(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】診断支援装置、診断支援方法および診断支援プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
A61B5/055 380
(21)【出願番号】P 2020541238
(86)(22)【出願日】2019-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2019034623
(87)【国際公開番号】W WO2020050272
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2018167734
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上羽 哲也
(72)【発明者】
【氏名】水口 紀代美
(72)【発明者】
【氏名】福田 仁
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-275141(JP,A)
【文献】特開2010-274059(JP,A)
【文献】特開2017-074320(JP,A)
【文献】特開2013-183875(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0105008(US,A1)
【文献】WANG Duo,Neural network fusion: a novel CT-MR aortic aneurysm image segmentation method,Proc. SPIE, Medical Imaging 2018,Int. Soc. Opt. Eng.,2018年03月02日,vol.10574,p.1057424-1~8
【文献】竹原康男,大動脈のMRI/MRA,脈管学,日本脈管学会,2010年01月22日,vol.49, No.6,p.503-516
【文献】川原信隆,臨床研修医のための画像医学教室 脳神経領域,医療科学社,2008年03月17日,p.80-85
【文献】KATZ, William T.,AORTA DETECTION IN MAGNETIC RESONANCE IMAGE USING MULTIPLE ARTIFICIAL NEURAL NETWORKS,Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society,1990年,Vol.12, No.3,p.1302-1303
【文献】KOVACS, Tamas,Automatic Segmentation of the Vessel Lumen from 3D CTA Images of Aortic Dissection, Bildverarbeitung fuer die Medizin 2006,Bildverarbeitung fuer die Medizin 2006,2006年,p.161-165
【文献】MORARIU, Cosmin Adrian,Sequential vs. Batch Machine-Learning with Evolutionary Hyperparameter Optimization for Segmenting Aortic Dissection Thrombus,23rd International Conference on Pattern Recognition,2016年,p.1189-1194
【文献】LEE Noah,True-false lumen segmentation of aortic dissection using multi-scale wavelet analysis and generative-discriminative model m atching,Proc. SPIE, Medical Imaging 2008,Int. Soc. Opt. Eng.,2008年03月17日,Vol.6915,p.69152V-1~11
【文献】CHANG Chih-Ping,The role of False Lumen Size in Prediction of In-Hospital Complications After Acute Type B Aortic Dissection,Journal of the American College of Cardiology,2008年,Vol.52, No.14,p.1170-1176
【文献】LI Jianning,Multi-Task Deep Convolutional Neural Network for the Segmentation of Type B Aortic Dissection,[online],2018年06月26日,[検索日 2019.11.18] インターネット: <URL:http://arxiv.org/abs/1806.09860v1>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管疾患の診断を支援する診断支援装置であって、
前記血管の断面を含む画像を取得する画像取得部と、
前記断面を横切る1本以上の線分を設定する線分設定部と、
前記線分における輝度分布を演算する輝度分布演算部と、
前記輝度分布を示す輝度分布曲線を作成する曲線作成部と、
前記輝度分布曲線を表示する表示部と、
を備え
、
前記血管疾患は脳動脈解離であり、
前記画像は、局所励起を用いた3T脂肪抑制T1強調画像、CTA元画像、またはMRA元画像である、診断支援装置。
【請求項2】
前記輝度分布に基づいて、前記疾患の有無を予測する予測部をさらに備えた、請求項
1に記載の診断支援装置。
【請求項3】
前記予測部は、前記線分における輝度の変化パターンに基づいて、前記疾患の有無を予測する、請求項
2に記載の診断支援装置。
【請求項4】
