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特許7392898硬化性樹脂、硬化性樹脂組成物、及び、硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】硬化性樹脂、硬化性樹脂組成物、及び、硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/20 20060101AFI20231129BHJP
   C08F 12/24 20060101ALI20231129BHJP
   C08F 299/02 20060101ALI20231129BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20231129BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20231129BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C08F20/20
C08F12/24
C08F299/02
C08J5/24 CEY
B32B15/08 J
B32B15/08 105Z
H05K1/03 630H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023514035
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(86)【国際出願番号】 JP2022037366
(87)【国際公開番号】W WO2023089976
(87)【国際公開日】2023-05-25
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2021187746
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】松岡 龍一
(72)【発明者】
【氏名】楊 立宸
(72)【発明者】
【氏名】神成 広義
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特許第6962507(JP,B1)
【文献】特開2015-189925(JP,A)
【文献】特表2013-525568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0304015(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F20
C08F12
C08F299
C08G61
C08G63
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A1)で表される硬化性樹脂(A1)、
下記一般式(A2a)で表される繰り返し構造と、下記一般式(A2b)で表される末端構造を有する硬化性樹脂(A2)、
および、下記一般式(A3a)で表される繰り返し構造と、下記一般式(A3b)で表される末端構造(A3b)を有する硬化性樹脂(A3)、
からなる群から選ばれる1種である、硬化性樹脂。
[化1]
(上記一般式(A1)中、Raはそれぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、シクロアルキル基であり、Wは、炭素数2~15の炭化水素、nは3~5の整数を示し、Uは、下記一般式(U1)または下記一般式(U2)であり、かつ、樹脂中に存在する複数のUは、下記一般式(U1)、(U2)をそれぞれ1つ以上含む。)
[化2]

(上記一般式(A2a)(A2b)中、Raは前記と同じであり、Xは、炭化水素基を示し、Yは、下記一般式(Y1)、(Y2)、(Y3)のいずれかを示し、Uは、下記一般式(U1)または下記一般式(U2)であり、かつ、樹脂中における複数のUは、下記一般式(U1)、(U2)をそれぞれ1つ以上含む。)
[化3]
(式中、Zは、脂環式基、芳香族基、または、複素環基を示す。)
[化4]

(上記一般式(A3a)(A3b)中、Raは前記と同じであり、Uは、下記一般式(U1)または下記一般式(U2)であり、かつ、樹脂中における複数のUは、下記一般式(U1)、(U2)をそれぞれ1つ以上含む。)
[化5]

【請求項2】
請求項1に記載の硬化性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化反応させて得られる硬化物。
【請求項4】
請求項に記載の硬化性樹脂組成物を有機溶剤で希釈したものであるワニス。
【請求項5】
補強基材、及び、前記補強基材に含浸した請求項に記載のワニスの半硬化物を有するプリプレグ。
【請求項6】
請求項に記載のプリプレグ、及び、銅箔を積層し、加熱圧着成型して得られる回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造を有する硬化性樹脂、前記硬化性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、及び、前記硬化性樹脂施組成物により得られる硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報通信量の増加に伴い、高周波数帯域での情報通信が盛んに行われるようになり、より優れた電気特性、なかでも高周波数帯域での伝送損失を低減させるため、低誘電率と低誘電正接を有する電気絶縁材料が求められてきている。
【0003】
さらにそれら電気絶縁材料が使われているプリント基板あるいは電子部品は、実装時に高温のハンダロフローに曝されるため、耐熱性に優れた高いガラス転移温度を示す材料が求められ、特に最近は、環境問題の観点から、融点の高い鉛フリーのハンダが使われるため、より耐熱性の高い電気絶縁材料の要求が高まってきている。
【0004】
これらの要求に対し、従来から、種々の化学構造を持つビニル基含有の硬化性樹脂が提案されている。このような硬化性樹脂としては、例えば、ビスフェノールのジビニルベンジルエーテル、あるいはノボラックのポリビニルベンジルエーテルなどの硬化性樹脂が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかし、これらのビニルベンジルエーテルは、誘電特性が十分に小さい硬化物を与えることができず、得られる硬化物は高周波数帯域で安定して使用するには問題があり、さらにビスフェノールのジビニルベンジルエーテルは、耐熱性においても十分に高いとはいえないものであった。
【0005】
上記特性を向上させたビニルベンジルエーテルに対して、誘電特性等の向上を図るため、特定構造のポリビニルベンジルエーテルがいくつか提案されている(例えば、特許文献3~5参照)。しかし、誘電正接を抑える試みや、耐熱性を向上させる試みがなされているが、これらの特性の向上は、未だ十分とは言えず、さらなる特性改善が望まれている。
【0006】
このように、従来のポリビニルベンジルエーテルを含むビニル基含有の硬化性樹脂は、電気絶縁材料用途、特に高周波数対応の電気絶縁材料用途として必要な低い誘電正接と、鉛フリーのハンダ加工に耐えうる耐熱性とを兼備する硬化物を与えるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭63-68537号公報
【文献】特開昭64-65110号公報
【文献】特開平1-503238号公報
【文献】特開平9-31006号公報
【文献】特開2005-314556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、特定構造を有する硬化性樹脂を使用することで、耐熱性(高ガラス転移温度)、及び、誘電特性(低誘電特性)に優れた硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、同一構造中にメタクリロイルオキシ基とスチリル基を有することを特徴とする硬化性樹脂を用いた硬化物が、耐熱性、及び、低誘電特性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下の構成を提供する。
[1] 下記一般式(1)で表される構造と、下記一般式(2)で表される構造の両方を含有することを特徴とする硬化性樹脂(A)。
【化1】
(上記一般式(1)中、Raはそれぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、シクロアルキル基であり、Mはメタクリロイルオキシ基であり、h、iはそれぞれ独立に、1~4の整数を示し、jは0~2の整数を示す。)
【化2】
(上記一般式(2)中、Rbは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、シクロアルキル基であり、Vはビニル基であり、kは0~4の整数を示し、lは1~4の整数を示し、mは0~2の整数を示す。)
【0011】
[2] 硬化性樹脂(A)中の、前記一般式(1)で表される構造と前記一般式(2)で表される構造とのモル比が99:1~1:99である上記[1]に記載の硬化性樹脂(A)。
【0012】
[3] 前記一般式(1)が、下記一般式(1-1)で表される、上記[1]または[2]に記載の硬化性樹脂(A)。
【化3】
(上記一般式(1-1)中、Raは前記と同じである。)
【0013】
[4] 前記一般式(2)が、下記一般式(2-1)で表される、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂(A)。
【化4】
【0014】
[5] 前記硬化性樹脂(A)が、
下記一般式(A1)で表される硬化性樹脂(A1)、
下記一般式(A2a)で表される繰り返し構造と、下記一般式(A2b)で表される末端構造を有する硬化性樹脂(A2)、
および、下記一般式(A3a)で表される繰り返し構造と、下記一般式(A3b)で表される末端構造(A3b)を有する硬化性樹脂(A3)、
からなる群から選ばれる1種である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂(A)。
【化5】
(上記一般式(A1)中、Raは前記と同じであり、Wは、炭素数2~15の炭化水素、nは3~5の整数を示し、Uは、下記一般式(U1)または下記一般式(U2)であり、かつ、樹脂中に存在する複数のUは、下記一般式(U1)、(U2)をそれぞれ1つ以上含む。)
【化6】

(上記一般式(A2a)(A2b)中、Raは前記と同じであり、Xは、炭化水素基を示し、Yは、下記一般式(Y1)、(Y2)、(Y3)を示し、Uは、下記一般式(U1)または下記一般式(U2)であり、かつ、樹脂中における複数のUは、下記一般式(U1)、(U2)をそれぞれ1つ以上含む。)
【化7】
(式中、Zは、脂環式基、芳香族基、または、複素環基を示す。)
【化8】

(上記一般式(A3a)(A3b)中、Raは前記と同じであり、Uは、下記一般式(U1)または下記一般式(U2)であり、かつ、樹脂中における複数のUは、下記一般式(U1)、(U2)をそれぞれ1つ以上含む。)
【化9】

