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特許7393376半導体装置の製造方法、基板処理方法、プログラム及び基板処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理方法、プログラム及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20231129BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20231129BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20231129BHJP
   C23C 16/50 20060101ALI20231129BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/316 X
H01L21/318 B
H01L21/318 C
C23C16/50
C23C16/42
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021045939
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144780
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 立志
(72)【発明者】
【氏名】中山 雅則
(72)【発明者】
【氏名】舟木 克典
(72)【発明者】
【氏名】坪田 康寿
(72)【発明者】
【氏名】井川 博登
(72)【発明者】
【氏名】山角 宥貴
(72)【発明者】
【氏名】岸本 宗樹
(72)【発明者】
【氏名】竹島 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】市村 圭太
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/034871(WO,A1)
【文献】特開2019-033249(JP,A)
【文献】国際公開第2006/016642(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/179038(WO,A1)
【文献】特開2003-045957(JP,A)
【文献】特表2015-532016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/312-21/32
H01L 21/365
H01L 21/469-21/475
H01L 21/86
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)酸素及び水素を含む処理ガスをプラズマ励起して反応種を生成する工程と、
(b)前記反応種を基板に供給し、前記基板の上にそれぞれ露出するように形成されたシリコン膜及びシリコン窒化膜の表面を酸化する工程と、を有し、
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の合計に対する、前記水素の比率を20%以下として、(b)において前記シリコン膜の表面を酸化して形成される第1の酸化層の厚さに対する前記シリコン窒化膜の表面を酸化して形成される第2の酸化層の厚さの比率が67%以上90%以下の所定の厚さ比率となるように調整されている、
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
(c)前記第1の酸化層の厚さに対する前記第2の酸化層の厚さの比率が前記所定の厚さ比率となるように、前記処理ガスに含まれる酸素と水素の比率を調整する工程、を更に有する請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
(c)では、前記処理ガスに含まれる酸素に対する水素の比率を増大させるように調整することにより、前記第1の酸化層の厚さに対する前記第2の酸化層の厚さの比率を小さくする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の比率は、予め取得された前記所定の厚さ比率に対応する値に調整される請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
(a)では、少なくとも酸素活性種及び水素活性種を前記反応種として生成する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の比率は、(b)において前記基板に供給される前記酸素活性種の量と前記水素活性種の量の比率が、前記所定の厚さ比率に対応する活性種比率となるように調整されている請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
(a)及び(b)において前記処理ガスとして酸素のみ含むガスを用いた場合における、前記第1の酸化層の厚さに対する前記第2の酸化層の厚さの比率よりも、前記所定の厚さ比率は小さい値である請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の比率は、前記第1の酸化層の厚さに対する前記第2の酸化層の厚さの比率が80%以下となるように調整されている請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の比率は、前記処理ガスに含まれる酸素と水素の合計に対する水素の比率が10%以上となるように調整されている請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の比率は、前記第1の酸化層の厚さに対する前記第2の酸化層の厚さの比率が70%以下となるように調整されている請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記処理ガスは、酸素含有ガスと水素含有ガスの混合ガスである請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記酸素含有ガスは酸素ガスであり、前記水素含有ガスは水素ガスである請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の比率は、前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスの流量比を制御することにより調整されている請求項11又は12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記シリコン膜は、単結晶シリコン、非結晶シリコン、多結晶シリコンの少なくともいずれかにより構成されている請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記シリコン膜及び前記シリコン窒化膜は、前記基板上に形成された凹部の内側で露出し、前記シリコン膜が前記凹部の底を構成しており、
(b)では、前記凹部の底を構成する前記シリコン膜の露出面に全体に均一な厚さの前記第1の酸化層を形成する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
(a)では、前記処理ガスを前記基板が収容された処理室内に供給し、前記処理室内に供給された前記処理ガスをプラズマ励起する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
(a)酸素含有ガスをプラズマ励起して酸素活性種を生成する工程と、
(b)水素含有ガスをプラズマ励起して水素活性種を生成する工程と、
(c)前記酸素活性種及び前記水素活性種を基板に供給し、前記基板の上にそれぞれ露出するように形成されたシリコン膜及びシリコン窒化膜の表面を酸化する工程と、を有し、
前記基板に供給される前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとの合計に対する、前記水素含有ガスの比率を20%以下として、前記酸素活性種と前記水素活性種の比率が、(c)において前記シリコン膜の表面を酸化して形成される第1の酸化層の厚さに対する前記シリコン窒化膜の表面を酸化して形成される第2の酸化層の厚さの比率が67%以上90%以下の所定の厚さ比率となるように調整されている、
半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記酸素活性種は第1プラズマ励起室において生成され、前記水素活性種は第2プラズマ励起室において生成される請求項17に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記基板に供給される前記酸素活性種と前記水素活性種の量の比率は、
