(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】メルトの製造方法、ガラス物品の製造方法、溶解装置、及びガラス物品の製造装置
(51)【国際特許分類】
C03B 5/033 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
C03B5/033
(21)【出願番号】P 2021518303
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2020007429
(87)【国際公開番号】W WO2020225962
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2019088465
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】前原 輝敬
(72)【発明者】
【氏名】土井 洋二
(72)【発明者】
【氏名】榎本 高志
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 章文
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 俊太郎
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-124522(JP,A)
【文献】特開昭53-054217(JP,A)
【文献】特開昭63-185831(JP,A)
【文献】特開昭63-069720(JP,A)
【文献】特開昭54-144416(JP,A)
【文献】特開2016-124750(JP,A)
【文献】特開昭48-059120(JP,A)
【文献】特開平08-091848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 5/00-5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスのバッチ原料並びに前記バッチ原料から変性した固相及び液相が混在した固液混合層の内部に第1加熱体を直接接触させ、
前記固液混合層は、熱拡散率が3mm
2
/秒以下であって、
前記第1加熱体は、電気抵抗発熱体又は熱交換チューブを有し、
前記第1加熱体から熱伝達によって前記固液混合層に熱エネルギを与え、
前記固液混合層の上方から前記バッチ原料を供給し、
前記固液混合層に接する下層に嵩密度が前記固液混合層よりも大きい液相のメルトを連続的に生成する、
メルトの製造方法。
【請求項2】
更に、前記メルトからなるメルト層の内部に第2加熱体を直接接触させ、前記第2加熱体から熱伝達によって前記メルト層に熱エネルギを与える、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記固液混合層は、前記メルトからなるメルト層の上面の70%以上を覆う、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の方法により製造したメルトを更に成形し、
成形したガラスを徐冷し、
徐冷したガラスをガラス物品に加工する、
ガラス物品の製造方法。
【請求項5】
ガラスのバッチ原料から得られるメルトからなるメルト層と、前記メルト層に接する上層としての、前記バッチ原料並びに前記バッチ原料から変性した固相及び液相が混在した固液混合層とを収容する収容部と、
前記収容部に前記バッチ原料を投入する投入部と、
予定する前記固液混合層の内部に相当する位置に設置され、前記固液混合層の内部に直接接触し熱伝達によって熱エネルギを前記固液混合層に与える第1加熱体と、
を有
し、
前記固液混合層は、熱拡散率が3mm
2
/秒以下であって、
前記第1加熱体は、電気抵抗発熱体又は熱交換チューブを有する、連続式の溶解装置。
【請求項6】
前記第1加熱体は、水平方向に間隔をおいて2つ以上配置される、請求項
5に記載の装置。
【請求項7】
前記第1加熱体は、鉛直方向に間隔をおいて2つ以上配置される、請求項
5に記載の装置。
【請求項8】
更に、予定する前記メルト層の内部に相当する位置に設置され、前記メルト層の内部に直接接触し熱伝達によって熱エネルギを前記メルト層に与える第2加熱体を有する、請求項
5乃至
7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1加熱体と前記第2加熱体とは、同一の鉛直線上に連続的に配置され、一体化される、請求項
8に記載の装置。
【請求項10】
前記投入部は、予定する前記メルト層の上方、且つ予定する前記固液混合層の上方に相当する位置に設置される、請求項
5乃至
9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
予定する前記メルト層の全体を上方から前記固液混合層で覆うことが可能な位置に、更に、前記投入部を移動させる移動部を有する、請求項
5乃至
10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
請求項
5乃至
11のいずれか一項に記載の溶解装置と、
前記溶解装置で得られたメルトを成形する成形装置と、
前記成形されたガラスを徐冷する徐冷装置と、
前記徐冷されたガラスをガラス物品に加工する加工装置と、