前記予測部は、前記線分における輝度の最大値と最小値との差に基づいて、前記疾患の有無を予測する、請求項
2または
3に記載の診断支援装置。
【請求項5】
前記予測部は人工知能を用いて予測する、請求項3に記載の診断支援装置。
【請求項6】
前記線分設定部は、少なくとも1箇所で互いに交差する4本以上の前記線分を設定する、請求項1から
5のいずれかに記載の診断支援装置。
【請求項7】
前記線分は、前記断面の中心領域を通過する、請求項
6に記載の診断支援装置。
【請求項8】
血管疾患の診断を支援する診断支援方法であって、
前記血管の断面を含む画像を取得する画像取得ステップと、
前記断面を横切る1本以上の線分を設定する線分設定ステップと、
前記断面の前記線分における輝度分布を演算する輝度分布演算ステップと、
前記輝度分布を示す輝度分布曲線を作成する曲線作成ステップと、
前記輝度分布曲線を表示する表示ステップと、
を備え
、
前記血管疾患は脳動脈解離であり、
前記画像は、局所励起を用いた3T脂肪抑制T1強調画像、CTA元画像、またはMRA元画像である、診断支援方法。
【請求項9】
血管疾患の診断を支援する診断支援装置としてコンピュータを動作させる診断支援プログラムであって、
前記血管の断面を含む画像を取得する画像取得部、
前記断面を横切る1本以上の線分を設定する線分設定部
、
前記断面の前記線分における輝度分布を演算する輝度分布演算部、
前記輝度分布を示す輝度分布曲線を作成する曲線作成部、および、
前記輝度分布曲線を表示する表示部、
としてコンピュータを動作させ
、
前記血管疾患は脳動脈解離であり、
前記画像は、局所励起を用いた3T脂肪抑制T1強調画像、CTA元画像、またはMRA元画像である診断支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管疾患の診断を支援する技術に関し、特に、動脈解離の診断を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
動脈解離とは、血管内の流血が、血管壁に進入して壁間を進展させたものと定義されている。動脈の血管壁は内側から、内弾性板、中膜および外膜で構成されており、動脈は、中膜が弾性繊維を豊富に含む弾性動脈と、中膜が弾性繊維を殆ど含まない筋性動脈とに分類される。筋性動脈では、中膜(中膜平滑筋)が柔らかいため、内弾性板が何らかの原因によって断裂すると、中膜平滑筋層へ血液が流入して偽腔が形成され、動脈解離が引き起こされる。
【0003】
筋性動脈としては、例えば、脳動脈、上腕動脈、大腿動脈、膝窩動脈などが含まれるが、動脈解離は、特に脳動脈において多く見られる。非特許文献1に記載の全国調査データによれば、日本人に多い脳動脈解離の発生部位は椎骨動脈および脳底動脈であることが示されている。
【0004】
脳動脈解離の臨床診断では、先行性頭痛の存在や、血管の経時的形状変化の他、画像診断が特に重要である。具体的には、動脈解離に特異的なintimal flap(以下、フラップとする)や偽腔内血腫の存在を、血管撮影、MRA(CE-MRA)元画像、CTA元画像などによって証明することにより、脳動脈解離の診断がなされる(非特許文献2)。特に、フラップの存在は、脳動脈解離の確実な指標とされている。
【0005】
また、本発明者らによる、血管の経時的形状変化や偽腔内血腫が確認された10名を対象とした調査では、椎骨脳底動脈解離のフラップおよび偽腔内血腫等の構造物の描出には、MRA元画像およびCTA元画像よりも、局所励起を用いた3T脂肪抑制T1強調画像(HR vfl-TSE法)が有用であることが示された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】山浦晶、他3名、「非外傷性頭蓋内解離性動脈病変の全国調査 (第1報)」、脳卒中の外科、1998年、26(2)、p.79-86
【文献】後藤淳、「脳動脈解離」、日本内科学会雑誌、2009年6月10日、第98巻、第6号、p.91-98
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし現状では、動脈解離の画像診断は、MRIのみで行われており脳血管撮影や組織学的証明がなされていない。また、フラップや偽腔内血腫の検出能は、脳血管画像を読影する医師や技師の定性的な評価に左右されるため、バイアスが入り込む余地がある。また、HR vfl-TSE法の分解能を用いても、解離腔内の構造物描出が不十分な症例もあり、読影による診断精度が高いとは言えない状況であった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、血管疾患の診断精度を向上させる診断支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、血管の断面画像に設定された線分における輝度分布に基づいて、疾患の予測が可能であることを見出した。
【0010】
即ち、本発明は以下の項に記載の発明を包含する。
項1.
血管疾患の診断を支援する診断支援装置であって、
前記血管の断面を含む画像を取得する画像取得部と、
前記断面を横切る1本以上の線分を設定する線分設定部と、
前記線分における輝度分布を演算する輝度分布演算部と、
を備えた、診断支援装置。
項2.
前記輝度分布を示す輝度分布曲線を作成する曲線作成部と、
前記輝度分布曲線を表示する表示部と、
をさらに備えた、項1に記載の診断支援装置。
項3.
前記輝度分布に基づいて、前記疾患の有無を予測する予測部をさらに備えた、項1または2に記載の診断支援装置。
項4.
前記予測部は、前記線分における輝度の変化パターンに基づいて、前記疾患の有無を予測する、項3に記載の診断支援装置。
項5.
前記予測部は、前記線分における輝度の最大値と最小値との差に基づいて、前記疾患の有無を予測する、項3または4に記載の診断支援装置。
項6.
前記予測部は人工知能を用いて予測する、項3に記載の診断支援装置。
項7.
