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特許7392926浮体式垂直軸型風車及び浮体式垂直軸型風車発電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】浮体式垂直軸型風車及び浮体式垂直軸型風車発電システム
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/06 20060101AFI20231129BHJP
   F03D 13/25 20160101ALI20231129BHJP
【FI】
F03D3/06 G
F03D3/06 H
F03D13/25
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019170300
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021046835
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】515043772
【氏名又は名称】株式会社チャレナジー
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】秋元 博路
(72)【発明者】
【氏名】倉敷 哲生
(72)【発明者】
【氏名】千賀 英敬
(72)【発明者】
【氏名】清水 敦史
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 汗
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-237268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
F03B 13/00-13/26;17/00-17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に対して軸対称な第1浮体と、
前記第1浮体から同軸に延びるシャフトと、
前記シャフトの外周に設置される第1結合部と、
一端が前記第1結合部に取り付けられ、前記シャフトから延びる腕部と、
前記腕部の他端に取り付けられる受風部と、
前記腕部と前記受風部を結合する第2結合部と、
前記受風部の下端に取り付けられる第2浮体と、
を備える。
ことを特徴とする浮体式垂直軸型風車。
【請求項2】
前記第2浮体の水面下の最大水平断面積は、水線面積よりも大きい
請求項1に記載の浮体式垂直軸型風車。
【請求項3】
前記腕部は、前記シャフトの少なくとも上方及び下方から放射状に複数延び、
前記第1結合部及び第2結合部は、前記シャフトの回転軸と前記腕部の長手方向に直交する軸に対して回動可能に構成される
請求項1又は2に記載の浮体式垂直軸型風車。
【請求項4】
前記腕部が同一の角度を形成する場合、前記第2浮体の前縁と後縁を結ぶ中心線は、前記シャフトの回転軸を中心とした円周上にある
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の浮体式垂直軸型風車。
【請求項5】
前記受風部は、前記シャフトの回転軸に直交する断面において翼型である
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の浮体式垂直軸型風車。
【請求項6】
前記腕部が同一の角度を形成する場合、前記受風部の前縁と後縁結ぶ中心線は、前記シャフトの回転軸を中心とした円周上にある
請求項5に記載の浮体式垂直軸型風車。
【請求項7】
前記受風部は、
前記シャフトの回転軸に平行な軸において回転可能な円筒部と、
前記円筒部の軸の両端を回転可能に支持し、前記円筒部に対して隙間を有して並列に設置される整流板と、
を有し、
前記第2結合部は、前記整流板に結合され、
前記第2浮体は、前記整流板の下端に取り付けられる
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の浮体式垂直軸型風車。
【請求項8】
前記受風部は、
進行方向側に設置されるカップ状の底部と、
前記底部のうち前記回転軸から遠くに位置する端部から延びる延長部と、
を有し、
前記第2結合部は、前記延長部の前記回転軸側に結合される
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の浮体式垂直軸型風車。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つに記載の浮体式垂直軸型風車と、
前記シャフトを係留する係留部と、
前記シャフトの回転を回転力として発電する発電機と、