【0015】
[6] 上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂(A)を含有する硬化性樹脂組成物。
【0016】
[7] 上記[6]に記載の硬化性樹脂組成物を硬化反応させて得られる硬化物。
【0017】
[8] 上記[6]に記載の硬化性樹脂組成物を有機溶剤で希釈したものであるワニス。
【0018】
[9] 補強基材、及び、前記補強基材に含浸した上記[8]に記載のワニスの半硬化物を有するプリプレグ。
【0019】
[10] 上記[9]に記載のプリプレグ、及び、銅箔を積層し、加熱圧着成型して得られる回路基板。
【発明の効果】
【0020】
本発明の硬化性樹脂は、反応性、耐熱性、及び、低誘電特性に寄与できるため、前記硬化性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物より得られる硬化物が、耐熱性、及び、低誘電特性に優れ、有用である。
【0021】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
<硬化性樹脂(A)>
本実施形態の硬化性樹脂(A)は、下記一般式(1)で表される構造と、後述する一般式(2)で表される構造の両方を含有することを特徴とする。
【化10】
【0023】
上記一般式(1)中、Raはそれぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、シクロアルキル基であり、Mはメタクリロイルオキシ基であり、h、iはそれぞれ独立に、1~4の整数を示し、jは0~2の整数を示す。なお、上記一般式(1)中、Ra、Mは芳香族環上のいずれかの位置に結合していればよく、炭素原子との結合部位は、芳香族環上のいずれかの位置であることを示す。
【0024】
上記一般式(1)中、Raはそれぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、好ましくは、炭素原子数1~4のアルキル基、アリール基、または、シクロアルキル基である。前記炭素原子数1~12のアルキル基等であることで、後述する、ベンゼン環、ナフタレン環、および、アントラセン環のいずれかの近傍の平面性が低下し、結晶性低下により、溶剤溶解性が向上するとともに、融点が低くなり、好ましい態様となる。また、前記Raを有することで、立体障害となり、分子運動性が低くなり、低誘電正接の硬化物が得られる。さらに、前記Raは、架橋基Mに対してオルト位に位置することが好ましい。少なくとも1つの前記Raが、架橋基Mのオルト位に位置することで、前記Raの立体障害により、架橋基Mの分子運動性が更に低くなり、より低誘電正接の硬化物が得られるため、好ましい。
【0025】
上記一般式(1)中、Mは架橋基となるメタクリロイルオキシ基である。前記硬化性樹脂組成物中に、メタクリロイルオキシ基を有することで、その他架橋基(例えば、ビニルベンジルエーテル基やジヒドロキシベンゼン基など)と比べて、低い誘電正接を有する硬化物が得られる。
【0026】
なお、前記メタクリロイルオキシ基を有することで、低誘電特性を発現する硬化物が得られる詳細な理由は明らかではないが、従来用いられている硬化性樹脂に含まれるビニルベンジルエーテル基などの場合、極性基であるエーテル基を有し、また、ジヒドロキシベンゼン基を有する場合、極性基である複数のヒドロキシル基を有することになり、本発明の硬化性樹脂のように、メタクリロイルオキシ基に基づくエステル基の方が、分子運動性が低いことが寄与していると推測される(エーテル基やヒドロキシル基などの極性の高い極性基を有すると、誘電率や誘電正接が高くなる傾向にある)。
【0027】
また、架橋基がメタクリロイルオキシ基の場合、構造中にメチル基を含むため、立体障害が大きくなり、分子運動性が更に低くなることが推測され、より低誘電正接の硬化物を得られる。また、架橋基が複数の場合、架橋密度があがり、耐熱性が向上する。
【0028】
上記一般式(1)中、hは1~4の整数を示し、好ましくは、1~2の整数であり、より好ましくは2である。前記範囲内にあることにより、反応性が優れ、好ましい態様となる。
【0029】
上記一般式(1)中、iは1~4の整数を示し、好ましくは、1~2の整数である。前記範囲内にあることにより、可撓性が確保され、好ましい態様となる。
【0030】
上記一般式(1)中、jは0~2の整数を示し、つまり、jが0の場合は、ベンゼン環であり、jが1の場合は、ナフタレン環であり、jが2の場合は、アントラセン環であり、好ましくは、jが0のベンゼン環である。前記範囲内にあることにより、溶剤溶解性に優れ、好ましい態様となる。
【0031】
また、上記一般式(1)において、芳香族環上の少なくとも1つのRaと、Mがオルト位に位置することが好ましい。少なくとも1つのRaがMのオルト位に位置することで、Raの立体障害によりメタクリロイルオキシ基の分子運動性が拘束され、上記一般式(1)で表される構造を有する硬化性樹脂と比べて、誘電正接が低くなり、好ましい態様となる。
【0032】
さらに、上記一般式(1)は、下記一般式(1-1)で表されることが、より好ましい。つまり、下記一般式(1-1)に記載の構造式は、上記一般式(1)中、hを2、jを1とし、メタクリロイルオキシ基の両側のオルト位にRaが位置し、さらに芳香族環をベンゼン環に固定(限定)している。そして、このような下記一般式(1-1)で示される構造を有する硬化性樹脂は、片側のみにRaが位置する場合と比較して、メタクリロイルオキシ基の分子運動性がより一層拘束され、更に誘電正接が低くなり、好ましい態様となる。
【化11】
【0033】
上記一般式(1-1)中、Raは、上記一般式(1)中のRaと共通する。
【0034】
本実施形態の硬化性樹脂(A)は、前述の一般式(1)で表される構造と、下記一般式(2)で表される構造の両方を含有することを特徴とする。
【化12】
【0035】
上記一般式(2)中、Rbは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、シクロアルキル基であり、Vはビニル基であり、kは0~4の整数を示し、lは1~4の整数を示し、mは0~2の整数を示す。なお、上記一般式(2)中、Rb、Vは芳香族環上のいずれかの位置に結合していればよく、炭素原子との結合部位は、芳香族環上のいずれかの位置であることを示す。
【0036】
上記一般式(2)中、Rbは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、シクロアルキル基である。
【0037】
上記一般式(2)中、Vは、ビニル基を示し、芳香族ビニル基(本明細書において、芳香族ビニル基とは芳香環に直接結合したビニル基を示す。)含有化合物は自己反応性が高く、硬化反応が十分に進行する。
【0038】
上記一般式(2)中、kは0~4の整数を示し、好ましくは、0~2の整数である。前記範囲内にあることにより、メタクリロイルオキシ基との共重合性が向上し、好ましい態様となる。
【0039】
上記一般式(2)中、lは1~4の整数を示し、好ましくは、1~2の整数である。前記範囲内にあることにより、耐熱性が向上し、好ましい態様となる。
【0040】
上記一般式(2)中、mは0~2の整数を示し、つまり、mが0の場合はベンゼン環であり、mが1の場合はナフタレン環であり、mが2の場合はアントラセン環であり、好ましくは、mが0のベンゼン環である。前記範囲内にあることにより、溶剤溶解性が優れ、好ましい態様となる。
【0041】
さらに、上記一般式(2)は、下記一般式(2-1)で表されることが、より好ましい。つまり、下記一般式(2-1)に記載の構造式は、上記一般式(2)中、kを1、mを1とし、ビニルベンゼンとしている。そして、このような下記一般式(2-1)で示される構造を有する硬化性樹脂は、特に自己反応性が高く、得られる硬化物は十分に硬化反応が進み、好ましい態様となる。
【化13】
【0042】
本実施形態の硬化性樹脂(A)は、上記一般式(1)で表される構造と上記一般式(2)で表される構造を99:1~1:99のモル比で含有することが好ましく、90:10~10:90であるとさらに好ましい。上記一般式(1)が1以上含まれることで、得られる硬化物の架橋密度が増加し、耐熱性に優れ好ましい態様となる。また、上記一般式(2)が1以上含まれることで、得られる硬化物が十分に硬化し、耐熱性に優れ好ましい態様となる。
【0043】
前記硬化性樹脂(A)としては、下記一般式(A1)~(A3)のいずれかで示される樹脂であると、工業原料の入手のしやすさから、さらに好ましい。
【0044】
<硬化性樹脂(A1)>
【化14】
【0045】
上記一般式(A1)中、Wは、炭素数2~15の炭化水素、nは3~5の整数を示す。
【0046】
上記一般式(A1)中、Wは炭素数2~15の炭化水素であり、好ましくは、炭素数2~10の炭化水素である。前記炭素数が前記範囲内にあることにより、前記硬化性樹脂(A1)は、低分子量体となり、高分子量体の場合に比べて、架橋密度が高くなり、得られる硬化物のガラス転移温度が高くなり、耐熱性に優れ、好ましい態様となる。なお、前記炭素数が2以上であると、得られる硬化性樹脂が高分子量体となり、前記炭素数2未満の場合と比べて、得られる硬化物の架橋密度が低くなり、フィルムなどを形成しやすい他、ハンドリング性、可撓性、柔軟性、および、耐脆性に優れる傾向となり、また、前記炭素数15以下であると、得られる硬化性樹脂が低分子量体となり、前記炭素数が15を超える場合と比べて、前記硬化性樹脂(A1)中の架橋基(メタクリロイルオキシ基)の占める割合が高くなり、これに伴い、架橋密度が向上し、得られる硬化物の耐熱性に優れ、好ましい。
【0047】
前記炭化水素としては、炭素数2~15の炭化水素であれば特に制限されないが、例えば、アルカン、アルケン、アルキン等の脂肪族炭化水素であることが好ましく、アリール基等を含む芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素とが組み合わせられた化合物等を挙げることができる。
【0048】
前記脂肪族炭化水素の中で、前記アルカンとしては、例えば、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。前記アルケンとしては、例えば、ビニル基、1-メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等を含むものが挙げられる。
前記アルキンとしては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、へキシニル基等を含むものが挙げられる。
前記芳香族炭化水素としては、例えば、アリール基として、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等を含むものが挙げられる。
前記脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素とが組み合わせられた化合物としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、トリルメチル基、トリルエチル基、トリルプロピル基、キシリルメチル基、キシリルエチル基、キシリルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基等を含むものが挙げられる。
【0049】
前記炭化水素の中でも、極性が低く、低誘電特性(低誘電率および低誘電正接)を有する硬化物が得られる点から、炭素原子および水素原子のみからなる脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素、脂環式炭化水素であることが好ましく、中でも、極性が非常に小さく、工業的に採用できる下記一般式(3-1)~(3-6)のような炭化水素が好ましく、より好ましくは、下記一般式(3-1)、(3-4)等の脂肪族炭化水素である。なお、下記一般式(3-1)中、kは0~5の整数を表し、好ましくは、0~3であり、下記一般式(3-1)、(3-2)、および、(3-4)~(3-6)中のRcは、水素原子またはメチル基で表されることが好ましい。
【化15】
【0050】
上記一般式(A1)中、nは置換基数であり、3~5の整数を示し、好ましくは、3または4であり、より好ましくは、4である。前記nが前記範囲内であることで、前記硬化性樹脂(A1)は、低分子量体となり、高分子量体の場合に比べて、架橋密度が高くなり、得られる硬化物のガラス転移温度が高くなり、耐熱性に優れ、好ましい態様となる。なお、前記nが3以上であると、得られる硬化物の架橋密度が高く、十分な耐熱性を得ることができるため好ましい。一方、前記nが5以下であると、前記硬化物の架橋密度が過度に高くなりすぎないため、フィルムなどを形成しやすい他 、ハンドリング性、可撓性、柔軟性、および、耐脆性に優れ、より好ましい。
【0051】
上記一般式(A1)中、Raは上記一般式(1)中のRaと共通する。
【0052】
上記一般式(A1)中、Uは、それぞれ独立して、下記一般式(U1)または下記一般式(U2)で表され、樹脂中に含まれる複数のUは下記一般式(U1)、下記一般式(U2)をそれぞれ1つ以上含む。
【化16】

