IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧

特許7392869酸化亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子の製造方法及び樹脂組成物
<>
  • 特許-酸化亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子の製造方法及び樹脂組成物 図1
  • 特許-酸化亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子の製造方法及び樹脂組成物 図2
  • 特許-酸化亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子の製造方法及び樹脂組成物 図3
  • 特許-酸化亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子の製造方法及び樹脂組成物 図4
  • 特許-酸化亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子の製造方法及び樹脂組成物 図5
  • 特許-酸化亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子の製造方法及び樹脂組成物 図6
  • 特許-酸化亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子の製造方法及び樹脂組成物 図7
  • 特許-酸化亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子の製造方法及び樹脂組成物 図8
  • 特許-酸化亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子の製造方法及び樹脂組成物 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】酸化亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子の製造方法及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C01G 9/02 20060101AFI20231129BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20231129BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C01G9/02 B
C01G9/02 A
C08L101/00
C08K3/22
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022554001
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2021035599
(87)【国際公開番号】W WO2022071303
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2020167633
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】袁 建軍
(72)【発明者】
【氏名】兼松 孝之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 暁雄
(72)【発明者】
【氏名】飯田 正紀
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-073419(JP,A)
【文献】特開2018-131422(JP,A)
【文献】特開平04-042505(JP,A)
【文献】特開平04-367829(JP,A)
【文献】特開2017-145155(JP,A)
【文献】国際公開第2012/147886(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/207679(WO,A1)
【文献】ABDULLAH, Aljaafari et al.,Influence of Fine Crystal Percentage on the Electrical Properties of ZnO Ceramic-Based Varistors,crystals,2020年08月06日,10, 681,1-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 9/02
C08L 101/00
C08K 3/22
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多面体形状の酸化亜鉛粒子であって、
前記酸化亜鉛粒子のBET法で測定される比表面積は0.01~10.0m/gであり、
前記酸化亜鉛粒子の[100]面の結晶子径が200nm以上であ
前記酸化亜鉛粒子の、レーザー回折・散乱法により算出される10%径D 10 、メディアン径D 50 、及び90%径D 90 から、次式(1)により求められる分散指数Sが、2.0以下である、酸化亜鉛粒子。
S=(D 90 -D 10 )/D 50 ・・・(1)
【請求項2】
前記酸化亜鉛粒子の[101]面の結晶子径が250nm以上である、請求項1に記載の酸化亜鉛粒子。
【請求項3】
前記酸化亜鉛粒子の、レーザー回折・散乱法により算出されるメディアン径D50が0.1~100μmである、請求項1又は2に記載の酸化亜鉛粒子。
【請求項4】
請求項1に記載の酸化亜鉛粒子の製造方法であって、
モリブデン化合物の存在下で、亜鉛化合物を焼成することを含む、酸化亜鉛粒子の製造方法。
【請求項5】
亜鉛化合物と、モリブデン酸塩化合物と、を混合して混合物とし、前記混合物を焼成することを含む、請求項に記載の酸化亜鉛粒子の製造方法。
【請求項6】
前記モリブデン酸塩化合物が、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸カリウム又はモリブデン酸ナトリウムである、請求項に記載の酸化亜鉛粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の酸化亜鉛粒子と、樹脂と、を含有する樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂が熱可塑性樹脂である、請求項に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子の製造方法及び樹脂組成物に関する。
