば「A」で示すGNSS衛星からの衛星信号は、構造物2に遮られるため、「A」からの衛星信号は、GNSSアンテナ110に直接には届かず、物体10の周囲の建造物等の構造物により反射、回折するマルチパスにより不可視衛星信号として届く可能性がある。その結果、位置計測装置100による測位・時刻同期の精度が劣化する。
【0017】
そこで、本実施の形態では、位置計測装置100が、不可視衛星信号をマスク(測位、時刻同期に使用する衛星信号から除外)するための方位マスクを生成し、方位マスクで不可視衛星信号をマスクして、可視衛星信号のみを用いて測位及び時刻同期の処理を行う。なお、方位マスクを使用することで、測位及び時刻同期の精度が向上すること自体は特許文献1に記載されている。しかし、特許文献1には、本実施の形態では可能としている、移動する物体10における、任意の構造物により衛星信号が遮られる場合を想定した方位マスクを生成することは記載されていない。
【0018】
以下、本実施の形態における具体的な構成及び動作の例として実施例1~3を説明する。
【0019】
(実施例1)
<装置構成>
図2に、実施例1における位置計測装置100の構成例を示す。実施例1における位置計測装置100は、GNSSアンテナ110、絶対位置測位部120、相対位置測位部130、測位制御部140、方位・傾き計測部150、方位マスク生成部160、データ格納部170、出力部180を有する。
【0020】
GNSSアンテナ110は、軌道上のGNSS衛星から送信される電波を受信し、電波を電気信号に変換する。この電気信号を「衛星信号」と呼んでもよい。
【0021】
GNSSアンテナ110と絶対位置計測部120とはケーブルで接続され、衛星信号はケーブルにより絶対位置計測部120に送られる。GNSSアンテナ110と絶対位置計測部120との間の距離が長い場合や衛星信号を分岐する場合には、GNSSアンテナ110と絶対位置計測部120との間に増幅器が備えられてもよい。
【0022】
絶対位置測位部120は、衛星信号を受信し、コード測位又は搬送波位相測位(干渉測位)を行う。絶対位置測位部120は、搬送波位相測位を行う上で必要となる基準局の観測データ及び位置情報の収集機能を備えているものとする。また、絶対位置測位部120は、絶対時刻に対して精密に時刻が管理される原子時計を搭載したGNSS衛星から送信される衛星信号を用いて時刻同期を行うことにより、絶対時刻に対して高精度に時刻同期した時刻情報を出力する。ここでの絶対時刻とは、例えば、協定世界時(UTC:Coordinated Universal Time)である。なお、絶対位置測位部120は、測位と時刻同期のうちの一方のみを行うこととしてもよい。
【0023】
受信した衛星信号から、当該衛星信号がGNSS衛星から送信された絶対時刻を知ることができるが、GNSS衛星からGNSSアンテナ110の位置に衛星信号が到達するまでの伝搬時間を計測し、更に絶対位置測位部120の時刻と衛星の時刻との間の時刻オフセット値Δtを補正しなければ、受信位置において正確な絶対時刻は得られない。
【0024】
そこで、絶対位置測位部120は、4機以上のGNSS衛星からの衛星信号を用いて、受信位置の3次元座標情報(x,y,z)、及び時刻オフセット(Δt)の4つのパラメータを算出することにより、測位と時刻同期を同時に行う。
【0025】
絶対位置測位部120は、出力部180を介してこの絶対時刻に基づく時刻情報を出力する。例えば、物体10がモバイルネットワークにおける基地局であるとすると、当該基地局が絶対時刻に同期した時刻情報を受信し、例えば、(絶対時刻に同期している)隣接する基地局とTDD(Time Division Duplex:時分割複信)信号フレームの上り、下り信号のタイムスロット構成(並び)を一致させた上で、信号フレームの送信タイミングを同期させることで、隣接する基地局と互いに干渉しないようにTDD信号を送信することができる。
【0026】
また、絶対位置測位部120は、測位制御部140から、方位マスクに基づき算出された現在の可視衛星信号の情報を受信し、不可視衛星信号を排除した上で可視衛星信号のみを用いて測位・時刻同期の処理を行う。受信した全ての衛星信号の中から可視衛星信号を選択する処理は、衛星信号を用いた疑似距離計算(コード疑似距離計測、位相計測)を行った後に行ってもよいし、疑似距離計算を行う前に行ってもよい。
【0027】
