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特許7393964マッハツェンダ干渉計の検査方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】マッハツェンダ干渉計の検査方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20231130BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G01M11/00 T
G02F1/01 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020022450
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021128246
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】有賀 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】清田 和明
(72)【発明者】
【氏名】神徳 正樹
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-206977(JP,A)
【文献】特許第6271106(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0063742(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0267384(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00-G01M 11/08
G02F 1/00-G02F 1/125
G02F 1/21-G02F 7/00
G02B 6/12-G02B 6/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波路を有する第1アーム部と第2アーム部とを備え、前記第1アーム部が、導波路を有する第3アーム部と第4アーム部とを備えた第1マッハツェンダ干渉計と前記第1マッハツェンダ干渉計と直列接続する第1導波路とを有し、前記第2アーム部が、導波路を有する第5アーム部と第6アーム部とを備える第2マッハツェンダ干渉計と前記第2マッハツェンダ干渉計と直列接続する第2導波路とを有する、マッハツェンダ干渉計の検査方法であって、
前記マッハツェンダ干渉計に光を入力させる入力ステップと、
前記光を入力させた状態で、前記第1導波路および前記第2導波路のいずれか一方に、導波路の屈折率を互いに異なる一定値にする複数の制御量のそれぞれを与える制御量付与ステップと、
前記複数の制御量を与えたそれぞれのステップにて、前記マッハツェンダ干渉計から出力された光の強度を測定する測定ステップと、
前記光の強度の測定の結果をもとに、前記第1導波路および前記第2導波路のいずれか他方に接続された前記第1マッハツェンダ干渉計または前記第2マッハツェンダ干渉計の干渉特性を取得する取得ステップと、
を含み、
前記測定ステップにおいて、前記取得ステップにて前記干渉特性を取得する前記第1マッハツェンダ干渉計または前記第2マッハツェンダ干渉計の導波路の屈折率を変化させ、
前記取得ステップにおいて、前記測定ステップにおいて測定された複数の光の強度の平均値をもとに、前記干渉特性を取得し、前記屈折率を変化させたことによって得られた前記平均値の極値のうち、極小値の少なくとも一つを前記干渉特性におけるヌル点と推定する
マッハツェンダ干渉計の検査方法。
【請求項2】
前記制御量付与ステップを前記第1導波路に対して実行し、前記測定ステップを実行することによって、前記取得ステップにおいて前記第2マッハツェンダ干渉計の干渉特性を取得し、
前記制御量付与ステップを前記第2導波路に対して実行し、前記測定ステップを実行することによって、前記取得ステップにおいて前記第1マッハツェンダ干渉計の干渉特性を取得する
請求項1に記載のマッハツェンダ干渉計の検査方法。
【請求項3】
前記取得ステップにおいて、前記測定ステップにおいて測定された複数の光の強度の制御量に対する関係を示す曲線の交点をもとに、前記干渉特性におけるヌル点を推定する
請求項1または2に記載のマッハツェンダ干渉計の検査方法。
【請求項4】
推定した前記ヌル点に設定した条件下で、再び前記制御量付与ステップ、前記測定ステップ、および前記取得ステップを行って前記干渉特性におけるヌル点を推定する工程を1回以上行い、前回推定したヌル点と今回推定したヌル点との差分が所定のヌル点設定値未満である場合、今回推定したヌル点をヌル点として特定する
請求項1~3のいずれか一つに記載のマッハツェンダ干渉計の検査方法。
【請求項5】
前記制御量付与ステップにおいて、前記複数の制御量の数を2以上の整数であるNとすると、前記複数の制御量は、前記第1導波路および前記第2導波路のいずれか一方の前記屈折率の変化による光の位相が、0、・・・、2(N-1)π/Nとなるように設定される
請求項1~のいずれか一つに記載のマッハツェンダ干渉計の検査方法。
【請求項6】
前記光を入力させた状態で、前記制御量付与ステップにて前記複数の制御量を与える前記第1導波路または前記第2導波路の屈折率を変化させて前記マッハツェンダ干渉計から出力された光の強度を測定し、該測定した強度の極値の少なくとも一つを、前記屈折率を変化させたことによる光の位相変化における位相ゼロに設定し、位相ゼロに設定した前記極値に隣接する極値を位相πに設定する
