(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】光受信器、及び光受信方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/64 20130101AFI20231130BHJP
【FI】
H04B10/64
(21)【出願番号】P 2022528381
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2020022360
(87)【国際公開番号】W WO2021245921
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正満
(72)【発明者】
【氏名】可児 淳一
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-028470(JP,A)
【文献】特開2017-050660(JP,A)
【文献】Christoph Kottke et al.,Coherent SCM-WDM-PON System using OFDM or Single Carrier with SSB Modulation and Wavelength Reuse,39th European Conference and Exhibition on Optical Communication (ECOC 2013) [online],2013年10月28日,Retrieved from the Internet:<URL:https://ieeexplore.ieee.org/document/6647656>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00 - 10/90
H04J 14/00 - 14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光送信器から送信された複数の光信号が多重化されたサブキャリア多重信号をヘテロダイン検波により中間周波数帯の電気信号に変換するヘテロダイン検波部と、
中間周波数帯に変換された前記電気信号から搬送波成分を除いたサブキャリア成分を抽出するフィルタ部と、
前記フィルタ部で抽出された前記サブキャリア成分の信号をアナログデジタル変換するアナログデジタル変換部と、
前記アナログデジタル変換部により変換されたデジタル信号を用いて、サブキャリア毎にデジタル信号処理を行うデジタル信号処理部と、
を備え
、
前記複数の光送信器が、強度変調を行う強度変調器を備える光送信器であって、かつ、両測波帯の光信号を送信する光送信器である場合、
前記フィルタ部は、ローパスフィルタを備え、前記複数の光送信器が用いた搬送波の周波数位置が、基準となる周波数以上の位置である場合に、前記ローパスフィルタにおいて前記光信号の上測波帯成分を抽出し、前記複数の光送信器が用いた搬送波の周波数位置が、基準となる周波数未満の位置である場合に、前記ローパスフィルタにおいて前記光信号の下側波帯成分を抽出し、
前記複数の光送信器が、強度変調を行う強度変調器を備える光送信器であって、かつ、片側波帯の光信号を送信する光送信器である場合、
前記フィルタ部は、ローパスフィルタを備え、前記複数の光送信器が用いた搬送波の周波数位置が、基準となる周波数以上の位置である場合に、前記ローパスフィルタにおいて上側波帯成分のみを有する前記片側波帯の光信号の前記上側波帯成分を抽出し、前記複数の光送信器が用いた搬送波の周波数位置が、基準となる周波数未満の位置である場合に、前記ローパスフィルタにおいて下側波帯成分のみを有する前記片側波帯の光信号の前記下側波帯成分を抽出する、
光受信器。
【請求項2】
前記フィルタ部は、前記複数の光送信器が用いた搬送波の周波数位置に応じて、抽出する前記サブキャリア成分の範囲が定められる、
請求項1に記載の光受信器。
【請求項3】
複数の光送信器から送信された複数の光信号が多重化されたサブキャリア多重信号をヘテロダイン検波により中間周波数帯の電気信号に変換するヘテロダイン検波部と、
中間周波数帯に変換された前記電気信号から搬送波成分を除いたサブキャリア成分を抽出するフィルタ部と、
前記フィルタ部で抽出された前記サブキャリア成分の信号をアナログデジタル変換するアナログデジタル変換部と、
前記アナログデジタル変換部により変換されたデジタル信号を用いて、サブキャリア毎にデジタル信号処理を行うデジタル信号処理部と、
を備え
、
前記複数の光送信器が、IQ変調器を備える光送信器であって、かつ、両測波帯の光信号を送信する光送信器である場合、
前記フィルタ部は、ローパスフィルタを備え、前記複数の光送信器が用いた搬送波の周波数位置が、基準となる周波数以上の位置である場合に、前記ローパスフィルタにおいて前記光信号の上測波帯成分を抽出し、前記複数の光送信器が用いた搬送波の周波数位置が、基準となる周波数未満の位置である場合に、前記ローパスフィルタにおいて前記光信号の下側波帯成分を抽出し、
前記複数の光送信器が、IQ変調器を備える光送信器であって、かつ、片側波帯の光信号を送信する光送信器である場合、
前記フィルタ部は、ローパスフィルタを備え、前記複数の光送信器が用いた搬送波の周波数位置が、基準となる周波数以上の位置である場合に、前記ローパスフィルタにおいて上側波帯成分のみを有する前記片側波帯の光信号の前記上側波帯成分を抽出し、前記複数の光送信器が用いた搬送波の周波数位置が、基準となる周波数未満の位置である場合に、前記ローパスフィルタにおいて下側波帯成分のみを有する前記片側波帯の光信号の前記下側波帯成分を抽出する、
光受信器。
【請求項4】
複数の光送信器から送信された複数の光信号が多重化されたサブキャリア多重信号をヘテロダイン検波により中間周波数帯の電気信号に変換し、
中間周波数帯に変換された前記電気信号から搬送波成分を除いたサブキャリア成分を抽出し、
抽出された前記サブキャリア成分の信号をアナログデジタル変換し、
前記アナログデジタル変換により変換されたデジタル信号を用いて、サブキャリア毎にデジタル信号処理を行
い、
前記複数の光送信器が、強度変調を行う強度変調器を備える光送信器であって、かつ、両測波帯の光信号を送信する光送信器である場合、
前記複数の光送信器が用いた搬送波の周波数位置が、基準となる周波数以上の位置である場合に、ローパスフィルタにおいて前記光信号の上測波帯成分を抽出し、前記複数の光送信器が用いた搬送波の周波数位置が、基準となる周波数未満の位置である場合に、ローパスフィルタにおいて前記光信号の下側波帯成分を抽出し、
前記複数の光送信器が、強度変調を行う強度変調器を備える光送信器であって、かつ、片側波帯の光信号を送信する光送信器である場合、
