(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】化合物、潜在性紫外線吸収剤、組成物、硬化物及び硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 249/20 20060101AFI20231129BHJP
C07D 405/12 20060101ALI20231129BHJP
C07D 251/24 20060101ALI20231129BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20231129BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20231129BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C07D249/20 503
C07D405/12 CSP
C07D251/24
C09K3/00 104B
C08L101/00
C08K5/00
(21)【出願番号】P 2019546747
(86)(22)【出願日】2018-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2018036958
(87)【国際公開番号】W WO2019069960
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2017195515
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金原 有希子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 光裕
(72)【発明者】
【氏名】中屋敷 哲千
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-191155(JP,A)
【文献】特開昭52-012165(JP,A)
【文献】特表2009-514925(JP,A)
【文献】米国特許第04321396(US,A)
【文献】特開2006-008953(JP,A)
【文献】特開2002-160452(JP,A)
【文献】特開平09-025360(JP,A)
【文献】特開平08-225679(JP,A)
【文献】特開平07-191462(JP,A)
【文献】特開昭62-134642(JP,A)
【文献】特開昭61-109778(JP,A)
【文献】特表2005-532273(JP,A)
【文献】特開2004-018454(JP,A)
【文献】特開2000-063313(JP,A)
【文献】国際公開第98/043952(WO,A1)
【文献】Journal of Materials Chemistry,2003年,13(1),P.9-15
【文献】Shikizai Kyokaishi,1999年,72(12),P.739-747
【文献】Journal of Applied Polymer Science,1983年,28(3),P.1159-1165
【文献】Organic Coatings and Plastics Chemistry,1980年,43,P.808-813
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 249/
C07D 405/
C07D 251/
C09K 3/
C08L 101/
C08K 5/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A-1)又は(A-3)で表される化合物。
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子
又は-O-Bを表し、
R
1及びR
2の少なくとも一方は、前記-O-Bであり、
R
3
は、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R
7
は炭素原子数1~40のアルキル基を表し、
R
8
は、炭素原子数6~20のアリール基又は炭素原子数7~20のアリールアルキル基を表し、
R
4は、炭素原子数3~15の分岐構造を有するアルキル基であり、
R
3、R
4、R
7及びR
8で表されるアルキル基又はアリールアルキル基中のメチレン基は、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-
、-O-CO-、-CO-O-
、又はこれらの組み合わせで置き換わっている場合もあり、
複数のR
3、R
4、R
7及びR
8は、それぞれ同じ場合があり、異なる場合があり、
m1
は1~2の整数を表し、
nは、1~3の整数を表し、
a1は、
0を表し、
a2は、
1の整数を表し、
a5は、0~3の整数を表し、
a6は、0~3-nの整数を表し、
X
1は、
水素原子、又はm1と同数の価数を有する炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基若しくは炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、
Bが、下記一般式(B-1)
、(B-3)、(B-4)
、(B-6)
及び(B-10)で表される基の少なくとも1種を含む。)
【化2】
(式中、R
11
、R
16、R
18、R
19、
及びR
23
は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R
12
、R
17
、R
24、
及びR
25
は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R
15は、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R
11、R
12
、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19
、R
23、R
24
及びR
25
で表されるアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NR’-、>P=O、-S-S-、-SO
2-又はこれらの組み合わせで置き換わっている場合があり、
R’は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表し、
複数のR
11同士
、複数のR
16同士、複数のR
18同士、複数のR
19同士
及び複数のR
23同
士は、それぞれ結合してベンゼン環又はナフタレン環を形成している場合があり、
複数のR
11、R
12
、R
16、R
17、R
18、R
19
、R
23
及びR
25
は、それぞれ同じである場合があり、異なる場合があり、
b1
、b3、
及びb
7は、それぞれ独立に0~4の整数を表し、
b4及びb5は、それぞれ独立に0~5の整数を表し、
**は、一般式(A-1)又は(A-3)との結合位置を表す。)
【化2A】
(式中
、R
40は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R
41、R
42、R
43及びR
44は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R
40、R
41、R
42、R
43及びR
44で表されるアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NR’-、>P=O、-S-S-、-SO
2-又はこれらの組み合わせで置き換わっている場合があり
、
c2は、0~4の整数を表し、
**は、一般式(A-1)又は(A-3)との結合位置を表す。)
【請求項2】
前記光脱離基Bとして、下記一般式(B-1-a)
、下記一般式(B-3-a)、上記一般式(B-4)
、上記一般式(B-6
)及び前記一般式(B-10)で表される基の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の化合物。
【化3】
(式中、R
11
及びR
16
は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R
12
及びR
17
は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R
15は、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R
11、R
12
、R
15、R
16
及びR
17
で表されるアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NR’-、>P=O、-S-S-、-SO
2-又はこれらの組み合わせで置き換わっている場合があり、
R’は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表し、
複数のR
11同士
及び複数のR
16同
士は、それぞれ結合してベンゼン環又はナフタレン環を形成している場合があり、
複数のR
11、R
12
、R
16
及びR
17
は、それぞれ同じである場合があり、異なる場合があり、
b1
及びb
3は、それぞれ独立に0~4の整数を表し、
**は、一般式(A-1)又は(A-3)との結合位置を表す。)
【請求項3】
前記光脱離基Bとして、上記一般式(B-1-a)を含む、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物を含む潜在性紫外線吸収剤。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物を含む組成物。
【請求項6】
更に樹脂成分を含む請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物と、重合性化合物とを含む組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物と重合性化合物とを含む組成物を硬化させて硬化物を形成する工程と、
前記硬化物に対して光を照射して、前記化合物に含まれる光脱離基を脱離する工程と、
を有する硬化物の製造方法。
【請求項9】
下記一般式(A-1)又は(A-3)で表される化合物で表される化合物と、光脱離基由来の脱離物とを含み、
光脱離基が下記一般式(B-1)
、(B-3)、(B-4)
、(B-6
)及び(B-10)で表される基の少なくとも1種である、組成物。
【化4】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子
又は-O-Bを表し、
Bは水素原子を表し、
R
1及びR
2の少なくとも一方は、前記-O-Bであり、
R
3
は、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R
7
は炭素原子数1~40のアルキル基を表し、
R
8
は、炭素原子数6~20のアリール基又は炭素原子数7~20のアリールアルキル基を表し、
R
4は、炭素原子数3~15の分岐構造を有するアルキル基であり、
R
3、R
4、R
7及びR
8で表されるアルキル基又はアリールアルキル基中のメチレン基は、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-
、-O-CO-、-CO-O-
、又はこれらの組み合わせで置き換わっている場合もあり、
複数のR
3、R
4、R
7及びR
8は、それぞれ同じ場合があり、異なる場合があり、
m1
は1~2の整数を表し、
nは、1~3の整数を表し、
a1は、
0を表し、
a2は、
1の整数を表し、
a5は、0~3の整数を表し、
a6は、0~3-nの整数を表し、
X
1は、
水素原子、又はm1と同数の価数を有する炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基若しくは炭素原子数2~35の複素環含有基を表す。)
【化5】
(式中、R
11
、R
16、R
18、R
19、
及びR
23
は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R
12
、R
17
、R
24、
及びR
25
は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R
15は、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R
11、R
12
、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19
、R
23、R
24
及びR
25
で表されるアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NR’-、>P=O、-S-S-、-SO
2-又はこれらの組み合わせで置き換わっている場合があり、
R’は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表し、
複数のR
11同士
、複数のR
16同士、複数のR
18同士、複数のR
19同士
及び複数のR
23同
士は、それぞれ結合してベンゼン環又はナフタレン環を形成している場合があり、
複数のR
11、R
12
、R
16、R
17、R
18、R
19
、R
23
及びR
25
は、それぞれ同じである場合があり、異なる場合があり、
b1
、b3、
及びb
7は、それぞれ独立に0~4の整数を表し、
b4及びb5は、それぞれ独立に0~5の整数を表し、
**は、一般式(A-1)又は(A-3)と結合していた位置を表す。)
【化6】
(式中
、R
40は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R
41、R
42、R
43及びR
44は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R
40、R
41、R
42、R
43及びR
44で表されるアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NR’-、>P=O、-S-S-、-SO
2-又はこれらの組み合わせで置き換わっている場合があり
、
c2は、0~4の整数を表し、
**は、一般式(A-1)又は(A-3)と結合していた位置を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できる化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬化性組成物の紫外線吸収能や耐熱性を向上させるために、硬化性組成物中に紫外線吸収剤や酸化防止剤を添加して安定化させる方法が知られている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-048382号公報
【文献】US2016016919A1
【文献】特開2015-108649号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、特許文献1~3に記載の紫外線吸収剤は硬化性組成物の硬化を阻害する場合があるという課題があった。
このような課題に対して、本発明者等は、紫外線吸収剤が硬化性組成物を硬化させるために照射される光を吸収する作用があること、及び、このような作用を有するために、紫外線吸収剤を重合系内に添加すると、硬化阻害を生じる場合があることを見出した。
【0005】
上記課題の解決手段として、重合系内では上述の光を吸収する作用が不活性化され、硬化後に活性化可能な潜在性添加剤が知られている。
しかしながら、硬化後に活性化可能な潜在性添加剤の活性化には、加熱等が必要な場合があるところ、より容易な活性化が要求される場合があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できる化合物を提供することを主目的とする。
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、保護基として光脱離基を用いて、該光脱離基で紫外線吸収剤に含まれるフェノール性水酸基を保護することで、紫外線吸収能を発現させる時期の調整が容易となり、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記一般式(I-1)で表される化合物を提供する。
【0009】
【0010】
(式中、Aは紫外線吸収能を有する原子団を表し、Bは光脱離基を表し、kは1~10の整数を表す。)
【0011】
また、本発明は、上記一般式(I-1)で表される化合物を含む潜在性紫外線吸収剤を提供する。
【0012】
また、本発明は、上記一般式(I-1)で表される化合物を含む組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、上記一般式(I-1)で表される化合物と、重合性化合物とを含む組成物の硬化物を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記一般式(I-1)で表される化合物と重合性化合物とを含む組成物を硬化させて硬化物を形成する工程と、前記硬化物に対して光を照射して、前記一般式(I-1)で表される化合物に含まれる光脱離基を脱離する工程とを有する硬化物の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、下記一般式(I-2)で表される化合物(以下、「化合物I-2と称する場合がある。)と、光脱離基由来の脱離物(以下、「化合物B´」と称する場合がある。)とを含む組成物(以下、「第2組成物」と称する場合がある。)を提供する。
【0016】
【0017】
(式中、Aは、紫外線吸収能を有する原子団であり、kは1~10の整数を表す。)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、化合物並びにそれを用いた紫外線吸収剤、組成物、その硬化物、硬化物の製造方法及び第2組成物に関するものである。以下、これらについて詳細に説明する。
【0019】
A.化合物
まず、本発明の化合物について説明する。
本発明の化合物は下記一般式(I-1)で表される(以下、本発明の化合物を化合物I-1ともいう)。
【0020】
【0021】
(式中、Aは、紫外線吸収能を有する原子団であり、Bは光脱離基であり、kは1~10の整数を表す。)
【0022】
本発明の化合物I-1は、原子団Aが紫外線吸収能を有するものである。本発明の化合物I-1は、光脱離基Bの脱離前は紫外線吸収能が低いが、光脱離基Bの脱離後は、原子団Aに基づき優れた紫外線吸収能を示す。
よって、光脱離基Bが脱離前の化合物I-1を、例えば、重合系内に添加した場合、化合物I-1は紫外線吸収能が低いため、重合のために照射される光の吸収能が低く、重合系の硬化を阻害しづらい。
一方、本発明の化合物I-1は、光を照射することで、光脱離基が離脱し、優れた紫外線吸収能を発現する。よって、化合物I-1を含む硬化物に対して光照射することで、該硬化物に容易に紫外線吸収能を付与できる。化合物I-1はその紫外線吸収能を発現させるために加熱処理する必要がないことから、硬化物及び基材等のその周辺部材に対する加熱によるダメージを与えづらいという利点を有する。
以上の理由により、上記化合物I-1は、例えば、硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できるのである。
【0023】
また、本発明の化合物I-1は、光脱離基Bの脱離前は、感光性発現のために照射される光の吸収能が低い。そのため、化合物I-1を、光照射によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化する感光性組成物に添加した場合、感光性を安定的に発現可能となる。また、上記化合物I-1は、感光性組成物に対して、光脱離基が脱離可能な光照射を実施することで、紫外線吸収能等を容易に付与できる。
このように、上記化合物I-1は、感光性組成物に対して、感光性の発現阻害が少なく、感光性組成物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できるのである。
【0024】
更に、本発明の化合物I-1は、光脱離基Bを有することにより、例えば、組成物中での分散又は溶解安定性を容易に調整できる。
化合物I-1は、組成物に含まれる他の成分との親和性が向上するように、光脱離基Bを選択することで、組成物中での優れた分散性を付与できる。
したがって、上記化合物I-1は、組成物に対して優れた紫外線吸収能を付与できるとともに、使用前の保存時等における優れた分散安定性も付与できる。
【0025】
以下、本発明の化合物I-1について詳細に説明する。
【0026】
1.光脱離基B
本発明の化合物I-1は、光脱離基Bを有する。
本発明における光脱離基は、特定の波長の光が照射されることより化合物I-1から脱離可能な基とすることができる。化合物I-1に特定の波長の光を照射すると、化合物I-1から光脱離基Bが脱離し、下記一般式(I-2)で表される、水酸基と紫外線吸収能を有する原子団Aとを有する化合物が生成する。
【0027】
【0028】
(式中、Aは、紫外線吸収能を有する原子団を表し、kは1~10の整数を表す。)
【0029】
光脱離基Bが化合物I-1から脱離する光の波長は、例えば、紫外線又は可視光線の波長域である。具体的には、365nmの波長を含むものとすることができ、より具体的には、250nm以上450nm以下の波長の光を含むものとすることができ、好ましくは280nm以上380nm以下の波長の光を含むものとすることができる。
上記化合物I-1から光脱離基Bを脱離するために照射される光の積算光量は、例えば、1000mJ/cm2以上10000mJ/cm2以下とすることができ、1000mJ/cm2以上5000mJ/cm2以下であることが好ましく、2000mJ/cm2以上4000mJ/cm2以下であることがより好ましい。重合性化合物等を含む組成物の硬化のために照射される光の積算光量としては、通常、1000mJ/cm2未満とすることができる。したがって、積算光量が上述の範囲であることで、例えば、光硬化性組成物への適用が容易となるからである。
なお、光脱離基Bが脱離するとは、所望の紫外線吸収能を付与できるものであればよく、例えば、光脱離基の脱離率が50%以上となることとすることができ、なかでも、80%以上となることが好ましい。光硬化性組成物への適用が容易となるからである。
一方、上記化合物I-1は、光脱離が抑制される積算光量としては、所望の硬化阻害抑制効果が得られるものであればよく、1000mJ/cm2未満とすることができる。光硬化性組成物への適用が容易となるからである。
また、光脱離が抑制されるとは、所望の硬化阻害抑制効果が得られるものであればよく、例えば、光脱離基Bの脱離率が50%未満となることとすることができ、なかでも、20%以下となることが好ましい。光硬化性組成物への適用が容易となるからである。
上記積算光量は、化合物I-1の0.01質量%アセトニトリル溶液を調製し、実施例に記載の脱離率の測定方法と同様の方法を用いて測定することができる。
【0030】
上述の要件を満たす光脱離基Bとしては、具体的には、下記一般式(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)、(B-6)(B-7)及び(B-8)で表される基を挙げることができる。なかでも、下記一般式(B-1-a)、(B-2-a)、(B-3-a)、(B-4)、(B-5)、(B-6)、(B-7-a)、(B-7―b)及び(B-8-a)で表される基であることが好ましく、下記一般式(B-1-a)で表される基であることが好ましい。これらの光脱離基を採用することにより、化合物I-1から容易に脱離し、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できるからである。また、上述の要件を満たす光脱離基Bとしては、具体的には、下記一般式(B-9)及び(B-10)で表される基も挙げることができる。
【0031】
【0032】
【0033】
(式中、R11、R13、R16、R18、R19、R20、R23、R26及びR28は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R12、R14、R17、R21、R22、R24、R25、R27、R29及びR30は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R15は、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29及びR30で表されるアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NR'-、>P=O、-S-S-、-SO2-又はこれらの組み合わせで置き換わっている場合があり、
R’は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表し、
複数のR11同士、複数のR13同士、複数のR16同士、複数のR18同士、複数のR19同士、複数のR20同士、複数のR23同士、複数のR26同士及び複数のR28同士は、それぞれ結合してベンゼン環又はナフタレン環を形成している場合があり、
複数のR11、R12、R13、R14、R16、R17、R18、R19、R20、R23、R25、R26、R27、R28、R29及びR30は、それぞれ同じである場合があり、異なる場合があり、
