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特許7393219フェライトキャリア芯材並びにこれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤
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  • 特許-フェライトキャリア芯材並びにこれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】フェライトキャリア芯材並びにこれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/107 20060101AFI20231129BHJP
   G03G 9/113 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G03G9/107 321
G03G9/113 351
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020008990
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021117282
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000224802
【氏名又は名称】DOWA IPクリエイション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】赤井 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】金城 優樹
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-116287(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103309190(CN,A)
【文献】特開2018-013682(JP,A)
【文献】特開2017-156737(JP,A)
【文献】特開2005-181848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(MnFe3-x)O(但し、0<x<3である。)で表される組成を有するフェライトキャリア芯材であって、
SiとSnとが含有され、
SiとSnとのmol%での含有比率Si/Snが0.40以上1.0以下である
ことを特徴とするフェライトキャリア芯材。
【請求項2】
Srが0.01mol%以上0.50mol%以下さらに含有されている請求項1記載のフェライトキャリア芯材。
【請求項3】
xが0.01以上2以下である請求項1又は2記載のフェライトキャリア芯材。
【請求項4】
前記フェライトキャリア芯材の最大山谷深さRzが1.95μm以上2.38μm以下、
前記フェライトキャリア芯材の平均長さRSmが7.20μm以上8.50μm以下、
RzとRSmとの積が15.8以上であり、
下記測定方法で測定される前記フェライトキャリア芯材の異形率が46%以上である
請求項1~3のいずれかに記載のフェライトキャリア芯材。
フェライトキャリア芯材の異形率の測定方法)
測定装置:注入型画像解析粒度分布計
測定サンプル:0.07g
ポリエチレングリコール400を9ml投入したスクリュー管瓶(容量9ml)中で分散後に測定を行った。
(測定条件)
スペーサー厚:150μm
サンプリング:20%
解析タイプ:相対測定
測定量:0.95ml
解析:ダーク検出
閾値:169(穴を埋める)
O-Roughnessフィルタ:0.5
フィルタ条件:
ISO Area Diametere:最小値5、最大値100、内側の範囲
(解析条件)
解析フィルタ条件I:
ISO Area Diametere:最小値25、最大値55、内側の範囲
解析フィルタ条件II:
ISO Area Diametere:最小値25、最大値55、内側の範囲
ISO Solidity:最小値0.98、最大値1、外側の範囲
Ell.Ratio:最小値0.8、最大値1、内側の範囲
解析フィルタ条件IIでカウントされた粒子数を解析フィルタ条件Iでカウントされた粒子数で割り返して異形率を算出する。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のフェライトキャリア芯材の表面が樹脂で被覆されていることを特徴とする電子写真現像用キャリア。
【請求項6】
請求項5記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含むことを特徴とする電子写真用現像剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライトキャリア芯材並びにこれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子写真方式を用いたファクシミリやプリンター、複写機などの画像形成装置では、感光体の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて可視像化し、この可視像を用紙等に転写した後、加熱・加圧して定着させている。高画質化やカラー化の観点から、現像剤としては、キャリアとトナーとを含むいわゆる二成分現像剤が広く使用されている。
【0003】
二成分現像剤を用いた現像方式では、キャリアとトナーとを現像装置内で撹拌混合し、摩擦によってトナーを所定量まで帯電させる。そして、回転する現像ローラに現像剤を供給し、現像ローラ上で磁気ブラシを形成させて、磁気ブラシを介して感光体へトナーを電気的に移動させて感光体上の静電潜像を可視像化する。トナー移動後のキャリアは現像ローラ上に残留し、現像装置内で再びトナーと混合される。このため、キャリアの特性として、磁気ブラシを形成する磁気特性と、所望の電荷をトナーに付与する帯電特性および繰り返し使用における耐久性が要求される。
【0004】
このようなキャリアとして、マグネタイトや各種フェライト等の磁性粒子の表面を樹脂で被覆したものが一般に用いられている。キャリア芯材としての磁性粒子には、良好な磁気的特性と共に、トナーに対する良好な摩擦帯電特性が要求される。このような特性を満たすキャリア芯材として種々の形状のものが提案されている。
【0005】
