(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】燻煙処理パスタ類、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20231129BHJP
【FI】
A23L7/109 B
A23L7/109 C
(21)【出願番号】P 2019162468
(22)【出願日】2019-09-05
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154597
【氏名又は名称】野村 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】小野 明香
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-516601(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0125083(US,A1)
【文献】特表2005-529588(JP,A)
【文献】燻製ナポリタン、燻製記 -燻製の作り方と燻製レシピ400種以上-[online]、2016年2月2日(検索日:2023年7月24日)、<URL:kunsei.livedoor.biz/archives/51863830.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未調理のパスタ類を燻煙処理する工程を含
み、
前記燻煙処理が、温燻又は熱燻であることを特徴とする燻煙処理パスタ類の製造方法。
【請求項2】
前記未調理のパスタ類の水分が40質量%以下である請求項
1に記載の燻煙処理パスタ類の製造方法。
【請求項3】
前記未調理のパスタ類が、ショートパスタである請求項1又は2に記載の燻煙処理パスタ類の製造方法。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか1項に記載の製造方法によって得られた燻煙処理パスタ類を用いる食品の製造方法。
【請求項5】
茹で調理後の前記燻煙処理パスタ類を具材又は材料の少なくとも1種として用いる請求項
4に記載の食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生パスタ類又は乾燥パスタ類が燻煙処理されてなる燻煙処理パスタ類に関し、特に茹で伸びが抑制され、弾力のある食感を有する茹でパスタ類を調理できる燻煙処理パスタ類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、麺類の食感を改良したり、茹で伸びを抑制したりする技術が開発されている。例えば、特許文献1では、麺類の茹でのびおよび老化を改良する改良剤を提供することを目的とし、アスコルビン酸類および含硫化合物を含有することを特徴とする麺類の茹でのびおよび老化改良剤が開示されている。また、特許文献2では、製麺の作業時間の短縮と麺のコシ、弾力、粘りを与えて食感を改良し、さらに抗菌作用のある麺を提供することを目的として、小麦粉その他麺の原料を叩いたり、踏んだり、薄く延ばして帯状とする製麺工程で、燻液又は燻液中に香辛料抽出液を含有するものを、麺の原料に対して0.01重量%以上添加したことを特徴とする麺類の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-210126号公報