本願は、2020年10月2日に日本に出願された、特願2020-167633号に基づき優先権主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、機器の小型軽量化、高性能化が求められ、これに伴い半導体デバイスの高集積化、大容量化が進んでいる。このため、機器の構成部材に生じる発熱量が増大しており、機器の放熱機能の向上が求められている。機器の放熱機能を向上させる方法としては、例えば、絶縁部材に熱伝導性を付与する方法、より具体的には、絶縁部材となる樹脂に高い熱伝導性を有する放熱フィラーを添加する方法が知られている。この際、使用される放熱フィラーとしては、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭酸マグネシウム等の粒子が挙げられる。
【0003】
酸化アルミニウム粒子及び酸化マグネシウム粒子は、最も普及している放熱フィラーである。しかし、酸化アルミニウム粒子は硬度が高いため(モース硬度:9)、混合機及び成形機の金属を摩耗させてしまうおそれがある。一方、酸化マグネシウムの硬度は高くないものの(モース硬度:6)、耐水性に問題があり、広い応用には難しい。そこで、酸化アルミニウム粒子及び酸化マグネシウム粒子よりも高い熱伝導率を有しつつ、相手金属材を摩耗させるおそれを低減でき、耐水性に優れるフィラーが求められている。
【0004】
一方、酸化亜鉛微粒子は、幅広い用途を有し、例えば、ゴム用加硫促進剤、印刷インキ、塗料、触媒、顔料などに用いられている。また、近年、酸化亜鉛の高い熱伝導率を生かして、放熱フィラーとしても期待されている。酸化亜鉛のモース硬度は4~5であり、酸化アルミニウムよりも柔らかい。
【0005】
例えば、特許文献1には、酢酸亜鉛化合物とメタノールの混合物を加熱することで、結晶子の異方性が特に大きな酸化亜鉛微粒子が析出することが開示されている。
【0006】
特許文献2には、亜鉛蒸気を酸素含有プラズマ領域に導入することで、酸化亜鉛ナノ粒子が生成することが開示されている。
【0007】
特許文献3には、亜鉛化合物を焼成することで、超微粒子酸化亜鉛が生成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-034529号公報
【文献】特開2005-213067号公報
【文献】特開2007-297260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1~3に開示された酸化亜鉛粒子の平均粒径は、いずれも、100nm以下であり、結晶子径も100nm以下であり、優れた結晶性、優れた熱伝導性が期待できるものではなかった。
【0010】
そこで、本発明は、従来の酸化亜鉛粒子よりも、結晶子径が大きく、熱伝導性に優れる酸化亜鉛粒子、及びその製造方法、並びに、樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の態様を包含するものである。
[1] 多面体形状の酸化亜鉛粒子であって、
前記酸化亜鉛粒子の[100]面の結晶子径が200nm以上である、酸化亜鉛粒子。[2] 前記酸化亜鉛粒子の[101]面の結晶子径が250nm以上である、前記[1]に記載の酸化亜鉛粒子。
[3] 前記酸化亜鉛粒子の、レーザー回折・散乱法により算出されるメディアン径D50が0.1~100μmである、前記[1]又は[2]に記載の酸化亜鉛粒子。
[4] 前記酸化亜鉛粒子の、レーザー回折・散乱法により算出される10%径D10、メディアン径D50、及び90%径D90から、次式(1)により求められる分散指数Sが、2.0以下である、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の酸化亜鉛粒子。
S=(D90-D10)/D50 ・・・(1)
[5] 前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の酸化亜鉛粒子の製造方法であって、 モリブデン化合物の存在下で、亜鉛化合物を焼成することを含む、酸化亜鉛粒子の製造方法。
[6] 亜鉛化合物と、モリブデン酸塩化合物と、を混合して混合物とし、前記混合物を焼成することを含む、前記[5]に記載の酸化亜鉛粒子の製造方法。
[7] 前記モリブデン酸塩化合物が、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸カリウム又はモリブデン酸ナトリウムである、前記[6]に記載の酸化亜鉛粒子の製造方法。
[8] 前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の酸化亜鉛粒子と、樹脂と、を含有する樹脂組成物。
[9] 前記樹脂が熱可塑性樹脂である、前記[8]に記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、従来の酸化亜鉛粒子よりも、結晶子径が大きく、熱伝導性に優れる酸化亜鉛粒子、及びその製造方法、並びに、樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の酸化亜鉛粒子のSEM写真である。
図2】実施例2の酸化亜鉛粒子のSEM写真である。
図3】実施例3の酸化亜鉛粒子のSEM写真である。
図4】実施例4の酸化亜鉛粒子のSEM写真である。
図5】実施例5の酸化亜鉛粒子のSEM写真である。
図6】実施例6の酸化亜鉛粒子のSEM写真である。
図7】比較例1の酸化亜鉛粒子のSEM写真である。
図8】比較例2の酸化亜鉛粒子のSEM写真である。
図9】実施例1の酸化亜鉛粒子のX線回折(XRD)パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<酸化亜鉛粒子>
本実施形態の酸化亜鉛粒子は、多面体形状の酸化亜鉛粒子であって、前記酸化亜鉛粒子の[100]面の結晶子径が200nm以上である。
本明細書において、酸化亜鉛粒子の[100]面の結晶子径とは、X線回折法(XRD法)を用いて測定された[100]面に帰属されるピーク(すなわち、2θ=31.8°付近に出現するピーク)の半値幅からシェラー式を用いて算出された結晶子径の値を採用するものとする。
【0015】
本実施形態の酸化亜鉛粒子の[100]面の結晶子径は200nm以上であり、好ましくは220nm以上であり、より好ましくは240nm以上であり、さらに好ましくは260nm以上である。本実施形態の酸化亜鉛粒子の[100]面の結晶子径は600nm以下であってもよく、500nm以下であってもよく、400nm以下であってもよく、340nm以下であってもよい。本実施形態の酸化亜鉛粒子の[100]面の結晶子径は200nm以上600nm以下であってもよく、好ましくは220nm以上500nm以下であり、より好ましくは240nm以上400nm以下であり、さらに好ましくは260nm以上340nm以下である。
【0016】
本実施形態の酸化亜鉛粒子は多面体形状である。多面体形状を有することにより、本実施形態の酸化亜鉛粒子を樹脂コンパウンドの添加剤として用いたとき、樹脂コンパウンド中に粒子同士の面接触が可能となるので、樹脂コンパウンドの熱伝導率の向上効果に優れる。なお、本明細書において、「多面体形状」とは、6面体以上、好ましくは8面体以上、より好ましくは10~30面体であることを意味する。また、本実施形態の酸化亜鉛粒子は、下記のフラックス法により形成した多面体形状を有することから、単結晶構造を形成する。単結晶構造はフォノンの散乱が抑制され、熱伝導性を向上させる。