を備える
浮体式垂直軸型風車発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上等に浮かべて風力によって回転させる浮体式の垂直軸型風車及び浮体式垂直軸型風車発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浮体式の自然エネルギー取出装置が開示されている(特許文献1)。特許文献1に示した自然エネルギー取出装置は、揺動可能な縦回転軸を形成する第1浮体を取り巻く第2浮体に取り付けられた動力伝達装置が第1浮体の回転運動エネルギーを被駆動機器の駆動トルクに変換するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5818743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は小型化を達成した装置であって、回転軸及び回転軸に近い位置の部材が浮体を形成しているので、大型化した場合にはバランスが崩れるおそれがある。
【0005】
本発明は、大型であっても安定して回転することができる浮体式垂直軸型風車及び浮体式垂直軸型風車発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る浮体式垂直軸型風車は、
回転軸に対して軸対称な第1浮体と、
前記第1浮体から同軸に延びるシャフトと、
前記シャフトの外周に設置される第1結合部と、
一端が前記第1結合部に取り付けられ、前記シャフトから延びる腕部と、
前記腕部の他端に取り付けられる受風部と、
前記腕部と前記受風部を結合する第2結合部と、
前記受風部の下端に取り付けられる第2浮体と、
を備える
ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一実施形態に係る浮体式垂直軸型風車では、
前記第2浮体の水面下の最大水平断面積は、水線面積よりも大きい。
【0008】
また、本発明の一実施形態に係る浮体式垂直軸型風車では、
前記腕部は、前記シャフトの少なくとも上方及び下方から放射状に複数延び、
前記第1結合部及び第2結合部は、前記シャフトの回転軸と前記腕部の長手方向に直交する軸に対して回動可能に構成される。
【0009】
また、本発明の一実施形態に係る浮体式垂直軸型風車では、
前記腕部が同一の角度を形成する場合、前記第2浮体の前縁と後縁を結ぶ中心線は、前記シャフトの回転軸を中心とした円周上にある。
【0010】
また、本発明の一実施形態に係る浮体式垂直軸型風車では、
前記受風部は、前記シャフトの回転軸に直交する断面において翼型である。
【0011】
また、本発明の一実施形態に係る浮体式垂直軸型風車では、
前記腕部が同一の角度を形成する場合、前記受風部の前縁と後縁を結ぶ中心線は、前記シャフトの回転軸を中心とした円周上にある。
【0012】
また、本発明の一実施形態に係る浮体式垂直軸型風車では、
前記受風部は、
前記シャフトの回転軸に平行な軸において回転可能な円筒部と、
前記円筒部の軸の両端を回転可能に支持し、前記円筒部に対して隙間を有して並列に設置される整流板と、
を有し、
前記第2結合部は、前記整流板に結合され、
前記第2浮体は、前記整流板の下端に取り付けられる。
【0013】
また、本発明の一実施形態に係る浮体式垂直軸型風車では、
前記受風部は、
進行方向側に設置されるカップ状の底部と、
前記底部のうち前記回転軸から遠くに位置する端部から延びる延長部と、
を有し、
前記第2結合部は、前記延長部の前記回転軸側に結合される。
【0014】
また、本発明の一実施形態に係る浮体式垂直軸型風車システムは、
前記浮体式垂直軸型風車と、
前記シャフトを係留する係留部と、
前記シャフトの回転を回転力として発電する発電機と、
を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態に係る浮体式垂直軸型風車及び浮体式垂直軸型風車発電システムは、大型であっても安定して回転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る浮体式垂直軸型風車を示す。
図2】第1実施形態に係る浮体式垂直軸型風車を上方から見た受風部と第2浮体とを示す。
図3】第1実施形態に係る浮体式垂直軸型風車を係留する係留部を示す。
図4】第1実施形態に係る浮体式垂直軸型風車の支持部を示す。
図5】第1実施形態に係る浮体式垂直軸型風車の使用状態を示す。
図6】他の実施形態に係る浮体式垂直軸型風車の第2浮体を示す。
図7】上方から見た図6の実施形態の第2浮体を示す。
図8】第2実施形態に係る浮体式垂直軸型風車の受風部を示す。