【0053】
樹脂中に含まれるUは上記一般式(U1)、上記一般式(U2)をそれぞれ1つ以上含んでいれば、1分子当たりの一般式(U1)と一般式(U2)の存在比率は特に制限はされないが、同一分子中に一般式(U1)と一般式(U2)を含んでいてもよく、その比率は適宜調整しても良い。
【0054】
<硬化性樹脂(A2)>
【化17】

【0055】
硬化性樹脂(A2)は、上記の繰り返し単位(A2a)と末端構造(A2b)を有し、上記一般式(A2a)または一般式(A2b)中、Raはそれぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基であり、Xは炭化水素基を表し、Yは下記一般式(Y1)~(Y3)のいずれかを示す。
【化18】
【0056】
上記一般式(Y1)~(Y3)中、Zは脂環式基、芳香族基、または、複素環基を示す。
【0057】
硬化性樹脂(A2)が、上記一般式(A2a)で表される繰り返し単位と、上記一般式(A2b)で表される末端構造を有することにより、前記硬化性樹脂(A2)中に含まれるエステル結合、または、カーボネート結合は、エーテル基などに比べて、分子運動性が低いため、低誘電特性(特に低誘電正接)となる。また、前記硬化性樹脂(A2)成分中に、後述するメタクリロイルオキシ基を有することで、得られる硬化物が耐熱性に優れ、さらに、分子運動性の低いエステル結合、または、カーボネート結合を有することで、低誘電特性だけでなく、高ガラス転移温度を有する硬化物を得ることができる。
【0058】
上記一般式(A2a)、(A2b)中、Xは、炭化水素基であればよいが、工業原料の入手のしやすさから、下記一般式(4)~(6)の構造で表されることが好ましく、特に下記一般式(4)の構造であることが、耐熱性と低誘電特性のバランスがよく、より好ましい。
【化19】
【0059】
上記一般式(4)~(6)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基で表され、あるいは、RおよびRが共に結合し環状骨格を形成していても良い。nは0~2の整数を示し、好ましくは、0~1の整数である。nが前記範囲内にあることにより、高耐熱性となり、好ましい態様となる。
【0060】
上記一般式(A2a)中、Yは、上記一般式(Y1)、(Y2)または、(Y3)を表され、耐熱性の観点から、好ましくは、上記一般式(Y1)である。
【0061】
上記一般式(Y2)、(Y3)中、Zは、高耐熱性の硬化物を得るため、脂環式基、芳香族基、または、複素環基で表されるが、好ましくは、下記一般式(7)~(11)で表される構造であり、特に下記一般式(7)の構造(ベンゼン環)が、コスト面と耐熱性の観点から、更に好ましい。
【化20】
【0062】
上記一般式(A2a)、(A2b)中、Raは上記一般式(1)中のRaと共通する。
【0063】
上記一般式(A2b)中、Uは、下記一般式(U1)または下記一般式(U2)で表され、樹脂中に含まれる複数のUは下記一般式(U1)、下記一般式(U2)をそれぞれ1つ以上含む。
【化21】

【0064】
なお、「樹脂中に含まれる複数のUは下記一般式(U1)、下記一般式(U2)をそれぞれ1つ以上含む。」とは、樹脂中に下記一般式(A2b-1)または下記一般式(A2b-2)で表される末端構造をそれぞれ少なくとも1つ含むことを意味する。
【化22】

【0065】
樹脂中に含まれるUは上記一般式(U1)、上記一般式(U2)をそれぞれ1つ以上含んでいれば、1分子当たりの一般式(U1)、一般式(U2)の存在比率は特に制限されないが、同一分子中に一般式(U1)と一般式(U2)を含んでいてもよく、その比率は適宜調整しても良い。
【0066】
前記硬化性樹脂(A2)は、上記一般式(A2a)で表される繰り返し単位と、上記一般式(A2b)で表される末端構造を有することを特徴とするが、前記硬化性樹脂(A2)の特性を損なわない範囲であれば、その他繰り返し単位(構造)を含んでも良い。
【0067】
前記硬化性樹脂(A2)の重量平均分子量(Mw)は、500~50000であることが好ましく、1000~10000であることがより好ましく、1500~5000がさらに好ましい。前記範囲内であると、溶剤溶解性が向上し、加工作業性が良好であり、好ましい。
【0068】
<硬化性樹脂(A3)>
【化23】

【0069】
前記硬化性樹脂(A3)は、上記の繰り返し単位(A3a)と末端構造(A3b)を有し、上記一般式(A3b)中、Raはそれぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を示す。
【0070】
上記一般式(A3a)がインダン骨格を有することにより、前記硬化性樹脂(A3)の構造中に耐熱性と誘電特性のバランスに優れる脂環式構造が導入され、前記硬化性樹脂(A3)を使用して製造される硬化物は、耐熱性と誘電特性(特に低誘電正接)とのバランスに優れ、また、末端構造(A3b)に、後述するメタクリロイルオキシ基を有することで、立体障害が大きくなり、更なる低誘電特性を発現できる。
【0071】
上記一般式(A3b)中、Raは上記一般式(1)中のRaと共通する。
【0072】
上記一般式(A3b)中、Uは、下記一般式(U1)または下記一般式(U2)で表され、樹脂中に含まれる複数のUは下記一般式(U1)、下記一般式(U2)をそれぞれ1つ以上含む。
【化24】

【0073】
なお、「樹脂中に含まれる複数のUは下記一般式(U1)、下記一般式(U2)をそれぞれ1つ以上含む。」とは、樹脂中に下記一般式(A3b-1)または下記一般式(A3b-2)で表される末端構造をそれぞれ少なくとも1つ含むことを意味する。
【化25】