b1、b2、b3、b6、b7、b8及びb9は、それぞれ独立に0~4の整数を表し、
b4及びb5は、それぞれ独立に0~5の整数を表し、
**は、前記A-O-との結合位置を表す。)
【0034】
【0035】
(式中、R31及びR40は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R32、R33、R41、R42、R43、R44は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R31、R32、R33、R40、R41、R42、R43及びR44で表されるアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NR’-、>P=O、-S-S-、-SO2-又はこれらの組み合わせで置き換わっている場合があり、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び複素環含有基は、置換基を有している場合があり、
c1は0~5の整数を表し、
c2は0~4の整数を表し、
**は、前記A-O-との結合位置を表す。)
【0036】
上記R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R40、R41、R42、R43及びR44(以下、これらの官能基をまとめてR11等と称する場合がある。)で表される炭素原子数1~40のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso-プロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、iso-ブチル基、アミル基、iso-アミル基、tert-アミル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、iso-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、1-オクチル基、iso-オクチル基、tert-オクチル基及びアダマンチル基等を挙げることができる。
【0037】
上記R11等で表される炭素原子数6~20のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基及びアントラセニル基等を挙げることができる。
【0038】
上記R11等で表される炭素原子数7~20のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フルオレニル基、インデニル基及び9-フルオレニルメチル基等を挙げることができる。
【0039】
上記R11等で表される炭素原子数2~20の複素環含有基としては、例えば、ピリジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、ピペリジル基、ピラニル基、ピラゾリル基、トリアジル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、トリアゾリル基、フリル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、チエニル基、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、インドリル基、2-ピロリジノン-1-イル基、2-ピペリドン-1-イル基、2,4-ジオキシイミダゾリジン-3-イル基及び2,4-ジオキシオキサゾリジン-3-イル基等を挙げることができる。
【0040】
上記R’で表される炭素原子数1~8のアルキル基としては、R11等で表されるアルキル基として例示したものうち、炭素原子数が1~8であるものを挙げることができる。
【0041】
上記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び複素環含有基は、置換基を有している場合がある。本発明の化合物I-1は、特に断りがない限り、置換基を有していないもの及び置換基を有しているものを含む。
【0042】
アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び複素環含有基等の水素原子を置換する場合がある置換基としては、例えば、ビニル基、アリル基、アクリル基及びメタクリル基等のエチレン性不飽和基;フッ素、塩素、臭素及びヨウ素等のハロゲン原子;アセチル基、2-クロロアセチル基、プロピオニル基、オクタノイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、フェニルカルボニル(ベンゾイル)基、フタロイル基、4-トリフルオロメチルベンゾイル基、ピバロイル基、サリチロイル基、オキザロイル基、ステアロイル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、n-オクタデシルオキシカルボニル基及びカルバモイル基等のアシル基;アセチルオキシ基及びベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、クロロフェニルアミノ基、トルイジノ基、アニシジノ基、N-メチル-アニリノ基、ジフェニルアミノ基,ナフチルアミノ基、2-ピリジルアミノ基、メトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ホルミルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、カルバモイルアミノ基、N,N-ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N-ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t-ブトキシカルボニルアミノ基、n-オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N-メチル-メトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、N,N-ジメチルアミノスルホニルアミノ基、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基及びフェニルスルホニルアミノ基等の置換アミノ基;スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、リン酸基又はカルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、リン酸基の塩等を挙げることができる。
【0043】
本発明において、基の炭素原子数は、基中の水素原子が置換基で置換されている場合、その置換後の基の炭素原子数を規定する。例えば、上記炭素原子数1~40のアルキル基の水素原子が置換されている場合、炭素原子数1~40とは、水素原子が置換された後の炭素原子数を指し、水素原子が置換される前の炭素原子数を指すのではない。
【0044】
本発明において、基の炭素原子数は、基中のメチレン基が上記2価の基で置き換わっている場合、その置換後の基の炭素原子数を規定する。例えば、本明細書中、炭素原子数1~40のアルキル基中のメチレン基が上記2価の基で置き換わっている場合、該「炭素原子数1~40」とは、メチレン基が置き換わった後の炭素原子数を指し、メチレン基が置き換わる前の炭素原子数を指すのではない。従って、「-O-C40H81」は、「末端のメチレン基が-O-で置き換えられている、炭素原子数40のアルキル基(=炭素原子数40のアルコキシ基)」に該当するものである。同様に、「-CO-O-C39H79」は、「末端のメチレン基が-CO-O-で置き換えられている、炭素原子数40のアルキル基」に該当するものである。
【0045】
R11等に用いられるアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NR'-、>P=O、-S-S-、-SO2-又はこれらの組み合わせで置き換わっている場合があるものである。
なお、上記メチレン基を置換する組み合わせは、酸素原子が隣り合わない条件での組み合わせとすることができる。
【0046】
R11等で表される炭素原子数1~40のアルキル基は、基端側の末端のメチレン基が-O-で置き換えられ、アルコキシ基が形成される場合がある。そのようなアルコキシ基としては、例えば、炭素原子数1~10のアルコキシ基が挙げられる。具体的には、メチルオキシ基、エチルオキシ基、iso-プロピルオキシ基、ブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、iso-ブチルオキシ基、アミルオキシ基、iso-アミルオキシ基、tert-アミルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-ヘキシルオキシ基、3-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4-メチルシクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、2-ヘプチルオキシ基、3-ヘプチルオキシ基、iso-ヘプチルオキシ基、tert-ヘプチルオキシ基、1-オクチルオキシ基、iso-オクチルオキシ基及びtert-オクチルオキシ基等が挙げられる。
【0047】
上記R11、R13、R16、R18、R19、R20、R23、R26及びR28は、水酸基以外の基であることが好ましく、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基等であることが好ましい。水酸基以外の基とすることで、光脱離基Bが化合物I-1から容易に脱離するものとなり、且つ化合物I-1の合成が容易となるからである。
上記R11及びR23は、ニトロ基、メトキシ基等の炭素原子数1~10のアルコキシ基、メチル基等の炭素原子数1~40のアルキル基、ハロゲン原子等であることが特に好ましい。光脱離基Bが化合物I-1から容易に脱離するものとなり、且つ化合物I-1の合成が容易となるからである。
上記R11は、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数1~10のアルキル基又はハロゲン原子であることが好ましく、炭素原子数1~5のアルコキシ基、炭素原子数1~5のアルキル基又はハロゲン原子であることがより好ましく、炭素原子数1~5のアルコキシ基又はハロゲン原子であることが更に好ましく、炭素原子数1~3のアルコキシ基、塩素原子又は臭素原子であることが特に好ましい。光脱離基Bが化合物I-1から容易に脱離するものとなり、且つ化合物I-1の合成が容易となるからである。
上記R13、R18、R19、R20、R26及びR28は、炭素原子数1~40のアルキル基であることが好ましい。光脱離基Bが化合物I-1から容易に脱離するものとなり、且つ化合物I-1の合成が容易となるからである。
上記R16は、隣接する2つのR16同士が結合してベンゼン環を形成することが好ましい。光脱離基Bが化合物I-1から容易に脱離するものとなり、且つ化合物I-1の合成が容易となるからである。
上記R31及びR40は、水酸基以外の基であることが好ましく、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基等であることが好ましい。水酸基以外の基とすることで、光脱離基Bが化合物I-1から容易に脱離するものとなり、且つ化合物I-1の合成が容易となるからである。
上記R31は、炭素原子数1~40のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~10のアルキル基であることがより好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基であることが更に好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基であることが特に好ましい。
【0048】
上記R18及びR19で表されるアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基が-O-置き換わっている場合、上記メチレン基を置き換わる-O-は、アルキル基及びアリールアルキル基をそれぞれ中断するように含まれる場合、すなわち、アルキル基及びアリールアルキル基の端部以外のメチレン基に置き換わっている場合がある。
【0049】
上記R12は、水素原子、カルボキシル基、炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基であることが特に好ましい。光脱離基Bが化合物I-1から容易に脱離するものとなり、且つ化合物I-1の合成が容易となるからである。
上記R14、R17、R21、R24、R25、R27、R29及びR30は、なかでも、水素原子、炭素原子数1~40のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。光脱離基Bが化合物I-1から容易に脱離するものとなり、且つ化合物I-1の合成が容易となるからである。
上記R15及びR22は、炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できる化合物を提供することができるからである。
上記R32及びR33は、それぞれ独立に、水素原子、カルボキシル基又は炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できる化合物を提供することができるからである。
上記R41~R44は、それぞれ独立に、水素原子、カルボキシル基又は炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できる化合物を提供することができるからである。
【0050】
上記b1、b2、b3、b6、b7、b8及びb9は、それぞれ独立に0~4の整数とすることができるが、合成の容易さの観点から、0~3の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0~1であることが更に好ましく、0であることが特に好ましい。硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できる化合物を提供することができるからである。
上記b4及びb5は、それぞれ独立に0~5の整数とすることができるが、合成の容易さの観点から、0~3の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0~1であることが更に好ましく、0であることが特に好ましい。硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できる化合物を提供することができるからである。
上記c1は、0~5の整数とすることができるが、合成の容易さの観点から、0~3の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0~1の整数であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できる化合物を提供することができるからである。
上記c2は、0~4の整数とすることができるが、合成の容易さの観点から、0~3の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0~1の整数であることが更に好ましく、0であることが特に好ましい。硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できる化合物を提供することができるからである。
【0051】
本発明の化合物I-1に含まれる光脱離基Bの種類は、kが2以上である場合、化合物I-1当たり1種類である場合があり、2種類以上である場合があるが、硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与でき、且つ、化合物I-1の合成を容易にする観点から、1種類であることが好ましい。
【0052】
上記光脱離基の含有数kは、1~10の整数であるが、硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与でき、且つ、合成の容易さの観点から、1~5の整数であることが好ましく、1~4の整数であることがより好ましく、1~3の整数であることが特に好ましい。
【0053】
2.紫外線吸収能を有する原子団A
原子団Aは、紫外線吸収能を有する原子団である。
本発明の化合物I-1は特定の波長の光が照射されることで、光脱離基Bが脱離し、水酸基を有する化合物I-2が生成される。そして、原子団Aが紫外線吸収能を有することにより、化合物I-2が紫外線吸収能を発揮する。
【0054】
「紫外線吸収能を有する」とは、例えば、紫外線吸収能を有する化合物、具体的には光脱離基Bの脱離後の化合物I-1、即ち、化合物I-2が、波長が250nm以上450nm以下の範囲の光を吸収できるものとすることができる。本発明において紫外線吸収能を有する原子団は、紫外線吸収能を有する基又は紫外線吸収能を有する基を少なくとも一つ有する原子の集合体とすることができる。
紫外線吸収能を有するとは、より具体的には、光脱離基Bの脱離後の化合物I-1、即ち、化合物I-2が、波長250nm以上600nm以内の範囲で、最大吸収波長が250nm以上400nm以下である光を吸収することができ、最大吸収波長が260nm以上390nm以下の光を吸収することができることが好ましく、最大吸収波長が280nm以上380nm以下の光を吸収することが特に好ましい。硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できる化合物を提供することができるからである。
光脱離基Bの脱離後の化合物I-1、即ち、化合物I-2の最大吸収波長は、例えば、以下の測定方法で測定することができる。
評価用サンプルとして、例えば、光脱離基Bの脱離後の化合物I-1、即ち、化合物I-2を溶媒(アセトニトリル)中に0.01質量%の濃度となるように溶解したものを用いる。そして、評価用サンプルを、石英セル(光路長10mm、厚み1.25mm)に充填し、吸光光度計(例えば、U-3900(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて吸光度を測定することで得ることができる。
【0055】
また、本発明の化合物I-1は、光脱離基Bの脱離前の化合物I-1の最大吸収波長と光脱離基Bの脱離後の化合物I-1(化合物I-2)の最大吸収波長を比較したときに、250nm以上600nm以内の範囲で、光脱離基Bの脱離前の化合物I-1の最大吸収波長が、化合物I-2の最大吸収波長よりも短波長であることが好ましい。光硬化性組成物への適用が容易となるからである。
上記化合物I-1の、上記光脱離基Bの脱離後の化合物I-2との最大吸収波長の差は、1nm以上であることが好ましく、1nm以上100nm以下であることがより好ましく、1nm以上50nm以下であることが特に好ましい。光硬化性組成物への適用が容易となるからである。
【0056】
このような原子団Aとしては、フェノール性水酸基を有する紫外線吸収剤に一般的に用いられる原子団と同様とすることができる。すなわち、上記化合物I-2は、フェノール性水酸基を有する紫外線吸収剤として一般的に用いられるものである。
具体的には、上記化合物I-2として、特開2017-008221号公報に記載の2-ヒドロキシベンゾフェノン類、2-(2'-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類、ベンゾエート類及びトリアリールトリアジン類等や、特開2002-97224号公報に記載のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤等を用いることができる。
【0057】
上記原子団Aとしては、例えば、光脱離基Bによりフェノール性水酸基が保護されているフェノール構造、すなわち、上記B-O-が直接結合しているベンゼン環を含むものが挙げられる。具体的には、B-O-が直接結合するベンゼン環とベンゾトリアゾール環とを含む原子団;B-O-が直接結合するベンゾフェノン環を含む原子団;及びB-O-が直接結合するベンゼン環とトリアジン環を含む原子団を挙げることができる。ベンゾトリアゾール基、ベンゾフェノン基及びトリアジン基の少なくとも1種の基が、上記フェノール構造に含まれるベンゼン環に直接結合している構造を含むものであることが好ましく、なかでも、ベンゾトリアゾール基、ベンゾフェノン基及びトリアジン基の少なくとも1種の基のベンゼン環への結合位置が、上記B-O-の結合位置に対して、オルト位であるものであることが好ましい。硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できる化合物とすることが容易だからである。
【0058】
本願発明の化合物I-1としては、例えば、下記一般式(A-1)、(A-2)及び(A-3)で表されるものを挙げることができる。
【0059】
【0060】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基又は前記-O-Bを表し、
R1及びR2の少なくとも一方は、前記-O-Bであり、
R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8で表されるアルキル基又はアリールアルキル基中のメチレン基は、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NR'-、>P=O、-S-S-、-SO2-又はこれらの組み合わせで置き換わっている場合もあり、
R’は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表し、
複数のR3同士、複数のR4同士、複数のR5同士、複数のR6同士及び複数のR7同士は、それぞれ結合してベンゼン環又はナフタレン環を形成している場合があり、
複数のR3、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じ場合があり、異なる場合があり、
m1及びm2は、それぞれ独立に、1~10の整数を表し、
nは、1~3の整数を表し、
a1は、0~4の整数を表し、
a2は、0~2の整数を表し、
a3は、0~4の整数を表し、
a4は、0~3の整数を表し、
a5は、0~3の整数を表し、
a6は、0~3-nの整数を表し、
X1及びX2は、それぞれm1価及びm2価の結合基を表す。)
【0061】
上記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8で表される炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、及びR’で表される炭素原子数1~8のアルキル基としては、上記「1.光脱離基B」の項に記載のR11等及びR’として例示したものを挙げることができる。
【0062】
上記R1及びR2は、少なくとも一方が、上記-O-Bである。
上記R1及びR2は、合成容易の観点からは、一方が上記-O-Bであることが好ましい。
上記R1及びR2は、紫外線吸収能の変化を大きいものとする観点からは、R1及びR2の両者が上記-O-Bであることが好ましい。
上記R1及びR2は、一方のみが上記-O-Bである場合、他方は、水素原子、水酸基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基であることが好ましく、水素原子又は炭素原子数1~40のアルキル基であることがより好ましい。上記R1及びR2の他方が、上記官能基であることで、上記化合物I-1は、紫外線吸収能の変化が大きいものとなるからである。また、上記化合物I-1は、硬化阻害が少ないものとなるからである。
また、上記アルキル基及びアリールアルキル基等としては、例えば、メチレン基が-O-、-CO-等により中断されているもの等も好ましく用いることができる。
【0063】
上記R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、シアノ基、水酸基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基であることが好ましく、シアノ基、水酸基、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数7~10のアリールアルキル基であることがより好ましく、なかでも、炭素原子数3~20のアルキル基であることがより好ましく、炭素原子数3~10のアルキル基であることがより好ましい。本発明の化合物I-1の合成が容易となり、化合物I-1が光脱離基Bの脱離後に優れた紫外線吸収能を発揮するからである。
【0064】
また、光脱離基Bの脱離後に優れた紫外線吸収能を発揮可能とする観点からは、R4は、炭素原子数3~15の分岐構造を有するアルキル基であることが好ましく、炭素原子数5~12の分岐構造を有するアルキル基であることがより好ましく、炭素原子数6~11の分岐構造を有するアルキル基であることが更に好ましく、炭素原子数7~10の分岐構造を有するアルキル基であることが特に好ましい。
R4のベンゼン環中の結合箇所としては、結合可能ないずれの位置に結合するものであってもよいが、-O-Bの結合箇所に対して、パラ位であることが好ましい。化合物I-1が光脱離基Bの脱離後に優れた紫外線吸収能を発揮するからである。
【0065】
