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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】微調整ネジおよび加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/10 20060101AFI20231130BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20231130BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20231130BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231130BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B24B49/10
B24B41/06 L
B24B7/04 Z
H01L21/304 631
G01L5/00 103B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020034780
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021137879
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】力石 利康
(72)【発明者】
【氏名】和田 健太郎
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-203290(JP,A)
【文献】特開2018-15823(JP,A)
【文献】特開平8-90376(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159245(WO,A1)
【文献】特開2010-216804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/17295(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/10
B24B 41/06
B24B 7/04
H01L 21/304
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部品と第2部品とを間隔を開けて連結するように設けられ、該第1部品と該第2部品との間の距離を調整可能とするとともに、該第2部品にかかる荷重を検知可能な微調整ネジであって、
該第1部品に形成されている第1雌ネジに螺入可能な第1雄ネジと、
該第1雄ネジの軸方向の延長線上で該第1雄ネジと離間して配置され、該第1雌ネジのネジピッチとは異なるネジピッチを有する該第2部品に形成されている第2雌ネジに螺入可能な第2雄ネジと、
互いに離間している該第1雄ネジと該第2雄ネジとを連結する連結部と、
該連結部の内部に圧縮荷重をかけて収容される荷重センサと、
を備えた微調整ネジ。
【請求項2】
保持面によって被加工物を保持する保持手段と、加工具を装着し該加工具を回転させるスピンドルを有する加工手段と、該加工手段を支持する支持ケースを該保持面に垂直な上下方向に移動させる上下移動手段と、該保持手段に対する該加工手段の傾きを調整する加工手段傾き調整機構と、を備える加工装置であって、
該加工手段傾き調整機構が、請求項1記載の微調整ネジであり、
該第1部品が該支持ケースであり、該第2部品が該加工手段である、
加工装置。
【請求項3】
保持面によって被加工物を保持する保持手段と、該保持手段を支持する基台と、加工具を装着し該加工具を回転させるスピンドルを有する加工手段と、該加工手段を支持する支持ケースを該保持面に垂直な上下方向に移動させる上下移動手段と、該加工手段に対する該保持手段の傾きを調整する保持手段傾き調整機構と、を備える加工装置であって、
該保持手段傾き調整機構が、請求項1記載の微調整ネジであり、
該第1部品が該基台であり、該第2部品が該保持手段である、
加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微調整ネジおよび加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チャックテーブルの保持面に保持された被加工物を、研削手段に装着された環状の研削砥石によって研削する研削装置では、被加工物の中心を研削砥石が通過するように、チャックテーブルと研削手段とが配置されている。
【0003】