前記複数の光送信器が用いた搬送波の周波数位置が、基準となる周波数以上の位置である場合に、ローパスフィルタにおいて上側波帯成分のみを有する前記片側波帯の光信号の前記上側波帯成分を抽出し、前記複数の光送信器が用いた搬送波の周波数位置が、基準となる周波数未満の位置である場合に、ローパスフィルタにおいて下側波帯成分のみを有する前記片側波帯の光信号の前記下側波帯成分を抽出する、
光受信方法。
【請求項5】
複数の光送信器から送信された複数の光信号が多重化されたサブキャリア多重信号をヘテロダイン検波により中間周波数帯の電気信号に変換し、
中間周波数帯に変換された前記電気信号から搬送波成分を除いたサブキャリア成分を抽出し、
抽出された前記サブキャリア成分の信号をアナログデジタル変換し、
前記アナログデジタル変換により変換されたデジタル信号を用いて、サブキャリア毎にデジタル信号処理を行
い、
前記複数の光送信器が、IQ変調器を備える光送信器であって、かつ、両測波帯の光信号を送信する光送信器である場合、
前記複数の光送信器が用いた搬送波の周波数位置が、基準となる周波数以上の位置である場合に、ローパスフィルタにおいて前記光信号の上測波帯成分を抽出し、前記複数の光送信器が用いた搬送波の周波数位置が、基準となる周波数未満の位置である場合に、ローパスフィルタにおいて前記光信号の下側波帯成分を抽出し、
前記複数の光送信器が、IQ変調器を備える光送信器であって、かつ、片側波帯の光信号を送信する光送信器である場合、
前記複数の光送信器が用いた搬送波の周波数位置が、基準となる周波数以上の位置である場合に、ローパスフィルタにおいて上側波帯成分のみを有する前記片側波帯の光信号の前記上側波帯成分を抽出し、前記複数の光送信器が用いた搬送波の周波数位置が、基準となる周波数未満の位置である場合に、ローパスフィルタにおいて下側波帯成分のみを有する前記片側波帯の光信号の前記下側波帯成分を抽出する、
光受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光受信器、及び光受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光サブキャリア多重信号の伝送では、光送信器に光IQ変調器を用いた搬送波抑圧型の光サブキャリア多重信号を利用している。この場合、光受信器では、光イントラダイン検波を用いることで光サブキャリア多重信号を復調する。これにより、光イントラダイン検波時において干渉雑音による信号性能劣化の影響を低減している。
【0003】
図16は、従来の光送信器100の機能構成を表すブロック図である。光送信器100は、搬送波抑圧型の光サブキャリア多重信号を生成するための送信器である。光送信器100は、シリアルパラレル変換部101、シンボルマッパ102-1~102-n(nは2以上の整数)、周波数シフト部103-1~103-n、加算器104、D/A(Digital-to-Analog)変換器105-1~105-2、レーザ106、光IQ変調器107を備える。
【0004】
シリアルパラレル変換部101は、外部から入力されたデータ信号を2N列に並列化する。例えば、シリアルパラレル変換部101は、データ信号をシンボルマッパ102-1~102-nの台数分並列化する。Nは1以上の整数である。
【0005】
シンボルマッパ102-1~102-nは、並列化されたデータ信号を変調方式に応じてマッピングする。マッピングされたデータ信号は、周波数シフト部103-1~103-nに入力される。
周波数シフト部103-1~103-nは、入力されたデータ信号を、周波数軸上で重ならないように移動する。
【0006】
加算器104は、周波数シフト部103-1~103-nそれぞれから出力されたデータ信号を加算することによって周波数多重信号を生成する。
D/A変換器105-1~105-2は、周波数多重信号をデジタルアナログ変換する。例えば、D/A変換器105-1は、周波数多重信号の実部(I成分)をデジタルアナログ変換する。例えば、D/A変換器105-2は、周波数多重信号の虚部(Q成分)をデジタルアナログ変換する。これにより、電気段でI成分とQ成分に分かれたサブキャリア多重信号が生成される。
【0007】
レーザ106は、周波数f0の光信号を光IQ変調器107に出力する。
光IQ変調器107は、レーザ106の出力光を、I成分とQ成分に分かれたサブキャリア多重信号で光変調することによって変調信号を生成する。光IQ変調器107は、生成した変調信号を、光ファイバを介して光受信器に送信する。
【0008】
2N列の並列データは、例えば
図16に示すように、♯1,・・・,♯N-1,♯N,♯N+1,♯N+2,・・・,♯2Nで番号付けされる周波数位置にある光サブキャリアに重畳される。ただし、光送信器100は、
図16(A)のように、全ての光サブキャリアを利用する訳ではない。シリアルパラレル変換は利用する光サブキャリアに応じて行われる。例えば、
図16(B)では、♯N-1の光サブキャリアのみが利用されている例を示している。
【0009】
図17は、従来の光受信器200の機能構成を表すブロック図である。光受信器200は、一般的な光イントラダイン検波によるデジタルコヒーレント受信器の構成を備える。光受信器200は、PBS(Polarization Beam Splitter)201、局部発振光源202、PBS203、光90度ハイブリッド検波器204-1~204-2、A/D(Analog-to-Digital)変換器205-1~205-2、A/D変換器206-1~206-2及びデジタル信号処理部207を備える。
【0010】
PBS201は、偏波スプリッタである。PBS201は、光送信器100から送信された変調信号を入力する。PBS201は、入力した変調信号を、水平偏波の光信号及び垂直偏波の光信号に分離する。PBS201は、水平偏波の光信号を光90度ハイブリッド検波器204-1に出力し、垂直偏波の光信号を光90度ハイブリッド検波器204-2に出力する。
【0011】
局部発振光源202は、局発光を出力する。
PBS203は、偏波スプリッタである。PBS203は、局部発振光源202から出力された局発光を入力する。PBS203は、入力した局発光を、水平偏波の光信号及び垂直偏波の光信号に分離する。PBS203は、水平偏波の光信号を光90度ハイブリッド検波器204-1に出力し、垂直偏波の光信号を光90度ハイブリッド検波器204-2に出力する。
【0012】
光90度ハイブリッド検波器204-1は、水平偏波の光信号を入力して処理する。光90度ハイブリッド検波器204-1は、スプリッタ208-1~208-2、π/2遅延器209、カプラ210-1~210-2及びバランスド受信器211-1~211-2を備える。