【文献】特開2006-014648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1技術を用いた麺類は、実施例においては品質低下の度合いを若干抑制する程度であり、条件によっては効果が十分とはいえない。また、特許文献2の技術を用いた麺類では生地中に燻液を練り込むため、麺類の種類によっては、生地の物性に影響し、製麺性が低下したり、調理時に問題が生じたりする場合がある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、製麺性を損なうことなく、茹で伸びが抑制され、弾力のある食感を有する茹でパスタ類を調理できるパスタ類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、未調理のパスタ類を燻煙処理する工程を含み、前記燻煙処理が、温燻又は熱燻であることことを特徴とする燻煙処理パスタ類の製造方法によって達成される。なお、本発明において「燻煙処理層」とは、燻煙処理により得られる樹脂膜を含む表面層のことを称する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、製麺性を損なうことなく、茹で伸びが抑制され、弾力のある食感を有する茹でパスタ類を調理できるパスタ類を容易に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の燻煙処理パスタ類は、表面に燻煙処理層を有する未調理のパスタ類からなる。本発明において「未調理のパスタ類」とは、茹で処理等の可食化のための加熱処理が行われていないパスタ類のことを称し、具体的には、(実質的に)生パスタ類又は乾燥パスタ類である。なお、未調理のパスタ類は、上記から理解される通り、乾燥処理や燻煙処理等の可食化に繋がらない加熱処理は行われている場合がある。本発明の燻煙処理パスタ類を茹で調理することにより、茹で伸びが抑制され、弾力のある食感を有する茹でパスタ類を得ることができる。この作用機作は明確ではないが、未調理のパスタ類の表面の燻煙処理層が茹で調理後の茹でパスタ類の食感等に影響を与えるものと考えられる。また、本発明の燻煙処理パスタ類においては、未調理のパスタ類(すなわち、生パスタ類又は乾燥パスタ類)自体は常法に従って製造されるため、製麺性には問題はない。また、本発明の燻煙処理パスタ類は、茹で調理する前に燻煙処理されているため、茹で調理後の燻煙の香りが適度に低減され、どのような料理にも使用し易い。
【0009】
本発明の燻煙処理パスタ類を製造する方法は、未調理のパスタ類(具体的には生パスタ類又は乾燥パスタ類)を燻煙処理する工程を含むことを特徴とする。これにより、上述のような、表面に燻煙処理層を有する未調理のパスタ類からなる本発明の燻煙処理パスタ類を製造することができる。
【0010】
本発明において、未調理のパスタ類、具体的には生パスタ類又は乾燥パスタ類は常法に従って製造することができ、ロール製麺でも押出製麺のいずれでもよい。パスタ類としては、ショートパスタであってもロングパスタであってもその他の形状(例えば板状)であってもよい。ショートパスタとして、マッケローニ(マカロニ)、エルボ、ペンネ、リガトーニ(溝付きの筒状)、マニケ(太い筒状)、カッペッレティ、ルマコーニ、ルオーテ(車輪状の形)、コンキリエ(貝殻状の形)、カヴァタッピ(螺旋形にした筒状パスタ)、リゾーニ(米の形状)、セミーニ(種子の形)、ツイスト、フリッジ(スピラーレ、カールともいう(螺旋状の形))、ファルファッレ(蝶の形)、オレッキエッテ(耳たぶの形)等;ロングパスタとして、スパゲッティ、スパゲッティーニ、フェデリーニ、カッペリーニ、リングイネ、フィットチーネ、タリアッテレ、カペッリ・ダンジェロ、パッパルデッレ、バーミセリー等;その他の形状のパスタとして、ラザーニエ(ラザニア)等が挙げられる。ショートパスタは、燻煙室内に多段階に配置して燻煙処理ができ、処理効率の点で有利である。ロングパスタでは、例えば、燻煙室内の上部から吊るす形で配置することで、均一な燻煙処理を行うことができる。また、表面積が大きい形状や、リガーテ(溝)を有する形状は、燻煙処理による効果をより発揮できるので好ましい。押出製麺のパスタ類の場合は、パスタ類の表面に微細な凹凸が形成されるブロンズダイスを押出ダイスとして使用したものが好ましい。燻煙処理工程の前の生パスタ類又は乾燥パスタ類の水分には特に制限はないが、パスタ類の形状保持や作業性の点で、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がさらに好ましく、32質量%以下が特に好ましい。