保持面に保持された被加工物に対する研削加工は、被加工物の中心から外周に至る半径エリアにおいて実施される。この半径エリアにおいて、保持面と研削砥石の下面とが、互いに平行になっている。また、研削された被加工物の厚みの測定結果に基づいて、保持面と研削砥石の下面との平行度が調整される。そのため、保持面と研削砥石の下面との平行度を調整するための、傾き調整機構が備えられている。
【0004】
傾き調整機構は、スピンドル支持ケースに支持されて、研削砥石を回転させるスピンドルユニットを傾ける。または、傾き調整機構は、装置ベースに支持されて、チャックテーブルを回転させるチャック軸ユニットを傾ける。
【0005】
近年、被加工物の研削時間を短くすることが求められている。このため、研削加工時に、被加工物に対して研削砥石が大きな荷重で押し付けられる。
【0006】
しかし、荷重を大きくし過ぎると、被加工物と保持面との間に配されているテープが潰れることなどで、研削後の被加工物の厚みを均一にすることが困難となる。そこで、研削加工時における荷重の測定結果に基づいて荷重を制御することで、研削後のウェーハの厚みの均一化を図っている
これに関し、荷重を測定するために、特許文献1に開示のように、装置ベースとチャック軸ユニットとの間、または、スピンドル支持ケースとスピンドルユニットとの間(部材間)に、荷重センサが挟まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-326456号公報
【文献】特開2013-119123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の構成では、傾き調整機構によって、チャック軸ユニットあるいはスピンドルユニットの傾きを変えると、荷重センサを挟んでいる部材間の距離が変わる。この際、荷重センサを挟んでいる部材間の距離が広がると、荷重センサに荷重がかかりにくくなり、荷重センサによって荷重を測定することが困難となる場合がある。
【0009】
したがって、本発明の目的は、研削加工時において、保持面と研削砥石の下面との平行度を調整するための傾き調整の後でも、研削砥石にかかる荷重を適切に測定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の微調整ネジ(本微調整ネジ)は、第1部品と第2部品とを間隔を開けて連結するように設けられ、該第1部品と該第2部品との間の距離を調整可能とするとともに、該第2部品にかかる荷重を検知可能な微調整ネジであって、該第1部品に形成されている第1雌ネジに螺入可能な第1雄ネジと、該第1雄ネジの軸方向の延長線上で該第1雄ネジと離間して配置され、該第1雌ネジのネジピッチとは異なるネジピッチを有する該第2部品に形成されている第2雌ネジに螺入可能な第2雄ネジと、互いに離間している該第1雄ネジと該第2雄ネジとを連結する連結部と、該連結部の内部に圧縮荷重をかけて収容される荷重センサと、を備えている。
【0011】
本発明の一態様にかかる加工装置(第1加工装置)は、保持面によって被加工物を保持する保持手段と、加工具を装着し該加工具を回転させるスピンドルを有する加工手段と、該加工手段を支持する支持ケースを該保持面に垂直な上下方向に移動させる上下移動手段と、該保持手段に対する該加工手段の傾きを調整する加工手段傾き調整機構と、を備える加工装置であって、該加工手段傾き調整機構が、本微調整ネジであり、該第1部品が該支持ケースであり、該第2部品が該加工手段である。
【0012】
本発明の他の態様にかかる加工装置(第2加工装置)は、保持面によって被加工物を保持する保持手段と、該保持手段を支持する基台と、加工具を装着し該加工具を回転させるスピンドルを有する加工手段と、該加工手段を支持する支持ケースを該保持面に垂直な上下方向に移動させる上下移動手段と、該加工手段に対する該保持手段の傾きを調整する保持手段傾き調整機構と、を備える加工装置であって、該保持手段傾き調整機構が、本微調整ネジであり、該第1部品が該基台であり、該第2部品が該保持手段である。
【発明の効果】
【0013】
第1加工装置および第2加工装置では、本微調整ネジを回転させることにより、保持手段と加工手段との間の傾きを、容易に調整することができる。これにより、保持手段の保持面と加工手段の加工具との平行度を、簡単に調整するこができる。
また、第1加工装置および第2加工装置では、本微調整ネジにおける内部の荷重センサによって、第2部品である保持手段あるいは加工手段にかかる荷重を測定することができる。これに関し、本微調整ネジは、第1部品と第2部品との双方に螺合されるため、傾き調整の際、これらの部品から離れ難い。このため、本微調整ネジに荷重がかかりにくくなることを抑制することができる。このため、第1加工装置および第2加工装置では、傾きの調整後であっても、保持手段あるいは加工手段かかる荷重を、適切に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】研削装置の構成を示す斜視図である。