例えば、メモリー画像(前画像の影響が後画像に表れる現象)等の抑制を目的として、ストロンチウム(Sr)及びケイ素(Si)が特定量含有され、粒子の最大山谷深さRz及びその標準偏差σが特定範囲であるマンガン(Mn)フェライト粒子をキャリア芯材として使用することが提案されている(特許文献1)。また、長期間の使用による被覆樹脂のキャリア芯材からの剥離の抑制を目的として、Sr及びカルシウム(Ca)の少なくとも一方を特定量含有し、粒子表面に表れているグレインの平均長さRSmが所定値以上であるグレインの頻度を所定値以下としたキャリア芯材の使用についても提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-31031号公報
【文献】特開2016-184130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の提案技術のように、粒子の最大山谷深さRzを大きくすなわち粒子表面の凹凸化を進めることによって、キャリア芯材の表面を樹脂被覆した樹脂被覆キャリアにおいて、キャリア芯材の一部が表面に露出して樹脂被覆キャリアの電気抵抗が下がりメモリー画像の発生は抑えられる。
【0008】
しかし、グレインサイズが小さい状態でキャリア芯材粒子の異形化が進むとグレインが過剰に先鋭化することがある。このような過剰に先鋭化したグレインを有する樹脂被覆キャリアを使用し続けると磁気ブラシ内での樹脂被覆キャリアに対する機械的ストレスが大きくなって樹脂被覆層が摩耗して必要以上にキャリア芯材が表面に露出することがある。
【0009】
キャリア芯材が表面に露出した樹脂被覆キャリアには現像領域において電荷注入が起こり易く、その結果、樹脂被覆キャリアが感光体ドラムに移動する「キャリア付着」が生じるおそれがある。
【0010】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、画像メモリーが抑制でき、しかも長期間の使用によっても樹脂被覆層の摩耗によるキャリア芯材の過度の表面露出がなく、キャリア付着が生じにくいキャリア芯材を提供することにある。
【0011】
また本発明の他の目的は、長期間の使用においても安定して良好な画質画像を形成することができる電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成する本発明に係るフェライトキャリア芯材(以下、単に「キャリア芯材と記すことがある。」)は、(MnFe3-x)O(但し、0<x<3である。)で表される組成を有するフェライトキャリア芯材であって、Si(ケイ素)とSn(スズ)とが含有され、SiとSnとのmol%での含有比率Si/Snが0.40以上1.0以下であることを特徴とする。
【0013】
前記構成のキャリア芯材において、Sr(ストロンチウム)が0.01mol%以上0.50mol%以下さらに含有されているのが好ましい。
【0014】
また前記構成のキャリア芯材において、xは0.01以上2以下であるのが好ましい。
【0015】
また前記構成のキャリア芯材において、前記フェライトキャリア芯材の最大山谷深さRzが1.95μm以上2.38μm以下、前記フェライトキャリア芯材の平均長さRSmが7.20μm以上8.50μm以下、RzとRSmとの積が15.8以上であり、下記測定方法で測定される前記フェライトキャリア芯材の異形率が46%以上であるのが好ましい。
フェライトキャリア芯材の異形率の測定方法)
測定装置:注入型画像解析粒度分布計
測定サンプル:0.07g
ポリエチレングリコール400を9ml投入したスクリュー管瓶(容量9ml)中で分散後に測定を行った。
(測定条件)
スペーサー厚:150μm
サンプリング:20%
解析タイプ:相対測定
測定量:0.95ml
解析:ダーク検出
閾値:169(穴を埋める)
O-Roughnessフィルタ:0.5
*O-Roughness=表面が滑らかになるまでに除去される部分の割合
フィルタ条件:
ISO Area Diametere:最小値5、最大値100、内側の範囲
*ISO Area Diametere=粒子投影面積と等しいピクセル画像をもつ円の直径
(解析条件)
解析フィルタ条件I:
ISO Area Diametere:最小値25、最大値55、内側の範囲
解析フィルタ条件II:
ISO Area Diametere:最小値25、最大値55、内側の範囲
ISO Solidity:最小値0.98、最大値1、外側の範囲
*ISO Solidity=粒子を囲む凸包の面積に対する粒子面積の割合
Ell.Ratio:最小値0.8、最大値1、内側の範囲
*Ell.Ratio=慣性楕円の長軸に対する短軸の割合
解析フィルタ条件IIでカウントされた粒子数を解析フィルタ条件Iでカウントされた粒子数で割り返して異形率を算出する。
【0016】
また本発明によれば、前記のいずれかに記載のキャリア芯材の表面が樹脂で被覆されていることを特徴とする電子写真現像用キャリアが提供される。
【0017】
そしてまた本発明によれば、前記記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含むことを特徴とする電子写真用現像剤が提供される。
【0018】
なお、本明細書において示す「~」は、特に断りのない限り、その前後に記載の数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るキャリア芯材によれば現像メモリーが抑制できると共に長期間の使用によっても樹脂被覆層の摩耗が生じにくくキャリア付着の発生が抑制できる。
【0020】
また本発明に係るキャリア芯材を含む現像剤を用いれば、長期間の使用においても安定して良好な画質画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るキャリアを用いた現像装置の一例を示す概説図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係るキャリア芯材の大きな特徴は、(MnFe3-x)O(但し、0<x<3である。)で表される組成を有し、SiとSnとが特定比率で含有されていることにある。より詳細には、SiとSnとのmol%での含有比率Si/Snは0.40以上1.0以下である。含有比率Si/Snが0.40未満であると、グレインサイズが小さい状態で粒子の異形化が進みグレインの先鋭化が過剰に促進されるおそれがある。一方、含有比率Si/Snが1.0を超えると粒子の分解・溶融や拡散が促進されエネルギー的に安定である球形化が過剰に促進されるおそれがある。例えば、一般に、Srが含有されていると、焼成工程においてSrフェライトが一部生成され、マグネトプランバイト型の結晶構造が形成されてキャリア芯材表面の凹凸形状が促進されやすくなるところ、余剰のSiが存在するとSrとSiとでペロブスカイト型の結晶構造が形成される結果、Srフェライトの形成が抑えられキャリア芯材表面の凹凸形状が抑制される。