相対位置測位部130は、例えば、車速パルス計測機、IMU(Inertial Measurement Unit)、車載カメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging)、GNSSドップラーシフト計測機等である。車速パルス計測機により、車両の速さ、つまり、単位時間に進む距離がわかる。IMUに搭載された3軸のジャイロと3方向の加速度計によって、3次元の角速度と加速度が求められる。車載カメラにより撮影された画像データ中の物体の動きにより車両の相対位置を求めることができる。LiDARでは、レーザー光を走査しながら対象物に照射してその散乱や反射光を観測することで、対象物までの距離を計測し、車両の相対位置を求めることができる。GNSSドップラーシフト計測機では、搬送波の周波数変化を計測することで得られる速度を時間的に積分することで物体の位置の相対変位を算出することができる。なお、実施例1において、相対位置測位部130を備えないこととしてもよい。
【0028】
相対位置測位部130は、車速パルス計測機、IMU、車載カメラ、LiDAR、GNSSドップラーシフト計測機等の測位手段のうちの複数の測位手段であってもよいし、1つの測位手段であってもよい。相対位置測位部130が複数の測位手段を有する場合に、複数の測位手段のそれぞれで得られた測位結果のうち、最も精度の良い測位結果を選択して出力する仕組みが備えられていてもよいし、複数の測位手段のそれぞれで得られた測位結果の全て又は一部をカルマンフィルタ等によりカップリングして出力する仕組みが備えられていてもよい。
【0029】
また、相対位置測位部130には、GNSS信号への時刻同期で得られる高精度クロック信号が絶対位置測位部120から供給される。高精度クロック信号が途切れた場合でも、相対位置測位部130は、GNSS信号への時刻同期に依らず、ホールドオーバ(発振器の自走動作)により、クロック信号の精度を維持することが可能である。
【0030】
測位制御部140は、方位マスク生成部160から通知される現時点の方位マスクを用いて、可視衛星信号を抽出し、可視衛星の識別情報(コード)を絶対位置測位部120に対して通知する。
【0031】
また、測位制御部140は、例えば、アーバンキャニオン環境等において、絶対位置測位部120で搬送波位相測位の収束(Fix)解が得られない状況になった場合に、測位手段を相対位置測位部130に切り替えて、測位を継続する制御を実行する。
【0032】
方位・傾き計測部150は、物体10の方位及び傾きをリアルタイムに計測し、計測結果を方位マスク生成部160に対して通知する。方位・傾き計測部150は、どのような方式で実現してもよい。例えば、下記の装置等により、方位・傾き計測部150を実現できる。
【0033】
(1)磁気センサや地磁気方位センサ(GDS:Geomagnetic Direction Sensor)を搭載した電子コンパス。
【0034】
(2)2つのGNSSアンテナを搭載し両者の相対位置を計測することにより方位・傾きを計測するGNSSコンパス。
【0035】
(3)ジャイロスコープ(MEMS、光ファイバジャイロ、等)。
【0036】
(4)GNSS衛星信号のドップラーシフトにより計測された速度(Vx,Vy,Vz)の計測値の積分値を算出することで、方位及び傾きを求める。例えば、絶対位置測位部120からドップラーシフトにより計測された速度(Vx,Vy,Vz)の計測値が方位・傾き計測部150に送られ、速度、もしくは方位・傾き計測部150が速度を時間で積分計算することで得られる物体10の位置の相対変位から方位及び傾きを求める。
【0037】
(5)GNSS測位結果の時間的変化により方位及び傾きを求める。例えば、絶対位置測位部120から測位結果が方位・傾き計測部150に送られ、方位・傾き計測部150が位置の時間的変化を計算することで方位及び傾きを求める。
【0038】
(6)移動体1の進行方向、地図上の道路情報から方位を推定する。例えば、方位・傾き計測部150は、絶対位置測位部120から得られた測位結果に基づき進行方向を推定し、データ格納部170から読み出した地図情報における道路情報に基づいて、方位を推定する。例えば
図3に示すように、移動体1(車両)が、図上での道路の左側(左車線)にいることがわかれば、移動体1の方位がわかる。また、3次元の地図情報を用いることで傾きも推定することができる。
【0039】