請求項に記載のマッハツェンダ干渉計の検査方法。
【請求項7】
プロセッサに、導波路を有する第1アーム部と第2アーム部とを備え、前記第1アーム部が、導波路を有する第3アーム部と第4アーム部とを備えた第1マッハツェンダ干渉計と前記第1マッハツェンダ干渉計と直列接続する第1導波路とを有し、前記第2アーム部が、導波路を有する第5アーム部と第6アーム部とを備える第2マッハツェンダ干渉計と前記第2マッハツェンダ干渉計と直列接続する第2導波路とを有する、マッハツェンダ干渉計の検査をするステップを実行させるプログラムであって、
前記ステップは、
前記マッハツェンダ干渉計に光を入力させる入力ステップと、
前記光を入力させた状態で、前記第1導波路および前記第2導波路のいずれか一方に、導波路の屈折率を互いに異なる一定値にする複数の制御量のそれぞれを与える制御量付与ステップと、
前記複数の制御量を与えたそれぞれのステップにて、前記マッハツェンダ干渉計から出力された光の強度を測定する測定ステップと、
前記光の強度の測定の結果をもとに、前記第1導波路および前記第2導波路のいずれか他方に接続された前記第1マッハツェンダ干渉計または前記第2マッハツェンダ干渉計の干渉特性を取得する取得ステップと、
を含み
前記測定ステップにおいて、前記取得ステップにて前記干渉特性を取得する前記第1マッハツェンダ干渉計または前記第2マッハツェンダ干渉計の導波路の屈折率を変化させ、
前記取得ステップにおいて、前記測定ステップにおいて測定された複数の光の強度の平均値をもとに、前記干渉特性を取得し、前記屈折率を変化させたことによって得られた前記平均値の極値のうち、極小値の少なくとも一つを前記干渉特性におけるヌル点と推定する
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッハツェンダ干渉計の検査方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
マッハツェンダ干渉計は、たとえば光通信用の信号光を生成するための変調器に用いられている。たとえば、光通信分野では、送信器の容量の拡大が要求されている。マッハツェンダ干渉計を用いたマッハツェンダ変調器は、光の振幅と位相を同時に制御する多値変調が実施可能なため、伝送距離が中距離以上の光通信において送信器の構成要素として用いられている。
【0003】
マッハツェンダ変調器にて多値変調を行うためには、マッハツェンダ変調器においてマッハツェンダ干渉計がいわゆる入れ子構造になっている必要がある。ここで、入れ子構造とは、主マッハツェンダ干渉計の2つのアーム部のそれぞれにさらに副マッハツェンダ干渉計が設けられている構造を意味する。なお、副マッハツェンダ干渉計の2つのアーム部のそれぞれにさらに副々マッハツェンダ干渉計が設けられている場合もありうる。
【0004】
導波路型のマッハツェンダ変調器においては、マッハツェンダ干渉計の2つのアーム部における導波路にバイアスを掛けて屈折率を調整できるバイアス機構が設けられている。バイアス機構は、導波路に電圧、電流または熱を与えることによって屈折率を変化させる。
【0005】
マッハツェンダ干渉計においては、2つのアーム部における光の位相差がπになり、2つのアーム部のそれぞれを伝搬する光が合波されるときに互いに打ち消し合うようにバイアスが調整される。このように光が互いに打ち消し合うときの位相差はnull点またはヌル点と呼ばれる。
【0006】
ここで、マッハツェンダ干渉計を適切に動作させるためには、ヌル点を実現するようにバイアスを調整する必要がある。ヌル点はマッハツェンダ干渉計の個体差に依存するので、マッハツェンダ干渉計の干渉特性を検査する必要がある。
【0007】
単一のマッハツェンダ干渉計であれば、光を入力し、出力された光の強度を測定することで、ヌル点を検出することは比較的容易である。
【0008】
しかしながら、入れ子構造のマッハツェンダ干渉計においては、主マッハツェンダ干渉計に光を入力してもその光は分岐して両方の副マッハツェンダ干渉計にそれぞれ入力される。このため、出力された光の強度を測定することで一方の副マッハツェンダ干渉計の干渉特性を検査し、ヌル点を検出しようとしても、その検査結果には他方の副マッハツェンダ干渉計の干渉特性の影響が含まれてしまう。その結果、入れ子構造のマッハツェンダ干渉計の干渉特性を正確に検査することが困難である。
【0009】
そこで、ヌル点を検出するために、それぞれの副マッハツェンダ干渉計のバイアスに、互いに異なる周波数の電気信号を重畳した状態で、出力された光の周波数特性を測定することで、それぞれの副マッハツェンダ干渉計における干渉状態を分離して検査し、それぞれのヌル点を検出する技術が開示されている(特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2016-111398号公報
【文献】特開2013-110620号公報
【文献】特許第5724792号公報
【文献】特許第5874202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の技術では、検査のために、電気信号を発生させるための信号発生器や、周波数アナライザや、電気的な周波数フィルタが必要であり、検査コストが高くなり、かつ検査工程が煩雑になるという問題があった。