【0074】
樹脂中に含まれるUは上記一般式(U1)、上記一般式(U2)をそれぞれ1つ以上含んでいれば、1分子当たりの一般式(U1)、一般式(U2)の存在比率は特に制限されないが、同一分子中に一般式(U1)と一般式(U2)を含んでいてもよく、その比率は適宜調整しても良い。
【0075】
前記硬化性樹脂(A2)は、上記一般式(A2a)で表される繰り返し単位と、上記一般式(A2b)で表される末端構造を有することを特徴とするが、前記硬化性樹脂(A2)の特性を損なわない範囲であれば、その他繰り返し単位(構造)を含んでも良い。
【0076】
前記硬化性樹脂(A3)の重量平均分子量は(Mw)は、500~50000であることが好ましく、1000~10000であることがより好ましく、1500~5000がさらに好ましい。前記範囲内であると、溶剤溶解性が向上し、加工作業性が良好であり、更に、得られる硬化物の可撓性や柔軟性に優れるため、好ましい。
【0077】
なお、本発明の硬化性樹脂(A)は、前記硬化性樹脂(A1)~(A3)からなる群から選ばれる1種であることが好ましい。
【0078】
<硬化性樹脂(A)の製造方法>
本実施形態の硬化性樹脂(A)は、特に制限されるものではなく従来公知の方法を適宜利用して製造することができる。例えば、フェノール基含有樹脂とメタクリル酸化合物(本明細書において、メタクリル酸化合物とは、メタクリル酸、メタクリル酸無水物またはメタクリル酸クロリドを示す。)および芳香族ビニル化合物を有機溶剤中、酸性あるいは塩基性触媒の存在下に反応させる、といった方法により得ることができる。
【0079】
以下に、本実施形態の硬化性樹脂(A)の具体的な実施例として、硬化性樹脂(A1)と硬化性樹脂(A2)と硬化性樹脂(A3)とに分けて説明する。
<硬化性樹脂(A1)の製造方法>
まず、硬化性樹脂(A1)の製造方法について説明をする。硬化性樹脂(A1)は、例えば以下の工程(I-a)および工程(I-b)を含む方法により得ることができる。
【0080】
<工程(I-a)>
工程(I-a)では、下記一般式(12)~(17)で示されるアルデヒド化合物、または、ケトン化合物と、下記一般式(18)で示されるフェノール、または、その誘導体とを混合し、酸触媒存在下に反応させることにより、硬化性樹脂(A1)の原料(前駆体)である中間体フェノール化合物を得ることができる。なお、下記一般式(12)~(18)中、kは0~5の整数を表し、Raは、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を示す。
【化26】
【化27】
【0081】
前記アルデヒド化合物、または、ケトン化合物(以下、「化合物(a)」という場合がある。)の具体例としては、前記アルデヒド化合物が、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ピバルアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、トリオキサン、シクロヘキシルアルデヒド、ジフェニルアセトアルデヒド、エチルブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、グリオキシル酸、5-ノルボルネン-2-カルボキシアルデヒド、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、サリチルアルデヒド、ナフトアルデヒド、グリオキサール、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、フタルアルデヒド等が挙げられる。前記アルデヒド化合物の中でも、工業的に入手が容易であることから、グリオキサール、グルタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、フタルアルデヒドなどが好ましい。また、前記ケトン化合物としては、シクロヘキサンジオン、ジアセチルベンゼンが好ましく、中でもシクロヘキサンジオンが、工業的に入手が容易である点でより好ましい。前記化合物(a)は、その使用にあたっては、1種類のみに限定されるものではなく、2種以上の併用も可能である。
【0082】
また、前記フェノールまたはその誘導体(以下、「化合物(b)」という場合がある。)としては、特に限定されないが、具体的には、2,6-キシレノール(2,6-ジメチルフェノール)、2,3,6-トリメチルフェノール、2,6-t-ブチルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2,6-ジシクロヘキシルフェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール等が挙げられる。これらフェノールまたはその誘導体は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。中でも、例えば、2,6-キシレノールのようなフェノール性水酸基に対してオルト位がアルキル置換された化合物を使用することが、より好ましい態様となる。但し、立体障害が大きすぎると、中間体フェノール化合物の合成時における反応性を阻害する場合も懸念されるため、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、または、ベンジル基を有する化合物(b)を使用することが好ましい。
【0083】
本実施形態に用いる中間体フェノール化合物の製造方法においては、前記化合物(a)と前記化合物(b)を、前記化合物(a)に対する前記化合物(b)のモル比(化合物(b)/化合物(a))を、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.2~8で仕込み、酸触媒存在下で反応させることにより、前記中間体フェノール化合物を得ることができる。
【0084】
前記反応に用いる酸触媒には、例えば、リン酸、塩酸、硫酸のような無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸、活性白土、酸性白土、シリカアルミナ、ゼオライト、強酸性イオン交換樹脂のような固体酸、ヘテロポリ酸等を挙げることができるが、反応後、塩基による中和と水による洗浄で簡便に除去できる均一系触媒である無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸を用いることが好ましい。
【0085】
前記酸触媒の配合量は、最初に仕込む原料の前記化合物(a)、および、前記化合物(b)の総量100質量部に対して、酸触媒を0.001~40質量部の範囲で配合されるが、ハンドリング性と経済性の点から、0.001~25質量部が好ましい。
【0086】
前記反応温度は、通常30~150℃の範囲であればよいが、異性体構造の生成を抑制し、熱分解等の副反応を避け、高純度の中間体フェノール化合物を得るためには、60~120℃が好ましい。
【0087】
前記反応時間としては、短時間では反応が完全に進行せず、また長時間にすると生成物の熱分解反応等の副反応が起こることから、前記反応温度条件下で、通常は、のべ0.5~24時間の範囲であるが、好ましくは、のべ0.5~15時間の範囲である。
【0088】
前記中間体フェノール化合物の製造方法においては、フェノールまたはその誘導体が溶剤を兼ねるため、必ずしも他の溶剤は用いなくても良いが、溶剤を用いることも可能である。
【0089】
前記中間体フェノール化合物を合成するために使用される有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類、2-エトキシエタノール、メタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、スルホラン等の非プロトン性溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられ、またこれらは単独で用いても混合して用いてもよい。
【0090】
前記中間体フェノール化合物の水酸基当量(フェノール当量)としては、耐熱性の観点から、好ましくは、80~500g/eqであり、より好ましくは、100~300g/eqである。なお、中間体フェノール化合物の水酸基当量(フェノール当量)は、滴定法により算出したものであり、JIS K0070に準拠した中和滴定法を指す。
【0091】
<工程(1-b)>
工程(I-b)では、塩基性、または、酸性触媒存在下で、前記中間体フェノール化合物に、無水メタクリル酸、メタクリル酸クロリドならびにクロロメチルスチレンとの反応といった公知の方法によって、メタクリロイルオキシ基とビニルベンジル基の両方の構造を含有する硬化性樹脂(A1)を得ることができる。
【0092】
前記無水メタクリル酸や、メタクリル酸クロリドはそれぞれ単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0093】
前記塩基性触媒としては、具体的には、ジメチルアミノピリジン、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、および、アルカリ金属水酸化物等が挙げられる。前記酸性触媒としては、具体的には、硫酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。特にジメチルアミノピリジンが触媒活性の点から優れている。
【0094】
例えば、前記中間体フェノール化合物に含まれる水酸基1モルに対し、前記無水メタクリル酸、クロロメチルスチレンを合計で1~10モルを添加し、0.01~0.2モルの塩基性触媒を一括添加、または、徐々に添加しながら、30~150℃の温度で、1~40時間反応させる方法が挙げられる。
【0095】
また、前記無水メタクリル酸およびクロロスチレンとの反応時に、有機溶媒を併用することにより、硬化性樹脂(A1)の合成における反応速度を高めることができる。このような有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類、メタノール、エタノール、1-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4-ジオキサン、1、3-ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、トルエン等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調製するために、適宜2種以上を併用してもよい。
【0096】
上述の無水メタクリル酸等との反応の終了後は、反応生成物を貧溶媒に再沈した後、析出物を貧溶媒で20~100℃の温度で、0.1~5時間撹拌し、減圧濾過した後、析出物を40~80℃の温度で、1~10時間乾燥することで、目的の硬化性樹脂(A1)を得ることができる。貧溶媒としてはヘキサンなどが挙げられる。
【0097】
<硬化性樹脂(A2)の製造方法>
次に、硬化性樹脂(A2)の製造方法について説明をする。硬化性樹脂(A2)は、例えば界面重合法等の有機溶媒中で反応させる方法、または、溶融重合等の溶融状態で反応させる方法等により得ることができる。
【0098】
<界面重合法>
前記界面重合法としては、二価カルボン酸ハライドと末端構造である反応性基(メタクリロイルオキシ基、ビニルベンジル基)導入に使用される反応性基導入剤を水と相溶しない有機溶媒に溶解させた溶液(有機相)を、二価フェノール、重合触媒および酸化防止剤を含むアルカリ水溶液(水相)に混合し、50℃以下の温度で1~8時間撹拌しながら重合反応を行う方法が挙げられる。
また、別の前記界面重合法としては、末端構造である反応性基導入に使用される反応性基導入剤を水と相溶しない有機溶媒に溶解させた溶液(有機相)を、二価フェノール、重合触媒および酸化防止剤を含むアルカリ水溶液(水相)に混合した中にホスゲンを吹き込み、50℃以下の温度で1~8時間撹拌しながら重合反応をおこなう方法などが挙げられる。
【0099】
有機相に用いる有機溶媒としては、水と相溶せず、ポリアリレートを溶解する溶媒が好ましい。このような溶媒としては、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、o-,m-,p-ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族系炭化水素、もしくはテトラヒドロフランなどが挙げられ、製造上使用しやすいことから、塩化メチレンが好ましい。
【0100】
水相に用いるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウムの水溶液および水酸化カリウムの水溶液が挙げられる。
【0101】
酸化防止剤は、二価フェノール成分の酸化を防止するために用いられる。酸化防止剤としては、例えば、ハイドロサルファイトナトリウム、L-アスコルビン酸、エリソルビン酸、カテキン、トコフェノール、ブチルヒドロキシアニソールが挙げられる。中でも、水溶性に優れていることから、ハイドロサルファイトナトリウムが好ましい。
【0102】
重合触媒としては、例えば、トリ-n-ブチルベンジルアンモニウムハライド、テトラ-n-ブチルアンモニウムハライド、トリメチルベンジルアンモニウムハライド、トリエチルベンジルアンモニウムハライド等の第四級アンモニウム塩;およびトリ-n-ブチルベンジルホスホニウムハライド、テトラ-n-ブチルホスホニウムハライド、トリメチルベンジルホスホニウムハライド、トリエチルベンジルホスホニウムハライド等の第四級ホスホニウム塩が挙げられる。中でも、分子量が高く、酸価の低いポリマーを得ることができることから、トリ-n-ブチルベンジルアンモニウムハライド、トリメチルベンジルアンモニウムハライド、テトラ-n-ブチルアンモニウムハライド、トリ-n-ブチルベンジルホスホニウムハライド、テトラ-n-ブチルホスホニウムハライドが好ましい。
【0103】
前記重合触媒の添加量としては、重合に用いる二価フェノールのモル数に対して、0.01~5.0mol%が好ましく、0.1~1.0mol%がより好ましい。なお、重合触媒の添加量が0.01mol%以上であると、重合触媒の効果が得られ、ポリアリレート樹脂の分子量が高くなるため好ましい。一方、5.0mol%以下である場合には、二価の芳香族カルボン酸ハライドの加水分解反応が抑制され、ポリアリレート樹脂の分子量が高くなり好ましい。
【0104】
二価フェノールとしては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,6-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5,6-トリメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,6-トリメチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,6-ジメチルフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5,6-トリメチルフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,3,6-トリメチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ブタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エタン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,4-ビス(2-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシル-6-メチルフェニル)プロパンなどが挙げられる。
【0105】
二価カルボン酸ハライドとしては、例えば、テレフタル酸ハライド、イソフタル酸ハライド、オルソフタル酸ハライド、ジフェン酸ハライド、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸ハライド、1,4-ナフタレンジカルボン酸ハライド、2,3-ナフタレンジカルボン酸ハライド、2,6-ナフタレンジカルボン酸ハライド、2,7-ナフタレンジカルボン酸ハライド、1,8-ナフタレンジカルボン酸ハライド、1,5-ナフタレンジカルボン酸ハライド、ジフェニルエーテル-2,2’-ジカルボン酸ハライド、ジフェニルエーテル-2,3’-ジカルボン酸ハライド、ジフェニルエーテル-2,4’-ジカルボン酸ハライド、ジフェニルエーテル-3,3’-ジカルボン酸ハライド、ジフェニルエーテル-3,4’-ジカルボン酸ハライド、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸ハライド、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ハライド、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸ハライドなどが挙げられる。
【0106】
硬化性樹脂(A2)は、メタクリロイルオキシ基とビニルベンジル基の両方の構造を含有するが、前記反応性基(メタクリロイルオキシ基、ビニルベンジル基)を導入するために、反応性基導入剤を用いることができる。前記反応性基導入剤としては、例えば、無水メタクリル酸、メタクリル酸クロリド等とクロロメチルスチレンを反応させることができる。これらを反応させることにより、硬化性樹脂中に反応性基を導入することができ、また、低誘電率、低誘電正接な熱硬化性となり、好ましい態様となる。
【0107】
前記無水メタクリル酸や、メタクリル酸クロリドはそれぞれ単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0108】
<溶融重合法>
前記溶融重合法としては、原料の二価フェノールをアセチル化した後、アセチル化された二価フェノールと二価カルボン酸とを脱酢酸重合する方法、または、二価フェノールと炭酸エステルとをエステル交換反応する方法が挙げられる。
【0109】
アセチル化反応においては、反応容器に、芳香族ジカルボン酸成分と二価フェノール成分と無水酢酸を投入する。その後、窒素置換を行い、不活性雰囲気下、100~240℃、好ましくは120~180℃の温度で、5分~8時間、好ましくは30分~5時間、常圧または加圧下で撹拌する。二価フェノール成分のヒドロキシル基に対する無水酢酸のモル比は、1.00~1.20とすることが好ましい。
【0110】
脱酢酸重合反応とは、アセチル化した二価フェノールと二価カルボン酸を反応させ、重縮合する反応である。脱酢酸重合反応においては、240℃以上、好ましくは260℃以上、より好ましくは220℃以上の温度、500Pa以下、好ましくは260Pa以下、より好ましくは130Pa以下の減圧度で、30分以上保持し、撹拌する。温度が240℃以上である場合、減圧度が500Pa以下である場合、または保持時間が30分以上の場合、脱酢酸反応が十分に進行し、得られるポリアリレート樹脂中の酢酸量を低減できるほか、全体の重合時間を短縮したり、ポリマー色調の悪化を抑制できる。
【0111】
アセチル化反応および脱酢酸重合反応においては、必要に応じて、触媒を用いることが好ましい。触媒としては、例えば、テトラブチルチタネート等の有機チタン酸化合物;酢酸亜鉛;酢酸カリウム等のアルカリ金属塩;酢酸マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;三酸化アンチモン;ヒドロキシブチルスズオキサイド、オクチル酸スズ等の有機錫化合物;N-メチルイミダゾール等のヘテロ環化合物が挙げられる。触媒の添加量は、得られるポリアリレート樹脂の全モノマー成分に対して、通常1.0モル%以下であり、より好ましくは0.5モル%以下であり、さらに好ましくは0.2モル%以下である。
【0112】
エステル交換反応においては、120~260℃、好ましくは160~200℃の温度で0.1~5時間、好ましくは0.5~6時間、常圧~1Torrの圧力で反応させる。
【0113】
エステル交換反応の触媒としては、例えば、亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛の塩が好ましく用いられ、これらは単独もしくは組み合わせて用いることができる。エステル交換触媒としては、具体的には、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)等が用いられる。これらの触媒は、二価フェノールの合計1モルに対して、0.000001~0.1モル%の比率で、好ましくは0.00001~0.01モル%の比率で用いられる。
【0114】
二価フェノールとしては、上述した界面重合法での二価フェノールを同様に使用できる。
【0115】
二価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ジフェン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル-2,2’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-2,3’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-2,4’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-3,3’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-3,4’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。
【0116】
炭酸エステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられる。
【0117】
硬化性樹脂(A2)は、メタクリロイルオキシ基とビニルベンジル基の両方の構造を含有するが、前記反応性基(メタクリロイルオキシ基、ビニルベンジル基)を導入するために、反応性基導入剤を用いることができ、前記反応性基導入剤としては、上述した界面重合法での反応性基導入剤を同様に使用できる。
【0118】
<硬化性樹脂(A3)の製造方法>
最後に、硬化性樹脂(A3)の製造方法について説明をする。硬化性樹脂(A3)は、例えば以下の工程(II-a)および工程(II-b)を含む方法により得ることができる。
【0119】
<工程(II-a)>
工程(II-a)では、下記一般式(19)の化合物と、下記一般式(22-1)~(22-3)のいずれかの化合物を、酸触媒存在下に反応させることにより、硬化性樹脂(A3)の原料(前駆体)である中間体フェノール化合物を得ることができる。なお、下記一般式(19)中、Rcはそれぞれ独立に下記一般式(20)および(21)よりなる群から選択される一価の官能基を示しており、2つのRcの少なくとも一方のRcのオルト位が水素原子であり、Rbは炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、lは0~4の整数を示す。
【化28】
(19)