【0023】
またSiの含有量としては0.10mol%以上0.22mol%以下の範囲が好ましい。Siが0.10mol%未満であると、グレインサイズが小さい状態で粒子の異形化が進みグレインの先鋭化が過剰に促進されるおそれがある。一方、Siが0.22mol%を超えると、粒子の分解・溶融や拡散が促進されエネルギー的に安定である球形化が過剰に促進されるおそれがある。なお、通常、Siの含有量はSi原料の添加量によって調整可能であるが、Si原料と他の原料とを混合した混合原料の添加量によって調整することも可能である。後述の実施例ではFeとSiとを含有する混合原料及びMnとSiとを含有する混合原料を用い、混合原料の添加量でSiの含有量を調整している。なお、混合原料を用いる場合のSi原料の添加量は混合原料のSi含有率から算出される。
【0024】
またSnの含有量としては0.01mol%以上0.50mol%以下の範囲が好ましい。Snは焼結阻害作用を有し、SnがSrと共に含有されるとSrのみが含有された場合に比べて粒子の異形化が過度に進むのが抑えら所望の凹凸が粒子表面に形成される。例えば、SrとSnとが含有されていると、焼成温度が従来よりも高い1200℃以上とした場合であっても材料成分の分解・溶融による球形化が抑制され表面の凹凸形状が維持促進される。Snのより好ましい含有量は0.1mol%以上0.40mol%以下の範囲である。
【0025】
また本発明のキャリア芯材ではSrが0.01mol%以上0.50mol%以下の範囲で含有されているのが好ましい。当該量のSrが含有されることによって、焼成工程においてSrフェライトが一部生成され、マグネトプランバイト型の結晶構造が形成されてキャリア芯材表面の凹凸形状が促進されやすくなる。Srのより好ましい含有量は0.1mol%以上0.50mol%以下の範囲である。
【0026】
また本発明のキャリア芯材では、粒子の最大山谷深さRz、粒子の平均長さRSm、最大山谷深さRzと平均長さRSmとの積及び前記測定方法で測定される粒子の異形率がそれぞれ特定範囲であることが同時に満たされるのが好ましい。より詳細には、粒子の最大山谷深さRzと粒子の異形率とが特定範囲であることによって、キャリア芯材の一部が樹脂被覆キャリアの表面に露出して電気抵抗が低下しメモリー画像の発生が抑制される。また同時に、粒子の平均長さRSmが特定範囲である、すなわちグレインサイズが従来よりも大きいことによって、グレインが過剰に先鋭化するのが抑えられて磁気ブラシ内での樹脂被覆キャリアに対する機械的ストレスが低下し樹脂被覆層の摩耗が抑制される。
【0027】
まず、本発明において粒子の最大山谷深さRzは1.95μm以上2.38μm以下の範囲であるのが好ましい。最大山谷深さRzがこの範囲であることによって画像メモリー及びキャリア付着が抑制される。最大山谷深さRzのより好ましい範囲は2.10μm以上2.35μm以下の範囲である。
【0028】
次に、本発明における粒子の平均長さRSmは7.20μm以上8.50μm以下の範囲であるのが好ましい。平均長さRSmがこの範囲であることによってグレインが過剰に先鋭化するのが抑えられ磁気ブラシ内での樹脂被覆キャリアに対する機械的ストレスが低下し樹脂被覆層の摩耗が抑制される。平均長さRSmのより好ましい範囲は7.44μm以上8.00μm以下の範囲である。
【0029】
また最大山谷深さRzと平均長さRSmとの積は15.8以上であるのが好ましい。当該積が15.8未満であると、現像メモリーや樹脂被覆層の摩耗が生じる。当該積のより好ましい下限値は16.5である。
【0030】
本発明における前記測定方法で測定される粒子の異形率は46%以上であるのが好ましい。キャリア芯材の異形率が46%未満であると、キャリア芯材表面が樹脂で被覆されて樹脂被覆キャリアとされた際に樹脂被覆キャリア表面にキャリア芯材の露出が少なくなりキャリア芯材に溜まったカウンターチャージが放出されにくなって現像メモリーが生じやすくなる。より好ましいキャリア芯材の異形率は46%以上であり、さらに好ましくは50%以上である。
【0031】
本発明のキャリア芯材の体積平均粒径としては、25μm以上50μm未満の範囲が好ましく、より好ましくは30μm以上40μm以下の範囲である。
【0032】
本発明のキャリア芯材の製造方法に特に限定はないが、以下に説明する製造方法が好適である。
【0033】
まず、Fe成分原料、Mn成分原料、Sr成分原料、Sn成分原料、Si成分原料そして必要により従来公知の添加剤を秤量する。Fe成分原料としては、Fe等が好適に使用される。Mn成分原料としてはMnCO、Mn等が使用できる。また、Sr成分原料としては、SrCO、Sr(NOが使用でき、Sn成分原料としてはSnO、SnOが使用でき、Si成分原料としてはSiOなどが好適に使用される。なお、Fe成分原料及びMn成分原料にはSiを所定量含有しているものがあり、Si含量を有するこのようなFe成分原料及びMn成分原料を使用する場合、Fe成分原料及びMn成分原料含有のSi量でSi添加量が足りるときはSi成分原料は配合しなくてもよい。反対に、Fe成分原料及びMn成分原料含有のSi量でSi添加量が足りないときはSi成分原料を補充配合する。
【0034】
次いで、原料を分散媒中に投入しスラリーを作製する。本発明で使用する分散媒としては水が好適である。分散媒には、前記仮焼成原料の他、必要によりバインダー、分散剤等を配合してもよい。バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコールが好適に使用できる。バインダーの配合量としてはスラリー中の濃度が0.1質量%~2質量%程度とするのが好ましい。また、分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム等が好適に使用できる。分散剤の配合量としてはスラリー中の濃度が0.1質量%~2質量%程度とするのが好ましい。その他、カーボンブラックなどの還元剤、アンモニアなどのpH調整剤、潤滑剤、焼結促進剤等を配合してもよい。スラリーの固形分濃度は50質量%~90質量%の範囲が望ましい。より好ましくは60質量%~80質量%である。60質量%以上であれば、造粒物中に粒子内細孔が少なく、焼成時の焼結不足を防ぐことができる。
【0035】