【0013】
スプリッタ208-1は、PBS201から出力される水平偏波の光信号を入力する。スプリッタ208-1は、入力した水平偏波の光信号を分岐してカプラ210-1及び210-2に出力する。スプリッタ208-2は、PBS203から出力される水平偏波の光信号を入力する。スプリッタ208-2は、入力した水平偏波の光信号を分岐してカプラ210-1と、π/2遅延器209に出力する。
【0014】
π/2遅延器209は、スプリッタ208-2が出力した水平偏波の光信号をπ/2分遅延させてカプラ210-2に出力する。
カプラ210-1は、スプリッタ208-1が出力した水平偏波の光信号と、スプリッタ208-2が出力した水平偏波の光信号とを合波して干渉させることにより干渉光を生成する。カプラ210-1は、生成した干渉光を2つの干渉光に分岐してバランスド受信器211-1に出力する。
【0015】
カプラ210-2は、スプリッタ208-1が出力した水平偏波の光信号と、π/2遅延器209が出力したπ/2分遅延した水平偏波の光信号とを合波して干渉させることにより干渉光を生成する。カプラ210-2は、生成した干渉光を2つの干渉光に分岐してバランスド受信器211-2に出力する。
【0016】
バランスド受信器211-1は、カプラ210-1が出力した2つの干渉光を電気信号に変換する。バランスド受信器211-1は、変換した電気信号の差分を同相成分、すなわちI成分として検出してA/D変換器205-1に出力する。
バランスド受信器211-2は、カプラ210-2が出力した2つの干渉光を電気信号に変換する。バランスド受信器211-2は、変換した電気信号の差分を直交成分、すなわちQ成分として検出してA/D変換器205-2に出力する。
【0017】
A/D変換器205-1は、I成分のアナログ電気信号をサンプリングしてデジタルのサンプリング信号としてデジタル信号処理部207に出力する。
A/D変換器205-2は、Q成分のアナログ電気信号をサンプリングしてデジタルのサンプリング信号としてデジタル信号処理部207に出力する。
【0018】
光90度ハイブリッド検波器204-2は、垂直偏波の光信号を入力して処理する。光90度ハイブリッド検波器204-2は、スプリッタ212-1~212-2、π/2遅延器213、カプラ214-1~214-2及びバランスド受信器215-1~215-2を備える。
【0019】
スプリッタ212-1は、PBS201から出力される垂直偏波の光信号を入力する。スプリッタ212-1は、入力した垂直偏波の光信号を分岐してカプラ214-1及び214-2に出力する。スプリッタ212-2は、PBS203から出力される垂直偏波の光信号を入力する。スプリッタ212-2は、入力した垂直偏波の光信号を分岐してカプラ214-1と、π/2遅延器213に出力する。
【0020】
π/2遅延器213は、スプリッタ212-2が出力した垂直偏波の光信号をπ/2分遅延させてカプラ214-2に出力する。
カプラ214-1は、スプリッタ212-1が出力した垂直偏波の光信号と、スプリッタ212-2が出力した垂直偏波の光信号とを合波して干渉させることにより干渉光を生成する。カプラ214-1は、生成した干渉光を2つの干渉光に分岐してバランスド受信器215-1に出力する。
【0021】
カプラ214-2は、スプリッタ212-1が出力した垂直偏波の光信号と、π/2遅延器213が出力したπ/2分遅延した垂直偏波の光信号とを合波して干渉させることにより干渉光を生成する。カプラ214-2は、生成した干渉光を2つの干渉光に分岐してバランスド受信器215-2に出力する。
【0022】
バランスド受信器215-1は、カプラ214-1が出力した2つの干渉光を電気信号に変換する。バランスド受信器215-1は、変換した電気信号の差分を同相成分、すなわちI成分として検出してA/D変換器206-1に出力する。
バランスド受信器215-2は、カプラ214-2が出力した2つの干渉光を電気信号に変換する。バランスド受信器215-2は、変換した電気信号の差分を直交成分、すなわちQ成分として検出してA/D変換器206-2に出力する。
【0023】
A/D変換器206-1は、I成分のアナログ電気信号をサンプリングしてデジタルのサンプリング信号としてデジタル信号処理部207に出力する。
A/D変換器206-2は、Q成分のアナログ電気信号をサンプリングしてデジタルのサンプリング信号としてデジタル信号処理部207に出力する。
【0024】
デジタル信号処理部207は、A/D変換器205-1~205-4それぞれから出力されたデジタルのサンプリング信号を入力する。デジタル信号処理部207は、入力したサンプリング信号を復調する。
光受信器200が行う処理は、デジタルコヒーレント伝送で用いられる一般的なイントラダイン受信器と同様である。
【0025】
上記のように、従来では、光サブキャリア多重信号の伝送において、光IQ変調器を用いて光サブキャリア変調を行うことによって、
図16に示されるように搬送波を抑圧し、光受信時の干渉雑音の影響を低減することができる(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0026】
【文献】Junwen Zhang, Zhensheng Jia, Haipeng Zhang, Mu Xu, Jingjie Zhu, and Luis Alberto Campos, “Rate-flexible Single-wavelength TDFM 100G Coherent PON based on Digital Subcarrier Multiplexing Technology”, OFC2020, W1E.5, 2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
しかしながら、従来技術で用いる光イントラダイン検波器は構成が複雑であり、アクセス系で使用するには高価であるという問題があった。
【0028】
上記事情に鑑み、本発明は、コヒーレント検波による光受信を行った際の干渉雑音による信号性能の劣化を低コストで行うことができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の一態様は、複数の光送信器から送信された複数の光信号が多重化されたサブキャリア多重信号をヘテロダイン検波により中間周波数帯の電気信号に変換するヘテロダイン検波部と、中間周波数帯に変換された前記電気信号から搬送波成分を除いたサブキャリア成分を抽出するフィルタ部と、前記フィルタ部で抽出された前記サブキャリア成分の信号をアナログデジタル変換するアナログデジタル変換部と、前記アナログデジタル変換部により変換されたデジタル信号を用いて、サブキャリア毎にデジタル信号処理を行うデジタル信号処理部と、を備える光受信器である。