前記第1プラズマ励起室に供給される前記酸素含有ガスと前記第2プラズマ励起室に供給される前記水素含有ガスの流量比、および、前記第1プラズマ励起室に供給される前記酸素含有ガスを励起する高周波電力と前記第2プラズマ励起室に供給される前記水素含有ガスを励起する高周波電力の電力比、
の少なくともいずれかを制御することにより調整される請求項18に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
(a)酸素及び水素を含む処理ガスをプラズマ励起して反応種を生成する工程と、
(b)前記反応種を基板に供給し、前記基板の上にそれぞれ露出するように形成されたシリコン膜及びシリコン窒化膜の表面を酸化する工程と、を有し、
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の合計に対する、前記水素の比率を20%以下として、(b)において前記シリコン膜の表面を酸化して形成される第1の酸化層の厚さに対する前記シリコン窒化膜の表面を酸化して形成される第2の酸化層の厚さの比率が67%以上90%以下の所定の厚さ比率となるように調整されている、
基板処理方法。
【請求項21】
(a)基板処理装置の処理室内に基板を搬入する手順と、
(b)酸素及び水素を含む処理ガスをプラズマ励起して反応種を生成する手順と、
(c)前記反応種を前記基板に供給し、前記基板の上にそれぞれ露出するように形成されたシリコン膜及びシリコン窒化膜の表面を酸化する手順と、
をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラムであって、
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の合計に対する、前記水素の比率を20%以下として、(c)において前記シリコン膜の表面を酸化して形成される第1の酸化層の厚さに対する前記シリコン窒化膜の表面を酸化して形成される第2の酸化層の厚さの比率が67%以上90%以下の所定の厚さ比率となるように調整されているプログラム。
【請求項22】
基板が収容される処理室と、
酸素及び水素を含む処理ガスを前記処理室内に供給する処理ガス供給系と、
前記処理室内に供給された前記処理ガスをプラズマ励起するプラズマ生成機構と、
(a)前記処理室内に供給された前記処理ガスをプラズマ励起して反応種を生成する処理と、
(b)前記反応種を前記処理室に収容された前記基板に供給し、前記基板の上にそれぞれ露出するように形成されたシリコン膜及びシリコン窒化膜の表面を酸化する処理と、
を行うように前記処理ガス供給系及び前記プラズマ生成機構を制御可能に構成された制御部と、を備え、
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の合計に対する、前記水素の比率を20%以下として、(b)において前記シリコン膜の表面を酸化して形成される第1の酸化層の厚さに対する前記シリコン窒化膜の表面を酸化して形成される第2の酸化層の厚さの比率が67%以上90%以下の所定の厚さ比率となるように調整されている
基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、基板処理方法、プログラム及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラッシュメモリ等の半導体装置は高集積化の傾向にある。それに伴い、パターンサイズが著しく微細化されている。これらのパターンを形成する際、製造工程の一工程として、基板に酸化処理や窒化処理等の所定の処理を行う工程が実施される場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、プラズマ励起した処理ガスを用いて基板上に形成されたパターン表面を改質処理することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/125606号パンフレット
【文献】特開2014-75579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板上に形成されたシリコン膜とシリコン窒化膜を選択的に酸化して酸化層を形成することが求められることがある。
【0006】
本開示の課題は、プラズマ励起された酸素含有ガスを用いて基板上に形成されたシリコン膜とシリコン窒化膜を酸化する際、これらの膜を選択的に酸化して酸化層を形成することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、
(a)酸素及び水素を含む処理ガスをプラズマ励起して反応種を生成する工程と、
(b)前記反応種を基板に供給し、前記基板の上にそれぞれ露出するように形成されたシリコン膜及びシリコン窒化膜の表面を酸化する工程と、
を有し、
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の比率は、(b)において前記シリコン膜の表面を酸化して形成される第1の酸化層の厚さに対する前記シリコン窒化膜の表面を酸化して形成される第2の酸化層の厚さの比率が所定の厚さ比率となるように調整されている、
技術が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、プラズマ励起された酸素含有ガスを用いて基板上に形成されたシリコン膜とシリコン窒化膜を酸化する際、これらの膜を選択的に酸化して酸化層を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図2】本開示の一態様におけるプラズマの発生原理を例示する図である。
図3】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図4】本開示の一態様における基板処理工程を示すフロー図である。
図5図5(A)は、本開示の一態様における基板処理工程で処理される凹部が形成された基板の説明図である。図5(B)は、図5(A)の基板に対して本開示の一態様における基板処理工程を行った場合の基板の説明図である。
図6】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の変形例を示す図である。
図7】処理ガスに含まれる水素の比率と、シリコン膜に対するシリコン窒化膜の酸化比率の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0011】
[第1実施形態]
(1)基板処理装置
本開示の第1実施形態に係る基板処理装置について、図1及び図2を用いて以下に説明する。本実施形態に係る基板処理装置は、主に基板としてのウエハ200面上に形成された膜に対して酸化処理を行うように構成されている。
【0012】
(処理室)
基板処理装置100は、ウエハ200をプラズマ処理する処理炉202を備えている。処理炉202には、処理室201を構成する処理容器203が設けられている。処理容器203は、第1の容器であるドーム型の上側容器210と、第2の容器である碗型の下側容器211とを備えている。上側容器210が下側容器211の上に被さることにより、処理室201が形成される。上側容器210は、例えば酸化アルミニウム(Al23)または石英(SiO2)等の非金属材料で形成されており、下側容器211は、例えばアルミニウム(Al)で形成されている。
【0013】
また、下側容器211の下部側壁には、ゲートバルブ244が設けられている。ゲートバルブ244は、開いているとき、搬送機構(図示せず)を用いて、搬入出口245を介して、処理室201内へウエハ200を搬入したり、処理室201外へとウエハ200を搬出したりすることができるように構成されている。ゲートバルブ244は、閉まっているときには、処理室201内の気密性を保持する仕切弁となるように構成されている。
【0014】
処理室201は、周囲に共振コイル212が設けられているプラズマ生成空間201aと、プラズマ生成空間201aに連通し、ウエハ200が処理される基板処理空間201bを有する。プラズマ生成空間201aはプラズマが生成される空間であって、処理室の内、共振コイル212の下端より上方であって、且つ共振コイル212の上端より下方の空間を言う。一方、基板処理空間201bは、ウエハ200がプラズマを用いて処理される空間であって、共振コイル212の下端より下方の空間を言う。本実施形態では、プラズマ生成空間201aと基板処理空間201bの水平方向の径は略同一となるように構成されている。