方位マスク生成部160は、方位・傾き計測部150から受け取った方位と傾きに基づいて、現時点での方位マスクを生成し、それを測位制御部140に渡す。データ格納部170には、予め作成したおいたマスクのデータ(以降、マスクデータ)、地図情報、等が格納されている。
【0040】
出力部180は、測位制御部140から出力された測位解である現在位置を装置外部に出力する。現在位置は(x,y,z)の3次元座標で表されるが、出力される情報は、地理座標系や投影座標系による3次元座標そのものであってもよいし、その他の情報であってもよい。例えば、自動走行車両の制御部への制御信号が出力されてもよいし、地図上に位置を示した画像情報が出力されてもよい。また、出力部180は、絶対時刻に時刻同期した時刻情報を装置外部に出力することができる。時刻情報の出力にはタイミングパルスとタイムコードの組み合わせや、PTP(Precision Time Protocol)等の通信インタフェースが使用される。
【0041】
実施例1(実施例2、3も同様)における位置計測装置100は、物理的にまとまった1つの装置であってもよいし、いくつかの機能部が物理的に分離していて、分離された複数の機能部がネットワークにより接続された装置であってもよい。
【0042】
また、位置計測装置100は、
図2に示す機能を全て含むこととしてもよいし、一部の機能(例えば、絶対位置測位部120における測位・時刻同期処理機能)がネットワーク上(例えばクラウド上)に備えられ、残りの機能が位置計測装置100に搭載されて使用されてもよい。
【0043】
例えば、位置計測装置100に備えられたGNSS搬送波位相測位受信機から観測データ(Raw dataとも呼ばれる)を出力し、当該観測データをクラウド上に設けた搬送波位相測位演算処理機能部に送信することで、搬送波位相測位演算をクラウド上で実施してもよい。この場合、クラウド上の搬送波位相測位演算処理機能部から、測位制御部140へ測位演算結果が返される。
【0044】
<位置計測装置の動作>
次に、実施例1における位置計測装置100の動作について説明する。実施例1では、位置計測装置100が、不可視衛星信号を動的にマスクする方位マスクを生成し、当該方位マスクを用いて不可視衛星信号をマスクして、可視衛星信号のみを使用した測位・時刻同期の処理を実行する。これにより、GNSSによる測位・時刻同期の精度を向上させる。
【0045】
まず、準備として、GNSSアンテナ110の設置位置周辺の物体10の構造物2の形状をスカイプロット上に反映したマスクデータを作成する。
【0046】
マスクデータは、物体10の構造物2の形状(天空上の開空間を遮る領域)を表現できるデータであればどのような形式のデータでもよいが、実施例1では、スカイプロット上で物体10の構造物2の形状を表す(相対方位角、相対仰角)の組み合わせの一連のデータをマスクデータとしている。ここで相対方位角、相対仰角はGNSSアンテナ110を設置する物体10の構造を基準とした相対的な方位角及び仰角である。また、マスクデータは、例えば、GNSSアンテナ110の設置位置(位相中心位置)で撮像した天空画像データから天空上の開空間を遮る領域を画像処理等により識別することで得ることができる。
【0047】
図4~
図7を参照してマスクデータの例を説明する。
図4(a)は、地面(水平面)にビルが建っていて、それを南側から見た側面図である。また、
図4(b)は、当該ビルを上(天頂方向)から見た平面図である。
図4(a)、(b)に示すように、半天球(水平方向360度、仰角0~90度)を撮影可能なカメラが設置され、そのカメラの光軸を天頂方向に向け、天空画像を撮影する。撮影した画像は
図5に示すような画像になる。
【0048】
図4(a)(b)には、ビルの隅の点Aが示されている。
図4(a)に示すように、点Aについての仰角θは、水平面上の基準点(ここではカメラ設置位置)から点Aを見る視線と、水平面とがなす角である。
図4(b)に示すように、方位角φは、基準点から点Aを見る視線を上から見た場合における、基準となる方向(ここでは東)を0度とした場合の、視線までの反時計回りの回転角である。
【0049】
図4(a)に示す実際の仰角θは、
図5に示す天空画像中の点A(画像に映る点A)を通る半径の線上における、円の外周(地平線)から点Aまでの長さに対応する。また、
図4(b)に示す実際の方位角φは、