【0012】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易かつ安価な装置、および簡易な工程にて、マッハツェンダ干渉計の検査を実施できるマッハツェンダ干渉計の検査方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、導波路を有する第1アーム部と第2アーム部とを備え、前記第1アーム部が、導波路を有する第3アーム部と第4アーム部とを備えた第1マッハツェンダ干渉計と前記第1マッハツェンダ干渉計と直列接続する第1導波路とを有し、前記第2アーム部が、導波路を有する第5アーム部と第6アーム部とを備える第2マッハツェンダ干渉計と前記第2マッハツェンダ干渉計と直列接続する第2導波路とを有する、マッハツェンダ干渉計の検査方法であって、前記マッハツェンダ干渉計に光を入力させる入力ステップと、前記光を入力させた状態で、前記第1導波路および前記第2導波路のいずれか一方に、導波路の屈折率を互いに異なる一定値にする複数の制御量のそれぞれを与える制御量付与ステップと、前記複数の制御量を与えたそれぞれのステップにて、前記マッハツェンダ干渉計から出力された光の強度を測定する測定ステップと、前記光の強度の測定の結果をもとに、前記第1導波路および前記第2導波路のいずれか他方に接続された前記第1マッハツェンダ干渉計または前記第2マッハツェンダ干渉計の干渉特性を取得する取得ステップと、を含むマッハツェンダ干渉計の検査方法である。
【0014】
前記制御量付与ステップを前記第1導波路に対して実行し、前記測定ステップを実行することによって、前記取得ステップにおいて前記第2マッハツェンダ干渉計の干渉特性を取得し、前記制御量付与ステップを前記第2導波路に対して実行し、前記測定ステップを実行することによって、前記取得ステップにおいて前記第1マッハツェンダ干渉計の干渉特性を取得するものでもよい。
【0015】
前記取得ステップにおいて、前記測定ステップにおいて測定された複数の光の強度の平均値をもとに、前記干渉特性を取得するものでもよい。
【0016】
前記測定ステップにおいて、前記取得ステップにて前記干渉特性を取得する前記第1マッハツェンダ干渉計または前記第2マッハツェンダ干渉計の導波路の屈折率を変化させ、前記取得ステップにおいて、前記屈折率を変化させたことによって得られた前記平均値の極値のうち、極小値の少なくとも一つを前記干渉特性におけるヌル点と推定するものでもよい。
【0017】
前記取得ステップにおいて、前記測定ステップにおいて測定された複数の光の強度の制御量に対する関係を示す曲線の交点をもとに、前記干渉特性におけるヌル点を推定するものでもよい。
【0018】
推定した前記ヌル点に設定した条件下で、再び前記制御量付与ステップ、前記測定ステップ、および前記取得ステップを行って前記干渉特性におけるヌル点を推定する工程を1回以上行い、前回推定したヌル点と今回推定したヌル点との差分が所定のヌル点設定値未満である場合、今回推定したヌル点をヌル点として特定するものでもよい。
【0019】
前記制御量付与ステップにおいて、前記複数の制御量の数を2以上の整数であるNとすると、前記複数の制御量は、前記第1導波路および前記第2導波路のいずれか一方の前記屈折率の変化による光の位相が、0、・・・、2(N-1)π/Nとなるように設定されるものでもよい。
【0020】
前記光を入力させた状態で、前記制御量付与ステップにて前記複数の制御量を与える前記第1導波路または前記第2導波路の屈折率を変化させて前記マッハツェンダ干渉計から出力された光の強度を測定し、該測定した強度の極値の少なくとも一つを、前記屈折率を変化させたことによる光の位相変化における位相ゼロに設定し、位相ゼロに設定した前記極値に隣接する極値を位相πに設定するものでもよい。
【0021】
本発明の一態様は、プロセッサに、導波路を有する第1アーム部と第2アーム部とを備え、前記第1アーム部が、導波路を有する第3アーム部と第4アーム部とを備えた第1マッハツェンダ干渉計と前記第1マッハツェンダ干渉計と直列接続する第1導波路とを有し、前記第2アーム部が、導波路を有する第5アーム部と第6アーム部とを備える第2マッハツェンダ干渉計と前記第2マッハツェンダ干渉計と直列接続する第2導波路とを有する、マッハツェンダ干渉計の検査をするステップを実行させるプログラムであって、前記ステップは、前記マッハツェンダ干渉計に光を入力させる入力ステップと、前記光を入力させた状態で、前記第1導波路および前記第2導波路のいずれか一方に、導波路の屈折率を互いに異なる一定値にする複数の制御量のそれぞれを与える制御量付与ステップと、前記複数の制御量を与えたそれぞれのステップにて、前記マッハツェンダ干渉計から出力された光の強度を測定する測定ステップと、前記光の強度の測定の結果をもとに、前記第1導波路および前記第2導波路のいずれか他方に接続された前記第1マッハツェンダ干渉計または前記第2マッハツェンダ干渉計の干渉特性を取得する取得ステップと、を含むプログラムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るマッハツェンダ干渉計の検査方法およびプログラムは、簡易かつ安価な装置、および簡易な工程にて、マッハツェンダ干渉計の検査を実施できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、実施形態1に係る検査方法の説明図である。
図2図2は、実施形態1に係る検査方法のフローチャートである。
図3図3は、分割点の算出の説明図である。
図4図4は、第1副制御量のスイープにより得られる光強度を示す図である。
図5図5は、第2副制御量のスイープにより得られる光強度を示す図である。
図6図6は、実施形態2に係る検査方法のフローチャートである。
図7図7は、第1副制御量のスイープにより得られる光強度を示す図である。
図8図8は、第2副制御量のスイープにより得られる光強度を示す図である。