なお、秤量した原料を混合し仮焼成し解粒した後、分散媒に投入しスラリーを作製してもよい。仮焼成の温度としては750℃~1000℃の範囲が好ましい。750℃以上であれば、仮焼による一部フェライト化が進み、焼成時のガス発生量が少なく、固体間反応が十分に進むため、好ましい。一方、1000℃以下であれば、仮焼による焼結が弱く、後のスラリー粉砕工程で原料を十分に粉砕できるので好ましい。また、仮焼成時の雰囲気としては大気雰囲気が好ましい。
【0036】
次に、以上のようにして作製されたスラリーを湿式粉砕する。例えば、ボールミルや振動ミルを用いて所定時間湿式粉砕する。粉砕後の原材料の平均粒径は5μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以下である。振動ミルやボールミルには、所定粒径のメディアを内在させるのがよい。メディアの材質としては、鉄系のクロム鋼や酸化物系のジルコニア、チタニア、アルミナなどが挙げられる。粉砕工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。粉砕物の粒径は、粉砕時間や回転速度、使用するメディアの材質・粒径などによって調整される。
【0037】
そして、粉砕されたスラリーを噴霧乾燥させて造粒する。具体的には、スプレードライヤーなどの噴霧乾燥機にスラリーを導入し、雰囲気中へ噴霧することによって球形に造粒する。噴霧乾燥時の雰囲気温度は100℃~300℃の範囲が好ましい。これにより、粒径10μm~200μmの球形の造粒物が得られる。次いで、必要により、得られた造粒物を振動篩を用いて分級し所定の粒径範囲の造粒物を作製する。
【0038】
次に、前記の造粒物を所定温度に加熱した炉に投入して、フェライト粒子を合成するための一般的な手法で焼成することにより、フェライト粒子を生成させる。焼成温度としては1100℃~1350℃の範囲が好ましい。焼成温度が1100℃以下であると、相変態が起こりにくくなるとともに焼結も進みにくくなる。また、焼成温度が1350℃を超えると、過剰焼結による過大グレインの発生がするおそれがある。前記焼成温度に至るまでの昇温速度としては250℃/h~500℃/hの範囲が好ましい。焼成温度での保持時間は2時間以上が好ましい。フェライト粒子表面の凹凸は焼成工程における酸素濃度によっても調整可能である。具体的には酸素濃度を0.05%~10%とする。また、冷却時の酸素濃度を焼成時の酸素濃度よりも低くすることによって、フェライト相の酸化状態の調整を図ってもよい。具体的には酸素濃度を0.05%~1.5%の範囲とする。昇温・焼結・冷却における酸素濃度は0.05%~10%の範囲に制御するのが好ましい。
【0039】
このようにして得られた焼成物を必要により解粒する。具体的には、例えば、ハンマーミル等によって焼成物を解粒する。解粒工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。また解粒処理後、必要により、粒径を所定範囲に揃えるため分級を行ってもよい。分級方法としては、風力分級や篩分級など従来公知の方法を用いることができる。また、風力分級機で1次分級した後、振動篩や超音波篩で粒径を所定範囲に揃えるようにしてもよい。さらに、分級工程後に、磁場選鉱機によって非磁性粒子を除去するようにしてもよい。フェライト粒子の粒径としては25μm以上50μm未満が好ましい。
【0040】
その後、必要に応じて、分級後のフェライト粒子を酸化性雰囲気中で加熱して、粒子表面に酸化被膜を形成してフェライト粒子の高抵抗化を図ってもよい(高抵抗化処理)。酸化性雰囲気としては大気雰囲気又は酸素と窒素の混合雰囲気のいずれでもよい。また、加熱温度は200℃以上800℃以下の範囲が好ましく、360℃以上550℃以下の範囲がさらに好ましい。加熱時間は0.5時間以上5時間以下の範囲が好ましい。なお、フェライト粒子の表面と内部とを均質化する観点からは加熱温度は低温であるのが望ましい。
【0041】
以上のようにして作製したフェライト粒子を本発明のキャリア芯材として用いる。そして、所望の帯電性等を得るために、キャリア芯材の外周を樹脂で被覆して電子写真現像用キャリアとする。
【0042】
キャリア芯材の表面を被覆する樹脂としては、従来公知のものが使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリ塩化ビニリデン、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、ポリスチレン、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、並びにポリ塩化ビニル系やポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エストラマー、フッ素シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0043】
キャリア芯材の表面を樹脂で被覆するには、樹脂の溶液又は分散液をキャリア芯材に施せばよい。塗布溶液用の溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類溶媒;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒などの1種又は2種以上を用いることができる。塗布溶液中の樹脂成分濃度は、一般に0.001質量%以上30質量%以下、特に0.001質量%以上2質量%以下の範囲内にあるのがよい。
【0044】
キャリア芯材への樹脂の被覆方法としては、例えばスプレードライ法や流動床法あるいは流動床を用いたスプレードライ法、浸漬法等を用いることができる。これらの中でも、少ない樹脂量で効率的に塗布できる点で流動床法が特に好ましい。樹脂被覆量は、例えば流動床法の場合には吹き付ける樹脂溶液量や吹き付け時間によって調整することができる。
【0045】
キャリアの粒子径は、一般に、体積平均粒子径で25μm以上50μm未満の範囲、特に30μm以上40μm以下の範囲が好ましい。
【0046】
本発明に係る電子写真用現像剤は、以上のようにして作製したキャリアとトナーとを混合してなる。キャリアとトナーとの混合比に特に限定はなく、使用する現像装置の現像条件などから適宜決定すればよい。一般に現像剤中のトナー濃度は1質量%以上15質量%以下の範囲が好ましい。トナー濃度が1質量%未満の場合、画像濃度が薄くなりすぎ、他方トナー濃度が15質量%を超える場合、現像装置内でトナー飛散が発生し機内汚れや転写紙などの背景部分にトナーが付着する不具合が生じるおそれがあるからである。より好ましいトナー濃度は3質量%以上10質量%以下の範囲である。