光脱離基Bの脱離後に優れた紫外線吸収能を発揮可能とする観点からは、R5及びR6は、ベンゼン環側末端のメチレン基が-O-で置き換わっている炭素原子数1~20のアルキル基、すなわち、炭素原子数1~20のアルコキシ基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数3~15のアルコキシ基であることが好ましく、炭素原子数5~12のアルコキシ基であることが特に好ましい。
R5及びR6のベンゼン環中の結合箇所としては、結合可能ないずれの位置に結合するものであってもよいが、-O-Bの結合箇所に対して、メタ位であることが好ましい。化合物I-1が光脱離基Bの脱離後に優れた紫外線吸収能を発揮するからである。
【0066】
光脱離基Bの脱離後に優れた紫外線吸収能を発揮可能とする観点からは、R7は、ベンゼン環側末端のメチレン基が-O-で置き換わっている炭素原子数1~20のアルキル基、すなわち、炭素原子数1~20のアルコキシ基であることが好ましく、なかでも、ベンゼン環側末端以外のメチレン鎖が、-O-、-O-CO-で置き換えられた炭素原子数3~20のアルコキシ基であることが好ましく、特に、ベンゼン環側末端以外のメチレン鎖が-O-、-O-CO-で置き換えられた炭素原子数3~15のアルコキシ基であることが好ましく、特に、ベンゼン環側末端以外のメチレン鎖が-O-、-O-CO-で置き換えられた炭素原子数6~15のアルコキシ基であることが好ましく、なかでも特に、ベンゼン環側末端以外のメチレン鎖が-O-、-O-CO-で置き換えられた炭素原子数8~13のアルコキシ基であることが好ましい。
R7のベンゼン環中の結合箇所としては、結合可能ないずれの位置に結合するものであってもよいが、-O-Bの結合箇所に対して、メタ位であることが好ましい。化合物I-1が光脱離基Bの脱離後に優れた紫外線吸収能を発揮するからである。
光脱離基Bの脱離後に優れた紫外線吸収能を発揮可能とする観点からは、R8は、炭素原子数6~20のアリール基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数6~12のアリール基であることが好ましく、特に、置換基を有している場合があるフェニル基であることが好ましい。
【0067】
また、上記アルキル基及び上記アリールアルキル基としては、メチレン基が中断されていないもの、及び-O-、-CO-等により中断されているものいずれも好ましく用いることができる。
【0068】
上記m1及びm2は、1~10の整数を表す。合成の容易さの観点から、上記m1及びm2は、それぞれ独立に、1~6の整数であることが好ましく、1~4の整数であることがより好ましく、1~3の整数であることが特に好ましく、なかでも特に、1~2の整数であることが好ましい。上記化合物I-1の合成が容易となり、化合物I-1が光脱離基Bの脱離後に優れた紫外線吸収能を発揮するからである。
また、化合物I-1が光脱離基Bの脱離後に優れた紫外線吸収能を発揮する観点からは、m2は、1の整数であることが好ましい。
【0069】
上記nは、1~3の整数を表す。化合物I-1が紫外線吸収能の変化が大きいものとなる観点から、上記nは2~3の整数であることが好ましく、3であることが特に好ましい。化合物I-1が光脱離基Bの脱離後に優れた紫外線吸収能を発揮する観点からは、上記nは、1~2の整数であることが好ましく、1であることが特に好ましい。
【0070】
上記a1及びa3は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。合成の容易さの観点から、上記a1及びa3は、それぞれ独立に、0~3の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0~1の整数であることが特に好ましい。化合物I-1が光脱離基Bの脱離後に優れた紫外線吸収能を発揮する化合物とすることができるからである。
上記a2は、0~2の整数の整数を表す。溶解性の観点から、上記a2は1~2の整数であることが好ましい。また、化合物I-1が光脱離基Bの脱離後に優れた紫外線吸収能を発揮する観点からは、上記a2は、1であることが好ましい。
上記a4及びa5は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。合成の容易さの観点から、上記a4及びa5は0~2の整数であることが好ましく、1~2の整数であることが特に好ましく、特に1であることが好ましい。化合物I-1が光脱離基Bの脱離後に優れた紫外線吸収能を発揮する化合物とすることができるからである。
上記a6は、0~3-nの整数を表す。上記a6は、化合物I-1が光脱離基Bの脱離後に優れた紫外線吸収能を発揮する観点、合成の容易さの観点から、0~1の整数であることが好ましく、0であることが好ましい。
【0071】
上記一般式(A-1)及び(A-2)で表される化合物I-1は、X1及びX2(以下、Xと称する場合がある。)で表されるm1価又はm2価(以下、m価と称する場合がある。)の特定の原子又は基に、m1個又はm2個(以下、m個と称する場合がある。)の特定の基が結合した構造を有する。このm個の特定の基は、互いに同じである場合があり、異なる場合がある。
【0072】
上記Xは、m価の結合基を表すものである。
上記結合基Xとしては、具体的には、直接結合、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、下記(II-a)若しくは(II-b)で表される基、>C=O、>NR53、-OR53、-SR53、-NR53R54又はmと同数の価数を有する炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基若しくは炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、R53及びR54は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、該脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基及び複素環含有基は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NH-CO-O-、-NR’-、-S-S-、-SO2-、窒素原子又はこれらの組み合わせで中断されている場合もあり、上記芳香環又は複素環は、他の環と縮合されている場合もある。
但し、Xが窒素原子、リン原子又は下記(II-a)又は(II-b)で表される結合基の場合、mは3であり、Xが酸素原子又は硫黄原子、>C=O、-NH-CO-、-CO-NH-又は>NR53の場合、mは2であり、Xが-OR53、-SR53又は-NR53R54の場合、mは1であり、Xは、ベンゼン環と一緒になって環を形成している場合もある。
【0073】
【0074】
(*は、*部分で隣接する基と結合することを意味する。)
【0075】
上記結合基Xで表される、mと同数の価数を有する炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基は、mが1価のものとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、第三アミル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ビシクロヘキシル基、1-メチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、イソヘプチル基、第三ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、第三オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基及びデシル基等のアルキル基;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、第二ブチルオキシ基、第三ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、アミルオキシ基、イソアミルオキシ基、第三アミルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、第三ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、第三オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基及びデシルオキシ基等のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、第二ブチルチオ基、第三ブチルチオ基、イソブチルチオ基、アミルチオ基、イソアミルチオ基、第三アミルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、イソヘプチルチオ基、第三ヘプチルチオ基、n-オクチルチオ基、イソオクチルチオ基、第三オクチルチオ基及び2-エチルヘキシルチオ基等のアルキルチオ基;ビニル基、1-メチルエテニル基、2-メチルエテニル基、2-プロペニル基、1-メチル-3-プロペニル基、3-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、イソブテニル基、3-ペンテニル基、4-ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ビシクロヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ぺンタデセニル基、エイコセニル基及びトリコセニル基等のアルケニル基;並びにこれらの基が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
【0076】
上記結合基Xで表される、mと同数の価数を有する炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基は、mが2価のものとしては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基及びブチルジイル基等のアルキレン基;上記アルキレン基のメチレン鎖が-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-で置き換えられたもの;エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等のジオール基の残基;エタンジチオール、プロパンジチオール、ブタンジチオール、ペンタンジチオール、ヘキサンジチオール等のジチオール基の残基及びこれらの基が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
【0077】
上記結合基Xで表される、mと同数の価数を有する炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基は、mが3価のものとしては、例えば、プロピリジン基及び1,1,3-ブチリジンプロピリジン基等のアルキリジン基;並びにこれらの基が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
【0078】
上記結合基Xで表される、mと同数の価数を有する、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基は、mが1価のものとしては、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、スチリル基及びシンナミル基等のアリールアルキル基;フェニル基及びナフチル基等のアリール基;フェノキシ基及びナフチルオキシ基等のアリールオキシ基;フェニルチオ基及びナフチルチオ基等のアリールチオ基:並びに、これらの基が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
【0079】
上記結合基Xで表される、mと同数の価数を有する、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基は、mが2価のものとしては、フェニレン基及びナフチレン基等のアリーレン基;カテコール基、ビスフェノール基等の二官能フェノール基の残基;2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン基;並びにこれらの基が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
【0080】
上記結合基Xで表される、mと同数の価数を有する、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基は、mが3価のものとしては、フェニル-1,3,5-トリメチレン基及びこの基が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
【0081】
上記結合基Xで表される、mと同数の価数を有する炭素原子数2~35の複素環含有基は、mが1価のものとしては、ピリジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、ピペリジル基、ピラニル基、ピラゾリル基、トリアジル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、トリアゾリル基、フリル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、チエニル基、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、インドリル基、2-ピロリジノン-1-イル基、2-ピペリドン-1-イル基、2,4-ジオキシイミダゾリジン-3-イル基、2,4-ジオキシオキサゾリジン-3-イル基及びベンゾトリアゾイル基等、並びにこれらの基が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
【0082】
上記結合基Xで表される、mと同数の価数を有する炭素原子数2~35の複素環含有基は、mが2価のものとしては、ピリジン環、ピリミジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、トリアジン環、フラン環、チオフェン環及びインドール環等を有する2価の基、並びにこれらの基が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
【0083】
上記結合基Xで表される、mと同数の価数を有する炭素原子数2~35の複素環含有基は、mが3価のものとしては、イソシアヌル環を有する3価の基、トリアジン環を有する3価の基及びこれらの基が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
【0084】
R53及びR54で表される炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基としては、上記Xで表される脂肪族炭化水素基又は該脂肪族炭化水素基が後述する置換基により置換された基のうち、炭素原子数が1~35のものが挙げられる。
R53及びR54で表される炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上記Xで表される炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基若しくは炭素原子数2~35の複素環含有基又はこれらの基が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
【0085】
上記脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基及び複素環含有基等の各官能基は、置換基を有している場合がある。本発明の化合物I-1は、特に断りがない限り、置換基を有していないもの及び置換基を有しているものを含む。
このような脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基及び複素環含有基等の置換基としては、例えば、R11等に用いられるアルキル基等の水素原子を置換する置換基と同じものを挙げることができる。
【0086】
上記一般式(A-1)及び(A-2)において、mが2であるとき、Xは、下記一般式(1)で表される基を表す場合がある。
【0087】
【0088】
(上記一般式(1)中、Y1は、単結合、-CR55R56-、-NR57-、二価の炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、二価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基、二価の炭素原子数2~35の複素環含有基、又は、下記(1-1)~(1-3)で表されるいずれかの基を表し、該脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基及び炭素原子数2~35の複素環含有基は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-若しくは-NH-又はこれらの組み合わせの基で中断されている場合もあり、
R55及びR56は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基又は炭素原子数7~20のアリールアルキル基を表し、
Z1及びZ2は、それぞれ独立に、直接結合、-O-、-S-、>CO、-CO-O-、-O-CO-、-SO2-、-SS-、-SO-、>NR57又は>PR58を表し、
R57及びR58は、水素原子、炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、
*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0089】
【0090】
(上記式中、R59は水素原子、置換基を有している場合もあるフェニル基、又は置換基を有している場合もある炭素原子数3~10のシクロアルキル基を表し、
R60は炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基又はハロゲン原子を表し、上記アルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基は置換基を有している場合もあり、
c1は0~5の整数を表す、
*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0091】
【0092】
(*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0093】
【0094】
(上記式中、R61及びR62は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数6~20のアリールオキシ基、炭素原子数6~20のアリールチオ基、炭素原子数6~20のアリールアルケニル基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基又はハロゲン原子を表し、該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は不飽和結合、-O-又は-S-で置き換わっている場合もあり、
R61は、隣接するR61同士で環を形成している場合もあり、
c2は0~4の数を表し、
c3は0~8の数を表し、
c4は0~4の数を表し、
c5は0~4の数を表し、
c4とc5の数の合計は2~4であり、
*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0095】
【0096】
(上記一般式(2)中、Y11は、三価の炭素原子数3~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3~35の脂環族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、
Z1、Z2及びZ3は、それぞれ独立に、直接結合、-O-、-S-、>CO、-CO-O-、-O-CO-、-SO2-、-SS-、-SO-、>NR62、PR62、炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、
R62は、水素原子、炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、
該脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基及び炭素原子数2~35の複素環含有基は、炭素-炭素二重結合、-O-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-又は-SO2-で中断されている場合がある。)
【0097】
【0098】
(上記一般式(3)中、Y12は、炭素原子、四価の炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、四価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基、又は四価の炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、該脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基は、-COO-、-O-、-OCO-、-NHCO-、-NH-又は-CONH-で中断されている場合があり、Z1~Z4は、それぞれ独立に、上記一般式(2)におけるZ1~Z3で表される基と同じ範囲の基を表す。)
【0099】
【0100】
(上記一般式(4)中、Y13は、五価の炭素原子数2~35の脂肪族炭化水素基、五価の炭素原子数6~30の芳香環含有炭化水素基又は五価の炭素原子数2~30の複素環含有基を表し、該脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基若しくは炭素原子数2~35の複素環含有基は、-COO-、-O-、-OCO-、-NHCO-、-NH-又は-CONH-で中断されている場合もあり、Z1~Z5は、それぞれ独立に、上記一般式(2)におけるZ1~Z3で表される基と同じ基を表す。)
【0101】
【0102】
(上記一般式(5)中、Y14は、単結合、六価の炭素原子数2~35の脂肪族炭化水素基、六価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は六価の炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、該脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基若しくは炭素原子数2~35の複素環含有基は、-COO-、-O-、-OCO-、-NHCO-、-NH-又は-CONH-で中断されている場合があり、Z1~Z6は、それぞれ独立に、上記一般式(7)におけるZ1~Z3で表される基と同じ基を表す。)
【0103】
上記一般式(1)で表される基におけるY1で表される二価の炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基としては、メタン、エタン、プロパン、iso-プロパン、ブタン、sec-ブタン、tert-ブタン、iso-ブタン、ヘキサン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、ヘプタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、iso-ヘプタン、tert-ヘプタン、1-メチルオクタン、iso-オクタン、tert-オクタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、2,4-ジメチルシクロブタン、4-メチルシクロヘキサン等が、Z1及びZ2で置換された二価の基が挙げられる。これらの基は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-又はこれらを組み合わせた基で中断されている場合がある。
【0104】
上記一般式(1)で表される基におけるY1で表される二価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基としては、フェニレン、ナフチレン、ビフェニル等の基が、Z1及びZ2で置換された二価の基等が挙げられる。
【0105】
上記一般式(1)で表される基におけるY1で表される二価の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、ピリジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ヘキサヒドロトリアジン、フラン、テトラヒドロフラン、クロマン、キサンテン、チオフェン、チオラン等が、Z1及びZ2で置換された二価の基が挙げられる。
【0106】
上記一般式(1)で表される基におけるY1で表される脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基及び複素環含有基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又は炭素原子数1~8のアルコキシ基で置換されている場合がある。