【0017】
本実施形態の酸化亜鉛粒子は多面体形状であり、前記酸化亜鉛粒子の一次粒子において、最も大きな平坦面の面積は多面体粒子の面積の4分の1以下、好ましくは5分の1以下、より好ましくは6分の1以下、さらに好ましくは8分の1以下である。最も大きな平坦面の面積は多面体粒子の面積の4分の1以下であると、形状は実質上に球に近い多面体であり、樹脂充填しやすくなり、樹脂コンパウンドの熱伝導率の向上に有利である。上記「最も大きな平坦面の面積」および「多面体粒子の面積」はSEM写真から見積もることができる。
【0018】
本実施形態の酸化亜鉛粒子は、[100]面の結晶子径が大きく、結晶性が高いので、熱伝導性に優れる。
【0019】
本実施形態の酸化亜鉛粒子は、[101]面の結晶子径が250nm以上であることが好ましく、260nm以上であることがより好ましく、270nm以上であることがさらに好ましい。本実施形態の酸化亜鉛粒子は、[101]面の結晶子径が500nm以下であってもよく、400nm以下であってもよく、320nm以下であってもよい。本実施形態の酸化亜鉛粒子は、[101]面の結晶子径が250nm以上500nm以下であることが好ましく、260nm以上400nm以下であることがより好ましく、270nm以上320nm以下であることがさらに好ましい。
本明細書において、酸化亜鉛粒子の[101]面の結晶子径とは、X線回折法(XRD法)を用いて測定された[101]面に帰属されるピーク(すなわち、2θ=36.3°付近に出現するピーク)の半値幅からシェラー式を用いて算出された結晶子径の値を採用するものとする。
【0020】
本実施形態の酸化亜鉛粒子は、[100]面の結晶子径が200nm以上であり、かつ、[101]面の結晶子径が250nm以上であることで、結晶性が高く、熱伝導性により優れるものとすることができる。
【0021】
本実施形態の酸化亜鉛粒子の、レーザー回折・散乱法により算出されるメディアン径D50は、0.1~100μmであることが好ましく、0.5~100μmであることが好ましく、1.0~60μmであることがより好ましく、2.0~40μmであることがさらに好ましい。
【0022】
本実施形態の酸化亜鉛粒子の、レーザー回折・散乱法により算出される10%径D10、メディアン径D50、及び90%径D90から、次式(1)により求められる分散指数Sは、2.0以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましく、1.6以下であることがさらに好ましい。
S=(D90-D10)/D50 ・・・(1)
【0023】
前記10%径D10、前記メディアン径D50、及び前記90%径D90は、レーザー回折・散乱法により算出される。具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置、例えば、レーザー回折式粒度分布計HELOS(H3355)&RODOS、R3:0.5/0.9-175μm(株式会社日本レーザー製)を用い、分散圧3bar、引圧90mbarの条件で、乾式で粒子径分布を測定し、10%径D10、メディアン径D50、及び90%径D90を求めることができる。
【0024】
本実施形態の酸化亜鉛粒子は、分散指数Sが2.0以下であることで、樹脂コンパウンドの添加剤として用いたとき樹脂充填設計し易い。また、分散指数Sが2.0以下である酸化亜鉛粒子は、[100]面及び[101]面の結晶子径が大きい傾向にあり、酸化亜鉛粒子の結晶性が高く、樹脂コンパウンドの熱伝導率の向上効果に優れる。
【0025】
本実施形態の酸化亜鉛粒子は、モリブデンを含んでいてもよい。
XRF分析により求められるモリブデン量は、酸化亜鉛粒子100質量%に対して、0~5.0質量%であることが好ましく、0~3.0質量%であることがより好ましく、0~1.0質量%であることがさらに好ましい。
【0026】
本実施形態の酸化亜鉛粒子は、さらに、リチウム、カリウム又はナトリウムを含んでいてもよい。
【0027】
酸化亜鉛粒子の一次粒子の平均粒径は、0.1~100.0μmであってもよく、0.2~50.0μmであってもよく、0.5~20.0μmであってもよい。
【0028】
酸化亜鉛粒子の一次粒子の平均粒径とは、酸化亜鉛粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、二次元画像上の凝集体を構成する最小単位の粒子(すなわち、一次粒子)について、その長径(観察される最も長い部分のフェレ径)と短径(その最も長い部分のフェレ径に対して、垂直な向きの短いフェレ径)を計測し、その平均値を一次粒子径としたとき、ランダムに選ばれた50個の一次粒子の一次粒子径の平均値を云う。
【0029】
酸化亜鉛粒子のBET法で測定される比表面積は0.01~10.0m/gであってもよく、0.02~5.0m/gであってもよく、0.05~2.0m/gであってもよい。
【0030】
<酸化亜鉛粒子の製造方法>
本実施形態の製造方法は、前記酸化亜鉛粒子の製造方法であって、モリブデン化合物の存在下で、亜鉛化合物を焼成することを含む。
【0031】
本実施形態の酸化亜鉛粒子の製造方法は、モリブデン化合物の存在下で、亜鉛化合物を焼成することで、酸化亜鉛粒子の[100]面の結晶子径を大きくすることができ、酸化亜鉛粒子を多面体形状にすることができる。
【0032】
酸化亜鉛粒子の好ましい製造方法は、亜鉛化合物と、モリブデン化合物と、を混合して混合物とする工程(混合工程)と、前記混合物を焼成する工程(焼成工程)を含む。
【0033】
酸化亜鉛粒子のより好ましい製造方法は、前記モリブデン化合物がモリブデン酸塩化合物であって、亜鉛化合物と、モリブデン酸塩化合物と、を混合して混合物とする工程(混合工程)と、前記混合物を焼成する工程(焼成工程)を含む。
【0034】
[混合工程]
混合工程は、亜鉛化合物と、モリブデン化合物と、を混合して混合物とする工程である。混合工程は、亜鉛化合物と、モリブデン酸塩化合物と、を混合して混合物とする工程でることが好ましい。以下、混合物の内容について説明する。
【0035】
(亜鉛化合物)
前記亜鉛化合物としては、焼成して酸化亜鉛となり得る化合物であれば限定されない。前記亜鉛化合物として、酸化亜鉛、酢酸亜鉛、水酸化亜鉛等が挙げられる。前記亜鉛化合物として、酸化亜鉛が好ましい。
【0036】
(モリブデン化合物)
前記モリブデン化合物としては、酸化モリブデン、モリブデン酸塩化合物等が挙げられる。
【0037】
前記酸化モリブデンとしては、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン等が挙げられ、三酸化モリブデンが好ましい。
【0038】