前記血管は脳動脈である、項1から6のいずれかに記載の診断支援装置。
項8.
前記疾患は動脈解離である、項7に記載の診断支援装置。
項9.
前記線分設定部は、少なくとも1箇所で互いに交差する4本以上の前記線分を設定する、項1から8のいずれかに記載の診断支援装置。
項10.
前記線分は、前記断面の中心領域を通過する、項9に記載の診断支援装置。
項11.
前記画像は、局所励起を用いた3T脂肪抑制T1強調画像である、項1から10のいずれかに記載の診断支援装置。
項12.
前記画像は、CTA元画像である、項1から10のいずれかに記載の診断支援装置。
項13.
前記画像は、MRA元画像である、項1から10のいずれかに記載の診断支援装置。
項14.
血管疾患の診断を支援する診断支援方法であって、
前記血管の断面を含む画像を取得する画像取得ステップと、
前記断面を横切る1本以上の線分を設定する線分設定ステップと、
前記断面の前記線分における輝度分布を演算する輝度分布演算ステップと、
を備えた、診断支援方法。
項15.
血管疾患の診断を支援する診断支援装置としてコンピュータを動作させる診断支援プログラムであって、
前記血管の断面を含む画像を取得する画像取得部、
前記断面を横切る1本以上の線分を設定する線分設定部、および、
前記断面の前記線分における輝度分布を演算する輝度分布演算部、
としてコンピュータを動作させる診断支援プログラム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、血管疾患の診断精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る診断支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】(a)は、開存タイプの動脈解離の例を示す断面図であり、(b)~(d)はそれぞれ、当該断面に対応するHR vfl-TSE画像、MRA元画像およびCTA元画像である。
【
図3】(a)は、偽腔内血腫形成タイプの動脈解離の例を示す断面図であり、(b)~(d)はそれぞれ、当該断面に対応するHR vfl-TSE画像、MRA元画像およびCTA元画像である。
【
図4】(a)は、
図2(b)に示すHR vfl-TSE画像に4本の線分を設定した状態を示しており、(b)~(e)はそれぞれ、当該4本の各線分における各輝度分布曲線を示すグラフである。
【
図5】(a)は、
図3(b)に示すHR vfl-TSE画像に4本の線分を設定した状態を示しており、(b)~(e)はそれぞれ、当該4本の各線分における各輝度分布曲線を示すグラフである。
【
図6】(a)は、アーチファクトが現れた正常動脈の断面画像に4本の線分を設定した状態を示しており、(b)~(e)はそれぞれ、当該4本の各線分における各輝度分布曲線を示すグラフである。
【
図7】(a)は、
図2(c)に示すMRA元画像または
図2(d)に示すCTA元画像に4本の線分を設定した状態を示しており、(b)~(e)はそれぞれ、当該4本の各線分における各輝度分布曲線を示すグラフである。
【
図8】(a)は、
図3(c)に示すMRA元画像に4本の線分を設定した状態を示しており、(b)~(e)はそれぞれ、当該4本の各線分における各輝度分布曲線を示すグラフである。
【
図9】(a)は、
図3(d)に示すCTA元画像に4本の線分を設定した状態を示しており、(b)~(e)はそれぞれ、当該4本の各線分における各輝度分布曲線を示すグラフである。
【
図10】本発明の一実施形態に係る診断支援方法の手順を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の一実施形態の変形例に係る診断支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図12】開存タイプ動脈解離、偽腔内血腫形成タイプ動脈解離およびアテローム性動脈硬化の各輝度分布曲線における輝度差の分布を示す箱ひげ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
(全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る診断支援システム1の構成を示すブロック図である。診断支援システム1は、撮像装置2と、診断支援装置3とを備えている。
【0015】
撮像装置2は、医用画像を撮像する装置である。撮像装置2としては、MRI装置やCT装置を用いることができるが、3テスラMRI装置が好適である。3テスラMRI装置は、局所励起技術と、variable flip angle Turbo Spin Echo法(以下、「vfl-TSE法」)を用いたHigh resolution 3D vfl-TSE 法の3T脂肪抑制T1強調画像(以下、「HR vfl-TSE画像」)を撮像することができる。