を有する、ガラス物品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、メルトの製造方法、ガラス物品の製造方法、溶解装置、及びガラス物品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガラスのバッチ原料を溶解し、メルトを製造する種々の方法が提案されている(例えば特許文献1~7参照)。
【0003】
特許文献1では、メルト層を収容する容器に対してバッチ原料を投下すると共に、落下中のバッチ原料をバーナーの火炎で加熱する方法が開示されている。
【0004】
特許文献2では、容器に収容されたメルト層の内部に液中バーナーを設置し、液中バーナーの火炎でメルト層を加熱する方法が開示されている。
【0005】
特許文献3では、パイプ群上にバッチ原料の原料山を形成し、パイプ群と原料山とを排ガスの熱で予熱する方法が開示されている。この方法では、パイプ群と、メルト層を収容する容器とは、空間を隔てて設置される。
【0006】
特許文献4では、容器に収容されたメルト層の内部に格子状の抵抗発熱体を設置し、抵抗発熱体でメルト層を加熱する方法が開示されている。この方法によれば、メルト層の対流を制御できる。
【0007】
特許文献5では、容器に収容されたメルト層の内部に断面視楕円状の細長い加熱素子を設置し、加熱素子でメルト層を加熱する方法が開示されている。この方法によれば、特許文献4と同様に、メルト層の対流を制御できる。
【0008】
特許文献6では、チューブ群などでバッチ原料を支持しながら予熱する方法が報告されている。この方法では、チューブ群と、メルト層を収容する容器とは、空間を隔てて設置される。
【0009】
特許文献7では、容器に収容されたメルト層の上層としてバッチ原料の原料山を形成し、原料山の上方から原料山の内部にアーク電極を挿入し、原料山とメルト層の界面をアーク加熱する方法が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2012/0167631号明細書
【文献】特表2002-536277号公報
【文献】米国特許第3944713号明細書
【文献】米国特許第4927446号明細書
【文献】米国特許第3912477号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0272685号明細書
【文献】米国特許第4468164号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ガラスのバッチ原料が溶解し、メルトが製造されるまでに、様々な反応が生じる。これらの反応のほとんどは、吸熱を伴うので、大量の熱エネルギを消費する。吸熱を伴う反応が終了するまでは、バッチ原料が完全には溶解しておらず、バッチ原料は内部に大量の気孔を含む。気孔は嵩密度を低下させ、熱拡散率を低下させるので、バッチ原料に大量の熱エネルギを効率的に与える必要がある。しかし、従来の技術及びそこから示唆される技術では、バッチ原料に大量の熱エネルギを効率的に与えることが困難であった。
【0012】
本開示の一態様は、バッチ原料並びにバッチ原料から変性した固相及び液相が混在した固液混合層を効率的に加熱し、固液混合層に連続するメルト層を効率的に製造できる、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一態様に係るメルトの製造方法は、
ガラスのバッチ原料並びに前記バッチ原料から変性した固相及び液相が混在した固液混合層の内部に第1加熱体を直接接触させ、
前記固液混合層は、熱拡散率が3mm
2
/秒以下であって、
前記第1加熱体は、電気抵抗発熱体又は熱交換チューブを有し、
前記第1加熱体から熱伝達によって前記固液混合層に熱エネルギを与え、
前記固液混合層の上方から前記バッチ原料を供給し、
前記固液混合層に接する下層に嵩密度が前記固液混合層よりも大きい液相のメルトを連続的に生成する。
【0015】
本開示の一態様に係る連続式の溶解装置は、
ガラスのバッチ原料から得られるメルトからなるメルト層と、前記メルト層に接する上層としての、前記バッチ原料並びに前記バッチ原料から変性した固相及び液相が混在した固液混合層とを収容する収容部と、
前記収容部に前記バッチ原料を投入する投入部と、
予定する前記固液混合層の内部に相当する位置に設置され、前記固液混合層の内部に直接接触し熱伝達によって熱エネルギを前記固液混合層に与える第1加熱体と、
を有し、
前記固液混合層は、熱拡散率が3mm
2
/秒以下であって、
前記第1加熱体は、電気抵抗発熱体又は熱交換チューブを有する。
【発明の効果】
【0017】
本開示の一態様によれば、バッチ原料並びにバッチ原料から変性した固相及び液相が混在した固液混合層を効率的に加熱し、固液混合層に連続するメルト層を効率的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るガラス物品の製造装置を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るガラス物品の製造方法を示すフローチャートである。
【
図3A】
図3Aは、一実施形態に係る溶解装置を示す立面断面図である。
【
図3B】
図3Bは、一実施形態に係る溶解装置を示す平面断面図であって、