図2】研削装置の構成を示す部分断面図である。
図3】微調整ネジの構成を示す説明図である。
図4】保持手段傾き調整機構およびその近傍の構成を示す説明図である。
図5】加工手段傾き調整機構およびその近傍の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、本実施形態にかかる研削装置1は、被加工物としてのウェーハ100を研削するための装置であり、直方体状の主筐体10、および、上方に延びるコラム11を備えている。
【0016】
ウェーハ100は、たとえば、円形の半導体ウェーハである。図1においては下方を向いているウェーハ100の表面101は、複数のデバイスを保持しており、保護テープ105が貼着されることによって保護されている。ウェーハ100の裏面104は、研削加工が施される被加工面となる。
【0017】
主筐体10の上面側には、開口部13が設けられている。そして、開口部13内には、保持手段30が配置されている。保持手段30は、ウェーハ100を保持する保持面32を備えたチャックテーブル31、および、チャックテーブル31を支持する支持部材33を含んでいる。支持部材33とチャックテーブル31とは、図2に示すように、ネジ37によってねじ止めされている。
【0018】
図1に示すチャックテーブル31の保持面32は、吸引源(図示せず)に連通されており、保護テープ105を介してウェーハ100を吸引保持する。すなわち、保持手段30は、保持面32によってウェーハ100を保持する。
【0019】
また、チャックテーブル31は、下方に設けられた回転手段34により、保持面32によってウェーハ100を保持した状態で、保持面32の中心を通るZ軸方向に延在するテーブル中心軸301(図2参照)を中心として回転可能である。したがって、ウェーハ100は、保持面32に保持されて保持面32の中心を回転軸として回転される。
【0020】
図1に示すように、チャックテーブル31の周囲には、カバー板39が設けられている。また、カバー板39には、Y軸方向に伸縮する蛇腹カバー12が連結されている。そして、保持手段30の下方には、Y軸方向移動手段40が配設されている。
【0021】
Y軸方向移動手段40は、水平移動手段の一例である。Y軸方向移動手段40は、保持手段30と研削手段70とを、相対的に、保持面32に平行なY軸方向に移動させる。本実施形態では、Y軸方向移動手段40は、研削手段70に対して、保持手段30をY軸方向に移動させるように構成されている。
なお、水平移動手段は、保持手段30を複数配置したターンテーブルであってもよい。
【0022】
Y軸方向移動手段40は、Y軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール42、このY軸ガイドレール42上をスライドするY軸移動テーブル45、Y軸ガイドレール42と平行なY軸ボールネジ43、Y軸ボールネジ43に接続されているY軸サーボモータ44、および、これらを保持する保持台41を備えている。
【0023】
Y軸移動テーブル45は、Y軸ガイドレール42にスライド可能に設置されている。Y軸移動テーブル45の下面には、ナット部451(図2参照)が固定されている。このナット部451には、Y軸ボールネジ43が螺合されている。Y軸サーボモータ44は、Y軸ボールネジ43の一端部に連結されている。
【0024】
図1に示すように、Y軸方向移動手段40では、Y軸サーボモータ44がY軸ボールネジ43を回転させることにより、Y軸移動テーブル45が、Y軸ガイドレール42に沿って、Y軸方向に移動する。Y軸移動テーブル45には、保持手段30の支持部材33が載置されている。したがって、Y軸移動テーブル45のY軸方向への移動に伴って、チャックテーブル31を含む保持手段30が、Y軸方向に移動する。このように、Y軸移動テーブル45は、保持手段30を支持する基台の一例である。
【0025】
本実施形態では、保持手段30は、大まかにいえば、保持面32にウェーハ100を載置するための前方(-Y方向側)のウェーハ載置位置と、ウェーハ100が研削される後方(+Y方向側)の研削領域との間を、Y軸方向移動手段40によって、Y軸方向に沿って移動される。
【0026】
また、図1に示すように、主筐体10上の後方(+Y方向側)には、コラム11が立設されている。コラム11の前面には、ウェーハ100を研削する研削手段70、および、研削送り手段50が設けられている。
【0027】
