(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】プロテクタ及びプロテクタ付ワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20231130BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20231130BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20231130BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20231130BHJP
【FI】
H02G3/04 018
H02G3/04 062
F16L57/00 A
H01B7/00 301
B60R16/02 623U
(21)【出願番号】P 2020038091
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信
(72)【発明者】
【氏名】柴田 智
(72)【発明者】
【氏名】東田 智久
(72)【発明者】
【氏名】黒柳 勇太
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-125037(JP,A)
【文献】特開平05-022826(JP,A)
【文献】特開平10-094138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
F16L 57/00
H01B 7/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に挿通させたワイヤーハーネスを保護するプロテクタであって、
前記ワイヤーハーネスを据える底部と、
前記底部に対して立設する第一側壁部と、
前記底部に対して立設するとともに、前記第一側壁部と対向する第二側壁部と、
前記第一側壁部と前記第二側壁部とを架設する蓋部とで構成され、
架設された前記蓋部と前記第二側壁部とを係止する係止部とが備えられ、
前記第一側壁部の一部に、前記第二側壁部に対して少なくとも前記蓋部を開閉自在に回動させるヒンジ部が設けられ、
前記蓋部と前記第二側壁部とが係止された係止状態において、前記蓋部が前記第二側壁部に対して傾斜
し、
前記蓋部には、
前記蓋部と前記第二側壁部とが前記係止部で係止されるように前記蓋部を押し付ける押し付け操作部が、前記係止部に対応する位置に設けられ、
前記押し付け操作部は、
前記係止状態における内部側に向けて突出させて構成された
プロテクタ。
【請求項2】
前記係止部は、前記底部に対して前記第二側壁部が立設する方向に沿って、前記蓋部と前記第二側壁部とを係止し、
前記押し付け操作部は、
前記係止状態において、前記係止部が係止する係止方向と交差する方向に沿った交差面が備えられた
請求項1に記載のプロテクタ。
【請求項3】
前記押し付け操作部は、
前記係止状態において、前記蓋部を前記底部側に向けて窪ませるとともに、前記交差面を底面とする有底凹部で構成された
請求項2に記載のプロテクタ。
【請求項4】
前記係止部は、前記底部に対して前記第二側壁部が立設する方向に沿って、前記蓋部と前記第二側壁部とを係止し、
前記第二側壁部が、前記ヒンジ部よりも低く構成された
請求項3に記載のプロテクタ。
【請求項5】
前記有底凹部における底面は、前記底部に対する前記第二側壁部の高さよりも高い位置に設けられた
請求項4に記載のプロテクタ。
【請求項6】
前記有底凹部は、
前記底面と交差するとともに、前記第二側壁部と直交する対向面が、互いに平行となる、又は、前記底面に対する高さ方向に向かうに伴い互いに離間するように構成された
請求項3乃至請求項5のうちのいずれかに記載のプロテクタ。
【請求項7】
前記係止部が、前記ワイヤーハーネスの挿通方向に沿った両端に設けられた
請求項1乃至請求項6のうちのいずれかに記載のプロテクタ。
【請求項8】
前記係止状態において、前記蓋部が前記第二側壁部と当接する
請求項1乃至請求項7のうちのいずれかに記載のプロテクタ。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のうちのいずれかに記載のプロテクタと、
前記プロテクタに挿通させたワイヤーハーネスとで構成された