図3AのIIIB-IIIB線に沿った平面断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係るメルトの製造方法を示すフローチャートである。
【
図5A】
図5Aは、第1変形例に係る溶解装置を示す立面断面図である。
【
図5B】
図5Bは、第1変形例に係る溶解装置を示す平面断面図であって、
図5AのVB-VB線に沿った平面断面図である。
【
図6】
図6は、第2変形例に係る溶解装置を示す立面断面図である。
【
図7A】
図7Aは、第3変形例に係る溶解装置を示す立面断面図であって、
図7BのVIIA-VIIA線に沿った立面断面図である。
【
図7B】
図7Bは、第3変形例に係る溶解装置を示す平面断面図であって、
図7AのVIIB-VIIB線に沿った平面断面図である。
【
図8】
図8は、第4変形例に係る溶解装置を示す立面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0020】
(ガラス物品の製造装置)
図1は、一実施形態に係るガラス物品の製造装置を示す図である。
図1に示すように、ガラス物品の製造装置1は、溶解装置2と、成形装置3と、徐冷装置4と、加工装置5とを有する。
【0021】
溶解装置2は、ガラスのバッチ原料を溶解し、メルトを製造する。バッチ原料は、化学組成の異なる複数種類のガラス原料を含む。ガラス原料は、ガラスの組成に応じて決定される。ガラスがソーダライムガラスである場合、ガラスの組成は、酸化物基準のモル%で、SiO2の含有量が50%以上75%以下、Al2O3の含有量が0%以上20%以下、Li2OとNa2OとK2Oとの合計の含有量が5%以上25%以下、MgOとCaOとSrOとBaOとの合計の含有量が0%以上20%以下である。ガラスがソーダライムガラスである場合、バッチ原料は例えば珪砂、石灰石、ソーダ灰、ホウ酸及び清澄剤などを含む。清澄剤は、三酸化硫黄、塩化物又はフッ化物などである。バッチ原料は、ガラスをリサイクルすべく、ガラス原料の他に、ガラスカレットを含んでもよい。バッチ原料は、粉体原料でもよいし、当該粉体原料を造粒した造粒原料でもよい。溶解装置2は、連続式であって、バッチ原料の供給と、メルトの製造とを連続的に行う。バッチ原料の単位時間当たりの投入量は、メルトの単位時間当たりの排出量と同程度である。溶解装置2の詳細は後述する。
【0022】
成形装置3は、溶解装置2で得られたメルトを所望の形状のガラスに成形する。板状のガラスを得る成形方法として、フロート法、フュージョン法、又はロールアウト法等が用いられる。管状のガラスを得る成形方法として、ベロー法、又はダンナー法等が用いられる。その他の形状のガラスを得る成形方法として、プレス法、ブロー法、又は鋳造法等が用いられる。
【0023】
徐冷装置4は、成形装置3で成形したガラスを徐冷する。徐冷装置4は、例えば、徐冷炉と、徐冷炉の内部においてガラスを所望の方向に搬送する搬送ローラとを有する。搬送ローラは、例えば水平方向に間隔をおいて複数配列される。ガラスは、徐冷炉の入口から出口まで搬送される間に、徐冷される。ガラスを徐冷すれば、残留歪みの少ないガラスが得られる。
【0024】
加工装置5は、徐冷装置4で徐冷したガラスをガラス物品に加工する。加工装置5は、例えば切断装置、研削装置、研磨装置、及びコーティング装置から選ばれる1つ以上であってよい。切断装置は、徐冷装置4で徐冷したガラスから、ガラス物品を切り出す。切断装置は、例えば、徐冷装置4で徐冷したガラスにスクライブ線を形成し、スクライブ線に沿ってガラスを割断する。スクライブ線は、カッター又はレーザー光線を用いて形成される。研削装置は、徐冷装置4で徐冷したガラスを研削する。研磨装置は、徐冷装置4で徐冷したガラスを研磨する。コーティング装置は、徐冷装置4で徐冷したガラスに所望の膜を形成する。
【0025】
なお、ガラス物品の製造装置1は、清澄装置をさらに有してもよい。清澄装置は、溶解装置2で得られたメルトを成形装置3で成形する前に、メルト中に含まれる気泡を除去する。気泡を除去する方法として、例えば、メルトの周辺雰囲気を減圧する方法、及びメルトを高温に加熱する方法から選ばれる1つ以上が用いられる。
【0026】
(ガラス物品の製造方法)
図2は、一実施形態に係るガラス物品の製造方法を示すフローチャートである。
図2に示すように、ガラス物品の製造方法は、メルトの製造(S1)と、成形(S2)と、徐冷(S3)と、加工(S4)とを含む。溶解装置2がメルトの製造(S1)を実施し、成形装置3が成形(S2)を実施し、徐冷装置4が徐冷(S3)を実施し、加工装置5が加工(S4)を実施する。なお、ガラス物品の製造方法は、清澄をさらに含んでもよい。清澄は、メルト中に含まれる気泡を除去することであり、メルトの製造(S1)の後、成形(S2)の前に実施される。
【0027】
(溶解装置)
図3Aは、一実施形態に係る溶解装置を示す立面断面図である。
図3Bは、一実施形態に係る溶解装置を示す平面断面図であって、
図3AのIIIB-IIIB線に沿った平面断面図である。
図3Aおよび
図3Bにおいて、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向及びY軸方向は水平方向であり、Z軸方向は鉛直方向である。下記の変形例に係る溶解装置の断面図について同様である。
【0028】