図5の天空画像上の基準となる方向(ここでは東)を0度とした場合の、上記半径の線上までの反時計回りの回転角である。
【0050】
上記のように、基準点から見た場合の、地平線より上に見える物の形状の全ての点は、仰角と方位角の組で表すことができる。同一の仰角に対応する天空画像上の点は同心円状になるが、その径と天空画像の径の比率は天空画像を撮像する際に使用するレンズの射影方式により異なる。
【0051】
実施例1では、マスクデータにおける上記の基準点はGNSSアンテナ110の位相中心であり、そこにカメラを置いて上半球を撮像した天空画像データからマスクデータを作成する。ただし、
図4、
図5では、水平面及び「東」等、地球を基準とした仰角、方位角を用いているが、実施例1のマスクデータは、物体10を基準とした相対仰角、相対方位角を用いて、構造物2により開空間が遮られる領域を表現する。
【0052】
実施例1のマスクデータでは、例えば、相対仰角の基準となる水平面が、物体10の屋根の部分に固定された平面(実際のものではなく仮想的なもの)であり、相対方位角の基準(方位角0度となる方向)が、物体10の前(車であれば、直進する場合の進行方向)である。
【0053】
図6、
図7を参照してマスクデータの具体例を説明する。
図6に示す例は、物体10に取り付けられたGNSSアンテナ110の位相中心に設置したカメラで天空を撮影して得られた天空画像に相当する図である。
【0054】
図6には、GNSSアンテナ110の設置位置(位相中心)から見た物体10の構造物2の形状として、網掛け部分の形状が示されている。
図6は、物体10に固定された仮想的平面を相対仰角の基準とし、物体10の前を相対方位角の基準とする、構造物2の形状におけるある部分の相対方位角と相対仰角が示されている。すなわち、物体10を基準とする、相対方位角=θxの部分として、点A=(θx、φx3)、点B=(θx、φx2)、点C=(θx、φx1)が示されている。
【0055】
この部分を含む当該形状のマスクデータの例を
図7に示す。
図7は、相対方位角=θxの部分において、相対仰角=0~φx1の部分が遮蔽領域(構造物2により視界が遮られる領域)であり、相対仰角=φx1~φx2の部分が開空間(構造物2により視界が遮られない領域)であり、相対仰角=φx2~φx3の部分が遮蔽領域であることを示している。
【0056】
このような相対仰角φによる遮蔽領域/開空間の表現を、例えばθ=0からθ=Δθ、θ=2Δθ....(例:Δθ=1度)のように、Δθ毎に行うことで、天空全体の遮蔽領域/開空間を表現することができる。
【0057】
実施例1では、マスクデータにおける、物体10を基準とした(相対方位角、相対仰角)を、地球を基準とした物体10の方位及び傾きから、地球を基準とした(方位角、仰角)に変換することで、物体10の現時点の方位及び傾きに対応した(方位角、仰角)を有する方位マスクを生成する。
【0058】
図8のフローチャートの手順に沿って、位置計測装置100の動作例を説明する。
【0059】
S101において、方位・傾き計測部150が、物体10の方位と傾きを計測する。S102において、方位マスク生成部160は、S101で計測した方位と傾きを用いて、データ格納部170に格納されているマスクデータを校正することで、現在時刻(現時点)での方位マスクを生成する。
【0060】
例えば、相対仰角の基準となる平面が水平面であったとして、物体10の傾きが0度(水平面から変化なし)であり、物体10の方位(物体10が前方に進む向き)が北から反時計回りの方位角=θyであるとすると、
図9に示すように、点A、点B、点Cの方位マスクにおける(方位角、仰角)は、それぞれ、点A=(θx+θy、φx3)、点B=(θx+θy、φx2)、点C=(θx+θy、φx1)となる。つまり、この場合、
図7に示したマスクデータにおける、θxをθx+θyにしたものが、方位マスクのデータとなる。
【0061】
次に、物体10が坂道を上る状況を想定する。物体10の方位が上記と同じくθyであり、物体10の傾き(物体10の前が後よりも高くなる傾き)がφzであるとする。このとき、
図10に示すように、点A、点B、点Cの方位マスクにおける(方位角、仰角)は、それぞれ、点A=(θx+θy、φx3+φz)、点B=(θx+θy、φx2+φz)、点C=(θx+θy、φx1+φz)となる。なお、便宜上、仰角を、マスクデータの相対仰角にφzを加えた角度としている。なお、方位・傾き計測部150により、3軸の傾きが正確にわかるので、方位マスク生成部160は、正確な(方位角、仰角)を計算できる。