【0015】
(サセプタ)
処理室201の底側中央には、ウエハ200を載置する基板載置部としてのサセプタ217が配置されている。サセプタ217は例えば窒化アルミニウム(AlN)、セラミックス、石英等の非金属材料から形成されており、ウエハ200上に形成される膜等に対する金属汚染を低減することができるように構成されている。
【0016】
サセプタ217の内部には、加熱機構としてのヒータ217bが一体的に埋め込まれている。ヒータ217bは、電力が供給されると、ウエハ200表面を例えば25℃から750℃程度まで加熱することができるように構成されている。
【0017】
サセプタ217は、下側容器211とは電気的に絶縁されている。インピーダンス調整電極217cは、サセプタ217に載置されたウエハ200上に生成されるプラズマの密度の均一性をより向上させるために、サセプタ217内部に設けられており、インピーダンス調整部としてのインピーダンス可変機構275を介して接地されている。インピーダンス可変機構275はコイルや可変コンデンサから構成されており、コイルのインダクタンス及び抵抗並びに可変コンデンサの容量値を制御することにより、インピーダンスを約0Ωから処理室201の寄生インピーダンス値の範囲内で変化させることができるように構成されている。これによって、インピーダンス調整電極217c及びサセプタ217を介して、ウエハ200の電位(バイアス電圧)を制御できる。
【0018】
サセプタ217には、サセプタを昇降させる駆動機構を備えるサセプタ昇降機構268が設けられている。また、サセプタ217には貫通孔217aが設けられるとともに、下側容器211の底面にはウエハ突上げピン266が設けられている。貫通孔217aとウエハ突上げピン266とは互いに対向する位置に、少なくとも各3箇所ずつ設けられている。サセプタ昇降機構268によりサセプタ217が下降させられたときには、ウエハ突上げピン266がサセプタ217とは非接触な状態で、貫通孔217aを突き抜けるように構成されている。主に、サセプタ217及びヒータ217b、インピーダンス電極217cにより、本実施形態に係る基板載置部が構成されている。
【0019】
(ガス供給部)
処理室201の上方、つまり上側容器210の上部には、ガス供給ヘッド236が設けられている。ガス供給ヘッド236は、キャップ状の蓋体233と、ガス導入口234と、バッファ室237と、開口238と、遮蔽プレート240と、ガス吹出口239とを備え、処理ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。バッファ室237は、ガス導入口234より導入される処理ガスを分散する分散空間としての機能を持つ。
【0020】
ガス導入口234には、酸素(O)含有ガスを供給する酸素含有ガス供給管232aの下流端と、水素(H)含有ガスを供給する水素含有ガス供給管232bの下流端と、不活性ガスを供給する不活性ガス供給管232cと、が合流するように接続されている。酸素含有ガス供給管232aには、上流側から順に、O含有ガス供給源250a、流量制御装置としてのマスフローコントローラ(MFC)252a、開閉弁としてのバルブ253aが設けられている。水素含有ガス供給管232bには、上流側から順に、H含有ガス供給源250b、MFC252b、バルブ253bが設けられている。不活性ガス供給管232cには、上流側から順に、不活性ガス供給源250c、MFC252c、バルブ253cが設けられている。酸素含有ガス供給管232aと水素含有ガス供給管232bと不活性ガス供給管232cとが合流した下流側には、バルブ243aが設けられ、ガス導入口234の上流端に接続されている。バルブ253a,253b,253c,243aを開閉させることによって、MFC252a,252b,252cによりそれぞれのガスの流量を調整しつつ、ガス供給管232a,232b,232cを介して、O含有ガス、H含有ガス、不活性ガス等の処理ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。
【0021】
主に、ガス供給ヘッド236(蓋体233、ガス導入口234、バッファ室237、開口238、遮蔽プレート240、ガス吹出口239)、酸素含有ガス供給管232a、水素含有ガス供給管232b、不活性ガス供給管232c、MFC252a,252b,252c、バルブ253a,253b,253c,243aにより、本実施形態に係る処理ガス供給部(処理ガス供給系)が構成されている。
【0022】
また、ガス供給ヘッド236、酸素含有ガス供給管232a、MFC252a、バルブ253a,243aにより、本実施形態に係る酸素含有ガス供給系が構成されている。さらに、ガス供給ヘッド236、水素含有ガス供給管232b、MFC252b、バルブ253b,243aにより、本実施形態に係る水素含有ガス供給系が構成されている。さらに、ガス供給ヘッド236、不活性ガス供給管232c、MFC252c、バルブ253c,243aにより、本実施形態に係る不活性ガス供給系が構成されている。
【0023】
(排気部)
下側容器211の側壁には、処理室201内から処理ガスを排気するガス排気口235が設けられている。ガス排気口235には、ガス排気管231の上流端が接続されている。ガス排気管231には、上流側から順に圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ242、開閉弁としてのバルブ243b、真空排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。主に、ガス排気口235、ガス排気管231、APCバルブ242、バルブ243bにより、本実施形態に係る排気部が構成されている。尚、真空ポンプ246を排気部に含めても良い。
【0024】
(プラズマ生成部)
処理室201の外周部、すなわち上側容器210の側壁の外側には、処理室201を囲うように、第1の電極としての、螺旋状の共振コイル212が設けられている。共振コイル212には、RFセンサ272、高周波電源273、高周波電源273のインピーダンスや出力周波数の整合を行う整合器274が接続される。
【0025】
高周波電源273は、共振コイル212に高周波電力(RF電力)を供給するものである。RFセンサ272は高周波電源273の出力側に設けられ、供給される高周波の進行波や反射波の情報をモニタするものである。RFセンサ272によってモニタされた反射波電力は整合器274に入力され、整合器274は、RFセンサ272から入力された反射波の情報に基づいて、反射波が最小となるよう、高周波電源273のインピーダンスや出力される高周波電力の周波数を制御するものである。
【0026】
高周波電源273は、発振周波数および出力を規定するための高周波発振回路およびプリアンプを含む電源制御手段(コントロール回路)と、所定の出力に増幅するための増幅器(出力回路)とを備えている。電源制御手段は、操作パネルを通じて予め設定された周波数および電力に関する出力条件に基づいて増幅器を制御する。増幅器は、共振コイル212に伝送線路を介して一定の高周波電力を供給する。
【0027】
共振コイル212は、所定の波長の定在波を形成するため、一定の波長で共振するように巻径、巻回ピッチ、巻数が設定される。すなわち、共振コイル212の電気的長さは、高周波電源273から供給される高周波電力の所定周波数における1波長の整数倍(1倍、2倍、…)に相当する長さに設定される。
【0028】
共振コイル212の両端は電気的に接地され、そのうちの少なくとも一端は、装置の最初の設置の際又は処理条件の変更の際に当該共振コイルの電気的長さを微調整するため、可動タップ213を介して接地される。図1中の符号214は他方の固定グランドを示す。可動タップ213は、共振コイル212の共振特性を高周波電源273と略等しくするように位置が調整される。さらに、装置の最初の設置の際又は処理条件の変更の際に共振コイル212のインピーダンスを微調整するため、共振コイル212の接地された両端の間には、可動タップ215によって給電部が構成される。共振コイル212が可変式グランド部及び可変式給電部を備えていることによって、後述するように、処理室201の共振周波数及び負荷インピーダンスを調整するにあたり、より一層簡便に調整することができる。
【0029】
遮蔽板223は、共振コイル212の外側の電界を遮蔽すると共に、共振回路を構成するのに必要な容量成分(C成分)を共振コイル212との間に形成するために設けられる。遮蔽板223は、一般的には、アルミニウム合金などの導電性材料を使用して円筒状に構成される。
