(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】水位調整土槽システム、排水槽及び水位調整方法
(51)【国際特許分類】
E02B 11/00 20060101AFI20231130BHJP
E02D 3/10 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
E02B11/00 Z
E02D3/10 101
(21)【出願番号】P 2022577973
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2021003357
(87)【国際公開番号】W WO2022162900
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】吉村 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】板坂 浩二
(72)【発明者】
【氏名】日吉 健至
(72)【発明者】
【氏名】玉松 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 航
(72)【発明者】
【氏名】内堀 大輔
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-293813(JP,A)
【文献】特開2007-262766(JP,A)
【文献】特開2004-324046(JP,A)
【文献】特開2005-248679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 11/00
E02D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤材料が充填された土槽と、
前記地盤材料からの排水を貯留する貯水槽と、
前記土槽と前記貯水槽とを連通し、前記排水を前記貯水槽へ導水する複数の排水管と、
前記排水管のそれぞれに設けられた弁装置と、
前記土槽の水位を調整する制御部と、を備え、
前記排水管は、それぞれ、鉛直方向における異なる高さ位置で前記土槽に接続されており、
前記制御部は、目標水位に対応する高さ未満の高さ位置で前記土槽に接続された前記排水管に設けられた前記弁装置を閉じた後、前記目標水位に対応する高さ以上の高さ位置で前記土槽に接続された前記排水管に設けられた前記弁装置を開き、前記水位を前記目標水位に調整する水位調整土槽システム。
【請求項2】
前記貯水槽から排水する排水ポンプと、
前記貯水槽の貯水状態を検知する貯水センサと、を更に備え、
前記制御部は、
前記貯水センサが貯水を検知している場合、前記排水ポンプで前記貯水槽を排水してから前記目標水位に対応する高さ以上の高さ位置で前記土槽に接続された前記排水管の前記弁装置のうち、閉状態の最も高い位置の前記弁装置を開き、
前記貯水センサが貯水を検知していない場合、前記目標水位に対応する高さ以上の高さ位置で前記土槽に接続された前記排水管の前記弁装置のうち、閉状態の最も高い位置の前記弁装置を開く請求項1に記載の水位調整土槽システム。
【請求項3】
前記貯水槽の隔壁が透水性の材料で形成されており、
前記貯水槽に貯水された排水を、前記隔壁を介して当該貯水槽の外部へ排水する請求項1又は2に記載の水位調整土槽システム。
【請求項4】
前記隔壁における、側壁が鉛直方向と交差している、又は、底壁が水平方向と交差している請求項3に記載の水位調整土槽システム。
【請求項5】
地盤材料が充填された土槽の水位を調整する排水槽であって、
前記土槽からの排水を貯留する貯水槽と、
前記土槽と連通し、前記排水を前記貯水槽へ導水する複数の排水管と、
前記排水管のそれぞれに設けられた弁装置と、
前記水位を調整する制御部と、を備え、
前記排水管は、それぞれ、鉛直方向における異なる高さ位置で前記土槽に接続されており、
前記制御部は、目標水位に対応する高さ未満の高さ位置で前記土槽に接続された前記排水管に設けられた前記弁装置を閉じた後、前記目標水位に対応する高さ以上の高さ位置で前記土槽に接続された前記排水管に設けられた前記弁装置を開き、前記水位を前記目標水位に調整する排水槽。
【請求項6】
前記貯水槽から排水する排水ポンプと、
前記貯水槽の貯水状態を検知する貯水センサと、を更に備え、
前記制御部は、
前記貯水センサが貯水を検知している場合、前記排水ポンプで前記貯水槽を排水してから前記目標水位に対応する高さ以上の高さ位置で前記土槽に接続された前記排水管の前記弁装置のうち、閉状態の最も高い位置の前記弁装置を開き、
前記貯水センサが貯水を検知していない場合、前記目標水位に対応する高さ以上の高さ位置で前記土槽に接続された前記排水管の前記弁装置のうち、閉状態の最も高い位置の前記弁装置を開く請求項5に記載の排水槽。
【請求項7】
地盤材料が充填された土槽と、
前記地盤材料からの排水を貯留する貯水槽と、