プロテクタ付ワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、ワイヤーハーネスを保護するプロテクタ及び前記プロテクタにワイヤーハーネスを挿通させたプロテクタ付ワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両本体に搭載された様々な電子機器類同士を電気的に接続するワイヤーハーネスが他の部材と干渉し損傷することを防止するために、ワイヤーハーネスをプロテクタに挿通させて保護することがある。
【0003】
このようにワイヤーハーネスを保護するプロテクタは、例えば特許文献1に開示されているように、底部と一対の側壁部とで構成された筐体基部に、底部と対向する筐体基部の開口部分を覆う蓋部を係止させる形状が一般的である。
【0004】
このように構成されたプロテクタは、ワイヤーハーネスを底部に据えるとともに、筐体基部の開口部分を蓋部で覆うことで、断面矩形状に形成された筐体基部と蓋部でワイヤーハーネスの外周を囲繞することができる。これにより、ワイヤーハーネスが他の部材と干渉しないようにワイヤーハーネスを保護することができる。
【0005】
しかしながら、近年車両本体に搭載される電子機器類の増加や、車両のコンパクト化、車両本体における居住空間の拡大などにより、プロテクタやワイヤーハーネスを配索するための空間が縮小されている。このため、プロテクタを配置するスペースを確保するのが困難であるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上述した問題を鑑み、縮小されたスペースに配置できるようにコンパクト化されたプロテクタ及びプロテクタ付ワイヤーハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、内部に挿通させたワイヤーハーネスを保護するプロテクタであって、前記ワイヤーハーネスを据える底部と、前記底部に対して立設する第一側壁部と、前記底部に対して立設するとともに、前記第一側壁部と対向する第二側壁部と、前記第一側壁部と前記第二側壁部とを架設する蓋部とで構成され、架設された前記蓋部と前記第二側壁部とを係止する係止部とが備えられ、前記第一側壁部の一部に、前記第二側壁部に対して少なくとも前記蓋部を開閉自在に回動させるヒンジ部が設けられ、前記蓋部と前記第二側壁部とが係止された係止状態において、前記蓋部が前記第二側壁部に対して傾斜し、前記蓋部には、前記蓋部と前記第二側壁部とが前記係止部で係止されるように前記蓋部を押し付ける押し付け操作部が、前記係止部に対応する位置に設けられ、前記押し付け操作部は、前記係止状態における内部側に向けて突出させて構成されたことを特徴とする。
またこの発明は、上記のプロテクタと、前記プロテクタに挿通させたワイヤーハーネスとで構成されたプロテクタ付ワイヤーハーネスであることを特徴とする。
【0009】
前記ヒンジ部は、前記第一側壁部の端部に設けられた場合に限らず、前記第一側壁部の主面上に設けられた場合を含む。換言すると、前記ヒンジ部は、前記蓋部のみを回動させる場合に限らず、前記第一側壁部の一部と前記蓋部とを回動させる場合も含む。
上述の前記蓋部が前記第二側壁部に対して傾斜するとは、前記蓋部と前記第二側壁部とが鈍角を形成する場合や鋭角を形成する場合を含む。
【0010】
前記押し付け操作部は、外力を作用させ、前記蓋部と前記第二側壁部とが係止するよう操作するための操作部であり、その形状は特に限定されない。例えば、前記蓋部を前記第二側壁部に対して係止させた係止状態において、前記蓋部を前記プロテクタの内側に向けて窪ませた構成や、前記蓋部を前記プロテクタの外側に向けて突出させた構成を含む。
【0011】
上述の内部側に向けて突出させてとは、前記係止状態において、前記蓋部を前記底部側に向けて窪ませた或いは貫通させた場合、前記第一側壁部側又は前記第二側壁部側に向けて窪ませた或いは貫通させた場合も含む。
【0012】
この発明により、前記ワイヤーハーネスの挿通方向から視て前記プロテクタ内部に前記ワイヤーハーネスを配置可能な空間を内部に確保しつつ、前記蓋部を前記第一側壁部又は前記第二側壁部のうちの高い方よりも低い位置に配置させることができる。
【0013】
このため、前記プロテクタを全体的にコンパクト化しながら、前記プロテクタの内部に前記ワイヤーハーネスを配置するスペースを確保できる。これにより、例えば、他の部材が配置されているために、従来のような断面形状が矩形状で構成されたプロテクタでは配置することができないスペースであっても、前記蓋部が他の部材を避けるように前記プロテクタを配置することができる。
