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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20231130BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20231130BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20231130BHJP
   B65H 29/58 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B65H5/06 D
G03G15/20 510
G03G15/00 460
B65H29/58 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019185392
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021059439
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正志
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-048961(JP,A)
【文献】特開2007-022783(JP,A)
【文献】特開2011-081074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
B65H 29/58
G03G 15/00
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成手段と、
シートに形成された画像を定着する定着手段と、
前記定着手段により画像が定着されたシートを搬送経路の互いに異なる箇所で搬送する複数のシート搬送手段とを有する画像形成装置において、
前記複数のシート搬送手段の少なくもと一つは、搬送方向と直交する幅方向において、シートの中央側の領域に間隔を置いて配置された複数の中央振分ロール体を備えるか、または、前記中央側の領域に配置された中央ロール体と、前記中央ロール体の両側に間隔を置いて配置された両側ロール体とを備えるかし、
スイッチバックさせてから装置外へ排紙するためのスイッチバック経路と、前記スイッチバック経路を通ることなく装置外へ排紙するストレート排紙経路とを有し、
前記スイッチバック経路と前記ストレート排紙経路のそれぞれに、前記中央ロール体と前記両側ロール体とを備えたシート搬送手段を含む前記複数のシート搬送手段を設け、
前記スイッチバック経路におけるステッチバック後のシートの先端部を搬送する箇所のシート搬送手段として、前記中央ロール体と前記両側ロール体とを備えたシート搬送手段を用い、
前記スイッチバック経路における前記両側ロール体が、前記ストレート排紙経路における前記両側ロール体よりも前記幅方向で外側に位置することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
前記複数のシート搬送手段は、前記複数の中央振分ロール体を備えたシート搬送手段と、前記中央ロール体と前記両側ロール体とを備えたシート搬送手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2の画像形成装置において、
前記複数のシート搬送手段は1以上のロール体を備えたものであり、前記複数のシート搬送手段の各ロール体がシートと接触する前記幅方向の範囲を総合した範囲は前記幅方向で連続していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3の画像形成装置において、
前記シートと接触する前記幅方向の範囲が互いに隣り合う範囲は重複箇所を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3又は4の画像形成装置において、
前記総合した範囲は、前記幅方向における最大画像領域を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の画像形成装置において、
前記総合した範囲は、前記幅方向における最大画像領域よりも狭いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一に記載の画像形成装置において、
前記複数のシート搬送手段の少なくとも一つは、前記中央ロール体と前記両側ロール体とを備えたシート搬送手段であり、
前記中央ロール体よりも前記両側ロール体の方が前記幅方向の長さが短いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一に記載の画像形成装置において、
