(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】注出部材接続構造及び包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 51/18 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
B65D51/18 BRG
(21)【出願番号】P 2019218963
(22)【出願日】2019-12-03
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】桑原 弘嗣
(72)【発明者】
【氏名】市丸 直弘
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-024889(JP,A)
【文献】特開平09-156120(JP,A)
【文献】米国特許第05232125(US,A)
【文献】実開昭62-179949(JP,U)
【文献】特開平10-160156(JP,A)
【文献】特開2004-091013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44-35/54
B65D 39/00-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる注出流路を有する挿入部を備えた注出部材と、前記挿入部の先端部に開口した先端開口部に対して軸線方向に変位が可能に設けられた弁体と、前記挿入部が挿入される挿入孔を有する受け部と、を備え、
前記注出部材は、前記弁体の変位を前記軸線方向に規制する案内部を有し、
前記弁体は、前記変位によって前記注出流路を開放する開放位置と、前記注出流路を閉止する閉止位置とを切り替え可能であり、
前記弁体は、前記閉止位置において、前記先端開口部の周縁部と接触する当接部と、前記当接部の径方向内側に形成された第1係合部と、を備え、前記第1係合部は、前記閉止位置において前記先端開口部に露出
され、
前記受け部は、前記挿入孔を有する被挿入部と、前記被挿入部に配置された第2係合部と、を備え、前記第2係合部は、前記開放位置及び前記閉止位置において前記第1係合部と係合可能であ
り、前記第1係合部と前記第2係合部との係合は、前記開放位置と前記閉止位置との間で前記弁体が変位しても、係合を維持できることを特徴とする注出部材接続構造。
【請求項2】
流体が流れる注出流路を有する挿入部を備えた注出部材と、前記挿入部の先端部に開口した先端開口部に対して軸線方向に変位が可能に設けられた弁体と、前記挿入部が挿入される挿入孔を有する受け部と、を備え、
前記弁体は、前記挿入部の内面に向けて周方向において放射状に突出した構造により、前記軸線方向に沿った変位を維持し、
前記弁体は、前記変位によって前記注出流路を開放する開放位置と、前記注出流路を閉止する閉止位置とを切り替え可能であり、
前記弁体は、前記閉止位置において、前記先端開口部の周縁部と接触する当接部と、前記当接部の径方向内側に形成された第1係合部と、を備え、前記第1係合部は、前記閉止位置において前記先端開口部に露出
され、
前記受け部は、前記挿入孔を有する被挿入部と、前記被挿入部に配置された第2係合部と、を備え、前記第2係合部は、前記開放位置及び前記閉止位置において前記第1係合部と係合可能であ
り、前記第1係合部と前記第2係合部との係合は、前記開放位置と前記閉止位置との間で前記弁体が変位しても、係合を維持できることを特徴とする注出部材接続構造。
【請求項3】
前記閉止位置で前記第1係合部と前記第2係合部とを係合させた状態において、前記挿入部を前記軸線方向の先端側に移動させることにより、前記第1係合部と前記先端開口部との間に前記注出流路が開放され、
前記開放位置で前記第1係合部と前記第2係合部とを係合させた状態において、前記挿入部を前記軸線方向の基端側に移動させることにより、前記第1係合部と前記先端開口部との間で前記注出流路が閉止され、
前記閉止位置から、さらに、前記挿入部を前記軸線方向の基端側に移動させることにより、前記第1係合部と前記第2係合部との係合が解除されることを特徴とする請求項1又
は2に記載の注出部材接続構造。
【請求項4】
