(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】発光素子の駆動回路、発光装置及び発光素子の駆動方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/062 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
H01S5/062
(21)【出願番号】P 2020042164
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 正長
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶
(72)【発明者】
【氏名】上村 和孝
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-262735(JP,A)
【文献】特表2005-533379(JP,A)
【文献】特開2017-103413(JP,A)
【文献】特開平04-142127(JP,A)
【文献】特開2007-158022(JP,A)
【文献】米国特許第05444728(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H02M 3/00 - 3/34
B41J 2/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を駆動する駆動回路であって、
所定のデューティ比を有するPWM信号と、所定電流値に対応した直流信号とを外部からの指示に応じて出力する信号出力部と、
前記PWM信号と前記直流信号とを加算した加算信号を出力する加算部と、
前記加算信号に応じて第1信号を出力するトランジスタと、
前記第1信号を平滑化した第2信号を前記発光素子へ供給する平滑部と、
を備え、
前記トランジスタは、電界効果トランジスタであって、ゲート端子が前記加算部に接続されて前記ゲート端子に前記加算信号が供給され、ソース端子が前記平滑部に接続されて前記ソース端子から前記第1信号を前記平滑部へ供給する発光素子の駆動回路。
【請求項2】
前記信号出力部は、前記発光素子を流れる電流を前記所定電流値以下とする場合、前記直流信号の電圧を前記所定電流値に対応した電圧とし、前記所定のデューティ比を0%とする
請求項1に記載の発光素子の駆動回路。
【請求項3】
前記信号出力部は、前記直流信号の電圧を前記所定電流値に対応した電圧とするとともに、前記所定のデューティ比を0%として出力する状態と、前記所定のデューティ比を外部からの指示に応じたデューティ比として出力する状態とを前記指示に応じて切り替える
請求項1又は請求項2に記載の発光素子の駆動回路。
【請求項4】
前記発光素子に流れる電流を検出する検出部を有し、
前記信号出力部は、外部から指示される電流値と、前記検出部が検出した電流に基づいて、前記所定のデューティ比を制御する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発光素子の駆動回路。
【請求項5】
発光素子を駆動する駆動回路であって、所定のデューティ比を有するPWM信号と、所定電流値に対応した直流信号と、パルス信号とを外部からの指示に応じて出力する信号出力部と、
前記パルス信号と前記直流信号とを加算した加算信号を出力する加算部と、
前記PWM信号に応じて第1信号を出力する第1トランジスタと、
前記第1信号を平滑化した第2信号を前記発光素子のアノードへ供給する平滑部と、
前記発光素子より後段に設けられ、供給される前記加算信号に応じて前記第2信号の電流を制御する第2トランジスタと、
を備え、
前記第1トランジスタは、電界効果トランジスタであって、ゲート端子が前記信号出力部に接続されて前記ゲート端子に前記PWM信号が供給され、ソース端子が前記平滑部に接続されて前記ソース端子から前記第1信号を前記平滑部へ供給し、
前記第2トランジスタは、電界効果トランジスタであって、ゲート端子が前記加算部に接続されて前記加算信号が前記ゲート端子に供給され、ドレイン端子が前記発光素子のカソードに接続されている発光素子の駆動回路。
【請求項6】
前記発光素子に流れる電流を検出する検出部を有し、
前記信号出力部は、前記検出部が検出した電流に基づいて、前記パルス信号の電圧を制御する
請求項5に記載の発光素子の駆動回路。
【請求項7】
発光素子と、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発光素子の駆動回路と、
を備える発光装置。
【請求項8】
発光素子を駆動する駆動方法であって、
所定のデューティ比を有するPWM信号と、所定電流値に対応した直流信号とを加算した加算信号を出力する加算部と、前記加算信号に応じて第1信号を出力するトランジスタと、前記第1信号を平滑化した第2信号を前記発光素子へ供給する平滑部と、を備える発光素子の駆動回路に対し、前記PWM信号と前記直流信号を外部からの指示に応じて出力する信号出力ステップ
を備え、
前記トランジスタは、電界効果トランジスタであって、ゲート端子が前記加算部に接続されて前記ゲート端子に前記加算信号が供給され、ソース端子が前記平滑部に接続されて前記ソース端子から前記第1信号を前記平滑部へ供給する発光素子の駆動方法。
【請求項9】
発光素子を駆動する駆動方法であって、
所定のデューティ比を有するPWM信号と、所定電流値に対応した直流信号と、パルス信号とを外部からの指示に応じて出力する信号出力部と、前記パルス信号と所定電流値に対応した
前記直流信号とを加算した加算信号を出力する加算部と、所定のデューティ比を有する
前記PWM信号に応じて第1信号を出力する第1トランジスタと、前記第1信号を平滑化した第2信号を前記発光素子のアノードへ供給する平滑部と、前記発光素子より後段に設けられ、供給される前記加算信号に応じて前記第2信号の電流を制御する第2トランジスタと、を備える発光素子の駆動回路に対し、前記PWM信号と、前記直流信号と、前記パルス信号とを外部からの指示に応じて出力する信号出力ステップ
を備え、
前記第1トランジスタは、電界効果トランジスタであって、ゲート端子が前記信号出力部に接続されて前記ゲート端子に前記PWM信号が供給され、ソース端子が前記平滑部に接続されて前記ソース端子から前記第1信号を前記平滑部へ供給し、
