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  • 特許-空中像表示装置および空中像表示方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】空中像表示装置および空中像表示方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/56 20200101AFI20231130BHJP
   A63J 5/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G02B30/56
A63J5/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022516526
(86)(22)【出願日】2020-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2020017232
(87)【国際公開番号】W WO2021214881
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】巻口 誉宗
(72)【発明者】
【氏名】高田 英明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-170298(JP,A)
【文献】国際公開第2018/169018(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0220126(US,A1)
【文献】特開2018-040882(JP,A)
【文献】特開2018-032914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/00-30/60
G03B 21/00
G09F 9/00
H04N 13/00-13/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観客とステージとの間に光学素子を設置し、ステージ上の奥行き方向に空中像を多層投影する空中像表示装置であって、
表示面を地面方向に向けて設置された第1表示部と、
地面に対して傾けて設置され、前記第1表示部から出射する光の一部を透過し、一部を反射する第1光学素子と、
表示面を地面に対して垂直に設置された第2表示部と、
地面に対して垂直に設置され、前記第2表示部から出射する光の一部を透過し、一部を反射する第2光学素子を備え
前記第1光学素子は、前記第1表示部との間の位置関係に応じたステージ上の手前側に第1空中像を投影し、
前記第2光学素子は、前記第2表示部との間の位置関係に応じたステージ上の奥側に第2空中像を投影し、
前記第2光学素子は、前記第1光学素子と地面の同じ位置または前記第1光学素子よりも観客に近い位置に設置される
空中像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空中像表示装置であって、
視点位置は、前記第2表示部から出射する光が前記第2光学素子によって全反射しない高さ方向の位置に設置される
空中像表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の空中像表示装置であって、
前記視点位置は、前記第2表示部よりも上方に配置され、前記第2表示部が前記視点位置の下方に配置される
空中像表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の空中像表示装置であって、
前記第2光学素子と当該第2光学素子によって作られる虚像との間に設置された第1実物体と、
前記第2光学素子と前記第2表示部との間に設置され、前記第1実物体と同じ形状の第2実物体を備える
空中像表示装置。
【請求項5】
観客とステージとの間に光学素子を設置し、ステージ上の奥行き方向に空中像を多層投影する空中像表示装置による空中像表示方法であって、
表示面を地面方向に向けて設置された第1表示部において第1映像を表示し、
地面に対して傾けて設置され、入射する光の一部を透過し、一部を反射する第1光学素子に前記第1映像の光を入射し、
前記第1映像は、前記第1光学素子と前記第1表示部との間の位置関係に応じたステージ上の手前側に第1空中像として投影され、
表示面を地面に対して垂直に設置された第2表示部において第2映像を表示し、
地面に対して垂直に設置され、入射する光の一部を透過し、一部を反射する第2光学素子に前記第2映像の光を入射し、
前記第2映像は、前記第2光学素子と前記第2表示部との間の位置関係に応じたステージ上の奥側に第2空中像として投影され、
前記第2光学素子は、前記第1光学素子と地面の同じ位置または前記第1光学素子よりも観客に近い位置に設置される
空中像表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中像表示装置および空中像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置に表示された被写体の虚像を空中像として空間に投影する空中像投影装置が知られている。非特許文献1には、奥行き方向にハーフミラーを複数設置し、空中像を多層に投影する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】巻口誉宗、新島有信、高田英明、松井龍也、籔本康之、横山正典、“スマートフォンで利用可能な小型多層空中像投影装置の提案”、インタラクション2016論文集、一般社団法人情報処理学会、2016年2月24日、pp. 150-157
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のハーフミラーを設置し、空中像を多層に投影する技術をスポーツ観戦に応用することを考える。例えば、上記技術をバドミントン観戦に応用し、バドミントンのコート上において、手前のコートの選手と奥側のコートの選手のそれぞれを別々の空中像で表示する。これにより、コート上で行われるバドミントンの試合を観戦しているかのような体験を実現できる。