前記注出部材は、前記軸線方向の基端側に向かう前記弁体の変位を規制する案内部を有することを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の注出部材接続構造。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の注出部材接続構造の前記注出部材及び前記弁体を有する第1容器と、前記注出部材接続構造の前記受け部を有する第2容器と、を備えることを特徴とする包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出部材接続構造及びこれを備えた包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばインクなどの液体が充填された容器から液体を注出する場合、注出部材が被注出部に接続される。例えば、特許文献1には、容器本体の内部と開閉自在に連通する組立体がメス部材とオス部材とプラグとからなり、メス部材とオス部材とを相互に連結するための連結手段を設けた容器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体が充填された容器の包装においては、密閉性が重要である。しかし、特許文献1に記載の容器では、注出口の付け根で液体の流路を閉鎖するため、液体が注出口の筒内に溜まると、再び開封するときにこぼれるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、注出される流体が注出部材の内部に溜まりにくい構造の注出部材接続構造及びこれを備えた包装容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の注出部材接続構造の一態様は、流体が流れる注出流路を有する挿入部を備えた注出部材と、前記挿入部の先端部に開口した先端開口部に対して軸線方向に変位が可能に設けられた弁体と、前記挿入部が挿入される挿入孔を有する受け部と、を備え、前記弁体は、前記変位によって前記注出流路を開放する開放位置と、前記注出流路を閉止する閉止位置とを切り替え可能であり、前記閉止位置において前記先端開口部に露出された第1係合部を備え、前記受け部は、前記挿入孔を有する被挿入部と、前記被挿入部に配置された第2係合部と、を備え、前記第2係合部は、前記開放位置及び前記閉止位置において前記第1係合部と係合可能であることを特徴とする。
【0007】
前記注出部材接続構造は、前記閉止位置で前記第1係合部と前記第2係合部とを係合させた状態において、前記挿入部を前記軸線方向の先端側に移動させることにより、前記第1係合部と前記先端開口部との間に前記注出流路が開放され、前記開放位置で前記第1係合部と前記第2係合部とを係合させた状態において、前記挿入部を前記軸線方向の基端側に移動させることにより、前記第1係合部と前記先端開口部との間で前記注出流路が閉止され、前記第1係合部と前記第2係合部との係合が解除されてもよい。
【0008】
前記弁体は、前記閉止位置において、前記先端開口部の周縁部と接触する当接部を有してもよい。
前記注出部材は、前記弁体の変位を前記軸線方向に規制する案内部を有してもよい。
前記弁体は、前記挿入部の内面に向けて周方向において放射状に突出した構造により、前記軸線方向に沿った変位を維持してもよい。
前記注出部材は、前記軸線方向の基端側に向かう前記弁体の変位を規制する案内部を有してもよい。
【0009】
本発明の包装容器の一態様は、前記注出部材接続構造の前記注出部材及び前記弁体を有する第1容器と、前記注出部材接続構造の前記受け部を有する第2容器と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、閉止位置において挿入部の先端開口部に露出された第1係合部が、挿入孔を有する被挿入部に配置された第2係合部と係合し、この係合が開放位置でも維持されるため、注出される流体が注出部材の内部に溜まりにくい構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の注出部材接続構造の一例を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態における閉止位置の係合状態を例示する断面図である。
【
図3】第1実施形態における開放位置の係合状態を例示する断面図である。
【
図4】第2実施形態の注出部材接続構造の一例を示す断面図である。
【
図5】第2実施形態における閉止位置の係合状態を例示する断面図である。
【