【0016】
本実施形態では、撮像装置2によって、被検者の脳動脈の断面を含むHR vfl-TSE画像(局所励起を用いた3T脂肪抑制T1強調画像)を撮像する。また、撮像装置2は、診断支援装置3と通信可能に接続されており、撮像装置2によって撮像された画像は、診断支援装置3に入力される。
【0017】
(診断支援装置)
診断支援装置3は、例えば汎用のパーソナルコンピュータで構成することができ、ハードウェア構成として、CPU(図示せず)、主記憶装置(図示せず)、補助記憶装置31、入力部32および表示部33を備えている。診断支援装置3では、CPUが補助記憶装置31に記憶された各種プログラムを主記憶装置に読み出して実行することにより、各種演算処理を実行する。
【0018】
補助記憶装置31は、例えばハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)で構成することができる。補助記憶装置31には、撮像装置2によって撮像された医用画像の他、診断支援プログラムPが記憶されている。診断支援プログラムPは、CD-ROMなどの非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよく、当該記録媒体を診断支援装置3に読み取らせることにより、診断支援プログラムPを診断支援装置3にインストールしてもよい。あるいは、インターネット等の通信ネットワークを介して診断支援プログラムPのコードを診断支援装置3にダウンロードしてもよい。なお、補助記憶装置31は、診断支援装置3に内蔵されてもよいし、診断支援装置3とは別体の外部記憶装置として設けてもよい。
【0019】
入力部32は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどで構成することができる。また、表示部33は、例えば、液晶ディスプレイなどによって構成することができる。
【0020】
診断支援装置3は、血管疾患の診断を支援する機能を有しており、本実施形態では特に、脳動脈の動脈解離の診断を支援する機能を有している。その機能を実現するため、診断支援装置3は制御部34を備えている。制御部34は、補助記憶装置31に記憶されている診断支援プログラムPを、CPUが主記憶装置に読み出して実行することにより実現される機能ブロックである。
【0021】
制御部34は、血管の断面を含む画像を取得する画像取得部341と、前記断面を横切る1本以上の線分を設定する線分設定部342と、前記線分における輝度分布を演算する輝度分布演算部343と、前記輝度分布を示す輝度分布曲線を作成する曲線作成部344とを備えている。以下、これら各部の機能をより具体的に説明する。
【0022】
(画像取得)
画像取得部341は、被検者の脳動脈の断面を含む画像を、撮像装置2から取得する。本実施形態では、断面とは、血管の短軸(Axial)に略垂直な面を意味する。
【0023】
以下、医用画像および動脈解離の種類に応じて、動脈の断面がどのように表示されるかについて、説明する。上述のように、本実施形態では、医用画像として、HR vfl-TSE画像(局所励起を用いた3T脂肪抑制T1強調画像)、MRA元画像およびCTA元画像を想定している。また、動脈解離は、偽腔内で血栓が生じているか否かによって、開存タイプと偽腔内血腫形成タイプとに分類される。
【0024】
図2(a)は、開存タイプ動脈剥離の動脈の断面構造の一例を示している。開存タイプ動脈剥離では、内腔に血管壁から解離したフラップが存在し、真腔内および偽腔内のいずれにも血流が存在しており、当該動脈はHR vfl-TSE画像、MRA元画像およびCTA元画像において、それぞれ
図2(b)~(d)のように表示される。すなわち、HR vfl-TSE画像では、血流部分の輝度が低くなるのに対し、MRA元画像およびCTA元画像では、血流部分の輝度が高くなる。また、HR vfl-TSE画像、MRA元画像およびCTA元画像のいずれにおいても、血管壁およびフラップは、輝度が黒と白の中間程度になる。
【0025】
また、
図3(a)は、偽腔内血腫形成タイプ動脈剥離の動脈の断面構造の一例を示している。偽腔内血腫形成タイプ動脈剥離では、内腔に血管壁から解離したフラップが存在し、真腔内には血流が存在し、偽腔内には血腫が存在しており、当該動脈は、HR vfl-TSE画像、MRA元画像およびCTA元画像において、それぞれ
図3(b)~(d)のように表示される。すなわち、HR vfl-TSE画像およびMRA元画像では、血腫部分の輝度が高くなるのに対し、CTA元画像では、血腫部分の輝度が低くなる。
【0026】
(線分設定)