【0011】
本発明において、燻煙処工程は常法に従って行なうことができる。例えば、燻煙材を加熱した容器の上方に配置した網等の上に材料を置いて燻煙処理を行なう方法でも、燻煙発生装置によって発生させた燻煙を燻煙室に導入して燻煙処理を行う方法でもよい。燻煙の温度及び時間については特に制限はない。燻煙処理方法は、一般に、15℃~30℃で長時間(例えば2~3週間)の燻煙処理を行なう冷燻、30~80℃で数十分~数時間の燻煙処理を行う温燻、80℃以上で短時間(例えば10分以下)の燻煙処理を行う熱燻があるが、いずれの燻煙処理方法でもよい。本発明においては、温燻又は熱燻が好ましい。燻煙材としても特に制限はなく、一般的に用いられるサクラ、ブナ、クルミ、リンゴ、ナラ、ヒッコリー等を1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
本発明の燻煙処理パスタ類を用いることで、茹で調理後の茹で伸びが抑制され、弾力のある食感を有する茹でパスタ類を提供することができる。さらに、本発明の燻煙処理パスタ類を用いることで、これを用いた食品中においても、茹で伸びが抑制され、弾力のある食感を維持することができる。したがって、本発明は、本発明の燻煙処理パスタ類を含む食品、及び本発明の燻煙処理パスタ類を用いる食品の製造方法にもある。特に、茹で調理後のパスタ類を具材又は材料の少なくとも1種として用いて、さらに加熱処理を伴う調理により作られる食品(料理)、例えば、グラタン、スープ類、ラザニア等の食品に用いる場合に、本発明の効果がより発揮される。すなわち、本発明の食品は、茹で調理後の前記燻煙処理パスタ類を具材又は材料の少なくとも1種として含む食品であることが好ましい。また、本発明の食品の製造方法は、茹で調理後の前記燻煙処理パスタ類を具材又は材料の少なくとも1種として用いる製造方法であることが好ましい。本発明の燻煙処理パスタ類を用いると、従来のパスタ類を用いた料理に比べて、茹で調理後の加熱調理を経ても弾力のある食感を損なわずに維持できるので、これらの食品に、従来にない好ましい食感(弾力のある食感)や風味(香ばしい風味)と食べ応えを付与することができる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
1.使用パスタ類
パスタA:市販の乾燥ショートパスタ(形状:ファルファッレ)「Farfalle No.93」(De Cecco)
パスタB:市販の乾燥ショートパスタ(形状:フリッジ)「FUSILLI N°28」(la Molisana)
パスタC:市販の乾燥ショートパスタ(形状:ペンネ、溝付き(リガーテ))「食感を楽しむペンネ」(昭和産業株式会社)
パスタD:市販の乾燥ロングパスタ(形状:フィットチーネ)「Fettuccine 12」(DIVELLA)
パスタE:生パスタ(形状:ラザーニエ(ラザニア))
セモリナ粉100質量部、オリーブオイル4質量部、塩2質量部、全卵54質量部をミキサーで混捏して生地を調製した。調製した生地を1.5mm厚に圧延し、10×10cmにカットした。
パスタF:生パスタ(形状:オレッキエッテ)
セモリナ粉125質量部、強力粉125質量部、塩6質量部、オリーブオイル12質量部、温水100質量部をミキサーで混捏して生地を調製した。調製した生地を冷蔵庫で20分程度休ませた後、太さ1.3cm程度の紐状に延ばし、1cm長で切断した。これを親指の腹でへこませて、オレッキエッテの形状に成形した。
パスタG:市販の乾燥ショートパスタ(形状:リガトーニ)「Garofalo Rigatoni Pasta」(Garofalo)
【0014】
2.燻煙処理方法
(1)パスタ類がパスタA、B、Cの場合