【0014】
また、前記蓋部には、前記蓋部と前記第二側壁部とが前記係止部で係止されるように前記蓋部を押し付ける押し付け操作部が、前記係止部に対応する位置に設けられている。
【0015】
これにより、前記押し付け操作部に作用させた外力を効率よく前記係止部に伝達させ、前記蓋部と前記第二側壁部とを確実に係止できる。そのため、前記係止部の係止が解除されて前記プロテクタが他の部材に干渉するリスクを低減できる。
【0016】
また、前記押し付け操作部は、前記係止状態における内部側に向けて突出させて構成されている。
これにより、前記プロテクタをよりコンパクト化できるとともに、前記プロテクタの内部に配置された前記ワイヤーハーネスを前記押し付け操作部で押し付けることができる。これにより、前記ワイヤーハーネスの移動を規制できる。
【0017】
この発明の態様として、前記係止部は、前記底部に対して前記第二側壁部が立設する方向に沿って、前記蓋部と前記第二側壁部とを係止し、前記押し付け操作部は、前記係止状態において前記係止部が係止する係止方向と交差する方向に沿った交差面が備えられてもよい。
上述の交差するとは、前記係止状態において、前記係止操作部と前記係止部の係止方向とが成す角が90±15度の範囲を含む。
【0018】
この発明により、前記係止方向に沿った方向に外力を作用させることができるため、確実かつ効率よく前記係止部に外力を伝達させることができ、より確実かつ容易に前記係止部を係止させることができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記押し付け操作部は、前記係止状態において、前記蓋部を前記底部側に向けて窪ませるとともに、前記交差面を底面とする有底凹部で構成されてもよい。
この発明により、前記蓋部の強度を維持しつつ、前記係止状態における前記プロテクタのコンパクト化を図ることができる。また、前記底面に作用させた外力を効率よく前記係止部を伝達させることができるため、より容易に前記第二側壁部と前記蓋部とを係止させることができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記係止部は、前記底部に対して立設する前記第二側壁部の立設する方向に沿った方向に、前記蓋部が前記第二側壁部に対して係止するように構成され、前記第二側壁部が、前記ヒンジ部よりも低く構成されてもよい。
【0021】
この発明によると、前記係止状態において、前記蓋部と前記第二側壁部とが鈍角を形成するため、前記ヒンジ部を回動軸として前記蓋部を回動動作により前記係止部が前記蓋部と前記第二側壁部とを係止させることができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記有底凹部における底面は、前記底部に対する前記第二側壁部の高さよりも高い位置に設けられてもよい。
この発明により、前記底面に作用させた外力をより確実に前記係止部に伝達できるため、確実に前記蓋部を前記第二側壁部に係止させることができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記有底凹部は、前記第二側壁部と直交するように構成された対向面が平面状に形成され、前記対向面は、互いに平行となるように、又は、前記底面に対する高さ方向に向かうに伴い互いに離間するように構成されてもよい。
前記高さ方向は、前記係止状態において、前記底部に対して前記第二側壁部が立設する方向をさす。
【0024】
この発明によると、前記押し付け操作部を押し付ける部材などを前記底面に案内できるため、確実に前記押付け操作部に外力を作用させて、前記蓋部と前記第二側壁部とを確実に係止させることができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記係止部が、前記ワイヤーハーネスの挿通方向に沿った両端に設けられてもよい。
この発明により、両端部分を係止することができるため、意図せぬ外力が前記ワイヤーハーネスに作用することによる前記第二側壁部と前記蓋部との係止状態が解除されることを防止できる。
【0026】
また、前記押し付け操作部が前記プロテクタの内部に窪ませて形成されている場合には、前記挿通方向の両端部分における前記ワイヤーハーネスの移動を前記押し付け操作部が規制できるため、前記係止部の係止が解除されることをより確実に防止できる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記係止状態において、前記蓋部は、前記第二側壁部と当接してもよい。