前記複数のシート搬送手段は、シートの両面側に対でロール体を備え、回転駆動される複数のロール体は同軸に設けられ、前記回転駆動される複数のロール体にシートを挟んで従動回転される複数のロール体は、ロール体毎に軸支されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一に記載の画像形成装置において、
前記複数のシート搬送手段は、ロール体を突出させるための開口を備えた樹脂製のガイド部材を有することを特徴とする画像形成装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに画像を形成する画像形成手段と、シートに形成された画像を定着する定着手段と、定着手段により画像が定着されたシートを搬送経路の互いに異なる箇所で搬送する複数のシート搬送手段とを有する画像形成装置が知られている。
例えば、特許文献1には、次の画像形成装置が記載されている。定着器(定着手段)から排出された記録媒体(シート)における画像を形成する最大領域の、搬送方向に直交する直交方向の一部を挟み込む、互いの回転軸が平行関係を保って配備された1対のロール体を、その直交方向の1箇所以上に配備した搬送ロール部材が、その搬送方向に複数配置された搬送手段を備える。1対のロール体それぞれが挟み込む記録媒体の領域を足し合わせた領域が最大領域の直交方向全域に及ぶ。これによれば、トナー像が均一に冷却されるとともに、1対のロール体単体で最大領域を挟むものと異なり、記録材のシワの発生も抑えることができるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、搬送するシートをスキューさせてしまう虞が残っていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明は、シートに画像を形成する画像形成手段と、シートに形成された画像を定着する定着手段と、前記定着手段により画像が定着されたシートを搬送経路の互いに異なる箇所で搬送する複数のシート搬送手段とを有する画像形成装置において、前記複数のシート搬送手段の少なくもと一つは、搬送方向と直交する幅方向において、シートの中央側の領域に間隔を置いて配置された複数の中央振分ロール体を備えるか、または、前記中央側の領域に配置された中央ロール体と、前記中央ロール体の両側に間隔を置いて配置された両側ロール体とを備えるかし、スイッチバックさせてから装置外へ排紙するためのスイッチバック経路と、前記スイッチバック経路を通ることなく装置外へ排紙するストレート排紙経路とを有し、前記スイッチバック経路と前記ストレート排紙経路のそれぞれに、前記中央ロール体と前記両側ロール体とを備えたシート搬送手段を含む前記複数のシート搬送手段を設け、前記スイッチバック経路におけるステッチバック後のシートの先端部を搬送する箇所のシート搬送手段として、前記中央ロール体と前記両側ロール体とを備えたシート搬送手段を用い、前記スイッチバック経路における前記両側ロール体が、前記ストレート排紙経路における前記両側ロール体よりも前記幅方向で外側に位置することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、搬送するシートのスキューを従来に比して抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係るシート冷却装置を採用できる画像形成装置の斜視図。
図2】画像形成装置の内部構造の概略構成図。
図3】反転排紙経路の斜視図。
図4】反転排紙経路の説明図。
図5】反転排紙経路におけるシート冷却効果の説明図。
図6】ストレート排紙経路におけるシート冷却効果の説明図。
図7】ストレート排紙経路の具体例の正面図。
図8】ストレート排紙経路の金属ガイドの斜視図。
図9】ストレート排紙経路の樹脂ガイド部材の斜視図。
図10】同樹脂製ガイド部材の斜視図。
図11】同樹脂製ガイド部材の斜視図。
図12】反転排紙経路の具体例の正面図。
図13】右側樹脂ガイド部材の斜視図。
図14】入口樹脂ガイド部材と左側樹脂ガイド部材の斜視図。
図15】入口樹脂ガイド部材の斜視図。
図16】左側樹脂ガイド部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は実施形態に係るシート冷却装置を採用できる画像形成装置1の一例の斜視図である。この画像形成装置1は、画像形成装置本体と、画像形成装置本体の上方に設けられた自動原稿搬送装置(ADF)2とを備えている。画像形成装置本体は、給紙部3と、画像読取部4と、画像形成部5と、操作部6から構成されている。画像形成部5の前側Fには、前ドア部を設けたトナー補給部7が配置されている。前側Fに引き出せる引き出しユニット8が構成されている。左側面は、排紙部としての排紙トレイ9が設けられている。画像形成装置1の前側Fとは画像形成装置1の手前側を意味するとともに、後ろ側Rとは画像形成装置1の奥側を意味する。