研削送り手段50は、保持手段30と研削手段70とを、相対的に、保持面32に垂直なZ軸方向(研削送り方向)に移動させる。本実施形態では、研削送り手段50は、保持手段30に対して、研削手段70をZ軸方向に移動させるように構成されている。
【0028】
研削送り手段50は、Z軸方向に平行な一対のZ軸ガイドレール51、このZ軸ガイドレール51上をスライドするZ軸移動テーブル53、Z軸ガイドレール51と平行なZ軸ボールネジ52、Z軸サーボモータ54、および、Z軸移動テーブル53の前面(表面)に取り付けられた支持ケース56を備えている。支持ケース56は、研削手段70を支持している。
【0029】
Z軸移動テーブル53は、Z軸ガイドレール51にスライド可能に設置されている。Z軸移動テーブル53の後面側(裏面側)には、ナット部501(図2参照)が固定されている。このナット部501には、Z軸ボールネジ52が螺合されている。Z軸サーボモータ54は、Z軸ボールネジ52の一端部に連結されている。
【0030】
研削送り手段50では、Z軸サーボモータ54がZ軸ボールネジ52を回転させることにより、Z軸移動テーブル53が、Z軸ガイドレール51に沿って、Z軸方向に移動する。これにより、Z軸移動テーブル53に取り付けられた支持ケース56、および、支持ケース56に支持された研削手段70も、Z軸移動テーブル53とともにZ軸方向に移動する。このように、研削送り手段50は、加工手段である研削手段70を支持する支持ケース56を保持面32に垂直な上下方向に移動させる上下移動手段の一例である。
【0031】
研削手段70は、加工手段の一例である。研削手段70は、図1に示すように、支持ケース56に固定されたスピンドルハウジング71、スピンドルハウジング71に回転可能に保持されたスピンドル72、スピンドル72を回転駆動する回転モータ73、スピンドル72の下端に取り付けられたホイールマウント74、および、ホイールマウント74に支持された研削ホイール75を備えている。
【0032】
スピンドルハウジング71は、Z軸方向に延びるように支持ケース56に保持されている。スピンドル72は、チャックテーブル31の保持面32と直交するようにZ軸方向に延び、スピンドルハウジング71に回転可能に支持されている。
【0033】
回転モータ73は、スピンドル72の上端側に連結されている。この回転モータ73により、スピンドル72は、Z軸方向に延びるスピンドル回転軸701(図2参照)を中心として回転する。
【0034】
ホイールマウント74は、円板状に形成されており、スピンドル72の下端(先端)に固定されている。ホイールマウント74は、研削ホイール75を支持する。
【0035】
研削ホイール75は、ホイールマウント74と略同径を有するように形成されている。研削ホイール75は、アルミニウム合金等の金属材料から形成された円環状のホイール基台(環状基台)76を含む。ホイール基台76の下面には、全周にわたって、環状に配置された複数の研削砥石77が固定されている。環状に配置された研削砥石77は、その中心を軸に、スピンドル72、ホイールマウント74、およびホイール基台76を介して、回転モータ73によって回転され、研削領域に配置されているチャックテーブル31に保持されたウェーハ100の裏面104を研削する。研削砥石77は、加工具の一例である。
このように、研削手段70は、スピンドル72を有しており、スピンドル72は、加工具としての研削砥石77を装着し、研削砥石77を回転させるように構成されている。
【0036】
また、図1に示すように、主筐体10における開口部13の側部には、厚み測定手段60が配設されている。厚み測定手段60は、保持面32に保持されたウェーハ100の厚みを、接触式にて測定することができる。
【0037】
すなわち、厚み測定手段60は、チャックテーブル31の保持面32およびウェーハ100に、それぞれ、第1接触子61および第2接触子62を接触させる。これにより、厚み測定手段60は、チャックテーブル31の保持面32の高さおよびウェーハ100の高さを測定することができる。なお、厚み測定手段60は、第1接触子61および第2接触子62に代えて、非接触式の距離測定器、たとえばレーザー式の距離測定器を備えてもよい。
【0038】
また、図1に示すように、コラム11には、研削手段70の高さ位置を測定するためのリニアスケール65が配設されている。リニアスケール65は、Z軸移動テーブル53に設けられ、Z軸移動テーブル53とともにZ軸方向に移動する読取部66、および、Z軸ガイドレール51の表面に設けられたスケール部67を含んでいる。読取部66が、スケール部67の目盛りを読み取ることで、研削送り手段50によって移動される研削手段70の高さ位置を検知することができる。
【0039】