前記第2トランジスタは、電界効果トランジスタであって、ゲート端子が前記加算部に接続されて前記加算信号が前記ゲート端子に供給され、ドレイン端子が前記発光素子のカソードに接続されている発光素子の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の駆動回路、発光装置及び発光素子の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ装置の定電流電源の発明として、例えば特許文献1に開示された定電流電源装置がある。この定電流電源装置は、固体レーザ発振器の電源装置であり、励起ランプを発光させる電流を励起ランプへ供給するランプ電流供給回路と、レーザ発振していないときにも励起ランプの点灯を維持するためのシマー電流を励起ランプへ供給するシマー電流供給回路とを備えている。定電流電源装置は、ランプへ供給する電流を指定する電流指令値が、設定されているシマー電流値を超えている場合、ランプ電流供給回路から励起ランプへ電流を供給し、電流指令値がシマー電流値を超えていない場合、シマー電流供給回路からシマー電流を励起ランプへ供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーザ装置の光源へ供給する電流の制御方法としては、PWM(Pulse Width Modulation)を用いる方法がある。PWMで電流を制御する場合、所望の電流に応じたパルスを平滑化フィルタで平滑化し、光源を駆動する電流を得る。PWMを用いてシマー電流のような低い電流を光源に供給する場合、PWMのデューティ比を小さくすることになるが、デューティ比を小さくすると電流の変動が大きくなり、安定してシマー電流を供給するのが難しくなる。特許文献1に開示された定電源電流装置のように、シマー電流を供給するための回路を設けることにより、安定してシマー電流を供給することができるが、シマー電流のためだけの回路を設け、必要に応じて回路を切り替えることになり、回路が複雑となる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、発光素子に対して、PWM方式での駆動と安定したシマー電流の供給との両立を可能にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る発光素子の駆動回路は、発光素子を駆動する駆動回路であって、所定のデューティ比を有するPWM信号と、所定電流値に対応した直流信号とを外部からの指示に応じて出力する信号出力部と、前記PWM信号と前記直流信号とを加算した加算信号を出力する加算部と、前記加算信号に応じて第1信号を出力するトランジスタと、前記第1信号を平滑化した第2信号を前記発光素子へ供給する平滑部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る発光素子の駆動回路は、前記信号出力部は、前記発光素子を流れる電流を前記所定電流値以下とする場合、前記直流信号の電圧を前記所定電流値に対応した電圧とし、前記所定のデューティ比を0%とすることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る発光素子の駆動回路は、前記信号出力部は、前記直流信号の電圧を前記所定電流値に対応した電圧とするとともに、前記所定のデューティ比を0%として出力する状態と、前記所定のデューティ比を外部からの指示に応じたデューティ比として出力する状態とを前記指示に応じて切り替えることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る発光素子の駆動回路は、前記発光素子に流れる電流を検出する検出部を有し、前記信号出力部は、外部から指示される電流値と、前記検出部が検出した電流に基づいて、前記所定のデューティ比を制御することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る発光素子の駆動回路は、発光素子を駆動する駆動回路であって、PWM信号と、所定電流値に対応した直流信号と、パルス信号とを外部からの指示に応じて出力する信号出力部と、前記パルス信号と前記直流信号とを加算した加算信号を出力する加算部と、前記PWM信号に応じて第1信号を出力する第1トランジスタと、前記第1信号を平滑化した第2信号を前記発光素子へ供給する平滑部と、前記発光素子より後段に設けられ、供給される前記加算信号に応じて前記第2信号の電流を制御する第2トランジスタと、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る発光素子の駆動回路は、前記発光素子に流れる電流を検出する検出部を有し、前記信号出力部は、前記検出部が検出した電流に基づいて、前記パルス信号の電圧を制御することを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る発光装置は、発光素子と、前記のいずれか一の発光素子の駆動回路と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る発光素子の駆動方法は、発光素子を駆動する駆動方法であって、所定のデューティ比を有するPWM信号と、所定電流値に対応した直流信号とを加算した加算信号を出力する加算部と、前記加算信号に応じて第1信号を出力するトランジスタと、前記第1信号を平滑化した第2信号を前記発光素子へ供給する平滑部と、を備える発光素子の駆動回路に対し、前記PWM信号と前記直流信号を外部からの指示に応じて出力する信号出力ステップを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る発光素子の駆動方法は、発光素子を駆動する駆動方法であって、パルス信号と所定電流値に対応した直流信号とを加算した加算信号を出力する加算部と、所定のデューティ比を有するPWM信号に応じて第1信号を出力する第1トランジスタと、前記第1信号を平滑化した第2信号を前記発光素子へ供給する平滑部と、前記発光素子より後段に設けられ、供給される前記加算信号に応じて前記第2信号の電流を制御する第2トランジスタと、を備える発光素子の駆動回路に対し、前記PWM信号と、前記直流信号と、前記パルス信号とを外部からの指示に応じて出力する信号出力ステップを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発光素子に対して、PWM方式での駆動とシマー電流の供給が可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るレーザ装置の概略構成を示す図である。
【
図3】
図3は、制御部が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1実施形態でレーザ光を出力するときの各種信号の波形を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態でレーザ光を出力しないときの各種信号の波形を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態で駆動電流をパルス電流とするときの各種信号の波形を示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係るレーザ装置の概略構成を示す図である。
【
図8】