前記モリブデン酸塩化合物は、MoO 2-、Mo 2-、Mo10 2-、Mo13 2-、Mo16 2-、Mo19 2-、Mo24 6-、Mo26 4-等のモリブデンオキソアニオンの塩化合物であれば限定されない。モリブデンオキソアニオンのアルカリ金属塩すなわち、モリブデン酸アルカリ金属塩であってもよく、モリブデン酸アルカリ土類金属塩であってもよく、モリブデン酸アンモニウム塩であってもよい。
【0039】
モリブデン酸アルカリ金属塩としては、KMoO、KMo、KMo10、KMo13、KMo16、KMo19、KMo24、KMo26等のモリブデン酸カリウム塩;NaMoO 2-、NaMo 2-、NaMo10 2-、NaMo13 2-、NaMo16 2-、NaMo19 2-、NaMo24 6-、NaMo26 4-等のモリブデン酸ナトリウム塩;LiMoO、LiMo、LiMo10、LiMo13、LiMo16、LiMo19、LiMo24、LiMo26等のモリブデン酸リチウム塩;が挙げられる。
【0040】
前記モリブデン酸塩化合物としては、モリブデン酸アルカリ金属塩が好ましく、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸カリウム又はモリブデン酸ナトリウムであることがより好ましい。
【0041】
モリブデン酸アルカリ金属塩は、焼成温度域でも気化することなく、焼成後に洗浄で、容易に回収できるため、モリブデン化合物が焼成炉外へ放出される量も低減され、生産コストとしても大幅に低減することができる。
【0042】
本実施形態の酸化亜鉛粒子の製造方法において、前記モリブデン酸塩化合物がアルカリ金属塩であるとき、亜鉛化合物と、モリブデン酸アルカリ金属塩との混合物の焼成条件下には、モリブデン化合物及びアルカリ金属化合物が存在するとみなすことができる。モリブデン化合物(例えば酸化モリブデンなど)とアルカリ金属化合物(例えばアルカリ金属炭酸塩、水酸化アルカリ、アルカリ金属硝酸塩または、アルカリ金属酸化物など)と反応して、モリブデン酸アルカリ金属塩を形成する。モリブデン酸アルカリ金属塩は、フラックス剤及び形状制御剤の両方の役割を果たす。
【0043】
本実施形態の酸化亜鉛粒子の製造方法において、前記モリブデン酸塩化合物は、水和物であってもよい。
【0044】
本実施形態の酸化亜鉛粒子の製造方法において、モリブデン化合物はフラックス剤として用いられる。本明細書中では、以下、フラックス剤としてモリブデン化合物を用いたこの製造方法を単に「フラックス法」ということがある。
【0045】
かかる焼成により、モリブデン化合物が亜鉛化合物と相互作用し、モリブデン化合物のフラックスの作用で多面体形状の酸化亜鉛粒子を形成すると考えられる。
【0046】
本実施形態の酸化亜鉛粒子の製造方法において、亜鉛化合物、及び、モリブデン酸塩化合物の配合量は、特に限定されるものではないが、好ましくは、前記混合物100質量%に対して、35質量%以上の亜鉛化合物と、65質量%以下のモリブデン酸塩化合物と、を混合して混合物とし、前記混合物を焼成することができる。より好ましくは、酸化亜鉛粒子100質量%に対して、40質量%以上99質量%以下の亜鉛化合物と、0.5質量%以上60質量%以下のモリブデン酸塩化合物と、を混合して混合物とし、前記混合物を焼成することができる。さらに好ましくは、酸化亜鉛粒子100質量%に対して、45質量%以上95質量%以下の亜鉛化合物と、2質量%以上55質量%以下のモリブデン酸塩化合物と、を混合して混合物とし、前記混合物を焼成することができる。
【0047】
上記の範囲で各種化合物を使用することで、得られる酸化亜鉛粒子の多面体形状が良好に形成され、[100]面の結晶子径が200nm以上である酸化亜鉛粒子を製造することができる。
【0048】
[焼成工程]
焼成工程は、前記混合物を焼成する工程である。実施形態に係る酸化亜鉛粒子は、前記混合物を焼成することで得られる。上記した通り、この製造方法はフラックス法と呼ばれる。
【0049】
フラックス法は、溶液法に分類される。フラックス法とは、より詳細には、結晶-フラックス2成分系状態図が共晶型を示すことを利用した結晶成長の方法である。フラックス法のメカニズムとしては、以下の通りであると推測される。すなわち、溶質およびフラックスの混合物を加熱していくと、溶質およびフラックスは液相となる。この際、フラックスは融剤であるため、換言すれば、溶質-フラックス2成分系状態図が共晶型を示すため、溶質は、その融点よりも低い温度で溶融し、液相を構成することとなる。この状態で、フラックスを蒸発させると、フラックスの濃度は低下し、換言すれば、フラックスによる前記溶質の融点低下効果が低減し、フラックスの蒸発が駆動力となって溶質の結晶成長が起こる(フラックス蒸発法)。なお、溶質およびフラックスは液相を冷却することによっても溶質の結晶成長を起こすことができる(徐冷法)。
【0050】
フラックス法は、融点よりもはるかに低い温度で結晶成長をさせることができる、結晶構造を精密に制御できる、自形をもつ単結晶構造の多面体結晶体を形成できる等のメリットを有する。
【0051】
フラックスとしてモリブデン酸塩化合物を用いたフラックス法による酸化亜鉛粒子の製造では、そのメカニズムは必ずしも明らかではないが、例えば、以下のようなメカニズムによるものと推測される。すなわち、モリブデン酸塩化合物の存在下で亜鉛化合物を焼成すると、モリブデン酸塩化合物と亜鉛化合物とが相互作用し、上述の説明からも理解されるように、酸化亜鉛の融点よりも低温で酸化亜鉛結晶を成長させる。そして、例えば、高温で焼成することによりモリブデン酸塩化合物をフラックス作用および形状制御剤として機能させることで、酸化亜鉛の結晶成長が制御され、実施形態に係る多面体形状の酸化亜鉛粒子を得ることができる。すなわち、モリブデン酸塩化合物がフラックス剤及び形状制御剤の両方の役割を果たし、酸化亜鉛粒子が製造されるのである。
【0052】
上記フラックス法により、多面体形状の酸化亜鉛粒子であって、[100]面の結晶子径が200nm以上である酸化亜鉛粒子を製造することができる。また、本実施形態のフラックス法による製造方法から得られる酸化亜鉛粒子は、多面体形状を有することから、単結晶構造を形成する。さらに、酸化亜鉛粒子はモリブデンを含んでもよい。
【0053】
焼成の方法は、特に限定はなく、公知慣用の方法で行うことができる。焼成温度が650℃を超えると、亜鉛化合物と、モリブデン酸塩化合物との相互作用を発生する。さらに、焼成温度が800℃以上になると、モリブデン酸塩化合物のフラックス作用および形状制御剤として機能することで酸化亜鉛粒子を形成する。
【0054】
また、焼成する時に、亜鉛化合物とモリブデン酸塩化合物の状態は特に限定されず、モリブデン酸塩化合物が亜鉛化合物に作用できる同一の空間に存在すれば良い。具体的には、モリブデン酸塩化合物と亜鉛化合物との粉体、または、酸化モリブデン、アルカリ金属化合物と亜鉛化合物との粉体を混ぜ合わせる簡便な混合、粉砕機等を用いた機械的な混合、乳鉢等を用いた混合であっても良く、乾式状態、湿式状態での混合であっても良い。