溶解装置2は、ガラスのバッチ原料を溶解し、メルトを製造する。バッチ原料は、粉体原料または造粒原料であって、化学組成の異なる複数種類のガラス原料を含む。それゆえ、バッチ原料が溶解し、メルトが製造されるまでに、様々な反応が生じる。これらの反応のほとんどは、吸熱を伴うので、大量の熱エネルギを消費する。吸熱を伴う反応として、例えば、水分の気化、炭酸塩の熱分解、及び珪砂と炭酸塩との反応などが挙げられる。吸熱を伴う反応が終了するまでは、バッチ原料が完全には溶解しておらず、これが固液混合層の状態である。
【0029】
溶解装置2は収容部21を有し、収容部21はメルト層Mと固液混合層Bとを収容する。メルト層Mは、バッチ原料から得られるメルトからなる。固液混合層Bは、メルト層Mに接する上層として形成され、バッチ原料並びにバッチ原料から変性した固相及び液相が混在したものである。固液混合層Bは、メルト層Mに比べて、大量の気孔を含むので、低い嵩密度を有し、低い熱拡散率を有する。固液混合層Bの熱拡散率は例えば3mm2/秒以下であり、メルト層Mの熱拡散率は例えば3mm2/秒超である。熱拡散率は、Glass Technology: European Journal of Glass Science and Technology Part A, June 2018, Volume59 Number3, Pages94-104に記載の方法で測定する。また、固液混合層Bの嵩密度はメルト層Mの嵩密度の90%以下である。嵩密度は、透明石英又は透明サファイアからなる筒状の坩堝にバッチ原料を収め、バッチ原料を収めた坩堝を電気炉内に設置し、電気炉内でバッチ原料を加熱しながらバッチ原料の体積変化をカメラで観察することにより測定する。嵩密度は、International Journal of Applied Glass Science, August 2018, Volume10, Pages115-124に記載の方法で測定する。
【0030】
収容部21は、メルト層Mおよび固液混合層Bに接するので、メルト層Mおよび固液混合層Bに対して高い耐食性を有する材料で形成される。収容部21の雰囲気が大気雰囲気であって、雰囲気の温度が800℃未満である場合、収容部21は、例えば煉瓦、ステンレス、インコネル、及びニッケルから選ばれる1つ以上で形成される。また、収容部21の雰囲気が大気雰囲気であって、雰囲気の温度が800℃以上である場合、収容部21は、例えば煉瓦、白金、白金ロジウム合金、及びセラミックスから選ばれる1つ以上で形成される。また、収容部21の雰囲気が不活性雰囲気であって、雰囲気の温度が800℃以上である場合、収容部21は、例えば煉瓦、モリブデン、タングステン、及びイリジウムから選ばれる1つ以上で形成される。
【0031】
収容部21は、複数の側壁211と、底壁212とを有する。複数の側壁211は、例えば四角筒状に組立てられ、その内側にメルト層Mおよび固液混合層Bを収容する収容室を形成する。底壁212は、収容室の底を塞ぐ。収容部21は、
図3Aでは底壁212にメルトの出口213を有するが、側壁211にメルトの出口213を有してもよい。
【0032】
溶解装置2は投入部22を有し、投入部22は収容部21に対してバッチ原料を投入する。投入部22として、公知のバッチチャージャーが用いられる。投入部22は、収容部21に対してバッチ原料を定期的に投入し、メルト層Mの上に固液混合層Bを形成し続ける。バッチ原料の単位時間当たりの投入量は、バッチ原料の単位時間当たりの投入量をガラス重量に換算すると、メルトの単位時間当たりの排出量と同程度である。
【0033】
投入部22は、予定するメルト層Mの上方、且つ予定する固液混合層Bの上方に相当する位置に設置される。つまり、投入部22は、上方視で、メルト層M及び固液混合層Bと重なる位置に設置される。投入部22は、メルト層M及び固液混合層Bの上方からバッチ原料を投入するので、高温のメルト層Mの上面の70%以上を低温の固液混合層Bで覆うことができる。その結果、メルト層Mの上面から熱および揮発成分が抜け出して逃げるのを抑制できる。揮発成分は、例えば、ホウ酸及び清澄剤などであり、低温の固液混合層Bで液化して捕集される。
【0034】
溶解装置2は移動部23を有してよく、移動部23は予定するメルト層Mの全体を上方から固液混合層Bで覆うことが可能な位置に投入部22を移動させる。投入部22は、上方視でメルト層M及び固液混合層Bと重なる領域の内側で移動させられる。投入部22の移動方向は、
図3AではX軸方向であるが、Y軸方向であってもよく、X軸方向とY軸方向の両方向であってもよい。移動部23として、公知のものが用いられる。高温のメルト層Mの上面の全体を低温の固液混合層Bで覆うことにより、メルト層Mの上面から熱および揮発成分が抜け出して逃げるのをより抑制できる。
【0035】
ところで、バッチ原料は、固液混合層Bの上面からその下面に達するまでの間に、固相から液相に状態変化する。この間、吸熱を伴う反応が生じるので、大量の熱エネルギが消費される。また、この間、バッチ原料は完全には溶解しておらず、内部に大量の気孔を含む。そのため、固液混合層Bの熱拡散率はメルト層Mの熱拡散率に比べて低い。低い熱拡散率の固液混合層Bに対して固液混合層Bの外部から大量の熱エネルギを効率的に与えるのは困難である。熱が、固液混合層Bの外部から内部に入りにくいからである。
【0036】