図8は、制御部が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2実施形態でレーザ光を出力するときの各種信号の波形を示す図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態でレーザ光を出力しないときの各種信号の波形を示す図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態で駆動電流をパルス電流とするときの各種信号の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素については適宜同一の符号を付している。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るレーザ装置1Aの概略構成を示す図である。レーザ装置1Aは、レーザ光を出力する装置である。レーザ装置1Aは、発光素子LD、制御部10、加算部20、電流センサ30、平滑回路40、第1トランジスタTR1、ダイオードD及び電源PSを備える。レーザ装置1Aは、発光装置の一例であり、発光素子の駆動回路の一例である。
【0019】
レーザ装置1Aは、発光素子LD1を、外部システム2から供給される電流指示信号sig11と、パルス指示信号sig12とに基づいて駆動する。外部システム2は、発光素子LDを駆動する電流を設定するシステムであり、オペレータが設定した電流波形に対応した電流指示信号sig11とパルス指示信号sig12を出力する。電流指示信号sig11は、発光素子LDを駆動する電流の電流値を表す信号であり、電流指令値の一例である。パルス指示信号sig12は、発光素子LDを駆動する電流をパルス電流とするときのパルスの周波数を表す信号である。例えば、発光素子LDを駆動する電流を1KHzでハイレベルのときに1Aのパルス電流とする場合、電流指示信号sig11は、1Aを表す信号となり、パルス指示信号sig12は、1KHzを表す信号となる。
【0020】
電源PSは、発光素子LDに電力を供給する直流電源である。電源PSは、発光素子LDを駆動する電流を供給する。
【0021】
発光素子LDは、光を出力する光源である。本実施形態においては、発光素子LDは、レーザ光を出力する半導体レーザダイオードであるが、半導体レーザダイオードに限定されるものではない。発光素子LDのアノードは、平滑回路40の出力端に接続されており、発光素子LDのカソードは、接地されている。なお、
図1においては、一つの発光素子LDを図示しているが、レーザ装置1Aは、複数の発光素子LDを直列に接続した構成であってもよい。
【0022】
電流センサ30は、発光素子LDに流れる電流を測定するセンサである。電流センサ30は、例えば、センス抵抗を用いた周知の電流センサである。電流センサ30は、発光素子LDのカソードに直列に接続されたセンス抵抗にかかる電圧を検出し、検出した電圧を表す信号を、発光素子LDに流れる電流を表す信号として制御部10へ出力する。なお、電流センサ30は、ホール素子を用いた電流センサであってもよい。
【0023】
平滑回路40は、第1トランジスタTR1から供給される電流を平滑化する回路であり、コイルL1とコンデンサC1で構成されている。平滑回路40の入力端は、第1トランジスタTR1に接続され、平滑回路40の出力端は、発光素子LDのアノードに接続されている。第1トランジスタTR1から供給される電流は、第1信号の一例であり、平滑回路40の出力端から出力される信号は、第2信号の一例である。
【0024】
第1トランジスタTR1は、例えばNチャネル型の電界効果トランジスタであり、ドレイン端子が電源PSに接続され、ゲート端子が加算部20に接続され、ソース端子がダイオードDのカソードに接続されている。第1トランジスタTR1は、ゲート端子に印可される電圧に応じた電流を平滑回路40へ供給する。なお、第1トランジスタTR1は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。
【0025】
ダイオードDは、第1トランジスタTR1がオフとなったときに平滑回路40のコイルL1が流す電流を還流する還流ダイオードである。ダイオードDのカソードは、平滑回路40の入力端に接続され、アノードは接地されている。
【0026】
制御部10は、演算部と、記憶部とを備えている。演算部は、発光素子LDを駆動する駆動電流Idの制御のための各種演算処理を行うものである。制御部10は、例えばCPU(Central Processing Unit)やFPGA(field-programmable gate array)、又はCPUとFPGAの両方で構成される。
【0027】
記憶部は、例えばROM(Read Only Memory)で構成される部分とRAM(Random Access Memory)で構成される部分とを備えている。ROMで構成される部分には、演算部が演算処理を行うために使用する各種プログラムやデータなどが格納される。また、RAMは、演算部が演算処理を行う際の作業スペースや演算部の演算処理の結果などを記憶するために使用される。
【0028】
図1においては、記憶部に記憶されているプログラムを演算部が実行することにより制御部10において実現する機能のうち、本実施形態に係る信号出力部101、電流測定部102及び取得部103を図示している。
【0029】
取得部103は、外部システム2から供給される電流指示信号sig11と、パルス指示信号sig12とを取得する。電流測定部102は、電流センサ30から供給される信号を取得し、取得した信号が表す電流値を求める。電流測定部102は、発光素子LDに流れる電流を検出する検出部の一例である。
【0030】
信号出力部101は、発光素子LDを駆動するための信号として、電流測定部102が求めた電流値、取得部103が取得した電流指示信号sig11及びパルス指示信号sig12に基づいて、線形信号sig21及びPWM信号sig22を出力する。線形信号sig21は、シマー電流に対応した、電圧値が一定の直流信号である。シマー電流は、発光素子LDが安定してレーザ発振するために、予め発光素子LDに流す電流である。PWM信号sig22は、電流指示信号sig11が表す電流値に対応したPWM(Pulse Width Modulation)信号である。
【0031】
信号出力部101は、PWM信号sig22のデューティ比を、電流指示信号sig11が表す電流値と、電流測定部102が求めた電流値に基づいて定める。具体的には、信号出力部101は、電流指示信号sig11が表す電流値が大きくなるにつれてPWM信号sig22のデューティ比を大きくする。また、信号出力部101は、電流測定部102が求めた電流値が電流指示信号sig11の表す電流値と異なる場合、電流測定部102で測定される電流値が電流指示信号sig11の表す電流値となるように、電流測定部102が求めた電流値と、電流指示信号sig11の表す電流値との差に応じてPWM信号sig22のデューティ比を調整する。
【0032】
加算部20は、PWM信号sig22に線形信号sig21を加算する回路を備える。加算部20が備える回路の一例を