【化29】
(20)

【化30】
(21)
【0120】
下記一般式(22-1)は、上記一般式(1)中のjが0の場合、つまり、インダン骨格を有する硬化性樹脂が、ベンゼン環の場合であり、iは1または2であることが好ましく、iが1であることがより好ましい。また、下記一般式(22-2)は、上記一般式(1)中のjが1の場合、つまり、ナフタレン環の場合であり、iは1または2であることが好ましく、iが1であることがより好ましい。また、下記一般式(22-3)は、上記一般式(1)中のjが2の場合、つまり、アントラセン環の場合であり、iは1または2であることが好ましく、iが1であることがより好ましい。インダン骨格を有する硬化性樹脂が、水酸基(フェノール性水酸基)を有することで、構造中の末端にフェノール性水酸基を導入することが可能となり、好ましい態様となる。なお、Raおよびhは、それぞれ上記と同様のものを示すフェノールまたはその誘導体であり、上記一般式(19)の化合物と、下記一般式(22-1)~(22-3)のいずれかの化合物を、酸触媒存在下に反応させることにより、下記一般式(23)で示される中間体フェノール化合物を得ることができる。なお、下記一般式(23)中のRa、h、およびiは上記と同様のものを示し、nは繰り返し単位を示す。また、下記一般式(23)は上記一般式(1)中のjが0の場合、つまり、ベンゼン環の場合を例示している。
【化31】
(22-1)

(22-2)


(22-3)