図6】第2実施形態における開放位置の係合状態を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0013】
図1から
図3に、第1実施形態の注出部材接続構造を示す。
図1は、注出部材10及び弁体20を有する第1容器(図示せず)と、受け部30を有する第2容器(図示せず)とが接近した状態を示す。
図2は、注出部材10の注出流路15を閉止した閉止位置において、弁体20の第1係合部23と、受け部30の第2係合部33とが係合している状態を示す。
図3は、注出部材10の注出流路15を開放した開放位置において、弁体20の第1係合部23と、受け部30の第2係合部33とが係合している状態を示す。
【0014】
各図は、中心軸線が上下方向となるように表現されている。第1容器又はその構成部材における先端側とは、第1容器が注出時に中心軸線に沿って第2容器に近づく側である。同様に、第2容器又はその構成部材における先端側とは、第2容器が注出時に中心軸線に沿って第1容器に近づく側である。これらとは逆に、中心軸線に沿って先端側とは反対の側を基端側という。第1容器と第2容器とを組み合わせたとき、第1容器の基端側は第2容器の先端側に対応し、第2容器の基端側は第1容器の先端側に対応する。
【0015】
また、中心軸線に対する径方向及び周方向を、それぞれ単に径方向及び周方向という場合がある。すなわち、径方向とは、中心軸線に直交する方向である。また、周方向とは、中心軸線の周りを取り囲む方向である。また、中心軸線に沿った方向を、軸線方向という場合がある。注出方向の基準となる中心軸線としては、注出部材10の中心軸線、特に、注出流路15の中心軸線が挙げられる。
【0016】
注出部材接続構造は、第1容器から第2容器への内容物の詰替え、補充に好適に適用できる。特に、詰替えや補充時の液漏れが問題となる内容物を用いる場合、例えば、印刷用インキ、調味料、医薬品、化粧品、洗剤、薬剤、塗料、燃料などを対象とする場合に好適である。内容物の流体は、溶液、分散液等の液体に限らず、粉体、粒体などであってもよい。
【0017】
注出部材10は、流体が流れる注出流路15を有する挿入部11を備えている。挿入部11は、注出流路15の中心軸線に沿った筒状である。挿入部11の軸線方向に垂直な断面形状は特に限定されず、例えば、円形、楕円形、多角形などが挙げられる。特に図示しないが、挿入部11は、先端部12よりも基端側において、第1容器の内部から挿入部11の径方向に流路を貫通させる貫通孔を有してもよい。
【0018】
挿入部11の先端側の部分である先端部12には、先端開口部12aが開口している。先端開口部12aの平面形状は特に限定されず、例えば、円形、楕円形、多角形などが挙げられる。先端部12のうち先端開口部12aの周囲には、周縁部12bが径方向の内側に形成されている。挿入部11の基端側の部分である基端部13には、注出流路15が開口している。挿入部11の外周又は基端部13付近には、第1容器において内容物が収容される収容部(図示せず)を設けることができる。
【0019】
弁体20は、挿入部11内において、先端開口部12aに対して軸線方向に変位が可能に設けられている。弁体20は、径方向に貫通した貫通孔21aを有する本体部21と、本体部21の先端側において注出部材10の周縁部12bと対向する当接部22と、当接部22の径方向内側に形成された第1係合部23と、を備えている。図示例の本体部21は、周方向及び軸線方向にそれぞれ複数の貫通孔21aが配列された籠状である。
【0020】
弁体20は、軸線方向の変位によって注出流路15を開放する開放位置と、注出流路15を閉止する閉止位置とを切り替え可能である。当接部22の外径は、注出流路15における挿入部11の内径より小さくされている。このため、弁体20が開放位置にあるときは、弁体20の本体部21の内側の空間は、貫通孔21aから当接部22の径方向外側を通じて、当接部22の先端側の空間と連通している。
【0021】
挿入部11の内面において、弁体20の変位を軸線方向に規制する案内部14が形成されている。図示例では、案内部14は、軸線方向に延びる突条部14aと、対をなす突条部14aの間に構成される溝部14bとを有する。また、弁体20の本体部21は、貫通孔21aとは異なる位置から径方向外側に突出したリブ24を有する。リブ24は、案内部14の溝部14bに嵌合されている。
【0022】