図2の(a)と
図2の(b)に示す。
図2の(a)は、所謂バイアスT回路であり、コイルL2とコンデンサC2で構成されている。コイルL2の一端には、線形信号sig21が供給され、コンデンサC2の一端には、PWM信号sig22が供給される。コイルL2の他端とコンデンサC2の他端は接続されており、加算部20は、PWM信号sig22に線形信号sig21を加算した信号として、加算信号sig31を出力する。
図2の(b)は、所謂加算回路であり、抵抗R1、抵抗R2及びオペアンプOPで構成されている。PWM信号sig22は、抵抗R2を介してオペアンプOPの反転入力端子に供給され、線形信号sig21は、抵抗R1を介してオペアンプOPの反転入力端子に供給される。オペアンプOPは、PWM信号sig22に線形信号sig21を加算した信号として、加算信号sig31を出力する。加算信号sig31は、第1トランジスタTR1のゲート端子へ供給される。加算信号sig31は、加算信号の一例である。なお、加算部20はアナログ回路で構成せず、制御部10にてPWM信号sig22に線形信号sig21を加算する演算を実行するように構成してもよい。
【0033】
次に、レーザ装置1Aの動作例について説明する。
図3は、発光素子LDからレーザ光を出力するときに制御部10が行う処理の流れを示したフローチャートである。まず制御部10(電流測定部102)は、電流センサ30から供給される信号に基づいて、発光素子LDに流れる駆動電流Idを測定する(ステップS101)。次に制御部10(信号出力部101)は、電流指示信号sig11が示す電流値が予め定められた閾値を超えているか判断する(ステップS102)。ここで、予め定められた閾値は、例えばシマー電流の電流値である。
【0034】
制御部10は、電流指示信号sig11が示す電流値が予め定められた閾値を超えていない場合(ステップS102でNo)、線形信号sig21の電圧を演算する(ステップS108)。ここで、制御部10は、線形信号sig21の電圧をシマー電流に対応した電圧にして出力する。なお、制御部10は、電流測定部102で測定した電流値が、電流指示信号sig11と一致しない場合、電流測定部102で測定する電流値が電流指示信号sig11の示す電流値と一致するように、線形信号sig21の電圧を設定する。次に制御部10は、PWM信号sig22のデューティ比を0%にして出力する(ステップS109)。この後、制御部10は、レーザ光の出力を停止する指示を外部システム2から取得していない場合には(ステップS106でNo)、ステップS101へ戻り、レーザ光の出力を停止する指示を外部システム2から取得している場合には、
図3の処理を終了する。
【0035】
制御部10は、電流指示信号sig11が示す電流値が予め定められた閾値を超えている場合(ステップS102でYes)、パルス指示信号sig12が示す周波数が0Hzであるか判断する(ステップS103)。制御部10は、パルス指示信号sig12が示す周波数が0Hzではない場合(ステップS103でNo)、線形信号sig21の電圧を演算する(ステップS107)。ここで、制御部10は、線形信号sig21の電圧を、シマー電流に対応した電圧にして出力する。
【0036】
次に制御部10は、PWM信号sig22の波形を演算する(ステップS105)。具体的には、制御部10は、パルス指示信号sig12が示す周波数が0Hzではない場合、PWM信号sig22のデューティ比を、電流指示信号sig11が示す電流値に対応したデューティ比にする。なお、制御部10は、電流測定部102で測定した電流値が、電流指示信号sig11と一致しない場合、電流測定部102で測定した電流値が電流指示信号sig11の示す電流値と一致するように、PWM信号sig22のデューティ比を設定する。また、制御部10は、パルス指示信号sig12が示す周波数が0Hzではない場合、パルス指示信号sig12が示す周波数に基づいて、PWM信号sig22において設定したデューティ比のパルスとする期間、PWM信号sig22においてデューティ比を0%とする期間及びこれらの期間の繰り返しの周期を演算する。制御部10は、演算した波形のPWM信号sig22を出力し、レーザ光の出力を停止する指示を外部システム2から取得していない場合には(ステップS106でNo)、ステップS101へ戻る。
【0037】
一方、制御部10は、パルス指示信号sig12が示す周波数が0Hzである場合(ステップS103でYes)、線形信号sig21の電圧を0Vとする(ステップS104)。次に制御部10は、PWM信号sig22の波形を演算する(ステップS105)。具体的には、制御部10は、パルス指示信号sig12が示す周波数が0Hzである場合、PWM信号sig22のデューティ比を、電流指示信号sig11が示す電流値に対応したデューティ比に設定し、設定したデューティ比のパルスの出力を継続する。なお、制御部10は、電流測定部102で測定した電流値が、電流指示信号sig11と一致しない場合、電流測定部102で測定した電流値が電流指示信号sig11の示す電流値と一致するように、PWM信号sig22のデューティ比を調整する。
【0038】
図4は、発光素子LDからレーザ光を出力するときの各種信号の波形を示す図である。
図4の(a)に示すグラフは、縦軸が電流値であり、横軸が時間であって、外部システム2のオペレータが設定した電流波形、即ち、外部システム2から供給される電流指示信号sig11とパルス指示信号sig12で定まる指示電流Isの波形を示している。一定値の電流を発光素子LDに供給する場合、電流指示信号sig11は、発光素子LDへ供給する電流の電流値を表し、パルス指示信号sig12は、例えば0Hzを表す。この場合、制御部10は、ステップS102でYesと判断し、ステップS103でYesと判断し、ステップS104とステップS105の処理を行う。
【0039】
図4の(b)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、線形信号sig21の波形を示すグラフである。信号出力部101は、電流指示信号sig11が示す電流値がシマー電流の電流値を超えており、パルス指示信号sig12が示す周波数が0Hzである場合、
図4の(b)に示すように、線形信号sig21の電圧を0Vにする。なお、0Vの線形信号sig21というのは、線形信号sig21を出力していない場合を含む。
【0040】
図4の(c)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、PWM信号sig22の波形を示すグラフである。信号出力部101は、電流指示信号sig11が示す電流値がシマー電流の電流値を超えており、PWM信号sig22が示す周波数が0Hzである場合、