この発明により、前記係止状態において前記第二側壁部が前記蓋部を支持するため、前記蓋部が前記プロテクタの内側へ押し込まれることを防止できる。これにより、前記プロテクタの内部に挿通させたワイヤーハーネスを確実に保護することができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明により、限定されたスペースに配置できるようにコンパクト化されたプロテクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】プロテクタ付ワイヤーハーネスの概略斜視図。
【
図6】係止状態におけるプロテクタ付ワイヤーハーネスの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
この発明の一実施態を、以下図面とともに説明する。
図1は車両本体に搭載されるプロテクタ付ワイヤーハーネス1の概略斜視図を示し、
図2はプロテクタ10の概略斜視図を示し、
図3はプロテクタ10の正面図を示し、
図4はプロテクタ10の断面図を示す。
【0031】
図5はプロテクタ10を構成する第二側壁部13と蓋部14とを係止させる工程を示した説明図を示し、
図6はプロテクタ10にワイヤーハーネス100を挿通させたプロテクタ付ワイヤーハーネス1の側面図を示す。
【0032】
ここで、
図1における上下方向を上下方向Hとし、上方を上方側Hu、下方を下方側Hdとする。また、上下方向Hと直交するとともに、ワイヤーハーネス100をプロテクタ10に挿通させる挿通方向を長手方向Lとし、
図1中の長手方向Lに沿って右側を先端側Lfとし、
図1中の長手方向Lに沿って左側を基端側Lrとする。
【0033】
さらにまた、上下方向H及び長手方向Lに直交する方向を奥行方向Dとし、
図1中の奥行方向Dに沿って右側を奥側Db、
図1中の奥行方向Dに沿って左側を手前側Dnとする。
なお、これらの方向は、
図2乃至
図7でも同様とする。
【0034】
図3について詳述すると、
図3(a)はプロテクタ10全体の正面図を示し、
図3(b)は
図3(a)におけるα部分を拡大表示した拡大正面図を示す。
同様に、
図4について詳述すると、
図4(a)は
図3(a)におけるA-A矢視断面図を示し、
図4(b)は
図4(a)におけるβ部分を拡大表示した拡大断面図を示す。なお、
図5は
図4(a)に示すA-A矢視断面図に対応する断面図に基づいて第二側壁部13に対して蓋部14を係止させる係止工程を説明する。
【0035】
プロテクタ付ワイヤーハーネス1は、
図1に示すように、車両本体に搭載される電子機器類(図示省略)を電気的に接続するワイヤーハーネス100と、ワイヤーハーネス100が内部に挿通されるプロテクタ10とで構成されている。
【0036】
プロテクタ10は、
図2に示すように、長手方向Lに沿って長尺状に形成されるとともに、ワイヤーハーネス100を内部に挿通できるように長手方向Lの両端が開口した中空状の筐体である。
【0037】
プロテクタ10は、
図2乃至
図4に示すように、ワイヤーハーネス100を据える底部11と、底部11に対して立設された第一側壁部12及び第二側壁部13と、第一側壁部12と第二側壁部13とを架橋する蓋部14とで一体構成されている。また、プロテクタ10には第二側壁部13と蓋部14とを係止する係止部50が備えられている。
【0038】
プロテクタ10の底面を構成している底部11は、奥行方向Dの長さがワイヤーハーネス100の外径よりも長くなるように形成された長尺状の板状体であり、底部11の奥側Dbには、長手方向Lに沿って突出する底面側突出部21が設けられている。
なお、底面側突出部21の奥行方向Dの長さは底部11の奥行方向Dの長さの約半分程度である。
【0039】
第一側壁部12は、
図2及び
図4に示すように、底部11の奥側Dbの端部から上方側Huに向けて立設した板状体であり、第一側壁部12の主面には蓋部14を回動可能に支持するヒンジ部15が長手方向Lに沿って設けられている。
【0040】
詳述すると、第一側壁部12は、ヒンジ部15よりも下方側Hdの側壁基部121と、ヒンジ部15よりも上方側Huの側壁回動部122とで構成されている(
図4参照)。
第一側壁部12の下方を形成する側壁基部121は、底部11の奥側Dbの端部から上方側Huに向けて立設しており、上端部分にヒンジ部15が設けられている。