【0047】
トナーとしては、重合法、粉砕分級法、溶融造粒法、スプレー造粒法など従来公知の方法で製造したものが使用できる。具体的には、熱可塑性樹脂を主成分とする結着樹脂中に、着色剤、離型剤、帯電制御剤等を含有させたものが好適に使用できる。
【0048】
トナーの粒径は、一般に、コールターカウンターによる体積平均粒径で5μm以上15μm以下の範囲が好ましく、7μm以上12μm以下の範囲がより好ましい。
【0049】
トナー表面には、必要により、改質剤を添加してもよい。改質剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0050】
キャリアとトナーとの混合は、従来公知の混合装置を用いることができる。例えばヘンシェルミキサー、V型混合機、タンブラーミキサー、ハイブリタイザー等を用いることができる。
【0051】
本発明の現像剤を用いた現像方法に特に限定はないが、磁気ブラシ現像法が好適である。図1に、磁気ブラシ現像を行う現像装置の一例を示す概説図を示す。図1に示す現像装置は、複数の磁極を内蔵した回転自在の現像ローラ3と、現像部へ搬送される現像ローラ3上の現像剤量を規制する規制ブレード6と、水平方向に平行に配置され、互いに逆向きに現像剤を撹拌搬送する2本のスクリュー1,2と、2本のスクリュー1,2の間に形成され、両スクリューの両端部において、一方のスクリューから他方のスクリューに現像剤の移動を可能とし、両端部以外での現像剤の移動を防ぐ仕切板4とを備える。
【0052】
2本のスクリュー1,2は、螺旋状の羽根13,23が同じ傾斜角で軸部11,21に形成されたものであって、不図示の駆動機構によって同方向に回転し、現像剤を互いに逆方向に搬送する。そして、スクリュー1,2の両端部において一方のスクリューから他方のスクリューに現像剤が移動する。これによりトナーとキャリアからなる現像剤は装置内を常に循環し撹拌されることになる。
【0053】
一方、現像ローラ3は、表面に数μmの凹凸を付けた金属製の筒状体の内部に、磁極発生手段として、現像磁極N、搬送磁極S、剥離磁極N、汲み上げ磁極N、ブレード磁極Sの5つの磁極を順に配置した固定磁石を有してなる。現像ローラ3の筒状体が矢印方向に回転すると、汲み上げ磁極Nの磁力によって、スクリュー1から現像ローラ3へ現像剤が汲み上げられる。現像ローラ3の表面に担持された現像剤は、規制ブレード6により層規制された後、現像領域へ搬送される。
【0054】
現像領域では、直流電圧に交流電圧を重畳したバイアス電圧が転写電圧電源8から現像ローラ3に印加される。バイアス電圧の直流電圧成分は、感光体ドラム5表面の背景部電位と画像部電位との間の電位とされる。また、背景部電位と画像部電位とは、バイアス電圧の最大値と最小値との間の電位とされる。バイアス電圧のピーク間電圧は0.5kV~5kVの範囲が好ましく、周波数は1kHz~10kHzの範囲が好ましい。またバイアス電圧の波形は矩形波、サイン波、三角波などいずれであってもよい。これによって、現像領域においてトナー及びキャリアが振動し、トナーが感光体ドラム5上の静電潜像に付着して現像がなされる。
【0055】
その後現像ローラ3上の現像剤は、搬送磁極Sによって装置内部に搬送され、剥離電極Nによって現像ローラ3から剥離して、スクリュー1,2によって装置内を再び循環搬送され、現像に供していない現像剤と混合撹拌される。そして汲み上げ極Nによって、新たに現像剤がスクリュー1から現像ローラ3へ供給される。
【0056】
なお、図1に示した実施形態では現像ローラ3に内蔵された磁極は5つであったが、現像剤の現像領域での移動量を一層大きくしたり、汲み上げ性等を一層向上させるために、磁極を8極や10極、12極と増やしてももちろん構わない。
【実施例
【0057】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0058】
実施例1
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm,SiOを0.08%含有)21.78kg、Mn(平均粒径:3.4μm)7.35kg、Mn(平均粒径:2.1μm,SiOを0.55%含有)0.82kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)167g、SnO(平均粒径:5.6μm)136.4gを純水10.35kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを90.76g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を181.5g、pH調整剤としてアンモニア水を21.2g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約140℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。
この造粒物を、電気炉に投入し1300℃まで酸素濃度1.0%で4.5時間かけて昇温した。その後1300℃で酸素濃度0.4%~1.0%で3時間保持することにより焼成を行った。その後、酸素濃度0.4%で6時間かけて冷却した。
得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH-34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で解粒、振動篩を用いて分級し体積平均粒径36.8μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の見かけ密度(AD)、流動度(FR)、体積平均粒子径(平均粒径)、細孔容積、BET比表面積、真密度、形状特性(Rz,RSm,異形率)を下記に示す方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。なお、以下の実施例及び比較例に係るキャリア芯材についても同様の方法で測定し、測定結果を表1及び表2に示す。
【0059】
実施例2