図4の(c)に示すように、電流指示信号sig11が示す電流値に対応した電圧及びデューティ比のPWM信号を、PWM信号sig22として出力する。なお、信号出力部101は、電流測定部102で測定した電流値が、電流指示信号sig11と一致しない場合、電流測定部102で測定した電流値が電流指示信号sig11の示す電流値と一致するように、PWM信号sig22のデューティ比を調整する。
【0041】
図4の(d)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、加算信号sig31の波形を示すグラフである。
図4の(b)に示す線形信号sig21と、
図4の(c)に示すPWM信号sig22とが信号出力部101から出力された場合、線形信号sig21の電圧が0Vであるため、加算部20からは、PWM信号sig22が加算信号sig31として出力される。
【0042】
図4の(e)に示すグラフは、縦軸が電流であり、横軸が時間であって、発光素子LDに流れる駆動電流Idの波形を示すグラフである。
図4の(d)に示す加算信号sig31がゲート端子に供給された第1トランジスタTR1は、加算信号sig31に応じたパルス電流を平滑回路40へ供給し、平滑回路40は、第1トランジスタTR1から供給されるパルス電流を平滑化する。第1トランジスタTR1が供給するパルス電流が平滑化されることにより、
図4の(e)に示す駆動電流Idが発光素子LDに供給される。
【0043】
次に、
図5は、発光素子LDにシマー電流を流すときの各種信号の波形を示す図である。
図5の(a)に示すグラフは、発光素子LDにシマー電流を供給するときの指示電流Isの波形を示すグラフである。このように、シマー電流を発光素子LDに供給する場合、電流指示信号sig11は、シマー電流の電流値を表し、パルス指示信号sig12は、0Hzを表す。この場合、制御部10は、ステップS102でNoと判断し、ステップS108とステップS109の処理を行う。
【0044】
図5の(b)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、線形信号sig21の波形を示すグラフである。信号出力部101は、電流指示信号sig11が示す電流値がシマー電流以下である場合、シマー電流に対応した電圧の線形信号sig21を出力する。
【0045】
図5の(c)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、PWM信号sig22の波形を示すグラフである。信号出力部101は、電流指示信号sig11が示す電流値がシマー電流以下である場合、0VのPWM信号sig22、即ちデューティ比が0%のPWM信号sig22を出力する。なお、0VのPWM信号sig22というのは、PWM信号sig22を出力していない場合を含む。
【0046】
図5の(d)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、加算信号sig31の波形を示すグラフである。
図5の(b)に示す線形信号sig21と
図5の(c)に示すPWM信号sig22が出力された場合、PWM信号sig22が0Vであるため、加算部20からは、線形信号sig21が加算信号sig31として出力される。
【0047】
図5の(e)に示すグラフは、縦軸が電流であり、横軸が時間であって、発光素子LDに流れる駆動電流Idの波形を示すグラフである。
図5の(d)に示す加算信号sig31がゲート端子に供給された第1トランジスタTR1は、
図5の(d)に示す加算信号sig31に応じた一定の電流を平滑回路40へ供給し、平滑回路40は、第1トランジスタTR1から供給される一定の電流を発光素子LD1へ供給する。このように、発光素子LDにシマー電流を供給するときには、第1トランジスタTR1を直流電圧で駆動するため、PWMで駆動する場合と比較して、
図5の(e)に示すように安定したシマー電流値の駆動電流Idが発光素子LDに供給される。
【0048】
次に、
図6は、発光素子LDに流す駆動電流Idをパルス電流とするときの各種信号の波形を示す図である。
図6の(a)に示すグラフは、駆動電流Idをパルス電流とするときの指示電流Isの波形を示している。このように、パルス波の電流を発光素子LDに供給する場合、電流指示信号sig11は、電流がハイレベルのときの電流値を表し、パルス指示信号sig12は、パルス波の周波数を表す。この場合、制御部10は、ステップS102でYesと判断し、ステップS103でNoと判断し、ステップS107とステップS105の処理を行う。
【0049】
図6の(b)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、線形信号sig21の波形を示すグラフである。信号出力部101は、発光素子LDに流す電流をパルス波とする場合、シマー電流に対応した電圧の線形信号sig21を出力する。なお、信号出力部101は、発光素子LDに流す駆動電流Idをパルス波とする場合、駆動電流Idをハイレベルとする期間においては、線形信号sig21の電圧を0Vとするようにしてもよい。
【0050】
図6の(c)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、PWM信号sig22の波形を示すグラフである。信号出力部101は、指示電流Isの波形に基づいて、駆動電流Idをハイレベルとする期間においては、電流指示信号sig11から定まる電流値に対応した電圧及びデューティ比のパルスをPWM信号sig22として出力し、駆動電流Idをローレベルとする期間においては、PWM信号sig22のデューティ比を0%とする。なお、信号出力部101は、駆動電流Idをハイレベルとする期間において、電流測定部102で測定した電流値が、電流指示信号sig11から定まる電流値と一致しない場合、電流測定部102で測定した電流値が、電流指示信号sig11の示す電流値となるように、PWM信号sig22のデューティ比を調整する。
【0051】
図6の(d)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、加算信号sig31の波形を示すグラフである。
図6の(b)に示す線形信号sig21と
図6の(c)に示すPWM信号sig22が出力された場合、加算部20からは、線形信号sig21をPWM信号sig22に加算した信号が、加算信号sig31として出力される。
【0052】
図6の(e)に示すグラフは、縦軸が電流であり、横軸が時間であって、発光素子LDに流れる駆動電流Idの波形を示すグラフである。ゲート端子に
図6の(d)に示す加算信号sig31が供給された第1トランジスタTR1は、PWM信号sig22のデューティ比が0%でない期間においては、加算信号sig31に応じた電流を平滑回路40へ供給し、PWM信号sig22のデューティ比が0%である期間においては、加算信号sig31のローレベルに応じた電流を平滑回路40へ供給する。平滑回路40は、第1トランジスタTR1から供給される電流を平滑化して発光素子LDへ供給する。第1トランジスタTR1が供給する電流が平滑化されることにより、