リブ24の軸線方向の変位が案内部14に沿って案内されることにより、弁体20が挿入部11の周方向に変位することなく、軸線方向の変位が可能となる。また、図示例では、弁体20の周方向に90°間隔で4つのリブ24が配置されている。弁体20は、リブ24が挿入部11の内面に向けて放射状に突出した構造を構成することにより、軸線方向に沿った変位を維持することができる。
【0023】
所定のしきい値を下回る外力が作用しただけでは、弁体20が注出部材10に対して変位しないように、溝部14bに対するリブ24の嵌合や摩擦の程度などを調整してもよい。例えば、突条部14a又はリブ24の少なくとも一方が弾性的に変形し、嵌合に対して締め込み力が作用するようにしてもよい。
【0024】
弁体の変位を軸線方向に規制する案内部の構成は、図示例に限定されず、例えば、弁体20の外周に設けた突起部と、挿入部11の内面に設けた溝部との組み合わせ、又は、弁体20の外周に設けた溝部と、挿入部11の内面に設けた突起部との組み合わせでもよい。溝部を軸線方向に延ばすことにより、軸線方向に沿って突起部を変位させることができる。突起部の長さが溝部の長さを超えない範囲で、突起部の形状を軸線方向に長くすることにより、溝部に沿った変位の案内を安定にすることができる。
【0025】
挿入部11又は弁体20に形成される溝部の構成は、図示例の溝部14bに限らず、種々の構成を採用することが可能である。例えば、溝部が形成される壁面を厚さ方向に貫通しない有底の溝部でもよく、壁面を厚さ方向に貫通する溝部でもよい。溝部の延びる方向は、軸線方向に平行でもよく、軸線方向から傾斜してもよい。溝部が周方向で例えば半周を超えない程度に螺旋状となってもよい。溝部の断面形状は特に限定されず、半円形、U字形、V字形、多角形などが挙げられる。
【0026】
また、弁体の変位を軸線方向に規制する案内部の構成としては、挿入部11又は弁体20から選択される一方の部材に棒状又は柱状に延びた軸部を設け、挿入部11又は弁体20から選択される他方の部材に軸部が挿入されるガイド穴を設ける構成でもよい。軸部を軸線方向に延ばすことにより、軸部に沿ってガイド穴を有する部材を変位させることができる。
【0027】
閉止位置において、弁体20の当接部22は、挿入部11の先端開口部12aの周縁部12bと接触する。これにより、挿入部11の先端部12と弁体20の当接部22との間には、注出される流体が溜まる隙間が生じにくくなる。当接部22は、先端開口部12aの周方向にわたって周縁部12bと連続的に接触することが好ましい。当接部22又は周縁部12bの少なくとも一方が押圧により弾性変形して、両者が相互に密着することが好ましい。
【0028】
開放位置において、弁体20の当接部22は、挿入部11の先端開口部12aの周縁部12bから離れる。これにより、挿入部11から受け部30に向かって流体を注出することが可能になる。当接部22と周縁部12bとが接触する面は、軸線方向に垂直な平面でもよく、周方向に延びる環状の面でもよく、軸線方向に対して傾斜したテーパ面であってもよい。
【0029】
受け部30は、挿入孔31aを有する被挿入部31を有する。被挿入部31は、受け部30の中心軸線に沿った筒状である。被挿入部31の軸線方向に垂直な断面形状は特に限定されず、例えば、円形、楕円形、多角形などが挙げられる。挿入孔31aには、挿入部11が挿入される。このため、注出部材10と受け部30とを組み合わせたとき、受け部30の中心軸線が、注出部材10の中心軸線と同軸又は平行であることが好ましい。
【0030】
挿入孔31aは被挿入部31の先端側に開口部31bを有する。特に図示しないが、被挿入部31は、径方向に流路を貫通させる貫通孔を有してもよい。開口部31b等の貫通孔を通して、挿入孔31aに注出された流体を第2容器内に供給することができる。被挿入部31の先端側の外周には、フランジ34を設けてもよい。被挿入部31の外周又はフランジ34付近には、第2容器において内容物が収容される収容部(図示せず)を設けることができる。フランジ34に収容部の壁面を接合してもよい。
【0031】
被挿入部31の基端側には、貫通孔32aを有する基底部32が形成されている。基底部32には、第1係合部23と係合可能な第2係合部33が設けられている。第2係合部33は、被挿入部31において、挿入孔31aに配置されている。また、第2係合部33は、基底部32から受け部30の先端側に延びている。第2係合部33の先端部は、挿入孔31aの開口部31bより基端側に配置されてもよく、開口部31bより先端側に突出してもよい。