【0062】
S103において、測位制御部140は、絶対位置測位部120及び相対位置測位部130の出力から得られた物体10の位置、S103で生成した方位マスク、及び各GNSS衛星信号の軌道データに基づき、物体10の位置から見える、天球上の衛星の位置(方位、仰角)と方位マスクのデータに基づき、受信した衛星信号から不可視衛星信号をフィルタリングして可視衛星信号を抽出し、当該可視衛星信号を測位・時刻同期に使用する衛星信号として選択する。ここで、例えば、GPS衛星の場合は地上約2万km上空の軌道上を周回するため、物体10の位置誤差が衛星位置(方位、仰角)の推定誤差に与える影響は極めて小さい。従って、この場合に使用する物体10の位置の精度はコード測位により得られる精度で十分である。
【0063】
例えば、(方位角、仰角)=(θ1、φ1)、(θ2、φ2)、(θ3、φ3)、(θ4、φ4)の4点で囲む四角形の領域が、ある時刻における構造物2により天空を遮る領域を示すとする。このとき、この時刻に、GNSSアンテナ110の位相中心から見て((θ1+θ2+θ3+θ4)/4、(φ1+φ2+φ3+φ4)/4)で表される方向にGNSS衛星Sがあるとする。この場合、((θ1+θ2+θ3+θ4)/4、(φ1+φ2+φ3+φ4)/4)は、上記四角形の中の点なので、GNSS衛星Sから送信された衛星信号は、構造部2により遮られることがわかる。
【0064】
このようにして、方位マスクを使用することで、ある時刻、ある受信位置においてどの衛星からの信号が可視衛星信号として受信されるかを判定することができる。
【0065】
なお、GNSS衛星の軌道データは、GNSS衛星信号の航法メッセージデータ(アルマナック、エフェメリス)から取得することとしてもよいし、A-GNSS(Assisted GNSS)によりモバイル通信網経由でSUPL(Secure User Plane Location)サーバから取得することとしてもよいし、インターネット上のサイトから取得することとしてもよい。いずれにしても、GNSS衛星の軌道データがあれば、物体10の現在位置から見たその時刻のGNSS衛星の天空上の位置(方位角、仰角)を算出することができる。
【0066】
測位制御部140は、選択した可視衛星信号の識別情報(コード)を絶対位置測位部120に通知する。
【0067】
S104において、絶対位置測位部120は、測位制御部140から通知された可視衛星信号を使用して測位及び時刻同期の処理を実行する。S105において、出力部180から、測位結果である位置情報、及び、高精度に絶対時刻に同期した時刻情報を出力する。
【0068】
なお、S103において、方位マスクで可視衛星信号であると判断された衛星信号の受信品質(CNR(Carrier-to-Noise Ratio)又はSNR(Signal-to-Noise Ratio))を確認してもよい。例えば、受信品質の閾値を設け、絶対位置測位部120により測定された受信品質が閾値以下であれば、方位マスクで可視衛星信号であると判断された衛星信号であっても、不可視衛星信号であると見なして、S104で測位・時刻同期に使用する衛星信号から除外してもよい。
【0069】
実施例1により、GNSSアンテナ110の設置位置の周囲に存在する構造物等により衛星信号が遮られる場合でも、精度良く測位及び時刻同期を行うことができる。
【0070】
(実施例2)
実施例2では、実施例1と異なる点を説明する。実施例1では、物体10の一部である構造物2に対応する方位マスクを生成し、当該方位マスクを使用して可視衛星信号を選択することとしている。方位マスクはこのような例に限らずに適用可能である。
【0071】
物体10として、GNSSアンテナ110を持つ位置計測装置100を搭載し、自己位置を推定しながら自動で走行して草刈を行う草刈ロボット10の例を説明する。草刈ロボット10が斜面を走行する際に斜面により衛星信号が遮られ、測位・時刻同期の性能が劣化する場合がある。
【0072】
そこで、実施例2では、方位・傾き計測部150が、草刈ロボット10の傾きを検出すると、方位マスク生成部160は、当該傾きを仰角とする方位マスクを生成する。
【0073】
例えば、
図11に示すように、北を基準として方位角=θyの方向で傾斜が最大になる坂の上で草刈ロボット10が走行しながら草刈り作業を行っているとする。また、その最大の傾斜は、