【0055】
焼成温度の条件に特に限定は無く、目的とする酸化亜鉛粒子の平均粒子径、酸化亜鉛粒子におけるモリブデン化合物の形成、分散性等により、適宜、決定される。通常、焼成温度については、目的とする酸化亜鉛粒子を形成できる最低温度に近い800℃以上が好ましい。
【0056】
通常、焼成後に得られる酸化亜鉛の形状を制御しようとすると、酸化亜鉛の融点に近い1500℃以上の高温焼成を行う必要があるが、焼成炉へ負担や燃料コストの点から、産業上利用する為には大きな課題がある。
【0057】
本発明の製造方法は、1500℃を超えるような高温であっても実施可能であるが、1300℃以下という酸化亜鉛の融点よりかなり低い温度であっても、前駆体の形状にかかわりなく[100]面の結晶子径及び[101]面の結晶子径が大きく、多面体形状の酸化亜鉛粒子を形成することができる。
【0058】
本発明の一実施形態によれば、最高焼成温度が800~1400℃の条件であっても、[100]面の結晶子径及び[101]面の結晶子径が大きく、多面体形状の酸化亜鉛粒子の形成を低コストで効率的に行うことができ、最高温度が850~1300℃での焼成がより好ましく、最高温度が900~1200℃の範囲の焼成が最も好ましい。
【0059】
昇温速度は、製造効率の観点から、20~600℃/minであってもよく、40~500℃/minであってもよく、80~400℃/minであってもよい。
【0060】
焼成の時間については、所定最高温度への昇温時間を15分~10時間の範囲で行い、且つ焼成最高温度における保持時間を5分~30時間の範囲で行うことが好ましい。酸化亜鉛粒子の形成を効率的に行うには、10分~15時間程度の時間の焼成保持時間であることがより好ましい。
最高温度1000~1400℃かつ10分~15時間の焼成保持時間の条件を選択することで、モリブデンを含む多面体形状の酸化亜鉛粒子が凝集し難く、容易に得られる。
【0061】
焼成の雰囲気としては、本発明の効果が得られるのであれば特に限定されないが、例えば、空気や酸素といった含酸素雰囲気や、窒素やアルゴン、または二酸化炭素といった不活性雰囲気が好ましく、コストの面を考慮した場合は空気雰囲気がより好ましい。
【0062】
焼成するための装置としても必ずしも限定されず、いわゆる焼成炉を用いることができる。焼成炉は昇華した酸化モリブデンと反応しない材質で構成されていることが好ましく、さらに酸化モリブデンを効率的に利用するように、密閉性の高い焼成炉を用いることが好ましい。
【0063】
[モリブデン除去工程]
本実施形態の酸化亜鉛粒子の製造方法は、焼成工程後、必要に応じてモリブデンの少なくとも一部を除去するモリブデン除去工程をさらに含んでいてもよい。
【0064】
本実施形態の酸化亜鉛粒子の製造方法においては、焼成時間、焼成温度等を制御することで、酸化亜鉛粒子表層に存在するモリブデン含有量を制御することができ、また、酸化亜鉛粒子表層以外(内層)に存在するモリブデン含有量やその存在状態を制御することができる。
【0065】
モリブデンは、酸化亜鉛粒子の表面に付着しうる。当該モリブデンは水、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、酸性水溶液で洗浄することにより除去することができる。なお、モリブデンは酸化亜鉛粒子から除去されていなくとも良いが、少なくとも表面のモリブデンは除去した方が、各種バインダーに基づく被分散媒体に分散させて用いる様な際には、酸化亜鉛本来の性質を充分に発揮でき、表面に存在したモリブデンによる不都合が生じないので好ましい。
【0066】
この際、使用する水、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、酸性水溶液の濃度、使用量、および洗浄部位、洗浄時間等を適宜変更することで、モリブデン含有量を制御することができる。
【0067】
[粉砕工程]
焼成工程を経て得られる焼成物は酸化亜鉛粒子が凝集して、本発明に好適な粒子径の範囲を満たさない場合がある。そのため、酸化亜鉛粒子は、必要に応じて、本発明に好適な粒子径の範囲を満たすように粉砕してもよい。
焼成物の粉砕の方法は特に限定されず、ボールミル、ジョークラッシャー、ジェットミル、ディスクミル、スペクトロミル、グラインダー、ミキサーミル等の従来公知の粉砕方法を適用できる。
【0068】
[分級工程]
酸化亜鉛粒子は、平均粒径を調整し、粉体の流動性を向上するため、またはマトリックスを形成するためのバインダーに配合したときの粘度上昇を抑制するために、好ましくは分級処理される。「分級処理」とは、粒子の大きさによって粒子をグループ分けする操作をいう。
分級は湿式、乾式のいずれでも良いが、生産性の観点からは、乾式の分級が好ましい。乾式の分級には、篩による分級のほか、遠心力と流体抗力の差によって分級する風力分級などがあるが、分級精度の観点からは、風力分級が好ましく、コアンダ効果を利用した気流分級機、旋回気流式分級機、強制渦遠心式分級機、半自由渦遠心式分級機などの分級機を用いて行うことができる。
上記した粉砕工程や分級工程は、必要な段階において行うことができる。これら粉砕や分級の有無やそれらの条件選定により、例えば、得られる酸化亜鉛粒子の平均粒径を調整することができる。
【0069】
本発明の酸化亜鉛粒子、或いは本発明の製造方法で得る酸化亜鉛粒子は、凝集が少ないもの或いは凝集していないものが、本来の性質を発揮しやすく、それ自体の取扱性により優れており、また被分散媒体に分散させて用いる場合において、より分散性に優れる観点から、好ましい。酸化亜鉛粒子の製造方法においては、上記した粉砕工程や分級工程は行わずに、凝集が少ないもの或いは凝集していないものが得られれば、左記工程を行う必要もなく、目的の優れた性質を有する酸化亜鉛粒子を、生産性高く製造することができるので好ましい。
【0070】
<樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物は、前記酸化亜鉛粒子と、樹脂と、を含有する。
本実施形態の樹脂組成物において、前記酸化亜鉛粒子は放熱フィラーとして機能する。前記酸化亜鉛粒子は[100]面の結晶子径が大きく、結晶性が高いうえに、多面体形状であるので、樹脂組成物中で前記酸化亜鉛粒子同士が接触する際、熱伝導率の高い面接触を行うと考えられ、球状の亜鉛粒子を含有する樹脂組成物に比べて同じ充填率であっても高い熱伝導性を得られると考えられる。
【0071】
本実施形態の樹脂組成物における樹脂としては、熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。