図6の(e)に示すように、ハイレベルでは外部システム2から指示された電流値であり、ローレベルではシマー電流の電流値である駆動電流Idが発光素子LDに供給される。
【0053】
本実施形態によれば、発光素子LDへ高電流を供給するときには、PWM方式で効率良く電流を発光素子LDへ供給し、発光素子LDへ低電流のシマー電流を供給するときには、発光素子LDへシマー電流を安定して供給することができる。
【0054】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態について説明する。
図7は、本発明の第2実施形態に係るレーザ装置1Bの概略構成を示す図である。第2実施形態は、発光素子LDの後段に第2トランジスタTR2を備え、信号出力部101が出力する信号が第1実施形態と異なり、加算部20が出力する信号が第2トランジスタTR2に供給される点が第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略し、以下の説明においては、第1実施形態との相違点について説明する。
【0055】
第2実施形態に係る信号出力部101は、発光素子LDを駆動するための信号として、電流測定部102が求めた電流値、取得部103が取得した電流指示信号sig11及びパルス指示信号sig12に基づいて、線形信号sig41、パルス信号sig42及びPWM信号sig43を出力する。線形信号sig41は、シマー電流に対応した電圧値の信号であり、直流信号の一例である。パルス信号sig42は、パルス指示信号sig12に対応したパルス波形の信号であり、パルス信号の一例である。PWM信号sig43は、予め定められたデューティ比のPWM信号である。
【0056】
第2実施形態に係る加算部20は、パルス信号sig42に対して線形信号sig41を加算する。加算部20は、
図2の(a)の構成の場合、コイルL2に線形信号sig41が供給され、コンデンサC2にパルス信号sig42が供給され、パルス信号sig42に線形信号sig41を加算した加算信号sig51を出力する。また、加算部20は、
図2の(b)の構成の場合、抵抗R2を介してオペアンプOPの反転入力端子にパルス信号sig42が供給され、抵抗R1に線形信号sig41が供給される。オペアンプOPは、パルス信号sig42に線形信号sig41を加算した加算信号sig51を出力する。加算信号sig51は、第2トランジスタTR2のゲート端子に供給される。加算信号sig51は、加算信号の一例である。なお、加算部20はアナログ回路で構成せず、制御部10にてパルス信号sig42に線形信号sig41を加算する演算を実行するように構成してもよい。
【0057】
第2トランジスタTR2は、例えばNチャネル型の電界効果トランジスタであり、ドレイン端子が発光素子LDのカソードに接続され、ゲート端子が加算部20に接続され、ソース端子がダイオードDのアノードに接続されている。第2トランジスタTR2は、ゲート端子に印可される電圧に応じて、発光素子LDに流れる駆動電流Idを制御する。
【0058】
次に、レーザ装置1Bの動作例について説明する。
図8は、発光素子LDからレーザ光を出力するときに制御部10が行う処理の流れを示したフローチャートである。まず制御部10(電流測定部102)は、電流センサ30から供給される信号に基づいて、発光素子LDに流れる駆動電流Idを測定する(ステップS201)。次に制御部10(信号出力部101)は、PWM信号sig43のデューティ比を演算する(ステップS202)。ここで、制御部10は、電流指示信号sig11が示す電流値と、ステップS201で測定した電流値とに基づいて、駆動電流Idが電流指示信号sig11の示す電流値となるように、PWM信号sig43のデューティ比を演算する。
【0059】
次に制御部10(信号出力部101)は、電流指示信号sig11が示す電流値が予め定められた閾値を超えているか判断する(ステップS203)。ここで、予め定められた閾値は、例えばシマー電流の電流値である。
【0060】
制御部10は、電流指示信号sig11が示す電流値が予め定められた閾値を超えていない場合(ステップS203でNo)、線形信号sig41の電圧を演算する(ステップS209)。ここで、制御部10は、線形信号sig41の電圧を、シマー電流に対応した電圧とする。なお、制御部10は、電流測定部102で測定した電流値が、電流指示信号sig11と一致しない場合、電流測定部102で測定した電流値が電流指示信号sig11の示す電流値と一致するように、線形信号sig41の電圧を調整する。次に制御部10は、パルス信号sig42の波形を演算する(ステップS210)。ここで制御部10は、パルス信号sig42の電圧を0Vとする。この後、制御部10は、レーザ光の出力を停止する指示を外部システム2から取得していない場合には(ステップS207でNo)、ステップS201へ戻り、レーザ光の出力を停止する指示を外部システム2から取得している場合には、
図8の処理を終了する。
【0061】
制御部10は、電流指示信号sig11が示す電流値が予め定められた閾値を超えている場合(ステップS203でYes)、パルス指示信号sig12が示す周波数が0Hzであるか判断する(ステップS204)。制御部10は、パルス指示信号sig12が示す周波数が0Hzではない場合(ステップS204でYes)、線形信号sig41の電圧を演算する(ステップS208)。ここで、制御部10は、線形信号sig41の電圧を、シマー電流に対応した電圧とする。
【0062】
次に制御部10は、パルス信号sig42の波形を演算する(ステップS206)。具体的には、制御部10は、パルス指示信号sig12が示す周波数が0Hzではない場合、パルス信号sig42について、パルス指示信号sig12が示す周波数に対応したハイレベルの期間、パルス指示信号sig12が示す周波数に対応したローレベルの期間及びこれらの期間の繰り返しの周期を演算する。この後、制御部10は、レーザ光の出力を停止する指示を外部システム2から取得していない場合には(ステップS207でNo)、ステップS201へ戻り、レーザ光の出力を停止する指示を外部システム2から取得している場合には、
図8の処理を終了する。
【0063】
一方、制御部10は、パルス指示信号sig12が示す周波数が0Hzである場合(ステップS204でYes)、線形信号sig41の電圧を演算する(ステップS205)。ここで制御部10は、線形信号sig41の電圧を電流指示信号sig11に対応した電圧とする。次に制御部10は、パルス信号sig42の波形を演算する(ステップS206)。具体的には、制御部10は、パルス指示信号sig12が示す周波数が0Hzである場合、パルス信号sig42の電圧を0Vとする。この後、制御部10は、レーザ光の出力を停止する指示を外部システム2から取得していない場合には(ステップS207でNo)、ステップS201へ戻り、レーザ光の出力を停止する指示を外部システム2から取得している場合には、