【0030】
本発明の一態様は、複数の光送信器から送信された複数の光信号が多重化されたサブキャリア多重信号をヘテロダイン検波により中間周波数帯の電気信号に変換し、中間周波数帯に変換された前記電気信号から搬送波成分を除いたサブキャリア成分を抽出し、抽出された前記サブキャリア成分の信号をアナログデジタル変換し、前記アナログデジタル変換により変換されたデジタル信号を用いて、サブキャリア毎にデジタル信号処理を行う光受信方法である。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、コヒーレント検波による光受信を行った際の干渉雑音による信号性能の劣化を低コストで行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】第1の実施形態における光伝送システムのシステム構成を表す図である。
【
図2】第1の実施形態における光送信器の機能構成を表すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態における光受信器の機能構成を表すブロック図である。
【
図4】第1の実施形態において搬送波をf
0+B以上の周波数位置に設定した場合の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態において搬送波をf
0-B以下の周波数位置に設定した場合の一例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態における光伝送システムの処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図7】第2の実施形態における光送信器の機能構成を表すブロック図である。
【
図8】第3の実施形態における光送信器の機能構成を表すブロック図である。
【
図9】第3の実施形態において搬送波をf
0+B以上の周波数位置に設定した場合の一例を示す図である。
【
図10】第3の実施形態において搬送波をf
0-B以下の周波数位置に設定した場合の一例を示す図である。
【
図11】第3の実施形態において搬送波をf
0以下の周波数位置に設定した場合の一例を示す図である。
【
図12】第3の実施形態において搬送波をf
0以上の周波数位置に設定した場合の一例を示す図である。
【
図13】第4の実施形態における光受信器の機能構成を表すブロック図である。
【
図14】第4の実施形態において搬送波をf
0+B以上の周波数位置に設定した場合の一例を示す図である。
【
図15】第4の実施形態において搬送波をf
0-B以下の周波数位置に設定した場合の一例を示す図である。
【
図16】従来の光送信器の機能構成を表すブロック図である。
【
図17】従来の光受信器の機能構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
まず本発明の概略について説明する。
本発明では、光送信器を備える複数の加入者線終端装置(以下「ONU」(Optical Network Unit)という)と、光受信器を備える1台の加入者線端局装置(以下「OLT」(Optical Line Terminal)という)とを備える光伝送システムにおいて、光送信器に光強度変調器を用いて、光受信器にヘテロダイン検波器を用いる。ONUのそれぞれは、サブキャリアを光強度変調器により変調した変調信号をOLTに送信する。ONUのそれぞれから送信された変調信号は、光スプリッタにおいて多重化されてOLTに入力される。OLTでは、サブキャリア多重信号を光ヘテロダイン検波する。次に、光受信器は、電気段でバンドパスフィルタにより中間周波帯に変換された搬送波成分を除去する。そして、光受信器は、送信データが重畳されたサブキャリアを抜き出す。
以下、具体的な構成について説明する。
【0034】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における光伝送システム1のシステム構成を表す図である。以下の説明では、光伝送システム1を、PON(Passive Optical Network)システムに適用した場合を例に説明する。光伝送システム1は、N台のONU2-1~2-Nと、1台のOLT3とを備える。ONU2-1~2-NとOLT3とは、光スプリッタ4を介して光ファイバで接続されている。
【0035】
光スプリッタ4は、ONU2-1~2-Nそれぞれから出力された光信号を多重してOLT3に出力する。光スプリッタ4は、OLT3から出力された光信号を分波してONU2-1~2-Nに出力する。
以下の説明では、ONU2-1~2-NからOLT3への上り信号伝送に焦点を当てて説明する。以下の説明においてONU2-1~2-Nを特に区別しない場合には、ONU2と記載する。
【0036】
ONU2は、例えば通信サービスの提供を受ける加入者の宅内に設置される。ONU2は、光送信器10を備える。光送信器10は、光信号を送信する。
OLT3は、例えば収容局に設置される。OLT3は、光受信器30を備える。光受信器30は、光スプリッタ4によって多重されたサブキャリア多重信号を受信する。
【0037】
各ONU2-1~2-Nの光送信器10-1~2-Nは、同一周波数(f0)のレーザ出力を、送信データが重畳された電気段のサブキャリアで光変調することによって変調信号を生成する。各ONU2で生成された変調信号は、光スプリッタ4で合流し、光サブキャリア多重されてOLT3に伝送される。
【0038】
図1では、ONU2-1~2-Nがそれぞれ、f
0±Δf,f
0±2Δf,・・・,f
0±NΔfの位置の光サブキャリアを生成する場合を示している。例えば、ONU2-1がf
0±Δfの位置の光サブキャリアを生成し、ONU2-2がf
0±2Δfの位置の光サブキャリアを生成し、ONU2-Nがf
0±NΔfの位置の光サブキャリアを生成する。すなわち、1台のONU2が1つの光サブキャリアを生成する場合を示しているが、1台のONU2が複数の光サブキャリアを生成してもよい。
【0039】
ONU2-1~2-Nのそれぞれが
図1に示す光サブキャリアの変調信号を送信する場合、OLT3で受信されるサブキャリア多重信号は搬送波が同一周波数(f
0)で重畳される。
【0040】
図2は、第1の実施形態における光送信器10の機能構成を表すブロック図である。光送信器10は、シンボルマッパ11、発振器12、変調回路13、レーザ14及び光強度変調器15を備える。