上記脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基及び複素環含有基等の各官能基は、置換基を有している場合があるものであり、特に断りがない限り、置換基を有していない無置換である又は置換基を有しているものである。
このような脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基及び複素環含有基等の置換基としては、R11等に用いられるアルキル基等の水素原子を置換する置換基と同じものが挙げられる。
【0107】
上記一般式(1)で表される基におけるR55及びR56で表される炭素原子数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、t-アミル基、ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、イソヘプチル基、t-ヘプチル基、1-オクチル基、イソオクチル基及びt-オクチル基等が挙げられる。
【0108】
上記一般式(1)で表される基におけるR55及びR56で表される炭素原子数6~20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、4-ビニルフェニル基、3-iso-プロピルフェニル基、4-iso-プロピルフェニル基、4-ブチルフェニル基、4-iso-ブチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-ヘキシルフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、4-オクチルフェニル基、4-(2-エチルヘキシル)フェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル基、2,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、2,6-ジ-tert-ブチルフェニル基、2,4-ジ-tert-ペンチルフェニル基、2,5-ジ-tert-アミルフェニル基及び2,4,5-トリメチルフェニル基等が挙げられる。
上記一般式(1)で表される基におけるR55及びR56で表される炭素原子数7~20のアリールアルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、2-フェニルプロパン-2-イル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、スチリル、シンナミル等が挙げられる。
【0109】
上記一般式(1)で表される基におけるR57及びR58で表される炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基は、R53及びR54として例示したものと同じものを挙げることができる。
【0110】
上記一般式(1-1)で表される基における、R59で表される炭素原子数3~10のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへブチル基、シクロオクチル基等及びこれらの基が炭素原子数1~10のアルキル基若しくは炭素原子数1~10のアルコキシ基で置換された基等が挙げられる。
【0111】
上記一般式(1-1)で表される基における、R60で表される炭素原子数1~10のアルキル基としては、上記「1.光脱離基B」の項においてR11等で表されるアルキル基として例示したもののうち、炭素原子数が1~10であるものが挙げられる。
上記一般式(1-1)で表される基における、R60で表される炭素原子数1~10のアルコキシ基としては、上記「1.光脱離基B」の項においてR11等で表されるアルコキシ基として例示したもののうち、炭素原子数が1~10のものが挙げられる。
上記一般式(1-1)で表される基における、R60で表される炭素原子数2~10のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、2-ペンテニル基及び2-オクテニル等が挙げられる。
上記R60で表されるアルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基はハロゲン原子で置換されている場合もあり、その置換位置は制限されない。
【0112】
上記一般式(1-3)で表される基における、R61及びR62で表される炭素原子数1~10のアルキル基、炭索原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基としては、上記「1.光脱離基B」の項にR11等として例示したものうち、所定の炭素原子数を満たすものが挙げられる。
【0113】
上記一般式(1-3)で表される基における、R61及びR62で表される炭素原子数6~20のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、2-メチルフェニルオキシ基、3-メチルフェニルオキシ基、4-メチルフェニルオキシ基、4-ビニルフェニル二オキシ基、3-iso-プロピルフェニルオキシ基、4-iso-プロピルフェニルオキシ基、4-ブチルフェニルオキシ基、4-tert-ブチルフェニルオキシ基、4-へキシルフェニルオキシ基、4-シクロヘキシルフェニルオキシ基、4-オクチルフェニルオキシ基、4-(2-エチルヘキシル)フェニルオキシ基、2,3-ジメチルフェニルオキシ基、2,4-ジメチルフェニルオキシ基、2,5-ジメチルフェニルオキシ基、2,6-ジメチルフェニルオキシ基、3,4-ジメチルフェニルオキシ基、3,5-ジメチルフェニルオキシ基、2,4-ジーtert-ブチルフェニルオキシ基、2,5-ジーtert-ブチルフェニルオキシ基、2,6-ジーtert-ブチルフェニルオキシ基、2,4-ジーtert-ペンチルフェニルオキシ基、2,5-tert-アミルフェニルオキシ基、4-シクロへキシルフェニルオキシ基、2,4,5-トリメチルフェニルオキシ基及びフェロセニルオキシ基及びこれらの基がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0114】
上記一般式(1-3)で表される基における、R61及びR62で表される炭素原子数6~20のアリールチオ基としては、上記ハロゲン原子で置換されている場合がある炭素原子数6~20のアリールオキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換したものが挙げられる。
【0115】
上記一般式(1-3)で表される基における、R61及びR62で表される炭素原子数8~20のアリールアルケニル基としては、上記ハロゲン原子で置換されている場合もある炭素原子数6-20のアリールオキシ基の酸素原子をビニル、アリル、1-プロペニル、イソプロペニル、2-ブテニル、1,3-ブタジエニル、2-ペンテニル、2-オクテニル等のアルケニル基で置換した基等が挙げられる。
【0116】
上記一般式(1-3)で表される基における、R61及びR62で表される炭素原子数2~20の複素環含有基としては、ピリジン基、ピラジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピリミジン基、ピリダジン基、トリアジン基、ヘキサヒドロトリアジン基、フラン基、テトラヒドロフラン基、クロマン基、キサンテン基、チオフェン基及びチオフラン基並びにこれらの基がハロゲン原子で置換された基等が挙げられる。
【0117】
上記一般式(1-3)で表される基における、R61及びR62で表されるアリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルケニル基、複素環含有基等の各官能基は、置換基を有している場合があるものであり、特に断りがない限り、置換基を有していない無置換なものであるか又は置換基を有しているものである。
アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルケニル基、複素環含有基等の水素原子を置換する置換基としては、R11等に用いられるアルキル基等の水素原子を置換する置換基と同様の内容とすることができる。
【0118】
上記一般式(2)で表される基におけるY11で表される三価の炭素原子数3~35の脂肪族炭化水素基としては、上記一般式(1)におけるXの説明で例示した脂肪族炭化水素基が、Z1、Z2及びZ3で置換された三価の基が挙げられ、これらの基は、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-SO2-、-NH-又はこれらを組み合わせた基で置き換えられている場合がある。
【0119】
上記一般式(2)で表される基におけるY11で表される三価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基としては、上記一般式(1)におけるXの説明で例示した芳香環含有炭化水素基が、Z1、Z2及びZ3で置換された三価の基が挙げられる。
【0120】
上記一般式(2)で表される基におけるY11で表される三価の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上記一般式(1)におけるXの説明で例示した複素環含有基が、Z1、Z2及びZ3で置換された三価の基が挙げられる。
【0121】
上記一般式(2)で表される基におけるZ1、Z2及びZ3並びにR62で表される炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上述したR53及びR54として例示したものと同じものを挙げることができる。
【0122】
上記一般式(3)で表される基におけるY12で表される四価の炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基としては、上記一般式(1)におけるXの説明で例示した脂肪族炭化水素基が、Z1、Z2、Z3及びZ4で置換された四価の基が挙げられ、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-又はこれらを組み合わせた基で中断されている場合がある。
【0123】
上記一般式(3)で表される基におけるY12で表される四価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基としては、上記一般式(1)におけるXの説明で例示した芳香環含有炭化水素基が、Z1、Z2、Z3及びZ4で置換された四価の基が挙げられる。
【0124】
上記一般式(3)で表される基におけるY12で表される四価の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上記一般式(1)におけるXの説明で例示した複素環含有基が、Z1、Z2、Z3及びZ4で置換された四価の基が挙げられる。
【0125】
上記一般式(4)で表される基におけるY13で表される五価の炭素原子数2~35の脂肪族炭化水素基としては、上記一般式(1)におけるXの説明で例示した脂肪族炭化水素基が、Z1、Z2、Z3、Z4及びZ5で置換された五価の基が挙げられ、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-SO2-、-NH-又はこれらを組み合わせた基で置き換えられている場合がある。
【0126】
上記一般式(4)で表される基におけるY13で表される五価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基としては、上記一般式(1)におけるXの説明で例示した芳香環含有炭化水素基が、Z1、Z2、Z3、Z4及びZ5で置換された五価の基が挙げられる。
【0127】
上記一般式(4)で表される基におけるY13で表される五価の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上記一般式(1)におけるXの説明で例示した複素環含有基が、Z1、Z2、Z3、Z4及びZ5で置換された五価の基が挙げられる。
【0128】
上記一般式(5)におけるY14で表される六価の炭素原子数2~35の脂肪族炭化水素基としては、上記一般式(1)におけるXの説明で例示した脂肪族炭化水素基が、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5及びZ6で置換された六価の基が挙げられ、該基は-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO2-、-NH-又はこれらを組み合わせた基で中断されている場合がある。
【0129】
上記一般式(5)におけるY14で表される六価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基としては、上記一般式(1)におけるXの説明で例示した芳香環含有炭化水素基が、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5及びZ6で置換された六価の基が挙げられる。
【0130】
上記一般式(5)におけるY14で表される六価の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上記一般式(1)におけるXの説明で例示した複素環含有基が、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5及びZ6で置換された六価の基が挙げられる。
【0131】
上記結合基Xは、mが2である場合、炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基又はジオールの残基であることがより好ましく、炭素原子数1~10のアルキレン基又は炭素原子数1~10のジオール残基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数1~5のアルキレン基又は炭素原子数1~5のジオール残基であることが好ましく、特に、炭素原子数1~3のアルキレン基であることが好ましい。硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できる化合物とすることができ、更に、化合物I-1の製造が容易だからである。
【0132】
上記結合基Xのベンゼン環との結合位置としては、ベンゼン環内の結合し得るいずれの位置であってもよいが、例えば、R2に対して、オルト位又はメタ位であることが好ましい。硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できる化合物とすることができるからである。
【0133】
上記Xは、m=1のとき、水素原子又はR2と同様の基であることが好ましい。
【0134】
上記原子団Aは、フェノール性水酸基を含むもの、すなわち、化合物I-1が光脱離基Bにより保護されていないフェノール性水酸基を含むものであってもよいが、フェノール性水酸基の数は2個以下であることが好ましく、0個であることがより好ましい。上記化合物I-1は、硬化阻害が少ないものとなるからである。
【0135】
3.化合物
本発明の化合物は、上記一般式(I-1)で表されるものであればよいが、上記一般式(A-1)、(A-2)又は(A-3)で表される化合物であり、光脱離基Bとして、上記一般式(B-1-a)で表されるものを含むことが好ましい。合成が容易であり、更に、光脱離が容易だからである。また、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できるからである。また、化合物I-1が、一般式(A-1)、(A-2)又は(A-3)で表される化合物であるため、光脱離基Bの脱離により紫外線領域の光を安定的に吸収する化合物を生成可能だからである。
【0136】
上記化合物I-1の具体例としては、例えば、下記に表される化合物が挙げられる。
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
上記化合物I-1の分子量は、化合物I-1の用途等に応じて設定することができる。上記化合物I-1の分子量は、例えば、250以上5000以下が好ましく、300以上2500以下がより好ましく、350以上1500以下とすることが特に好ましい。硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できる化合物とすることができるからである。
なお、上記化合物I-1の分子量は、化合物I-1がその構造として繰り返し構造を含む重合体である場合には、重量平均分子量(Mw)で表すものとする。重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0142】
上記重量平均分子量Mwは、例えば、東ソー(株)製のHLC-8120GPCを用い、溶出溶剤を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN-メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、20650、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS-2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK-GEL ALPHA-M×2本(東ソー(株)製)として測定して得ることができる。また、測定温度は40℃とすることができ、流速は1.0mL/分とすることができる。
【0143】
上記化合物I-1の製造方法は、所望の構造を得ることができる方法であれば特に限定されないが、例えば、特開昭57-111375号公報、特開平3-173843号公報、特開平6-128195号公報、特開平7-206771号公報、特開平7-252191号公報又は特表2004-501128号公報に記載された方法により製造されたフェノール系化合物と、アルキルハライド化合物を反応させて得ることができる。
【0144】
上記化合物I-1は、光照射前は不活性であり、光照射することで光脱離基が脱離し、フェノール性水酸基を有する化合物I-2を生成するものである。
また、上記化合物I-2は、紫外線吸収能を発揮するものである。
このような化合物I-1の用途としては、光照射により紫外線吸収能を発揮することが要求される用途であることが好ましく、例えば、組成物に添加して用いられる紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0145】
B.潜在性紫外線吸収剤
次に、本発明の潜在性紫外線吸収剤について説明する。
本発明の潜在性紫外線吸収剤は、本発明の化合物I-1を含む。
【0146】
本発明の潜在性紫外線吸収剤は、本発明の化合物I-1を含むことで、例えば、硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できる。
【0147】
本発明の潜在性紫外線吸収剤における化合物I-1の含有量は、特に制限はなく、潜在性紫外線吸収剤の用途等に応じて適宜設定することができる。
本発明の潜在性紫外線吸収剤は、潜在性紫外線吸収剤100質量部中、化合物I-1が100質量部含まれるもの、すなわち、上記潜在性紫外線吸収剤が上記化合物I-1のみからなるものとすることができる。
また、本発明の潜在性紫外線吸収剤は、化合物I-1に加え、その他の成分を含有する場合がある。本発明の潜在性紫外線吸収剤がその他の成分を含有する場合、化合物I-1の含有量は、潜在性紫外線吸収剤100質量部中、例えば、20質量部超99質量部以下とすることができ、25質量部以上99質量部以下であることが好ましく、50質量部以上99質量部以下であることがより好ましく、80質量部以上99質量部以下であることが特に好ましい。上記潜在性紫外線吸収剤は、硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できるとの効果を効果的に発揮できるからである。
【0148】
上記潜在性紫外線吸収剤に含まれる上記化合物I-1の種類は、1種類のみである場合があり、2種類以上である場合がある。上記潜在性紫外線吸収剤が数種類の化合物I-1を含有する場合、種類数は、例えば、2種類以上5種類以下とすることができる。
【0149】
なお、上述の化合物I-1については、「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0150】
上記潜在性紫外線吸収剤に含まれる上記その他の成分としては、例えば、後述する「C.組成物」の「2.その他の成分」の項に記載のものと同一のものを用いることができる。
上記潜在性紫外線吸収剤は、その他の成分として、重合性基を有しない重合体等の樹脂成分を含有することが好ましい。上記化合物I-1を安定的に保持可能となるからである。
【0151】
上記潜在性紫外線吸収剤の形状は、粉末状である場合があり、ペレット状である場合がある。
ペレット状である場合、上記潜在性紫外線吸収剤の製造方法としては、例えば、押出機等を用いて、上記化合物I-1及び樹脂成分を混合した後、ペレット状に成型する方法を用いることができる。
【0152】
C.組成物
次に、本発明の組成物について説明する。
本発明の組成物は、化合物I-1を含むものである。
【0153】
本発明の組成物によれば、例えば、硬化阻害が少なく、優れた紫外線吸収能硬化物が得られる組成物を提供することができる。以下、上記組成物の各成分について説明する。
【0154】
1.化合物
本発明の組成物における化合物I-1の含有量は、組成物に対して所望の紫外線吸収能等を付与できる量であれば特に限定されるものではない。本発明の組成物における化合物I-1の含有量は、例えば、組成物の固形分100質量中、0.001質量部以上20質量部以下とすることができ、0.005質量部以上10質量部以下であることが好ましい。硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を容易に付与できる組成物とすることが容易だからである。
なお、固形分とは、溶剤以外の全ての成分を含むものである。
また、本明細書において特に断りがない場合には、含有量は質量基準である。
上記化合物I-1の含有量は、溶剤等の含有量によって異なるものであるが、例えば、組成物100質量部中に、0.001質量部以上20質量部以下とすることができ、なかでも、0.005質量部以上10質量部以下であることが好ましい。硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を容易に付与できる組成物とすることが容易だからである。
【0155】
上記組成物に含まれる上記化合物I-1の種類は、1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。上記種類は、例えば、2種類以上5種類以下とすることができる。
【0156】
なお、上述の化合物I-1については、「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0157】
2.その他の成分
上記組成物は、その用途等に応じて、上記化合物I-1以外の他の成分を含む場合がある。
上記他の成分としては、例えば、樹脂成分が挙げられる。本発明の組成物が、化合物I-1に加え、樹脂成分を含むことで、例えば、上記組成物に硬化性等を容易に付与できるからである。
また、本発明の組成物は、他の成分としては、上記樹脂成分と共に重合開始剤を含むことが好ましい。本発明の組成物が、他の成分として樹脂成分及び重合開始剤を含むことにより、組成物に硬化性等を容易に付与できるからである。
【0158】
(1)樹脂成分
上記樹脂成分としては、上記化合物I-1を保持できるものが挙げられ、組成物の用途等に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、重合性基を有する重合性化合物及び重合性基を有しない重合体等を挙げることができる。
上記樹脂成分として重合性化合物を含むことにより、上記組成物は、例えば、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物として用いることができる。
【0159】
(a)重合性化合物
重合性化合物は、重合性基の種類、すなわち、重合反応の種類により異なるものであり、例えば、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物等を挙げることができる。
上記重合性化合物は、硬化阻害が少なくなるとの効果を効果的に発揮する観点からはラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。
【0160】
(i)ラジカル重合性化合物
上記ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能な重合性基を1以上有するものであればよく、2以上含むものであってもよい。
上記ラジカル重合性化合物は、通常、ラジカル重合開始剤と共に用いられるものである。
ラジカル重合可能な重合性基としては、例えば、(メタ)アクリル基、ビニル基等のエチレン性不飽和二重結合基を挙げることができる。
なお、(メタ)アクリルは、アクリル及びメタクリルを含む意味で用いるものである。また、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートを含む意味で用いるものである。
【0161】
また、ラジカル重合性化合物としては、酸価を有する化合物であってもよく、酸価を有しない化合物であってもよい。
酸価を有する化合物としては、例えば、カルボキシル基を有する化合物等を挙げることができる。