図9】上方から見た図8の第2実施形態の受風部を示す。
図10】第3実施形態に係る浮体式垂直軸型風車の受風部を示す。
図11】上方から見た図10の第3実施形態の受風部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の具体的な実施の形態を示す。実施の形態はあくまで一例であり、この例に限定されるものではない。
【0018】
図1は、第1実施形態に係る浮体式垂直軸型風車1を示す。
【0019】
浮体式垂直軸型風車1は、回転軸Aに対して軸対称な第1浮体2と、第1浮体2から同軸に延びるシャフト3と、シャフト3の外周に設置される第1結合部4と、一端5aが第1結合部4に取り付けられ、シャフト3に対して放射状に延びる腕部5と、腕部5の他端5bに回動自在に取り付けられる受風部6と、腕部5と受風部6を結合する第2結合部7と、受風部6の下端に取り付けられる第2浮体8と、を備える。
【0020】
第1浮体2は、円柱状の部材であり、浮力があり、下方に錘2aを含む。錘2aは、重量等を考慮して第1浮体2に配置する。第1浮体2は、浮体式垂直軸型風車1全体を静水面に浮かべた時に上方が水面から飛び出し、回転軸Aが鉛直方向になると好ましい。
【0021】
シャフト3は、円柱状の部材であり、第1浮体2から上方に向かって同軸に延びる。シャフト3は、第1浮体2と一体に回転する。シャフト3と第1浮体2の接続部分は、第1浮体2の方が大径に形成されると好ましい。
【0022】
第1結合部4は、シャフト3の外周を囲む環状部4aと、環状部4aから突出する突出部4bと、を有する。突出部4bは、回転軸Aに対して放射状に等間隔で形成されると好ましい。本実施形態では、突出部4bは、回転軸Aに対して放射状に120°毎に形成される。第1結合部4は、シャフト3の上方と下方の2箇所に設置されると好ましい。なお、第1結合部4は、シャフト3に3箇所以上設置してもよい。
【0023】
腕部5は、第1結合部4から回転軸Aに対して放射状に延びる。本実施形態では、腕部5は、突出部4bと同様に回転軸Aに対して放射状に120°毎に形成される。腕部5の一端5aと突部4bは、一方が軸、他方が軸受けを形成する構造、あるいは、両方が軸受けを形成し別部材の連結ピン等の軸で連結する構造により、回動自在な第1ヒンジ機構を構成する。第1ヒンジ機構は、回転軸Aに直交する断面において、シャフト3の外周の接線方向を第1回動軸Bとして、第1結合部4に対して腕部5を回動させることが好ましい。
【0024】
図2は、第1実施形態に係る浮体式垂直軸型風車1を上方から見た受風部6と第2浮体8とを示す。なお、図2は、複数の第1ヒンジ機構と複数の第2ヒンジ機構によって全ての腕部5が同一の角度を形成する場合である。
【0025】
受風部6は、腕部5の他端5bに第2結合部7を介して取り付けられる。受風部6は、風を受けると推進する形状に形成される。複数の第1ヒンジ機構と複数の第2ヒンジ機構によって全ての腕部5が同一の角度を形成する場合、受風部6の水平断面での前縁6aと後縁6b結ぶ中心線6cは、回転軸Aを中心とした円Dの円周上にあることが好ましい。本実施形態の受風部6は、翼型に形成される。
【0026】
受風部6には、第2結合部7が設置される。第2結合部7と腕部5の他端5bは、一方が軸、他方が軸受けを形成する構造、あるいは、両方が軸受けを形成し別部材の連結ピン等の軸で連結する構造により、回動自在な第2ヒンジ機構を構成する。第2ヒンジ機構は、第1回動軸Bに平行な第2回動軸Cを中心として、第2結合部7に対して腕部5を回動させることが好ましい。
【0027】
第2浮体8は、受風部6の下端に取り付けられる。第2浮体8は、複数の第1ヒンジ機構と複数の第2ヒンジ機構によって全ての腕部5が同一の角度を形成する場合、回転軸Aを中心とした円Dの円周方向又は円Dの接線方向Eに中心線Fを有する形状が好ましい。本実施形態の第2浮体8は、円Dの接線方向Eに中心線Fを有する舟型に形成される。
【0028】
第2浮体8は、回転軸A側の内側面又は反対の外側面の少なくとも1面に抵抗部8aを設置してもよい。抵抗部8aは通常時には浮体部8の内側面又は外側面に収納されており、回転を停止する際に浮体部8の内側面又は外側面から開き、回転の抵抗力を発生させる。
【0029】
図3は、第1実施形態に係る浮体式垂直軸型風車1を係留する係留部10を示す。
【0030】
浮体式垂直軸型風車1は、係留部10によって漂流しないように係留される。係留部10は、多角形状のフレーム11と、フレーム11に取り付けられる支持部12と、支持部12に回転可能に支持される回転体13と、フレーム11を海底や地面につなぎ止める連結部14と、を有する。
【0031】