前記土槽と前記貯水槽とを連通し、前記排水を前記貯水槽へ導水する複数の排水管と、
前記排水管のそれぞれに設けられた弁装置と、を備え、
前記排水管が、それぞれ、鉛直方向における異なる高さ位置で前記土槽に接続されている水位調整土槽システムにおける、前記土槽の水位を調整する水位調整方法であって、
前記土槽の目標水位に対応する高さ未満の高さ位置で前記土槽に接続された前記排水管に設けられた前記弁装置を閉じる閉弁工程と、
前記閉弁工程の後に実行され、前記目標水位に対応する高さ以上の高さ位置で前記土槽に接続された前記排水管に設けられた前記弁装置を開く開弁工程と、を含む水位調整方法。
【請求項8】
前記貯水槽から排水する排水工程と、
前記貯水槽の貯水状態を検知する検知工程と、を更に含み、
前記検知工程で貯水が検知された場合、前記排水工程を実行した後、前記開弁工程を実行し、
前記検知工程で貯水が検知されなかった場合、前記排水工程を実行せずに、前記開弁工程を実行し、
前記開弁工程では、前記目標水位に対応する高さ以上の高さ位置で前記土槽に接続された前記排水管の前記弁装置のうち、閉状態の最も高い位置の前記弁装置を開く請求項7に記載の水位調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水位調整土槽システム、排水槽及び水位調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌中の間隙水は、液状化現象の発現に影響している。非特許文献1には、固体状態にある砂地盤が地震動を受けることにより生じる液状化現象に関するモデル化を土槽実験により行う場合が記載されている。非特許文献1では、横60cm、幅15cm、高さ30cmの小型の土槽容器で形成した土槽モデルにより液状化現象を実験した事例が記載されている。
【0003】
非特許文献2には、地中レーダー技術として、電磁波(電波)の地下物体からの反射を利用した地下計測法が記載されている。地中レーダー技術は、埋設物探査に多く利用されている他、地下水や土壌水分の計測に利用されている。地中レーダー技術では、土壌と周囲土壌との間の空隙率や含水率等の違いが計測に影響することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】土槽実験による液状化現象のモデル化、土木学会年次学術講演会講演概要集第3部(A)、vol:56:2001、P284-285、国松ら、[令和2年1月12日検索]、インターネット<https://www.jsce.or.jp/library/eq10/proc/00035/56-3A-0142.pdf>
【文献】地中レーダー技術に関する調査検討会報告書、H29.3総務省 地中レーダー技術に関する調査検討会、[令和2年1月12日検索]、インターネット<https://www.soumu.go.jp/main_content/000477180.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のごとく、土壌、地中、地盤など(以下、単に地盤等と記載する)のにおける水分は、種々の現象に影響を及ぼしている。そのためこれら現象の調査研究及びこれら現象を利用した研究開発において、地盤等の水分状態の調整を可能とした水位調整土槽システム、土槽の水位調整を実現する排水槽及び土槽の水位調整方法の提供が望まれる。
【0006】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、土槽に充填されている地盤材料中の水位を調整することができる水位調整土槽システム、排水槽及び水位調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る水位調整土槽システムは、
地盤材料が充填された土槽と、
前記地盤材料からの排水を貯留する貯水槽と、
前記土槽と前記貯水槽とを連通し、前記排水を前記貯水槽へ導水する複数の排水管と、
前記排水管のそれぞれに設けられた弁装置と、
前記土槽の水位を調整する制御部と、を備え、
前記排水管は、それぞれ、鉛直方向における異なる高さ位置で前記土槽に接続されており、
前記制御部は、目標水位に対応する高さ未満の高さ位置で前記土槽に接続された前記排水管に設けられた前記弁装置を閉じた後、前記目標水位に対応する高さ以上の高さ位置で前記土槽に接続された前記排水管に設けられた前記弁装置を開き、前記水位を前記目標水位に調整している。
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る排水槽は、
前記土槽からの排水を貯留する貯水槽と、
前記土槽と連通し、前記排水を前記貯水槽へ導水する複数の排水管と、
前記排水管のそれぞれに設けられた弁装置と、
前記水位を調整する制御部と、を備え、
前記排水管は、それぞれ、鉛直方向における異なる高さ位置で前記土槽に接続されており、