上記組成物は、ラジカル重合性化合物として酸価を有する化合物を含むことにより、光照射部位のアルカリ現像液への溶解性が低下する。このため、上記組成物は、例えば、アルカリ現像液等の溶媒への溶解性が光照射前後で変化する感光性組成物として用いることができる。より具体的には、上記組成物は、酸価を有する化合物を含むことで、ネガ型組成物として用いることができる。
アルカリ現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液や、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ現像液として一般的に使用されているものを用いることができる。
【0162】
上記ラジカル重合性化合物は、例えば、エチレン性不飽和二重結合基を有し、酸価を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸、α―クロルアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、フマル酸、ハイミック酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、アリル酢酸、桂皮酸、ソルビン酸、メサコン酸、コハク酸モノ[2-(メタ)アクリロイロキシエチル]、フタル酸モノ[2-(メタ)アクリロイロキシエチル]及びω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の両末端にカルボキシ基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・マレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・マレート、ジシクロペンタジエン・マレート或いは1個のカルボキシル基と2個以上の(メタ)アクリロイル基とを有する多官能(メタ)アクリレート等の不飽和一塩基酸;フェノール及び/又はクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格を有するノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物等のノボラック型エポキシ化合物、多官能エポキシ基を有するポリフェニルメタン型エポキシ樹脂、下記一般式(III)で表されるエポキシ化合物等のエポキシ樹脂のエポキシ基に不飽和一塩基酸を作用させた樹脂、下記一般式(III)で表されるエポキシ化合物等のエポキシ樹脂のエポキシ基に不飽和一塩基酸を作用させ、更に多塩基酸無水物を作用させて得られた樹脂、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の水酸基含有多官能アクリレートと無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の二塩基酸無水物の反応物である酸価を有する多官能アクリレート等が挙げられる。
【0163】
【0164】
(式中、X41は直接結合、炭素原子数1~4のアルキリデン基、炭素原子数3~20の脂環式炭化水素基、-O-、-S-、-SO2-、-SS-、-SO-、-CO-、-OCO-又は上記(1-1)~(1-3)で表される置換基を表し、
R41、R42、R44及びR44は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基、炭素原子数2~5のアルケニル基又はハロゲン原子を表し、
dは0~10の整数である。)
【0165】
R41、R42、R44及びR44で表される炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基及び炭素原子数2~5のアルケニル基としては、上記「A.化合物」の項にR11等として例示したもののうち、所定の炭素原子数を満たすものを挙げることができる。
X41で表される炭素原子数1~4のアルキリデン基としては、例えば、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基及びブチリデン基等を挙げることができる。
X41で表される炭素原子数3~20の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基及びシクロヘプチレン基等が挙げられる。
上記アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキリデン基及び脂環式炭化水素基は、置換基を有している場合があるものであり、特に断りがない限り、置換基を有していない無置換である又は置換基を有しているものである。該アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキリデン基及び脂環式炭化水素基の水素原子を置換する置換基としては、R11等に用いられるアルキル基等の水素原子を置換する置換基と同様の内容とすることができる。
【0166】
上記ラジカル重合性化合物は、例えば、エチレン性不飽和二重結合基を有し、酸価を有しない化合物としては、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、下記化合物No.A1~No.A4、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリ(エトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリ[(メタ)アクリロイルエチル]イソシアヌレート、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等の不飽和一塩基酸及び多価アルコール又は多価フェノールのエステル;(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウム等の不飽和多塩基酸の金属塩;マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸-無水マレイン酸付加物、ドデセニル無水コハク酸、無水メチルハイミック酸等の不飽和多塩基酸の酸無水物;(メタ)アクリルアミド、メチレンビス-(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド、α-クロロアクリルアミド、N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和一塩基酸及び多価アミンのアミド;アクロレイン等の不飽和アルデヒド;(メタ)アクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、シアン化ビニリデン、シアン化アリル等の不飽和ニトリル;スチレン、4-メチルスチレン、4-エチルスチレン、4-メトキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、4-クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ビニル安息香酸、ビニルフェノール、ビニルスルホン酸、4-ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルベンジルグリシジルエーテル等の不飽和芳香族化合物;メチルビニルケトン等の不飽和ケトン;ビニルアミン、アリルアミン、N-ビニルピロリドン、ビニルピペリジン等の不飽和アミン化合物;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のビニルエーテル;マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等の不飽和イミド類;インデン、1-メチルインデン等のインデン類;1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の脂肪族共役ジエン類;ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ-n-ブチル(メタ)アクリレート、ポリシロキサン等の重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー類;(メタ)アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル等のその他のビニル化合物、及びポリメチルメタクリレートマクロモノマー、ポリスチレンマクロモノマー等のマクロモノマー類、トリシクロデカン骨格のモノメタクリレート、N-フェニルマレイミド、メタクリロイルオキシメチル-3-エチルオキセタン等と、(メタ)アクリル酸との共重合体及びこれらに昭和電工(株)社製カレンズMOI、AOIのような不飽和結合を有するイソシアネート化合物を反応させた(メタ)アクリル酸の共重合体や、ビニルクロリド、ビニリデンクロリド、ジビニルスクシナート、ジアリルフタラート、トリアリルホスファート、トリアリルイソシアヌラート、ビニルチオエーテル、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾリン、ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、水酸基含有ビニルモノマー及びポリイソシアネート化合物のビニルウレタン化合物、水酸基含有ビニルモノマー及びポリエポキシ化合物のビニルエポキシ化合物、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の水酸基含有多官能アクリレートとトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートの反応物等が挙げられる。
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
上記ラジカル重合性化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、ラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和二重結合基を有し、酸価を有する化合物及びエチレン性不飽和二重結合基を有し、酸価を有しない化合物を組み合わせて使用することができる。
ラジカル重合性化合物は、2種以上を混合して使用する場合には、それらを予め共重合して共重合体として使用してもよい。
上記ラジカル重合性化合物の含有量としては、組成物の用途等に応じて適宜設定できるが、例えば、組成物100質量部中に、1質量部以上99質量部以下とすることができ、10質量部以上90質量部以下であることが好ましく、なかでも、40質量部以上80質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲であることで、例えば、上記組成物は、感度に優れたネガ型組成物として用いることができるからである。また、硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を容易に付与できる組成物を提供することができるからである。
上記重合性化合物の含有量は、上記組成物を硬化性組成物として使用可能となるものであればよいが、化合物I-1及び重合性化合物の合計100質量部中に、1質量部以上99質量部以下とすることができ、50質量部以上99質量部以下であることが好ましく、なかでも、80質量部以上99質量部以下であることが好ましく、90質量部以上98質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲であることにより、上記組成物は、硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を容易に付与できる組成物を提供することができるからである。
また、上記化合物I-1及びラジカル重合性化合物の含有量としては、組成物の用途等に応じて適宜設定できるが、例えば、組成物100質量部中に、1質量部以上99質量部以下とすることができ、10質量部以上90質量部以下であることが好ましく、なかでも、40質量部以上80質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲であることで、例えば、上記組成物は、感度に優れたネガ型組成物として用いることができるからである。また、硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を容易に付与できる組成物を提供することができるからである。
【0172】
(ii)カチオン重合性化合物及びアニオン重合性化合物
上記カチオン重合性化合物は、カチオン重合可能な重合性基を1以上有するものであればよい。
上記カチオン重合性化合物は、通常、カチオン重合開始剤と共に用いられるものである。
カチオン重合可能な重合性基としては、例えば、エポキシ基及びオキセタン基等の環状エーテル基並びにビニルエーテル基等を挙げることができる。
すなわち、カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物及びオキセタン化合物等の環状エーテル化合物並びにビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0173】
上記エポキシ化合物としては、例えば、メチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、C12~13混合アルキルグリシジルエーテル、フェニル-2-メチルグリシジルエーテル、セチルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、p-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、イソプロピルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、2-メチルオクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、4-n-ブチルフェニルグリシジルエーテル、4-フェニルフェノールグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、エトキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,1,2,2-テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン及びペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化物;グリシジルアセテート、グリシジルステアレート等のグリシジルエステル類;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタジオキサン、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、プロパン-2,2-ジイル-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル 3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシレート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル 6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-2-エポキシエチルシクロヘキサン、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、α-ピネンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキサイド及びシクロペンテンオキサイド等のエポキシシクロアルキル型化合物及びN-グリシジルフタルイミド等が挙げられる。
【0174】
また上記エポキシ化合物としては、エポキシ化ポリオレフィンを用いることもできる。エポキシ化ポリオレフィンとは、ポリオレフィンをエポキシ基含有単量体で変性して、エポキシ基を導入したポリオレフィンである。エチレン又は炭素数3~20のα-オレフィン、エポキシ基含有単量体、及び必要に応じて他のモノマーを、共重合法及びグラフト法のいずれかにより共重合させることによって製造することができる。エチレン又は炭素数3~20のα-オレフィン、エポキシ基含有単量体及び他のモノマーは、それぞれ単独で重合させてもよく、他の単量体と複数で重合させてもよい。また、末端に水酸基を有する非共役のポリブタジエンの二重結合を、過酢酸法によりエポキシ化して得ることもでき、分子内に水酸基を持つものを使用してもよい。また、水酸基をイソシアネートでウレタン化し、ここに1級水酸基含有エポキシ化合物を反応させてエポキシ基を導入することもできる。
【0175】
上記エチレン又は炭素数3~20のα-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、1,3-ブタジエン、1,4-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン及びイソプレン等が挙げられる。
【0176】
上記エポキシ基含有単量体としては、例えばα,β-不飽和酸のグリシジルエステル、ビニルベンジルグリシジルエーテル及びアリルグリシジルエーテル等が挙げられる。α,β-不飽和酸のグリシジルエステルとしては、具体的にはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル及びエタクリル酸グリシジル等が挙げられ、特にメタクリル酸グリシジルが好ましい。
【0177】
上記他のモノマーとしては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン及びテトラフルオロエチレン等の不飽和脂肪族炭化水素;(メタ)アクリル酸、α―クロルアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、フマル酸、ハイミック酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、アリル酢酸、桂皮酸、ソルビン酸、メサコン酸、コハク酸モノ[2-(メタ)アクリロイロキシエチル]、フタル酸モノ[2-(メタ)アクリロイロキシエチル]、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の両末端にカルボキシ基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・マレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・マレート、ジシクロペンタジエン・マレート及び1個のカルボキシル基と2個以上の(メタ)アクリロイル基とを有する多官能(メタ)アクリレート等の不飽和多塩基酸;(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリ(エトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリ[(メタ)アクリロイルエチル]イソシアヌレート及びポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等の不飽和一塩基酸及び多価アルコール又は多価フェノールのエステル;(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウム等の不飽和多塩基酸の金属塩;マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸-無水マレイン酸付加物、ドデセニル無水コハク酸及び無水メチルハイミック酸等の不飽和多塩基酸の酸無水物;(メタ)アクリルアミド、メチレンビス-(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド、α-クロロアクリルアミド、N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和一塩基酸及び多価アミンのアミド;アクロレイン等の不飽和アルデヒド;(メタ)アクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、シアン化ビニリデン、シアン化アリル等の不飽和ニトリル;スチレン、4-メチルスチレン、4-エチルスチレン、4-メトキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、4-クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ビニル安息香酸、ビニルフェノール、ビニルスルホン酸、4-ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルベンジルメチルエーテル及びビニルナフタレン等の不飽和芳香族化合物;メチルビニルケトン等の不飽和ケトン;ビニルアミン、アリルアミン、N-ビニルピロリドン及びビニルピペリジン等の不飽和アミン化合物;アリルアルコール及びクロチルアルコール等のビニルアルコール;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、n-ブチルビニルエーテル及びイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;マレイミド、N-フェニルマレイミド及びN-シクロヘキシルマレイミド等の不飽和イミド類;インデン及び1-メチルインデン等のインデン類;ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ-n-ブチル(メタ)アクリレート及びポリシロキサン等の重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー類;ビニルクロリド、ビニリデンクロリド、ジビニルスクシナート、ジアリルフタラート、トリアリルホスファート、トリアリルイソシアヌラート、ビニルチオエーテル、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾリン、ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、水酸基含有ビニルモノマー及びポリイソシアネート化合物のビニルウレタン化合物、水酸基含有ビニルモノマー及びポリエポキシ化合物のビニルエポキシ化合物、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の水酸基含有多官能アクリレート;トリレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートの反応物;ペンタエリスリトールトリアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の水酸基含有多官能アクリレートと無水コハク酸、無水フタル酸及びテトラヒドロ無水フタル酸等の二塩基酸無水物の反応物である酸価を有する多官能アクリレートが挙げられる。
【0178】
上記エポキシ化ポリオレフィンとしては、市販品を用いることもでき、例えば、エポリードPB3600、エポリードPB4700(ダイセル社製);BF-1000、FC-3000(ADEKA社製);ボンドファースト2C、ボンドファーストE、ボンドファーストCG5001、ボンドファーストCG5004、ボンドファースト2B、ボンドファースト7B、ボンドファースト7L、ボンドファースト7M、ボンドファーストVC40(住友化学社製);JP-100、JP-200(日本曹達社製);Poly bd R-45HT、Poly bd R-15HT(出光興産社製)及びRicon657(アルケマ社製)等が挙げられる。
【0179】
耐熱性が良好なことから、上記エポキシ化合物としては、上記一般式(II)で表されるカルド骨格を有する化合物を使用することがより好ましい。
【0180】
上記オキセタン化合物としては、例えば、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、3―エチル―3-[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3―エチル―3-(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3―エチル―3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3―エチル―3-(ヒドロキシメチル)オキセタン及び3―エチル―3-(クロロメチル)オキセタン等が挙げられる。
【0181】
上記ビニルエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、n-ドデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、1,6-シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル及び1,6-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0182】
上記アニオン重合性化合物としては、アニオン重合可能な重合性基を1以上有するものであればよい。
上記アニオン重合性化合物は、通常、アニオン重合開始剤と共に用いられるものである。
上記アニオン重合可能な重合性基としては、例えば、エポキシ基、ラクトン基、(メタ)アクリル基等を挙げることができる。