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm,SiOを0.08%含有)21.78kg、Mn(平均粒径:3.4μm)6.12kg、Mn(平均粒径:2.1μm,SiOを0.55%含有)2.04kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)167g、SnO(平均粒径:5.6μm)136.4gを純水10.35kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを90.76g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を181.5g、pH調整剤としてアンモニア水を21.2g添加して混合物とした以外は実施例1と同様にして体積平均粒径37.3μmのキャリア芯材を得た。
【0060】
実施例3
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm,SiOを0.08%含有)21.78kg、Mn(平均粒径:3.4μm)4.08kg、Mn(平均粒径:2.1μm,SiOを0.55%含有)4.08kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)167g、SnO(平均粒径:5.6μm)136.4gを純水10.35kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを90.76g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を181.5g、pH調整剤としてアンモニア水を21.2g添加して混合物とした以外は実施例1と同様にして体積平均粒径35.4μmのキャリア芯材を得た。
【0061】
実施例4
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm,SiOを0.08%含有)21.78kg、Mn(平均粒径:3.4μm)4.08kg、Mn(平均粒径:2.1μm,SiOを0.55%含有)4.08kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)167g、SnO(平均粒径:5.6μm)136.4gを純水10.35kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを90.76g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を181.5g、pH調整剤としてアンモニア水を21.2g添加して混合物としたこの混合物を湿式ボールミル(メディア径3mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約210℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径25μm以下の微小な粒子と粒径54μm以上の粗大な粒子は篩を用いて除去した以外は実施例1と同様にして体積平均粒径35.9μmのキャリア芯材を得た。
【0062】
実施例5
造粒物を電気炉に投入し1270℃まで酸素濃度1.0%で4.5時間かけて昇温し、その後1270℃で酸素濃度0.4%~1.0%で3時間保持することにより焼成を行い、その後、酸素濃度0.4%で6時間かけて冷却した以外は実施例1と同様にして体積平均粒径35.7μmのキャリア芯材を得た。
【0063】
実施例6
造粒物を電気炉に投入し1250℃まで酸素濃度1.0%で4.5時間かけて昇温し、その後1250℃で酸素濃度0.4%~1.0%で3時間保持することにより焼成を行い、その後、酸素濃度0.4%で6時間かけて冷却した以外は実施例1と同様にして体積平均粒径34.9μmのキャリア芯材を得た。
【0064】
実施例7
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm,SiOを0.08%含有)21.78kg、Mn(平均粒径:3.4μm)2.04kg、Mn(平均粒径:2.1μm,SiOを0.55%含有)6.12kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)167g、SnO(平均粒径:5.6μm)136.4gを純水10.35kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを90.76g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を181.5g、pH調整剤としてアンモニア水を21.2g添加して混合物とした以外は実施例1同様にして体積平均粒径35.3μmのキャリア芯材を得た。
【0065】
比較例1
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm,SiOを0.08%含有)14.52kg、Mn(平均粒径:3.4μm)5.44kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)111g、SnO(平均粒径:5.6μm)91gを純水6.9kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを60.5g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を121g、pH調整剤としてアンモニア水を14.2g添加して混合物とした以外は実施例1と同様にして体積平均粒径35.9μmのキャリア芯材を得た。
【0066】
比較例2
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm,SiOを0.08%含有)21.78kg、Mn(平均粒径:3.4μm)7.76kg、Mn(平均粒径:2.1μm,SiOを0.55%含有)0.41kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)167g、SnO(平均粒径:5.6μm)136.4gを純水10.35kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを90.76g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を181.5g、pH調整剤としてアンモニア水を21.2g添加して混合物とした以外は実施例1と同様にして体積平均粒径36.7μmのキャリア芯材を得た。
【0067】
比較例3