前記制御部は、目標水位に対応する高さ未満の高さ位置で前記土槽に接続された前記排水管に設けられた前記弁装置を閉じた後、前記目標水位に対応する高さ以上の高さ位置で前記土槽に接続された前記排水管に設けられた前記弁装置を開き、前記水位を前記目標水位に調整する。
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る水位調整方法は、
地盤材料が充填された土槽と、
前記地盤材料からの排水を貯留する貯水槽と、
前記土槽と前記貯水槽とを連通し、前記排水を前記貯水槽へ導水する複数の排水管と、
前記排水管のそれぞれに設けられた弁装置と、を備え、
前記排水管が、それぞれ、鉛直方向における異なる高さ位置で前記土槽に接続されている水位調整土槽システムにおける、前記土槽の水位を調整する水位調整方法であって、
前記土槽の目標水位に対応する高さ未満の高さ位置で前記土槽に接続された前記排水管に設けられた前記弁装置を閉じる閉弁工程と、
前記閉弁工程の後に実行され、前記目標水位に対応する高さ以上の高さ位置で前記土槽に接続された前記排水管に設けられた前記弁装置を開く開弁工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
土槽に充填されている地盤材料中の水位を調整することができる水位調整土槽システム、排水槽及び水位調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】水位調整土槽システムの概略構成を示す模式図である。
【
図3】水位調整土槽システムの機能ブロック図である。
【
図5】水位調整後の水位調整土槽システムの状態を示す模式図である。
【
図6】別の水位調整土槽システムの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係る水位調整土槽システム、排水槽及び水位調整方法について説明する。
【0013】
(概略構成の説明)
図1に示すように、本実施形態に係る水位調整土槽システム100は、地盤材料Sが充填された土槽1と、土槽1の水位Lが目標水位Tとなるように水位を調整する排水槽200とを備えている。
【0014】
排水槽200は、地盤材料Sからの排水Dを貯留する貯水槽4と、土槽1と貯水槽4とを連通し、排水Dを貯水槽4へ導水する複数の排水管2と、排水管2のそれぞれに設けられた弁装置3と、土槽1の水位Lを調整する制御部9と、を備えている。
【0015】
本実施形態において、排水槽200は、更に、貯水槽4から排水Dを排水する排水ポンプ6と、貯水槽4の貯水状態を検知する貯水センサ5と、を備えている。
【0016】
制御部9は、弁装置3を制御して、土槽1中の水位Lが目標水位Tとなるように制御する。これにより、水位調整土槽システム100は、土槽1の水位Lの調整を低コストで実現することができる。また、貯水センサ5で検知した貯水槽4の貯水状態に基づいて、排水ポンプ6を制御して貯水槽4から排水Dを排水する。これにより、水位調整土槽システム100は、土槽1の水位の調整を適切に実現することができる。
【0017】
(各部の説明)
図1,2に示すように、土槽1は、土槽容器10と地盤材料Sとを備えている。土槽1は、コンクリートなどで形成された擁壁を備えた有底筒状の土槽容器10に、地盤材料Sを充填されている。土槽容器10は、地面G側が外部に開口する状態で、例えば地中に埋設されている。本実施形態では、土槽容器10が有底角筒状である場合を例示して説明しているが、土槽容器10は有底角筒状である場合に限られず、多角形状や円筒状の有底筒状であってもよい。土槽容器10の大きさは、検証や実験の目的に応じて定める。
【0018】
土槽容器10は、評価対象となるモデル地盤を形成する地盤材料Sと、地盤材料Sに含ませる水分とをその筒の内部に保持可能な容器である。本実施形態において、土槽容器10は、コンクリートなどで形成された擁壁及び底壁で形成されている。土槽容器10の容器内側には内部の水分の保持性を高めるべく、一例として、防水シートの敷設、FRP加工、防水塗装等の防水加工が施されたりしている。なお、土槽容器10はコンクリート製に限られず、アクリル製などの樹脂製の容器であってもよいし、地中に掘った穴の壁面に防水シートを敷設したものでもよい。
【0019】
土槽容器10中には上述の水分として、地盤材料Sの粒子間に存在する土壌水と、自然環境における地盤中の地下水に対応する、土槽容器10内における地盤材料Sの下層部分に溜まった滞留水Wとが存在している。
図1では、滞留水Wの水位Lが水位L1である場合を例示している。
【0020】
図2に示すように、地盤材料Sは、評価対象となるモデル地盤を形成するための土壌成分である。地盤材料Sは、一例として、地盤材料Sの下層部分である路床12と、地盤材料Sの表層部分であり、路床12の上部に配置された層である路盤11とを含む。
【0021】
路床12は、土や砂、砂利などを含む。路床12中には、例えば電気配線、都市ガス、水道水などの埋設管のようなモデル埋設物Xが評価対象として埋設されることがある。