【0041】
側壁回動部122は、側壁基部121の3分の1程度の高さで構成され、ヒンジ部15を介して側壁基部121に連結されている。また、側壁回動部122の上端には、後述する蓋部14が連結されている。
【0042】
このように構成されている第一側壁部12は、ヒンジ部15を回動軸として、側壁回動部122が回動できるように構成されている。
【0043】
なお、第一側壁部12の長手方向Lの両端には、長手方向Lに沿って突出する側壁側固定部22が設けられている。換言すると、第一側壁部12には、底面側突出部21の奥側Dbの端部から上方側Huに向けて立設する側壁側固定部22が設けられている。
【0044】
このように底部11及び第一側壁部12から長手方向Lに沿って延出された底面側突出部21及び側壁側固定部22は、底部11に据えたワイヤーハーネス100をテープTなどで固定するための固定部20を構成している(
図1参照)。
【0045】
第二側壁部13は、底部11の手前側Dnの端部から上方側Huに向けて立設した板状体である。この第二側壁部13は、底部11に対する高さが、底部11に対するヒンジ部15の高さよりも低くなるように構成されている。
【0046】
また、第二側壁部13は、第一側壁部12と対向するように配置されており、第二側壁部13における手前側Dnかつ上方側Huの端部には、蓋部14と係止させるための係止枠30が設けられている。
【0047】
係止枠30は、
図3及び
図4に示すように、手前側Dnに向けて突出する一対の係止支持部31,31と、係止支持部31,31とを連結する板状の係止板部32とで構成されている。
【0048】
係止支持部31,31は、互いに所定の間隔を隔てて配置されており、係止支持部31,31の手前側Dnの端部を連結するように係止板部32が設けられている。
この係止板部32は、第二側壁部13などの板厚に比べて十分な板厚を有しており、上面側には下方側Hdに向かうに伴い第一側壁部12に向かうように傾斜された案内部32aが設けられている。
【0049】
これにより、第二側壁部13の手前側Dnの主面に対して所定の間隔を隔てて係止板部32を配置することができ、係止支持部31,31と係止板部32と第二側壁部13とで後述する係止片40を挿通させて係止させる係止空間Sを形成することができる。
【0050】
このように構成された係止枠30は、
図2及び
図3に示すように、長手方向Lに沿って4個並んで配置されており、そのうちの2つは長尺状に構成された第二側壁部13における長手方向Lの端部に設けられ、残り2個は第二側壁部13の長手方向Lの中央部分に設けられている。
【0051】
なお本実施形態では、係止支持部31,31の板厚は第二側壁部13の板厚のおよそ2倍であるが、必ずしもこの板厚である必要はなく、例えば、後述する係止片40が係止枠30に係止した状態で、係止枠30が損傷しないような強度を有していればよい。
【0052】
第一側壁部12(側壁回動部122)の上端に連結されている蓋部14は、プロテクタ10の上方側Huに形成される開口を閉塞する天板であり、ヒンジ部15を回動軸として回動可能に構成されている。
【0053】
そして、蓋部14における第一側壁部12と連結している側と逆側の端部には、係止枠30と係止させる4個の係止片40が長手方向Lに沿って備えられているとともに、係止片40と対応する位置に押し付け操作部60が設けられている。
【0054】
係止片40は、プロテクタ10の上方側Huに形成される開口を蓋部14で閉塞した状態において、係止枠30に対応する位置に設けられており、係止枠30に対して係止できるように成されている。
具体的には係止片40は、蓋部14の端部と連結した係止板41と、係止板41の中央部分において手前側Dnに突出する係止爪部42とで構成されている。
【0055】
係止板41は、
図4に示すように、可撓性を有する平板で構成されており、プロテクタ10の上方側Huに形成される開口を蓋部14で閉塞した状態において、第一側壁部12と連結されている側と反対側である蓋部14の端部から下方側Hdに向けて延設している。
【0056】
係止爪部42は、
図3及び
図4に示すように、係止板41の下端側の中央部分から手前側Dnに向けて突出した断面略直角三角形状の凸部であり、下方側Hdに向かうに伴い先細りするように構成されている。なお、係止状態において、係止爪部42の上面が第二側壁部13と直交している。
【0057】