【0032】
図示例の場合、第2係合部33は、先端側から径方向外側に向かって突出した係合凸部33aを有する。また、第1係合部23は、係合凸部33aと対応した形状の係合凹部23aを有する。第2係合部33の内部に中空部33bを有してもよい。中空部33bは、被挿入部31の基端側にのみ開口していてもよく、径方向外側において挿入孔31aと連通してもよく、被挿入部31の先端側に開口していてもよい。
【0033】
第2係合部33の形状は特に限定されないが、筒状、柱状、棒状などが挙げられる。第2係合部33に係合凹部を設け、第1係合部23に係合凸部を設けてもよい。
図1に示すように、閉止位置において第1係合部23は先端開口部12aに露出され、第2係合部33は被挿入部31に配置されている。このため、
図2に示すように、弁体20が閉止位置のまま、第1係合部23と第2係合部33とを係合することができる。
【0034】
第1係合部23と第2係合部33との係合は、開放位置と閉止位置との間で弁体20が変位しても、係合を維持できる強度を有する。第1係合部23と第2係合部33とが接触する面は、軸線方向に垂直な面でもよく、周方向に延びる面でもよく、軸線方向に対して傾斜した面であってもよい。第1係合部23と第2係合部33との係合の際、係合凸部又は係合凹部の少なくとも一方が弾性的に変形することが好ましい。これにより、係合を解除する際、弾性変形を復元させるように外力を加える必要があるため、解除に対する抵抗力を付与することができる。
【0035】
第1係合部23と第2係合部33とを係合したまま、挿入部11を受け部30の基底部32に向けて移動させると、
図3に示すように、弁体20が挿入部11の基端部13側に変位し、開放位置となる。これにより、弁体20の当接部22が挿入部11の先端開口部12aの周縁部12bから離れる。弁体20が開放位置に変位することにより、注出流路15が先端開口部12aを通じて受け部30の内部に連通される。
【0036】
弁体20が開放位置にあるとき、第1容器から注出流路15を通じて挿入孔31aに注出された流体は、基底部32の貫通孔32aを通じて第2容器側に供給される。第1容器から第2容器へと流体を注出する動力は特に限定されず、第1容器から第2容器へ向かう重力、第1容器に対する圧力、第2容器の吸引力などが挙げられる。重力に従って流体を注出する場合は、第1容器が上方、第2容器が下方に配置されるが、他の動力を利用する場合は、第1容器と第2容器との位置関係は特に限定されない。例えば、第1容器と第2容器とを略水平に配置してもよい。
【0037】
所望の流体を注出した後は、第1係合部23と第2係合部33とを係合したまま、挿入部11を受け部30の基底部32から離れる方向に移動させると、
図2に示すように、弁体20が挿入部11の先端部12側に変位する。これにより、弁体20の当接部22が挿入部11の先端開口部12aの周縁部12bに接触して、弁体20が閉止位置となる。さらに、挿入部11を受け部30の基底部32から離れる方向に移動させると、第1係合部23と第2係合部33との係合が解除され、閉止位置の弁体20を有する挿入部11が受け部30から分離される。
【0038】
すなわち、閉止位置で第1係合部23と第2係合部33とを係合させた状態において、挿入部11を軸線方向の先端側に移動させることにより、第1係合部23と先端開口部12aとの間に注出流路15が開放される。また、開放位置で第1係合部23と第2係合部33とを係合させた状態において、挿入部11を軸線方向の基端側に移動させることにより、第1係合部23と先端開口部12aとの間で注出流路15が閉止され、第1係合部23と第2係合部33との係合が解除される。
【0039】
次に、第2実施形態の注出部材接続構造について説明する。
図4から
図6に、第2実施形態の注出部材接続構造を示す。
図4は、注出部材110及び弁体120を有する第1容器(図示せず)と、受け部130を有する第2容器(図示せず)とが接近した状態を示す。
図5は、注出部材110の注出流路115を閉止した閉止位置において、弁体120の第1係合部123と、受け部130の第2係合部133とが係合している状態を示す。
図6は、注出部材110の注出流路115を開放した開放位置において、弁体120の第1係合部123と、受け部130の第2係合部133とが係合している状態を示す。
【0040】