市販のスモーカー(ユニフレーム社製フォールディングスモーカーFS-600)を用い、パスタ類は庫内に設置した網上に並べて処理した。加熱にはシングルバーナー(ユニフレーム社製テーブルトップバーナー)を用い、燻煙材にはリンゴとブナのチップを混合して用い、庫内温度を75~80℃に保ちながら処理し、燻煙時間は50分とした。
(2)パスタ類がパスタD、Eの場合
市販のスモーカー(ユニフレーム社製フォールディングスモーカーFS-600)を用い、ロングパスタは洗濯ばさみを用いて、上部から吊るす形で処理した。燻煙材として、リンゴのスモークウッドを用いて燻煙処理した。スモークウッドが燃え尽きるまでの燻煙時間は約1時間30分であった。
(3)パスタ類がパスタF、Gの場合
中華鍋の中心部にサクラチップを適量敷き、次いで脚付網を置いた。これをガスコンロ上で加熱(空焚き)し、煙が出てきたところで、網上にパスタ類を並べて、蓋の代用として同サイズの中華鍋を逆さまにして被せた。弱火にて加熱を継続し、蓋をしてから15分後に火を消した。そのままの状態で10分間放置した後、蓋を外して、燻煙処理済みパスタ類を取り出した。
【0015】
3.調理方法
燻煙処理済みパスタA~Fを用いて、下記の通り調理し、食味評価を行った。なお、パスタ類A~Fをそのまま用いて調理した食品を、食味評価の対照区とした。
(1)ミネストローネ風スープ
トマト、ニンジン、玉ねぎ、ナス、ベーコンを1cm各に切った。鍋にベーコンを入れ、焦げ目がつくまで炒めた。オリーブオイルとトマト以外の野菜を入れ、全体に油がいきわたるように炒めた。トマトと野菜ジュース、コンソメ、ローリエ、水を入れ、蓋をして弱火で15分程度煮込んだ。次いで、10分茹でた燻煙処理済みパスタAを加えてさらに1分煮込み、塩コショウを少々加え、ミネストローネ風スープを作製した。対照区として、燻煙処理していないパスタAを用いて、同様にミネストローネ風スープを作製した。
(2)マカロニサラダ
燻煙処理済みパスタBを10分茹で、ザルで水を切ったのち、くっつき防止のためオリーブオイルを絡めて冷ました。また、茹で卵の殻をむき、黄身と白身に分けてからフォークで潰した。きゅうりを輪切りにして少量の塩でもみ、しんなりしたら水洗いして絞った。玉ねぎを薄切りし、水にさらして辛みをとった。ロースハムは細切りにした。ボウルに上記すべての材料と調味料(マヨネーズ、粒マスタード、砂糖、塩コショウ)を入れてよく混ぜ、マカロニサラダを作製した。対照区として、燻煙処理していないパスタBを用いて、同様にマカロニサラダを作製した。
(3)マカロニグラタン
玉ねぎとジャガイモは皮をむいて細切りにし、エビは背ワタを取り除き、塩水で洗って水気を切った。エビ、玉ねぎ、ジャガイモをフライパンで炒めた。燻煙処理済みパスタCを13分茹で、ザルで水を切った後、くっつき防止のためオリーブオイルを絡めて、炒めた具材と合わせた。グラタン皿に合わせた具材を入れ、その上にホワイトソース(HEINZ かけて焼くだけホワイトソース)、ピザ用チーズ、パン粉の順にまんべんなくのせ、オーブントースター(600W)で焦げ目がつくまで焼成(約8分間)し、マカロニグラタンを作製した。対照区として、燻煙処理していないパスタCを用いて、同様にマカロニグラタンを作製した。
(4)カルボナーラ
卵を室温に戻し、ベーコンを5mm角に切って、にんにくをみじん切りにした。フライパンにオリーブオイルとベーコンを入れて軽く炒め、次いでにんにくを加えてカリカリになるまで炒めた後、これを冷ました。ボウルに粉チーズと卵、炒めたベーコンとにんにくを入れ、茹でて水気を切った燻煙処理済みパスタDを加え全体をよく混ぜ、カルボナーラを作製した。対照区として、燻煙処理していないパスタDを用いて、同様にカルボナーラを作製した。
(5)ラザニア
a)モッツァレラチーズを薄切りにし、そのうちの4~5切れはさらに細切りにした。
b)玉ねぎをみじん切りにし、オリーブオイルを熱したフライパンに入れ、しんなりするまで炒めた。そこに牛肉を加えてほぐしながら火が通るまで炒めた。さらにホールトマトを加えて潰しながら全体を炒め、火を弱めて20分ほど煮詰めた後、塩コショウを適量加え、ミートソースを作製した。