図9図9は、実施形態3に係る検査方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。また、以下、マッハツェンダ干渉計をMZ干渉計と記載する場合がある。
【0025】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る検査方法の説明図である。実施形態1に係る検査方法では、検査装置100を用いて、MZ干渉計10の干渉特性を検査する。
【0026】
<検査装置の構成>
検査装置100は、測定装置101と、光源102と、受光器103とを備えている。光源102は、MZ干渉計10に入力させる試験光としての光L1を出力する。光L1の波長はたとえば光通信に用いられる波長であり、たとえば1550nmである。受光器103は、MZ干渉計10から出力された光L4を受光し、その受光強度に応じた電子信号を出力する。測定装置101は、たとえば直流安定化電源および、それを制御するプロセッサとメモリとをハードウェアとして備えるパーソナルコンピュータを含んで構成されている。測定装置101は、光源102に制御信号を出力して光L1を出力させる。また、測定装置101は、受光器103から電気信号を受信して、その受信信号を処理して光L4の光強度を取得する。
【0027】
<MZ干渉計の構成>
MZ干渉計10は、導波路型のMZ干渉計であって、たとえばハイメサ型の導波路構造を有する。MZ干渉計10の導波路構造は半導体材料で構成されている。
【0028】
MZ干渉計10は、それぞれ導波路で構成された、入力部1、出力部2、1入力2出力型の光分波部3および2入力1出力型の光合波部4を備える。さらに、MZ干渉計10は、第1アーム部5と第2アーム部6とを備えている。
【0029】
入力部1は、光L1を受け付けて光分波部3に出力する。光分波部3は、入力側が入力部1に接続されており、2つの出力側がそれぞれ第1アーム部5、第2アーム部6に接続されている。光合波部4は、2つの入力側がそれぞれ第1アーム部5、第2アーム部6に接続されており、出力側が光合波部4に接続されている。
【0030】
第1アーム部5は、光分波部3に接続された第1MZ干渉計51と、第1MZ干渉計51と直列接続し、光合波部4に接続された第1導波路52とを有している。第1MZ干渉計51は、それぞれ導波路で構成された、1入力2出力型の光分波部51a、2入力1出力型の光合波部51b、第3アーム部51cおよび第4アーム部51dを備えている。光分波部51aは、入力側が光分波部3に接続されており、2つの出力側がそれぞれ第3アーム部51c、第4アーム部51dに接続されている。光合波部51bは、2つの入力側がそれぞれ第3アーム部51c、第4アーム部51dに接続されており、出力側が光合波部4に接続されている。
【0031】
第2アーム部6は、光分波部3に接続された第2MZ干渉計61と、第2MZ干渉計61と直列接続し、光合波部4に接続された第2導波路62とを有している。第2MZ干渉計61は、それぞれ導波路で構成された、1入力2出力型の光分波部61a、2入力1出力型の光合波部61b、第5アーム部61cおよび第6アーム部61dを備えている。光分波部61aは、入力側が光分波部3に接続されており、2つの出力側がそれぞれ第5アーム部61c、第6アーム部61dに接続されている。光合波部61bは、2つの入力側がそれぞれ第5アーム部61c、第6アーム部61dに接続されており、出力側が光合波部4に接続されている。
【0032】
すなわち、このMZ干渉計10はいわゆる入れ子構造を有している。
【0033】
MZ干渉計10において、入力部1は、光源102からの光L1を受け付けて光分波部3に出力する。光分波部3は、光L1を強度が1:1の光L1a、L1bに分波してそれぞれMZ干渉計51、61に出力する。
【0034】
MZ干渉計51において、光分波部51aは、光L1aを強度が1:1の光L11a、L12aに分波して第3アーム部51c、第4アーム部51dに出力する。第3アーム部51c、第4アーム部51dは、それぞれ光L11a、L12aを伝搬して光合波部51bに出力する。光合波部51bは、光L11a、L12aを合波して光L11a、L12aがその位相差に応じて干渉して生成された干渉光である光L3aを第1導波路52に出力する。第1導波路52は光L3aを伝搬して光合波部4に出力する。
【0035】
MZ干渉計61において、光分波部61aは、光L1bを強度が1:1の光L11b、L12bに分波して第5アーム部61c、第6アーム部61dに出力する。第5アーム部61c、第6アーム部61dは、それぞれ光L11b、L12bを伝搬して光合波部61bに出力する。光合波部61bは、光L11b、L12bを合波して光L11b、L12bがその位相差に応じて干渉して生成された干渉光である光L3bを第2導波路62に出力する。第2導波路62は光L3bを伝搬して光合波部4に出力する。
【0036】
光合波部4は、光L3a、L3bを合波して光L3a、L3bがその位相差に応じて干渉して生成された干渉光である光L4を出力部2に出力する。出力部2は光L4を受光器103に出力する。
【0037】
また、第1MZ干渉計51の第3アーム部51cに対して、電極51c1、51c2が設けられている。電極51c1は、不図示の共通電極との間でバイアス電圧を印加して第3アーム部51cを構成する導波路の屈折率を変化させることによって、第3アーム部51cを伝搬する光L11aの位相を調整するために設けられている。電極51c2は、MZ干渉計10をMZ変調器として利用する場合に、不図示の共通電極との間で変調信号を印加して第3アーム部51cを伝搬する光を変調するために設けられている。
【0038】