図1に示す線分設定部342は、本実施形態では、脳動脈の断面を横切り、かつ、当該断面の中心領域において互いに交差する4本の線分を設定する。例えば、画像取得部341が取得した画像がHR vfl-TSE画像であり、
図2(b)に示す、開存タイプ動脈解離の動脈の断面が当該画像に含まれている場合、線分設定部342は、
図4(a)に示すように、4本の線分L1~L4を設定する。
【0027】
線分L1~L4はいずれも直線であり、断面の中心領域において互いに交差している。線分L1と線分L2との角度、線分L2と線分L3との角度、線分L3と線分L4との角度、および線分L4と線分L1との角度は、いずれも45°である。なお、これらの角度は必ずしも互いに同一でなくてもよい。
【0028】
また、線分L1~L4は、必ずしも直線でなくてもよく、断面からはみ出ていなくてもよい。また、線分L1~L4は、必ずしも1箇所で交差しなくてもよいが、中心領域を通過することが好ましい。また、断面が円形でない場合、例えば断面の重心を求めることにより中心領域を特定してもよい。
【0029】
(輝度分布算出・輝度分布曲線作成)
図1に示す輝度分布演算部343は、線分設定部342によって設定された線分における輝度分布を演算する。例えば
図4(a)に示すように、開存タイプ動脈解離の動脈断面画像に線分L1~L4が設定された場合、輝度分布演算部343は、線分L1における断面の一方端から他方端までの各ピクセルの輝度を算出し、他の線分L2~L4についても同様の演算を行う。
【0030】
曲線作成部344は、輝度分布演算部343によって算出された輝度分布を示す輝度分布曲線(プロファイルカーブ)を作成する。曲線作成部344が作成した輝度分布曲線は表示部33に表示される。
【0031】
(HR vfl-TSE画像を用いる場合の予測)
図4(b)~(e)は、それぞれ
図4(a)に示すHR vfl-TSE画像に設定された線分L1~L4における各輝度分布曲線を示すグラフである。各グラフにおいて、縦軸は輝度に対応し、横軸は、各線分L1~L4に沿った座標に対応する。HR vfl-TSE画像では、血流が存在する部分は輝度が低く、フラップでは輝度が中程度となる。そのため、フラップを横切っている線分では、輝度が中(血管壁)→低(血流)→中(フラップ)→低(血流)→中(血管壁)と変化する。
【0032】
ここで、
図4(a)等に示す図は、模式的な断面図であるため、境界部分における輝度の変化は急峻であるが、実際の画像では、境界部分における輝度の変化は緩やかである。そのため、実際の輝度分布曲線は、
図4(b)~(e)のように角張った曲線ではなく、丸みを帯びた曲線となる。したがって、
図4(c)および(d)のように、輝度が中→低→中→低→中と変化している輝度分布曲線は、全体としてω形状を呈する。
【0033】
また、
図5(a)に示すように、偽腔内血腫形成タイプ動脈解離の動脈断面のHR vfl-TSE画像に線分L1~L4が設定された場合の、線分L1~L4における各輝度分布曲線をそれぞれ
図5(b)~(e)に示す。HR vfl-TSE画像では、血腫存在する部分は輝度がフラップよりも高くなる。そのため、フラップを横切っている線分では、輝度が中(血管壁)→低(血腫)→中(フラップ)→高(血流)→中(血管壁)、または、中(血管壁)→高(血流)→中(フラップ)→低(血腫)→中(血管壁)と変化する。
【0034】
ここで、上述のように、実際の輝度分布曲線は丸みを帯びており、また、フラップの幅は小さいため、血流(または血腫)からフラップを経て血腫(または血流)に至る部分の輝度分布曲線は、∫(積分記号)形状を呈する。例えば、
図5(c)および(d)に示す輝度分布曲線は、左右反転した∫形状を呈した部分を含んでいる。
【0035】
このように、HR vfl-TSE画像では、開存タイプ動脈解離の動脈にフラップが存在する場合、線分L1~L4の少なくともいずれかの輝度分布曲線がω形状を呈する。また、偽腔内血腫形成タイプ動脈解離の動脈にフラップが存在する場合、線分L1~L4の少なくともいずれかの輝度分布曲線は、∫形状を呈する部分を含む。よって、ユーザ(医師、技師など)は、輝度分布曲線がω形状を呈しているか否か、および、∫形状を呈した部分を含むか否かに基づき、フラップの存在有無、および、動脈解離のタイプを予測することができる。
【0036】
なお、フラップが発生していない正常な動脈であっても、HR vfl-TSE画像では、
図6(a)に示すように、血流領域の中央にアーチファクトという輝度の高い部分が現れることがある。線分L1~L4がアーチファクトを通過している場合、
図6(b)~(e)に示すように、線分L1~L4の各輝度分布曲線は、いずれもω形状を呈することとなる。
【0037】