すなわち、上記アニオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、ラクトン化合物、(メタ)アクリル基を有する化合物等が挙げられる。
上記ラクトン化合物としては、β-プロピオラクトン、ε-カプロラクトン等を挙げることができる。
なお、エポキシ化合物については、上記カチオン重合性化合物として例示したエポキシ化合物を用いることができる。また、(メタ)アクリル基を有する化合物としては、上記ラジカル重合性化合物として例示したものを用いることができる。
【0183】
上記カチオン重合性化合物及びアニオン重合性化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0184】
(b)重合性基を有しない重合体
本発明の組成物に用いることができる樹脂として、上述した通り、重合性基を有しない重合体を用いることができる。
上記重合性基を有しない重合体の重量平均分子量(Mw)は、組成物の用途等に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、1500以上とすることができ、1500以上300000以下とすることができる。
このような重合体としては、繰り返し構造を含むものであればよく、感光性を有する感光性樹脂、感光性を有さない非感光性樹脂等を挙げることができる。
本発明の組成物は、例えば、樹脂成分として感光性樹脂を含むことにより、感光性組成物として用いることができる。
【0185】
(i)感光性樹脂
上記感光性樹脂は、感光性を有するものであり、例えば、酸発生剤と共に用いられ、酸の作用でエステル基又はアセタール基等の化学結合の切断等、現像液に対する溶解性が増加する方向に変化するポジ型樹脂を挙げることができる。
上記組成物は、樹脂成分としてポジ型樹脂を含むことにより、光照射部位のアルカリ現像液への溶解性が増加する。
このため、上記組成物は、例えば、アルカリ現像液等の溶媒への溶解性が光照射前後で変化する感光性組成物として、より具体的には、ポジ型組成物として用いることができる。
【0186】
上記ポジ型樹脂としては、高分子重合体を、アルカリ溶解制御能を有する酸不安定基に部分的に置換したものを用いることができる。
上記高分子重合体としては、ポリヒドロキシスチレン及びその誘導体;ポリアクリル酸及びその誘導体;ポリメタクリル酸及びその誘導体;ヒドロキシスチレン、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体から選ばれ形成される2以上の共重合体;ヒドロキシスチレン、スチレン及びそれらの誘導体から選ばれ形成される2以上の共重合体;シクロオレフィン及びその誘導体、無水マレイン酸、並びに、アクリル酸及びその誘導体から選ばれる3以上の共重合体;シクロオレフィン及びその誘導体、マレイミド、並びに、アクリル酸及びその誘導体から選ばれる3以上の共重合体;ポリノルボルネン;メタセシス開環重合体からなる一群から選択される1種以上の高分子重合体等を挙げることができる。
上記高分子重合体に導入される酸不安定基としては、三級アルキル基、トリアルキルシリル基、オキソアルキル基、アリール基置換アルキル基、テトラヒドロピラン-2-イル基等の複素脂環基、三級アルキルカルボニル基、三級アルキルカルボニルアルキル基、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0187】
上記ポジ型樹脂の詳細な具体例は、例えば、特開2003-192665号公報、特開2004-323704号公報の請求項3、特開平10-10733号公報等に記載の内容と同様とすることができる。
【0188】
上記ポジ型樹脂と共に用いられる酸発生剤としては、公知の酸発生剤を用いることができる。上記酸発生剤としては、具体的には、後述する光カチオン重合開始剤、熱カチオン重合開始剤等を挙げることができる。
【0189】
(ii)非感光性樹脂
上記非感光性樹脂は、感光性を有しないものであればよく、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート-エチルアクリレート共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレン-ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ウレタン樹脂、ポリカーボネートポリビニルブチラール、セルロースエステル、ポリアクリルアミド、飽和ポリエステル、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記非感光性樹脂は、例えば、上述の重合性化合物の重合物も用いることができる。
【0190】
(c)樹脂成分
本発明の組成物における上記樹脂成分の含有量は、組成物の用途等に応じて適宜決定することができるが、例えば、組成物の固形分100質量部中、1質量部以上99質量部以下とすることが好ましく、20質量部以上95質量部以下であることがより好ましく、30質量部以上90質量部以下であることが特に好ましい。上記含有量が上述の範囲であることにより、上記組成物は、例えば、上記化合物I-1を安定的に保持可能だからである。
上記樹脂成分の含有量としては、組成物の用途等に応じて適宜設定できるが、例えば、組成物100質量部中に、1質量部以上99質量部以下とすることができ、10質量部以上90質量部以下であることが好ましく、なかでも、40質量部以上80質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲であることで、例えば、上記組成物は、感度に優れたネガ型組成物として用いることができるからである。また、硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を容易に付与できる組成物を提供することができるからである。
上記樹脂成分の含有量は、組成物の用途等に応じて異なるものであるが、化合物I-1及び樹脂成分の合計100質量部中に、1質量部以上99質量部以下とすることができ、50質量部以上99質量部以下であることが好ましく、なかでも、80質量部以上99質量部以下であることが好ましく、90質量部以上98質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲であることにより、上記組成物は、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を容易に付与できる組成物を提供することができるからである。
また、上記化合物I-1及び樹脂成分の含有量としては、組成物の用途等に応じて適宜設定できるが、例えば、組成物100質量部中に、1質量部以上99質量部以下とすることができ、10質量部以上90質量部以下であることが好ましく、なかでも、40質量部以上80質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲であることで、例えば、上記組成物は、感度に優れたネガ型組成物として用いることができるからである。また、硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を容易に付与できる組成物を提供することができるからである。
【0191】
本発明の組成物に含まれる上記樹脂成分の種類は、1種類のみであってもよく、2種類以上の組み合わせであってもよい。
上記樹脂成分は、例えば、重合性化合物及び重合体のいずれか一方のみを含むもの又は両者を含むものとすることができる。
上記樹脂成分が重合性化合物及び重合性基を有しない重合体の両者を含む場合、上記重合性化合物の含有量としては、組成物の用途等に応じて適宜設定することができるが、例えば、重合性化合物及び重合体100質量部中、1質量部以上99質量部以下とすることができる。
【0192】
(2)重合開始剤
上記重合開始剤は、硬化性成分として含まれるものであり、通常、重合性化合物等と共に用いられるものである。
上記重合開始剤としては、重合性化合物を重合可能なものであればよく、例えば、光照射を受けることにより重合性化合物を重合可能な光重合開始剤、加熱することにより重合性化合物を重合可能な熱重合開始剤等を挙げることができる。
上記重合開始剤は、上記化合物I-1が、紫外線吸収剤として機能するとの効果を効果的に発揮する観点からは、光重合開始剤であることが好ましい。
【0193】
(a)光重合開始剤
上記光重合開始剤としては、光照射を受けることにより重合性化合物を重合可能なものであればよく、例えば、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤等を挙げることができる。
【0194】
上記光ラジカル重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生するものであれば特に制限されず従来既知の化合物を用いることができる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンジル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物及びオキシムエステル系化合物等を好ましいものとして例示することができる。
【0195】
上記アセトフェノン系化合物としては例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、4’-イソプロピル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシメチル-2-メチルプロピオフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-ターシャリブチルジクロロアセトフェノン、p-ターシャリブチルトリクロロアセトフェノン、p-アジドベンザルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパノン-1、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等が挙げられる。
【0196】
上記ベンジル系化合物としては、ベンジル等が挙げられる。
【0197】
上記ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラーケトン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン及び4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド等が挙げられる。
【0198】
上記チオキサントン系化合物としては、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0199】
上記オキシム系化合物としては、例えば、下記一般式(IV)で表される化合物を挙げることができる。
【0200】
【0201】
(式中、R71及びR72は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R73及びR74は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基、R75、OR76、SR77、NR78R79、COR80、SOR81、SO2R82又はCONR83R84を表し、R73及びR74は、互いに結合して環を形成している場合もあり、
R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83及びR84は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
X3は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR85R86、CO、NR87又はPR88を表し、
X4は、単結合又はCOを表し、
R85、R86、R87及びR88は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基又は炭素原子数7~20のアリールアルキル基を表し、該アルキル基又はアリールアルキル基中のメチレン基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基又は複素環含有基で置換されている場合もあり、-O-で置き換えられている場合もあり、
R73及びR74は、それぞれ独立に、隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって環を形成している場合もあり、
e1は、0~4の整数を表し、
e2は、0~5の整数を表す。)
【0202】
上記一般式(IV)中のR71、R72、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R85、R86、R87及びR88に用いられる炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基並びにこれらの置換基としては、上記「1.光脱離基B」の項にR11等として例示した内容のうち、所定の炭素原子数を満たすものが挙げられる。
【0203】
上記オキシム系化合物としては、例えば、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、1-〔9-エチル-6-ベンゾイル-9H-カルバゾール-3-イル-オクタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、1-〔9-n-ブチル-6-(2-エチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-( 2-メチル-4-テトラヒドロピラニルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-5-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)等のカルバゾール構造を有するカルバゾール系オキシムエステル化合物が挙げられる。
【0204】
上記オキシム系化合物としては、例えば、インドール構造を有するインドール系オキシムエステル化合物も用いることができる。
インドール系オキシムエステル化合物としては、例えば、国際公開第2017/051680号に記載される下記一般式(V)で表されるオキシムエステル化合物等を挙げることができる。
【0205】
【0206】
(式中、R201及びR202は、それぞれ独立に、R211、OR211、COR211、SR211、CONR212R213又はCNを表し、
R211、R212及びR213は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R211、R212及びR213で表される基の水素原子は、更にR221、OR221、COR221、SR221、NR222R223、CONR222R223、NR222OR223、NCOR222OCOR223、NR222COR221、OCOR221、COOR221、SCOR221、OCSR221、COSR221、CSOR221、水酸基、ニトロ基、CN、ハロゲン原子、又はCOOR221で置換されている場合もあり、
R221、R222及びR223は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R221、R222及びR223で表される基の水素原子は、更に水酸基、ニトロ基、CN、ハロゲン原子、水酸基又はカルボキシル基で置換されている場合もあり、
R211、R212、R213、R221、R222及びR223で表される基のアルキレン部分のメチレン基は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-CONR224-、-NR224-、-NR224CO-、-NR224COO-、-OCONR224-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-SCOO-により置き換えられている場合もあり、
R224は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R211、R212、R213、R221、R222、R223及びR224で表される基のアルキル部分は、分岐側鎖がある場合もあり、環状アルキルである場合もあり、
R203は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、R203で表される基のアルキル部分は、分岐側鎖がある場合もあり、環状アルキルである場合もあり、また、R203とR207及びR203とR208はそれぞれ一緒になって環を形成している場合もあり、
R203で表される基の水素原子は、更にR221、OR221、COR221、SR221、NR222R223、CONR222R223、NR222OR223、NCOR222OCOR223、NR222COR221、OCOR221、COOR221、SCOR221、OCSR221、COSR221、CSOR221、水酸基、ニトロ基、CN、ハロゲン原子、又はCOOR221で置換されている場合もあり、
R204、R205、R206及びR207は、それぞれ独立に、R211、OR211、SR211、COR214、CONR215R216、NR212COR211、OCOR211、COOR214、SCOR211、OCSR211、COSR214、CSOR211、水酸基、CN又はハロゲン原子を表し、R204とR205、R205とR206及びR206とR207はそれぞれ一緒になって環を形成している場合もあり、
R204、R205、R206及びR207で表される基の水素原子は、更にR221、OR221、COR221、SR221、NR222R223、CONR222R223、NR222OR223、NCOR222OCOR223、NR222COR221、OCOR221、COOR221、SCOR221、OCSR221、COSR221、CSOR221、水酸基、ニトロ基、CN、ハロゲン原子又はCOOR221で置換されている場合もあり、
R214、R215及びR216は、水素原子又は炭素原子数1~20のアルキル基を表し、
R214、R215及びR216で表される基のアルキル部分は、分岐側鎖がある場合もあり、環状アルキルである場合もあり、
R208は、R211、OR211、SR211、COR211、CONR212R213、NR212COR211、OCOR211、COOR211、SCOR211、OCSR211、COSR211、CSOR211、水酸基、CN又はハロゲン原子を表し、
n1は、0又は1を表す。)
【0207】
上記一般式(V)中のR203、R211、R212、R213、R214、R215、R216、R221、R222、R223及びR224に用いられる炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基としては、上記「1.光脱離基B」の項にR11等として例示した内容のうち、所定の炭素原子数を満たすものが挙げられる。
【0208】
その他のラジカル重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系化合物及びビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(ピル-1-イル)]チタニウム等のチタノセン系化合物等が挙げられる。
【0209】
市販のラジカル重合開始剤としては、アデカオプトマーN-1414、N-1717、N-1919、アデカアークルズNCI-831、NCI-930(ADEKA社製)、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE651、IRGACURE907、IRGACURE OXE 01、IRGACURE OXE 02、OXE 03、OXE 04、IRGACURE784(BASF社製)、TR-PBG-304、TR-PBG-305、TR-PBG-309及びTR-PBG-314(Tronly社製)等が挙げられる。
【0210】
これらの光ラジカル重合開始剤は1種或いは2種以上のものを所望の性能に応じて配合して使用することができる。
上記光ラジカル重合開始剤の含有量としては、所望の硬化性や感光性を付与できるものであればよいが、例えば、重合性化合物100質量部に対して、0.001質量部以上20質量部以下とすることができ、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。上記含有量であることで、組成物は、硬化性等に優れ、また、分散性等にも優れるからである。
【0211】
上記光カチオン重合開始剤としては、光照射によりカチオン重合を開始させる物質を放出させることが可能な化合物であれば特に制限されず、既存の化合物を用いることが可能であり、好ましくは、エネルギー線の照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩、又はその誘導体である。かかる化合物の代表的なものとしては、下記一般式、
[A1]r+[B1]r-
で表される陽イオンと陰イオンの塩を挙げることができる。
【0212】
上記陽イオン[A1]r+はオニウムであることが好ましく、その構造は、例えば、下記一般式で表すことができる。
[(R101)f1Q]r+
【0213】
更にここで、R101は炭素原子数が1~60であり、炭素原子以外の原子をいくつも含んでいる場合もある有機の基である。f1は1~5のいずれかの整数である。e個のR58は各々独立で、同一でも異なっている場合もある。また、R101の少なくとも1つは、芳香環を有する上記の如き有機の基であることが好ましい。例えば、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、ハロゲン原子、ベンジル基、チオフェノキシ基、4-ベンゾイルフェニルチオ基、2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ基等で置換されている場合もあるフェニル基が挙げられる。QはS,N,Se,Te,P,As,Sb,Bi,O,I,Br,Cl,F,N=Nからなる群から選ばれる原子或いは原子団である。また、陽イオン[A1]r+中のQの原子価をqとしたとき、r=f1-qなる関係が成り立つことが必要である(但し、N=Nは原子価0として扱う)。
【0214】
また、陰イオン[B1]r-は、ハロゲン化物錯体であることが好ましく、その構造は、例えば、下記一般式、[LXf2]r-で表すことができる。
【0215】
更にここで、Lはハロゲン化物錯体の中心原子である金属又は半金属(Metalloid)であり、B,P,As,Sb,Fe,Sn,Bi,Al,Ca,In,Ti,Zn,Sc,V,Cr,Mn及びCo等である。
Xf2は、ハロゲン原子、又は、ハロゲン原子やアルコキシ基等で置換されている場合もあるフェニル基である。f2は3~7なる整数である。
また、陰イオン[B1]r-中のLの原子価をpとしたとき、r=f2-pなる関係が成り立つことが必要である。
【0216】
上記一般式の陰イオン[LXf2]r-の具体例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラ(3,5-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)ボレート、テトラフルオロボレート(BF4)-、ヘキサフルオロフォスフェート(PF6)-、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6)-、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6)-及びヘキサクロロアンチモネート(SbCl6)-等を挙げることができる。
【0217】
また、陰イオン[B1]r-は、下記一般式、
[LXf2-1(OH)]r-
で表される構造のものも好ましく用いることができる。L,X,f2は上記と同様である。また、その他用いることのできる陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO4)-、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF3SO3)-、フルオロスルホン酸イオン(FSO3)-、トルエンスルホン酸陰イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸陰イオン、カンファースルフォネート、ノナフロロブタンスルフォネート、ヘキサデカフロロオクタンスルフォネート、テトラアリールボレート及びテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を挙げることができる。
【0218】
本発明では、このようなオニウム塩の中でも、下記の(ホ)~(ト)の芳香族オニウム塩を使用することが特に有効であり、好ましい。これらの中から、その1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0219】
(ホ)フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、4-メトキシフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート及び4-メチルフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート等のアリールジアゾニウム塩。