なお、手前側Dnに向けて突出している係止爪部42のうち、最も突出している部分の突出量は、奥行方向Dに沿った係止空間Sの長さから係止板41の板厚を引いた値よりも大きくなるように構成されている。
このように構成された係止片40は、第一側壁部12に設けられた係止枠30とともに第一側壁部12と蓋部14とを係止する係止部50を構成している。
【0058】
押し付け操作部60は、
図3及び
図4に示すように、係止枠30と係止片40とを係止させた係止状態において、蓋部14を下方側Hdに向けて窪ませて形成された有底の凹部であり、蓋部14の手前側Dnの端部よりも奥側Dbに設けられている。換言すると、押し付け操作部60は蓋部14の端部から所定の間隔を隔てた位置に設けられている。
【0059】
この押し付け操作部60は、底面である凹部底面61と、凹部底面61における長手方向Lの端部に設けられた凹部対面62,62と、凹部底面61の奥側Dbに設けられた凹部側面63とで構成されている。
【0060】
凹部底面61は、
図4に示すように、係止枠30と係止片40とが係止した係止状態において、底部11と平行となるように構成されている。なお、この凹部底面61の横幅(長手方向Lに沿った幅)は、係止板41の幅と略等しくなるように構成されている。
凹部対面62,62は、凹部底面61における長手方向Lの端部から凹部底面61に対して直交するように上方側Huに向けて立設された一対の対向面である。
【0061】
凹部側面63は、凹部底面61の奥側Dbの端部から上方側Huに向けて立設された面であり、係止枠30と係止片40とが係止した係止状態において、第二側壁部13と平行となるように立設されている。
なお、凹部底面61と凹部側面63との交差部分は、円弧状となるように形成されている。
【0062】
次に、このように構成されたプロテクタ10において、第二側壁部13と蓋部14とを係止させる係止工程について、
図5に基づいて説明する。
ワイヤーハーネス100をプロテクタ10に配置させる場合、プロテクタ10の上方側Huが開口されるように、ヒンジ部15を回動軸として、蓋部14を
図5中の時計回りに回動させる。これにより、プロテクタ10の上方側Huが開口するように、蓋部14を奥側Dbに避難させることができる。
【0063】
次に、ワイヤーハーネス100を底部11に据えるとともに、ヒンジ部15を回動軸として蓋部14を
図5中の反時計回りに回動させ、蓋部14を手前側Dnに配置させる(
図5中における破線を参照)。
【0064】
さらに蓋部14を反時計回りに回動させることで、蓋部14に設けられた係止片40が第二側壁部13に設けられた係止枠30に当接させることができる。この状態で、
図5に示すように、器具Mで凹部底面61の法線方向に外力を作用させることにより、係止片40が案内部32aに案内された係止空間Sに挿通されることとなる。
【0065】
このとき、係止爪部42の下端部分が案内部32aと干渉するため、可撓性を有する係止板41がプロテクタ10の内側に向けて撓むこととなる。これにより係止片40が係止空間Sに挿通されやすくなる。
【0066】
さらに、凹部底面61の直交方向に外力を作用させることにより、係止爪部42が係止空間Sを通過する。これにより、係止爪部42の上端部分が係止板部32の下端部分に当接し、蓋部14を第二側壁部13に係止することとなる。これにより、凹部底面61は底部11に対して平行となる。すなわち、係止枠30に対して係止片40が係止する方向と凹部底面61とが直交することとなる。
【0067】
なお、本実施形態において、係止状態において、凹部底面61と係止操作部と係止部50の係止方向とが成す角が90度となるが、90度に限定されず90±15度の範囲であればよい。
この範囲にすることにより、凹部底面61に作用させた外力を効率よく係止部50に伝達させることができ、効率よく蓋部14と第二側壁部13とを係止させることができる。
【0068】
このとき、第二側壁部13の上方側Huの端部に、蓋部14の先端部分が配置されることとなるため、押し付け操作部60に外力が作用している状態であっても、蓋部14がプロテクタ10の内部に押し込まれることを防止できる(
図4参照)。
【0069】
なお、第二側壁部13はヒンジ部15よりも低いため、第二側壁部13と14とが係止された係止状態において、第二側壁部13と蓋部14とが成す角は鈍角となる。
【0070】