図8の処理を終了する。
【0064】
なお、ステップS202においては、PWM信号sig43の電圧とデューティ比を予め定められた電圧及びデューティ比に固定し、線形信号sig41の電圧とパルス信号sig42の電圧によって駆動電流Idを制御してもよい。
【0065】
図9は、発光素子LDからレーザ光を出力するときの各種信号を示す図である。
図9の(a)に示すグラフは、縦軸が電流値であり、横軸が時間であって、外部システム2のオペレータが設定した電流波形、即ち、外部システム2から供給される電流指示信号sig11とパルス指示信号sig12で定まる指示電流Isの波形を示している。シマー電流を超えた一定値の電流を発光素子LDに供給する場合、第2実施形態においても、電流指示信号sig11は、発光素子LDへ供給する電流の電流値を表し、パルス指示信号sig12は、例えば0Hzを表す。この場合、制御部10は、ステップS203でYesと判断し、ステップS204でYesと判断し、ステップS205とステップS206の処理を行う。
【0066】
図9の(b)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、線形信号sig41の波形を示すグラフである。信号出力部101は、パルス指示信号sig12が示す周波数が0Hzである場合、
図9の(b)に示すように、電流指示信号sig11が示す電流値に対応した電圧値の線形信号sig41を出力する。
【0067】
図9の(c)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、パルス信号sig42の波形を示すグラフである。信号出力部101は、パルス指示信号sig12が示す周波数が0Hzである場合、パルス信号sig42の電圧を0Vにする。なお、0Vのパルス信号sig42というのは、パルス信号sig42を出力していない場合を含む。
【0068】
図9の(d)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、加算部20から出力される加算信号sig51の波形を示すグラフである。
図9の(b)に示す線形信号sig41と、
図9の(c)に示すパルス信号sig42とが信号出力部101から出力された場合、パルス信号sig42が0Vであるため、加算部20からは、線形信号sig41が加算信号sig51として出力される。
【0069】
図9の(e)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、PWM信号sig43の波形を示すグラフである。信号出力部101は、電流指示信号sig11が示す電流値がシマー電流を超えており、パルス指示信号sig12が示す周波数が0Hzである場合、予め定められた電圧及びデューティ比のPWM信号を、PWM信号sig43として出力する。信号出力部101は、電流測定部102で測定した電流値が、電流指示信号sig11から定まる電流値と一致しない場合、電流測定部102で測定した電流値が電流指示信号sig11から定まる電流値と一致するように、PWM信号sig43のデューティ比を調整する。なお、信号出力部101は、電流測定部102で測定した電流値が、電流指示信号sig11から定まる電流値と一致しない場合、電流測定部102で測定した電流値が電流指示信号sig11から定まる電流値と一致するように、線形信号sig41の電圧を調整してもよい。
【0070】
図9の(f)に示すグラフは、縦軸が電流であり、横軸が時間であって、発光素子LDに流れる駆動電流Idの波形を示すグラフである。
図9の(e)に示すPWM信号sig43がゲート端子に供給された第1トランジスタTR1は、PWM信号sig43に応じた電流を平滑回路40へ供給し、平滑回路40は、第1トランジスタTR1から供給される電流を平滑化する。第1トランジスタTR1
から供給される電流は、第1信号の一例であり、平滑回路40から発光素子LDに供給される電流は、第2信号の一例である。平滑回路40から発光素子LDに供給される駆動電流Idは、第2トランジスタTR2のゲート端子に供給される加算信号sig51に応じて制御され、駆動電流Idの波形は、
図9の(f)に示す波形となる。
【0071】
次に、
図10は、発光素子LDにシマー電流を流すときの各種信号を示す図である。
図10の(a)に示すグラフは、発光素子LDにシマー電流を供給するときの指示電流Isの波形を示すグラフである。このように、シマー電流の電流値の電流を発光素子LDに供給する場合、電流指示信号sig11は、シマー電流の電流値を表し、パルス指示信号sig12は、0Hzを表す。この場合、制御部10は、ステップS203でNoと判断し、ステップS209とステップS210の処理を行う。
【0072】
図10の(b)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、線形信号sig41の波形を示すグラフである。信号出力部101は、電流指示信号sig11がシマー電流の電流値を表す場合、
図10の(b)に示すように、電流指示信号sig11が示す電流値に対応した電圧値の線形信号sig41を出力する。
【0073】
図10の(c)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、パルス信号sig42の波形を示すグラフである。信号出力部101は、電流指示信号sig11がシマー電流の電流値を表す場合、パルス信号sig42の電圧を0Vにする。なお、0Vのパルス信号sig42というのは、パルス信号sig42を出力していない場合を含む。
【0074】
図10の(d)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、加算部20から出力される加算信号sig51の波形を示すグラフである。
図10の(b)に示す線形信号sig41と、
図10の(c)に示すパルス信号sig42とが信号出力部101から出力された場合、パルス信号sig42が0Vであるため、加算部20からは、線形信号sig41が加算信号sig51として出力される。
【0075】
図10の(e)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、PWM信号sig43の波形を示すグラフである。信号出力部101は、電流指示信号sig11が示す電流値がシマー電流以下である場合、
図10の(e)に示すように、シマー電流に対応した予め定められた電圧及びデューティ比のPWM信号sig43を出力する。
【0076】
図10の(f)に示すグラフは、縦軸が電流であり、横軸が時間であって、発光素子LDに流れる駆動電流Idの波形を示すグラフである。