図2では、アナログ方式による光送信器の構成を示している。
【0041】
シンボルマッパ11は、外部から入力されたデータ信号を変調方式に応じてマッピングする。
発振器12は、周波数kΔf(k=1,2,・・,N)の正弦波(サブキャリア)を出力する。
【0042】
変調回路13は、発振器12から出力されたサブキャリアを、シンボルマッパ11によりマッピングされたデータで変調する。
レーザ14は、周波数f0の光信号を光強度変調器15に出力する。
【0043】
光強度変調器15は、レーザ14の出力光を、変調回路13によって変調されたサブキャリアで光変調する。具体的には、光強度変調器15は、レーザ14の出力光の強度を、変調回路13によって変調されたサブキャリアで光変調することによって変調信号を生成する。
【0044】
図3は、第1の実施形態における光受信器30の機能構成を表すブロック図である。光受信器30は、光ヘテロダイン検波を行うデジタルコヒーレント受信器である。光受信器30は、PBS31、局部発振光源32、PBS33、カプラ34-1,34-2、バランスド受信器35-1,35-2、フィルタ36-1,36-2、A/D変換器37-1,37-2及びデジタル信号処理部38を備える。PBS31、局部発振光源32、PBS33、カプラ34-1,34-2、バランスド受信器35-1,35-2は、ヘテロダイン検波部の一例である。
【0045】
PBS31は、偏波スプリッタである。PBS31は、光スプリッタ4によって多重化されたサブキャリア多重信号を入力する。PBS31は、入力したサブキャリア多重信号を、水平偏波のサブキャリア多重信号及び垂直偏波のサブキャリア多重信号に分離する。PBS31は、水平偏波のサブキャリア多重信号をカプラ34-1に出力し、垂直偏波のサブキャリア多重信号をカプラ34-2に出力する。
【0046】
局部発振光源32は、光ヘテロダイン検波に用いる局発光を出力する。
PBS33は、偏波スプリッタである。PBS33は、局部発振光源32から出力された局発光を入力する。PBS33は、入力した局発光を、水平偏波の光信号及び垂直偏波の光信号に分離する。PBS33は、水平偏波の光信号をカプラ34-1に出力し、垂直偏波の光信号をカプラ34-2に出力する。
【0047】
カプラ34-1は、PBS31が出力した水平偏波のサブキャリア多重信号と、PBS33が出力した水平偏波の光信号とを合波して干渉させることにより干渉光を生成する。カプラ34-1は、生成した干渉光を2つの干渉光に分岐してバランスド受信器35-1に出力する。
【0048】
カプラ34-2は、PBS31が出力した垂直偏波のサブキャリア多重信号と、PBS33が出力した垂直偏波の光信号とを合波して干渉させることにより干渉光を生成する。カプラ34-2は、生成した干渉光を2つの干渉光に分岐してバランスド受信器35-2に出力する。
【0049】
バランスド受信器35-1は、カプラ34-1が出力した2つの干渉光を電気信号に変換する。バランスド受信器35-1は、変換した電気信号の差分をフィルタ36-1に出力する。
バランスド受信器35-2は、カプラ34-2が出力した2つの干渉光を電気信号に変換する。バランスド受信器35-2は、変換した電気信号の差分をフィルタ36-2に出力する。
【0050】
フィルタ36-1は、バランスド受信器35-1から出力された2つの干渉光の差分を表す電気信号をフィルタリングする。フィルタ36-1は、LPF(Low-Pass Filter)又はHPF(High-Pass Filter)である。LPFやHPFは、図示の通りアナログ回路を用いてもよいが、デンタル信号処理で行ってもよい。
【0051】
例えば、フィルタ36-1は、LPFでサブキャリア多重(SCM)信号の上測波帯成分(+)、もしくは、HPFで下測波帯成分(-)のみを抜き出す。上測波帯成分を抜き出した方がより低周波のA/D変換器を利用して受信できるためより経済的である。
【0052】
フィルタ36-2は、バランスド受信器35-2から出力された2つの干渉光の差分を表す電気信号をフィルタリングする。フィルタ36-2は、LPF又はHPFである。
A/D変換器37-1は、フィルタ36-1によって抜き出された上測波帯成分(+)、もしくは、下測波帯成分(-)をアナログデジタル変換してデジタル信号を生成する。
【0053】
A/D変換器37-2は、フィルタ36-2によって抜き出された上測波帯成分(+)、もしくは、下測波帯成分(-)をアナログデジタル変換してデジタル信号を生成する。
デジタル信号処理部38は、A/D変換器37-1~37-2それぞれから出力されたデジタル信号を入力する。デジタル信号処理部38は、入力したデジタル信号をサブキャリア毎にデジタル信号処理を行うことによって復調する。
【0054】
図2に示す光送信器10で生成されるサブキャリアの変調信号は、搬送波周波数f
0に対して、±Bの範囲で生成される。
図4は搬送波をf
0+B以上の周波数位置に設定した場合の一例を示し、
図5は搬送波をf
0-B以下の周波数位置に設定した場合の一例を示している。
図4及び
図5において、左図は光受信器30において受信されたサブキャリア多重信号の周波数は位置を示す図であり、右図は光受信器30の具体的な処理を説明するための図である。
【0055】
図4の右図では、光ヘテロダイン検波により中間周波数帯の信号に変換されたサブキャリア多重信号の下測波帯成分(-)と、搬送波成分とをLPFで除去した例を示している。
図5の右図では、光ヘテロダイン検波により中間周波数帯の信号に変換されたサブキャリア多重信号の上測波帯成分(+)と、搬送波成分とをLPFで除去した例を示している。
【0056】
図6は、第1の実施形態における光伝送システム1の処理の流れを示すシーケンス図である。
図6の処理では、光伝送システム1が、光送信器10を2台(光送信器10-1及び10-2)備えている場合を例に説明する。なお、各光送信器10の機能部を区別するために、各光送信器10の機能部については枝番を付して説明する。
【0057】
光送信器10-1のシンボルマッパ11-1は、外部から入力されたデータ信号を変調方式に応じてマッピングする(ステップS101)。シンボルマッパ11-1は、マッピングしたデータを変調回路13-1に出力する。変調回路13-1は、発振器12-1から出力された周波数Δfのサブキャリアと、シンボルマッパ11-1から出力されたマッピングしたデータと入力する。変調回路13-1は、入力したサブキャリアを、マッピングしたデータで変調する(ステップS102)。変調回路13-1は、変調後のサブキャリアを光強度変調器15-1に出力する。
【0058】