【0072】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂は、加熱または放射線や触媒などの手段によって硬化される際に実質的に不溶かつ不融性に変化し得る特性を持った樹脂である。例えば、成形材料等に使用される公知慣用の樹脂である。具体的には、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂;ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;脂肪鎖変性ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、ポリアルキレングルコール型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂;ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂;(メタ)アクリル樹脂やビニルエステル樹脂等のビニル樹脂:不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂等が挙げられ、ポリマーであってもオリゴマーであってもモノマーであってもかまわない。
【0073】
上記した熱硬化性樹脂は、硬化剤とともに用いてもかまわない。その際に用いられる硬化剤は、熱硬化性樹脂と公知慣用の組み合わせで用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合、硬化剤として常用されている化合物は何れも使用することができ、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ-ル系化合物などが挙げられる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ-ル、BF-アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。これらの硬化剤は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
【0074】
本実施形態の樹脂組成物における、熱硬化性樹脂と前記の硬化剤の配合量は、特に限定されないが、例えば、硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合は、得られる硬化物特性が良好である点から、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計1当量に対して、硬化剤中の活性基が0.7~1.5当量になる量の使用が好ましい。
【0075】
また必要に応じて、本実施形態の樹脂組成物における、熱硬化性樹脂に硬化促進剤を適宜併用することもできる。例えば、硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合、硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。
【0076】
また必要に応じて、本実施形態における、熱硬化性樹脂に、硬化触媒を適時併用することもでき、公知慣用の熱重合開始剤や活性エネルギー線重合開始剤が挙げられる。
【0077】
<熱可塑性樹脂>
本実施形態の樹脂組成物における樹脂としては、熱可塑性樹脂であることが好ましい。 本実施形態で使用する熱可塑性樹脂は、成形材料等に使用される公知慣用の樹脂である。具体的には、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、フッ化樹脂、液晶ポリマー、オレフィン-ビニルアルコール共重合体、アイオノマー樹脂、ポリアリレート樹脂、アクリロニトリル-エチレン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体などが挙げられる。少なくとも1種の熱可塑性樹脂が選択されて使用されるが、目的に応じて、2種以上の熱可塑性樹脂を組み合わせての使用も可能である。
【0078】
上記した樹脂としては、寸法安定性や耐熱性に優れる点で、エポキシ樹脂と硬化剤との組み合わせや、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂がより好ましい。中でも、樹脂としては、エポキシ樹脂と硬化剤との組み合わせが、絶対値として最も優れた熱伝導性が得られるので最適である。
【0079】
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じてその他の配合物を含有してもよく、発明の効果を損ねない範囲で、外部滑剤、内部滑剤、酸化防止剤、難燃剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ガラス繊維、カーボン繊維等の補強材、フィラー、各種の着色剤等を添加してもよい。また、シリコーンオイル、液状ゴム、ゴム粉末、アクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体などのブタジエン系共重合体ゴムやシリコーン系化合物などの低応力化剤(応力緩和剤)の使用も可能である。
【0080】
本実施形態の樹脂組成物は、前記酸化亜鉛粒子、及び樹脂、さらに必要に応じてその他の配合物を混合することにより得られる。その混合方法に特に限定はなく、公知慣用の方法により、混合される。
【0081】
樹脂が熱硬化性樹脂である場合の一般的な手法としては、所定の配合量の熱硬化性樹脂と、前記酸化亜鉛粒子、必要に応じてその他の成分をミキサー等によって充分に混合した後、三本ロール等で混練し、流動性ある液状の組成物として、あるいは、所定の配合量の熱硬化性樹脂と、前記酸化亜鉛粒子、必要に応じてその他の成分をミキサー等によって充分に混合した後、ミキシングロール、押出機等で、溶融混練した後、冷却する事で、固形の組成物として得られる。その混合状態は、硬化剤や触媒等を配合した場合は、硬化性樹脂とそれらの配合物が充分に均一に混合されていれば良いが、前記酸化亜鉛粒子も均一に分散混合された方がより好ましい。
【0082】
樹脂が熱可塑性樹脂である場合の一般的な手法としては、熱可塑性樹脂、前記酸化亜鉛粒子、および必要に応じてその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダー、混合ロールなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240~320℃の範囲である。
【0083】
本実施形態の樹脂組成物を調製するに当たっての、前記酸化亜鉛粒子と、樹脂の不揮発分との混合割合は特に制限されるものではないが、樹脂の不揮発分の質量換算100部当たり、66.7~900部の範囲から選択することが好ましい。また、前記酸化亜鉛粒子の、本実施形態の樹脂組成物中の含有量は特に限定されず、それぞれの用途で求められる熱伝導率の程度に応じて混合されるが、好ましくは、樹脂組成物の100容量部中、前記酸化亜鉛粒子の含有量は30~90容量部である。
【0084】
前記酸化亜鉛粒子の熱伝導性フィラーとしての機能を効果的に発現させ、高い熱伝導性を得るためには、前記酸化亜鉛粒子が高充填されている方が好ましく、樹脂組成物の100容量部中、前記酸化亜鉛粒子の含有量は40~90容量部の使用がより好ましい。樹脂組成物における樹脂が、熱硬化性樹脂の場合、その流動性を考慮すると、さらに好ましくは、樹脂組成物の100容量部中、前記酸化亜鉛粒子の含有量は60~85容量部である。