【化32】
(23)
【0121】
上記一般式(23)の重量平均分子量は(Mw)は、500~50000であることが好ましく、1000~10000であることがより好ましく、1500~5000がさらに好ましい。前記範囲内であると、溶剤溶解性が向上し、加工作業性が良好であり、更に、得られる硬化物の可撓性や柔軟性に優れるため、好ましい。
【0122】
本発明において用いる上記一般式(19)で表される化合物(以下、「化合物(c)」)は、特に限定されないが、典型的には、p-およびm-ジイソプロペニルベンゼン、p-およびm-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン(α,α’-ジヒドロキシ-1,3-ジイソプロピルベンゼン)、p-およびm-ビス(α-クロロイソプロピル)ベンゼン、1-(α-ヒドロキシイソプロピル)-3-イソプロペニルベンゼン、1-(α-ヒドロキシイソプロピル)-4-イソプロペニルベンゼンあるいはこれらの混合物を用いる。またこれらの化合物の核アルキル基置換体、例えば、ジイソプロペニルトルエンおよびビス(α-ヒドロキシイソプロピル)トルエン等も用いることができ、さらに核ハロゲン置換体、例えば、クロロジイソプロペニルベンゼンおよびクロロビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン等も用いることができる。
【0123】
その他、前記化合物(c)として、例えば、2-クロロ-1,4-ジイソプロペニルベンゼン、2-クロロ-1,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2-ブロモ-1,4-ジイソプロペニルベンゼン、2-ブロモ-1,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2-ブロモ-1,3-ジイソプロペニルベンゼン、2-ブロモ-1,3-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、4-ブロモ-1,3-ジイソプロピルベンゼン、4-ブロモ-1,3-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5-ブロモ-1,3-ジイソプロペニルベンゼン、5-ブロモ-1,3-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2-メトキシ-1,4-ジイソプロペニルベンゼン、2-メトキシ-1,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5-エトキシ-1,3-ジイソプロペニルベンゼン、5-エトキシ-1,3-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2-フェノキシ-1,4-ジイソプロペニルベンゼン、2-フェノキシ-1,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2,4-ジイソプロペニルベンゼンチオール、2,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンチオール、2,5-ジイソプロペニルベンゼンチオール、2,5-ビス(αヒドロキシイソプロピル)ベンゼンチオール、2-メチルチオ-1,4-ジイソプロペニルベンゼン、2-メチルチオ-1,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2-フェニルチオ-1,3-ジイソプロペニルベンゼン、2-フェニルチオ-1,3-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2-フェニル-1,4-ジイソプロペニルベンゼン、2-フェニル-1,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2-シクロペンチル-1,4-ジイソプロペニルベンゼン、2-シクロペンチル-1,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5-ナフチル-1,3-ジイソプロペニルベンゼン、5-ナフチル-1,3-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2-メチル-1,4-ジイソプロペニルベンゼン、2-メチル-1,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5-ブチル-1,3-ジイソプロペニルベンゼン、5-ブチル-1,3-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5-シクロヘキシル-1,3-ジイソプロペニルベンゼン、5-シクロヘキシル-1,3-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンなどを例示することができる。
【0124】
記化合物(c)中に含まれる置換基としては、特に限定はされず、上記例示の化合物を使用できるが、立体障害の大きな置換基の場合、立体障害の小さな置換基に比べて、得られる中間体フェノール化合物同士のスタッキングが生じにくく、中間体フェノール化合物同士の結晶化が起こりにくく、つまり、中間体フェノール化合物の溶剤溶解性が向上し、好ましい態様となる。
【0125】
また、上記一般式(22-1)~(22-3)のいずれかで表される化合物(以下、「化合物(d)」)としては、フェノールまたはその誘導体であり、特に限定されないが、典型的には、2,6-キシレノール(2,6-ジメチルフェノール)、2,3,6-トリメチルフェノール、2,6-t-ブチルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2,6-ジシクロヘキシルフェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール等が挙げられる。これらフェノールまたはその誘導体は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。中でも、例えば、2,6-キシレノールのようなフェノール性水酸基に対してオルト位がアルキル置換された化合物を使用することが、より好ましい態様となる。但し、立体障害が大きすぎると、中間体フェノール化合物の合成時における反応性を阻害する場合も懸念されるため、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、または、ベンジル基を有する化合物(d)を使用することが好ましい。
【0126】
本実施形態に用いる上記一般式(23)で表される中間体フェノール化合物の製造方法においては、前記化合物(c)と前記化合物(d)を、前記化合物(c)に対する前記化合物(d)のモル比(化合物(d)/化合物(c))を、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.2~8で仕込み酸触媒存在下に反応させることにより、インダン骨格を有する中間体フェノール化合物を得ることができる。
【0127】
前記反応に用いる酸触媒には、例えば、リン酸、塩酸、硫酸のような無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸、活性白土、酸性白土、シリカアルミナ、ゼオライト、強酸性イオン交換樹脂のような固体酸、ヘテロポリ塩酸等を挙げることができるが、反応後、塩基による中和と水による洗浄で簡便に除去できる均一系触媒であるシュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸を用いることが好ましい。
【0128】
前記酸触媒の配合量は、最初に仕込む原料の前記化合物(c)、および、前記化合物(d)の総量100質量部に対して、酸触媒を0.001~40質量部の範囲で配合されるが、ハンドリング性と経済性の点から、0.001~25質量部が好ましい。
【0129】
前記反応温度は、通常50~300℃の範囲であればよいが、異性体構造の生成を抑制し、熱分解等の副反応を避け、高純度の中間体フェノール化合物を得るためには、80~200℃が好ましい。
【0130】
前記反応時間としては、短時間では反応が完全に進行せず、また長時間にすると生成物の熱分解反応等の副反応が起こることから、前記反応温度条件下で、通常は、のべ0.5~24時間の範囲であるが、好ましくは、のべ0.5~12時間の範囲である。
【0131】
前記中間体フェノール化合物の製造方法においては、フェノールまたはその誘導体が溶剤を兼ねるため、必ずしも他の溶剤は用いなくても良いが、溶剤を用いることも可能である。例えば、脱水反応を兼ねた反応系の場合、具体的には、α-ヒドロキシプロピル基を有する化合物を原料として反応させる場合には、トルエン、キシレン、またはクロロベンゼン等の共沸脱水可能な溶剤を用いて、脱水反応を完結させた後、溶剤を留去してから、上記反応温度の範囲で反応を行う方法を採用してもよい。
【0132】
前記中間体フェノール化合物を合成するために使用される有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、スルホラン等の非プロトン性溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられ、またこれらは単独で用いても混合して用いてもよい。
【0133】
前記中間体フェノール化合物の水酸基当量(フェノール当量)としては、耐熱性の観点から、好ましくは、200~2000g/eqであり、より好ましくは、220~500g/eqである。なお、中間体フェノール化合物の水酸基当量(フェノール当量)は、滴定法により算出したものであり、JIS K0070に準拠した中和滴定法を指す。
【0134】
<工程(II-b)>
工程(II-b)では、塩基性、または、酸性触媒存在下で、前記中間体フェノール化合物に、無水メタクリル酸、または、メタクリル酸クロリドならびにクロロメチルスチレンとの反応といった公知の方法によって、メタクリロイルオキシ基とビニルベンジル基が導入された硬化性樹脂(A3)を得ることができる。
【0135】
前記無水メタクリル酸や、メタクリル酸クロリドはそれぞれ単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0136】
前記塩基性触媒としては、ジメチルアミノピリジン、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、および、アルカリ金属水酸化物等が挙げられる。前記酸性触媒としては、具体的には、硫酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。特にジメチルアミノピリジンが触媒活性の点から優れている。
【0137】
例えば、前記中間体フェノール化合物に含まれる水酸基1モルに対し、前記無水メタクリル酸、クロロメチルスチレンを合計で1~10モルを添加し、0.01~0.2モルの塩基性触媒を一括添加、または、徐々に添加しながら、30~150℃の温度で、1~40時間反応させる方法が挙げられる。
【0138】
また、前記無水メタクリル酸およびクロロメチルスチレンとの反応時に、有機溶媒を併用することにより、インダン骨格を有する硬化性樹脂の合成における反応速度を高めることができる。このような有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4-ジオキサン、1、3-ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、トルエン等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調製するために、適宜2種以上を併用してもよい。
【0139】
上述の無水メタクリル酸等との反応の終了後は、反応生成物を水洗した後、加熱減圧条件下で未反応の無水メタクリル酸等や併用した有機溶媒を留去する。更に、得られるインダン骨格を有する硬化性樹脂中の加水分解性ハロゲンを一層低減するために、インダン骨格を有する硬化性樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行うこともできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるインダン骨格を有する硬化性樹脂に対して0.1~10質量%の範囲が好ましい。反応終了後は生成した塩を濾過または水洗などにより除去し、加熱減圧条件下で有機溶媒を留去することにより、加水分解性塩素の含有率が低い目的のインダン骨格を有する硬化性樹脂を得ることができる。
【0140】
<硬化性樹脂組成物>
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、一般式(1)で表される構造と一般式(2)で表される構造の両方を含有する前記硬化性樹脂(A)を、含有する。なお、前記硬化性樹脂(A)が、一般式(1)で表される構造と一般式(2)で表される構造のいずれか片方しか有さない場合、得られる硬化物は、耐熱性が低く、好ましくない。一方で、前記構造をいずれも含有することで、硬化反応が十分に進行し、得られる硬化物の耐熱性に優れるだけでなく、従来では成し得なかった高い誘電特性を両立することができる。
【0141】
<その他樹脂等>
本実施形態の硬化性樹脂組成物には、目的を損なわない範囲で、必要に応じて、熱可塑性樹脂を配合してもよい。例えば、スチレンブタジエン樹脂、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック樹脂、スチレン-イソプレン-スチレン樹脂、スチレン-無水マレイン酸樹脂、アクリロニトリルブタジエン樹脂、ポリブタジエン樹脂あるいはそれらの水素添加した樹脂、アクリル樹脂、および、シリコーン樹脂などを用いることができる。前記熱可塑性樹脂を使用することで、その樹脂に起因する特性を硬化物に付与することができ、好ましい態様となる。例えば、付与できる性能としては、成形性、高周波特性、導体接着性、半田耐熱性、ガラス転移温度の調整、熱膨張係数、スミア除去性の付与などに寄与することができる。
【0142】
<難燃剤>
本実施形態の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、難燃性を発揮させるために、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合することができる。前記非ハロゲン系難燃剤として、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、これらを単独、あるいは、組み合わせて用いることができる。
【0143】
<無機充填材>
本実施形態の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、無機質充填剤を配合することができる。前記無機質充填剤として、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填剤の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、かつ、成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。
【0144】
<その他配合剤>
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0145】
<硬化物>
本発明は、前記硬化性樹脂組成物を硬化反応させて得られる硬化物に関する。前記硬化性樹脂組成物は、目的に応じて、上述した難燃剤などの各成分を均一に混合することにより得られ、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。前記硬化物としては、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0146】
前記硬化反応としては、熱硬化や紫外線硬化反応などが挙げられ、中でも熱硬化反応としては、無触媒下でも容易に行われる。
【0147】
<用途>
本発明の硬化性樹脂組成物により得られる硬化物が、耐熱性、および、誘電特性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能である。特に、プリプレグの製造に使用されるワニス、プリプレグ、回路基板、半導体封止材、半導体装置、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、接着剤やレジスト材料などに好適に使用できる。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用でき、高耐熱性のプリプレグとして特に適している。こうして得られる耐熱部材や電子部材は、各種用途に好適に使用可能であり、例えば、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品、宇宙・航空関連部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材等が挙げられるが、これらに限定される物ではない。
【0148】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて製造される代表的な製品について例を挙げて説明する。
【0149】
<ワニス>
本発明は、前記硬化性樹脂組成物を有機溶剤で希釈したものであるワニスに関する。前記ワニスの調製方法としては、公知の方法を使用でき、前記硬化性樹脂組成物を、有機溶剤に溶解(希釈)し、樹脂ワニスとすることができる。
【0150】
前記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の中から、単独、あるいは、2種以上の混合溶媒として用いることができる。
【0151】
<プリプレグ>
本発明は、補強基材、および、前記補強基材に含浸した前記ワニスの半硬化を有するプレプレグに関する。前記ワニス(樹脂ワニス)を補強基材に含浸させ、前記ワニス(樹脂ワニス)を含浸させた補強基材を熱処理することにより、前記硬化性樹脂組成物を半硬化(あるいは未硬化)させ、プリプレグとすることができる。
【0152】
前記ワニス(樹脂ワニス)を含浸させる補強基材としては、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の無機繊維、有機繊維からなる織布や不織布、またはマット、紙等であり、これらを単独、あるいは、組み合わせて用いることができる。
【0153】
前記プリプレグ中の硬化性樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の硬化性樹脂組成物(中の樹脂分)が20~60質量%となるように調製することが好ましい。
【0154】
前記プリプレグの熱処理の条件としては、使用する有機溶剤、触媒、各種添加剤の種類や使用量などに応じて、適宜選択されるが、通常、80~220℃の温度で、3分~30分といった条件で行われる。
【0155】
<回路基板>
本発明は、前記プリプレグ、および、銅箔を積層し、加熱圧着成型して得られる回路基板に関する。具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物から回路基板を得る方法としては、上記プリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1~10MPaの加圧下に170~300℃で10分~3時間、加熱圧着成型させ、回路基板とすることができる。
【0156】
<半導体封止材>
半導体封止材としては、前記硬化性樹脂組成物を含有することが好ましい。具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物から半導体封止材を得る方法としては、前記硬化性樹脂組成物に、更に任意成分である無機充填剤等の配合剤とを必要に応じて押出機、ニ-ダ、ロ-ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常、溶融シリカが用いられるが、パワートランジスタ、パワーIC用高熱伝導半導体封止材として用いる場合は、溶融シリカよりも熱伝導率の高い結晶シリカ,アルミナ,窒化ケイ素などを用いるとよい。その充填率は、硬化性樹脂組成物100質量部当たり、無機充填剤を30~95質量部の範囲で用いることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましい。
【0157】
<半導体装置>
半導体装置としては、前記半導体封止材を加熱硬化した硬化物を含むことが好ましい。具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物から半導体装置を得る半導体パッケージ成形としては、上記半導体封止材を注型、または、トランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50~250℃で、2~10時間の間、加熱硬化する方法が挙げられる。