また、図2に示すように、保持手段30は、保持手段傾き調整機構35を有している。本実施形態では、保持手段30の支持部材33は、Y軸移動テーブル45上に、この保持手段傾き調整機構35、および、図示しない固定連結部材を介して載置されている。すなわち、本実施形態では、Y軸移動テーブル45は、保持手段傾き調整機構35および固定連結部材を介して、保持手段30を支持している。
【0040】
保持手段傾き調整機構35は、Y軸移動テーブル45と保持手段30とを連結する微調整ネジである。本実施形態では、1つの固定連結部材および2つの保持手段傾き調整機構35が、Y軸移動テーブル45と保持手段30との間に、たとえば、テーブル中心軸301を中心とする円周方向に沿って、120度おきに等間隔で設けられている。
【0041】
固定連結部材は、この固定連結部材が設置されている箇所において、Y軸移動テーブル45と保持手段30とを、固定された間隔を開けて連結するように設けられている。
【0042】
一方、保持手段傾き調整機構35も、Y軸移動テーブル45と保持手段30とを、間隔を開けて連結するように設けられている。ただし、保持手段傾き調整機構35は、保持手段傾き調整機構35が設置されている箇所におけるY軸移動テーブル45と保持手段30との間の距離を、調整することが可能となっている。
【0043】
このような保持手段傾き調整機構35の機能により、保持手段傾き調整機構35は、Y軸移動テーブル45上における保持手段30の傾き(テーブル中心軸301の傾き)を変更することができる。これにより、保持手段傾き調整機構35は、研削加工の際、保持手段30の上方に位置する研削手段70に対する保持手段30の傾きを、調整することが可能である。これにより、たとえば、保持手段30の保持面32と研削手段70の研削砥石77の下面との平行度を調整することができる。
【0044】
また、保持手段傾き調整機構35は、研削加工の際、チャックテーブル31の保持面32にかかる、保持面32に対して直交する方向(Z軸方向)の荷重、すなわち、保持手段30にかかる荷重を検知するための荷重検知手段としても機能する。
【0045】
ここで、保持手段傾き調整機構35の詳細な構成について説明する。
図3に示すように、保持手段傾き調整機構35は、円柱状のネジ本体81、および、ネジ本体内に収納される荷重センサ(力センサ)89を有している。
【0046】
ネジ本体81は、その外周に、第1ネジピッチを有する第1雄ネジ83、および、第1ネジピッチとは異なる第2ネジピッチを有する第2雄ネジ85を有している。第2雄ネジ85は、ネジ本体81における第1雄ネジ83の軸方向(ネジ本体81の長手方向)の延長線上で、第1雄ネジ83とは離間して配置されている。また、ネジ本体81は、互いに離間している第1雄ネジ83と第2雄ネジ85とを連結する連結部87を有している。
【0047】
図4に示すように、ネジ本体81の第1雄ネジ83は、第1部品であるY軸移動テーブル45に形成されているテーブル雌ネジ452に螺入可能である。テーブル雌ネジ452は、第1雌ネジの一例であり、第1雄ネジ83と同様の第1ネジピッチを有している。
なお、第1雄ネジ83に螺入可能なナットを備え、第1部品のテーブル雌ネジ452に螺入した第1雄ネジ83をナットで締結させてもよい。
【0048】
また、第2雄ネジ85は、第2部品である保持手段30の支持部材33に形成されている保持手段雌ネジ302に螺入可能である。保持手段雌ネジ302は、第2雌ネジの一例であり、テーブル雌ネジ452の第1ネジピッチとは異なる、第2雄ネジ85と同様の第2ネジピッチを有している。
なお、第2雄ネジ85に螺入可能なナットを備え、第2部品の保持手段雌ネジ302に螺入した第2雄ネジ85をナットで締結させてもよい。
【0049】
作業者は、研削手段70に対する保持手段30の傾きを調整する場合、1つあるいは2つの保持手段傾き調整機構35におけるネジ本体81を回転させる。ネジ本体81を回転させると、テーブル雌ネジ452内で第1雄ネジ83が移動するとともに、保持手段雌ネジ302内で第2雄ネジ85が移動する。このため、Y軸移動テーブル45および保持手段30は、ネジ本体81に対して移動する。
【0050】
ここで、上述したように、テーブル雌ネジ452の第1ネジピッチと、保持手段雌ネジ302の第2ネジピッチとは、互いに異なる。このため、保持手段傾き調整機構35のネジ本体81を回転させた場合における、ネジ本体81に対するY軸移動テーブル45の移動距離と、ネジ本体81に対する保持手段30の移動距離とは、互いに異なる。したがって、作業者は、ネジ本体81の回転方向を変えることによって、保持手段傾き調整機構35が設置されている箇所におけるY軸移動テーブル45と保持手段30との距離を、長くしたり短くしたりすることができる。
【0051】