【0008】
引き出しユニット8内に後述する定着装置113など設けられている。定着装置113を取り外す際には、引き出しユニット8を図1に示すように引き、装置前面(F方向)に完全に引き出した状態で着脱動作を行う。
【0009】
図2は画像形成装置1の内部構造の概略構成図である。この画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4色のトナーを用いるフルカラー複写機である。装置本体内の上部にそれぞれ各色トナーで作像を行う4つの作像ユニット(画像形成部)101Y、101M、101C、101Kを並べて配置している。各作像ユニット101Y、101M、101C、101Kの構成とその動作は実質的に同一であるため、ここでは色を示す符号(Y、M、C、K)を省略して作像ユニットについて説明する。作像ユニット101においては、像担持体としての感光体ドラム102の周囲に、帯電器103、現像装置104、クリーニング装置105等が配置されている。また、感光体ドラム102の上方に位置して、露光手段107が配置されている。
【0010】
4つの作像ユニット101Y、101M、101C、101Kの下方には、複数の支持ローラに掛け回された中間転写ベルト108が配置されている。中間転写ベルト108は、支持ローラの一つが駆動手段によって回転駆動されることにより、矢印A方向に走行駆動される。その中間転写ベルト108を挟んで各作像ユニットの感光体ドラム102に対向するように、一次転写手段としての転写ローラ106が配置されている。
【0011】
各作像ユニット101においては、感光体ドラム102が図中反時計回りに回転駆動され、帯電器103によって感光体表面が所定の極性に均一に帯電される。次いでその帯電面に、露光手段107から出射される光変調されたレーザビームが照射され、これによって感光体ドラム102上に静電潜像が形成される。その静電潜像は、現像装置104から付与されるトナーによって現像され、トナー像として可視化される。各作像ユニットで形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色トナー像は、中間転写ベルト108上に順次重ね合わされて転写される。
【0012】
一方、装置本体の下部には収容トレイ114a及び114bを有する給送部114が設けられており、この給送部114から例えば転写紙などのシートが給送される。給送されたシートは、レジストローラ111に向けて矢印Bの如く搬送される。
【0013】
レジストローラ111に突き当てられて一旦停止されたシートは、中間転写ベルト108上のトナー像とのタイミングを取ってレジストローラ111より送出され、二次転写ローラ109と中間転写ベルト108とが接する二次転写部に送り込まれる。その二次転写ローラ109にトナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加され、これによって中間転写ベルト108上の重ねトナー像(フルカラー画像)がシート上に転写される。トナー像転写後のシートは、搬送ベルト112により定着装置113へ搬送され、定着装置113にて熱と圧力によりトナーがシートに定着される。トナー像定着後のシートは、矢印Cで示すように機外に排出され、排紙トレイ9上に排出される。
【0014】
トナー像定着後のシートの排紙経路には、ストレート排紙経路と、反転排紙経路(スイッチバック経路)とがある。ストレート排紙経路は、矢印Eで示す方向に排紙中継ローラ130で搬送され、排紙ローラ131により矢印Cで示すように機外の排紙トレイ9に排紙される経路である。反転排紙経路(スイッチバック経路)は、反転入口ローラ120、排紙反転ローラ121を経てシート反転部115の搬送路方向へ矢印Dで示すように搬送された後一旦停止し、排紙反転ローラ121が逆回転することでスイッチバックさせて排紙ローラ131に送り込み、矢印Cで示すように機外の排紙トレイ9に排紙される経路である。この反転排紙経路は片面印刷で裏面排出(フェイスダウン排出)する場合などに使用される。
【0015】
両面印刷の場合は、定着後のシートを反転入口ローラ120、排紙反転ローラ121を経て両面反転部116に送り込み、ここで搬送の先端と後端を入れ替えて再給送路117に送りこみ、再給送路117を経てレジストローラ111へと再給送する。そして、シート裏面に中間転写ベルト108よりトナー像が転写される。トナー像転写後のシートは定着装置113で定着が行われ、片面印刷時と同じように定着装置113から矢印Cで示すように、あるいはシート反転部115を経て矢印Cで示すように機外に排出され、排紙トレイ上に排出される。シート搬送方向を切り替えるための切替爪118、119が適宜配置されている。
【0016】