同様に、第1MZ干渉計51の第4アーム部51dに対して、電極51d1、51d2が設けられている。電極51d1は、不図示の共通電極との間でバイアス電圧を印加して第4アーム部51dを伝搬する光L12aの位相を調整するために設けられている。電極51d2は、MZ干渉計10をMZ変調器として利用する場合に、不図示の共通電極との間で変調信号を印加して第4アーム部51dを伝搬する光を変調するために設けられている。
【0039】
同様に、第2MZ干渉計61の第5アーム部61cに対して、電極61c1、61c2が設けられている。電極61c1は、不図示の共通電極との間でバイアス電圧を印加して第5アーム部61cを伝搬する光L11bの位相を調整するために設けられている。電極61c2は、MZ干渉計10をMZ変調器として利用する場合に、不図示の共通電極との間で変調信号を印加して第5アーム部61cを伝搬する光を変調するために設けられている。
【0040】
同様に、第2MZ干渉計61の第6アーム部61dに対して、電極61d1、61d2が設けられている。電極61d1は、不図示の共通電極との間でバイアス電圧を印加して第6アーム部61dを伝搬する光L12bの位相を調整するために設けられている。電極61d2は、MZ干渉計10をMZ変調器として利用する場合に、不図示の共通電極との間で変調信号を印加して第6アーム部61dを伝搬する光を変調するために設けられている。
【0041】
なお、電極51c1、51c2、51d1、51d2、61c1、61c2、61d1、61d2に印加される電圧は測定装置101から与えられる。
【0042】
<検査方法>
つぎに、検査装置100が実行するMZ干渉計10の検査方法を説明する。検査装置100は、測定装置101のハードウェアがプログラムを実行することによって検査方法を実行する。図2は、実施形態1に係る検査方法のフローチャートである。
【0043】
はじめに、ステップS101において、測定装置101は、光源102に制御信号を出力して試験光としての光L1を出力させ、MZ干渉計10に光L1入力させる(入力ステップ)。
【0044】
つづいて、ステップS102において、測定装置101は、MZ干渉計10に光L1入力させた状態で、電極52aに印加する電圧値をスイープしながら、受光器103にて光L4を受光して光L4の出力光強度を測定(取得)する。電極52aは第1主電極に相当する。電極52aに印加する電圧値は第1主制御量に相当する。また、ステップS102は、第1導波路52の屈折率を変化させてMZ干渉計10から出力された光L4の光出力強度を測定することに相当する。
【0045】
つづいて、ステップS103において、測定装置101は、測定した光L4の光出力強度の極値である極大値、極小値を算出する。
つづいて、ステップS104において、測定装置101は、電極52aに印加する電圧値(第1主制御量)に対する分割点を算出する。
【0046】
図3は、第1主制御量に対する分割点の算出の説明図である。図3において横軸は第1制御量で示し、縦軸は測定した光出力強度(光強度)の相対値をdB単位で示している。第1主制御量を増やすようにスイープすると、光強度は極値を取るように周期的に変化する。具体的には光強度は極小値と極大値を交互に取るように周期的に変化する。この周期的変化は、第2アーム部6側から出力された光L3bと、第1アーム部5側から出力された光L3aとの干渉状態が、第1主制御量のスイープによる光L3aの位相の変化によって周期的に変化することを意味している。したがって、光強度が極大値から隣接する極小値、または極小値から隣接する極大値まで変化した場合に、光L3aの位相がπだけ変化したと考えられる。そこで、測定した光強度の極値の少なくとも一つを、第1導波路52の屈折率を変化させたことによる光L3aの位相変化における位相ゼロに設定し、位相ゼロに設定した極値に隣接する極値を位相πに設定する。図3に示す例では、制御量が最も小さい極値である極大値を位相ゼロに設定し、そのときの第1主制御量をCとする。そして、位相ゼロに設定した極値に隣接する極値である極小値を位相πに設定し、そのときの第1主制御量をCπとする。このように制御量が小さい極値を位相の基準とすると、試験において与える制御量が小さくてよいので好ましい。なお、第1主制御量を離散的にスイープする場合は、所得したデータ点から、たとえば、多項式による近似曲線などを用いてCとCπとを決定する。
【0047】
そして、位相ゼロに対する第1制御量Cと位相πに対する第1主制御量Cπを基準として、位相が2πだけ変化する第1制御量の範囲を分割する。この分割は、位相の間隔が等しくなるように等分割することが好ましい。たとえばNを2以上の整数としてN分割する場合、各分割点において位相が0、・・・、2(N-1)π/Nとなるように等分割することが好ましい。なお、図3の例では、Nは4であり、第1主制御量に対してC、C0.5π、Cπ、C1.5πを分割点とする。なお、C0.5π、C1.5πの位置は線形補間などを用いて算出することができる。
【0048】
つづいて、ステップS105において、測定装置101は、電極52aに印加する電圧値である第1主制御量を分割点C、C0.5π、Cπ、C1.5πのそれぞれに設定する(制御量付与ステップ)。分割点C、C0.5π、Cπ、C1.5πはいずれも一定値の電圧(DC電圧)である。そして、それぞれの分割点の設定において、第1副電極群としての電極61c1、61d1の少なくとも一方に対する第1副制御量としての印加する電圧をスイープしながら、光L4の光出力強度を測定する(測定ステップ)。このとき、電極61c1に印加する電圧をスイープし、第2MZ干渉計61における光L11bと光L12bとの位相差を少なくとも0から2πまで変化させてもよい。また、電極61c2に印加する電圧をスイープし、光L11bと光L12bとの位相差を少なくとも0から2πまで変化させてもよい。さらには、電極61c1、61c2に印加する電圧のそれぞれをスイープし、光L11bと光L12bとの位相差を少なくとも0から2πまで変化させてもよい。