図12に示すようにφgであるとする。
【0074】
この場合、方位・傾き計測部150が、方位角=θyの方向の傾斜がφgであることを検出すると、方位マスク生成部160は、例えば、
図13に示すように、方位θyにおける水平面(仰角=0度)からの仰角がφgである、θyを中心とする180度の幅を持つ方位マスクを生成する。
【0075】
測位制御部140は、当該方位マスクでマスクされる不可視衛星信号を除いた可視衛星信号を選択し、選択した可視衛星信号の情報を絶対位置測位部120に通知する。絶対位置測位部120は、測位制御部140により選択された可視衛星信号を用いて測位及び時刻同期の処理を行う。
【0076】
図12に示すように、草刈ロボット10の上方に斜面が続いている場合には、方位マスクの方位にある衛星信号は実際に斜面により遮られる。
【0077】
一方、
図14に示すように、草刈ロボット10が斜面の上方に位置する場合、草刈ロボット10は傾いているが、斜面により衛星信号は遮られない。
【0078】
このような場合を考慮して、実施例2では、方位マスクで不可視衛星信号であると判断された衛星信号の受信品質(CNR又はSNR)を確認する。例えば、受信品質の閾値を設け、絶対位置測位部120により測定された受信品質が閾値以上であれば、方位マスクで不可視衛星信号であると判断された衛星信号であっても、可視衛星信号であると見なして、測位・時刻同期に使用する。これは、方位マスクを設定しないことに相当する。
【0079】
なお、
図14に示すように斜面により開空間が制限されない場合でも、傾きに相当する仰角以下の衛星信号の受信品質が劣化する場合があるが、それは、例えば、GNSSアンテナ110が鉛直方向の指向性を有している場合である。このときに使用される方位マスクは、斜面による物体10の傾きによりGNSSアンテナ110の受信品質の劣化が生じる領域を示す方位マスクに相当する。
【0080】
一方、全方位に指向性を持つGNSSアンテナ110を使用する場合には、
図14に示すように斜面により開空間が制限されないため、傾きに相当する仰角以下の衛星信号の受信品質が劣化しない。
【0081】
なお、実施例1と実施例2を組み合わせてもよい。この場合、方位マスク生成部160は、物体10に付随する構造物2に基づく方位マスクAと、斜面に基づく方位マスクBとを生成し、方位マスクAと方位マスクBの論理和(=方位マスクAと方位マスクBの重複部分の領域+方位マスクBになく方位マスクAのみにある領域+方位マスクAになく方位マスクBのみにある領域)を方位マスクとして出力する。
【0082】
実施例2によれば、斜面により衛星信号が遮られる、又は、受信品質が劣化する場合でも、精度良く測位・時刻同期を行うことができる。
【0083】
(実施例3)
次に、実施例3を説明する。実施例3は、実施例1、2のいずれにも組み合わせて適用可能である。以下、実施例1、2と異なる点について主に説明する。
【0084】
これまでに説明した実施例1、2により、物体10の方位や傾きが変化した場合でも精度良くGNSSによる測位及び時刻同期を行うことができきる。
【0085】
ただし、測位で得られる絶対位置は、GNSSアンテナ110の位相中心の位置である。そのため、例えば、物体10に設置されたGNSSアンテナ110と、物体10のある部位とが離れている場合において、測位結果だけでは、その部位の絶対位置を正確に知ることができない場合があるという課題がある。例えば、物体10が傾いた場合に、その部位の絶対位置を把握できなくなる。
【0086】
当該部位とは、例えば、物体10に取り付けられた地中探査のプローブである。地中探査のプローブの位置がわからなければ、どこの地表位置の地中を探査しているのかわからない。よって、地中探査のプローブの位置を正確に知る必要がある。当該部位は、地中探査のプローブ等のセンシングデバイスの他、カメラ(の画素)、建機・重機・ロボットのアーム等であってもよい。
【0087】
そこで、実施例3では、GNSSアンテナ110の位相中心と物体10の部位(位置を知る対象の部位)との相対的な位置関係を予め保持しておき、当該位置関係と、物体10の方位・傾きの計測結果と、物体10の絶対位置の測位結果とに基づいて、当該部位の絶対位置を算出することとしている。
【0088】
図15に、実施例3における、物体10に搭載される位置計測装置100の構成を示す。