ストレート排紙経路と反転排紙経路(あるいは両面反転部)との間でシート搬送方向を切り替える切替爪118と定着装置113との間には、冷却のためのエアーを吹き付ける吹き出し口140、141が配置されている。このエアーによる冷却に加えロール体の接触によりシートを冷却するのに、ストレート排紙経路における排紙中継ローラ130と排紙ローラ131、および、反転排紙経路における反転入口ローラ120と排紙反転ローラ121を用いている。各経路における2つのローラ(130と131、120と121)それぞれが、定着されたシートを搬送経路の互いに異なる箇所で搬送する複数のシート搬送手段に相当する。
【0017】
図3は反転排紙経路における反転入口ローラ120と排紙反転ローラ121を示す斜視図である。図4(a)は正面図、図4(b)は左側面に立ってみた平面図、図4(c)は左側面図である。反転入口ローラ120は、排紙反転駆動ローラ軸120aと排紙反転駆動ローラ軸120aに圧入された所定間隔Xを隔てて設けられた所定幅を有する反転入口駆動第1ローラ120Fと反転入口駆動第2ローラ120Rとを有する。さらに、駆動ローラに対向する反転入口従動第1ローラ120´Fと反転入口従動第2ローラ120´Rとを有する。反転入口駆動第1ローラ120F、反転入口駆動第2ローラ120R、反転入口従動第1ローラ120´Fおよび反転入口従動第2ローラ120´Rが中間振分ロール体に相当する。反転入口従動第1ローラ120´Fと反転入口従動第2ローラ120´Rは、それぞれの軸によって軸支されている。具体例については後に説明する。
【0018】
排紙反転ローラ121は、排紙反転駆動ローラ軸120aと排紙反転駆動ローラ軸120aに圧入された前記所定間隔X以上の幅Yを有し前記所定間隔Xに対向する(所定間隔Xがすべて幅Y内に収まる)ように配置された排紙反転駆動第1ローラ121Cと排紙反転駆動第1ローラ121Cの両側に隣接配置され排紙反転駆動第2ローラ121Fおよび排紙反転駆動第3ローラ121Rとを有する。排紙反転駆動第2ローラ121Fと排紙反転駆動第3ローラ121Rは、排紙反転駆動第1ローラ121Cよりもローラ幅が小さい。さらに、駆動ローラに対向する排紙反転従動第1ローラ121´C、排紙反転従動第2ローラ121´F、および、排紙反転従動第3ローラ121´Rを有する。排紙反転駆動第1ローラ121Cと排紙反転従動第1ローラ121´Cが、中央ロール体に相当する。これらの両側の排紙反転駆動第2ローラ121F、排紙反転駆動第3ローラ121R、排紙反転従動第2ローラ121´F、および、排紙反転従動第3ローラ121´Rが両側ロール体に相当する。排紙反転従動第1ローラ121´C、排紙反転従動第2ローラ121´F、および、排紙反転従動第3ローラ121´Rは、それぞれの軸によって軸支されている。具体例については後に説明する。
【0019】
反転入口ローラ120はDCモータ122を駆動源としプーリ123、タイミングベルト124、プーリ125を介して回転する。排紙反転ローラ121はDCモータ126を駆動源としプーリ127、タイミングベルト127a、ギヤプーリ128a、ギヤプーリ128b、タイミングベルト129、プーリ129aを介して回転する。
【0020】
図5は反転入口ローラ120と排紙反転ローラ121とによる図2中に矢印Dで示した向きの搬送中の各ローラによるシート冷却効果の説明図である。定着装置113によって加熱され温度が上昇したシートが反転入口ローラ120で搬送されると、図5(a)で示される範囲Eがニップされるためシートの温度が低下する。さらに、排紙反転ローラ121で搬送されると図5(b)で示される範囲Fと反転入口ローラ120と重畳している範囲Gの温度が低下する。シート温度低下はEの範囲よりもGの方が大きい。搬送ローラとシートが接触する範囲は画像の最大領域幅を超えていることが望ましいが、シート端部はシート中央部より温度低下する時間が速いため搬送ローラ対とシートが接触する範囲は必ずしも最大領域幅を超えていなくても良い。
【0021】
搬送ローラのロール体の対にニップされた範囲はシートの熱が搬送ローラ対に奪われるため、ローラ対と用紙の総接触量によりシート温度が変わる。シート全幅に接触するローラを複数配置することが冷却性能としては好ましいが、ローラ幅をシート全幅にすると搬送ガイド板の強度低下や搬送センサの配置が困難になる。また、ローラの中央が撓むとシワ等の搬送不具合の原因にもなる。そこで、本実施形態ではローラをシートの広範囲に接触させるとともに、接触部の重畳箇所を設けて冷却性能を向上する。なお、重畳箇所を設けることはローラの軸方向での位置のバラツキで何れのローラにも接触しないシート部分が生じるのを防止するのに有効であるが、十分な組み付け精度を確保できる場合には、重複箇所を生じさせなくてもよい。この方が冷却度合いのばらつきによる光沢度のムラを抑制できる点では有利である。
【0022】