ここで、フラップが存在している断面に4本未満の線分を設定した場合、線分の本数が少ないほど全ての線分がフラップを横切る確率が高くなる。そのため、線分の設定本数が4本未満の場合、輝度分布曲線がω形状を呈していたとしても、フラップによるものであるのか、アーチファクトによるものであるのかの判別が難しくなる。
【0038】
一方、線分を4本以上設定した場合、フラップが存在している断面では、例えば
図4(a)に示すように、4本の線分L1~L4の一部のみが、偽腔からフラップを経て真腔に至るため、全ての線分L1~L4の輝度分布曲線がω形状を呈するわけではない。したがって、線分を4本以上設定することにより、正常な動脈の画像にアーチファクトが発生したとしても、当該動脈にフラップが存在すると誤って予測することを防止できる。これにより、線分の設定本数が4本未満の場合に比べ、動脈解離の予測精度をさらに向上させることができる。
【0039】
(MRA元画像またはCTA元画像を用いる場合の予測)
図7(a)は、開存タイプ動脈解離の動脈断面のMRA元画像またはCTA元画像に線分L1~L4が設定された状態を示しており、
図7(b)~(e)は、それぞれ
図7(a)に示す線分L1~L4における各輝度分布曲線を示すグラフである。MRA元画像およびCTA元画像ではいずれも、血流部分の輝度はフラップよりも高くなる。そのため、偽腔からフラップを経て真腔に至る線分では、輝度が中(血管壁)→高(血流)→中(フラップ)→高(血流)→中(血管壁)と変化する。したがって、
図7(c)および(d)のように、輝度が中→高→中→高→中と変化している輝度分布曲線は、全体として上下に反転したω形状(反転ω形状)を呈する。
【0040】
図8(a)は、偽腔内血腫形成タイプ動脈解離の動脈断面のMRA元画像に線分L1~L4が設定された状態を示しており、
図8(b)~(e)は、それぞれ
図8(a)に示す線分L1~L4における各輝度分布曲線を示すグラフである。MRA元画像では、血腫部分も血流部分と同様にフラップよりも輝度が高くなる。そのため、偽腔からフラップを経て真腔に至る線分では、輝度が中(血管壁)→高(血腫)→中(フラップ)→高(血流)→中(血管壁)と変化する。したがって、
図8(c)および(d)のように、輝度が中→高→中→高→中と変化している輝度分布曲線は、全体として反転ω形状を呈する。
【0041】
このように、MRA元画像では、動脈にフラップが存在する場合、開存タイプ動脈解離であっても偽腔内血腫形成タイプ動脈解離であっても、輝度分布曲線の少なくともいずれかが反転ω形状を呈する。そのため、MRA元画像を用いる場合、フラップの存在は予測できるが、動脈解離のタイプは判別できない。
【0042】
図9(a)は、偽腔内血腫形成タイプ動脈解離の動脈断面のCTA元画像に線分L1~L4が設定された状態を示しており、
図9(b)~(e)は、それぞれ
図9(a)に示す線分L1~L4における各輝度分布曲線を示すグラフである。CTA元画像では、血腫部分の輝度はフラップよりも低くなる。そのため、偽腔からフラップを経て真腔に至る線分では、輝度が中(血管壁)→低(血腫)→中(フラップ)→高(血流)→中(血管壁)と変化する。上述のように、実際の輝度分布曲線は丸みを帯びた曲線であるため、輝度分布曲線の中→高→中と変化している部分は、△(デルタ)形状を呈する。したがって、
図9(c)および(d)のように、輝度が中→低→中→高→中と変化している輝度分布曲線は、△形状を呈する部分を含む。
【0043】
このように、CTA元画像では、開存タイプ動脈解離の場合、
図7(c)および(d)に示すように、輝度分布曲線の少なくともいずれかが反転ω形状を呈し、偽腔内血腫形成タイプ動脈解離の場合、
図9(c)および(d)に示すように、輝度分布曲線の少なくともいずれかが△形状を呈する部分を含む。よってユーザは、輝度分布曲線が反転ω形状を呈しているか否か、および、△形状を呈した部分を含むか否かに基づき、フラップの存在有無、および、動脈解離のタイプを予測することができる。
【0044】
(診断支援方法)
図10は、本実施形態に係る診断支援方法の手順を示すフローチャートである。本実施形態に係る診断支援方法は、診断支援システム1によって実施される。
【0045】
ステップS1では、撮像装置2によって被検者の被検者の脳動脈の断面を含む画像を撮像する。
【0046】
ステップS2(画像取得ステップ)では、画像取得部341が、前記脳動脈の断面を含む画像を撮像装置2から取得する。
【0047】
ステップS3(線分設定ステップ)では、線分設定部342が、前記画像に含まれる断面を横切る1本以上の線分を設定する。本実施形態では、
図4(a)等に示すように、4本の線分L1~L4を設定する。
【0048】
ステップS4(輝度分布演算ステップ)では、輝度分布演算部343が、線分L1~L4における輝度分布を演算する。
【0049】
ステップS5では、曲線作成部344が、演算された前記輝度分布を示す輝度分布曲線を作成する。