図15に示すように、実施例3の位置計測装置100は、GNSSアンテナ110、絶対位置測位部120、相対位置測位部130、測位制御部140、方位・傾き計測部150、方位マスク生成部160、データ格納部170、出力部180、部位位置算出部190を有する。
【0089】
図15に示すとおり、実施例3の位置計測装置100は、実施例1(及び実施例2)の位置計測装置100に、部位位置算出部190が追加された構成を備える。部位位置算出部190以外の機能部の動作は、実施例1(及び実施例2)での動作と同じである。
【0090】
実施例3において、物体10が、
図16に示す形状の物体であるとする。すなわち、
図16に示すとおり、物体10は、移動体1の上部にGNSSアンテナ110が固定された構造を有し、位置を知る対象の部位15が存在する。また、位置計測装置100が備えられている。なお、
図16は、物体10が水平面上に置かれた場合を示している。
【0091】
実施例3におけるデータ格納部170には、GNSSアンテナ110の位相中心と物体10の部位15との相対的な位置関係を示す情報が格納されておる。
図16に示す物体10の場合、当該位置関係として、「物体10の底面(地面と平行になる平面)に垂直な直線上に、GNSSアンテナ110の位相中心と部位15があり、GNSSアンテナ110の位相中心と部位15との間の距離がLである」ということを示す情報がデータ格納部170に格納されている。
【0092】
この場合、例えば、
図16に示すように、絶対位置測位部120による測位結果(つまり、GNSSアンテナ110の位置)が(X,Y,Z)であり、方位・傾き計測部150による計測結果における傾きの計測結果が0度(物体10は水平面上にあること)であるとすると、部位位置算出部190は、部位15の位置として、(X,Y,Z-L)を算出する。算出結果は出力部180から出力され、例えば、部位15(センサ等)に入力される。
【0093】
また、例えば、
図17に示すように、絶対位置測位部120による測位結果(つまり、GNSSアンテナ110の位置)が(X,Y,Z)であり、方位・傾き計測部150による計測結果における傾きの計測結果がθ度(物体10が傾きθの斜面上にあること)であるとすると、部位位置算出部190は、部位15の位置として、(X-Lsinθ,Y,Z-Lcosθ)を算出する。算出結果は出力部180から出力され、例えば、部位15(センサ等)に入力される。
【0094】
なお、
図17は、斜面がX方向に傾いた場合の例を示しているが、任意の方向の傾きにおいて、同様に部位15の絶対位置を算出可能である。
【0095】
実施例3によれば、物体10の任意の部位の絶対位置を正確に算出することが可能となる。
【0096】
(ハードウェア構成例)
図18は、本発明の実施の形態における位置計測装置100として使用することができるコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
図18のコンピュータは、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置1000、補助記憶装置1002、メモリ装置1003、CPU1004、インタフェース装置1005、表示装置1006、入力装置1007、及び出力装置1008等を有する。
【0097】
なお、位置計測装置100の機能を
図18のようなコンピュータで実現する場合において、当該コンピュータは、測位制御部140、方位マスク生成部160、データ格納部170、及び出力部180の処理を実行するものであり、その他の機能部(GNSSアンテナ110、絶対位置測位部120、相対位置測位部130、方位・傾き計測部150)は、当該コンピュータの外側にある機能部であってもよい。また、実施例3の動作を行う場合、当該コンピュータが、部位位置算出部190の処理を行ってもよい。
【0098】
当該コンピュータでの処理を実現するプログラムは、例えば、CD-ROM又はメモリカード等の記録媒体1001によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体1001がドライブ装置1000にセットされると、プログラムが記録媒体1001からドライブ装置1000を介して補助記憶装置1002にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体1001より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置1002は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0099】