図6はストレート排紙経路における排紙中継ローラ130と排紙ローラ131とによる図2中矢印Cで示す向きの搬送中の各ローラによるシート冷却効果の説明図である。排紙ローラ131は、反転入口ローラ120と同様の構成になっている。排紙駆動ローラ軸131aとこの軸に圧入された所定間隔を隔てて設けられた所定幅を有する排紙駆動第1ローラ131Fと排紙駆動第2ローラ131R、駆動ローラに対向する排紙従動第1ローラ131´Fと排紙従動第2ローラ131´Rからなる。これらの各ローラが中間振分ロール体に相当し、排紙従動第1ローラ131´Fと排紙従動第2ローラ131´Rは、それぞれの軸によって軸支されている。
【0023】
排紙中継ローラ130は、排紙反転ローラ121と同様の構成になっている。排紙中継ローラ130は、排紙中継駆動ローラ軸130aとこの軸に圧入された前記所定間隔以上の幅を有し前記所定間隔に対向するように配置された排紙中継駆動第1ローラ130Cと排紙中継駆動第1ローラ130Cの両側に隣接配置され前記ローラ幅よりも小さい幅を有する排紙中継駆動第2ローラ130Fおよび排紙中継駆動第3ローラ130Rを有する。さらに、駆動ローラに対向する排紙中継従動第1ローラ130´C、排紙中継従動第2ローラ130´F、および、排紙中継従動第3ローラ130´Rを有する。排紙中継駆動第1ローラ130Cと排紙中継従動第1ローラ130´Cが、中央ロール体に相当する。これらの両側の排紙中継駆動第2ローラ130F、排紙中継駆動第3ローラ130R、排紙中継従動第2ローラ130´F、および、排紙中継従動第3ローラ130´Rが両側ロール体に相当する。排紙中継従動第1ローラ130´C、排紙中継従動第2ローラ130´F、および、排紙中継従動第3ローラ130´Rは、それぞれの軸によって軸支されている。
【0024】
このストレート搬送経路においても、図5に示す反転入口ローラ120と排紙反転ローラ121とによるのと同様の冷却を行うことができる。なお、図6に示すストレート搬送経路における両側ロール体である排紙中継駆動第2ローラ130F、排紙中継駆動第3ローラ130R、排紙中継従動第2ローラ130´F、および、排紙中継従動第3ローラ130´Rは、図5との比較から明らかなように、スイッチバック経路における両側ロール体(排紙反転駆動第2ローラ121F、排紙反転駆動第3ローラ121R、排紙反転従動第2ローラ121´F、および、排紙反転従動第3ローラ121´R)よりも幅方向の内側(中央側)に位置する。逆に言えば後者は前者よりも幅方向で外側に位置する。これは次の理由による。
【0025】
上述のようにシート端部はシート中央部より温度低下する時間が速い。逆に言えばシート中央部の方が温度低下しにくい。ストレート搬送経路においては、両側ロール体を比較的幅方向の内側に寄せて配置することで、重畳箇所をシート中央部に集中させ、シート中央部の温度低下を促進させているのである。これに対し、反転排紙経路では、両側ロール体を備えた排紙反転ローラ121が、ステッチバック後のシートの先端部を搬送する箇所に配置されている。このためスイッチバック後に排紙反転ローラ121のみの駆動でシートを搬送する時期が生じる。シートをスキューなど起こさずに搬送するにはシートの幅方向で可能な限り外側をローラ対で挟むことが望ましい。よって、排紙反転ローラ121における両側ロール体である排紙反転駆動第2ローラ121F、排紙反転駆動第3ローラ121R、排紙反転従動第2ローラ121´F、および、排紙反転従動第3ローラ121´Rは、排紙中継ローラ130における両側ロール体よりも外側に配置しているのである。排紙中継ローラ130は上流側に定着装置113や他の搬送ローラがあり、単独でシート先端を搬送することない。
【0026】
以上、本実施形態では、定着手段により画像が定着されたシートを搬送経路の互いに異なる箇所で搬送する複数のシート搬送手段として、ストレート搬送経路の排紙中継ローラ130と排紙ローラ131や、反転排紙経路における反転入口ローラ120と排紙反転ローラ121を、複数の中央振分ロール体を備えたシート搬送手段と、中央ロール体と両側ロール体とを備えたシート搬送手段とで構成した。これに対し特許文献1に記載の定着後の搬送方向に複数配置された搬送手段は、幅方向の中央から幅方向一端側に延在するローラを備えた搬送手段と、幅方向の中央から幅方向他端側に延在するローラを備えた搬送手段とからなる。このため、シートの幅方向の両端側を同時に挾持して搬送することがないので、スキューが発生し易い。本実施形態では、複数の中央振分ロールや両側ロール体という、特許文献1のものに比べて、シートの両端側を同時に挾持して搬送できるシート搬送手段を用いる。よって、スキューの発生を従来に比して抑制できる。
【0027】