【0030】
主に、共振コイル212、RFセンサ272、整合器274により、本実施形態に係るプラズマ生成部(プラズマ生成機構)が構成されている。尚、プラズマ生成部として高周波電源273を含めても良い。
【0031】
ここで、本実施形態に係る装置のプラズマ生成原理および生成されるプラズマの性質について図2を用いて説明する。
【0032】
共振コイル212によって構成されるプラズマ発生回路はRLCの並列共振回路で構成される。高周波電源273から供給される高周波電力の波長と共振コイル212の電気的長さが同じ場合、共振コイル212の共振条件は、共振コイル212の容量成分や誘導成分によって作り出されるリアクタンス成分が相殺され、純抵抗になることである。しかしながら、上記プラズマ発生回路においては、プラズマを発生させた場合、共振コイル212の電圧部とプラズマとの間の容量結合の変動や、プラズマ生成空間201aとプラズマとの間の誘導結合の変動、プラズマの励起状態、等により、実際の共振周波数は僅かながら変動する。
【0033】
そこで、本実施形態においては、プラズマ発生時の共振コイル212における共振のずれを電源側で補償するため、プラズマが発生した際の共振コイル212からの反射波電力をRFセンサ272において検出し、検出された反射波電力に基づいて整合器274が高周波電源273の出力を補正する機能を有する。
【0034】
具体的には、整合器274は、RFセンサ272において検出されたプラズマが発生した際の共振コイル212からの反射波電力に基づいて、反射波電力が最小となる様に高周波電源273のインピーダンス或いは出力周波数を増加または減少させる。インピーダンスを制御する場合、整合器274は、予め設定されたインピーダンスを補正する可変コンデンサ制御回路により構成され、周波数を制御する場合、整合器274は、予め設定された高周波電源273の発振周波数を補正する周波数制御回路により構成される。なお、高周波電源273と整合器274は一体として構成されてもよい。
【0035】
かかる構成により、本実施形態における共振コイル212では、図2に示す様に、プラズマを含む当該共振コイルの実際の共振周波数による高周波電力が供給されるので(或いは、プラズマを含む当該共振コイルの実際のインピーダンスに整合するように高周波電力が供給されるので)、位相電圧と逆位相電圧が常に相殺される状態の定在波が形成される。共振コイル212の電気的長さが高周波電力の波長と同じ場合、コイルの電気的中点(電圧がゼロのノード)に最も高い位相電流が生起される。従って、電気的中点の近傍においては、処理室壁やサセプタ217との容量結合が殆どなく、電気的ポテンシャルの極めて低いドーナツ状の誘導プラズマが形成される。
【0036】
(制御部)
制御部としてのコントローラ221は、信号線Aを通じてAPCバルブ242、バルブ243b及び真空ポンプ246を、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268を、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276及びインピーダンス可変機構275を、信号線Dを通じてゲートバルブ244を、信号線Eを通じてRFセンサ272、高周波電源273及び整合器274を、信号線Fを通じてMFC252a~252c及びバルブ253a~253c,243aを、それぞれ制御するように構成されている。
【0037】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ221は、CPU(Central Processing Unit)221a、RAM(Random Access Memory)221b、記憶装置221c、I/Oポート221dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM221b、記憶装置221c、I/Oポート221dは、内部バス221eを介して、CPU221aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ221には、例えばタッチパネルやディスプレイ等として構成された入出力装置225が接続されている。
【0038】
記憶装置221cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置221c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプログラムレシピ等が読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ221に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプログラムレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プログラムレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM221bは、CPU221aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0039】
I/Oポート221dは、上述のMFC252a~252c、バルブ253a~253c,243a,243b、ゲートバルブ244、APCバルブ242、真空ポンプ246、RFセンサ272、高周波電源273、整合器274、サセプタ昇降機構268、インピーダンス可変機構275、ヒータ電力調整機構276、等に接続されている。
【0040】
CPU221aは、記憶装置221cからの制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置225からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置221cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU221aは、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、I/Oポート221d及び信号線Aを通じてAPCバルブ242の開度調整動作、バルブ243bの開閉動作、及び真空ポンプ246の起動・停止を、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268の昇降動作を、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276によるヒータ217bへの供給電力量調整動作(温度調整動作)や、インピーダンス可変機構275によるインピーダンス値調整動作を、信号線Dを通じてゲートバルブ244の開閉動作を、信号線Eを通じてRFセンサ272、整合器274及び高周波電源273の動作を、信号線Fを通じてMFC252a~252cによる各種ガスの流量調整動作、及びバルブ253a~253c,243aの開閉動作、等を制御することが可能なように構成されている。
【0041】
コントローラ221は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)226に格納された上述のプログラムをコンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置221cや外部記憶装置226は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置221c単体のみを含む場合、外部記憶装置226単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合が有る。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置226を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0042】
(2)基板処理工程
次に、本開示の一態様における基板処理工程について、主に図4を用いて説明する。図4は、本開示の一態様における基板処理工程を示すフロー図である。本開示の一態様における基板処理工程は、例えばフラッシュメモリ等の半導体デバイスの製造工程の一工程として、上述の基板処理装置100により実施される。以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作は、コントローラ221により制御される。
【0043】