図1の場合では、モデル埋設物Xが、路床12中において、滞留水Wが存在している領域内に位置している場合を例示している。なお、土槽容器10の大きさは、モデル埋設物Xの個数や埋設深さに応じて定めてよい。
【0022】
路盤11は、例えばアスファルトコンクリート舗装を模して形成されている。
図2では、表層側から順に、路盤11が、表層となる密粒度アスファルトコンクリート層11a、基層となる粗粒度アスファルトコンクリート層11b、上層路盤となる粒度調整砕石層11c及び下層路盤となる切込砂利層11dを含む場合を示している。路盤11は、表層側から水が透過可能に形成されており、地盤材料Sに滞留水Wを供給可能となっている。例えば、路盤11は透水性舗装とされている。また、路盤11を透水性ではない通常舗装とする場合は、路盤11を鉛直方向に沿って貫通する穴を設けて滞留水Wを注水可能とされている。
【0023】
図1に示すように、排水槽200は、土槽1から滞留水Wの排水Dを受け入れて土槽1の水位Lを目標水位Tに調整する排水システムである。上述のごとく、排水槽200は、貯水槽4、土槽1と貯水槽4とに接続された排水管2、排水管2に設けられた弁装置3、貯水槽4の貯水状態を検知する貯水センサ5、貯水槽4を排水する排水ポンプ6及び制御部9、を備えている。
【0024】
貯水槽4は、土槽1における地盤材料Sからの排水Dを一時貯留、すなわち貯水するための容器である。貯水槽4は、一例として長方体状の柱状に形成されている。貯水槽4は、円柱状や円錐状、その他の形状を取り得る。本実施形態では、貯水槽4の隔壁40における底壁40bは水平方向に平行となるように配置されている。隔壁40における側壁40sは垂直方向に平行となるように配置されている。
【0025】
貯水槽4の上部には、貯水槽4の槽内部を外部に開放可能なポート41が形成されている。貯水槽4は、例えばポート41を介し、後述する排水ポンプ6などにより排水Dをくみ出して槽の外部に排水可能となっている。貯水槽4は、一例として地中に埋設されている。貯水槽4の内部における底面の高さは、土槽1の土槽容器10の内部における底面よりも低くなっている。これにより、土槽1からの滞留水Wの排水を円滑に行える。また、土槽1の水位Lを十分に低く調整可能としている。
【0026】
貯水槽4における地中に埋設されている隔壁40は、例えば網目状材料のような透水性の素材で形成するとよい。これにより、貯水槽4は、後述する排水ポンプ6による排水に加えて、隔壁40を介して排水Dを地中に浸透させて排水可能となっている。本実施形態において、貯水槽4の隔壁40は、矢板などの金属板、コンクリートや樹脂のような、土圧に耐える強度で形成された不透水性の材料に多数の貫通孔を形成して網目状構造とした透水性の素材で形成されている。そして貯水槽4は、これら網目状構造を有する隔壁40外面に透水性のシートを張って、土砂の侵入を防ぎつつ、土中に排水Dを浸透可能とされている。
【0027】
貯水槽4の排水にあたり、隔壁40を介した土中への浸透による排水と排水ポンプ6による排水とを併用すれば、貯水槽4の排水の効率が高まる。例えば、貯水槽4の排水速度が高まって、土槽1の水位Lを調整する工程時間を短縮することができる。また、隔壁40を介した土中への浸透による排水を行えば、下水へ放出される排水量を削減して環境負荷を低減することもできる。なお、土中への排水は、法令等に定められる排水基準を順守できる場合に限られるが、土槽1を用いた調査研究においては、通常、有害物質を含む排水Dは生じない。また、隔壁40を介した土中への浸透による排水を行うことにより、貯水槽4へ貯水しなければならない排水Dの貯水量が削減できることから、貯水槽4の容量を小さくすることができる。貯水槽4の建設費用は必要となる掘削容積と相関があり、貯水槽4の容量を小さくすれば、貯水槽4の建設費用を削減できる。すなわち、隔壁40を介した土中への浸透による排水を行うことにより貯水槽4の容量を小さくして、水位調整土槽システム100の構築や水位調整土槽システム100を用いた実験等のコスト削減が可能となる。
【0028】
なお、隔壁40は透水性の材料で形成される場合に限られず、全体が非透水性の材料で形成されてもよい。この場合であっても、貯水槽4は、排水ポンプ6により排水可能である。
【0029】
排水管2は、土槽1の土槽容器10の内部空間と貯水槽4の内部空間とを連通接続する、管状の部材である。土槽容器10内の滞留水Wは、排水管2を流れて排水Dとして貯水槽4に導水される。
【0030】
排水管2は、複数の管P1~Pn(ただし、nは2以上の整数)を含み、これら管P1~Pnは、鉛直方向における異なる高さ位置で土槽1の土槽容器10に接続されている。排水管2は、例えば、その長手方向が水平方向に沿うように、又は、土槽1から貯水槽4に向けて、その長手方向が下方に傾斜するように配置される。排水管2は、直管でもよいし、土槽1から貯水槽4に向けて、下方側に湾曲する湾曲管であってもよい。なお、