第2実施形態の説明において、先端側、基端側、径方向、周方向、軸線方向、中心軸線の意味は、第1実施形態と同様である。また、注出部材10,110の挿入部11,111、先端部12,112、先端開口部12a,112a、周縁部12b,112b、基端部13,113、注出流路15,115、弁体20,120の本体部21,121、当接部22,122、第1係合部23,123、受け部30,130の被挿入部31,131、挿入孔31a,131a、開口部31b,131b、基底部32,132、第2係合部33,133、フランジ34,134、第1容器、第2容器等の基本的な構成や機能などは、第1実施形態と第2実施形態で概ね共通している。このため、重複する説明を省略する場合がある。
【0041】
第2実施形態の注出部材110の場合、挿入部111は、受け部130の被挿入部131に挿入される部分である挿入筒部111aと、挿入筒部111aよりも基端部113側の部分である延長筒部111bと、挿入筒部111a及び延長筒部111bの間に設けられたフランジ111cを備えている。フランジ111cは、挿入部111の径方向外側に突出している。注出部材110を設けた第1容器において、収容部の壁面をフランジ111cに接合してもよい。図示例では、挿入筒部111aの外径より延長筒部111bの外径が大きい構成を表しているが、延長筒部111bの外径が挿入筒部111aの外径以下であってもよい。
【0042】
弁体120は、軸線方向に延びた本体部121と、本体部121の先端側において注出部材110の周縁部112bと対向する当接部122と、当接部122の径方向内側に形成された第1係合部123と、を備えている。図示例の本体部121は、注出流路115の中心軸線に沿って延びる1本の柱状に形成されている。本体部121の先端側の端部には当接部122及び第1係合部123が形成され、本体部121の基端側の端部には、リング状の基端部125が形成されている。
【0043】
本体部121の外周には、径方向外側で板状に突出した側板部124が形成されている。側板部124は、本体部121の周方向に複数形成されている。側板部124の個数は特に限定されないが、図示例では周方向に90°間隔で4つの側板部124が配置されている。複数の側板部124は、径方向外側の滑り部124aが挿入部111の内面に接触することにより、弁体120が挿入部111の径方向に変位することなく、軸線方向の変位が可能となる。本体部121の周囲は、側板部124の間に流体を流通させることが可能な空間が確保されている。弁体120は、側板部124が挿入部111の内面に向けて放射状に突出した構造を構成することにより、軸線方向に沿った変位を維持することができる。
【0044】
弁体120の軸線方向の変位に際して、弁体120が挿入部111の周方向に回転することも可能である。図示例では、挿入筒部111aから延長筒部111bにかけて、挿入部111の内径が略一定の平滑な円筒面となっており、本体部121から滑り部124aまでの寸法が各側板部124において略同等であるので、弁体120が周方向に任意の角度だけ回転しても、挿入部111の径方向における本体部121の変位を抑制することができる。
【0045】
当接部122は、本体部121の外周から、径方向外側に平板状に突出した形状である。当接部122の外径は、注出流路115における挿入部111の内径より小さくされているので、当接部122の径方向外側を流路の一部とすることができる。挿入部111の先端部112は、当接部122と嵌合する嵌合凹部112cを有する。挿入部111の軸線方向に垂直な面内における当接部122及び嵌合凹部112cの断面形状は、円形である。これにより、弁体120が周方向に任意の角度だけ回転しても、当接部122が嵌合凹部112cに嵌合することができる。
【0046】
受け部130は、基底部132を軸線方向に貫通する貫通孔132a,132cと、被挿入部131の径方向に貫通する貫通孔132bを有する。また、図示例の第2係合部133は、先端側から径方向外側に向かって突出した弾性片133bの先端に係合凸部133aを有する鉤状構造である。係合凸部133aを有する弾性片133bは、周方向に複数配置されている。貫通孔132a,132b,132cに加えて、鉤状構造の第2係合部133の間に、流体を流通させることが可能である。これにより、開放位置において、受け部130の内部から外部への供給を促進することができる。
【0047】