なお、本開示の一態様における基板処理工程で処理されるウエハ200上には、例えば図5(A)に示すような、少なくとも表面にシリコン(Si)膜302とシリコン窒化(SiN)膜303が形成された凹部301が予め形成されている。すなわち、本基板処理工程で処理されるウエハ200は、Si膜302及びSiN膜303が、ウエハ200上に形成された凹部301の内側で露出し、Si膜302が凹部301の底を構成している。凹部301は、例えばトレンチやホールであって、凹部301のアスペクト比は20以上である。本基板処理工程においては、凹部301に対して、プラズマを用いた処理として酸化処理を行う。Si膜302は、単結晶シリコン(c-Si)、非結晶シリコン(a-Si)、多結晶シリコン(Poly-Si)の少なくともいずれかにより構成されている。
【0044】
(基板搬入工程S110)
まず、上記のウエハ200を処理室201内に搬入する。具体的には、サセプタ昇降機構268がウエハ200の搬送位置までサセプタ217を下降させて、サセプタ217の貫通孔217aにウエハ突上げピン266を貫通させる。その結果、ウエハ突き上げピン266が、サセプタ217表面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。
【0045】
続いて、ゲートバルブ244を開き、処理室201に隣接する真空搬送室から、ウエハ搬送機構(図示せず)を用いて処理室201内にウエハ200を搬入する。搬入されたウエハ200は、サセプタ217の表面から突出したウエハ突上げピン266上に水平姿勢で支持される。処理室201内にウエハ200を搬入したら、ウエハ搬送機構を処理室201外へ退避させ、ゲートバルブ244を閉じて処理室201内を密閉する。そして、サセプタ昇降機構268がサセプタ217を上昇させることにより、ウエハ200はサセプタ217の上面に支持される。
【0046】
(昇温・真空排気工程S120)
続いて、処理室201内に搬入されたウエハ200の昇温を行う。ヒータ217bは予め加熱されており、ヒータ217bが埋め込まれたサセプタ217上にウエハ200を保持することで、例えば150~700℃の範囲内の所定の温度にウエハ200を加熱する。ここでは、ウエハ200の温度が700℃となるよう加熱する。また、ウエハ200の昇温を行う間、真空ポンプ246によりガス排気管231を介して処理室201内を真空排気し、処理室201内の圧力を所定の値とする。真空ポンプ246は、少なくとも後述の基板搬出工程S160が終了するまで作動させておく。なお、本明細書における「150~700℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「150~700℃」とは「150℃以上700℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0047】
(処理ガス供給工程S130)
次に、処理ガスとして、O含有ガスとH含有ガスの混合ガスの供給を開始する。すなわち、処理ガスとしてのO含有ガスとH含有ガスの混合ガスをウエハ200が収容された処理室201内に供給する。具体的には、バルブ253a及びバルブ253bを開け、MFC252a及びMFC252bにて流量制御しながら、処理室201内へO含有ガス及びH含有ガスの供給を開始する。このとき、O含有ガスの流量を、例えば10~50000sccm、好ましくは10~5000sccmの範囲内の所定値とする。また、H含有ガスの流量を、例えば10~50000sccm、好ましくは10~5000sccmの範囲内の所定値とする。
【0048】
処理ガスであるO含有ガスとH含有ガスの混合ガスに含まれるOとHの比率は、O含有ガスとH含有ガスの流量比を制御することにより調整される。これにより、容易に処理ガスに含まれるOとHの比率を制御することができる。また、OとHの比率とは、処理ガスに含まれるO原子とH原子の数の比率であり、例えば、O含有ガスとH含有ガスの混合ガスとして酸素ガス(O2ガス)と水素ガス(H2ガス)の混合ガスを用いる場合、O含有ガスとH含有ガスの流量比がそのままOとHの比率となる。
【0049】
このとき、処理ガスに含まれるOとHの比率は、次のプラズマ処理工程(S140)において凹部301内のSi膜302の表面を酸化して形成される第1の酸化層としてのSiO層304aの厚さに対する、SiN膜303の表面を酸化して形成される第2の酸化層としてのSiO層304bの厚さの比率が、所定の厚さ比率であって、例えば0.7程度となるように調整される。なお、SiN膜303の表面を酸化して形成される第2の酸化層としてのSiO層304bは、層中に窒素が所定濃度で残留しているSi酸化層(すなさちSiON層)を含むものとして考えてもよい。
【0050】
例えば、処理ガスに含まれるOに対するHの比率を増大させるように調整することにより、SiO層304aの厚さに対するSiO層304bの厚さの比率を小さくすることができる。
【0051】
また、処理ガスとして供給されるO含有ガスとH含有ガスの流量比率は、予め取得されて記憶装置221c又は外部記憶装置226に記憶された所定の厚さ比率に対応する値に調整される。このように、予め取得して記憶装置221c又は外部記憶装置226に記憶しておくことにより、Si膜302上とSiN膜303上に形成される酸化膜の厚さ比率を所定の厚さ比率となるようにO含有ガスとH含有ガスの流量比率を調整することが容易となる。
【0052】
このとき、処理室201内の圧力が、例えば1~250Pa、好ましくは50~200Paの範囲内の所定圧力、より好ましくは約150Paとなるように、APCバルブ242の開度を調整して処理室201内の排気を制御する。このように、処理室201内を適度に排気しつつ、後述のプラズマ処理工程S140の終了時までO含有ガス及びH含有ガスの供給を継続する。
【0053】
(プラズマ処理工程S140)
処理室201内の圧力が安定したら、共振コイル212に対して高周波電源273からRFセンサ272を介して、高周波電力の印加を開始する。本実施形態では、高周波電源273から共振コイル212に13.54~27.12MHzの高周波電力を供給する。共振コイル212に供給する高周波電力は、例えば100~5000Wの範囲内の所定の電力であって、好ましくは100~3500Wであり、より好ましくは約3500Wとする。電力が100Wより低い場合、プラズマ放電を安定的に生じさせることが難しい。
【0054】
これにより、O含有ガス及びH含有ガスが供給されているプラズマ生成空間201a内に高周波電界が形成され、係る電界により、プラズマ生成空間の共振コイル212の電気的中点に相当する高さ位置に、最も高いプラズマ密度を有するドーナツ状の誘導プラズマが励起される。プラズマ状のO含有ガス及びH含有ガスは解離し、酸素(O)ラジカル、酸素イオン、及び水酸基(OH)ラジカル等の酸素活性種、水素(H)ラジカル及び水素イオン等の水素活性種、等の反応種が生成される。
【0055】
すなわち、処理室201内に供給されたO含有ガス及びH含有ガスの混合ガスである処理ガスがプラズマ励起されて、酸素活性種や水素活性種等の反応種が生成される。ここで、酸素活性種等の酸化作用を有する反応種と、水素活性種等の酸化阻害作用を有する反応種を生成することにより、Si膜とSiN膜に対して酸化の選択性を得ることができる。
【0056】
また、電気的ポテンシャルの極めて低い誘導プラズマ(ICP、Inductively Coupled Plasma)により生成した活性種を用いて酸化を行うことにより、20以上の高アスペクト比の凹部301の表面に形成された膜に対して、均一性良く酸化層を形成することができる。また、例えば、ウエハ200の面方向に対して垂直に形成された面に対して凹部301が形成されているような場合のように、凹部301がウエハ200の面方向に対して垂直に形成されていない場合であっても、その表面に形成された膜に対して、均一性良く酸化層を形成することができる。
【0057】
このとき、処理ガスに含まれるOとHの比率は、プラズマ励起して生成される酸化作用を有する反応種の量と酸化阻害作用を有する反応種の量の比率が、所定の酸化層の厚さ比率に対応する比率となるように調整されている。例えば、酸化作用を有する反応種である酸素活性種(より具体的には例えばOラジカル)と酸化阻害作用を有する反応種である水素活性種(より具体的には例えばHラジカル)の比率を制御することにより、SiO層304aに対するSiO層304bの厚さ比率を調整することができるようにされている。
【0058】