図1では、排水管2が水平方向に沿い配置されている場合を図示している。
【0031】
本実施形態では、排水管2は、鉛直方向において等間隔に配置されている。排水管2は、鉛直方向における上方側から下方側に向けて、管P1~Pnの順に配置されている。本実施形態では、排水管2は、鉛直方向に沿って一列に配列されているが、例えば鉛直方向に沿ってジグザグに配列してもよい。
【0032】
排水管2は、例えば鉛直方向において30cm間隔で配置する。排水管2の呼び径は、例えば75mmや150mmとすることができる。本実施形態では、排水管2が鉛直方向に沿って一列に配列されている場合を例示して説明しているが、排水管2が更に、水平方向に隣接させて複数列配置されていると、滞留水Wを土槽1から貯水槽4に排水する時間を短くすることができる。すなわち、管P1~Pnのそれぞれを、水平方向に隣接させて配置してもよい。排水管2を水平方向に隣接させて配置する場合は、例えば、水平方向において30cm間隔で配置する。
【0033】
鉛直方向における排水管2の配置間隔は、後述する水位Lの調整において、調整の最小単位となる。したがって、水位Lの調整の最小単位を小さくしたい場合は、鉛直方向における排水管2の配置間隔を狭くするとよい。鉛直方向における排水管2の配置間隔が30cm間隔である場合は、水位Lの調整の最小単位が30cmとなる。
【0034】
排水管2は、地面Gを掘削してから埋設してもよいが、土槽1又は貯水槽4を構築する際に掘削した穴から他方の穴に向けて、推進工法により敷設してもよい。
【0035】
排水管2には、後述する制御部9の指令に基づいて排水管2の通水を許容する状態と、排水管2の通水を禁止する状態とを切り替える弁装置3が設けられている。弁装置3は、例えば電動アクチュエータを有する止水栓のような開閉弁である。
【0036】
弁装置3は、排水管2としての管P1~Pnのそれぞれに取り付けられた止水栓B1~Bnを含む。本実施形態では、止水栓B1~Bnは、開閉動作により管P1~Pnの通水を許容又は禁止する弁体と、当該弁体を開閉する、電動モーターやエアシリンダなどのアクチュエータとを有し、後述する制御部9の指令に基づいて弁体を開閉して管P1~Pnの通水の許容又は禁止を制御する。
【0037】
貯水センサ5は、貯水槽4の貯水状態を検知するセンサである。貯水センサ5は、貯水状態として、少なくとも貯水槽4に排水Dが貯水されているか否かを検知することができるセンサであればよい。貯水センサ5は、一例として、排水Dの水位を検知する水位センサを用いることができる。本実施形態において、貯水センサ5は、排水Dの水位の変動により浮き沈みするフロートによって排水Dの水位を検知することができるフロート式水位センサである。貯水センサ5は、貯水槽4に排水Dが貯水されているか否かを示す信号として、水位を検出しているか否かの情報を含む信号(以下、水位検出情報と記載する)を、後述する制御部9に送出する。貯水センサ5が水位を検知していれば、貯水槽4に貯水されていると判断することができる。貯水センサ5が水位を検知していなければ、貯水槽4に貯水されていないと判断することができる。
【0038】
排水ポンプ6は、貯水槽4の排水Dを排水するためのポンプ装置である。排水ポンプ6は、本実施形態では、後述する制御部9の指令に基づいて動作する電動モーターを有する電動ポンプである。排水ポンプ6は、タービンポンプやダイヤフラムポンプなどの液体を送出可能なものであればよく、ポンプの形式は問わない。
【0039】
制御部9は、
図3に示すように、目標水位T(
図1参照)と貯水センサ5が送出する信号に基づいて、弁装置3と排水ポンプ6とを制御する機能部である。制御部9は、例えば排水槽200を制御する端末装置Cによりハードウェア又はソフトウェア(プログラム)により実現される。端末装置Cと、弁装置3、貯水センサ5及び排水ポンプ6とは、これらを通信可能に接続する通信路Nで接続されている。通信路Nは、バスやポート、無線や有線の電気通信回線(イーサーネットなどのネットワーク回線や、携帯電話通信網、インターネット回線を含む)である場合を含む。制御部9は、通信路Nを介して貯水センサ5から水位検出情報を取得し、弁装置3と排水ポンプ6とを制御する。
【0040】
図3では、制御部9として、貯水センサ5が送出した水位検出情報に基づいて、排水ポンプ6に動作指令を送出して排水ポンプ6の動作を制御する排水制御部91と、当該水位検出情報及び目標水位Tに基づいて弁装置3に動作指令を送出して弁装置3の開閉状態を制御する水位制御部92とを含む場合を示している。
【0041】
図1に示すように、制御部9が土槽1の水位Lを目標水位Tに制御する場合、制御部9は以下の制御を実行する。まず、水位制御部92(
図3参照)が、少なくとも目標水位Tに対応する高さ未満の高さ位置で土槽1に接続された排水管2に設けられた弁装置3を閉じる。本実施形態では、水位制御部92は全ての弁装置3を閉じる(閉弁工程の一例)。
【0042】