【0049】
図4は、第1副制御量のスイープにより得られる光強度を示す図である。縦軸は光強度であり、横軸は第1副制御量であるが、対応する光L11bと光L12bとの位相差を表している。たとえば、曲線C1、C2、C3、C4は、それぞれ、分割点をC、C0.5π、Cπ、C1.5πのいずれかに設定した場合の光強度を示す特性である。曲線C1、C2、C3、C4は、第1主制御量を設定した値にしたときの第1MZ干渉計51の干渉特性の影響を受けた状態での干渉特性を示している。曲線C1、C2、C3、C4はいずれも極小値をとるが、第1主制御量の値が異なるため第1MZ干渉計51から受ける影響が互いに異なることから、その極小値をとる第2副制御量(位相)は互いに異なる。なお、曲線C0は、第1MZ干渉計51の影響がない場合の理想的な第2MZ干渉計61の特性を示している。
【0050】
つづいて、ステップS106において、測定装置101は、各第1副制御量(位相)における曲線C1、C2、C3、C4が示す光強度の平均値(平均光出力強度)を算出する。すると、この平均光出力強度を示す曲線は、曲線C5のようになる。曲線C5は、第1主制御量を位相が2πだけ変化する間で分割点C、C0.5π、Cπ、C1.5πで等分割することによって、第1MZ干渉計51の干渉特性の影響を打ち消した状態での第2MZ干渉計61の干渉特性を表したものと言える。ステップS106は干渉特性の取得ステップの一つである。
【0051】
そこで、つづくステップS107において、測定装置101は、曲線C5において極小値となる第1副制御量を、第2MZ干渉計61における光L11bと光L12bとの位相差がπとなるヌル点(図4の点P1)として算出して取得する(取得ステップの一つ)。なお、第1副制御量は、電極61c1、61d1のいずれか一方に印加する電圧をゼロとした場合に、他方に電圧を印加してヌル点となるときに、印加する電圧がなるべく小さくなるように設定するのが好ましい。
なお、つづくステップS111以降は、測定装置101は、ステップS107で算出したヌル点となる第1副制御量に固定し、第2MZ干渉計61をヌル点に固定した状態で各ステップを実行してもよい。
【0052】
つづいて、ステップS108~S113では、ステップS102~ステップS107を第1アーム部5と第2アーム部6とを入れ換えて行う。
すなわち、ステップS108において、測定装置101は、MZ干渉計10に光L1入力させた状態で、電極62aに印加する電圧値をスイープしながら、受光器103にて光L4を受光して光L4の出力光強度を測定する。電極62aは第2主電極に相当する。電極62aに印加する電圧値は第2主制御量に相当する。また、ステップS108は、第2導波路62の屈折率を変化させてMZ干渉計10から出力された光L4の光出力強度を測定することに相当する。
【0053】
つづいて、ステップS109において、測定装置101は、測定した光L4の光出力強度の極値である極大値、極小値を算出する。
つづいて、ステップS110において、測定装置101は、電極62aに印加する電圧値(第2主制御量)に対する分割点を算出する。ステップS110においては、第2制御量に対してC、C0.5π、Cπ、C1.5πを分割点とする。なお、これらの分割点は、第1制御量に対する分割点と、それぞれが同じ値とは限らないが、説明の便宜上同じ変数にて表すこととする。
【0054】
つづいて、ステップS111において、測定装置101は、電極62aに印加する電圧値である第2主制御量を分割点C、C0.5π、Cπ、C1.5πのそれぞれに設定する(制御量付与ステップ)。そして、それぞれの分割点の設定において、第2副電極群としての電極51c1、51d1の少なくとも一方に対する第2副制御量としての印加する電圧をスイープしながら、光L4の光出力強度を測定する(測定ステップ)。このとき、電極51c1に印加する電圧をスイープし、第1MZ干渉計51における光L11aと光L12aとの位相差を少なくとも0から2πまで変化させてもよい。また、電極51d1に印加する電圧をスイープし、光L11aと光L12aとの位相差を少なくとも0から2πまで変化させてもよい。さらには、電極51c1、51d1に印加する電圧のそれぞれをスイープし、光L11aと光L12aとの位相差が少なくとも0から2πまで変化させてもよい。
【0055】
図5は、第2副制御量のスイープにより得られる光強度を示す図である。縦軸は光強度であり、横軸は第2副制御量であるが、対応する光L11aと光L12aとの位相差を位相として表している。たとえば、曲線C6、C7、C8、C9は、それぞれ、分割点をC、C0.5π、Cπ、C1.5πのいずれかに設定した場合の光強度を示す特性である。曲線C6、C7、C8、C9は、第2主制御量を設定した値にしたときの第2MZ干渉計61の干渉特性の影響を受けた状態での干渉特性を示している。曲線C6、C7、C8、C9はいずれも極小値をとるが、第2主制御量の値が異なるため第2MZ干渉計61から受ける影響が互いに異なることから、その極小値をとる第2副制御量(位相)は互いに異なる。なお、曲線C0は、第2MZ干渉計61の影響がない場合の理想的な第1MZ干渉計51の特性を示している。
【0056】
つづいて、ステップS112において、測定装置101は、各第2副制御量における光強度の平均値(平均光出力強度)を算出して曲線C10を求め、第1MZ干渉計51の干渉特性を取得する(取得ステップの一つ)。