【実施例
【0085】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
[比較例1]
酸化亜鉛(ZnO)(和光試薬)を、比較例1の酸化亜鉛粒子とした。比較例1の酸化亜鉛粒子のSEM写真を図7に示す。粒子形状は無定形であった。
【0087】
[比較例2]
(酸化亜鉛粒子の製造)
酸化亜鉛(ZnO)(和光試薬)10.0gを酸化アルミニウム製の匣鉢に入れて以下の条件で熱処理を行った。
【0088】
(熱処理)
モトヤマ社製加熱炉SC-2045D-SPを使用し、室温から1100℃までは300℃/hで昇温し、1100℃で10時間保持した後、200℃/hで降温させた。
【0089】
得られた比較例2の酸化亜鉛粒子のSEM写真を図8に示す。比較例1の酸化亜鉛粒子に比べて、比較例2の酸化亜鉛粒子は、粒子成長して粒子径が大きくなり、かつ焼結状態に変化したことが確認できる。しかし、粒子形状は無定形のままであった。
【0090】
[実施例1]
(酸化亜鉛粒子の製造)
酸化亜鉛(ZnO)(和光試薬)10.0gとモリブデン酸リチウム(LiMoO)10.0gとを容器に取り、乳鉢で10分間混合した。得られた20.0gの混合物を、酸化アルミニウム製の匣鉢に入れて以下の条件で熱処理を行った。
【0091】
(熱処理)
モトヤマ社製加熱炉SC-2045D-SPを使用し、室温から1100℃までは300℃/hで昇温し、1100℃で10時間保持した後、200℃/hで降温させた。
【0092】
(後工程)
得られた固体を匣鉢から取り外し、粗粉砕の後150mLの純水を加え、室温で3時間攪拌して、水溶性のものを溶解させ、液を分離して捨てた。さらにこれを150mLの水で2回洗浄し、液を分離して捨てた後、130℃で6時間乾燥させた。
得られた実施例1の酸化亜鉛粒子のSEM写真を図1に示す。立方体に近い多面体形状の酸化亜鉛粒子が観察された。
【0093】
[実施例2]
(酸化亜鉛粒子の製造)
実施例1において、モリブデン酸リチウム(LiMoO)10.0gをモリブデン酸カリウム(KMoO)10.0gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、酸化亜鉛粒子を製造した。得られた実施例2の酸化亜鉛粒子のSEM写真を図2に示す。多面体形状の酸化亜鉛粒子が観察された。
【0094】
[実施例3]
(酸化亜鉛粒子の製造)
実施例1において、モリブデン酸リチウム(LiMoO)10.0gをモリブデン酸ナトリウム二水和物(NaMoO・2HO)12.0gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、酸化亜鉛粒子を製造した。得られた実施例3の酸化亜鉛粒子のSEM写真を図3に示す。多面体形状の酸化亜鉛粒子が観察された。
【0095】
[実施例4]
(酸化亜鉛粒子の製造)
実施例1において、熱処理条件を、室温から800℃までは300℃/hで昇温し、800℃で10時間保持したこと以外実施例1と同様にして、酸化亜鉛粒子を製造した。得られた実施例4の酸化亜鉛粒子のSEM写真を図4に示す。多面体形状の酸化亜鉛粒子が観察された。
【0096】
[実施例5]
(酸化亜鉛粒子の製造)
実施例1において、熱処理条件を、室温から900℃までは300℃/hで昇温し、900℃で10時間保持したこと以外は実施例1と同様にして、酸化亜鉛粒子を製造した。得られた実施例5の酸化亜鉛粒子のSEM写真を図5に示す。多面体形状の酸化亜鉛粒子が観察された。
【0097】
[実施例6]
(酸化亜鉛粒子の製造)
酸化亜鉛粒子(和光試薬)180.0gとモリブデン酸ナトリウム二水和物(NaMoO・2HO)140.0gとを容器に取り、アブソリュートミルで10秒間よく攪拌分散した後、壁についたものを掻き落とすという操作を3回行った。この中から21gを分取し、酸化アルミニウム製の匣鉢に入れて以下の条件で熱処理を行った。
【0098】
(熱処理)
モトヤマ社製加熱炉SC-2045D-SPを使用し、室温から1100℃までは300℃/hで昇温し、1100℃で10時間保持した後、200℃/hで降温させた。
【0099】
(後工程)
得られた固体を匣鉢から取り外し、粗粉砕の後150mLの純水を加え、15分間攪拌後、90℃に加熱したオーブン中に3時間放置して、水溶性のものを溶解させ、液を分離して捨てた。さらにこれを150mLの水で2回洗浄し、液を分離して捨てた後、130℃で6時間乾燥させた。
得られた実施例6の酸化亜鉛粒子のSEM写真を図6に示す。多面体形状の酸化亜鉛粒子が観察された。
【0100】
比較例1~2、及び、実施例1~6の各混合物の組成、及び最高焼結温度を表1に示す。
【0101】
[酸化亜鉛粒子の一次粒子の平均粒径の測定]
酸化亜鉛粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した。二次元画像上の凝集体を構成する最小単位の粒子(すなわち、一次粒子)について、その長径(観察される最も長い部分のフェレ径)及び短径(その最も長い部分のフェレ径に対して、垂直な向きの短いフェレ径)を計測し、その平均値を一次粒子径とした。同様の操作をランダムに選ばれた50個の一次粒子に対して行い、その一次粒子の一次粒子径の平均値から、一次粒子の平均粒径を算出した。結果を表1に示す。
【0102】
[結晶子径の測定]
検出器として高強度・高分解能結晶アナライザ(CALSA)を備えるX線回折装置(株式会社リガク製、SmartLab)を用いて、下記の測定条件で粉末X線回折(2θ/θ法)による測定を行った。株式会社リガク製、解析ソフトウエア(PDXL)のCALSA関数を用いて解析し、[100]面の結晶子径については、2θ=31.8°付近に出現するピークの半値幅からシェラー式を用いて算出し、[101]面の結晶子径については、2θ=36.3°付近に出現するピークの半値幅からシェラー式を用いて算出した。結果を表1に示す。
【0103】
(粉末X線回折法の測定条件)
管電圧:45kV
管電流:200mA
スキャンスピード:0.05°/min
スキャン範囲:10~70°
ステップ:0.002°
βs:20rpm
装置標準幅:米国立標準技術研究所が作製している標準シリコン粉末(NIST、640d)を用いて算出した0.026°を使用した。
【0104】
[結晶構造解析:XRD(X線回折)法]
実施例1の酸化亜鉛粒子の試料を0.5mm深さの測定試料用ホルダーに充填し、それを広角X線回折(XRD)装置(株式会社リガク製 UltimaIV)にセットし、Cu/Kα線、40kV/40mA、スキャンスピード2°/min、走査範囲10~70°の条件で測定を行った。実施例1の酸化亜鉛粒子のXRDの測定結果を図9に示す。
【0105】