フレーム11は、平面内でシャフト3の周囲を囲むように設置される。フレーム11は、多角形状に形成されると好ましい。本実施形態のフレーム11は、三角形状に形成される。フレーム11の頂点には、連結部14を保持する保持部11aが形成される。フレーム11の辺の部分には、支持部12が取り付けられる。
【0032】
図4は、第1実施形態に係る浮体式垂直軸型風車1の支持部12を示す。
【0033】
支持部12は、フレーム11の辺の内側部分に設置され、回転体13を回転可能に支持する。本実施形態の支持部12は、三角形状のフレーム11の辺の内側部分に対応して3つ設置され、図4に示した矢印X,Y,Z方向の3回転自由度のジンバル機構で形成される。なお、支持部12は、少なくとも回転体13のZ方向の回転を可能に支持できればよい。また、支持部12は、フレーム11から離れる方向に付勢されていると好ましい。
【0034】
回転体13は、支持部12に回転可能に支持される。本実施形態の回転体13は、円盤状のローラーであって、シャフト3の外周に3つ設置され、回転軸Aを中心に120°毎に間隔をあけてシャフト3に接触する。
【0035】
第1実施形態の回転体13は、3回転自由度の支持部12に支持されているため、回転体13はシャフト3に接触しながら姿勢を変えることが可能である。例えば、浮体式垂直軸型風車1は、係留部10に対して、回転可能であり、上下方向に移動可能であり、傾斜も可能である。
【0036】
連結部14は、浮体式垂直軸型風車1が漂流しないように、フレーム11を海底や地面につなぎ止める。第1実施形態の連結部14は、ケーブル又はワイヤ等の索状部材で形成される。なお、連結部14は、チェーン等でもよい。連結部14は、図示しないアンカー等によって海底や地面につながれる。
【0037】
係留部10の回転体13は、発電機15を構成してもよい。発電機15は、シャフト3及び回転体13の回転によって発電される。発電された電気エネルギーは連結部14としてのケーブルによって送電設備等に送られる。
【0038】
係留部10には、図示しない第3浮体を設置してもよい。係留部10に第3浮体を設置する場合、フレーム11に設置すると好ましい。
【0039】
図5は、第1実施形態に係る浮体式垂直軸型風車1の使用状態を示す。
【0040】
浮体式垂直軸型風車1は、係留部10に係留され、水域Wに浮かべられる。水域Wが波も少なく穏やかな場合、第1浮体2は、シャフト3及び錘2a等の重さで大部分が水中W1に沈み、上方が水面W2から上に出て、シャフト3と共に略鉛直に位置する。第2浮体8は水面W2に浮かび、第1結合部4及び第2結合部7での腕部5の角度が第2浮体8の高さに対応してそれぞれ変化する。1結合部4及び第2結合部7での腕部5の角度が変化するので、受風部6は、シャフト3とほぼ平行になる。したがって、浮体式垂直軸型風車1は、的確に係留部10に係留され、安定して水域Wに浮かぶ。
【0041】
波が高い場合、第1浮体2は、傾斜する場合がある。第1浮体2が傾斜しても、第2浮体8はそれぞれ水面W2に浮かび、第1結合部4及び第2結合部7での腕部5の角度が第2浮体8の高さに対応してそれぞれ変化するので、受風部6は、シャフト3とほぼ平行になる。したがって、浮体式垂直軸型風車1は、的確に係留部10に係留され、安定して水域Wに浮かぶ。
【0042】
第1浮体2が大きく浮いた場合、フレーム11、支持部12及び回転体13は、第1浮体2の上面に接触して持ち上げられる。第1浮体2と第2浮体8の高さの差異は、第1結合部4及び第2結合部7での腕部5の角度によって対応する。例えば、第1結合部4、腕部5、第2結合部7の順に高い位置となればよい。
【0043】
第1浮体2が大きく沈んだ場合、フレーム11、支持部12及び回転体13は、シャフト3に対して相対的に上方に移動する。なお、係留部10に図示しない浮体を設置した場合、フレーム11、支持部12及び回転体13は、シャフト3に接触しながら水面W2に浮かんだ状態となる。第1浮体2と第2浮体8の高さの差異は、第1結合部4及び第2結合部7での腕部5の角度によって対応する。例えば、第2結合部7、腕部5、第1結合部4の順に高い位置となればよい。
【0044】
図6は、他の実施形態に係る浮体式垂直軸型風車1の第2浮体80を示す。図6(a)は、他の実施形態に係る浮体式垂直軸型風車1の第2浮体80の斜視図、図6(b)は、他の実施形態に係る浮体式垂直軸型風車1の第2浮体80の進行方向に直交する断面図を示す。図7は、上方から見た図6の実施形態の第2浮体80を示す。
【0045】
図6に示す実施形態の第2浮体80は、受風部6の下端に取り付けられる突出部81と、突出部81の下方の胴部82と、を有する。突出部81及び胴部82は、複数の第1ヒンジ機構と複数の第2ヒンジ機構によって全ての腕部5が同一の角度を形成する場合、水平断面内で回転軸Aを中心とした円Dの円周上又は円Dの接線E上に前縁81a及び後縁81b結ぶ中心線80cを有する形状が好ましい。本実施形態の突出部81及び胴部82は、円Dの円周上に前縁81a及び後縁81b結ぶ中心線80cを有する形状に形成される。