そして、酸素活性種等の酸化作用を有する反応種と水素活性種等の酸化阻害作用のある反応種がウエハ200に供給されることにより、ウエハ200上の凹部301内にそれぞれ露出するように形成されたSi膜302及びSiN膜303の表面が酸化されて、SiO層304a及びSiO層304bがそれぞれ形成される。すなわち、図5(B)に示すように、凹部301の底を構成するSi膜302の露出面に全体に均一な厚さのSiO層304aが形成されるとともに、凹部301の側壁面を構成するSiN層303の露出面の全体に均一な厚さのSiO層304bが形成される。また、凹部301の底部を構成するSi膜302の露出面に、SiN膜303の露出面に形成されるSiO層304bに比べて厚さが大きいSiO層304aが形成される。すなわち、Si膜304の表面を、SiN膜303の表面に対して選択的に酸化して、酸化層であるSiO層304aを形成することができる。
【0059】
ここで、開示者による検証によれば、図5(A)に示すようなウエハ200に対して、処理ガスとして酸素のみを含むO2ガスを用いてプラズマ励起して酸化処理を行った場合、Si膜上に形成される酸化層とSiN膜上に形成される酸化層との厚さの比率が、90%を超える、約93%の選択性しか得られなかった。これに対して、開示者の検証によれば、処理ガスとしてO含有ガスとH含有ガスの混合ガスであるO2ガスとH2ガスの混合ガスを用いて、混合ガスに含まれるOとHの比率を調整することにより、Si膜上に形成される酸化層とSiN膜上に形成される酸化層との厚さの比率を90%以下とすることができることが確認された。すなわち、処理ガスとしてO含有ガスとH含有ガスの混合ガスを用いた場合におけるSi膜上の酸化層の厚さに対するSiN膜上の酸化層の厚さ比率を、処理ガスとしてO2ガスのみを用いた場合における、Si膜上の酸化層の厚さに対するSiN膜上の酸化層の厚さの比率よりも、小さい値とするように制御することができることが確認された。
【0060】
つまり、処理ガスとしてO含有ガスとH含有ガスの混合ガスを用いて、処理ガスに含まれるOとHの比率を調整することにより、処理ガスとしてO2ガスのみを用いた場合に比べて、Si膜上の酸化層の厚さに対するSiN膜上の酸化層の厚さの比率を制御することができる。すなわち、これにより、Si膜とSiN膜に形成される酸化層の厚さの選択性を制御することができる。
【0061】
具体的には、処理ガスに含まれるO含有ガスとH含有ガスの比率を、処理ガスに含まれるO原子とH原子の数の合計に対するH原子の数の比率が5%以上になるように調整することにより、SiO層304aの厚さに対するSiO層304bの厚さの比率が90%以下となるようにすることができる。また、処理ガスに含まれるO含有ガスとH含有ガスの比率を、処理ガスに含まれるO原子とH原子の数の合計に対するH原子の数の比率が10%以上になるように調整することにより、SiO層304aの厚さに対するSiO層304bの厚さの比率が80%以下となるようにすることができる。また、処理ガスに含まれるO含有ガスとH含有ガスの比率を、処理ガスに含まれるO原子とH原子の数の合計に対するH原子の数の比率が20%以上になるように調整することにより、SiO層304aの厚さに対するSiO層304bの厚さの比率が70%以下となるようにすることができる。
【0062】
なお、処理ガスに含まれるH原子の数の比率を例えば80%超とした場合、Si膜に対する実用的な酸化レートが得られなくなってしまう。処理ガスに含まれるO含有ガスとH含有ガスの比率を、処理ガスに含まれるO原子とH原子の数の合計に対するH原子の数の比率が80%以下となる値とすることにより、Si膜に対する実用的な酸化レートを維持したまま酸化層の厚さの選択性を得ることができる。なお、処理ガスとしてO2ガスとH2ガスの混合ガスを用いる場合には、処理ガスに含まれるO原子とH原子の数の比率は、そのままO2ガスとH2ガスの供給量の比率となる。
【0063】
その後、所定の処理時間、例えば10~300秒が経過したら、高周波電源273からの電力の出力を停止して、処理室201内におけるプラズマ放電を停止する。また、バルブ253a及びバルブ253bを閉めて、O含有ガス及びH含有ガスの処理室201内への供給を停止する。以上により、プラズマ処理工程S140が終了する。
【0064】
(真空排気工程S150)
O含有ガス及びH含有ガスの供給を停止したら、ガス排気管231を介して処理室201内を真空排気する。これにより、処理室201内のO含有ガスやH含有ガス、これらのガスの反応により発生した排ガス等を処理室201外へと排気する。その後、APCバルブ242の開度を調整し、処理室201内の圧力を処理室201に隣接する真空搬送室(ウエハ200の搬出先。図示せず)と同じ圧力に調整する。
【0065】
(基板搬出工程S160)
処理室201内が所定の圧力となったら、サセプタ217をウエハ200の搬送位置まで下降させ、ウエハ突上げピン266上にウエハ200を支持させる。そして、ゲートバルブ244を開き、ウエハ搬送機構を用いてウエハ200を処理室201外へ搬出する。以上により、本実施形態に係る基板処理工程を終了する。
【0066】
O含有ガスとしては、例えば、O2ガス、オゾン(O3)ガス、水蒸気(H2Oガス)、過酸化水素(H22)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス等を用いることができる。また、O含有ガスとしては、これらのうち少なくとも何れか1つを含むガスを用いることができる。
【0067】
また、H含有ガスとしては、例えば、H2ガス、H2Oガス、H22ガス、重水素(D2)ガス等を用いることができる。また、H含有ガスとしては、これらのうち少なくとも何れか1つを含むガスを用いることができる。
【0068】
なお、O含有ガスとH含有ガスは互いに異なるガスが用いられる。例えば、O含有ガスとH含有ガスは、それぞれのガスの流量当たりに含まれるO原子とH原子の数の比率が互いに異なるガスが用いられる。また、O含有ガスとH含有ガスは、それぞれのガスの組成(分子構造)に含まれるO原子とH原子の数の比率が互いに異なるガスが用いられる。
【0069】
(4)他の実施形態
[第2実施形態]
次に、図6を用いて、本開示の第2実施形態について説明する。ここでは、主として、上述した第1実施形態との相違点について説明し、その他の点については説明を省略する。第2実施形態では、基板処理装置の構成が第1実施形態と異なる。他は第1実施形態と同様である。第2実施形態では、以下に、基板処理装置の構成について説明する。
【0070】
基板処理装置400は、ウエハ200をプラズマ処理する処理炉402を備えている。処理炉402には、処理室401を構成する処理容器403が設けられている。
【0071】
処理室401の底側中央には、ウエハ200を載置する基板載置部としてのサセプタ217が配置されている。サセプタ217の内部には、加熱機構としてのヒータ217bが一体的に埋め込まれている。ヒータ217bは、電力が供給されると、ウエハ200表面を例えば25℃から750℃程度まで加熱することができるように構成されている。
【0072】
サセプタ217には、サセプタを昇降させる駆動機構を備えるサセプタ昇降機構268が設けられている。
【0073】
処理室401の上方には、ガス導入口434aとガス導入口434bが設けられている。
【0074】
ガス導入口434aには、酸化作用を有する反応種として酸素活性種等を処理室401内に供給する供給管406aの下流端が接続されている。供給管406aの上流端には、第1プラズマ励起室404aが接続されている。第1プラズマ励起室404aには、O含有ガスを供給する酸素含有ガス供給管232aの下流端が接続されている。酸素含有ガス供給管232aには、上流側から順に、O含有ガス供給源250a、MFC252a、バルブ253aが設けられている。第1プラズマ励起室404aには、高周波電源273aが接続されている。
【0075】
ガス導入口434bには、酸化阻害作用を有する反応種として水素活性種等を処理室401内に供給する供給管406bの下流端が接続されている。供給管406bの上流端には、第2プラズマ励起室404bが接続されている。第2プラズマ励起室404bには、H含有ガスを供給する水素含有ガス供給管232bの下流端が接続されている。水素含有ガス供給管232bには、上流側から順に、H含有ガス供給源250b、MFC252b、バルブ253bが設けられている。第2プラズマ励起室404bには、高周波電源273bが接続されている。
【0076】
なお、第1プラズマ励起室404a及び第2プラズマ励起室404bには、例えば、高周波電源273a又は高周波電源273bから高周波電力が供給されるコイルがそれぞれ巻回されており、コイルから発生する電磁界によって、第1プラズマ励起室404a及び第2プラズマ励起室404bにそれぞれ導入されたガスがプラズマ励起される。このようにして、第1プラズマ励起室404aに導入されたO含有ガスがプラズマ励起されることにより酸素活性種が生成され、第2プラズマ励起室404bに導入されたH含有ガスがプラズマ励起されることにより水素活性種が生成される。なお、ガスのプラズマ励起手段はコイルに限定されず、マイクロ波供給装置など、他のプラズマ励起手段を適用してもよい。