また、たとえば図4(b)に示すように、排紙反転駆動第1ローラ121Cが、反転入口駆動第1ローラ120Fと反転入口駆動第2ローラ120Rとの間隔XX以上の幅Yを有し前記所定間隔Xに対向する(所定間隔Xがすべて幅Y内に収まる)ように配置されている。この結果、各ロール体(例えば120F、121C、120R)がシートと接触する幅方向の範囲を総合した範囲は幅方向で連続する。よって接触しない範囲が途中に生じる場合に比して均一な冷却が可能である。
【0028】
なお、搬送性及び冷却性の観点から省略可能であれば、例えば図6の例で中央ロール体と両側ロール体とを備えたローラにおいて、両側ロール体を省略してもよい。この場合にも、中央振分ロール体を備えたローラ(131F、131´F、131R、131´R)により、特許文献1に比してスキューの発生を抑制でき、また、中央振分ロール体間の間隔に相当するシート幅方向部分を、中央ロール体(130C、130´C)で冷却することができる。
【0029】
また、図示の例はいわゆるセンター基準の画像形成装置であるため、装置で定められている幅方向における最大画像領域の中央位置を中心にして左右対称になるように中央振分ロール体や、中央ロール体および両側ロール体を配置した。いわゆる端部基準の画像形成装置では、各サイズのシートができるだけ両側で挾持搬送できるように、各サイズに共通の幅方向における中央側領域を基準にして、中央振分ローラ体などの配置を設定する。最小サイズを考慮するとすべてのサイズに共通の中央側領域が存在しない場合には、大きい方のサイズから利用頻度が比較的高いサイズまでの共通の中央領域を基準とすればよい。
【0030】
図7乃至図11はストレート排紙経路の具体的な構成例を示すものである。図7は概略構成を示す正面図である。ストレート排紙経路を構成する排紙中継ローラ130と排紙ローラ131との間には図中下側の金属製の金属ガイド板150と図中上方の樹脂製の樹脂ガイド部材151が設けられている。樹脂ガイド部材151に排紙中継ローラ130及び排紙ローラの131の各従動ローラが支持されている。
【0031】
図8は樹脂ガイド部材151を取り外して金属ガイド板150側を見た斜視図である。各駆動ローラ(130F、130C、130R、131F、131R)が現れている。図9は樹脂ガイド部材151の搬送経路側を見た斜視図である。樹脂ガイド部材151には、搬送経路側とは反対側で軸支された各従動ローラ(131´F、131´R、130´F、130´C、130´R)を突出させる開口(151a乃至151e)が形成されている。なお、図8の符号161で示す部材やその開口(161a乃至161c)は後述する反転搬送経路に関する箇所で説明する(図12図15参照)。
【0032】
図10は樹脂ガイド部材151の搬送経路側を見た斜視図である。この斜視図では排紙ローラ131の各従動ローラ(131´F、131´R)の軸支用の部品について分解して示している。各従動ローラ(131´F、131´R)それぞれの軸が軸取り付け部材152aにより、ローラホルダ152に取り付けられ、ローラホルダ152が樹脂ガイド部材151に例えばネジで固定される。
【0033】
図11も樹脂ガイド部材151の搬送経路側を見た斜視図であり、この斜視図では排紙中継ローラ130の各従動ローラ(130´F、130´C、130´R)の軸支用の部品について分解して示している。各従動ローラ(130´F、130´C、130´R)それぞれの軸が軸取り付け部材153aにより、ローラホルダ153に取り付けられ、ローラホルダ153が樹脂ガイド部材151に例えばネジで固定される。
【0034】
図10図11から明らかなように、ローラが互いに間隔を空けて配置された複数のロール体としての各ローラから構成されているため、全幅を一本のロール体で構成する場合に比して、樹脂ガイド部材のロール突出用の開口も、間隔を置いて形成できる。このため、開口間のいわばリブになる部分が生じ、樹脂ガイド部材の強度を比較的強くできる。材質は樹脂以外の場合にも同様のことが言える。従動ローラではなく、駆動ローラの各ローラを突出する開口を備えた樹脂ガイド部材も用いる場合にも同様である。
【0035】
また、従動ローラの各ローラをそれぞれ軸支していることから次の利点もある。すなわち、軸支する箇所には多少の遊びを持たせてシートのシワ発生を抑えることができる。シートにシワを生じさせるような応力が生じた場合に、その応力を各従動ローラの姿勢変更によって逃がすことができるからである。シワの発生がすくない場合には、このような独立の軸支構造を採用しないこともできる。
【0036】
図12乃至図16は反転排紙経路の具体的な構成例を示すものである。図12は概略構成を示す正面図である。反転排紙経路を構成する反転入口ローラ120と排紙反転ローラ121との間には図中右側上方の樹脂製の入口樹脂ガイド部材161、図中右側下方の樹脂製の右側樹脂ガイド部材160、および、図中左側の樹脂製の左側樹脂ガイド部材162が設けられている。入口樹脂ガイド部材161に反転入口ローラ120の各従動ローラが、左側樹脂ガイド部材162に排紙反転ローラの各従動ローラがそれぞれ支持されている。