第1係合部123は、支柱部123bの先端に係合頭部123aを有する茸状である。係合頭部123aの最大径は、支柱部123bの外径より大きくされている。係合頭部123aの周囲から複数の係合凸部133aが取り囲み、支柱部123bの外周面に向けて弾性変形することにより、弁体120が閉止位置のまま、第1係合部123と第2係合部133とを係合することができる。また、挿入部111を受け部130の基底部132から離れる方向に移動させると、係合頭部123aの周囲から複数の係合凸部133aが径方向外側に弾性変形することにより、第1係合部123と第2係合部133との係合が解除される。
【0048】
すなわち、閉止位置で第1係合部123と第2係合部133とを係合させた状態において、挿入部111を軸線方向の先端側に移動させることにより、第1係合部123と先端開口部112aとの間に注出流路115が開放される。また、開放位置で第1係合部123と第2係合部133とを係合させた状態において、挿入部111を軸線方向の基端側に移動させることにより、第1係合部123と先端開口部112aとの間で注出流路115が閉止され、第1係合部123と第2係合部133との係合が解除される。
【0049】
第2実施形態においては、挿入部111の基端部113から、基端側に突出する案内部114が配置されている。案内部114は、挿入部111の周方向に間を離して複数形成されている。図示例では、周方向に180°間隔で2つの案内部114が配置されている。また、弁体120の基端部125には、軸線方向に貫通した貫通孔125aが形成されている。第1容器内の流体は、案内部114間の隙間や貫通孔125aを通じて、挿入部111内の注出流路115に到達することができる。
【0050】
案内部114には、閉止位置において弁体120の基端部125と接触する閉止側突起114aと、開放位置において弁体120の基端部125と接触する開放側突起114bとが形成されている。閉止側突起114aは、案内部114の中間部において径方向内側に形成されている。開放側突起114bは、案内部114の基端部113側とは反対側の端部において径方向内側に形成されている。
【0051】
閉止側突起114aは、弁体120が閉止位置と開放位置との間で変位する際に変位の妨げとならない程度で案内部114からの突出量が微小となっている。このため、挿入部111及び弁体120に外力が作用しないときには、弁体120を閉止位置に保持することができる。また、第1係合部123と第2係合部133とが係合した状態で、さらに挿入部111を軸線方向に変位させる場合には、基端部125が閉止側突起114aを超えて変位することを妨げないようになっている。
【0052】
開放側突起114bは、基端部125が開放側突起114bに接触しているとき、弁体120の先端開口部112aから離れる方向の変位を阻止できる程度に大きな突出量を有する。これにより、第1係合部123と第2係合部133とが係合した状態で、さらに挿入部111を受け部130に接近させる方向に変位させる場合において、弁体120の変位が過度とならないように規制することができる。
【0053】
図6に示すように、基端部125が開放側突起114bに接触しているとき、挿入部111の先端部112が受け部130の基底部132に接触してもよい。この場合、挿入部111が基底部132を超えて第2容器内に進入することは阻止される。第1係合部123と第2係合部133とが係合していれば、弁体120が注出部材110から分離することがない。弁体120が開放位置にあるときに、何らかの衝撃などで第1係合部123と第2係合部133との係合が解除されたとしても、弁体120が開放側突起114bを超えて第1容器内に進入することが阻止される。
【0054】
上述の実施形態によれば、弁体20,120の閉止位置において挿入部11,111の先端開口部12a,112aに第1係合部23,123が露出される。この第1係合部23,123が、挿入孔31a,131aを有する被挿入部31,131に配置された第2係合部33,133と係合し、この係合が開放位置でも維持される。このため、注出される流体が注出部材10,110の内部に溜まりにくい構造となる。
【0055】