c)鍋に湯を沸かし、サラダ油を入れてから燻煙処理済みパスタEを入れて茹で、ザルにあげて水を切り冷ました。
d)グラタン皿にb)で作製したミートソースを1/4敷き詰め、パルメザンチーズの1/3量を全体に振り入れ、a)の薄切りモッツァレラチーズの1/3量を全体に敷き詰めた。その上にc)の茹でた燻煙処理済みパスタEを全体に敷き詰め、さらにミートソース、パルメザンチーズ、モッツァレラチーズ、茹でた燻煙処理済みパスタEを順にさらに2段重ねた。一番上にピザ用チーズと細切りにしたモッツァレラチーズをのせ、200℃のオーブンに入れて、約10分間、チーズが溶けて全体がこんがりとするまで焼いて、ラザニアを作製した。
e)対照区として、燻煙処理していないパスタEを用いて、同様にラザニアを作製した。
(6)オイルソースのパスタ
ブロッコリーを塩ゆでにした。にんにくはみじん切り、赤唐辛子は種を取った。フライパンにオリーブオイル、にんにく、赤唐辛子を入れて炒め、香りが立ったらアンチョビペーストを加えて炒めた。さらに、ブロッコリーと茹でた燻煙処理済みパスタF、ゆで汁を加えてよく混ぜ合わせた。器に盛った後、パルミジャーノ・レッジャーノを削りかけ、オイルソースのパスタを作製した。対照区として、燻煙処理していないパスタFを用いて、同様にオイルソースのパスタを作製した。
(7)クリーム煮
a)鶏肉を約2cm角、玉ねぎを薄切り、ジャガイモを1.5cm厚のいちょう切りにし後、ジャガイモは下茹でした。
b)燻煙処理済みパスタGを茹でてザルにあげて水を切り冷ました。
c)鍋にバターを溶かし、玉ねぎと鶏肉を色づかないように炒め、次いで小麦粉をふり入れて焦げないように炒めた。牛乳、砕いた固形スープの素を加え、混ぜながらしばらく煮て、煮立ったところで、下茹でしたジャガイモと、b)の茹でた燻煙処理済みパスタGを加えて、さらに2分程度煮た。最後に塩と、こしょうで味を調えてクリーム煮を作製した。
d)対照区として、燻煙処理していないパスタGを用いて、同様にクリーム煮を作製した。
【0016】
4.食味評価
食味評価は、専門パネル5名が、パスタ類の食感・風味とともに、対照区に比べて食品に特徴をもたらしているかを評価した。評価結果は、5名の個人評価を基に話し合いにより決定した。食味評価における弾力(食感)と風味の評価結果の一覧を表1に示す。なお、風味は対照区を基準(3点)にして評価した。
[弾力(食感)の評価基準]
5:しっかりとした弾力があり、食べ応えがある
4:弾力がある
3:やや弾力がある
2:やや弾力がなく、軟らかい
1:弾力がなく、非常に軟らかい
[風味の評価基準]
5:対照区と比較して、良好
4:対照区と比較して、やや良好
3:対照区と同等
2:対照区と比較して、やや悪い
1:対照区と比較して、悪い
【0017】
【0018】
(1)ミネストローネ風スープ
燻煙処理済みパスタAを用いたスープは、深みのある風味を感じ非常に好ましいとの評価であった。また、具材であるショートパスタは弾力があり食べ応えのある食感を維持し、非常に良好であった。一方、燻煙処理していないパスタAを用いた対照区では、具材であるショートパスタは非常に軟らかく、時間の経過とともに茹で伸びしたような食感に変化していた。
(2)マカロニサラダ
作製後、冷蔵庫で保管し、翌日に食味評価を実施した。燻煙処理済みパスタBを用いたマカロニサラダは、燻煙の風味がアクセントとなり、非常に好ましい風味であるとの評価であった。また、具材であるショートパスタは弾力のあるしっかりとした食感で食べ応えがあり、良好であった。なお、5名全員が、酒の肴として特に好ましいとの意見であった。一方、燻煙処理していないパスタBを用いた対照区では、具材であるショートパスタは非常に軟らかい食感であった。
(3)マカロニグラタン
燻煙処理済みパスタCを用いたマカロニグラタンは、燻煙の風味がアクセントとなり、ホワイトソースが濃厚に感じ、非常に好ましい風味であるとの評価であった。また、具材であるショートパスタは弾力があり食べ応えのある食感を維持し、非常に良好であった。一方、燻煙処理していないパスタCを用いた対照区では、具材であるショートパスタは非常に軟らかく、茹で伸びしたような食感であった。