次に、水位制御部92(
図3参照)が、目標水位Tに対応する高さ以上の高さ位置で土槽1に接続された排水管2に設けられた弁装置3を開き、土槽1から貯水槽4に滞留水Wを排水させる(開弁工程の一例)。目標水位Tに対応する高さ以上の高さ位置で土槽1に接続された排水管2に設けられた弁装置3を開くと、土槽1の水位Lが、目標水位Tに対応する高さ以上の高さ位置で土槽1に接続された排水管2のうち、最も低い位置の排水管2の底部と高さと同じ高さ(本実施形態では目標水位Tに同じ)になるまで滞留水Wが貯水槽4に排水されて、土槽1の水位Lが目標水位Tに調整される。
【0043】
なお、貯水センサ5が貯水を検知(検知工程の一例)している場合、目標水位Tに対応する高さ以上の高さ位置で土槽1に接続された排水管2に設けられた弁装置3を開く前に又は同時に、排水制御部91(
図3参照)が排水ポンプ6で貯水槽4を排水するとよい(排水工程の一例)。これにより、貯水槽4の水位を低下させ、土槽1の排水を確実に行うことができる。
【0044】
本実施形態では、排水制御部91が排水ポンプ6で貯水槽4を排水すると同時に又はその後に、水位制御部92が目標水位Tに対応する高さ以上の高さ位置で土槽1に接続された排水管2の弁装置3のうち、閉状態の最も高い位置の弁装置3を開き、土槽1から貯水槽4に滞留水Wを排水させる。貯水センサ5が貯水を検知していない場合、水位制御部92が目標水位Tに対応する高さ以上の高さ位置で土槽1の土槽容器10に接続された排水管2の弁装置3のうち、閉状態の最も高い位置の弁装置3を開き、土槽1から貯水槽4に滞留水Wを排水させる。以後、目標水位Tに対応する高さ位置で土槽1の土槽容器10に接続された排水管2の弁装置3を開くまで、貯水槽4の排水と閉状態の最も高い位置の弁装置3の開弁とを交互に繰り返し、土槽1の水位Lを目標水位Tに調整する。このように、貯水槽4を排水しつつ、目標水位Tに対応する高さ以上の高さ位置で土槽1に接続された排水管2の弁装置3のうち、閉状態の最も高い位置の弁装置3から順に開いていくことにより、土槽1からの排水を確実ならしめる。
【0045】
上述した端末装置Cとして機能させるために、プログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッドなどであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0046】
コンピュータは、プロセッサと、記憶部と、入力部と、出力部と、通信インターフェースとを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)などであり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサは、記憶部からプログラムを読み出して実行することで、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。なお、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。入力部は、ユーザの入力操作を受け付けてユーザの操作に基づく情報を取得する入力インターフェースであり、ポインティングデバイス、キーボード、マウスなどである。出力部は、情報を出力する出力インターフェースであり、ディスプレイ、スピーカなどである。通信インターフェースは、外部の装置と通信するためのインターフェースである。
【0047】
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリなどであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0048】
本実施形態では、例えば記憶部に記憶された土槽水位調整機能を実現させるプログラムの実行により、プロセッサに制御部9の機能を実現させることができる。制御部9は、例えば記憶部に記憶された目標水位Tに基づいて水位L(
図1参照)を制御することができる。目標水位Tは、例えば端末装置Cに接続されたキーボードやマウスなどの入力装置を介して水位調整土槽システム100の使用者が端末装置Cに入力することができる。
【0049】
以下では、更に
図4に示すフローチャートを用いて、土槽1の水位Lの調整方法の一例を具体的に説明する。以下の説明では簡便のため、排水制御部91及び水位制御部92による制御を包括して単に、制御部9の制御として説明する。また、ステップS1などの記載は、単にS1などと省略して記載する。また、変数kを1以上n以下の整数と定義し、止水栓B1~Bnのいずれか一つを示す場合は、止水栓Bkと記載する。
【0050】
土槽1の水位Lの調整が開始されると、制御部9は止水栓B1~Bn(弁装置3)の全てを閉じる(S1)。S1を実行後、S2へ移行する。
【0051】