そこで、本実施形態の溶解装置2は第1加熱体24を有し、第1加熱体24は予定する固液混合層Bの内部に相当する位置に設置され、固液混合層Bの内部に直接接触し、熱伝達によって熱エネルギを固液混合層Bに与える。第1加熱体24は、固液混合層Bの上面よりも下に配置され、且つ固液混合層Bの下面よりも上に配置される。第1加熱体24は、予定する固液混合層Bの内部に相当する位置に最初から設置されてもよいし、ガラス原料を投下後に固液混合層Bの内部に相当する位置に移動して設置されてもよい。
【0037】
第1加熱体24は固液混合層Bを内部から加熱するので、第1加熱体24の熱エネルギの大半を漏れなく固液混合層Bに伝達でき、第1加熱体24から固液混合層Bに熱エネルギを効率的に伝達できる。従って、固液混合層Bを効率的に加熱でき、固液混合層Bに連続するメルト層Mを効率的に製造できる。
【0038】
また、第1加熱体24は固液混合層Bを内部から加熱するので、固液混合層Bの受熱面がメルト層Mとの境界だけではなく固液混合層Bの内部にも形成される。その結果、大量の熱エネルギを固液混合層Bに付与できる。従って、単位面積当たりの1日のメルトの製造量を増加できる。単位面積とは、収容部21の内底面の単位面積である。溶解装置2が1日に製造するメルトの製造量が同じ場合、収容部21の内底面の総面積を低減でき、溶解装置2を小型化できる。
【0039】
第1加熱体24は、例えば棒状に形成される。その断面形状は、円形であるが、楕円形または矩形などでもよい。第1加熱体24は、例えば水平に配置される。水平方向に広がる固液混合層Bの広い範囲を、1本の水平な棒状の第1加熱体24で加熱できる。
【0040】
第1加熱体24の本数は、1本でもよいが、複数本であってよい。第1加熱体24の本数が多いほど、個々の第1加熱体24の負荷を軽減でき、最大出力の小さい第1加熱体24を使用できる。
【0041】
複数本の第1加熱体24の出力は、個別に決められてよい。固液混合層Bの温度分布を制御できる。固液混合層Bの温度分布は、メルト層Mの対流に対して悪影響を及ぼさないように決められてよい。
【0042】
複数本の第1加熱体24は、例えばY軸方向に平行に配置され、X軸方向に間隔をおいて複数配置される。固液混合層Bのより広い範囲を加熱できる。
【0043】
X軸方向に隣り合う2本の第1加熱体24の間隔Wは、バッチ原料の流動性と、バッチ原料に与える熱エネルギの総量とに基づいて決定される。間隔Wは、特に限定されないが、バッチ原料の流動性の観点から10mm以上が好ましく、20mm以上がさらに好ましい。バッチ原料に与える熱エネルギの観点から、間隔Wは広すぎない方がよく、例えば200mm以下が好ましく、100mm以下がさらに好ましい。
【0044】
複数本の第1加熱体24は、本実施形態ではZ軸方向に同じ位置に配置されるが、Z軸方向に異なる位置に配置されてもよい。固液混合層Bのさらに広い範囲を加熱でき、単位面積当たりの1日のメルトの製造量をさらに増加できる。
【0045】
従来のように第1加熱体24が存在せずに固液混合層Bの受熱面がメルト層Mとの境界だけであって、固液混合層Bの厚さTが例えば100mmである場合、単位面積当たりの1日のメルトの最大製造量は2.5ton/m2・日程度であった。
【0046】
これに対し、固液混合層Bの厚さTが150mmであって、直径30~40mmの棒状の第1加熱体24がZ軸方向に50mm間隔で2本配置される場合、単位面積当たりの1日のメルトの最大製造量を6ton/m2・日まで向上でき、従来の2.4倍に増加できる。
【0047】
また、固液混合層Bの厚さTが200mmであって、直径30~40mmの棒状の第1加熱体24がZ軸方向に50mm間隔で3本配置される場合、単位面積当たりの1日のメルトの最大製造量を7ton/m2・日まで向上でき、従来の2.8倍に増加できる。
【0048】
本実施形態によれば、固液混合層Bの受熱面がメルト層Mとの境界だけではなく固液混合層Bの内部にも形成されるので、固液混合層Bの厚さTを従来よりも厚くでき、単位面積当たりの1日のメルトの製造量を増加できる。
【0049】
第1加熱体24は、特に限定されないが、例えば電気抵抗発熱体241を有する。電気抵抗発熱体241は、通電され、ジュール熱を発生する。従って、電源から電気抵抗発熱体241への供給電力を制御すれば、発熱量を制御できる。電気抵抗発熱体241は、使用温度および雰囲気に基づき選定した材料で形成され、例えばMoSi
2又はSiCで形成される。電気抵抗発熱体241は、
図3Bに示すように収容部21の一対の側壁211の一方から他方まで水平に延びていてよい。収容部21の広い範囲を加熱できる。
【0050】
第1加熱体24はケーシング242をさらに有してよく、ケーシング242が電気抵抗発熱体241を内部に収容してよい。ケーシング242は、管状に形成され、内部に電気抵抗発熱体241を封入する。ケーシング242は、
図3Bに示すように収容部21の一対の側壁211の一方から他方まで水平に延びていてよい。電気抵抗発熱体241の熱線が、電気抵抗発熱体241から離れたケーシング242を加熱する。ケーシング242は、固液混合層Bの内部に直接接触し、熱伝達によって熱エネルギを固液混合層Bに与える。電気抵抗発熱体241が固液混合層Bに直接接触しないので、電気抵抗発熱体241の腐食を抑制できる。
【0051】