2θ=31.79°([100]面)、34.44°([002]面)、36.27°([101]面)、47.56°、56.61°、62.87°、66.39°、67.96°、69.69°にピークが観測された。これらのピークは酸化亜鉛のウルツ鉱構造の結晶面に索引付けすることができる(JSPDF File No.79-2205)。
【0106】
[酸化亜鉛粒子の粒度分布測定]
レーザー回折式粒度分布計HELOS(H3355)&RODOS、R3:0.5/0.9-175μm(株式会社日本レーザー製)を用い、分散圧3bar、引圧90mbarの条件で、乾式で粒子径分布を測定し、10%径D10、メディアン径D50、及び90%径D90を求めた。さらに、(D90-D10)/D50の値を算出した。結果を表1に示す。
【0107】
[酸化亜鉛粒子の比表面積測定]
酸化亜鉛粒子の比表面積を、比表面積計(マイクロトラックベル製、BELSORP-mini)にて測定し、BET法による窒素ガスの吸着量から測定された試料1g当たりの表面積を、比表面積(m/g)として算出した。結果を表1に示す。
【0108】
[酸化亜鉛粒子の純度測定:XRF(蛍光X線)分析]
蛍光X線分析装置PrimusIV(株式会社リガク製)を用い、酸化亜鉛粒子の試料約70mgをろ紙にとり、PPフィルムをかぶせて組成分析を行った。
XRF分析により求められる亜鉛量、モリブデン量及びナトリウム量を、酸化亜鉛粒子100質量%に対する、酸化亜鉛(ZnO)換算(質量%)、三酸化モリブデン換算(質量%)及び酸化ナトリウム(NaO)換算(質量%)により求めた。結果を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
[実施例7]
熱可塑性樹脂として、DIC株式会社製ポリフェニレンスルフィド樹脂(DIC-PPS LR100G)7.29質量部、及び、実施例6の酸化亜鉛粒子20.2質量部を均一にドライブレンドした後、Xplore社製溶融混練装置MC15により混練温度300℃、回転数100rpmの条件で溶融混練処理し、熱伝導性フィラーとして酸化亜鉛粒子の充填率が40体積%の、実施例7のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得た。
【0111】
[比較例3]
実施例7において、実施例6の酸化亜鉛粒子20.2質量部を、デンカ株式会社製球状酸化アルミニウム粒子(DAW-07)13.43質量部に変更した以外は、実施例7と同様にして、熱伝導性フィラーとして酸化アルミニウム粒子の充填率が40体積%の、比較例3のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得た。
【0112】
[比較例4]
実施例7において、実施例6の酸化亜鉛粒子20.2質量部を、比較例1の酸化亜鉛(ZnO)(和光試薬)20.2質量部に変更した以外は、実施例7と同様にして、熱伝導性フィラーとして酸化亜鉛粒子の充填率が40体積%の、比較例4のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得た。
【0113】
(射出成形品の作製)
実施例7、及び比較例3~4の、それぞれのポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を、Xplore社製射出成形機IM12により、組成物温度320℃、金型温度140℃、射出圧力10bar、保圧11bar、にて射出成形を行い、JIS K7161-2に準じて、実施例7、及び比較例3~4の、それぞれのダンベル形の5A形試験片(エッジ部の幅12.5mm、全長75mm、厚さ2mm)を得た。
【0114】
(放熱性評価)
JIS R 1611に準拠し、実施例7、及び比較例3~4の、それぞれのダンベル形の5A形試験片から10mm×10mm×2mmの放熱性試験片を切り出し、熱伝導率測定装置(LFA467 HyperFlash、NETZSCH社製)を用いて、25℃における熱拡散率及び比熱を測定した。次いで、アルキメデス法により、これらの放熱性試験片の密度を測定した。得られた熱拡散率、比熱、及び密度の積から、放熱性試験片の熱伝導率を計算した。結果を表3に示す。
【0115】
(耐摩耗性評価)
実施例7、及び比較例3~4の、それぞれのダンベル形の5A形試験片から10mm×10mm×2mmの耐摩耗性試験片を切り出した。
これらの耐摩耗性試験片に対し、合金工具鋼(SKS2)製カッターを、耐摩耗性試験片の10mm×10mmの正方形の面にカッターの刃が垂直に当たる様、1kgの荷重をかけ押し当てた。カッターの刃の向きは10mm×10mmの正方形の一辺に平行であり、カッターの刃の耐摩耗性試験片との接触長さは10mmである。
次に、1往復100mmの移動距離、75mm/sの条件で、1000往復刃をこすったところ、カッターの刃は、初期の刃面の高さH(80μm)が、摩耗して徐々に短くなった。1000往復刃をこすった後の刃面の高さHを計測した。
初期の刃面の長さH(80μm)に対する試験後の刃面の高さHの割合、すなわち摩耗試験保持率R(%)を、次式(2)により求めた。
R(%)=H/H×100 ・・・(2)
カッターの刃の摩耗量が多いほど摩耗試験保持率R(%)の値が小さくなる。結果を表2に示す。
【0116】
【表2】
【0117】
本発明に係る実施例6の酸化亜鉛粒子を含有する実施例7のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物から得られた射出成形品は、酸化アルミニウム粒子を含有する比較例3のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物から得られた射出成形品や、比較例1の酸化亜鉛粒子を含有する比較例4のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物から得られた射出成形品よりも、熱伝導率が優れることが示された。
【0118】
本発明に係る実施例6の酸化亜鉛粒子を含有する実施例7のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物から得られた射出成形品は、酸化アルミニウム粒子を含有する比較例3のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物から得られた射出成形品よりも、相手金属材を摩耗させるおそれを低減できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の酸化亜鉛粒子は、放熱フィラー、塗料、化粧品用顔料としての利用が可能である。本発明の酸化亜鉛粒子は、特に、ポリフェニレンスルフィド(PPS)用の放熱コンパウンド、放熱成形体、サーマルインターフェース材(TIM)用シート、放熱粘着材、放熱粘着シート、プリント回路板(PCB)用放熱ペースト、高柔軟性熱伝導性ゴム、放熱性グリース、放熱性シーラント、半導体封止樹脂等の充填剤の使用が期待できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9