【0037】
図13は入口樹脂ガイド部材161と左側樹脂ガイド部材162を取り外して右側樹脂ガイド部材160側を見た斜視図である。右側樹脂ガイド部材160には排紙反転ローラ121の各駆動ローラ(120C、120F、120R)を突出させる開口(160a、160b、160c)が形成されている。
【0038】
図14は右側樹脂ガイド部材160を取り外して入口樹脂ガイド部材161と左側樹脂ガイド部材162を見た斜視図である。入口樹脂ガイド部材161には反転入口ローラ120の各従動ローラ(120´F、120´R)を保持するローラホルダ163がネジなどで固定されている。ストレート搬送経路を構成する排紙中継ローラ130の各駆動ローラ(130F、130C、130R)(図8参照)を進入させる開口(161a、161b、161c)も形成されている。
左側樹脂ガイド部材162には、搬送経路側とは反対側で軸支された排紙反転ローラ121の各従動ローラ(121´F、121´C、121´R)を突出させる開口(162a乃至162c)が形成されている。
【0039】
図15は入口樹脂ガイド部材161の搬送経路側を見た斜視図である。この斜視図では反転入口ローラ120の各従動ローラ(120´F、120´R)の軸支用の部品について分解して示している。各従動ローラ(120´F、120´R)それぞれの軸が軸取り付け部材163aにより、ローラホルダ163に取り付けられ、ローラホルダ163が入口樹脂ガイド部材161に例えばネジで固定される。
【0040】
図16は左側樹脂ガイド部材162の搬送経路とは反対側(裏側)を見た斜視図である。この斜視図では排紙反転ローラ121の各従動ローラ(121´F、121´C、120´R)の軸支用の部品について分解して示している。各従動ローラ(121´F、121´C、120´R)それぞれの軸が軸取り付け部材164aにより、ローラホルダ164に取り付けられ、ローラホルダ164が左側樹脂ガイド部材162に例えばネジで固定される。
【0041】
この反転排紙経路の具体構成例でも、ストリート排紙経路の具体構成例におけると同様に、ガイド部材の強度を高めたり、シートのシワを抑制できたりといった利点を有する。
【0042】
なお、以上は画像形成装置における排紙経路でのシート冷却装置について説明したが、同様の構成のシート冷却装置は画像形成装置以外にも適用できる。さらに、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 :画像形成装置
113 :定着装置
115 :シート反転部
116 :両面反転部
117 :再給送路
118 :切替爪
119 :切替爪
120 :反転入口ローラ
120F :反転入口駆動第1ローラ
120R :反転入口駆動第2ローラ
120a :排紙反転駆動ローラ軸
120´F :反転入口従動第1ローラ
120´R :反転入口従動第2ローラ
121 :排紙反転ローラ
121C :排紙反転駆動第1ローラ
121F :排紙反転駆動第2ローラ
121R :排紙反転駆動第3ローラ
121´C :排紙反転従動第1ローラ
121´F :排紙反転従動第2ローラ
121´R :排紙反転従動第3ローラ
122 :DCモータ
123 :プーリ
124 :タイミングベルト
125 :プーリ
126 :DCモータ
127 :プーリ
127a :タイミングベルト
128a :ギヤプーリ
128b :ギヤプーリ
129 :タイミングベルト
129a :プーリ
130 :排紙中継ローラ
130C :排紙中継駆動第1ローラ
130F :排紙中継駆動第2ローラ
130R :排紙中継駆動第3ローラ
130a :排紙中継駆動ローラ軸
130´C :排紙中継従動第1ローラ
130´F :排紙中継従動第2ローラ
130´R :排紙中継従動第3ローラ
131 :排紙ローラ
131F :排紙駆動第1ローラ
131R :排紙駆動第2ローラ
131a :排紙駆動ローラ軸
131´F :排紙従動第1ローラ
131´R :排紙従動第2ローラ
140 :吹き出し口
141 :吹き出し口
150 :金属ガイド板
151 :樹脂ガイド部材
152 :ローラホルダ
152a :軸取り付け部材
153 :ローラホルダ
153a :軸取り付け部材
160 :右側樹脂ガイド部材
161 :入口樹脂ガイド部材
162 :左側樹脂ガイド部材
163 :ローラホルダ
163a :軸取り付け部材
164 :ローラホルダ
X :所定間隔
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】
【文献】特開2005-284245号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16