メモリ装置1003は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置1002からプログラムを読み出して格納する。CPU1004は、メモリ装置1003に格納されたプログラムに従って、測位制御部140、方位マスク生成部160、データ格納部170、及び出力部180に係る機能を実現する。インタフェース装置1005は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。表示装置1006はプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置1007はキーボード及びマウス、ボタン、又はタッチパネル等で構成され、様々な操作指示を入力させるために用いられる。出力装置1008は演算結果を出力する。
【0100】
(実施の形態の効果)
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、GNSSアンテナの設置位置の周囲に存在する構造物等により衛星信号が遮られる場合でも、精度良く測位及び時刻同期を行うことが可能となる。
【0101】
(実施の形態のまとめ)
本実施の形態において、少なくとも、下記の各項に記載された計測装置、計測方法、及びプログラムが提供される。
(第1項)
GNSSアンテナが備えられた物体の方位及び傾きを計測する方位・傾き計測部と、
前記物体の方位及び傾きに応じて、天空の開空間の領域のうち、前記GNSSアンテナから見て、遮られる領域を示す方位マスクを生成する方位マスク生成部と、
前記方位マスクを用いて可視衛星信号を選択し、当該可視衛星信号を用いた測位又は時刻同期を絶対位置測位部に実行させる測位制御部と
を備える計測装置。
(第2項)
前記方位マスク生成部は、前記物体に備えられた構造物により遮られる領域を示す方位マスクを生成する
第1項に記載の計測装置。
(第3項)
前記方位マスク生成部は、前記構造物により遮られる領域を、前記物体を基準として相対的に表したデータであるマスクデータと、前記物体の方位及び傾きとに基づいて前記方位マスクを生成する
第2項に記載の計測装置。
(第4項)
前記方位マスク生成部は、前記物体が位置する斜面により遮られる領域を示す方位マスク、又は、当該斜面による前記物体の傾きにより前記GNSSアンテナの受信品質の劣化が生じる領域を示す方位マスクを生成する
第1項ないし第3項のうちいずれか1項に記載の計測装置。
(第5項)
前記物体における部位の絶対位置を、当該部位と前記GNSSアンテナとの間の相対的な位置関係と、前記絶対位置測位部による測位結果とに基づいて算出する部位位置算出部
を更に備える第1項ないし第4項のうちいずれか1項に記載の計測装置。
(第6項)
計測装置が実行する計測方法であって、
GNSSアンテナが備えられた物体の方位及び傾きを計測する方位・傾き計測ステップと、
前記物体の方位及び傾きに応じて、天空の開空間の領域のうち、前記GNSSアンテナから見て、遮られる領域を示す方位マスクを生成する方位マスク生成ステップと、
前記方位マスクを用いて可視衛星信号を選択し、当該可視衛星信号を用いた測位又は時刻同期を絶対位置測位部に実行させる測位制御ステップと
を備える計測方法。
(第7項)
コンピュータを、第1項ないし第5項のうちいずれか1項に記載の計測装置における方位マスク生成部、及び測位制御部として機能させるためのプログラム。
【0102】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 移動体
2 構造物
10 物体
15 部位
100 位置計測装置
110 GNSSアンテナ
120 絶対位置測位部
130 相対位置測位部
140 測位制御部
150 方位・傾き計測部
160 方位マスク生成部
170 データ格納部
180 出力部
190 部位位置算出部
1000 ドライブ装置
1001 記録媒体
1002 補助記憶装置
1003 メモリ装置
1004 CPU
1005 インタフェース装置
1006 表示装置
1007 入力装置
1008 出力装置