【0046】
突出部81は、上方から見た形状が受風部6とほぼ同じ形状であって、進行方向に直交する断面内の形状が長方形であることが好ましい。胴部82は、上方から見た形状が受風部6とほぼ同じ形状であって、進行方向に直交する断面内の形状が円形であることが好ましい。
【0047】
胴部82は、潜水艦のように水中W1を推進する。また、突出部81は、少なくとも一部が水面W2よりも上方、残りの一部が水中W1を推進する。したがって、第2浮体80の水面W2での水線面積は、第2浮体80の水中W1での最大の水平断面積よりも小さい。
【0048】
第2浮体80の突出部81又は胴部82には、回転軸A側の内側面又は反対の外側面の少なくとも1面に抵抗部80aを設置してもよい。抵抗部80aは通常時には浮体部80の内側面又は外側面に収納されており、回転を停止する際に浮体部80の内側面又は外側面から開き、回転の抵抗力を発生させる。
【0049】
図8は、第2実施形態に係る浮体式垂直軸型風車1の受風部60を示す。図9は、上方から見た図8の第2実施形態の受風部60を示す。
【0050】
図8に示す第2実施形態の受風部60は、円筒状の円筒部61と、円筒部61を回転可能に支持する整流板62と、を有する。円筒部61の軸Gの両端は、整流板62に対して回転可能に支持される。整流板62は、板状に形成され、円筒部61に対して隙間を有して並列に設置され、長手方向の両端に円筒部61を支持する延長部62aを有する。
【0051】
整流板62は、腕部5の他端5bに第2結合部7を介して取り付けられる。第2結合部7と腕部5の他端5bは、一方が軸、他方が軸受けを形成し、回動自在な第2ヒンジ機構を構成する。第2ヒンジ機構は、第1回動軸Bに平行な第2回動軸Cを中心として、第2結合部7に対して腕部5を回動させることが好ましい。
【0052】
第2実施形態の整流板62は、両端部分の水平断面が翼型に形成される。複数の第1ヒンジ機構と複数の第2ヒンジ機構によって全ての腕部5が同一の角度を形成する場合、整流板62の両端部分の水平断面での前縁62aと後縁62bを結ぶ中心線62cは、回転軸Aを中心とした円Dの円周上にあることが好ましい。
【0053】
第2実施形態の円筒部61は、図示しないモーターにより回転軸Gを中心として反時計方向へ回転させた状態で、所定の方向から風(空気流)を受けると、マグナス力が発生する。円筒部61に発生したマグナス力は、円筒部61を円Dに沿って反時計方向へ移動させる方向に作用する。それにより、シャフト3が回転する。
【0054】
なお、係留部10に、図示しない発電機を設置し、垂直軸型マグナス式風力発電機を構成してもよい。発電機は、シャフト3に接触する回転体13の回転によって発電される。発電された電気エネルギーは連結部14としてのケーブルによって送電設備等に送られる。
【0055】
また、図8及び図9に示した第2実施形態において、図6及び図7に示した第1実施形態の第2浮体80を用いてもよい。複数の第1ヒンジ機構と複数の第2ヒンジ機構によって全ての腕部5が同一の角度を形成する場合、突出部81及び胴部82は、水平断面内で、回転軸Aを中心とした円Dの円周上又は円Dの接線E上に前縁81a及び後縁81bを結ぶ中心線80cを有する形状が好ましい。なお、突出部81を設けず、胴部82を直接整流板62に接続してもよい。
【0056】
図10は、第3実施形態に係る浮体式垂直軸型風車1の受風部60を示す。図11は、上方から見た図8の第3実施形態の受風部60を示す。
【0057】
第3実施形態の受風部65は、回転軸Aに直交する断面でカップ状の構成を有するバケット型でもよい。バケット型の受風部65は、進行方向側に設置されるカップ状の底部65aと、底部65aのうち回転軸Aから遠くに位置する端部から延びる延長部65bと、を有する。第2結合部7は、延長部65bの内側に結合される。したがって、風が内側から底部65aに当たり、推進力が生じる構造となっている。
【0058】
なお、係留部10に、図示しない発電機を設置し、垂直軸型マグナス式風力発電機を構成してもよい。発電機は、シャフト3に接触する回転体13の回転によって発電される。発電された電気エネルギーは連結部14としてのケーブルによって送電設備等に送られる。
【0059】
上記のように、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0060】