【0220】
(へ)ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート及びトリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のジアリールヨードニウム塩。
【0221】
(ト)下記群I又は群IIで表されるスルホニウムカチオンとヘキサフルオロアンチモンイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン等のスルホニウム塩。
【0222】
【0223】
【0224】
また、その他好ましいものとしては、(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)〔(1,2,3,4,5,6-η)-(1-メチルエチル)ベンゼン〕-アイアン-ヘキサフルオロホスフェート等の鉄-アレーン錯体;トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(エチルアセトナトアセタト)アルミニウム、トリス(サリチルアルデヒダト)アルミニウム等のアルミニウム錯体;トリフェニルシラノール等のシラノール類との混合物:等も挙げることができる。
【0225】
上記光カチオン重合開始剤としては、市販品を用いることもでき、例えば、IRUGACURE261(BASF社製)、アデカオプトマーSP-150、SP-151、SP-152、SP-170、SP-171、SP-172(ADEKA社製)、UVE-1014(ゼネラルエレクトロニクス社製)、CD-1012(サートマー社製)、CI-2064、CI-2481(日本曹達社製)、Uvacure1590、1591(ダイセルUCB)、CYRACURE UVI-6990(ユニオンカーバイド社製)、BBI-103、MPI-103、TPS-103、MDS-103、DTS-103、NAT-103及びNDS-103(ミドリ化学社製)等が挙げられる。
【0226】
これらの中でも、実用面と光感度の観点から、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、鉄-アレーン錯体を用いることが好ましい。
【0227】
上記光アニオン重合開始剤としては、光により塩基を発生するものを用いることができ、光アニオン重合開始剤として公知のものを用いることができる。
上記光アニオン重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン O-アロイルオキシム(acetophenone O-aroyloxime)、ニフェジピン(nifedipine)等を挙げることができる。
【0228】
(b)熱重合開始剤
上記熱重合開始剤としては、加熱することにより重合性化合物を重合可能なものであればよく、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤等を挙げることができる。
【0229】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、加熱によりラジカルを発生するものを用いることができ、熱ラジカル重合開始剤として公知のものを用いることができる。
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ系化合物、過酸化物及び過硫酸塩等を好ましいものとして例示することができる。
【0230】
上記アゾ系化合物としては、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル、2,2′-アゾビス(メチルイソブチレ-ト)、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)等が挙げられる。
【0231】
過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート及びジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0232】
上記過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。
【0233】
上記熱カチオン重合開始剤としては、加熱によりカチオン種又はルイス酸を発生するものを用いることができ、熱カチオン重合開始剤として公知のものを用いることができる。
上記熱カチオン重合開始剤としては、具体的には、スルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム、ピリジニウム塩及びヒドラジニウム塩等の塩;ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン及びテトラエチレンペンタミン等のポリアルキルポリアミン類;1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-3,6-ジエチルシクロヘキサン及びイソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン類;m-キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン及びジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミン類;上記ポリアミン類と、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ビスフェノールA-ジグリシジルエーテル及びビスフェノールF-ジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類又はカルボン酸のグリシジルエステル類等の各種エポキシ樹脂とを常法によって反応させることによって製造されるポリエポキシ付加変性物;上記有機ポリアミン類と、フタル酸、イソフタル酸及びダイマー酸等のカルボン酸類とを常法によって反応させることによって製造されるアミド化変性物;上記ポリアミン類とホルムアルデヒド等のアルデヒド類及びフェノール、クレゾール、キシレノール、第三ブチルフェノール及びレゾルシン等の核に少なくとも一個のアルデヒド化反応性場所を有するフェノール類とを常法によって反応させることによって製造されるマンニッヒ化変性物;多価カルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2-メチルコハク酸、2-メチルアジピン酸、3-メチルアジピン酸、3-メチルペンタン二酸、2-メチルオクタン二酸、3,8-ジメチルデカン二酸、3,7-ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸及びダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸類;トリメリット酸、トリメシン酸及びひまし油脂肪酸等の三量体等のトリカルボン酸類;ピロメリット酸等のテトラカルボン酸類等)の酸無水物;ジシアンジアミド、イミダゾール類、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル及びアミンイミド等を挙げることができる。
上記熱カチオン重合開始剤としては、市販品を用いることもでき、例えば、アデカオプトンCP-77、アデカオプトンCP-66(ADEKA社製)、CI-2639、CI-2624(日本曹達社製)、サンエイドSI-60L、サンエイドSI-80L、サンエイド SI-100L(三新化学工業社製)等が挙げられる。
【0234】
上記熱アニオン重合開始剤としては、熱により塩基を発生するものを用いることができ、熱アニオン重合開始剤として公知のものを用いることができる。
上記アニオン重合開始剤としては、具体的には、脂肪族アミン系化合物、芳香族アミン系化合物、二級又は三級アミン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリメルカプタン系化合物、三フッ化ホウ素-アミン錯体、ジシアンジアミド、有機酸ヒドラジッド等を用いることができる。
【0235】
(c)重合開始剤の含有量
上記重合開始剤の含有量としては、所望の硬化性等を付与できるものであればよいが、例えば、固形分100質量部中、0.1質量部以上30質量部以下とすることができ、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。上記含有量であることで、組成物は、硬化性等に優れ、また、分散性等にも優れるからである。
上記重合開始剤の含有量としては、所望の硬化性や感光性を付与できるものであればよいが、例えば、重合性化合物100質量部に対して、0.001質量部以上20質量部以下とすることができ、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。上記含有量であることで、組成物は、硬化性等に優れ、また、分散性等にも優れるからである。
【0236】
(3)その他
上記他の成分としては、樹脂成分、重合開始剤以外に、必要に応じて、着色剤、溶剤、連鎖移動剤、増感剤、界面活性剤、シランカップリング剤、メラミン化合物等を含むことができる。
また、上記他の成分は、これら以外にも必要に応じて、p-アニソール、ハイドロキノン、ピロカテコール、t-ブチルカテコール、フェノチアジン等の熱重合抑制剤;可塑剤;接着促進剤;充填剤;消泡剤;レベリング剤;表面調整剤;フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等の酸化防止剤;上記化合物I-1で表される化合物以外の紫外線吸収剤;分散助剤;凝集防止剤;触媒;効果促進剤;架橋剤;増粘剤等の添加剤を含むことができる。
【0237】
(a)着色剤
上記着色剤としては、例えば組成物又はその硬化物等に所望の着色を付与できるものであればよく、染料又は顔料が挙げられる。
染料としては、380~1200nmに吸収を有する化合物を用いることができ、例えば、アゾ化合物、アントラキノン化合物、インジゴイド化合物、トリアリールメタン化合物、キサンテン化合物、アリザリン化合物、アクリジン化合物、スチルベン化合物、チアゾール化合物、ナフトール化合物、キノリン化合物、ニトロ化合物、インダミン化合物、オキサジン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、ジインモニウム化合物、シアノエテニル化合物、ジシアノスチレン化合物、ローダミン化合物、ペリレン化合物、ポリエンナフトラクタム化合物、クマリン化合物、スクアリリウム化合物、クロコニウム化合物、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、スチリル化合物、ピリリウム化合物、ローダニン化合物、オキサゾロン化合物、フタルイミド化合物、シンノリン化合物、ナフトキノン化合物、アザアントラキノン化合物、ポルフィリン化合物、アザポルフィリン化合物、ピロメテン化合物、キナクリドン化合物、ジケトピロロピロール化合物、インジゴ化合物、アクリジン化合物、アジン化合物、アゾメチン化合物、アニリン化合物、キナクリドン化合物、キノフタロン化合物、キノンイミン化合物、イリジウム錯体化合物、ユーロピウム錯体化合物等の染料等が挙げられ、これらは複数を混合して用いてもよい。
【0238】
顔料としては、無機顔料或いは有機顔料を用いることができ、例えば、ニトロソ化合物、ニトロ化合物、アゾ化合物、ジアゾ化合物、キサンテン化合物、キノリン化合物、アントラキノン化合物、クマリン化合物、フタロシアニン化合物、イソインドリノン化合物、イソインドリン化合物、キナクリドン化合物、アンタンスロン化合物、ペリノン化合物、ペリレン化合物、ジケトピロロピロール化合物、チオインジゴ化合物、ジオキサジン化合物、トリフェニルメタン化合物、キノフタロン化合物、ナフタレンテトラカルボン酸;アゾ染料、シアニン染料の金属錯体化合物;レーキ顔料;ファーネス法、チャンネル法、サーマル法によって得られるカーボンブラック、或いはアセチレンブラック、ケッチェンブラック又はランプブラック等のカーボンブラック;上記カーボンブラックをエポキシ樹脂で調整、被覆したもの、上記カーボンブラックを予め溶媒中で樹脂により分散処理し、20~200mg/gの樹脂を吸着させたもの、上記カーボンブラックを酸性又はアルカリ性表面処理したもの、平均粒径が8nm以上でDBP吸油量が90ml/100g以下のもの、950℃における揮発分中のCO、CO2から算出した全酸素量が、カーボンブラックの表面積100m2当たり9mg以上であるもの;黒鉛、黒鉛化カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル、カーボンナノホーン、カーボンエアロゲル、フラーレン;アニリンブラック、ピグメントブラック7、チタンブラック;疎水性樹脂、酸化クロム緑、ミロリブルー、コバルト緑、コバルト青、マンガン系、フェロシアン化物、リン酸塩群青、紺青、ウルトラマリン、セルリアンブルー、ピリジアン、エメラルドグリーン、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、合成鉄黒、アンバー等の無機含量又は有機顔料を用いることができる。これらの顔料は単独で、或いは複数を混合して用いることができる。
【0239】
上記無機顔料又は有機顔料としては、市販の顔料を用いることもでき、例えば、ピグメントレッド1、2、3、9、10、14、17、22、23、31、38、41、48、49、88、90、97、112、119、122、123、144、149、166、168、169、170、171、177、179、180、184、185、192、200、202、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、254;ピグメントオレンジ13、31、34、36、38、43、46、48、49、51、52、55、59、60、61、62、64、65、71;ピグメントイエロー1、3、12、13、14、16、17、20、24、55、60、73、81、83、86、93、95、97、98、100、109、110、113、114、117、120、125、126、127、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、166、168、175、180、185;ピグメントグリ-ン7、10、36;ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、22、24、56、60、61、62、64;ピグメントバイオレット1、19、23、27、29、30、32、37、40、50等が挙げられる。
【0240】
上記着色剤の含有量としては、組成物の固形分100質量部に対して0.01質量部以上50質量部以下とすることができる。
上記着色剤の含有量としては、組成物100質量部中に0.01質量部以上20質量部以下とすることができる。
【0241】
(b)溶剤
上記溶剤としては、上記の各成分を溶解又は分散し得るものであればよく、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル、テキサノール等のエステル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、イソ-又はn-プロパノール、イソ-又はn-ブタノール、アミルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、1-t-ブトキシ-2-プロパノール、3-メトキシブチルアセテート、シクロヘキサノールアセテート等のエーテルエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等のBTX系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テレピン油、D-リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等のパラフィン系溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;カルビトール系溶媒、アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられ、これらの溶媒は1種又は2種以上の混合溶媒として使用することができる。
上記溶剤の含有量としては、上記組成物の用途等に応じて異なるものであるが、組成物100質量部中に1質量部以上99質量部以下とすることができ、10質量部以上70質量部以下であることが好ましい。塗布性等に優れたものとすることが容易だからである。
【0242】
(c)連鎖移動剤及び増感剤
上記連鎖移動剤、増感剤としては、組成物の感度等を調整できるものとすることができ、一般的に硫黄原子含有化合物が用いられる。例えばチオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプト酪酸、N-(2-メルカプトプロピオニル)グリシン、2-メルカプトニコチン酸、3-[N-(2-メルカプトエチル)カルバモイル]プロピオン酸、3-[N-(2-メルカプトエチル)アミノ]プロピオン酸、N-(3-メルカプトプロピオニル)アラニン、2-メルカプトエタンスルホン酸、3-メルカプトプロパンスルホン酸、4-メルカプトブタンスルホン酸、ドデシル(4-メチルチオ)フェニルエーテル、2-メルカプトエタノール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、1-メルカプト-2-プロパノール、3-メルカプト-2-ブタノール、メルカプトフェノール、2-メルカプトエチルアミン、2-メルカプトイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-3-ピリジノール、2-メルカプトベンゾチアゾール、メルカプト酢酸、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)等のメルカプト化合物、該メルカプト化合物を酸化して得られるジスルフィド化合物、ヨード酢酸、ヨードプロピオン酸、2-ヨードエタノール、2-ヨードエタンスルホン酸、3-ヨードプロパンスルホン酸等のヨード化アルキル化合物、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトイソブチレート)、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、トリスヒドロキシエチルトリスチオプロピオネート、下記化合物No.C1、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等の脂肪族多官能チオール化合物、昭和電工社製カレンズMT BD1、PE1、NR1等が挙げられる。
【0243】
【0244】
(d)界面活性剤
上記界面活性剤としては、組成物の分散安定性、塗工性等を改善できるものを用いることができ、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等のフッ素界面活性剤、高級脂肪酸アルカリ塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等のアニオン系界面活性剤、高級アミンハロゲン酸塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド等の非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤を用いることができ、これらは組み合わせて用いてもよい。
【0245】
(e)シランカップリング剤
上記シランカップリング剤としては、ガラスなどの無機材料と化学結合する反応基と、合成樹脂などの有機材料と化学結合する反応基と、を有するシラン化合物であり、組成物又はその硬化物の密着性等を改善できるものを用いることができる。シランカップリング剤としては、例えば信越化学社製シランカップリング剤を用いることができ、その中でもKBE-9007、KBM-502、KBE-403等、イソシアネート基、メタクリロイル基、エポキシ基を有するシランカップリング剤が好適に用いられる。
【0246】
(f)メラミン化合物
上記メラミン化合物としては、硬化性を改善できるものを用いることができ、例えば、(ポリ)メチロールメラミン、(ポリ)メチロールグリコールウリル、(ポリ)メチロールベンゾグアナミン、(ポリ)メチロールウレア等の窒素化合物中の活性メチロール基(CH2OH基)の全部又は一部(少なくとも2つ)がアルキルエーテル化された化合物を挙げることができる。ここで、アルキルエーテルを構成するアルキル基としては、メチル基、エチル基又はブチル基が挙げられ、互いに同一である場合もあるし、異なる場合もある。また、アルキルエーテル化されていないメチロール基は、一分子内で自己縮合していてもよく、二分子間で縮合して、その結果オリゴマー成分が形成されていてもよい。具体的には、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラブトキシメチルグリコールウリル等を用いることができる。これらの中でも、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン等のアルキルエーテル化されたメラミンが好ましい。
【0247】
3.組成物
上記組成物の粘度としては、例えば、塗工性を有するものとする観点からは、例えば、200mPa・s以下とすることができ、1mPa・s以上200mPa・s以下とすることができる。上記組成物は、塗工性に優れるからである。
上記粘度は、JIS Z 8803:2011に準じて、回転式粘度計(例えば、アントンパール社製、Physica MCR301等)を用いて、測定される値のことを指す。また、本明細書で、特に、温度の指定がない処理、測定は、25℃で行うものとすることができる。
【0248】
上記組成物の製造方法は、上記各成分を所望の含有量で配合可能な方法であればよく、上記各成分を同時に添加して混合する方法であってもよく、各成分を順次添加しながら混合する方法であってもよい。
【0249】
上記組成物の用途は、熱硬化性塗料、光硬化性塗料或いはワニス、熱硬化性接着剤、光硬化性接着剤、プリント基板、或いはカラーテレビ、PCモニタ、携帯情報端末、デジタルカメラ等のカラー表示の液晶表示パネルにおけるカラーフィルタ、CCDイメージセンサのカラーフィルタ、フォトスペーサ、ブラックカラムスペーサ、プラズマ表示パネル用の電極材料、タッチパネル、タッチセンサ、粉末コーティング、印刷インク、印刷版、接着剤、歯科用組成物、光造形用樹脂、ゲルコート、電子工学用のフォトレジスト、電気メッキレジスト、エッチングレジスト、液状及び乾燥膜の双方、はんだレジスト、種々の表示用途用のカラーフィルタを製造するための或いはプラズマ表示パネル、電気発光表示装置、及びLCDの製造工程において構造を形成するためのレジスト、電気及び電子部品を封入するための組成物、ソルダーレジスト、磁気記録材料、微小機械部品、導波路、光スイッチ、メッキ用マスク、エッチングマスク、カラー試験系、ガラス繊維ケーブルコーティング、スクリーン印刷用ステンシル、ステレオリトグラフィによって三次元物体を製造するための材料、ホログラフィ記録用材料、画像記録材料、微細電子回路、脱色材料、画像記録材料のための脱色材料、マイクロカプセルを使用する画像記録材料用の脱色材料、印刷配線板用フォトレジスト材料、UV及び可視レーザー直接画像系用のフォトレジスト材料、プリント回路基板の逐次積層における誘電体層形成に使用するフォトレジスト材料、3D実装用フォトレジスト材料或いは保護膜等の各種の用途に使用することができ、その用途に特に制限はない。
また、上記用途としては、製品としての使用時等に紫外線に対する耐久性が要求される用途に限定されず、例えば、製造過程において紫外線照射等を受ける部材にも好適に用いることができる。
製造過程において紫外線照射等を受ける部材としては、例えば、表面の濡れ性向上、密着性向上等の表面改質を図るために、紫外線等の照射を受ける部材を挙げることができる。
上述の濡れ性向上、密着性向上等が要求される部材としては、他の部材と積層される部材を挙げることができ、例えば、プラズマ表示パネル、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、液晶表示装置等の各種画像表示、タッチパネル等の各種センサ、回路基板等を構成する部材としてカラーフィルタ、フォトスペーサ、輝度向上板、導光板、TFT基板、配向膜、液晶層、絶縁膜、スピーカーなどの音響素子、撮像用レンズ、キーパッド、HDD用磁気ヘッドなどの製造過程での表面改質や部材の劣化防止が要求される部材が挙げられる。
上述の製造過程での表面改質や部材の劣化防止が要求される部材としては、接着剤を介して他の部材と積層される部材、塗料等により他の部材により被覆される部材も挙げることができ、例えば、自動車、航空機の内外装部材等の運搬機器、冷蔵庫、洗濯機等の家電製品、住宅建材等の各種用途の構成部材も挙げることができる。
また、基材上にパターン状の部材を形成した後、露出する基材の表面改質等のために基材と共に上記部材に対して紫外線照射等を実施する場合がある。上記用途としては、このような製造過程において表面改質等が要求される部材と共に用いられる部材にも好ましく用いることができる。上記用途としては、例えば、プラスチックフィルムやガラス、シリコンウエハー、各種エンジニアリングプラスチック、光学レンズ、金属表面、メッキ、セラミック、金型などの表面洗浄や表面改質などが要求される部材と共に用いられる部材が挙げられる。