ケーシング242は、固液混合層Bの内部に直接接触するので、固液混合層B対して高い耐食性を有する材料で形成される。収容部21の雰囲気が大気雰囲気であって、雰囲気の温度が800℃未満である場合、ケーシング242は、例えば煉瓦、ステンレス、インコネル、及びニッケルから選ばれる1つ以上で形成される。また、収容部21の雰囲気が大気雰囲気であって、雰囲気の温度が800℃以上である場合、ケーシング242は、例えば煉瓦、白金、白金ロジウム合金、及びセラミックスから選ばれる1つ以上で形成される。また、収容部21の雰囲気が不活性雰囲気であって、雰囲気の温度が800℃以上である場合、ケーシング242は、例えば煉瓦、モリブデン、タングステン、及びイリジウムから選ばれる1つ以上で形成される。
【0052】
なお、第1加熱体24は、電気抵抗発熱体241には限定されない。例えば、第1加熱体24は熱交換チューブを有し、熱交換チューブはその内部に加熱されたガスの流れる流路を形成してもよい。熱交換チューブは、固液混合層Bの内部に直接接触し、加熱されたガスの熱エネルギを熱伝達によって固液混合層Bに与える。
【0053】
また、第1加熱体24は、メルトをジュール加熱するための電極は含まない。第1加熱体24の位置に従来からある通電加熱用の電極を設置したとしても、メルトではなく固液混合層Bのため大量に通電することができないため、固液混合層Bを加熱することができない。更に、第1加熱体24の位置に従来のプラズマアークを発生させる電極を設置したとしても、電極周辺での電界集中に起因する種々の問題は解決できず、効果的に固液混合層Bを加熱できない。
【0054】
溶解装置2は第2加熱体25を有し、第2加熱体25は予定するメルト層Mの内部に相当する位置に設置され、メルト層Mの内部に直接接触し、熱伝達によって熱エネルギをメルト層Mに与える。第2加熱体25は、メルト層Mの上面よりも下に配置され、且つメルト層Mの下面よりも上に配置される。第2加熱体25は、予定するメルト層Mの内部に相当する位置に最初から設置されてもよいし、後からメルト層Mの内部に相当する位置に移動して設置されてもよい。
【0055】
第2加熱体25は、熱伝達によって熱エネルギをメルト層Mに与えるので、メルト層Mの電気抵抗率に依存せずにメルト層Mに熱エネルギを付与できる。メルト層Mの電気抵抗率はガラス組成で決まる。第2加熱体25は、ガラス組成に依存せずにメルト層Mに熱エネルギを付与できる。なお、一対の電極でメルト層Mに電流を流しメルト層Mそのものを発熱させる技術では、メルト層Mの電気抵抗率が変わると、一対の電極間の電位差が同じでも、メルト層Mの発熱量が変わってしまう。
【0056】
第2加熱体25は、メルト層Mを内部から加熱し、ひいては、メルト層Mと固液混合層Bの境界から固液混合層Bを加熱する。第2加熱体25の構造、数および配置は、第1加熱体24の構造、数および配置と同様である。
【0057】
例えば、第2加熱体25は棒状に形成される。その断面形状は、円形であるが、楕円形または矩形などでもよい。第2加熱体25は、例えば水平に配置される。水平方向に広がるメルト層Mの広い範囲を、1本の水平な棒状の第2加熱体25で加熱できる。また、メルト層Mの厚さが薄くて済む。
【0058】
第2加熱体25の本数は、1本でもよいが、複数本であってよい。第2加熱体25の本数が多いほど、個々の第2加熱体25の負荷を軽減でき、最大出力の小さい第2加熱体25を使用できる。
【0059】
複数本の第2加熱体25の出力は、個別に決められてよい。メルト層Mの温度分布を制御でき、メルト層Mの対流を制御できる。
【0060】
複数本の第2加熱体25は、例えばY軸方向に平行に配置され、X軸方向に間隔をおいて複数配置される。メルト層Mのより広い範囲を加熱できる。
【0061】
但し、複数本の第2加熱体25が、Z軸方向に異なる位置に配置されてもよい。Z軸方向に間隔をおいて複数本の第2加熱体25を配置すれば、メルト層Mの対流を制御しやすくなる。
【0062】
第2加熱体25は、特に限定されないが、例えば電気抵抗発熱体251を有する。電気抵抗発熱体251は、通電され、ジュール熱を発生する。従って、電源から電気抵抗発熱体251への供給電力を制御すれば、発熱量を制御できる。
【0063】
第2加熱体25はケーシング252をさらに有してよく、ケーシング252が電気抵抗発熱体251を内部に収容してよい。ケーシング252は、管状に形成され、内部に電気抵抗発熱体251を封入する。ケーシング252は、メルト層Mの内部に直接接触するので、メルト層Mに対して高い耐食性を有する材料で形成される。
【0064】
なお、第2加熱体25は、電気抵抗発熱体251には限定されない。例えば、第2加熱体25は熱交換チューブを有し、熱交換チューブはその内部に加熱されたガスの流れる流路を形成してもよい。熱交換チューブは、メルト層Mの内部に直接接触し、加熱されたガスの熱エネルギを熱伝達によってメルト層Mに与える。
【0065】
(メルトの製造方法)
図4は、一実施形態に係るメルトの製造方法を示すフローチャートである。メルトの製造方法は、バッチ原料の準備(S11)と、バッチ原料の供給(S12)と、熱エネルギの付与(S13)と、メルトの生成(S14)とを含む。
図4に示す処理は、定常状態で行われる。定常状態は、収容部21がメルト層Mと固液混合層Bとを収容した状態である。
【0066】
バッチ原料の準備(S11)では、投入部22にバッチ原料がセットされる。バッチ原料は、化学組成の異なる複数種類のガラス原料を含む。ガラス原料は、ガラスの組成に応じて決定される。バッチ原料は、粉体原料でもよいし、当該粉体原料を造粒した造粒原料でもよい。なお、バッチ原料の準備(S11)は、それ以降の工程と同一の者がする必要はなく、バッチ原料は、メルトを製造する者が別の者から購入したものでもよい。