S2では、水位検出情報に基づいて、貯水センサ5が水位を検知しているか否かを制御部9が判定する。貯水センサ5が水位を検知していない場合(S2のNo)は、そのままS3へ移行する。貯水センサ5が水位を検知している場合(S2のYes)は、S7へ移行し、制御部9が排水ポンプ6で貯水槽4を排水してからS3へ移行する。なお、本実施形態において、貯水センサ5が水位を検知している場合とは、貯水センサ5が貯水槽4の水位がゼロではないと検知している場合のことを言い、貯水センサ5が水位を検知していない場合とは、貯水センサ5が貯水槽4の水位がゼロであると検知している場合のことを言う。
【0052】
S3では、変数kに1を代入し、制御部9が最初に開く弁装置3として止水栓B1を選択してS4へ移行する。
【0053】
S4では、制御部9が止水栓Bkを開き、土槽1から滞留水Wを排水させて、S5へ移行する。
【0054】
S5では、水位検出情報に基づいて、貯水センサ5が水位を検知しているか否かを制御部9が判定する。貯水センサ5が水位を検知していない場合(S5のNo)は、そのままS6へ移行する。貯水センサ5が水位を検知している場合(S5のYes)は、S8へ移行し、制御部9が排水ポンプ6で貯水槽4を排水してからS6へ移行する。
【0055】
S6では、目標水位Tに基づいて、止水栓B1~Bnのうち、目標水位Tに対応する高さ位置の止水栓(弁装置3)を開いたか否かを制御部9が判定する。目標水位Tに対応する高さ位置の止水栓(弁装置3)を開いている場合(S6のYes)は、土槽1の水位Lの調整を終了する。目標水位Tに対応する高さ位置の止水栓を開いていない場合(S6のNo)は、S9へ移行し、変数kの値を1だけ増加させ(k=k+1)、S4へ戻る。なお、
図1の場合は、管P2の下部が目標水位Tに対応する高さ位置と一致することから、管P2に設けられた止水栓B2が目標水位Tに対応する高さ位置の止水栓に該当する。
図1の場合では、S4で目標水位Tに対応する高さ位置の止水栓B2を開いた場合は、S6で土槽1の水位Lの調整を終了する(S6のYes)。
【0056】
図5には、水位調整後の水位調整土槽システム100の状態を示している。
図5では、土槽1の滞留水Wの水位は水位L2に調整されている。水位L2は、目標水位Tと同じ水位である。
図5の場合では、モデル埋設物Xが、路床12中において、滞留水Wが存在していない領域内に位置している。例えば、モデル埋設物Xを地中レーダーによって検出する実験を行う場合、排水槽200によって土槽1の水位Lを調整し、モデル埋設物Xと水位Lとの位置関係が地中レーダーによるモデル埋設物Xの検出状態に対してどのような影響を及ぼすのか、といった評価等をすることが可能となる。より具体的には、土槽1の状態を
図1に示す状態と
図5に示す状態とに切り替えて、滞留水Wの存在している領域内にモデル埋設物Xが存在する場合と滞留水Wが存在していない領域内にモデル埋設物Xが存在している場合とにおける、モデル埋設物Xの地中レーダーによる検出状態の違いを評価等することが可能となる。
【0057】
以上のようにして、土槽に充填されている地盤材料中の水位を調整することができる水位調整土槽システム、排水槽及び水位調整方法を提供することができる。
【0058】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、土槽容器10や貯水槽4が地中に埋設されている場合を例示して説明したが、これに限られない。土槽容器10や貯水槽4は、
図6に示すように、地面G上に配置してもよい。この場合、貯水槽4の隔壁40は、非透水性の材料で形成することが好ましい。
【0059】
(2)上記実施形態では、貯水槽4は、柱状に形成されている場合を例示して説明した。そして、貯水槽4における地中に埋設されている隔壁40は透水性の素材で形成されており、隔壁40を介して排水Dを地中に浸透させて排水可能となっている場合を例示して説明した。しかし、貯水槽4の態様はこのような場合に限られない。
【0060】
図7に示すように、貯水槽4には更に、透水性の素材で形成されており、隔壁40から貯水槽4の外部へ延出する透水管49を設けてもよい。透水管49は、その内部空間が貯水槽4内と連通し、透水管49を介して貯水槽4内の排水Dを土中に浸透させて排水することができる。これにより、更に排水の効率を向上させ、コストを低減することができる。
図7では、複数(一例として2本)の透水管49が側壁40sから水平方向に沿い延出している場合を図示しているが、透水管49を底壁40bから延出させてもよい。
図7では、透水管49が直管である場合を例示して図示しているが、透水管49は曲管などであってもよい。また、透水管49は水平に沿い配置される場合に限られず、傾斜したり鉛直方向に沿い配置したりしてもよい。
【0061】
(3)上記実施形態では、貯水槽4は、柱状に形成されている場合を例示して説明した。しかし、貯水槽4の形状はこのような場合に限られない。
図8に示すように、隔壁40における側壁40sの一部又は全部を鉛直方向と交差するように傾斜させてもよい。