このようにして、作業者は、Y軸移動テーブル45と保持手段30とを連結している1つあるいは2つの保持手段傾き調整機構35を回転させることにより、この保持手段傾き調整機構35が設置されている箇所におけるY軸移動テーブル45と保持手段30との間の距離を、変更することができる。これにより、作業者は、Y軸移動テーブル45上における保持手段30の傾きを変更して、研削手段70に対する保持手段30の傾きを調整することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、保持手段傾き調整機構35をY軸移動テーブル45と保持手段30との間に配置するため、および、保持手段傾き調整機構35のネジ本体81を回転させるために、保持手段30に、ネジ本体81の一端部を露出させるための開口部303が設けられている。さらに、Y軸移動テーブル45には、ネジ本体81の他端部を露出させるための開口部453が設けられている。ネジ本体81の他端部には、たとえば、スパナなどの工具を嵌合可能な頭部811が設けられている。作業者は、工具を開口部453に挿入し、ネジ本体81の他端部の頭部811を操作することにより、ネジ本体81を回転させることができる。
【0053】
また、図3に示すように、保持手段傾き調整機構35では、ネジ本体81における第2雄ネジ85側の端部に、開口部82が設けられている。そして、開口部82の奥の連結部87の内部には、荷重センサ89を収容するための荷重センサ収容部84が設けられている。
【0054】
荷重センサ89は、図3において矢印401に示すように、ネジ本体81の開口部82からネジ本体81に導入され、連結部87の内部の荷重センサ収容部84に、圧縮荷重をかけて収容される。これにより、荷重センサ89は、保持手段傾き調整機構35(ネジ本体81)に対してネジ本体81の長手方向であるZ軸方向にかかる荷重、すなわち、保持手段30にかかる荷重を測定することができる。
【0055】
また、図2に示すように、研削手段70は、加工手段傾き調整機構78を有している。本実施形態では、研削手段70のスピンドルハウジング71は、支持ケース56における底板561に、加工手段傾き調整機構78、および、図示しない固定連結部材を介して載置されている。すなわち、本実施形態では、支持ケース56は、加工手段傾き調整機構78および固定連結部材を介して、研削手段70を支持している。
【0056】
加工手段傾き調整機構78は、支持ケース56と研削手段70とを連結する微調整ネジである。本実施形態では、1つの固定連結部材および2つの加工手段傾き調整機構78が、支持ケース56と研削手段70との間に、たとえば、スピンドル回転軸701を中心とする円周方向に沿って、120度おきに等間隔で設けられている。
【0057】
固定連結部材は、この固定連結部材が設置されている箇所において、支持ケース56と研削手段70とを、固定された間隔を開けて連結するように設けられている。
【0058】
一方、加工手段傾き調整機構78も、支持ケース56と研削手段70とを、間隔を開けて連結するように設けられている。ただし、加工手段傾き調整機構78は、加工手段傾き調整機構78が設置されている箇所における支持ケース56と研削手段70との間の距離を、調整することが可能となっている。
【0059】
このような加工手段傾き調整機構78の機能により、加工手段傾き調整機構78は、支持ケース56に対する研削手段70の傾き(スピンドル72(スピンドル回転軸701)の傾き)を変更することができる。これにより、加工手段傾き調整機構78は、研削加工の際、研削手段70の下方に位置する保持手段30に対する研削手段70の傾きを、調整することが可能である。これにより、たとえば、保持手段30の保持面32と研削手段70の研削砥石77の下面との平行度を調整することができる。
【0060】
加工手段傾き調整機構78は、図3を用いて示した保持手段傾き調整機構35と同一の構成を有する微調整ネジであり、第1雄ネジ83、第2雄ネジ85および連結部87を有するネジ本体81、および、ネジ本体81に収容される荷重センサ89を備えている。
【0061】
したがって、図5に示すように、ネジ本体81の第1雄ネジ83は、第1部品である支持ケース56の底板561に形成されている支持ケース雌ネジ562に螺入可能である。支持ケース雌ネジ562は、第1雌ネジの一例であり、第1雄ネジ83と同様の第1ネジピッチを有している。
なお、第1雄ネジ83に螺入可能なナットを備え、第1部品の支持ケース雌ネジ562に螺入した第1雄ネジ83をナットで締結させてもよい。
【0062】
また、第2雄ネジ85は、第2部品である研削手段70のスピンドルハウジング71に形成されている研削手段雌ネジ712に螺入可能である。研削手段雌ネジ712は、第2雌ネジの一例であり、支持ケース雌ネジ562の第1ネジピッチとは異なる、第2雄ネジ85と同様の第2ネジピッチを有している。