【0250】
D.硬化物
次に、本発明の硬化物について説明する。
本発明の硬化物は、本発明の化合物I-1と重合性化合物とを含有する組成物の硬化物である。
【0251】
本発明の組成物は、上述の組成物を用いているため、良好な紫外線吸収能等を有する。
【0252】
本発明の硬化物は、上述の組成物を用いるものである。
以下、本発明の硬化物について詳細に説明する。
【0253】
上記組成物は、上記化合物I-1と、重合性化合物と、を含むものである。また、上記組成物は、上記化合物I-1及び重合性化合物以外の成分を含むものであってもよい。
このような組成物の各成分の内容については、上記「C.組成物」の「2.その他の成分」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0254】
上記組成物に含まれる上記化合物I-1は、硬化物中で、光脱離基Bの脱離前であっても、脱離後であってもよいが、脱離後であることが好ましい。上記硬化物は、優れた紫外線吸収能を有するものとなるからである。
【0255】
上記硬化物は、通常、重合性化合物の重合物を含むものである。
上記硬化物に含まれる重合性化合物の残存量としては、硬化物の用途等に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、硬化物100質量部中、10質量部以下であり、1質量部以下であることが好ましい。
【0256】
上記硬化物としては、溶剤を実質的に含まないものとすることができる。
上記硬化物に含まれる溶剤の含有量としては、例えば、硬化物100質量部中、1質量部以下とすることができ、0.5質量部以下とすることができる。
【0257】
上記硬化物の弾性率は、通常、上記組成物より高いものであり、例えば、10-3M以上とすることができ、10MPa以上とすることができる。上記弾性率であることで、上記硬化物は、安定的に化合物I-1等を保持できるからである。
上記弾性率の上限については、硬化物の用途等に応じて適宜設定できるが、例えば、106MPa以下とすることができる。
なお以下、弾性率は、圧縮弾性率をいうものであり、JIS K7181に準拠して、23℃で、測定することができる。
測定サンプルについては、例えば、一辺の長さが6mmの立方体の試験片を作成又は切り出し、JISK7181に準じ、試験速度1±0.2mm/分の条件で測定することができる。
【0258】
上記硬化物の製造方法としては、上述の組成物を硬化させることができる方法であればよく、例えば、後述する「F.硬化物の製造方法」の項に記載の方法と同様とすることができる。
【0259】
上記硬化物の用途等については、上記「C.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0260】
E.組成物
次に、本発明の第2組成物について説明する。
本発明の第2組成物は、下記一般式(I-2)で表される化合物(以下、「化合物I-2と称する場合がある。)と、光脱離基由来の脱離物(以下、「化合物B´」と称する場合がある。)と、を含むことを特徴とするものである。
【0261】
【0262】
(式中、Aは、紫外線吸収能を有する原子団であり、kは1~10の整数を表す。)
【0263】
本発明によれば、上記第2組成物は、例えば、上述の組成物を用いて、容易に形成できる。また、上記第2組成物は、容易に紫外線吸収能等を付与できる。
【0264】
本発明の第2組成物は、化合物I-2及び化合物B´を有するものである。
以下、本発明の第2組成物について詳細に説明する。
【0265】
1.化合物I-2
上記化合物I-2は、紫外線吸収能を発揮するものである。
上記化合物I-2は、上記化合物I-1における上記B-O-が-OH基に置換されたものである。
このような化合物I-1の内容については、上記「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0266】
上記化合物I-2の組成物中の含有量としては、所望の紫外線吸収能等を付与できるものであればよいが、例えば、化合物I-2及び化合物B´の合計が、上記「C.組成物」の項に記載の上記化合物I-1の固形分中の含有量と同じとすることができる。
【0267】
2.化合物B´
上記化合物B´は、光脱離基由来の脱離物である。
また、光脱離基は、フェノール性水酸基に対して保護基として結合可能な基であればよく、上記「A.化合物」の「1.光脱離基B」に記載の内容と同様とすることができる。
このような化合物B´としては、上記光脱離基がフェノール性水酸基から脱離した後にとり得るものであればよい。
なお、フェノール性水酸基から脱離した後の光脱離基Bは、通常、反応性が高く、様々な構造をとり得る。
上記化合物B´としては、光脱離基Bが、上記一般式(B-1-a)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)、(B-6)、(B-7)等で表されるものである場合には、それぞれ例えば、下記一般式(B-111-a)、(B-112)、(B-113)、(B-114)、(B-115)、(B-116)、(B-117)で表される化合物等を含むことができる。
【0268】
【0269】
上記化合物B´に含まれるR11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26及びR27並びにb1、b2、b3、b4、b5、b6、b7及びb8については、上記「A.化合物」の項に記載の内容と同じであるもで、ここでの説明は省略する。
【0270】
上記化合物B´の種類は、1種類のみであってもよく、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0271】
3.その他
上記第2組成物は、化合物I-2及び化合物B´を有するものであるが、通常、その他の成分を含むものである。
このようなその他の成分としては、上記「C.組成物」の「2.その他の成分」の項に記載の内容等を挙げることができる。
上記その他の成分は、なかでも、樹脂成分を含むことが好ましく、特に、重合性化合物の重合物等の重合性基を有しない重合体を含むことが好ましい。上記第2組成物は、例えば、硬化物等に対して容易に紫外線吸収能等を付与できるとの効果を効果的に発揮できるからである。
なお、樹脂成分の種類は、1種類のみであってもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0272】
上記第2組成物は、溶剤、重合性化合物等を含み、塗工性を有するものであってもよく、その場合の粘度としては、上記「C.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
また、上記第2組成物は、重合性化合物の重合物を含む硬化物である場合、上記第2組成物の弾性率については、上記「D.硬化物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0273】
上記第2組成物の用途等については、上記「D.硬化物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0274】
F.硬化物の製造方法
次に、本発明の硬化物の製造方法について説明する。
本発明の硬化物の製造方法は、上述の化合物I-1と重合性化合物とを含む組成物を硬化させて硬化物を形成する工程と、上記硬化物に対して光を照射して、上記化合物に含まれる光脱離基Bを脱離する工程とを有するものである。
【0275】
本発明によれば、上記製造方法は、上述の組成物を用い、且つ、上記工程を有することにより、硬化が容易であり、また、容易に紫外線吸収能等を付与できる。
【0276】
本発明の製造方法は、硬化物を形成する工程及び脱離する工程を含むものである。
以下、本発明の製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0277】
1.硬化物を形成する工程
上記硬化物を形成する工程は、上述の組成物の硬化物を形成する工程である。
【0278】
本工程における組成物の硬化物を形成する方法としては、所望の硬度の硬化物を形成可能な方法であればよく、組成物に含まれる成分に応じて異なるものである。
上記硬化方法は、例えば、組成物が、重合性化合物と共に重合開始剤として光重合開始剤を含む場合には、組成物に対して光照射を行い、重合性化合物同士を重合する方法を用いることができる。
組成物に照射される光としては、波長300nm~450nmの光を含むものとすることができる。
上記光照射の光源としては、例えば、超高圧水銀、水銀蒸気アーク、カーボンアーク、キセノンアーク等を挙げることができる。
上記照射される光としては、レーザー光を用いてもよい。レーザー光としては、波長340~430nmの光を含むものを用いることができる。
レーザー光の光源としては、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムネオンレーザー、YAGレーザー、及び半導体レーザー等の可視から赤外領域の光を発するものも用いることができる。
なお、これらのレーザーを使用する場合には、上記組成物は、可視から赤外の当該領域を吸収する増感色素を含むことができる。
【0279】
上記照射される光の合計光量としては、光脱離基Bの脱離を抑制できるものであることが好ましく、例えば、1000mJ/cm2未満とすることができ、800mJ/cm2以下とすることができ、500mJ/cm2以下とすることができる。
【0280】
上記硬化方法は、例えば、組成物が、重合性化合物と共に重合開始剤として熱重合開始剤を含む場合には、組成物に対して加熱処理を行い、重合性化合物同士を重合する方法を用いることができる。
加熱温度としては、上記組成物を安定的に硬化できるものであればよく、60℃以上、好ましくは100℃以上300℃以下とすることができる。
なお、加熱温度は、組成物の塗膜表面の温度とすることができる。
加熱時間としては、10秒~3時間程度行うことができる。
【0281】
上記硬化方法の種類は、1種類のみを含むものであってもよく、2種類以上を含むものであってもよい。
【0282】
本工程に用いられる組成物は、上記化合物I-1と、重合性化合物と、を含むものである。
また、上記組成物は、上記化合物I-1及び重合性化合物以外のその他の成分を含むものであってもよい。
このような組成物の各成分の内容については、上記「C.組成物」の「2.その他の成分」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0283】
2.脱離する工程
上記脱離する工程は、上記化合物I-1に含まれる光脱離基Bを脱離する工程である。
上記化合物I-1に含まれる光脱離基Bを脱離する方法としては、上記硬化物に対して光照射する方法であればよい。
硬化物に対して照射される光及びその合計光量としては、光脱離基Bを脱離可能なものであれば特に限定されるものではないが、上記「A.化合物」の「1.光脱離基B」の項に記載の内容と同様とすることができる。
なお、光照射の光源としては、照射される光の波長に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、上記「1.硬化物を形成する工程」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0284】
本工程における硬化物の温度としては、硬化物や硬化物を支持する基材の耐熱性等に応じて適宜設定することができるが、例えば、200℃以下とすることができ、0℃以上、150℃以下であることが好ましく、なかでも、0℃以上100℃以下であることが好ましい。上記温度が上述の範囲であることで、光脱離基Bの脱離が容易となるからである。また、その結果、例えば、硬化物及び基材等のその周辺部材に対して加熱によるダメージの少ないものとすることができるからである。
なお、上記硬化物の温度は、硬化物表面の温度である。
【0285】
3.その他の工程
上記製造方法は、硬化物を形成する工程及び脱離する工程を含むものであるが、必要に応じてその他の工程を含むものであってもよい。
上記その他の工程としては、例えば、上記組成物を基材上に塗布する工程等を挙げることができる。
組成物を塗布する方法としては、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の方法を用いることができる。
上記基材としては、硬化物の用途等に応じて適宜設定することができ、ソーダガラス、石英ガラス、半導体基板、金属、紙、プラスチック等を含むものを挙げることができる。
また、上記硬化物は、基材上で形成された後、基材から剥離して用いても、基材から他の被着体に転写して用いてもよい。
【0286】
4.その他
上記製造方法により製造される硬化物及び用途等については、上記「D.硬化物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0287】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0288】
以下、実施例等を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0289】
[実施例1]
下記のスキーム1中のフェノール化合物(化合物I-2)0.005mol、炭酸カリウム0.005mol及びDMF12gを混合し、窒素雰囲気下、室温でo-ニトロベンジルクロリド0.0075molを滴下し、80℃で2時間撹拌し、下記反応により化合物I-1に該当する化合物I-1-2を得た。反応液に酢酸エチル50g、イオン交換水50gを加えて油水分離を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、メタノールで晶析を行った。得られた白色固体を45℃で2時間減圧乾燥させ、目的物(化合物I-1-2)を得た。得られた白色固体が目的物であることは、H-NMR、IRにて確認した。
【0290】
【0291】
[実施例2~7]
o-ニトロベンジルクロリドを変更した以外は、実施例1と同様にして下記化合物I-1-3、I-1-40、I-1-32、I-1-35、I-1-28、I-1-34を得た。具体的には、下記の方法で実施例2~7の化合物I-1-3、I-1-40、I-1-32、I-1-35、I-1-28及び1-34を製造した。
また、実施例2~7で得られた白色固体が目的物であることは、H-NMRにて確認した。
[実施例2]
2-エチルニトロベンゼンに対して、1.1当量のN-ブロモスクシンイミドと0.01当量のAIBNを使用し、クロロベンゼン溶媒中、90℃で4時間加熱撹拌した。酢酸エチルで油水分離し、水洗後、シリカカラムにて精製し、ベンジルブロマイド化合物を得た。このベンジルブロマイド化合物をo-ニトロベンジルクロリドの代わりに用いた以外は実施例1と同様にして、化合物I-1-3を得た。得られた白色固体が目的物であることは、H-NMRにて確認した。
[実施例3]
2-エチルニトロベンゼンの代わりに、4-クロロ-2-ニトロトルエンを用いた以外は実施例2と同様にして、化合物I-1-40を得た。得られた白色固体が目的物であることは、H-NMRにて確認した。
[実施例4]
o-ニトロベンジルクロリドの代わりに4'-メトキシフェナシルブロミドを用いた以外は実施例1と同様にして、化合物I-1-32を得た。得られた白色固体が目的物であることは、H-NMRにて確認した。
[実施例5]
o-ニトロベンジルクロリドの代わりに2-ブロモ-2-フェニルアセトフェノンを用いた以外は実施例1と同様にして、化合物I-1-35を得た。得られた白色固体が目的物であることは、H-NMRにて確認した。
[実施例6]
o-ニトロベンジルクロリドの代わりに2-ブロモ-2’-ニトロアセトフェノンを用いた以外は実施例1と同様にして、化合物I-1-28を得た。得られた白色固体が目的物であることは、H-NMRにて確認した。
[実施例7]
o-ニトロベンジルクロリドの代わりに4-ブロモメチル-7-メトキシクマリンを用いた以外は実施例1と同様にして、化合物I-1-34を得た。得られた白色固体が目的物であることは、H-NMRにて確認した。
【0292】
【0293】
[実施例8]
4-メトキシ-2-ニトロトルエンに対して、1.1当量のN-ブロモスクシンイミドと0.01当量のAIBNを使用し、クロロベンゼン溶媒中で90℃で4時間加熱撹拌した。酢酸エチルで油水分離し、水洗後、シリカカラムにて精製し、対応するベンジルブロマイド化合物を得た。このベンジルブロマイド化合物をo-ニトロベンジルクロリドの代わりに用いた以外は実施例1と同様にして、化合物I-1-4を得た。得られた白色固体が目的物であることは、H-NMRにて確認した。
[実施例9]
4-メトキシ-2-ニトロトルエンの代わりに3-クロロ-2-ニトロトルエンを用いた以外は実施例8と同様にして、化合物I-1-41を得た。得られた白色固体が目的物であることは、H-NMRにて確認した。
[実施例10]
4-メトキシ-2-ニトロトルエンの代わりに3-メトキシ-2-ニトロトルエンを用いた以外は実施例8と同様にして、化合物I-1-42を得た。得られた白色固体が目的物であることは、H-NMRにて確認した。
[実施例11]
4-メトキシ-2-ニトロトルエンの代わりに3-メトキシ-2-ニトロ-6-ブロモトルエンを用いた以外は実施例8と同様にして、化合物I-1-43を得た。得られた白色固体が目的物であることは、H-NMRにて確認した。
[実施例12]
o-ニトロベンジルクロリドの代わりに2-ブロモ-2‘-メチルアセトフェノンを用いた以外は実施例1と同様にして、化合物I-1-44を得た。得られた白色固体が目的物であることは、H-NMRにて確認した。
【0294】
[実施例13]
o-ニトロベンジルクロリドの代わりに4-(2-ブロモアセチル)フェニルt-ブチルカーボネートを用いた以外は実施例1と同様にして中間体化合物を得た。該中間体化合物0.0035molを酢酸エチル5mlに溶解させ、4M HCl酢酸エチル溶液5mL入れ、50℃で10時間加熱撹拌した。反応液の溶媒を留去し、シリカカラム(酢酸エチル:ヘキサン=1:2)にて単離し、目的物(化合物I-1-45)を得た。得られた白色固体が目的物であることを、H-NMRで確認した。
[実施例14]
フェノール化合物(スキーム1中のフェノール化合物)0.004molをピリジン40mLに溶解させ、NPPOC-Cl(2-(2-ニトロフェニル)プロピルクロロホルメ-ト)0.006molを滴下し、6時間室温で撹拌した。反応液に酢酸エチル200g、イオン交換水50gを加えて油水分離を行った。有機層を希塩酸で2回、イオン交換水で3回洗浄し、溶媒を留去し、シリカカラム(酢酸エチル:ヘキサン=1:4)にて単離した。得られた白色固体をヘキサンで分散後、45℃で2時間減圧乾燥させ、目的物(化合物I-1-46)を得た。得られた白色固体が目的物であることを、H-NMRにて確認した。
[実施例15~17]
フェノール化合物として下記式(1)~(3)の化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして下記化合物I-1-8、I-1-47及びI-1-48を得た。
【0295】
【0296】
【0297】
【0298】
【0299】
[評価]
実施例1、2、5~9、12~14及び16(化合物I-1-2、I-1-3、I-1-35、I-1-28、I-1-34、I-1-4、I-1-41、I-1-44、I-1-45、I-1-46及びI-1-47)の0.01質量%アセトニトリル溶液を調製し、1cm角石英セルに入れた。超高圧水銀ランプUL750(HOYA製)を20mW/cm2に調整し、溶液で満たされた石英セルに100mJ/cm2、3000mJ/cm2、10000mJ/cm2の光量を照射した。
照射後の液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて、分析し、脱離率を以下の式から算出した。結果を下記表3に示す。
なお、HPLCによる分析では、化合物I-1に由来する230nmのピークが全て消失した場合に100%脱離したと仮定して算出した。
脱離率(%)=フェノール化合物(化合物I-2)/フェノール化合物(化合物I-2)+化合物I-1)×100
【0300】
また、また、実施例1、2及び7(化合物I-1-2、I-1-3及びI-1-34)について、光照射前(0mJ/cm2)及び光照射後(10000mJ/cm2)に、波長250nm以上450nm以下の範囲の光の吸収スペクトルを確認した。その結果、光照射前と比較し、光照射後は、波長250nm以上450nm以下の範囲で長波長側の光を幅広く吸収できることが確認できた。また、最大吸収波長(nm)の測定結果を下記表3及び4に示す。
【0301】
【0302】
【0303】
表3及び4より、化合物I-1は、光照射により光脱離基Bが脱離することが確認できた。
また、表3より、上記化合物I-1は、光照射により、波長250nm以上450nm以下の範囲の幅広い波長の紫外線を効率的に吸収できることが確認できた。また、それに伴って、最大吸収波長の長波長側へのシフトが確認された。
以上より、化合物I-1は、光照射前ではフェノール性水酸基が光脱離基Bにより保護され紫外線吸収能が抑制されており、硬化阻害を抑制できるとともに、光照射により容易に紫外線吸収能を付与できることが確認できた。
【0304】
下記表5に示す成分を、表5に示す割合で混合し、実施例18~20並びに比較例1及び2の組成物を得た。表5中の符号は下記の化合物を示す。なお、表中の数値は、質量部を表す。
【0305】
A-1:重合性化合物(新中村化学工業社製NKオリゴEA-1020(ビスフェノールA型エポキシアクリレート)
A-2:ラジカル重合性化合物(日本化薬社製カヤラッドDPHA(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレートの混合物))
B-1:BASF社製イルガキュア907(ラジカル重合開始剤)
C-1:信越化学工業社製シランカップリング剤KBE-403
D-1:2-ブタノン
E-1:下記式(1)で表される化合物(紫外線吸収剤)
F-1:化合物I-1-3
F-2:化合物I-1-35
F-3:化合物I-1-47
【0306】
【0307】
得られた実施例18~20並びに比較例1及び2の組成物の硬化性及び耐光性を下記の方法で評価した。
【0308】
[硬化性]
実施例18~20並びに比較例1及び2の組成物をそれぞれ、PETフィルムにバーコーターで約3μmの厚さに塗布した。次いで、80℃で3分間プリベークを行った後、光源として超高圧水銀ランプ(UL750)を用いて露光した(20mW/cm2)。なお、露光は、露光光量が、500mJ/cm2となるように行った。この際、光感度を測定できるように、光透過率が段階的に少なくなるように作られたネガフィルム(光学密度0.05を1段目とし、1段毎に光学密度が0.15ずつ増加するステップタブレット)を用いた。次いで、イソプロパノール(IPA)を用いて、25℃の環境下、10秒間かけ洗いを行って現像した後、80℃で30分間乾燥した。そして、PETフィルム上に形成された硬化物のステップタブレットの段数を測定することにより光感度を評価した。ステップタブレットの段数が高いほど光感度が高く、硬化性が良好なことを示す。結果を下記表5に示す。
【0309】
[耐光性]
実施例18~20並びに比較例1及び2の組成物をそれぞれガラス基板にスピンコーターで塗布し、80℃で3分間プリベークを行った後、光源として超高圧水銀ランプ(UL750)を用いて露光した(20mW/cm2)。露光は、露光光量が、100mJ/cm2となるように行った。その後、更に3000mJ/cm2照射し、耐光性評価用サンプルを作製した。スガ試験機製キセノン耐光性試験機テーブルサンXT-1500Lを用いて、評価用サンプルに対して24時間耐光性試験を実施した。評価用サンプルの耐光性試験前後の波長470nmでの透過率(%)の差((耐光性試験前の透過率(%)-耐光性試験後の透過率(%))を測定し、以下の基準で耐光性評価を行った。
〇:透過率差(%)が耐光性試験前の透過率に対して5%未満である。
×:透過率差(%)が耐光性試験前の透過率に対して5%以上である。
耐光性評価が「〇」であると、硬化物が耐光性に優れることを示す。その結果を下記表5に示す。
【0310】
【0311】
表5から、化合物I-1を含有する実施例18~20の組成物は、紫外線吸収剤を含有しない比較例1の組成物に比べて耐光性が良好なものである。また、実施例18~20の組成物は、公知の紫外線吸収剤を含有する比較例2の組成物に比べて硬化性が良好なものである。このことから、本発明によれば、硬化阻害が少なく、優れた耐光性を有する組成物が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0312】
本発明の化合物によれば、硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できる化合物を提供することができる。
本発明の潜在性紫外線吸収剤は、硬化阻害が少なく、硬化物に対して容易に紫外線吸収能等を付与できる。
本発明の組成物によれば、硬化阻害が少なく、優れた紫外線吸収能を有する硬化物が得られる組成物を提供することができる。
本発明の硬化物によれば、優れた紫外線吸収能を有する硬化物を提供することができる。
本発明の硬化物の製造方法によれば、硬化阻害を起こすことなく、優れた紫外線吸収能等を有する硬化物を製造することができる。
本発明の第2組成物によれば、硬化阻害を起こさずに、優れた紫外線吸収能を有する硬化物が得られる組成物を提供すことができる。