また、上記各実施形態では、浮体式垂直軸型風車1は反時計回りに回転するものとして説明したが、時計回りに回転するようにしてもよい。受風部6が翼型の場合には前縁6aと後縁6bの方向を逆にすればよく、受風部60が円筒部61を有する場合には回転方向を時計回りとするとともに円筒部61の進行方向とは反対側に整流板62を設ければよい。
【0061】
また、上記各実施形態では、3つの受風部6を円Dの円周上に配置するものとして説明したが、受風部6の数は適宜変更してもよく、2つ、又は、4つ以上の受風部6を配置するようにしてもよい。その場合、受風部6の数に対応して円Dの中心Aに対して配置する角度を決定すればよい。例えば、受風部6の数が2つなら180°、4つなら90°にすればよい。
【0062】
以上、本実施形態の浮体式垂直軸型風車1は、回転軸Aに対して軸対称な第1浮体2と、第1浮体2から同軸に延びるシャフト3と、シャフト3の外周に設置される第1結合部4と、一端が第1結合部4に取り付けられ、シャフト3から延びる腕部5と、腕部5の他端に取り付けられる受風部6,60,65と、腕部5と受風部6,60,65を結合する第2結合部7と、受風部6の下端に取り付けられる第2浮体8,80と、を備える。したがって、本実施形態の浮体式垂直軸型風車1は、大型であっても回転軸Aを安定させ、円滑に回転することができる
【0063】
また、本実施形態の浮体式垂直軸型風車1では、第2浮体80の水面下の最大水平断面積は、水線面積よりも大きい。したがって、浮体式垂直軸型風車1は、水面W2で受ける波浪荷重及び造波抵抗を軽減することができ、円滑に回転することができる。
【0064】
また、本実施形態の浮体式垂直軸型風車1では、腕部5は、シャフト3の少なくとも上方及び下方から放射状に複数延び、第1結合部4及び第2結合部7は、シャフト3の回転軸Aと腕部5の長手方向に直交する軸B,Cに対して回動可能に構成される。したがって、浮体式垂直軸型風車1は、水面W2の高さに対応して受風部6が上下に移動して、回転時の波浪荷重及び造波抵抗を軽減することができ、円滑に回転することができる。
【0065】
また、本実施形態の浮体式垂直軸型風車1では、腕部5が同一の角度を形成する場合、第2浮体80の前縁80aと後縁80bを結ぶ中心線80cは、シャフト3の回転軸Aを中心とした円周上にある。したがって、第2浮体80の中心線80cと推進方向が同じになるので、浮体式垂直軸型風車1は、より円滑に回転することができる。
【0066】
また、本実施形態の浮体式垂直軸型風車1では、受風部6は、シャフト3の回転軸Aに直交する断面において翼型である。したがって、浮体式垂直軸型風車1は、空気を少ない抵抗で流すことができ、円滑に回転することができる。
【0067】
また、本実施形態の浮体式垂直軸型風車1では、複腕部5が同一の角度を形成する場合、受風部6の前縁6aと後縁6bを結ぶ中心線6cは、シャフト3の回転軸Aを中心とした円周上にある。したがって、浮体式垂直軸型風車1は、より円滑に回転することができる。
【0068】
また、本実施形態の浮体式垂直軸型風車1では、受風部60は、シャフト3の回転軸Aに平行な軸において回転可能な円筒部61と、円筒部61の軸の両端を回転可能に支持し、円筒部61に対して隙間を有して並列に設置される整流板62と、を有し、第2結合部7は、整流板62に結合され、第2浮体8は、整流板62の下端に取り付けられる。したがって、浮体式垂直軸型風車1は、マグナス力の発生により円滑に回転することができる。また、強風の場合には風を逃がし浮体式垂直軸型風車1の故障等を回避することができる。
【0069】
また、本実施形態の浮体式垂直軸型風車1では、受風部65は、進行方向側に設置されるカップ状の底部65aと、底部65aのうち回転軸Aから遠くに位置する端部から延びる延長部65bと、を有し、第2結合部7は、延長部65bの回転軸A側に結合される。したがって、浮体式垂直軸型風車1は、底部65aに風を受けて、円滑に回転することができる。
【0070】
また、本実施形態の浮体式垂直軸型風車システムは、浮体式垂直軸型風車1と、シャフト3を係留する係留部10と、シャフト3の回転を回転力として発電する発電機15と、を備える。大型であっても回転軸Aを安定させ、円滑に回転することができる本実施形態の浮体式垂直軸型風車1を用いることで、安定して発電することができる。
【符号の説明】
【0071】
1…浮体式垂直軸型風車
2…第1浮体
3…シャフト
4…第1結合部
5…腕部
6,60,65…受風部
61…円筒部
62…整流板
7…第2結合部
8,80…第2浮体
81…突出部
82…胴部
10…係留部
11…フレーム
12…支持部
13…回転体
14…連結部
15…発電機
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