【0158】
<ビルドアップ基板>
本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップ基板を得る方法としては、工程1~3を経由する方法が挙げられる。工程1では、まず、ゴム、フィラーなどを適宜配合した前記硬化性樹脂組成物を、回路を形成した回路基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。工程2では、必要に応じて、硬化性樹脂組成物が塗布された回路基板に所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、前記基板に凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。工程3では、工程1~2の操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層および所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップしてビルドアップ基板を成形する。なお、前記工程において、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行うとよい。また、本発明におけるビルドアップ基板は、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170~300℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0159】
<ビルドアップフィルム>
ビルドアップフィルムとしては、前記硬化性樹脂組成物を含有することが好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップフィルムを得る方法としては、例えば、支持フィルム上に硬化性樹脂組成物を塗布したのち、乾燥させて、支持フィルムの上に樹脂組成物層を形成する方法が挙げられる。本発明の硬化性樹脂組成物をビルドアップフィルムに用いる場合、該フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70~140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう前記各成分を配合することが好ましい。
【0160】
ここで、回路基板のスルーホールの直径は通常0.1~0.5mm、深さは通常0.1~1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
【0161】
前記したビルドアップフィルムを製造する具体的な方法としては、有機溶剤を配合してワニス化した樹脂組成物を調製した後、支持フィルム(Y)の表面に、前記ワニス化した樹脂組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥して、樹脂組成物層(X)を形成する方法が挙げられる。
【0162】
ここで用いる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30~60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0163】
なお、形成される前記樹脂組成物層(X)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする必要がある。回路基板が有する導体層の厚さは通常5~70μmの範囲であるので、前記樹脂組成物層(X)の厚さは10~100μmの厚みを有するのが好ましい。なお、本発明における前記樹脂組成物層(X)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0164】
前記支持フィルムおよび保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、前記支持フィルムおよび保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10~150μmであり、好ましくは25~50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1~40μmとするのが好ましい。
【0165】
前記支持フィルム(Y)は、回路基板にラミネートした後に、あるいは、加熱硬化することにより、絶縁層を形成した後に、剥離される。ビルドアップフィルムを構成する樹脂組成物層が加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0166】
なお、前記のようにして得られたビルドアップフィルムから多層プリント回路基板を製造することができる。例えば、前記樹脂組成物層(X)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、前記樹脂組成物の層(X)を回路基板に直接接するように回路基板の片面または両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。また必要により、ラミネートを行う前にビルドアップフィルムおよび回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を70~140℃とすることが好ましく、圧着圧力を1~11kgf/cm(9.8×104~107.9×104N/m)とすることが好ましく、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
【0167】
<導電ペースト>
本発明の硬化性樹脂組成物から導電ペーストを得る方法としては、例えば、導電性粒子を該組成物中に分散させる方法が挙げられる。上記導電ペーストは、用いる導電性粒子の種類によって、回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とすることができる。
【実施例
【0168】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において、「部」および「%」は特に断わりのない限り質量基準である。なお、以下に示す条件に硬化性樹脂または硬化性化合物、および、前記硬化性樹脂または前記硬化性化合物を用いて得られる硬化性樹脂フィルムを作製し、更に得られた硬化性樹脂フィルムについて、以下の条件にて測定または計算し、評価を行った。
【0169】
<GPC測定(硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)の評価)>
以下の測定装置、測定条件を用いて測定し、以下に示す製造方法で得られた硬化性樹脂のGPCチャートを得た。前記GPCチャートの結果より、硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)を算出した(GPCチャートは図示せず)。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-122」
試料:実施例で得られた硬化性樹脂の固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0170】
(実施例1)硬化性樹脂(A-1)の調製
冷却管を設置した200mlの三口フラスコに、2,6-キシレノール67.2g(0.55mol)、96%硫酸53.7gを仕込み、窒素フローしながらメタノール30mlに溶解させた。オイルバス中で70℃に昇温し、攪拌しながら50%グルタルアルデヒド水溶液25g(0.125mol)を6時間かけて添加した後、12時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた反応混合物(反応液)を室温(25℃)まで冷却し、この反応液にトルエン200mlを加え、ついで、水200mLを用いて洗浄した。その後、得られた有機相をヘキサン500mL中に注ぎ込み、これにより析出した固体を濾別し、真空乾燥させて、中間体フェノール化合物22g(0.039mol)を得た。
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた200mLフラスコに、トルエン20g、及び、前記中間体フェノール化合物22g(0.039mol)を混合して、約85℃に昇温した。ここにジメチルアミノピリジン0.19g(0.0016mol)とトリエチルアミン25.3g(0.25mol)を添加した。固体がすべて溶解した後に、メタクリル酸クロリド13.1g(0.125mol)と4-クロロメチルスチレン19.1g(0.125mol)を徐々に添加した。得られた溶液を混合しながら85℃の状態で、20時間維持した。
次に、得られた溶液を室温(25℃)に冷却した後、1Lのビーカー中、マグネチックスターラーで激しく撹拌したヘキサン360g中に30分かけて滴下した。得られた沈殿物を減圧濾過後乾燥し、下記構造式で、Uがメタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基であり、メタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基のモル比が1対1である硬化性樹脂(A―1)38gを得た。
【化33】
【0171】
(実施例2)硬化性樹脂(A-2)の調製
冷却管を設置した200mlの三口フラスコに、2-シクロヘキシル-5-メチルフェノール104.7g(0.55mol)、96%硫酸53.7gを仕込み、窒素フローしながらメタノール30mlに溶解させた。オイルバス中で70℃に昇温し、攪拌しながら50%グルタルアルデヒド水溶液25g(0.125mol)を6時間かけて添加した後、12時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた反応混合物(反応液)を室温(25℃)まで冷却し、この反応液にトルエン200mlを加え、ついで、水200mLを用いて洗浄した。その後、得られた有機相をヘキサン500mL中に注ぎ込み、これにより析出した固体を濾別し、真空乾燥させて、中間体フェノール化合物32.2g(0.039mol)を得た。
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた200mLフラスコに、トルエン20g及び前記中間体フェノール化合物32.2g(0.039mol)を混合して、約85℃に昇温した。ここにジメチルアミノピリジン0.19g(0.0016mol)とトリエチルアミン25.3g(0.25mol)を添加した。固体がすべて溶解した後に、メタクリル酸クロリド13.1g(0.125mol)と4-クロロメチルスチレン19.1g(0.125mol)を徐々に添加した。得られた溶液を混合しながら85℃の状態で、20時間維持した。
次に、得られた溶液を室温(25℃)に冷却して、1Lのビーカー中、マグネチックスターラーで激しく撹拌したヘキサン360g中に30分かけて滴下した。得られた沈殿物を減圧濾過後乾燥し、下記構造式で、Uがメタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基であり、メタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基のモル比が1対1である硬化性樹脂(A―2)40gを得た。
【化34】
【0172】
(実施例3)硬化性樹脂(A-3)の調製
攪拌装置を備えた反応容器に、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン113.8質量部、水酸化ナトリウム64.0質量部、トリ-n-ブチルベンジルアンモニウムクロライドを0.25質量部、純粋2000質量部を仕込み、溶解させ、水相を調製した。塩化メチレン1500質量部に、テレフタル酸ジクロリド30.5質量部、イソフタル酸ジクロリド30.5質量部、メタクリル酸クロリド10.5質量部と4-クロロメチルスチレン15.3質量部を溶解させ、有機相を調製した。
水相をあらかじめ攪拌しておき、有機相を水相中に強攪拌下で添加し、20℃で5時間反応させた。この後、攪拌を停止し、水相と有機相を分離し、有機相を純水で10回洗浄した。この後、有機相から塩化メチレンをエバポレーターで減圧蒸留し、ポリマーを乾固させた。得られたポリマーを、減圧乾燥し、下記構造式で、Uがメタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基であり、メタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基のモル比が1対1である重量平均分子量が3100の硬化性樹脂(A-3)を得た。
【化35】
【0173】
(実施例4)硬化性樹脂(A-4)の調製
上記実施例3における2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンを、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メタン102.5質量部に変更した以外は、上記実施例3と同様の方法で合成を実施し、下記構造式で、Uがメタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基であり、メタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基のモル比が1対1である重量平均分子量が2900の硬化性樹脂(A-4)を得た。
【化36】
【0174】
(実施例5)硬化性樹脂(A-5)の調製
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ、攪拌機を取り付けた1Lフラスコに2,6-ジメチルフェノール48.9g(0.4mol)、α,α’-ジヒドロキシ-1,3-ジイソプロピルベンゼン272.0g(1.4mol)、キシレン280g、及び、活性白土70gを仕込み、攪拌しながら120℃まで加熱した。さらに留出水をディーンスターク管で取り除きながら210℃になるまで昇温し、3時間反応させた。その後140℃まで冷却し、2,6-ジメチルフェノール146.6g(1.2mol)を仕込んだ後、220℃まで昇温し、3時間反応させた。反応後、100℃まで空冷し、トルエン300gで希釈して、ろ過により活性白土を除き、減圧下で溶剤、及び、未反応物等の低分子量物を留去することにより、中間体フェノール化合物365.3gを得た。得られた中間体フェノール化合物の水酸基当量(フェノール当量)は299であった。
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコに、得られた中間体フェノール化合物365.3gとトルエン700gを仕込み約85℃で攪拌した。次にジメチルアミノピリジン29.9g(0.24mol)とトリエチルアミン182.1g(1.8mol)を仕込み、固体がすべて溶解したと思われる時点でメタクリル酸クロリド94.1g(0.9mol)と4-クロロメチルスチレン137.4g(0.9mol)を10時間かけて滴下した。滴下終了後、85℃でさらに20時間反応させた。反応液を、5Lのビーカー中マグネチックスターラーで激しく撹拌したメタノール4000g中に1時間かけて滴下した。得られた沈殿物を、メンブランフィルターで減圧濾過後乾燥し、下記構造式で、Uがメタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基であり、メタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基のモル比が1対1である重量平均分子量が1500の硬化性樹脂(A-5)を得た。
【化37】
【0175】
(実施例6)硬化性樹脂(A-6)の調製
上記実施例5における2,6-ジメチルフェノールを、2-メチル-1-ナフトール284.76g(1.8mol)に変更した以外は、上記実施例5と同様の方法で合成を実施し、下記構造式で、Uがメタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基であり、メタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基のモル比が1対1である重量平均分子量が1600の硬化性樹脂(A-6)を得た。
【化38】
【0176】
(実施例7)硬化性樹脂(A-7)の調製
上記実施例5におけるメタクリル酸クロリド94.1g(0.9mol)と4-クロロメチルスチレン137.4g(0.9mol)を、メタクリル酸クロリド187.2g(1.79mol)と4-クロロメチルスチレン1.37g(0.009mol)を変更した以外は、上記実施例5と同様の方法で合成を実施し、上記実施例5に記載の構造式で、Uがメタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基であり、メタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基のモル比が99.5対0.5である重量平均分子量が1500の硬化性樹脂(A-7)を得た。
【0177】
(実施例8)硬化性樹脂(A-8)の調製
上記実施例5におけるメタクリル酸クロリド94.1g(0.9mol)と4-クロロメチルスチレン137.4g(0.9mol)を、メタクリル酸クロリド186.3g(1.78mol)と4-クロロメチルスチレン2.75g(0.02mol)を変更した以外は、上記実施例5と同様の方法で合成を実施し、上記実施例5に記載の構造式で、Uがメタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基であり、メタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基のモル比が99対1である重量平均分子量が1500の硬化性樹脂(A-8)を得た。
【0178】
(実施例9)硬化性樹脂(A-9)の調製
上記実施例5におけるメタクリル酸クロリド94.1g(0.9mol)と4-クロロメチルスチレン137.4g(0.9mol)を、メタクリル酸クロリド169.4g(1.62mol)と4-クロロメチルスチレン27.5g(0.18mol)を変更した以外は、上記実施例5と同様の方法で合成を実施し、上記実施例5に記載の構造式で、Uがメタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基であり、メタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基のモル比が90対10である重量平均分子量が1500の硬化性樹脂(A-9)を得た。
【0179】
(実施例10)硬化性樹脂(A-10)の調製
上記実施例5におけるメタクリル酸クロリド94.1g(0.9mol)と4-クロロメチルスチレン137.4g(0.9mol)を、メタクリル酸クロリド18.8g(0.18mol)と4-クロロメチルスチレン247.2g(1.62mol)を変更した以外は、上記実施例5と同様の方法で合成を実施し、上記実施例5に記載の構造式で、Uがメタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基であり、メタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基のモル比が10対90である重量平均分子量が1500の硬化性樹脂(A-10)を得た。
【0180】
(実施例11)硬化性樹脂(A-11)の調製
上記実施例5におけるメタクリル酸クロリド94.1g(0.9mol)と4-クロロメチルスチレン137.4g(0.9mol)を、メタクリル酸クロリド1.88g(0.02mol)と4-クロロメチルスチレン272.0g(1.78mol)を変更した以外は、上記実施例5と同様の方法で合成を実施し、上記実施例5に記載の構造式で、Uがメタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基であり、メタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基のモル比が1対99である重量平均分子量が1500の硬化性樹脂(A-11)を得た。
【0181】
(実施例12)硬化性樹脂(A-12)の調製
上記実施例5におけるメタクリル酸クロリド94.1g(0.9mol)と4-クロロメチルスチレン137.4g(0.9mol)を、メタクリル酸クロリド0.94g(0.009mol)と4-クロロメチルスチレン273.3g(1.79mol)を変更した以外は、上記実施例5と同様の方法で合成を実施し、上記実施例5に記載の構造式で、Uがメタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基であり、メタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基のモル比が0.5対99.5である重量平均分子量が1500の硬化性樹脂(A-12)を得た。