光強度変調器15-1は、レーザ14-1から出力された周波数f0の光信号と、変調回路13-1から出力された変調後のサブキャリアとを入力する。光強度変調器15-1は、入力したレーザ14-1の出力光の強度を、変調回路13-1から出力された変調後のサブキャリアで光変調する。これにより、光強度変調器15-1は、変調信号を生成する(ステップS103)。
【0059】
光送信器10-2のシンボルマッパ11-2は、外部から入力されたデータ信号を変調方式に応じてマッピングする(ステップS104)。シンボルマッパ11-2は、マッピングしたデータを変調回路13-2に出力する。変調回路13-2は、発振器12-2から出力された周波数2Δfのサブキャリアと、シンボルマッパ11-2から出力されたマッピングしたデータと入力する。変調回路13-2は、入力したサブキャリアを、マッピングしたデータで変調する(ステップS105)。変調回路13-2は、変調後のサブキャリアを光強度変調器15-2に出力する。
【0060】
光強度変調器15-2は、レーザ14-2から出力された周波数f0の光信号と、変調回路13-2から出力された変調後のサブキャリアとを入力する。光強度変調器15-2は、入力したレーザ14-2の出力光の強度を、変調回路13-2から出力された変調後のサブキャリアで光変調する。これにより、光強度変調器15-2は、変調信号を生成する(ステップS106)。
【0061】
光送信器10-1は、光強度変調器15-1によって生成された変調信号を送信する(ステップS107)。光送信器10-2は、光強度変調器15-2によって生成された変調信号を送信する(ステップS108)。
光スプリッタ4は、光送信器10-1及び10-2それぞれから出力された変調信号を受信する。光スプリッタ4は、受信した各変調信号を多重化してサブキャリア多重信号を生成する(ステップS109)。光スプリッタ4は、生成したサブキャリア多重信号を光受信器30に送信する(ステップS110)。
【0062】
光受信器30は、光スプリッタ4から出力されたサブキャリア多重信号を受信する。光受信器30は、受信したサブキャリア多重信号を光ヘテロダイン検波することにより水平偏波の電気信号と、垂直偏波の電気信号を取得する(ステップS111)。フィルタ36-1は、水平偏波の電気信号をフィルタリングする。フィルタ36-2は、垂直偏波の電気信号をフィルタリングする(ステップS112)。
【0063】
A/D変換器37-1は、フィルタ36-1によって抜き出された上測波帯成分(+)、もしくは、下測波帯成分(-)をアナログデジタル変換してデジタル信号を生成する。A/D変換器37-2は、フィルタ36-2によって抜き出された上測波帯成分(+)、もしくは、下測波帯成分(-)をアナログデジタル変換してデジタル信号を生成する(ステップS113)。
【0064】
デジタル信号処理部38は、A/D変換器37-1~37-2それぞれから出力されたデジタル信号を入力する。デジタル信号処理部38は、入力したデジタル信号をサブキャリア毎にデジタル信号処理を行うことによって復調する(ステップS114)。
【0065】
以上のように構成された第1の実施形態における光伝送システム1によれば、光受信器30が、各光送信器10から送信された変調信号に基づくサブキャリア多重信号を光ヘテロダイン検波し、電気段でフィルタにより中間周波数帯に変換された搬送波成分を除外している。そして、光受信器30では、搬送波成分が除外された信号から送信データが重畳されたサブキャリアを抜き出して復調する。これにより、光コヒーレント検波により光コヒーレント検波により光受信を行った際の干渉雑音による信号性能劣化を大幅に低減することができる。また、光受信器30に光イントラダイン検波器ではなく光ヘテロダイン検波器を用いることにより、光受信器の低コスト化を図ることができる。そのため、コヒーレント検波による光受信を行った際の干渉雑音による信号性能の劣化を低コストで行うことが可能になる。
【0066】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、アナログ方式による光送信器を用いた場合について説明した。第2の実施形態では、デジタル方式による光送信器の構成を用いた場合について説明する。第2の実施形態における光受信器の構成は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0067】
図7は、第2の実施形態における光送信器10aの機能構成を表すブロック図である。光送信器10aは、シンボルマッパ11-1~11-n、レーザ14、シリアルパラレル変換部16、エルミート対称化部17、周波数シフト部18-1~18-2n、加算器19、D/A変換器20及び光強度変調器21を備える。周波数シフト部18-1~18-2nの台数は、シンボルマッパ11の2倍の台数である。
【0068】
シリアルパラレル変換部16は、外部から入力されたデータ信号を2N列に並列化する。例えば、シリアルパラレル変換部16は、データ信号をシンボルマッパ11-1~11-nの台数分並列化する。
【0069】
シンボルマッパ11-1~11-nは、並列化されたデータ信号を変調方式に応じてマッピングする。マッピングされたデータ信号は、エルミート対称化部17に入力される。
【0070】
エルミート対称化部17は、入力されたマッピングされたデータ信号を、ゼロ周波数を中心として複素共役になるようにサブキャリアにデータを配置する。これにより、エルミート対称化部17は、並列化されたデータ信号の実数成分と虚数成分とを生成することができる。
【0071】
周波数シフト部18-1~18-2nは、エルミート対称化部17から出力された並列データを、周波数軸上で重ならないように移動する。周波数シフト部18-1~18-nは、上測波帯成分の並列データを、周波数軸上で重ならないように移動する。周波数シフト部18-n+1~2nは、下測波帯成分の並列データを、周波数軸上で重ならないように移動する。
【0072】
加算器19は、周波数シフト部18-1~18-2nそれぞれから出力されたデータ信号を加算することによって周波数サブキャリア多重信号を生成する。
【0073】
D/A変換器20は、周波数サブキャリア多重信号をデジタルアナログ変換する。これにより、D/A変換器20は、電気段でIサブキャリア多重信号を生成する。
【0074】
光強度変調器21は、レーザ14の出力光を、Iサブキャリア多重信号で光変調することによって変調信号を生成する。各ONU2で生成された変調信号は、光スプリッタ4で合流し、光サブキャリア多重されてOLT3に伝送される。
【0075】