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm,SiOを0.08%含有)21.78kg、Mn(平均粒径:3.4μm)0.82kg、Mn(平均粒径:2.1μm,SiOを0.55%含有)7.35kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)167g、SnO(平均粒径:5.6μm)136.4gを純水10.35kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを90.76g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を181.5g、pH調整剤としてアンモニア水を21.2g添加して混合物とした以外は実施例1と同様にして体積平均粒径35.2μmのキャリア芯材を得た。
【0068】
比較例4
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm,SiOを0.08%含有)14.52kg、Mn(平均粒径:2.1μm,SiOを0.55%含有)5.55kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)111.4g、SnO(平均粒径:5.6μm)91gを純水6.9kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを60.5g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を121g、pH調整剤としてアンモニア水を14.2g添加して混合物とした以外は実施例1と同様にして体積平均粒径37.0μmのキャリア芯材を得た。
【0069】
比較例5
原料としてSrCO(平均粒径:0.6μm)及びSnO(平均粒径:5.6μm)を添加しなかった以外は実施例1と同様にして粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。
造粒物を電気炉に投入し1200℃まで酸素濃度1.3%で4.5時間かけて昇温し、その後1200℃で酸素濃度1.3%で3時間保持することにより焼成を行い、その後、酸素濃度1.3%で6時間かけて冷却した以外は実施例1と同様にして体積平均粒径35.8μmのキャリア芯材を得た。
【0070】
比較例6
原料としてSnO(平均粒径:5.6μm)を添加しなかった以外は比較例1と同様にして粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。
造粒物を電気炉に投入し1300℃まで酸素濃度1.0%で4.5時間かけて昇温し、その後1200℃で酸素濃度1.0%で3時間保持することにより焼成を行い、その後、酸素濃度0.5%で6時間かけて冷却した以外は比較例1と同様にして体積平均粒径36.8μmのキャリア芯材を得た。
【0071】
(見かけ密度(AD))
キャリア芯材の見掛け密度はJIS Z 2504に準拠して測定した。
【0072】
(流動度(FR))
キャリア芯材の流動度はJIS Z 2502に準拠して測定した。
【0073】
(体積平均粒子径(D50))
キャリア芯材の体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装社製「マイクロトラックModel9320-X100」)を用いて測定した。
【0074】
(細孔容積)
評価装置は、Quantachrome社製のPOREMASTER-60GTを使用した。具体的には、測定条件としては、
Cell Stem Volume:0.5ml、
Headpressure:20PSIA、
水銀の表面張力:485.00erg/cm
水銀の接触角:130.00degrees、
高圧測定モード:Fixed Rate、
Moter Speed:1、
高圧測定レンジ:20.00~10000.00PSI
とし、サンプル1.500gを秤量して0.5ml(cc)のセルに充填して測定を行った。また、10000PSI時の容積B(ml/g)から60PSI時の容積A(ml/g)を差し引いた値を、細孔容積とした。
【0075】
(BET比表面積)
BET一点法比表面積測定装置(株式会社マウンテック製、型式:Macsorb HM model-1208)を用いて評価を行った。具体的には、サンプルは、5.000gを秤量して直径12mmの標準セルに充填し、200℃で、30分間脱気して測定を行った。
【0076】
(真密度)
キャリア芯材の真密度は、Quantachrome社製、「ULTRA PYCNOMETER 1000」を用いて測定を行った。
【0077】
(最大山谷深さRz,平均長さRSm)
超深度カラー3D形状測定顕微鏡(「VK-X100」株式会社キーエンス製)を用い、100倍対物レンズで表面を観察して求めた。具体的には、まず、表面の平坦な粘着テープにフェライト粒子を固定し、100倍対物レンズで測定視野を決定した後、オートフォーカス機能を用いて焦点を粘着テープ面に調整した。フェライト粒子を固定した平坦な粘着テープ面に対し、垂直方向(Z方向)からレーザー光線を照射し、面のX方向Y方向に走査した。また、表面からの反射光の強度が最大となった時のレンズの高さ位置をつなぎ合わせることでZ方向のデータを取得した。これらX、YおよびZ方向の位置データをつなぎ合わせフェライト粒子表面の3次元形状を得た。なお、フェライト粒子表面の3次元形状の取り込みにはオート撮影機能を用いた。
各パラメータの測定には、粒子粗さ検査ソフトウェア(三谷商事製)を用いて行った。まず、前処理として、得られたフェライト粒子表面の3次元形状の粒子認識と形状選別を行った。粒子認識は以下の方法で行った。撮影によって得られた3次元形状のうち、Z方向の最大値を100%、最小値を0%として最大値から最小値までの間を100等分する。この100~35%にあたる領域を抽出し、独立した領域の輪郭を粒子輪郭として認識した。次に形状選別で粗大、微小、会合などの粒子を除外した。この形状選別を行うことで以降に行う極率補正時の誤差を小さくすることができる。具体的には面積相当径28μm以下、38μm以上、針状比1.15以上に該当する粒子を除外した。ここで針状比とは粒子の最大長/対角幅の比から算出したパラメータであり、対角幅とは最大長に平行な2本の直線で粒子を挟んだときの2直線の最短距離を表す。
つぎに表面の3次元形状から解析に用いる部分の取り出しを行った。まず上記の方法で認識した粒子輪郭から求められる重心を中心として15.0μmの正方形を描く。描いた正方形の中に21本の平行線を引き、その線分上にあたる粗さ曲線を21本分取り出した。
フェライト粒子は略球形状であるため、取り出した粗さ曲線は、バックグラウンドとして一定の曲率を持っている。このため、バックグラウンドの補正として、最適な二次曲線をフィッティングし、粗さ曲線から差し引く補正を行った。この場合、ローパスフィルターを1.5μmの強度で適用し、カットオフ値λを80μmとした。