このように構成されたプロテクタ10は、ワイヤーハーネス100を据える底部11と、底部11に対して立設する第一側壁部12と、底部11に対して立設する。また、プロテクタ10は、第一側壁部12と対向する第二側壁部13と、第一側壁部12と第二側壁部13とを架設する蓋部14とで構成されている。
【0071】
また、プロテクタ10は、架設された蓋部14と第二側壁部13とを係止する係止部50が設けられるとともに、プロテクタ10は第一側壁部12の一部に、第二側壁部13に対して少なくとも蓋部14を開閉自在に回動させるヒンジ部15が設けられている。そして、蓋部14が第二側壁部13に対して係止された係止状態において、蓋部14が第二側壁部13に対して傾斜している。
【0072】
このため、ワイヤーハーネス100の挿通方向から視てプロテクタ10内部にワイヤーハーネス100を配置可能な空間を内部に確保しながら、蓋部14を第一側壁部12又は第二側壁部13のうちの高い方よりも低い位置に配置させることができる。
【0073】
これにより、プロテクタ10は、全体的にコンパクト化しつつ、内部にワイヤーハーネス100を配置できるスペースを確保できる。これにより、例えば、他の部材が配置されているために、従来のような断面矩形状で構成されたプロテクタでは配置することができないスペースであっても、蓋部14が他の部材を避けるようにプロテクタ10を配置することができる。
【0074】
さらにまた、ヒンジ部15を備えることにより、蓋部14と第一側壁部12とを一体とすることができるため、部品点数を少なくできるとともに、容易に第二側壁部13と蓋部14とを係止させることができる。
【0075】
また、蓋部14が第二側壁部13に対して傾斜していることから、第二側壁部13と蓋部14とが係止される部位の近傍では、蓋部14と底部11との間隔が狭くなっている。これにより、ワイヤーハーネス100を所望の位置(奥行方向Dにおける奥側Db側)に配置されるようにワイヤーハーネス100の移動を規制することができる。
【0076】
また、蓋部14には、蓋部14と第二側壁部13とが係止部50で係止されるように蓋部14を押し付ける押し付け操作部60が、係止部50に対応する位置に設けられており、押し付け操作部60に作用させた外力を効率よく係止部50に伝達させることができる。このため、蓋部14と第二側壁部13とを確実に係止でき、係止部50の係止が解除されてプロテクタ10が他の部材に干渉するリスクを低減できる。
【0077】
さらにまた、押し付け操作部60は、係止状態における内部側に向けて突出させて構成されていることにより、プロテクタ10をよりコンパクト化することができる。また、プロテクタ10の内部に配置されたワイヤーハーネス100を押し付け操作部60で押し付けて保持することができる。
【0078】
さらにまた、係止部50は、底部11に対して第二側壁部13が立設する方向に沿って、蓋部14と第二側壁部13とを係止し、押し付け操作部60は、係止状態において係止部50が係止する係止方向と交差する方向に沿った凹部底面61が備えられている。
【0079】
これにより、係止方向に沿った方向に外力を押し付け操作部60に作用させることができ、確実かつ効率よく係止部50に外力を伝達させることができ、より確実かつ容易に係止部50を係止させることができる。
【0080】
さらにまた、押し付け操作部60は、係止状態において、蓋部14を底部11に向けて窪ませるとともに、凹部底面61を備えた有底凹部で構成されているため、蓋部14の強度を維持しつつ、係止状態におけるプロテクタ10のコンパクト化を図ることができる。また、凹部底面61に外力を作用させることで効率よく係止部50を係止させることができる。
【0081】
さらにまた、係止部50は、底部11に対して立設する第二側壁部13の立設する方向に沿った方向に、蓋部14が第二側壁部13に対して係止し、第二側壁部13が、ヒンジ部15よりも低く構成されている。このため、ヒンジ部15を回動軸とした蓋部14の回動動作により係止片40と第二側壁部13に設けた係止枠30とを係止させることができる。
【0082】
また、有底凹部における凹部底面61は、底部11に対する第二側壁部13の高さよりも高い位置に設けられているため、凹部底面61に作用させた外力をより確実に係止部50(係止片40)に伝達させることができる。これにより、確実に蓋部14を第二側壁部13に係止させることができる。
【0083】