【0182】
(比較例1)硬化性樹脂(B-1)の調製
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ、攪拌機を取り付けた1Lフラスコに2,6-ジメチルフェノール48.9g(0.4mol)、α,α’-ジヒドロキシ-1,3-ジイソプロピルベンゼン272.0g(1.4mol)、キシレン280g、及び、活性白土70gを仕込み、攪拌しながら120℃まで加熱した。さらに留出水をディーンスターク管で取り除きながら210℃になるまで昇温し、3時間反応させた。その後140℃まで冷却し、2,6-ジメチルフェノール146.6g(1.2mol)を仕込んだ後、220℃まで昇温し、3時間反応させた。反応後、100℃まで空冷し、トルエン300gで希釈して、ろ過により活性白土を除き、減圧下で溶剤、及び、未反応物等の低分子量物を留去することにより、中間体フェノール化合物365.3gを得た。得られた中間体フェノール化合物の水酸基当量(フェノール当量)は299であった。
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコに、得られた中間体フェノール化合物365.3gとトルエン700gを仕込み約85℃で攪拌した。次にジメチルアミノピリジン29.9g(0.24mol)を仕込み。固体がすべて溶解したと思われる時点で無水メタクリル酸277.5g(1.8mol)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、85℃でさらに30時間反応させた。反応液を、5Lのビーカー中マグネチックスターラーで激しく撹拌したメタノール4000g中に1時間かけて滴下した。得られた沈殿物を、メンブランフィルターで減圧濾過後乾燥し、下記構造式で、重量平均分子量が1500の硬化性樹脂(B-1)を得た。
【化39】
【0183】
(比較例2)硬化性樹脂(B-2)の調製
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ、攪拌機を取り付けた1Lフラスコに2,6-ジメチルフェノール48.9g(0.4mol)、α,α’-ジヒドロキシ-1,3-ジイソプロピルベンゼン272.0g(1.4mol)、キシレン280g、及び、活性白土70gを仕込み、攪拌しながら120℃まで加熱した。さらに留出水をディーンスターク管で取り除きながら210℃になるまで昇温し、3時間反応させた。その後140℃まで冷却し、2,6-ジメチルフェノール146.6g(1.2mol)を仕込んだ後、220℃まで昇温し、3時間反応させた。反応後、100℃まで空冷し、トルエン300gで希釈して、ろ過により活性白土を除き、減圧下で溶剤、及び、未反応物等の低分子量物を留去することにより、中間体フェノール化合物365.3gを得た。得られた中間体フェノール化合物の水酸基当量(フェノール当量)は299であった。
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコに、得られた中間体フェノール化合物365.3g、2,4-ジニトロフェノール(2,4-DNP)0.184g(0.001mol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)23.5g(0.073mol)、クロロメチルスチレン209g(1.37mol)、及び、メチルエチルケトン400gを加え攪拌しながら75℃に昇温した。次いで、75℃に保った反応容器に48%-NaOHaqを20分かけて滴下した。滴下終了後、さらに75℃で4h攪拌を継続した。4h後、室温まで冷却し、トルエン100gを加え、さらに10%HClを加えて中和した。その後、水相を分液することにより分離し、さらに水300mで3回分液洗浄した。得られた有機相を蒸留することにより濃縮し、メタノールを加えて生成物を再沈殿した。沈殿を濾過・乾燥し、下記構造式で、重量平均分子量が1500の硬化性樹脂(B-2)を得た。
【化40】
【0184】
(比較例3)硬化性樹脂(B-3)の調製
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けたフラスコに、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン205.5g(0.9mol)とトルエン700gを仕込み約85℃で攪拌した。次にジメチルアミノピリジン29.9g(0.24mol)とトリエチルアミン182.1g(1.8mol)を仕込み、固体がすべて溶解したと思われる時点でメタクリル酸クロリド94.1g(0.9mol)と4-クロロメチルスチレン137.4g(0.9mol)を10時間かけて滴下した。滴下終了後、85℃でさらに20時間反応させた。反応液を、5Lのビーカー中マグネチックスターラーで激しく撹拌したメタノール4000g中に1時間かけて滴下した。得られた沈殿物を、メンブランフィルターで減圧濾過後乾燥し、下記構造式で、Uがメタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基であり、メタクリロイルオキシ基とビニルベンジルエーテル基のモル比が1対1である硬化性樹脂(B-3)を得た。
【化41】
【0185】
<硬化性樹脂組成物の調製>
上記実施例で得られた硬化性樹脂または硬化性化合物を用いて、下記表1または表2に記載の原料の硬化性樹脂組成物、および、下記に示す条件(温度、時間など)に基づき、評価用の試料(樹脂フィルム(硬化物))を作製し、これらを実施例および比較例として、評価を行った。
【0186】
<樹脂フィルム(硬化物)の作製>
硬化性樹脂を5cm角の正方形の型枠に入れ、ステンレス板で挟み、真空プレスにセットした。常圧常温下で1.5MPaまで加圧した。次に10torrまで減圧後、熱硬化温度より50℃高い温度まで30分かけて加温した。さらに2時間静置後、室温まで徐冷した。平均膜厚が100μmの均一なフィルム(硬化物)が得られた。
【0187】
<誘電特性の評価>
得られた樹脂フィルム(硬化物)の面内方向の誘電特性について、キーサイト・テクノロジー社のネットワークアナライザーN5247Aを用いて、スプリットポスト誘電体共振器法により、周波数10GHzについて誘電率、誘電正接を測定した。
前記誘電正接としては、3.0×10-3以下であれば、実用上問題がなく、好ましくは、2.5×10-3以下であり、特に好ましくは2.0×10-3以下である。
また、前記誘電率としては、3以下であれば、実用上問題がなく、好ましくは、2.7以下であることが好ましく、より好ましくは、2.4以下である。
【0188】
<耐熱性の評価>
得られた樹脂フィルム(硬化物)について、パーキンエルマー製DSC装置(Pyris Diamond)を用い、室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される発熱ピーク温度(熱硬化温度)の観測後、それより50℃高い温度で30分間保持した。ついで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却し、さらに、再度20℃/分の昇温条件で昇温し、硬化性樹脂の硬化物のガラス転移点温度(Tg)を測定した。
前記ガラス転移点温度(Tg)としては、160℃以上であれば、実用上問題がなく、好ましくは、180℃以上、特に好ましくは、200℃以上である。
【0189】
<耐熱性の評価>
得られた樹脂フィルム(硬化物)について、株式会社リガク製TG-DTA装置(TG-8120)を用いて、20mL/minの窒素流下、20℃/minの昇温速度で測定を行い、10%重量減少温度(Td10)を測定した。
前記10%重量減少温度(Td10)としては、390℃以上であれば、実用上問題がなく、好ましくは、400℃以上、特に好ましくは、410℃以上である。
【0190】
【表1】
【0191】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0192】
本発明の反応性に優れた硬化性樹脂を含有する樹脂組成物から得られる硬化物は、耐熱性、及び、低誘電特性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能であり、特に、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板等や、接着剤やレジスト材料に好適に使用可能である。