なお、第2雄ネジ85に螺入可能なナットを備え、研削手段雌ネジ712に螺入した第2雄ネジ85をナットで締結させてもよい。
【0063】
作業者は、保持手段30に対する研削手段70の傾きを調整する場合、1つあるいは2つの加工手段傾き調整機構78におけるネジ本体81を回転させる。ネジ本体81の回転させた場合、支持ケース雌ネジ562内で第1雄ネジ83が移動するとともに、研削手段雌ネジ712内で第2雄ネジ85が移動する。このため、支持ケース56および研削手段70は、ネジ本体81に対して移動する。
【0064】
ここで、支持ケース雌ネジ562の第1ネジピッチと、研削手段雌ネジ712の第2ネジピッチとは、互いに異なる。このため、加工手段傾き調整機構78のネジ本体81を回転させた場合における、ネジ本体81に対する支持ケース56の移動距離と、ネジ本体81に対する研削手段70の移動距離とは、互いに異なる。したがって、作業者は、ネジ本体81の回転方向を変えることによって、加工手段傾き調整機構78が設置されている箇所における支持ケース56と研削手段70との距離(支持ケース56の底板561と研削手段70のスピンドルハウジング71との距離)を、長くしたり短くしたりすることができる。
【0065】
このようにして、作業者は、支持ケース56と研削手段70とを連結している1つあるいは2つの加工手段傾き調整機構78を回転させることにより、この加工手段傾き調整機構78が設置されている箇所における支持ケース56と研削手段70との間の距離を、変更することができる。これにより、作業者は、支持ケース56上における研削手段70の傾きを変更して、保持手段30に対する研削手段70の傾きを調整することができる。
【0066】
なお、この場合、支持ケース56の底板561の下方、すなわち、底板561とホイールマウント74(図2参照)との隙間から、ネジ本体81の他端部が露出されている。作業者は、この隙間に工具を挿入し、ネジ本体81の他端部の頭部811を操作することにより、ネジ本体81を回転させることができる。
【0067】
また、加工手段傾き調整機構78においても、ネジ本体81の連結部87の内部の荷重センサ収容部84(図3参照)に、荷重センサ89が、圧縮荷重をかけて収容される。圧縮荷重は、荷重センサ収容部84の上部に形成される雌ねじに、荷重センサ89の上部に形成される雄ねじをねじ込ませ、荷重センサ収容部84の底面に荷重センサ89の先端を押し付けることにより、荷重センサ89の延在方向の中央に配置される圧電素子を圧縮させ所定の荷重をかけている。これにより、荷重センサ89は、加工手段傾き調整機構78(ネジ本体81)に対してネジ本体81の長手方向であるZ軸方向にかかる荷重、すなわち、研削手段70にかかる荷重を測定することができる。
なお、荷重センサ89は、荷重センサ89が伸びることにより測定されるマイナス荷重と、荷重センサ89がさらに圧縮されることにより測定されるプラス荷重とを測定可能とする。
また、荷重センサ89は、加工荷重によって調整ネジが圧縮または加工荷重が直接かからないことによって調整ネジが引き伸ばされるという、調整ネジの伸縮に応じて測定可能である。
【0068】
以上のように、本実施形態では、保持手段傾き調整機構35あるいは加工手段傾き調整機構78を回転させることにより、保持手段30と研削手段70との間の傾きを、容易に調整することができる。これにより、保持手段30の保持面32と研削手段70の研削砥石77の下面との平行度を、簡単に調整するこができる。
また、保持手段傾き調整機構35および加工手段傾き調整機構78は、内部の荷重センサ89によって、それぞれ、保持手段30および研削手段70にかかる荷重を測定することができる。
【0069】
ここで、保持手段傾き調整機構35は、Y軸移動テーブル45と保持手段30との双方に螺合される微調整ネジであり、同様に、加工手段傾き調整機構78は、支持ケース56と研削手段70との双方に螺合される微調整ネジである。したがって、保持手段傾き調整機構35および加工手段傾き調整機構78は、保持手段30と研削手段70との間の傾きの調整のために、これらに連結されている部材間の距離を広げた場合でも、これらの部材から離れ難い。
【0070】
このため、本実施形態では、保持手段傾き調整機構35および加工手段傾き調整機構78の荷重センサ89に荷重がかかりにくくなることを抑制することができる。したがって、保持手段30と研削手段70との間の傾きの調整後であっても、保持手段30あるいは研削手段70にかかる荷重を、適切に測定することができる。