(4)カルボナーラ
燻煙処理済みパスタDを用いたカルボナーラは、深みのある風味を感じ非常に好ましいとの評価であった。またパスタの食感は、燻煙処理していないパスタDを用いた対照区に比べて、弾力に富み、食べ応えのある食感であり、良好であった。
(5)ラザニア
燻煙処理済みパスタEを用いたラザニアは、深みのある風味を感じ非常に好ましいとの評価であった。またパスタの食感は、弾力のあるしっかりとした食感で食べ応えがあり、良好であった。一方、燻煙処理していないパスタEを用いた対照区では、パスタの食感は軟らかい食感であった。
(6)オイルソースのパスタ
燻煙処理済みパスタFを用いたオイルソースのパスタは、燻煙の風味がアクセントとなり、非常に好ましい風味であるとの評価であった。またパスタの食感は、燻煙処理していないパスタFを用いた対照区に比べて、弾力のあるしっかりした食感で、食べ応えがあり、良好であった。
(7)クリーム煮
燻煙処理済みパスタGを用いたクリーム煮は、深みのある風味を感じ非常に好ましいとの評価であった。また具材であるショートパスタは、燻煙処理していないパスタGを用いた対照区に比べて、弾力に富み、食べ応えのある食感であり、非常に良好であった。
【0019】
5.対比試験
上記燻煙処理パスタ類と、燻煙処理を用いた他のパスタ類の調理方法を比較するため、上記3.(3)のマカロニグラタンに対して、パスタ類を茹でた後に燻煙処理したパスタ類を用いたマカロニグラタンと、対照区と同様にマカロニグラタンを準備し、オーブントースターによる加熱調理の代わりに燻煙処理による調理を行ったマカロニグラタンについて対比試験を行った。対比試験における食味評価は、専門パネル5名が、上記3.(3)で作製した試験区及び対照区と対比して、上記4.(3)と同様に食感及び風味の特徴を評価した。評価結果は、5名の個人評価を基に話し合いにより決定した。
(1)パスタ類を茹でた後に燻煙処理したパスタ類を用いたマカロニグラタン
燻煙処理をしていないパスタCを、表示時間通りに茹で処理した後、ザルにあげて水気をよく切り、次いで表面に付着している水分もペーパータオルで拭き取った。これを上記2.(1)のパスタCの燻煙処理と同様に処理して、燻煙処理した茹でパスタ類C2を調製した。次いで、C2を用いて、上記3.(3)の燻煙処理済みパスタCと同様にマカロニグラタンを作製し、食味評価を実施した。その結果、パスタ類の食感は、燻煙処理をしていないパスタCを用いた対照区よりも明らかに弾力がなく、崩れるような食感で劣っていた。また、食味・風味については、酸味を感じたほか、喫食には適さないレベルの燻煙臭を感じ不快であった。
(2)オーブントースターによる加熱調理の代わりに燻煙処理による調理を行ったマカロニグラタン
対照区と同様にマカロニグラタンを準備し、オーブントースターによる加熱調理の代わりに、燻煙材にリンゴとブナのチップを混合して用い、中華鍋を用いた方法による燻煙処理(熱燻)による加熱調理を行った以外は、上記3.(3)の燻煙処理をしていないパスタCを用いた対照区と同様にマカロニグラタンを作製した。燻煙処理の加熱調理時間は10分とし、加熱終了後10分間放置し、蓋を外して、グラタン皿を取り出した。食味評価を行った結果、上部に散らしたチーズやパン粉には燻煙処理由来の好ましい風味はあるが、グラタン全体の風味は、燻煙処理済みパスタCを用いたグラタンに比べて物足りなさを感じた。またパスタ類の食感は、燻煙処理をしていないパスタCを用いた対照区と同等であり、燻煙処理済みパスタCを用いた試験区に比べて明らかに弾力がなく劣っていた。
【0020】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明により、製麺性を損なうことなく、茹で伸びが抑制され、弾力のある食感を有する茹でパスタ類を調理できるパスタ類を容易に提供することができる。