上述の実施形態において、注出部材10,110と弁体20,120とは別々の部材から構成されている。このため、注出部材10,110と弁体20,120とを異種の材料から構成してもよい。例えば、注出部材10,110を柔軟な材料、弁体20,120を硬質の材料から構成してもよい。これにより、弁体20,120の形状に追従するように注出部材10,110を変形させることができるので、注出流路15,115の密閉性を高めやすくなる。柔軟な材料及び硬質の材料としては、それぞれヤング率等の弾性率が異なる樹脂から適宜選択してもよい。
【0056】
注出部材10,110、弁体20,120、受け部30,130は、それぞれ一体の成形品から構成することも可能である。成形材料としては、特に限定されないが、樹脂、ゴム、エラストマー、金属等が挙げられる。注出部材10,110を2つ以上の部材から構成してもよい。また、弁体20,120を2つ以上の部材から構成してもよい。また、受け部30,130を2つ以上の部材から構成してもよい。
【0057】
上述の実施形態の注出部材接続構造を有する包装容器は、注出部材10,110及び弁体20,120を有する第1容器と、受け部30,130を有する第2容器と、を備えている。第1容器及び第2容器の取り扱いは、ユーザーが直接、第1容器を第2容器に対して操作してもよい。第1容器及び第2容器を機械装置に組み込んで、ユーザーが機械装置を操作したとき、又は機械装置が必要を認識したときに、第1容器又は第2容器を変位させてもよい。
【0058】
第1容器及び第2容器は、大型の容器でもよく、小型の容器でもよい。例えば、容器が大型である場合、又は軸線方向に垂直な面内の形状が非円形である場合には、弁体20,120を軸線方向に変位させる際に、注出部材10,110を周方向に回転させないで受け部30,130との連結及び離脱が可能であることが好ましい。注出部材10,110を受け部30,130に向けて軸線方向に押し込むだけで注出操作が可能であり、また、受け部30,130から軸線方向に引き込むだけで、注出部材10,110の取り外しが可能である。このため、ユーザー又は機械装置のいずれかが包装容器を操作する場合であっても、操作が容易になる。
【0059】
容器の形式は特に限定されないが、パウチ容器、ボトル容器、チューブ容器、ボックス容器などが挙げられる。第1容器及び第2容器の成形材料は特に限定されないが、樹脂、金属、紙、積層体などが挙げられる。注出部材10,110を第1容器と接合してもよく、注出部材10,110と第1容器とを一体で成形することも可能である。また、受け部30,130を第2容器と接合してもよく、受け部30,130と第2容器とを一体で成形することも可能である。第1容器と第2容器は、形状、寸法、形式、材質等において異なる点を有してもよい。
【0060】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。改変としては、各実施形態における構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。また、別々の実施形態に用いられた構成要素を適宜組み合わせることも可能である。
【0061】
例えば、第2実施形態の注出部材110において、軸線方向の基端側に向かう弁体120の変位を規制するため設けた案内部114の開放側突起114bと同様な機能を、第1実施形態の注出部材10の基端部13などに設けてもよい。また、第2実施形態の閉止側突起114aと同様な機能を、第1実施形態の注出部材10の案内部14などに設けてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10,110…注出部材、11,111…挿入部、111a…挿入筒部、111b…延長筒部、111c…挿入部のフランジ、12,112…先端部、12a,112a…先端開口部、12b,112b…周縁部、112c…嵌合凹部、13,113…基端部、14,114…案内部、14a…突条部、14b…溝部、114a…閉止側突起、114b…開放側突起、15,115…注出流路、20,120…弁体、21,121…本体部、21a…弁体の貫通孔、22,122…当接部、23,123…第1係合部、23a…係合凹部、123a…係合頭部、123b…支柱部、24…リブ、124…側板部、124a…滑り部、125…基端部、125a…弁体の貫通孔、30,130…受け部、31,131…被挿入部、31a,131a…挿入孔、31b,131b…開口部、32,132…基底部、32a,132a,132b,132c…受け部の貫通孔、33,133…第2係合部、33a,133a…係合凸部、33b…中空部、133b…弾性片、34,134…受け部のフランジ。