【0057】
つづいて、ステップS113において、測定装置101は、極小値となる第2副制御量を、第1MZ干渉計51における光L11aと光L12aとの位相差がπとなるヌル点として算出する(取得ステップの一つ)。なお、第2副制御量は、電極51c1、51d1のいずれか一方に印加する電圧をゼロとした場合に、他方に電圧を印加してヌル点となるときに、印加する電圧がなるべく小さくなるように設定するのが好ましい。
その後、測定装置101は測定フローを終了する。
【0058】
以上説明した実施形態1に係る検査方法によれば、周波数信号を使用しないので、簡易かつ安価な装置、および簡易な工程にて、MZ干渉計10の検査を実施できる。
【0059】
なお、上記実施形態1では、まず第2MZ干渉計61の干渉特性を取得し、つづいて第1MZ干渉計51の干渉特性を取得しているが、干渉特性を取得する順序入れ換えてもよい。以下の実施形態でも同様である。
【0060】
また、上記実施形態1では、ステップS105において、第1主制御量を分割点C、C0.5π、Cπ、C1.5πのそれぞれに設定して第1副制御量をスイープして曲線C1、C2、C3、C4を取得し、ステップS106において、各第1副制御量(位相)における曲線C1、C2、C3、C4が示す光強度の平均値(平均光出力強度)を算出している。ただし、第1主制御量を分割点のそれぞれに設定して、固定した第1副制御量において光強度を測定し、その平均値を取得し、つぎに第1副制御量を変更して第1主制御量を分割点のそれぞれに設定した状態での光強度を測定して平均値を取得し、というステップを繰り返し行い、直接曲線C5を取得してもよい。以下の実施形態でも同様である。
【0061】
(実施形態2)
図6は、実施形態2に係る検査方法の説明図である。実施形態2に係る検査方法では、実施形態1と同様に、検査装置100を用いて、MZ干渉計10の干渉特性を検査する。
【0062】
実施形態1において、第1主制御量の分割点C、C0.5π、Cπ、C1.5πを算出する場合に、これらの分割点がそれぞれ位相ゼロ、0.5π、π、1.5πの状態と正確に一致しない場合がある。たとえば、図3のように分割点を求める場合に、線形補間や近似の誤差などによって不一致が生じ得る。このような不一致は算出するヌル点の誤差の原因となり得る。
【0063】
そこで、第2実施形態では、第1MZ干渉計51のヌル点と第2MZ干渉計61のヌル点とを交互に算出して推定し、推定したヌル点がある値に収束したらそれをヌル点として特定する。
【0064】
本実施形態2に係る検査方法では、図6に示すように、まずステップS101において、測定装置101は、光源102に制御信号を出力して試験光としての光L1を出力させ、MZ干渉計10に光L1入力させる(入力ステップ)。
【0065】
つづいて、ステップS201において、測定装置101は、第2MZ干渉計61の第1ヌル点を取得する。ステップS201は、図2におけるステップS102~ステップS107のステップを含むステップとして実行することができる。
【0066】
図7は、ステップS201にて第1副制御量のスイープにより得られる光強度を示す図である。たとえば、曲線C11、C12、C13、C14は、それぞれ、分割点をC、C0.5π、Cπ、C1.5πのいずれかに設定した場合の光強度を示す特性である。曲線C11、C12、C13、C14はいずれも極小値をとるが、第1主制御量の値が異なるため第1MZ干渉計51から受ける影響が互いに異なることから、その極小値をとる第1副制御量(位相)は互いに異なる。
【0067】
図7に示す結果から各第1副制御量における平均光出力強度を算出して曲線C15を取得し、その極小値となる第1副制御量を、第2MZ干渉計61におけるヌル点(点P3)としても、点P3は位相としてはπから外れた値である。ただし、ステップS201では、このようにして求めたヌル点を仮に、推定した第1ヌル点として取得する。
【0068】
つづいて、ステップS202において、測定装置101は、第2MZ干渉計61の状態を第1ヌル点に固定した状態にて、第1MZ干渉計51の第2ヌル点を取得する。ステップS202は、図2におけるステップS108~ステップS113のステップを含むステップとして実行することができる。
【0069】
ただし、分割点を取得するときは第2MZ干渉計61を第1ヌル点に設定しない方が好ましい。
【0070】
図8は、ステップS202にて第2副制御量のスイープにより得られる光強度を示す図である。たとえば、曲線C16、C17、C18、C19は、それぞれ、分割点をC、C0.5π、Cπ、C1.5πのいずれかに設定した場合の光強度を示す特性である。曲線C16、C17、C18、C19はいずれも極小値をとるが、第2主制御量の値が異なるため第2MZ干渉計61から受ける影響が互いに異なることから、その極小値をとる第2副制御量(位相)は互いに異なる。
【0071】
さらに、図8図7とを比較すると、図8における各極小値に対する各第2副制御量(位相)の値は、図7における各極小値に対する各第1副制御量(位相)の値よりもばらついていない。これは第2MZ干渉計61の状態を第1ヌル点に固定した効果である。
【0072】
図8に示す結果から各第2副制御量における平均光出力強度を算出して曲線C20を取得し、その極小値となる第2副制御量を、第1MZ干渉計51におけるヌル点(点P4)としても、点P4は位相としてはπから外れた値である。ただし、ステップS202では、このようにして求めたヌル点を仮に、推定した第2ヌル点として取得する。
【0073】