【0005】
しかしながら、奥側の空中像を投影するハーフミラーはステージ(コート)上に設置する必要があり、ステージ上への実物体および演者の配置、並びにライティングといったステージ演出が制限されるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ステージ上の演出に干渉しない多層の空中像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の空中像表示装置は、観客とステージとの間に光学素子を設置し、ステージ上の奥行き方向に空中像を多層投影する空中像表示装置であって、表示面を地面方向に向けて設置された第1表示部と、地面に対して傾けて設置され、前記第1表示部から出射する光の一部を透過し、一部を反射する第1光学素子と、表示面を地面に対して垂直に設置された第2表示部と、地面に対して垂直に設置され、前記第2表示部から出射する光の一部を透過し、一部を反射する第2光学素子を備え、前記第1光学素子は、前記第1表示部との間の位置関係に応じたステージ上の手前側に第1空中像を投影し、前記第2光学素子は、前記第2表示部との間の位置関係に応じたステージ上の奥側に第2空中像を投影し、前記第2光学素子は、前記第1光学素子と地面の同じ位置または前記第1光学素子よりも観客に近い位置に設置される
【0008】
本発明の一態様の空中像表示方法は、観客とステージとの間に光学素子を設置し、ステージ上の奥行き方向に空中像を多層投影する空中像表示装置による空中像表示方法であって、表示面を地面方向に向けて設置された第1表示部において第1映像を表示し、地面に対して傾けて設置され、入射する光の一部を透過し、一部を反射する第1光学素子に前記第1映像の光を入射し、前記第1映像は、前記第1光学素子と前記第1表示部との間の位置関係に応じたステージ上の手前側に第1空中像として投影され、表示面を地面に対して垂直に設置された第2表示部において第2映像を表示し、地面に対して垂直に設置され、入射する光の一部を透過し、一部を反射する第2光学素子に前記第2映像の光を入射し、前記第2映像は、前記第2光学素子と前記第2表示部との間の位置関係に応じたステージ上の奥側に第2空中像として投影され、前記第2光学素子は、前記第1光学素子と地面の同じ位置または前記第1光学素子よりも観客に近い位置に設置される
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ステージ上の演出に干渉しない多層の空中像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の空中像表示装置の概略の構成例を示す図である。
図2】比較例の空中像表示装置の概略の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本実施形態の空中像表示装置]
以下、本実施形態の空中像表示装置について図面を用いて説明する。
【0012】
図1を参照し、本実施形態の空中像表示装置について説明する。同図に示す空中像表示装置は、ステージ30上の、観客100から見て手前と奥側に空中像を多層投影する表示装置である。ステージ30は、例えば、屋内のバドミントン競技会場の実物のコートであり、図上で左右方向のコートのラインの長さは13.4mである。ステージ30の中央に実物のネット31を設置する。観客100は、空中像表示装置により投影されたネット31の手前のコートの虚像B1およびネット31の奥側のコートの虚像B2を空中像として知覚する。他会場で行われているバドミントンの試合の選手を撮影した映像を実物のコート上に空中像として投影することで、観客100は、バドミントンの試合を観戦できる。
【0013】
図1に示す空中像表示装置は、第1表示部11、第2表示部12、第1光学素子21、および第2光学素子22を備える。
【0014】
第1表示部11は、観客席とステージ30の間の、地面(ステージ30の上面と同一平面)から高さHの位置に、表示面が地面と平行になるように、表示面を下方向(第1光学素子21方向)に向けて設置される。第1表示部11は、例えば、LEDディスプレイ、有機ELディスプレイなどの表示装置を用いることができる。第1表示部11の表示面には、表示像A1が表示される。表示像A1は、例えば、手前のコートの選手の映像である。
【0015】
第1光学素子21は、第1表示部11の下方の位置において、地面に対して傾けて設置されて、第1表示部11の出射する光を入射する。図1の例では、第1表示部11の下端に対応する位置において、第1光学素子21の一辺を地面に接触させて、地面に対して45度傾けて第1光学素子21を設置した。以下、第1光学素子21を地面に接触させた点を基点Pとする。第1光学素子21は、長方形または正方形の板状の光学素子であり、入射した光の一部を反射し、一部を透過する。第1光学素子21は、例えば、ハーフミラーを用いることができる。
【0016】
第2表示部12は、基点P(第2光学素子22の設置位置)から観客席側に距離W離れた位置に、表示面が地面に対して垂直となるように、表示面をステージ30側に向けて設置される。図1の例では、第2表示部12を観客席の下に設置しているが、これに限定するものではない。第2表示部12は、例えば、LEDディスプレイ、有機ELディスプレイなどの表示装置を用いることができる。第2表示部12の表示面には、表示像A2が表示される。表示像A2は、例えば、奥側のコートの選手の映像である。
【0017】
第2光学素子22は、第2表示部12とステージ30の間において、地面に立てて設置されて、第2表示部12の出射する光を入射する。図1の例では、基点Pの位置に、第2光学素子22の一辺を地面に接触させて、地面に対して垂直になるように第2光学素子22を設置した。つまり、第2光学素子22は、第2表示部12から距離W離れた位置に、表示面と平行になるように設置されている。第2光学素子22は、長方形または正方形の板状の光学素子であり、入射した光の一部を反射し、一部を透過する。第2光学素子22は、例えば、ハーフミラーを用いることができる。