また、解析に用いるキャリア芯材の平均粒子径については32~34μmに限定した。このように測定対象となるキャリア芯材の平均粒子径を狭い範囲に限定することで、曲率補正の際に生じる残渣による誤差を小さくすることができる。
【0078】
最大山谷深さRzは、粗さ曲線の中で最も高い山の高さと最も深い谷の深さの和として求めた。最大高さRzの算出には、各パラメータの平均値として、30粒子の平均値を用いることとした。
【0079】
平均長さRSmは、粗さ曲線のうち、谷と山の組み合わせを一つの要素と規定し、それぞれの要素の長さを平均したものである。平均長さRSmの算出には、各パラメータの平均値として、30粒子の平均値を用いることとした。
【0080】
以上説明した最大高さRz、平均長さRSmの測定は、JIS B0601(2001年度版)に準拠して行われるものである。
【0081】
(異形率)
注入型画像解析粒度分布計(ジャスコインタナショナル株式会社、型式:IF-3200)を使用した。具体的には、サンプルは0.07gを秤量して、ポリエチレングリコール400を9cc投入したスクリュー管瓶(容量9cc)中で分散後に測定を行った。
(測定条件)
スペーサー厚:150μm
サンプリング:20%
解析タイプ:相対測定
測定量:0.95ml
解析:ダーク検出
閾値:169(穴を埋める)
O-Roughnessフィルタ:0.5
*O-Roughness=表面が滑らかになるまでに除去される部分の割合
フィルタ条件:
ISO Area Diametere:最小値5、最大値100、内側の範囲
*ISO Area Diametere=粒子投影面積と等しいピクセル画像をもつ円の直径
(解析条件)
解析フィルタ条件I:
ISO Area Diametere:最小値25、最大値55、内側の範囲
解析フィルタ条件II:
ISO Area Diametere:最小値25、最大値55、内側の範囲
ISO Solidity:最小値0.98、最大値1、外側の範囲
*ISO Solidity=粒子を囲む凸包の面積に対する粒子面積の割合
Ell.Ratio:最小値0.8、最大値1、内側の範囲
*Ell.Ratio=慣性楕円の長軸に対する短軸の割合
解析フィルタ条件IIでカウントされた粒子数を解析フィルタ条件Iでカウントされた粒子数で割り返して異形粒子の割合となる異形率を算出した。
【0082】
(現像メモリー)
得られたキャリア芯材の表面を樹脂で被覆してキャリアを作製した。具体的には、シリコーン樹脂450質量部と、(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン9質量部とを、溶媒としてのトルエン450質量部に溶解してコート溶液を作製した。このコート溶液を、流動床型コーティング装置を用いてキャリア芯材50000質量部に塗布し、温度300℃の電気炉で加熱してキャリアを得た。以下、全ての実施例、比較例についても同様にしてキャリアを得た。
得られたキャリアと平均粒径5.0μm程度のトナーとを、ポットミルを用いて所定時間混合し、二成分系の電子写真現像剤を得た。この場合、キャリアとトナーとをトナーの重量/(トナーおよびキャリアの重量)=5/100となるように調整した。以下、全ての実施例、比較例についても同様にして現像剤を得た。得られた現像剤を、図1に示す構造の現像装置(現像スリーブの周速度Vs:406mm/sec,感光体ドラムの周速度Vp:205mm/sec,感光体ドラム-現像スリーブ間距離:0.3mm)に投入し、感光体ドラムの長手方向にベタ画像部と非画像部とが隣り合い、その後は広い面積の中間調が続く画像を初期と20万枚画像形成後に取得し、現像ローラ2周目の現像ローラ1周目のベタ画像が現像された領域とそうでない領域との画像濃度を反射濃度計(東京電色社製の型番TC-6D)を用いて測定し、その差を求め下記基準で評価した。結果を表2に示す。
「○」:0.003未満
「△」:0.003以上0.020未満
「×」:0.020以上
【0083】
(樹脂被覆層の摩耗)
現像装置(現像ローラの周速度Vs:406mm/sec,感光体ドラムの周速度Vp:205mm/sec,感光体ドラム-現像ローラ間距離:0.3mm)に、作製した二成分現像剤を投入し、白紙画像を1000枚印刷した後、ブローオフケージでキャリアとトナーを分離させた。
このキャリアの印刷前の抵抗値R(Ω・cm)と、1000枚印刷後の抵抗値R(Ω・cm)とを測定し、下記式から算出される低下率ΔRから以下のように判断した。
ΔR=(logR-logR)/logR×100(%)
「〇」:20≧ΔR≧0
「△」:40≧ΔR>20
「×」:ΔR>40
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
本発明の構成を満足するキャリア芯材を用いた実施例1~7の樹脂被覆キャリアでは現像メモリーは抑制され、樹脂被覆層の摩耗もほとんど生じなかった。
【0087】
これに対して、含有比率Si/Snが「0.32」及び「0.36」と小さい比較例1及び比較例2のキャリア芯材では、グレインサイズが小さい状態で粒子の異形化が進みグレインの先鋭化が過剰に促進された結果、Rz×RSmが「15.3」,「15.2」と小さく、比較例1,2のキャリア芯材を用いた樹脂被覆キャリアでは樹脂被覆層の摩耗が生じた。
【0088】
一方、含有比率Si/Snが「1.06」及び「1.15」と大きい比較例3及び比較例4のキャリア芯材では、Rz及びRSmが小さくまた異形率も小さく(丸みのある)、比較例3,4のキャリア芯材を用いた樹脂被覆キャリアでは樹脂被覆層の摩耗は生じなかったものの現像メモリーが生じた。
【0089】
Sr及びSnが添加されずSi添加量が多い比較例5のキャリア芯材では、Rz及びRSmが小さくまた異形率も小さく(丸みのある)、比較例5のキャリア芯材を用いた樹脂被覆キャリアでは現像メモリーが生じた。
【0090】
Snが添加されずSiの添加量も少ない比較例6のキャリア芯材では、Rz×RSmが小さくまた異形率も小さく(丸みのある)、比較例6のキャリア芯材を用いたの樹脂被覆キャリアでは現像メモリーが生じた。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係るキャリア芯材によれば現像メモリーが抑制できると共に長期間の使用によっても樹脂被覆層が摩耗が少なくキャリア付着の発生が抑制できる。
【符号の説明】
【0092】
3 現像ローラ
5 感光体ドラム
図1