【0077】
主に、酸素含有ガス供給管232a、MFC252a、バルブ253a、第1プラズマ励起室404a、供給管406aにより、本実施形態に係る酸素含有ガス供給系が構成されている。主に、水素含有ガス供給管232b、MFC252b、バルブ253b、第2プラズマ励起室404b、供給管406bにより、本実施形態に係る水素含有ガス供給系が構成されている。また、酸素含有ガス供給系と水素含有ガス供給系により処理ガス供給系が構成される。
【0078】
第1プラズマ励起室404aでは、酸素含有ガス供給管232aにより供給されたO含有ガスがプラズマ励起されて酸素活性種が生成される。また、第2プラズマ励起室404bでは、水素含有ガス供給管232bにより供給されたH含有ガスがプラズマ励起されて水素活性種が生成される。主に、第1プラズマ励起室404a及び第2プラズマ励起室404bにより、本実施形態に係るプラズマ生成部(プラズマ生成機構)が構成されている。尚、プラズマ生成部として高周波電源273a,273bを含めても良い。
【0079】
すなわち、バルブ253a,253bをそれぞれ開いて、MFC252a,252bによりそれぞれのガスの流量を調整しつつ、第1プラズマ励起室404a及び第2プラズマ励起室404bへそれぞれのガスを供給する。そして、第1プラズマ励起室404a及び第2プラズマ励起室404bにおいて、それぞれのガスをプラズマ励起することにより、供給管406a,406bを介して、酸素活性種及び水素活性種を処理室401へ供給できるように構成されている。
【0080】
つまり、ガス導入口434a,434bからそれぞれ処理室401内に供給された酸素活性種と水素活性種がウエハ200に供給され、図5(A)に示すようなSi膜302とSiN膜303が露出した凹部301内に、図5(B)に示すように、所定の膜厚比のSiO層304aとSiO層304bが形成される。
【0081】
基板処理装置400によれば、酸素活性種と水素活性種の供給量をそれぞれ個別に制御することができる。すなわち、第1プラズマ励起室404aにおいて生成される酸素活性種の量と、第2プラズマ励起室404bにおいて生成される水素活性種の量の比率が、所定の酸化層の厚さ比率に対応する活性種比率となるように調整することができる。つまり、ウエハ200に供給される酸素活性種と水素活性種の量の比率を制御することにより、SiO層304aに対するSiO層304bの厚さ比率を調整することができる。なお、ウエハ200に供給される酸素活性種と水素活性種の量の比率は、第1プラズマ励起室404aに供給されるO含有ガスと第2プラズマ励起室404bに供給されるH含有ガスの流量比、又は、第1プラズマ励起室404aに供給されるO含有ガスを励起する高周波電力と第2プラズマ励起室404bに供給されるH含有ガスを励起する高周波電力の電力比、の少なくとも一方を制御することにより調整される。
【0082】
つまり、MFC252a、252bをそれぞれ制御することによりO含有ガスとH含有ガスの流量比を制御したり、高周波電源273a、273bをそれぞれ制御することにより第1プラズマ励起室と第2プラズマ励起室に印加される高周波電力の電力比を制御したりすることにより、処理室401内のウエハ200に供給される酸素活性種と水素活性種の量をそれぞれ個別に調整することができる。すなわち、ウエハ200に供給される酸素活性種と水素活性種の量の比率を調整することにより、Si膜302の表面を酸化して形成されるSiO層304aの厚さに対するSiN膜303の表面を酸化して形成されるSiO層304bの厚さの比率が所定の厚さ比率となるように調整することができる。なお、酸素活性種と水素活性種の供給量の比率は、OラジカルとHラジカルの供給量の比率など、特定の酸素活性種及び水素活性種の種類の間の比率を調整してもよい。
【0083】
上述した基板処理装置400を用いる場合においても、上述の第1実施形態と同様な基板処理工程、処理条件にて成膜を行うことができ、上述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、基板処理装置400を用いる場合においても、Si膜とSiN膜が露出した凹部の底部を構成するSi膜の露出面に、選択的に且つ均一性良く酸化層を形成することができる。
【0084】
O含有ガス及びH含有ガスとしては、上述の第1実施形態におけるO含有ガス及びH含有ガスと同様のガスをそれぞれ用いることができる。また、第1実施形態と同様に、O含有ガスとH含有ガスは互いに異なるガスが用いられる。
【0085】
なお、第2実施形態においては、O含有ガスとしてHを非含有とするガス(例えば、O2ガス、O3ガス、NOガス、N2Oガス等)を用い、H含有ガスとしてOを非含有とするガス(例えば、H2ガス、D2ガス等)を用いることができる。このようなO含有ガスとH含有ガスの組み合わせとすることにより、酸素含有ガス供給系と水素含有ガス供給系からそれぞれ供給される酸素活性種と水素活性種の量の比率を、O含有ガスとH含有ガスの流量比の制御、又は高周波電源273a、273bの制御の少なくとも何れか一方によって調整することをより容易とすることができる。
【0086】
以上、本開示の種々の典型的な実施形態を説明してきたが、本開示はそれらの実施形態に限定されず、適宜組み合わせて用いることもできる。
【実施例1】
【0087】
図1に示す基板処理装置を用いて、図4に示す基板処理工程において、処理ガスであるO含有ガスとH含有ガスの混合ガスに含まれるOとHの合計に対するHの比率を、5~20%まで変化させて、ウエハ上に形成されているSi膜とSiN膜を酸化させた。そして、Si膜上に形成される酸化層の厚さに対するSiN膜上に形成される酸化膜の厚さの比率(酸化選択比)を評価した。
【0088】
図7に示すように、処理ガスである混合ガスに含まれるOとHの合計に対するHの比率を5%にした場合、Si膜に対するSiN膜の酸化比率である酸化選択比は87%だった。よって、混合ガスに含まれるOとHの合計に対するHの比率を5%以上に調整することにより、酸化選択比を90%以下となるように調整することができることが確認された。
【0089】
また、処理ガスである混合ガスに含まれるOとHの合計に対するHの比率を10%にした場合、Si膜に対するSiN膜の酸化選択比は77%だった。よって、混合ガス中に含まれるOとHの合計に対するHの比率を10%以上に調整することにより、酸化選択比を80%以下となるように調整することができることが確認された。
【0090】
また、処理ガスである混合ガスに含まれるOとHの合計に対するHの比率を20%にした場合、Si膜に対するSiN膜の酸化選択比は67%だった。よって、混合ガス中に含まれるOとHの合計に対するHの比率を20%以上に調整することにより、酸化選択比を70%以下となるように調整することができることが確認された。
【0091】
また、O含有ガスとH含有ガスの混合ガスに含まれるOとHの合計に対するHの比率を20%より大きくした場合、Si膜に対するSiN膜の酸化選択比がさらに小さくなっていくと推測される。すなわち、処理ガスに含まれるOとHの合計に対するHの比率を増大させるように調整することにより、Si膜に対するSiN膜の酸化選択比を小さくすることができ、酸化選択性が向上されることが確認された。
【0092】
なお、図1に示す基板処理装置を用いて、図4に示す基板処理工程において、混合ガスを励起する高周波電力の大きさが異なる2つの実験例について、ウエハのSi膜上とSiN膜上に形成される酸化膜の厚さの比率を評価したが、いずれの場合も酸化選択比は0.87程度で、酸化選択性は確認されなかった。また、図1に示す基板処理装置を用いて、図4に示す基板処理工程において、処理室内の圧力が異なる2つの実験例について、ウエハのSi膜上とSiN膜上に形成される酸化膜の厚さの比率を評価したが、いずれの場合も酸化選択比は0.87程度で、酸化選択性は確認されなかった。また、図1に示す基板処理装置を用いて、図4に示す基板処理工程において、ウエハの温度が異なる2つの実験例について、ウエハのSi膜上とSiN膜上に形成される酸化膜の厚さの比率を評価したが、酸化選択比はそれぞれ0.87と0.88で微差であり、酸化選択性は確認されなかった。また、図1に示す基板処理装置を用いて、図4に示す基板処理工程において、プラズマ源に対するウエハの高さが異なる2つの実験例について、ウエハのSi膜上とSiN膜上に形成される酸化膜の厚さの比率を評価したが、いずれの場合も酸化選択比は0.87程度で、酸化選択性は確認されなかった。