【0050】
ステップS6では、表示部33が、作成された前記輝度分布曲線を表示する。
【0051】
(総括)
以上のように、本実施形態では、画像取得部341が取得した動脈の断面を含む画像に対し、線分設定部342が前記断面を横切る1本以上の線分を設定し、輝度分布演算部343が前記線分における輝度分布を演算し、曲線作成部344が前記輝度分布を示す輝度分布曲線を作成し、表示部33が前記輝度分布曲線を表示する。これにより、ユーザは、輝度分布曲線の形状に基づいて、脳動脈解離の有無を予測することができる。
【0052】
画像がHR vfl-TSE画像である場合、ユーザは、輝度分布曲線がω形状を呈しているか否か、および、∫形状を呈した部分を含むか否かに基づき、フラップの存在有無、および、脳動脈解離のタイプを予測することができる。画像がCTA元画像である場合、ユーザは、輝度分布曲線が反転ω形状を呈しているか否か、および、△形状を呈した部分を含むか否かに基づき、フラップの存在有無、および、脳動脈解離のタイプを予測することができる。画像がMRA元画像である場合、ユーザは、脳動脈解離のタイプを予測することはできないが、輝度分布曲線が反転ω形状を呈しているか否かに基づき、フラップの存在有無、すなわち、脳動脈解離が生じているか否かを予測することができる。
【0053】
したがって、診断支援装置3を用いることにより、医師や技師の技量による差が生じやすい画像の読影のみによる診断に比べ、脳動脈解離の診断精度を向上させることができる。
【0054】
〔変形例〕
以下、本実施形態の変形例について説明する。なお、本変形例において、既に説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
図11は、本実施形態の変形例に係る診断支援システム1’の構成を示すブロック図である。診断支援システム1’は、撮像装置2と、診断支援装置3’とを備えている。すなわち、診断支援システム1’は、
図1に示す診断支援システム1において、診断支援装置3を診断支援装置3’に置き換えた構成である。
【0056】
診断支援装置3’は、CPU(図示せず)と、主記憶装置(図示せず)と、補助記憶装置31と、入力部32と、表示部33と、制御部34’とを備えている。すなわち、診断支援装置3’は、
図1に示す診断支援装置3において、制御部34を制御部34’に置き換えた構成である。
【0057】
制御部34’は、画像取得部341と、線分設定部342と、輝度分布演算部343と、予測部345とを備えている。すなわち、制御部34’は、
図1に示す制御部34において、曲線作成部344を予測部345に置き換えた構成である。
【0058】
予測部345は、輝度分布演算部343によって演算された輝度分布に基づいて、疾患の有無、特に脳動脈解離の有無を予測する。すなわち、上記実施形態では、ユーザが表示部33に表示された輝度分布曲線の形状に基づいて脳動脈解離の有無を予測していたが、本変形例では、予測部345が、上記実施形態と同様の基準を用いて脳動脈解離の有無を予測する。
【0059】
例えば、医用画像がHR vfl-TSE画像であり、設定された線分の少なくとも1本において、輝度が中→低→中→低→中と変化している(すなわち、輝度分布曲線を作成した場合、全体としてω形状を呈する曲線となる)場合、予測部345は、開存タイプ動脈解離であると予測する。同様に、医用画像がHR vfl-TSE画像であり、設定された線分の少なくとも1本において、輝度が部分的に低→中→高、または高→中→低と変化している(すなわち、輝度分布曲線を作成した場合、∫形状を呈した部分を含む曲線となる)場合、予測部345は、偽腔内血腫形成タイプ動脈解離であると予測する。
【0060】
また、医用画像がMRA元画像であり、設定された線分の少なくとも1本において、輝度が中→高→中→高→中と変化している(すなわち、輝度分布曲線を作成した場合、全体として反転ω形状を呈する曲線となる)場合、予測部345は、動脈解離であると予測する。なお、医用画像がMRA元画像である場合、予測部345は、動脈解離のタイプが開存タイプか偽腔内血腫形成タイプかの予測は行わない。
【0061】
また、医用画像がCTA元画像であり、設定された線分の少なくとも1本において、輝度が中→高→中→高→中と変化している(すなわち、輝度分布曲線を作成した場合、全体として反転ω形状を呈する曲線となる)場合、予測部345は、開存タイプ動脈解離であると予測する。同様に、医用画像がCTA元画像であり、設定された線分の少なくとも1本において、輝度が部分的に中→高→中と変化している(すなわち、輝度分布曲線を作成した場合、△形状を呈した部分を含む曲線となる)場合、予測部345は、偽腔内血腫形成タイプ動脈解離であると予測する。