したがって、本実施形態では、研削加工を一時停止して保持手段30と研削手段70との間の傾きを調整するとともに、その傾き調整の際に、保持手段30あるいは研削手段70にかかる荷重を測定することで、傾き調整前の荷重と傾き調整後の荷重とを同じ荷重にして、傾き調整後の厚み不良を抑制することが容易となる。
【0071】
なお、本実施形態では、作業者が、工具によって、保持手段傾き調整機構35および加工手段傾き調整機構78のネジ本体81を回転させるとしている。これに代えて、ネジ本体81を、モータなどの駆動源を用いて回転させてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、保持手段30が2つの保持手段傾き調整機構35を備えるとともに、研削手段70が2つの加工手段傾き調整機構78を備えている。これに関し、保持手段30と研削手段70との間の傾きを適切に調整できるのであれば、保持手段傾き調整機構35および加工手段傾き調整機構78の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0073】
また、本実施形態では、保持手段30が、研削手段70に対する保持手段30の傾きを調整するとともに、保持手段30にかかる荷重を測定する保持手段傾き調整機構35を有している。さらに、研削手段70が、保持手段30に対する研削手段70の傾きを調整するとともに、研削手段70にかかる荷重を測定する加工手段傾き調整機構78を有している。これに代えて、研削装置1は、保持手段傾き調整機構35あるいは加工手段傾き調整機構78のいずれか一方のみを備えるように構成されていてもよい。この構成でも、保持手段30と研削手段70との間の傾きを調整することが可能である。また、荷重測定も良好に実施することができる。
【0074】
また、本実施形態に示した例では、研削装置1は、環状に配置された研削砥石77を装着した研削手段70によって、ウェーハ100をインフィード研削するように構成されている。
これに代えて、研削装置1は、環状に配置された研削砥石77を装着した研削手段70によって、保持手段30の保持面32に保持された被加工物をクリープフィード研削するものであってもよい。
【0075】
また、研削装置1は、加工具としてのバイトを装着した旋削手段を加工手段として備え、保持手段傾き調整機構35および/または加工手段傾き調整機構78によって、旋削手段と保持手段30との間の傾きを変更するとともに、保持手段30および/または旋削手段にかかる荷重を測定するように構成されていてもよい。
あるいは、研削装置1は、加工具としての円盤状または円環状の研磨パッドを装着した研磨手段を加工手段として備え、保持手段傾き調整機構35および/または加工手段傾き調整機構78によって、研磨手段と保持手段30との間の傾きを変更するとともに、保持手段30および/または研磨手段にかかる荷重を測定するように構成されていてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、図3に示した微調整ネジからなる保持手段傾き調整機構35が、第1部品としてのY軸移動テーブル45と、第2部品としての保持手段30とを連結している。さらに、微調整ネジからなる加工手段傾き調整機構78が、第1部品としての支持ケース56と、第2部品としての研削手段70とを連結している。
これに関し、この微調整ネジに関する第1部品はY軸移動テーブル45および支持ケース56に限られないとともに、第2部品は、保持手段30および研削手段70に限られない。第1部品および第2部品がどのような部品であっても、この微調整ネジは、第1部品と第2部品とを間隔を開けて連結することによって、第1部品と該第2部品との間の距離を調整可能とするとともに、第2部品にかかる荷重を検知することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1:研削装置、10:主筐体、11:コラム、
30:保持手段、31:チャックテーブル、
32:保持面、302:保持手段雌ネジ、
33:支持部材、34:回転手段、301:テーブル中心軸、303:開口部、
40:Y軸方向移動手段、
45;Y軸移動テーブル、452:テーブル雌ネジ、453:開口部、
50:研削送り手段、
56:支持ケース、561:底板、562:支持ケース雌ネジ、
70:研削手段、71:スピンドルハウジング、72:スピンドル、
73:回転モータ、74:ホイールマウント、
75:研削ホイール、76:ホイール基台、77:研削砥石、
701:スピンドル回転軸、712:研削手段雌ネジ
35:保持手段傾き調整機構、78:加工手段傾き調整機構、
81:ネジ本体、82:開口部、83:第1雄ネジ、
84:荷重センサ収容部、89:荷重センサ、85:第2雄ネジ、87:連結部、
100:ウェーハ、101:表面、104:裏面、105:保護テープ
図1
図2
図3
図4
図5