以上のように構成された第2の実施形態における光伝送システム1によれば、第1の実施形態における光送信器10に代えて光送信器10aを用いることで第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
このように本発明における光伝送システム1では、デジタル方式による光送信器であっても適用可能である。
【0076】
(第3の実施形態)
第1の実施形態及び第2の実施形態では、DSB(Double Side Band)の光送信器を用いた場合について説明した。第3の実施形態では、SSB(Single Side Band)の光送信器を用いた場合について説明する。第3の実施形態における光受信器の構成は、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0077】
図8は、第3の実施形態における光送信器10bの機能構成を表すブロック図である。光送信器10bは、シンボルマッパ11-1~11-n、レーザ14、シリアルパラレル変換部16、周波数シフト部18-1~18-2n、加算器19b、D/A変換器20-1~20-2及び両電極型光強度変調器22を備える。以下、第2の実施形態における光送信器10aとの相違点についてのみ説明する。
【0078】
周波数シフト部18-1~18-nは、シンボルマッパ11-1~11-nによってマッピングされたデータ信号を、周波数軸上で重ならないように移動する。また、周波数シフト部18-n+1~18-2nにはゼロの値が入力される。この場合、周波数シフト部18-n+1~18-2nからの出力はゼロとなる。
【0079】
加算器19bは、周波数シフト部18-1~18-2nそれぞれから出力されたデータ信号を加算することによって周波数多重信号を生成する。
図8の例では、加算器19bは、周波数シフト部18-1~18-nそれぞれから出力されたデータ信号を加算することによって周波数多重信号を生成する。
【0080】
D/A変換器20-1~20-2は、周波数多重信号をデジタルアナログ変換する。例えば、D/A変換器20-1は、周波数多重信号の実部(I成分)をデジタルアナログ変換する。例えば、D/A変換器20-2は、周波数多重信号の虚部(Q成分)をデジタルアナログ変換する。これにより、電気段でI成分とQ成分に分かれたサブキャリア多重信号が生成される。
【0081】
両電極型光強度変調器22は、レーザ14の出力光の強度を、I成分とQ成分に分かれたサブキャリア多重信号で光変調することによって変調信号を生成する。両電極型光強度変調器22には、I成分又はQ成分のいずれか一方の成分のサブキャリア多重信号が入力される。そのため、両電極型光強度変調器22は、上測波帯(+)、もしくは下測波帯(-)のいずれかの成分の変調信号を生成する。両電極型光強度変調器22は、生成した変調信号を、光ファイバを介して光受信器に送信する。
【0082】
図8に示す光送信器10bで生成されるサブキャリアの変調信号は、搬送波周波数f
0に対して、±Bの範囲で生成される。
図9は搬送波をf
0+B以上の周波数位置に設定した場合の一例を示し、
図10は搬送波をf
0-B以下の周波数位置に設定した場合の一例を示している。
図11は搬送波をf
0以下の周波数位置に設定した場合の一例を示し、
図10は搬送波をf
0以上の周波数位置に設定した場合の一例を示している。
【0083】
図9~
図12において、左図は光受信器30において受信されたサブキャリア多重信号の周波数は位置を示す図であり、右図は光受信器30の具体的な処理を説明するための図である。
図9の右図では、光ヘテロダイン検波により中間周波数帯の信号に変換されたサブキャリア多重信号の上測波帯成分(+)をLPFで抜き出し、LPFで搬送波成分を除去した例を示している。
図10の右図では、光ヘテロダイン検波により中間周波数帯の信号に変換されたサブキャリア多重信号の下測波帯成分(-)をLPFで抜き出し、LPFで搬送波成分を除去した例を示している。
【0084】
図11の右図では、光ヘテロダイン検波により中間周波数帯の信号に変換されたサブキャリア多重信号の上測波帯成分(+)をHPFで抜き出し、HPFで搬送波成分を除去した例を示している。
図12の右図では、光ヘテロダイン検波により中間周波数帯の信号に変換されたサブキャリア多重信号の下測波帯成分(-)をHPFで抜き出し、HPFで搬送波成分を除去した例を示している。
図11及び
図12では、搬送波の周波数をf
0以下もしくはf
0以上としたが、f
0近辺に設定することもできる。
【0085】
以上のように構成された第3の実施形態における光伝送システム1によれば、光イントラダイン検波と同様の周波数配置であるにも関わらず、安価な光ヘテロダイン検波器を用いて受信することができる。そのため、SSBにおいてもコヒーレント検波による光受信を行った際の干渉雑音による信号性能の劣化を低コストで行うことが可能になる。
【0086】
(変形例)
図8では、光送信器10bが上測波帯(+)の成分のみを含む変調信号を生成する例を示しているが、光送信器10bは下測波帯(-)の成分のみを含む変調信号を生成するように構成されてもよい。このように構成される場合、周波数シフト部18-1~18-nにはゼロの値が入力され、周波数シフト部18-n+1~18-2nにはシンボルマッパ11-1~11-nによってマッピングされたデータ信号が入力される。周波数シフト部18-n+1~18-2nは、シンボルマッパ11-1~11-nによってマッピングされたデータ信号を、周波数軸上で重ならないように移動する。
【0087】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、従来の光送信器を用いた場合の構成について説明する。第4の実施形態における光送信器の構成は、
図16に示す光送信器100と同様であるため説明を省略する。第4の実施形態における光伝送システム1では、光送信器100を備えるN台のONU2-1~2-Nと、光受信器30aを備える1台のOLT3とで構成される。ONU2-1~2-NとOLT3とは、光スプリッタ4を介して光ファイバで接続されている。
【0088】
第4の実施形態における光受信器30aは、光送信器100が備える光IQ変調器107によって生成された変調信号が光スプリッタ4によって多重化された多重信号を受信する点で第1の実施形態~第3の実施形態と異なる。以下、光受信器30aの構成について説明する。
【0089】
図13は、第4の実施形態における光受信器30aの機能構成を表すブロック図である。光受信器30aは、光ヘテロダイン検波を行うデジタルコヒーレント受信器である。光受信器30aは、PBS31、局部発振光源32、PBS33、カプラ34-1,34-2、バランスド受信器35a-1,35a-2、A/D変換器37-1,37-2、デジタル信号処理部38、LPF39、HPF40、LPF41及びHPF42を備える。PBS31、局部発振光源32、PBS33、カプラ34-1,34-2、バランスド受信器35a-1,35a-2は、ヘテロダイン検波部の一例である。