【0093】
<本開示の好ましい態様>
以下、好ましい態様について付記する。
【0094】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
(a)酸素及び水素を含む処理ガスをプラズマ励起して反応種を生成する工程と、
(b)前記反応種を基板に供給し、前記基板の上にそれぞれ露出するように形成されたシリコン膜及びシリコン窒化膜の表面を酸化する工程と、
を有し、
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の比率は、(b)において前記シリコン膜の表面を酸化して形成される第1の酸化層の厚さに対する前記シリコン窒化膜の表面を酸化して形成される第2の酸化層の厚さの比率が所定の厚さ比率となるように調整されている、
半導体装置の製造方法が提供される。
【0095】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
(c)前記第1の酸化層の厚さに対する前記第2の酸化層の厚さの比率が前記所定の厚さ比率となるように、前記処理ガスに含まれる酸素と水素の比率を調整する工程、を更に有する。
【0096】
(付記3)
付記2に記載の方法であって、好ましくは、
(c)では、前記処理ガスに含まれる酸素に対する水素の比率を増大させるように調整することにより、前記第1の酸化層の厚さに対する前記第2の酸化層の厚さの比率を小さくする。
【0097】
(付記4)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の比率は、予め取得された前記所定の厚さ比率に対応する値に調整される。
【0098】
(付記5)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
(a)では、少なくとも酸素活性種及び水素活性種を前記反応種として生成する。
【0099】
(付記6)
付記5に記載の方法であって、好ましくは、
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の比率は、(b)において前記基板に供給される前記酸素活性種の量と前記水素活性種の量の比率が、前記所定の厚さ比率に対応する活性種比率となるように調整されている。
【0100】
(付記7)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
(a)及び(b)において前記処理ガスとして酸素のみ含むガスを用いた場合における、前記第1の酸化層の厚さに対する前記第2の酸化層の厚さの比率よりも、前記所定の厚さ比率は小さい値である。
【0101】
(付記8)
付記7に記載の方法であって、好ましくは、
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の比率は、前記第1の酸化層の厚さに対する前記第2の酸化層の厚さの比率が90%以下となるように調整されている。
【0102】
(付記9)
付記8に記載の方法であって、好ましくは、
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の比率は、前記第1の酸化層の厚さに対する前記第2の酸化層の厚さの比率が80%以下となるように調整されている。
【0103】
(付記10)
付記8に記載の方法であって、好ましくは、
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の比率は、前記処理ガスに含まれる酸素と水素の合計に対する水素の比率が10%以上となるように調整されている。
【0104】
(付記11)
付記8に記載の方法であって、好ましくは、
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の比率は、前記第1の酸化層の厚さに対する前記第2の酸化層の厚さの比率が70%以下となるように調整されている。
【0105】
(付記12)
付記8に記載の方法であって、好ましくは、
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の比率は、前記処理ガスに含まれる酸素と水素の合計に対する水素の比率が20%以上となるように調整されている。
【0106】
(付記13)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
前記処理ガスは、酸素含有ガスと水素含有ガスの混合ガスである。
【0107】
(付記14)
付記13に記載の方法であって、好ましくは、
前記酸素含有ガスは酸素ガスであり、前記水素含有ガスは水素ガスである。
【0108】
(付記15)
付記13又は14に記載の方法であって、好ましくは、
前記処理ガスに含まれる酸素と水素の比率は、前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスの流量比を制御することにより調整されている。
【0109】
(付記16)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
前記シリコン膜は、単結晶シリコン、非結晶シリコン、多結晶シリコンの少なくともいずれかにより構成されている。
【0110】
(付記17)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
前記シリコン膜及び前記シリコン窒化膜は、前記基板上に形成された凹部の内側で露出し、前記シリコン膜が前記凹部の底を構成しており、
(b)では、前記凹部の底を構成する前記シリコン膜の露出面に全体に均一な厚さの前記第1の酸化層を形成する。
【0111】
(付記18)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
(a)では、前記処理ガスを前記基板が収容された処理室内に供給し、前記処理室内に供給された前記処理ガスをプラズマ励起する。
【0112】
(付記19)
本開示の他の態様によれば、
(a)酸素含有ガスをプラズマ励起して酸素活性種を生成する工程と、
(b)水素含有ガスをプラズマ励起して水素活性種を生成する工程と、
(c)前記酸素活性種及び前記水素活性種を基板に供給し、前記基板の上にそれぞれ露出するように形成されたシリコン膜及びシリコン窒化膜の表面を酸化する工程と、
を有し、
前記基板に供給される前記酸素活性種と前記水素活性種の比率は、(c)において前記シリコン膜の表面を酸化して形成される第1の酸化層の厚さに対する前記シリコン窒化膜の表面を酸化して形成される第2の酸化層の厚さの比率が所定の厚さ比率となるように調整されている、
半導体装置の製造方法が提供される。
【0113】
(付記20)
付記19に記載の方法であって、好ましくは、
前記酸素活性種は第1プラズマ励起室において生成され、前記水素活性種は第2プラズマ励起室において生成される。
【0114】
(付記21)
付記20に記載の方法であって、好ましくは、
前記基板に供給される前記酸素活性種と前記水素活性種の量の比率は、
前記第1プラズマ励起室に供給される前記酸素含有ガスと前記第2プラズマ励起室に供給される前記水素含有ガスの流量比、
および、
前記第1プラズマ励起室に供給される前記酸素含有ガスを励起する高周波電力と前記第2プラズマ励起室に供給される前記水素含有ガスを励起する高周波電力の電力比、
の少なくともいずれかを制御することにより調整される。
【0115】
(付記22)
本開示のさらに他の態様によれば、
基板が収容される処理室と、
酸素及び水素を含む処理ガスを前記処理室内に供給する処理ガス供給系と、
前記処理室内に供給された前記処理ガスをプラズマ励起するプラズマ生成機構と、
前記処理室内において、付記1における各処理(各工程)を行うように前記処理ガス供給系及び前記プラズマ生成機構を制御可能に構成された制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0116】
(付記23)
本開示のさらに他の態様によれば、
付記1における各手順(各工程)をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【符号の説明】
【0117】
100、400 基板処理装置
200 ウエハ(基板)
201、401 処理室
203、403 処理容器
221 コントローラ(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7