【0018】
全反射を防ぐため、第2表示部12から第2光学素子22へ入射する光の入射角が、sinθ=n(nは第2光学素子22の屈折率)となる角度θ以下になるように第2表示部12と第2光学素子22の設置位置を調整する。
【0019】
次に、図1の空中像表示装置によって投影される空中像について説明する。
【0020】
まず、第1表示部11と第1光学素子21によって作られる虚像B1について説明する。第1表示部11が表示像A1を表示すると、表示像A1の光は第1光学素子21に向かう。第1光学素子21は、表示像A1の光の一部を反射し、観客100の方向へ向かう光を出射する。基点Pから第1表示部11までの高さHと同じ距離D離れた位置に虚像B1が投影される。図1の例では、ネット31の手前のコートに虚像B1が投影されるように、第1表示部11を設置する高さHを調整した。なお、図1の例では、第2光学素子22の上辺と同じ位置に第1表示部11を設置しているが、第1表示部11を設置する高さHは、虚像B1を投影したい位置に応じて、任意に決めることができる。
【0021】
続いて、第2表示部12と第2光学素子22によって作られる虚像B2について説明する。第2表示部12が表示像A2を表示すると、表示像A2の光は第2光学素子22に向かう。第2光学素子22は、表示像A2の光の一部を反射し、観客100の方向へ向かう光を出射する。基点Pから第2表示部12までの距離Wと同じ距離D離れた位置に虚像B2が投影される。図1の例では、ネット31の奥側のコートに虚像B2が投影されるように、第2表示部12と第2光学素子22の間の距離Wを調整した。なお、図1の例では、第1光学素子21と第2光学素子22とを同じ基点Pに設置しているが、これに限定するものではない。第1光学素子21よりも観客席に近い地点に第2光学素子22を設置してもよい。
【0022】
図1の例では、第2表示部12と第2光学素子22の間にステージ30上のネット31と同じ形状のネット32が設置されている。第2光学素子22からネット31およびネット32までの距離は同じにする。ネット32は、第2表示部12からの光の一部を遮り、虚像B2の一部がネット31に遮られているように投影される。これにより、空中像のネット31によるオクルージョンを再現できる。
【0023】
次に、図1の空中像表示装置の視域上限について説明する。
【0024】
図1に示す視域上限Vは、第2光学素子22から虚像B2までの距離D、第2光学素子22から観客100までの距離D、第2光学素子22の高さH、および第2表示部12の高さhを用いて次式により定められる。
【0025】
【数1】
【0026】
視域上限V+hよりも低い位置であれば、縦方向に観客100を配置することが可能となる。つまり、本空中像表示装置は、競技場および映画館などの階段状に観客席が設置された視聴環境に適用可能である。
【0027】
なお、ここでは、バドミントン競技会場を例に説明したが、全反射の条件と視域上限を満たし、第1表示部11、第2表示部12、第1光学素子21、および第2光学素子22の設置が可能であれば、他の競技種目、劇場などのステージ演出にも適用可能である。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の空中像表示装置は、表示面を地面方向に向けて設置された第1表示部11と、地面に対して傾けて設置され、第1表示部11の表示する表示像A1の光の一部を透過し、一部を反射する第1光学素子21と、表示面を地面に対して垂直に設置された第2表示部12と、地面に対して垂直に設置され、第2表示部12の表示する表示像A2の光の一部を透過し、一部を反射する第2光学素子22を備える。これにより、ステージ30上に第2光学素子22を設置することなく、多層の虚像B1,B2を作り出すことができる。
【0029】
[比較例の空中像表示装置]
図2を参照し、比較例の空中像表示装置について説明する。同図に示す空中像表示装置は、ハーフミラー61,62を平行に複数設置し、ステージ30上に空中像を多層投影する表示装置である。観客は、空中像表示装置の図上で左方向に位置する。
【0030】
表示装置51は、表示面が地面と平行になるように、表示面を下方向に向けて設置される。ハーフミラー61は、表示装置51の下方の位置に、地面に対して45度傾けて設置され、表示装置51の出射する光を入射する。表示装置51が表示像A1を表示すると、表示像A1の光はハーフミラー61に向かう。ハーフミラー61は、表示像A1の光の一部を反射する。地面から表示装置51までの高さHと同じ距離D離れた位置に虚像B1が作られる。観客は、ステージ30上の虚像B1を空中像として知覚する。
【0031】
表示装置52は、表示装置51の奥側に、表示面が地面と平行になるように、表示面を下方向に向けて設置される。ハーフミラー62は、表示装置52の下方の位置に、地面に対して45度傾けて設置され、表示装置52の出射する光を入射する。表示装置52が表示像A2を表示すると、表示像A2の光はハーフミラー62に向かう。ハーフミラー62は、表示像A2の光の一部を反射する。地面から表示装置51までの高さHと同じ距離D離れた位置に虚像B2が作られる。観客は、ステージ30上の虚像B2を空中像として知覚する。
【0032】
比較例の空中像表示装置でも多層の空中像を表示できるが、奥側の空中像を表示するためのハーフミラー62をステージ30上に設置する必要がある。そのため、ステージ30上への実体物や演者の配置が制限されてしまう。
【0033】
また、比較例の空中像表示装置は、水平方向の位置から観察することを前提にしているため、縦方向に観客を配置した構成には向いていない。
【符号の説明】
【0034】
11…第1表示部
12…第2表示部
21…第1光学素子
22…第2光学素子
30…ステージ
31,32…ネット
図1
図2