また、押し付け操作部60には、第二側壁部13と直交するように構成された凹部対面62が平面状に形成され、凹部対面62は、互いに平行となるように構成されているため、押し付け操作部60を押し付ける部材などを凹部底面61に向けて案内することができる。このため、確実に押付け操作部に外力を作用させることができ、蓋部14と第二側壁部13とを確実に係止させることができる。
【0084】
また、係止部50が、ワイヤーハーネス100の挿通方向に沿った両端に設けられ、押し付け操作部60は、係止部50と対応する箇所に設けられていることにより、両端部分を確実に係止することができる。このため、意図せぬ外力がワイヤーハーネス100に作用することによる第二側壁部13と蓋部14との係止状態が解除されることを防止できる。
【0085】
また、押し付け操作部60がプロテクタ10の内部に窪ませて形成されている場合には、挿通方向の両端部分におけるワイヤーハーネス100の移動を押し付け操作部60が規制できるため、係止部50の係止が解除されることを防止できる。
【0086】
また、係止状態において、蓋部14は、第二側壁部13と当接していることにより、係止状態において第二側壁部13が蓋部14を支持するため、蓋部14がプロテクタ10の内側へ押し込まれることを防止できる。これにより、プロテクタ10の内部に挿通させたワイヤーハーネス100を確実に保護することができる。
【0087】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明のワイヤーハーネスは、ワイヤーハーネス100に対応し、
以下同様に、
プロテクタは、プロテクタ10に対応し、
底部は、底部11に対応し、
第一側壁部は、第一側壁部12に対応し、
第二側壁部は、第二側壁部13に対応し、
蓋部は、蓋部14に対応し、
係止部は、係止部50に対応し、
ヒンジ部は、ヒンジ部15に対応し、
押し付け操作部は、押し付け操作部60に対応し、
交差面は、凹部底面61に対応し、
対向面は、凹部対面62に対応し
プロテクタ付ワイヤーハーネスはプロテクタ付ワイヤーハーネス1に対応し、
高さ方向は、上下方向Hに対応するも、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0088】
例えば、本実施形態において、ヒンジ部15は、第一側壁部12の主面上に設けられ、第一側壁部12の一部と蓋部14とを回動可能に構成されているが、必ずしもこの構成である必要はない。他の実施形態として、例えば、第一側壁部12の端部に設けられていてもよい。これにより、蓋部14のみを回動させる構成としてもよい。
【0089】
また、本実施形態において、第二側壁部13に対して傾斜する蓋部14は、係止状態において蓋部14と第二側壁部13とが鈍角を形成するように第二側壁部13に対して傾斜されている。しかしながら、蓋部14は、蓋部14と第二側壁部13とが鋭角を形成するように第二側壁部13に対して傾斜してもよい。
【0090】
さらにまた、本実施形態において、押し付け操作部60は、蓋部14を第二側壁部13に対して係止させた係止状態において、蓋部14をプロテクタ10の内側に向けて窪ませた構成としているが、この構成に限られない。他の実施形態として、例えば、蓋部14を第二側壁部13に対して係止させた係止状態において、蓋部14をプロテクタ10の外側に向けて突出させた構成でもよい(
図7参照)。
【0091】
さらにまた、本実施形態において、押し付け操作部60は、蓋部14を第二側壁部13に対して係止させた係止状態において、蓋部14をプロテクタ10の内側に向けて窪ませた有底の凹部としているが、有底に限定する必要はない。具体的には、係止状態において、蓋部14を底部11側に向けて貫通させた場合、すなわち凹部底面61の全部又は一部分を貫通させた場合や、凹部側面63を貫通させた場合などでもよい。
【0092】
また、本実施形態において、凹部対面62,62は凹部底面61に対して直交している面であるが、例えば凹部対面62,62は凹部底面61から上方側Huに向かうに伴い互いに離間するように構成されてもよい。換言すると、下方側Hdに向かうに伴い幅狭になるように構成されてもよい。これにより、プロテクタ10の係止を自動で行う場合に、外力を作用させる器具を凹部底面61に確実に案内することができる
【符号の説明】
【0093】
1 プロテクタ付ワイヤーハーネス。
10 プロテクタ
11 底部
12 第一側壁部
13 第二側壁部
14 蓋部
50 係止部
15 ヒンジ部
60 押し付け操作部
61 凹部底面
62 凹部対面
100 ワイヤーハーネス
H 上下方向