図10の(e)に示すPWM信号sig43がゲート端子に供給された第1トランジスタTR1は、PWM信号sig43に応じた電流を平滑回路40へ供給し、平滑回路40は、第1トランジスタTR1から供給される電流を平滑化する。平滑回路40から発光素子LDに供給される駆動電流Idは、第2トランジスタTR2のゲート端子に供給される加算信号sig51に応じて制御され、駆動電流Idの波形は、
図10の(f)に示す波形となり、駆動電流Idはシマー電流となる。このように、発光素子LDにシマー電流を供給するときには、第1トランジスタTR1を直流電圧で駆動するため、安定したシマー電流値の駆動電流Idが発光素子LDに供給される。
【0077】
次に、
図11は、発光素子LDに流す駆動電流Idをパルス電流とするときの各種信号を示す図である。
図11の(a)に示すグラフは、駆動電流Idをパルス電流とするときの指示電流Isの波形を示している。このように、パルス波の電流を発光素子LDに供給する場合、電流指示信号sig11は、電流がハイレベルのときの電流値を表し、パルス指示信号sig12は、パルス波の周波数を表す。この場合、制御部10は、ステップS203でYesと判断し、ステップS204でNoと判断し、ステップS208とステップS206の処理を行う。
【0078】
図11の(b)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、線形信号sig41の波形を示すグラフである。信号出力部101は、パルス指示信号sig12が示す周波数が0Hzではなく、発光素子LDに流す駆動電流Idをパルス波とする場合、シマー電流に対応した電圧の線形信号sig41を出力する。信号出力部101は、パルス波のローレベルの期間において、電流測定部102で測定した電流値が、シマー電流と一致しない場合、電流測定部102で測定した電流値がシマー電流と一致するように、線形信号sig41の電圧を調整する。なお、信号出力部101は、発光素子LDに流す駆動電流Idをパルス波とする場合、駆動電流Idをハイレベルとする期間においては、線形信号sig41の電圧を0Vとするようにしてもよい。
【0079】
図11の(c)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、パルス信号sig42の波形を示すグラフである。信号出力部101は、発光素子LDに流す駆動電流Idをパルス波とする場合、パルス指示信号sig12が示す周波数のパルス信号sig42を出力する。なお、信号出力部101は、電流測定部102で測定した電流値が、電流指示信号sig11から定まる電流値と一致しない場合、電流測定部102で測定した電流値が電流指示信号sig11から定まる電流値と一致するように、パルス信号sig42の電圧を調整する。
【0080】
図11の(d)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、加算部20から出力される加算信号sig51の波形を示すグラフである。
図11の(b)に示す線形信号sig41と、
図11の(c)に示すパルス信号sig42が出力された場合、加算部20からは、線形信号sig41をパルス信号sig42に加算した信号が、加算信号sig51として出力される。なお、加算信号sig51においてハイレベルの電圧は、電流指示信号sig11が示す電流値に対応した電圧となり、ローレベルの電圧は、シマー電流に対応した電圧となる。
【0081】
図11の(e)に示すグラフは、縦軸が電圧であり、横軸が時間であって、PWM信号sig43の波形を示すグラフである。信号出力部101は、電流指示信号sig11が示す電流値がシマー電流の電流値を超えている場合、
図11の(e)に示すように、予め定められた電圧及びデューティ比のPWM信号を、PWM信号sig43として出力する。なお、PWM信号sig43の周波数は、パルス指示信号sig12が示す周波数に対して大きい周波数であり、例えばパルス指示信号sig12が示す周波数の5倍~10倍であるのが好ましい。
【0082】
図11の(f)に示すグラフは、縦軸が電流であり、横軸が時間であって、発光素子LDに流れる駆動電流Idの波形を示すグラフである。
図11の(e)に示すPWM信号sig43がゲート端子に供給された第1トランジスタTR1は、
図11の(e)に示すPWM信号sig43に応じた電流を平滑回路40へ供給し、平滑回路40は、第1トランジスタTR1から供給される電流を平滑化する。平滑回路40から発光素子LDに供給される駆動電流Idは、第2トランジスタTR2のゲート端子に供給される加算信号sig51に応じて制御され、駆動電流Idの波形は、
図11の(f)に示す波形となる。
【0083】
ここで駆動電流Idは、加算信号sig51がハイレベルのときには、電流指示信号sig11が示す電流値となり、加算信号sig51がローレベルのときには、第2トランジスタTR2で電流が制限され、シマー電流の電流値となる。
【0084】
本実施形態においても、発光素子LDへ高電流を供給するときには、PWM方式で効率良く電流を発光素子LDへ供給し、発光素子LDへ低電流のシマー電流を供給するときには、発光素子LDへシマー電流を安定して供給することができる。また、本実施形態においては、駆動電流Idをパルス波とする場合、PWM信号のデューティ比を変更せずに第2トランジスタTR2によって電流値を制御することができるため、PWM信号のデューティ比を変更して電流値を制御する場合と比較して、演算量を減らして電流を制御することができる。
【0085】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0086】
上述した第2実施形態においては、シマー電流を超えた一定値の駆動電流Idを発光素子LDに供給する場合、PWM信号sig43のデューティ比により電流値を制御しているが、PWM信号sig43のデューティ比を変更せずに、パルス信号sig42の電圧を変更して第2トランジスタTR2のゲート端子に印可する電圧を変更し、駆動電流Idを制御してもよい。
【0087】
上述した第2実施形態においては、駆動電流Idをシマー電流とする場合、PWM信号sig43をPWM信号とせず、電圧値が一定の信号としているが、PWM信号sig43を、PWM信号とし、線形信号sig41の電圧をシマー電流に応じた電圧に制御することにより、駆動電流Idがシマー電流となるようにしてもよい。
【0088】
本発明は、発光素子を有する様々な発光装置に適用することができる。一例としては、例えば、発光素子から出力されるレーザ光を増幅する光ファイバ増幅器を備えるファイバーレーザ装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1A、1B レーザ装置
2 外部システム
10 制御部
20 加算部
30 電流センサ
40 平滑回路
101 信号出力部
102 電流測定部
103 取得部
C1、C2 コンデンサ
D ダイオード
L1、L2 コイル
LD 発光素子
OP オペアンプ
PS 電源
R1、R2 抵抗
TR1 第1トランジスタ
TR2 第2トランジスタ