【0067】
バッチ原料の供給(S12)では、投入部22が収容部21に対してバッチ原料を投入する。移動部23が投入部22を移動してよく、バッチ原料の投入位置を変え、メルト層Mの全体を上方から固液混合層Bで覆ってよい。なお、固液混合層Bは、メルト層Mの全体を覆わなくてもよい。
【0068】
熱エネルギの付与(S13)では、第1加熱体24から熱伝達によって固液混合層Bに熱エネルギを与える。熱エネルギの付与(S13)では、第2加熱体25から熱伝達によってメルト層Mに熱エネルギを与えてもよい。その熱エネルギは、メルト層Mと固液混合層Bの境界から固液混合層Bに伝達される。
【0069】
メルトの生成(S14)では、固液混合層Bに接する下層、つまりメルト層Mに、嵩密度が固液混合層Bよりも大きい液相のメルトを連続的に生成する。メルト層Mのメルトは、収容部21の出口213から排出され、成形装置3に搬送される。バッチ原料の単位時間当たりの投入量は、バッチ原料の単位時間当たりの投入量をガラス重量に換算すると、メルトの単位時間当たりの排出量と同程度である。
【0070】
なお、溶解装置2の立ち上げ時、つまり、収容部21の内部が空の時には、先ず、溶解装置2は収容部21の内部にプリメルトからなるプリメルト層を形成する。プリメルト層のガラス組成は、メルト層Mのガラス組成と同一でもよいし、異なってもよい。後者の場合であっても、
図4に示す処理と、メルトの排出とを繰り返せば、最終的に、収容部21の内部にメルト層Mが形成される。
【0071】
プリメルトの原料は、バッチ原料と同じものでもよいし、異なるものでもよい。また、プリメルトの原料は、複数種類のガラス原料とガラスカレットを混ぜたものでもよいし、ガラスカレットのみであってもよい。また、プリメルトの原料は、収容部21の内部に投入された後に、加熱され、溶解されてもよいし、溶解装置2とは別の装置で溶解された後に収容部21の内部に投入されてもよい。
【0072】
(第1変形例)
図5Aは、第1変形例に係る溶解装置を示す立面断面図である。
図5Bは、一実施形態に係る溶解装置を示す平面断面図であって、
図5AのVB-VB線に沿った平面断面図である。第1変形例に係るメルトの製造方法のフローチャートは、上記実施形態の
図4と同様であるので図示を省略する。以下、本変形例と上記実施形態との相違点について主に説明する。
【0073】
溶解装置2は、収容部21と、投入部22と、移動部23と、第1加熱体24と、第2加熱体25とを有する。本変形例の第1加熱体24と第2加熱体25とは、同一の鉛直線上に連続的に配置され、一体化される。1つの加熱体26が、第1加熱体24と第2加熱体25の両方の役割を果たす。
【0074】
加熱体26は、鉛直に配置されるので、水平に配置される場合とは異なり、重力によって撓み変形しない。加熱体26の温度が高いほど、加熱体26が軟化しやすいので、重力による撓み変形を抑制する効果が顕著に得られる。
【0075】
加熱体26は、鉛直な棒状である。鉛直な棒状の加熱体26の長さ、ひいては、その耐熱性は収容部21の内底面の面積の大小によって変わらないので、収容部21の内底面を大面積化でき、溶解装置2が1日に製造するメルトの製造量を増加できる。
【0076】
加熱体26は、鉛直な棒状であるが、固液混合層Bおよびメルト層Mとの接触面積を増大すべく、鉛直な板状であってもよい。鉛直な板状の加熱体26は、鉛直方向へのバッチ原料やメルトの流動を妨げない。
【0077】
加熱体26は、固液混合層Bの上面から上方に突き出してもよいが、
図5Aに示すように固液混合層Bの上面よりも下に配置されることが好ましい。固液混合層Bの上のガスを加熱体26によって加熱せずに済むので、無駄な熱エネルギの使用を防止できる。
【0078】
(第2変形例)
図6は、第2変形例に係る溶解装置を示す立面断面図である。第2変形例に係る溶解装置を示す平面断面図は、上記実施形態の
図3Bと同様であるので図示を省略する。また、第2変形例に係るメルトの製造方法のフローチャートは、上記実施形態の
図4と同様であるので図示を省略する。以下、本変形例と上記実施形態との相違点について主に説明する。
【0079】
溶解装置2は、収容部21と、投入部22と、移動部23と、第1加熱体24の他に、
図3Bに示す第2加熱体25の代わりに、一対の電極27を有する。一対の電極27に電圧を印加すると、メルト層Mに電流が流れ、メルト層Mそのものが発熱する。
【0080】
(第3変形例)
図7Aは、第3変形例に係る溶解装置を示す立面断面図であって、
図7BのVIIA-VIIA線に沿った立面断面図である。
図7Bは、第3変形例に係る溶解装置を示す平面断面図であって、
図7AのVIIB-VIIB線に沿った平面断面図である。第3変形例に係るメルトの製造方法のフローチャートは、上記実施形態の
図4と同様であるので図示を省略する。以下、本変形例と上記実施形態との相違点について主に説明する。
【0081】
溶解装置2は収容部21を有し、収容部21は左右一対の側壁211a、211bと前後一対の側壁211c、211dとを有する。左右方向はY軸方向であり、左側がY軸方向正側であり、右側がY軸方向負側である。また、前後方向はX軸方向であり、前側がX軸方向正側であり、後側がX軸方向負側である。