つづいて、ステップS203において、測定装置101は、第1MZ干渉計51の状態をステップS202で取得した第2ヌル点に固定した状態にて、第2MZ干渉計61の第1ヌル点を取得する。ステップS203は、ステップS201と同様に実行することができる。
【0074】
つづいて、ステップS204において、測定装置101は、第2MZ干渉計61の状態をステップS203で取得した第1ヌル点に固定した状態にて、第1MZ干渉計51の第2ヌル点を取得する。ステップS204は、ステップS202と同様に実行することができる。
【0075】
つづいて、ステップS205において、測定装置101は、前回の2つのステップで取得した2つの第1ヌル点の差分、すなわちステップS201で取得した第1ヌル点とステップS203で取得した第1ヌル点との差分が第1設定値より小さく、かつ、前回の2つのステップで取得した2つの第2ヌル点の差分、すなわちステップS202で取得した第2ヌル点とステップS204で取得した第2ヌル点との差分が第2設定値より小さいか否かを判定する。第1設定値、第2設定値は、それぞれ、たとえばそれぞれのヌル点に対する許容誤差に応じて設定される。第1設定値、第2設定値は、ヌル点設定値の一例である。
【0076】
ステップS205で「Yes」と判定された場合、測定装置101は、第1ヌル点、第2ヌル点が、それぞれ第1設定値、第2設定値の範囲内に収束したと判断したことになり、測定フローは終了する。
【0077】
ステップS205で「No」と判定された場合、測定装置101は、第1ヌル点または第2ヌル点のいずれかが、第1または第2設定値の範囲内に収束していないと判断したことになる。つづいて、ステップS206において、前回の第1ヌル点、第2ヌル点を今回の第1ヌル点、第2ヌル点に更新する。つづいて、測定フローはステップS203に戻る。その後、ステップS203~ステップS205が実行される。
【0078】
実施形態2の測定方法によれば、実施形態1の測定方法と同様の効果が得られるとともに、誤差のより少ないヌル点を取得できる。
【0079】
(実施形態3)
図9は、実施形態3に係る検査方法のフローチャートである。実施形態3に係る検査方法では、実施形態1、2と同様に、検査装置100を用いて、MZ干渉計10の干渉特性を検査する。
【0080】
実施形態1、2において、たとえば図4に示すような曲線C1、C2、C3、C4を取得し、平均光出力強度を算出し、ヌル点を取得している。
【0081】
これに対して、実施形態3では、図4に示すように曲線C1、C2、C3、C4が全て交差する点がヌル点に対応することを利用して、ヌル点を取得する。
【0082】
図9に示すフローチャートは、図2に示すフローチャートのステップS106、S107、S112、S113を、それぞれステップS306、S307、S312、S313に置き換えたものである。そこで、以下では、重複説明の省略のために、ステップS306、S307、S312、S313について説明する。
【0083】
ステップS306では、測定装置101は、曲線C1、C2、C3、C4の交点を算出する。ステップS307では、測定装置101は、交点に対応する第1副制御量をヌル点として算出して取得する。ステップS312では、測定装置101は、曲線C6、C7、C8、C9の交点を算出する。ステップS313では、測定装置101は、交点に対応する第2副制御量をヌル点として算出して取得する。
【0084】
実施形態3の測定方法によれば、実施形態1の測定方法と同様の効果が得られるとともに、測定装置101における演算負荷を低減できる。
【0085】
なお、上記実施形態のMZ干渉計10は、各制御量は電圧であり、導波路に対する電圧の印加によってアーム部の屈折率を変化させ、アーム部を伝搬する光の位相を変化させている。ただし、アーム部の屈折率を変化させる機構として、導波路を加熱するヒータを採用してもよい。この場合、制御量は、ヒータに与える電流または電力である。
【0086】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各実施形態の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0087】
例えば、上述した各実施例の制御ステップを一連で実行するソフトウェアプログラムは、検査装置100に組み込んでもよいし、ハードディスク、SSD、CD-ROM、DVD-ROMなどのコンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録して流通させたり、インターネット回線を通じて提供したりすることもできる。
【0088】
例えば、上述した各実施例の制御ステップを一連で実行するファームウェアプログラムを組み込んだ制御基板に、MZ干渉計を実装してもよい。このようなMZ干渉計装置は、MZ干渉計10のようなMZ干渉計と、上記ファームウェアプログラムを組み込んだ、プロセッサとメモリとを有する制御基板とを備えるものである。
【符号の説明】
【0089】
1 入力部
2 出力部
3、51a、61a 光分波部
4、51b、61b 光合波部
5 第1アーム部
6 第2アーム部
10 MZ干渉計
51 第1MZ干渉計
51c 第3アーム部
51d 第4アーム部
52 第1導波路
52a、51c1、51c2、51d1、51d2、62a、61c1、61c2、61d1、61d2 電極
61 第2MZ干渉計
61c 第5アーム部
61d 第6アーム部
62 第2導波路
100 検査装置
101 測定装置
102 光源
103 受光器
L1、L11a、L11b、L12a、L12b、L1a、L1b、L3a、L3b、L4 光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9