【0062】
このように、予測部345は、線分における輝度の変化パターンに基づいて、動脈解離の有無を予測することができる。予測部345による予測結果は、表示部33に表示される。これにより、診断支援装置3’は、ユーザによる脳動脈解離の診断を支援することができる。
【0063】
さらなる変形例として、予測部345は人工知能(AI)を用いて予測することが好ましい。この場合、多数の被検者の医用画像について、画像取得部341、線分設定部342および輝度分布演算部343を用いて、動脈の断面に設定した各線分の輝度分布を演算し、各輝度分布のデータを各被検者の確定診断結果と対応付けて教師データを作成する。この教師データに基づき、例えばニューラルネットワーク等を用いて機械学習を行い、学習済みアルゴリズムによって予測部345を実現する。なお、人工知能は、ニューラルネットワークに限らず、あらゆる周知の人工知能技術に基づくものを用いることができる。
【0064】
一般に、動脈の断面に設定する線分が多くなるほど予測精度は向上するが、上記実施形態において説明したユーザによる予測では、輝度分布曲線が多くなるため、かえって予測が困難になる。これに対し、予測部345による予測(特に人工知能を用いた予測)では、線分を多く設定することにより精度の高い予測が可能となる。
【0065】
なお、血管の断面画像が動脈解離と類似する疾患として、アテローム性動脈硬化がある。アテローム性動脈硬化を発症した血管では、内部にコレステロール等が蓄積したプラーク(粥腫)が形成される。そのため、血管の断面画像は、
図5(a)において、偽腔内の血腫をコレステロール等に置き換えたものに近似する。よって、HR vfl-TSE画像では、設定された線分の少なくとも1本において、輝度が部分的に低→中→高、または高→中→低と変化し、輝度分布曲線を作成した場合、偽腔内血腫形成タイプ動脈解離と同様、∫形状を呈した部分を含む曲線となる。
【0066】
ここで、アテローム性動脈硬化の輝度分布曲線は、偽腔内血腫形成タイプ動脈解離の輝度分布曲線に比べ、輝度の最大値と最小値との差(以下、輝度差(signal difference)と称する)が小さい傾向にある(
図12参照)。そこで、予測部345は、HR vfl-TSE画像の血管部分に設定された線分の少なくとも1本において、輝度が部分的に低→中→高、または高→中→低と変化した場合、さらに輝度分布曲線の輝度差に基づいて、偽腔内血腫形成タイプ動脈解離であるかアテローム性動脈硬化であるかを予測することができる。
【0067】
また、
図12に示すように、輝度分布曲線の輝度差は、
偽腔内血腫形成タイプ動脈解離>アテローム性動脈硬化>開存タイプ動脈解離
という傾向がある。そのため、予測部345は、輝度分布曲線の輝度差のみによっても、上記3つの疾患の有無を予測することができる。ただし、予測精度を高めるためには、予測部345は、線分における輝度の変化パターンおよび輝度差の両方に基づいて、疾患の有無を予測することが好ましい。
【0068】
〔付記事項〕
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されない。
本実施例では、開存タイプ動脈解離の患者26名、偽腔内血腫形成タイプ動脈解離の患者28名およびアテローム性動脈硬化の患者15名のHR vfl-TSE画像を取得した。そして、各画像における血管部分に4本の線分を設定し、当該線分における輝度分布を演算した。さらに各輝度分布について、輝度の最大値と最小値との差(輝度差)を算出した。
【0070】
図12は、開存タイプ動脈解離(ω)、偽腔内血腫形成タイプ動脈解離(∫)およびアテローム性動脈硬化(p∫)の各輝度分布曲線における輝度差の分布を示す箱ひげ図である。同図に示されるように、開存タイプ動脈解離、偽腔内血腫形成タイプ動脈解離およびアテローム性動脈硬化の各輝度分布曲線における輝度差は、四分位範囲が互いに重複しておらず、
偽腔内血腫形成タイプ動脈解離>アテローム性動脈硬化>開存タイプ動脈解離
という傾向がある。よって、輝度分布曲線の輝度差が、上記3つの疾患の有無を予測するための指標になり得ることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
上記実施形態では、予測対象となる疾患が脳動脈解離およびアテローム性動脈硬化であったが、血管疾患であれば特に限定されない。
【符号の説明】
【0072】
1 診断支援システム
1’ 診断支援システム
2 撮像装置
3 診断支援装置
3’ 診断支援装置
31 補助記憶装置
32 入力部
33 表示部
34 制御部
34’ 制御部
341 画像取得部
342 線分設定部
343 輝度分布演算部
344 曲線作成部
345 予測部
L1~L4 線分
P 診断支援プログラム