【0082】
左右一対の側壁211a、211bは、それぞれ、バーナー28が挿入される穴を有する。その穴は、前後方向に間隔をおいて複数配列される。バーナー28は、メルト層Mの上面のうち、固液混合層Bから露出した露出面の上方に、火炎を形成する。火炎の輻射熱は、主にメルト層Mの露出面を加熱する。メルト層Mは固液混合層Bに比べて高い熱拡散率を有するので、火炎の輻射熱はメルト層Mの内部まで伝達されやすい。
【0083】
前後一対の側壁211c、211dのうち、前側の側壁211cには、メルトの出口213が形成される。なお、出口213は、底壁212に形成されてもよく、その場合、前側の側壁211cの付近に形成されてよい。一方、後側の側壁211dにはバッチ原料の投入口214が形成されてもよいが、本変形例の投入口214は後述する左右一対のサブ側壁211e、211fのそれぞれに形成される。
【0084】
収容部21は、左右一対のサブ側壁211e、211fと、2組の前後一対のサブ側壁211g、211hとを有する。左右一対のサブ側壁211e、211fは、左右一対の側壁211a、211bの外側に配置される。左側のサブ側壁211eと、一組の前後一対のサブ側壁211g、211hとは、平面視U字状に配置される。同様に、右側のサブ側壁211fと、残り一組の前後一対のサブ側壁211g、211hとは、平面視U字状に配置される。後側のサブ側壁211hと、後側の側壁211dとは、同一面に配置される。バッチ原料は、平面視で
図7Bに矢印で示すように、左右一対のサブ側壁211e、211fから投入され、続いて変性しながら、前後一対のサブ側壁211g、211hの間を左右方向内側に流動し、左右一対の側壁211a、211bの間を前側に向けて流動する。
【0085】
固液混合層Bは主に前後一対のサブ側壁211g、211hの間に形成されるので、前後一対のサブ側壁211g、211hの一方から他方まで水平に第1加熱体24が架け渡される。前後一対のサブ側壁211g、211hの間隔W1は、左右一対の側壁211a、211bの間隔W2に比べて狭い。水平な棒状の第1加熱体24を比較的狭い間隔の前後一対のサブ側壁211g、211hの間に架け渡すので、第1加熱体24の長さを短くでき、第1加熱体24の熱変形を抑制できる。
【0086】
第1加熱体24は、固液混合層Bの内部に直接接触し、熱伝達によって熱エネルギを固液混合層Bに与える。固液混合層Bを効率的に加熱できるので、メルト層Mの上面のうち、固液混合層Bで覆われた被覆面の面積を減少でき、露出面の面積を増加できる。メルト層Mはその露出面で火炎の輻射熱を受けるので、メルト層Mを効率液に加熱できる。1日に製造するメルトの製造量が高い場合、つまり、バッチ原料の投入頻度が高い場合であっても、メルト層Mの露出面の面積を確保でき、メルト層Mを効率的に加熱できる。
【0087】
火炎の輻射熱は、上記の通り、主にメルト層Mの露出面を加熱する。但し、火炎の輻射熱の一部は、固液混合層Bを斜め上から加熱する。一方、第1加熱体24は、固液混合層Bを内部から加熱する。第1加熱体24は、水平な棒状であるので、水平に広がる固液混合層Bを均等に加熱でき、固液混合層Bの加熱ムラを低減できる。その結果、メルティングセグリゲーションと呼ばれる、低温で溶融する成分と高温で溶融する成分との分離を抑制でき、ガラスの不均質化を抑制できる。
【0088】
なお、本変形例の溶解装置2は、上記実施形態の第2加熱体25と、上記第2変形例の一対の電極27とを有しないが、これら25、27のうちの少なくとも1つを有してもよい。これら25、27のうちの少なくとも1つで、メルト層Mを加熱できる。特に、メルト層Mのうちの、固液混合層Bの真下の部分を加熱することが有効である。固液混合層の真下の部分は、バーナー28の火炎の輻射熱によって加熱し難いからである。
【0089】
(第4変形例)
図8は、第4変形例に係る溶解装置を示す立面断面図である。第4変形例に係る溶解装置を示す平面断面図は、第3変形例の
図7Bと同様であるので、図示を省略する。また、第4変形例に係るメルトの製造方法のフローチャートは、上記実施形態の
図4と同様であるので図示を省略する。以下、本変形例と上記実施形態および上記第3変形例との相違点について主に説明する。
【0090】
本変形例の溶解装置2は、上記第1変形例と同様に、第1加熱体24と、第2加熱体25とを有する。本変形例の第1加熱体24と第2加熱体25とは、同一の鉛直線上に連続的に配置され、一体化される。1つの加熱体26が、第1加熱体24と第2加熱体25の両方の役割を果たす。従って、メルト層Mのうちの、固液混合層Bの真下の部分を加熱できる。
【0091】
以上、本開示に係るメルトの製造方法、ガラス物品の製造方法、溶解装置、及びガラス物品の製造装置について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【0092】
本出願は、2019年5月8日に日本国特許庁に出願された特願2019-088465号に基づく優先権を主張するものであり、特願2019-088465号の全内容を本出願に援用する。
【符号の説明】
【0093】
1 ガラス物品の製造装置
2 溶解装置
21 収容部
22 投入部
23 移動部
24 第1加熱体
25 第2加熱体
3 成形装置
4 徐冷装置
5 加工装置
M メルト層
B 固液混合層