【0090】
光受信器30aは、バランスド受信器35-1,35-2に代えてバランスド受信器35a-1,35a-2を備える点と、フィルタ36-1,36-2に代えてLPF39、HPF40、LPF41及びHPF42を備える点で光受信器30と構成が異なる。光受信器30aのその他の構成については、光受信器30と同様である、そのため、以下、バランスド受信器35a-1,35a-2、LPF39、HPF40、LPF41及びHPF42について説明する。
【0091】
バランスド受信器35a-1は、カプラ34-1が出力した2つの干渉光を電気信号に変換する。バランスド受信器35a-1は、変換した電気信号の差分を、LPF39及びHPF40に出力する。
バランスド受信器35a-2は、カプラ34-2が出力した2つの干渉光を電気信号に変換する。バランスド受信器35a-2は、変換した電気信号の差分を、LPF41及びHPF42に出力する。
【0092】
LPF39は、バランスド受信器35a-1から出力された2つの干渉光の差分を表す電気信号をフィルタリングする。例えば、LPF39は、サブキャリア多重(SCM)信号の上測波帯成分(+)のみを抜き出す。
【0093】
HPF40は、バランスド受信器35a-1から出力された2つの干渉光の差分を表す電気信号をフィルタリングする。例えば、HPF40は、サブキャリア多重(SCM)信号の下測波帯成分(-)のみを抜き出す。
【0094】
LPF41は、バランスド受信器35a-2から出力された2つの干渉光の差分を表す電気信号をフィルタリングする。例えば、LPF41は、サブキャリア多重(SCM)信号の上測波帯成分(+)のみを抜き出す。
【0095】
HPF42は、バランスド受信器35a-2から出力された2つの干渉光の差分を表す電気信号をフィルタリングする。例えば、HPF42は、サブキャリア多重(SCM)信号の下測波帯成分(-)のみを抜き出す。
【0096】
A/D変換器37-1では、LPF39によって抜き出された上測波帯成分(+)と、HPF40によって抜き出された下測波帯成分(-)とをアナログデジタル変換してデジタル信号を生成する。
【0097】
A/D変換器37-2では、LPF41によって抜き出された上測波帯成分(+)と、HPF42によって抜き出された下測波帯成分(-)とをアナログデジタル変換してデジタル信号を生成する。
【0098】
図14は搬送波をf
0+B以上の周波数位置に設定した場合の一例を示し、
図15は搬送波をf
0-B以下の周波数位置に設定した場合の一例を示している。
図14及び
図15において、左図は光受信器30aにおいて受信されたサブキャリア多重信号の周波数は位置を示す図であり、右図は光受信器30aの具体的な処理を説明するための図である。
【0099】
図14の右図では、光ヘテロダイン検波により中間周波数帯の信号に変換された搬送波成分をLPF39とHPF40とで除去した例を示している。このように、搬送波をf
0+B以上の周波数位置に設定した場合、すなわち搬送波の周波数位置が基準となる周波数以上の位置である場合、光受信器30aはLPF39で電気信号の上測波帯成分を抽出し、HPF40で電気信号の下測波帯成分を抽出する。
【0100】
図15の右図では、光ヘテロダイン検波により中間周波数帯の信号に変換された搬送波成分をLPF41とHPF42とで除去した例を示している。このように、搬送波をf
0-B以下の周波数位置に設定した場合、すなわち搬送波の周波数位置が基準となる周波数未満の位置である場合、光受信器30aはLPF41で電気信号の下測波帯成分を抽出し、HPF42で電気信号の上測波帯成分を抽出する。
【0101】
以上のように構成された第4の実施形態における光伝送システム1によれば、搬送波抑圧型の従来の光送信器100を用いた場合であっても、光受信器30aが、各光送信器100から送信された変調信号に基づくサブキャリア多重信号を光ヘテロダイン検波し、電気段でLPFとHPFにより中間周波数帯に変換された搬送波成分を除外している。そして、光受信器30aでは、搬送波成分が除外された信号から送信データが重畳されたサブキャリアを抜き出して復調する。また、光受信器30aに光イントラダイン検波器ではなく光ヘテロダイン検波器を用いることにより、光受信器の低コスト化を図ることができる。これにより、光コヒーレント検波により光コヒーレント検波により光受信を行った際の干渉雑音による信号性能劣化を大幅に低減することができる。そのため、コヒーレント検波による光受信を行った際の干渉雑音による信号性能の劣化を低コストで行うことが可能になる。
【0102】
(変形例)
図13に示す例では、光送信器100が両側波帯(DSB)の光信号を送信する場合について説明したが、光送信器100が片側波帯(SSB)の光信号を送信するように構成されてもよい。このように構成される場合、光受信器30aは、第3の実施形態と同様の動作を行う。例えば、光受信器30aは、光送信器100が送信する光信号の片側波帯成分を抜き出し、搬送波成分を除去する。そのため、光受信器30aは、LPF39又はHPF40のいずれか一方と、LPF41又はHPF42のいずれか一方とを備える。
このように構成されることによって、SSBにおいてもコヒーレント検波による光受信を行った際の干渉雑音による信号性能の劣化を低コストで行うことが可能になる。
【0103】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、サブキャリア多重を行う光伝送技術に適用できる。
【符号の説明】
【0105】
2-1~2-N…ONU, 3…OLT, 4…光スプリッタ,10、10a、10b、10-1~10-N…光送信器, 20…D/A変換器, 30、30a…光受信器, 11、11-1~11-n…シンボルマッパ, 12…発振器, 13…変調回路, 14…レーザ, 15…光強度変調器, 16…シリアルパラレル変換部, 17…エルミート対称化部, 18-1~18-2n…周波数シフト部, 19、19b…加算器, 20、20-1~20-2…D/A変換器, 21…光強度変調器, 22…両電極型光強度変調器, 31…PBS, 32…局部発振光源, 33…PBS, 34-1、34-2…カプラ, 35-1、35-2、35a-1、35a-2…バランスド受信器, 36-1、36-2…フィルタ, 37-1、37-2…A/D変換器, 38…デジタル信号処理部, 39…LPF, 40…HPF, 41…LPF, 42…HPF