図8に示す場合では、貯水槽4の垂直断面が上辺より下辺が長い台形状に形成されている。また、
図9に示すように、隔壁40における底壁40bを水平方向と交差するように傾斜させてもよい。
図9に示す場合では、貯水槽4の全部又は下方部分の形状が下方に突出する四角錐状に形成されている。その他、貯水槽4の全部又は下方部分の形状を円錐状等に形成してもよい。このように、側壁40sや底壁40bを傾斜させることで、貯水槽4の単位容量当たりにおける隔壁40の表面積を増加せしめ、これにより隔壁40からの排水Dの浸透による土中への排水速度を増大させることができる。そして、更に排水の効率を向上させ、コストを低減することができる。
【0062】
なお、
図8では、側壁40sにおける底部が貯水槽4の外側に開くように傾斜する場合を例示しているが、側壁40sにおける上部が貯水槽4の外側に開くように傾斜してもよい。また、
図9では、底壁40bにおける中央部分が下方へ窪み、外周部分が上方へ持ち上がるように傾斜する錐体状となっている場合を例示しているが、底壁40bにおける中央部分が上方へ持ち上がるように傾斜させてもよい。
【0063】
(4)上記実施形態では、S7において、制御部9が排水ポンプ6で貯水槽4を排水してからS3へ移行する場合を説明したが、制御部9が排水ポンプ6で貯水槽4を排水しながらS3へ移行するようにしてもよい。
【0064】
(5)上記実施形態では、S8において、制御部9が排水ポンプ6で貯水槽4を排水してからS3へ移行する場合を説明したが、制御部9が排水ポンプ6で貯水槽4を排水しながらS6へ移行するようにしてもよい。
【0065】
(6)上記実施形態では、S2やS5において、貯水センサ5が水位を検知しているか否かを判定する場合を例示して説明したが、これに代えて、貯水センサ5が検知した貯水槽4の水位が所定の水位(一例として、目標水位Tに対応する高さ未満の水位)未満であるか否かを判定するように変形してもよい。S5を例示して説明すると、貯水センサ5が所定の水位未満であると検知している場合(S5のNo)は、そのままS6へ移行し、貯水センサ5が所定の水位以上を検知している場合(S5のYes)は、S8へ移行するようにしてもよい。S2についてもS5と同様に変形可能である。S2やS5においては、貯水槽4の水位が、目標水位Tに対応する高さ位置の止水栓(弁装置3)を開いた際に当該開かれた止水栓から排水可能な水位、すなわち、目標水位Tに対応する高さ未満の水位であるか否かを判定すれば足りる。
【0066】
(7)上記実施形態では、排水槽200が貯水槽4から排水Dを排水する排水ポンプ6と貯水槽4の貯水状態を検知する貯水センサ5とを備えている場合を例示して説明したが、貯水センサ5と排水ポンプ6とは必須ではなく省略可能である。
図4に示すフローチャートで示した土槽1の水位Lの調整方法を例示して説明すると、貯水センサ5と排水ポンプ6とを省略する場合、
図4に示すフローチャート中のS2、S5、S7及びS8を省略する。なお、貯水槽4は、排水ポンプ6が省略された場合であっても、上記実施形態で述べたように、隔壁40を介して排水Dを地中に浸透させて排水可能となっていれば足りる。
【0067】
なお、貯水槽4からの排水Dの排水を地中への浸透のみで行う場合は、貯水槽4の容量を十分大きくして、常に、土槽1の水位Lが貯水槽4の水位以上となる関係を維持する必要がある。そのため、周辺土壌への透水性をあらかじめ確認したうえで、貯水槽4の容積を決定することが好ましい。貯水槽4の容積を決定する試験方法としては例えば、周辺土壌において、一定容積の水が一定面積の土質に対し、どれくらいの時間で浸透していくかを確認するとよい。例えば、土槽1の構築時の掘削孔に対し、ビーカーやバケツなどの容積と面積が既知である入れ物に水を入れ、周辺土質ではどの程度浸透に時間がかかるかを確認し、ここで得た知見をもとに土槽1内の水量から必要となる貯水槽4の容積を決定するとよい。
【0068】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、水位調整土槽システム、排水槽及び水位調整方法に適用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 :土槽
2 :排水管
3 :弁装置
4 :貯水槽
5 :貯水センサ
6 :排水ポンプ
9 :制御部
10 :土槽容器
11 :路盤
11a :密粒度アスファルトコンクリート層
11b :粗粒度アスファルトコンクリート層
11c :粒度調整砕石層
11d :切込砂利層
12 :路床
40 :隔壁
40b :底壁
40s :側壁
41 :ポート
49 :透水管
91 :排水制御部
92 :水位制御部
100 :水位調整土槽システム
200 :排水槽
B1~Bk:止水栓
C :端末装置
D :排水
G :地面
L :水位
L1 :水位
L2 :水位
N :通信路
P1~Pn:管
S :地盤材料
T :目標水位
W :滞留水
X :モデル埋設物
k :変数