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特許7393985光ファイバ母材の製造装置及び光ファイバ母材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】光ファイバ母材の製造装置及び光ファイバ母材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/018 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
C03B37/018 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020044776
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021143115
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-003153(JP,A)
【文献】特開平10-081537(JP,A)
【文献】特開2001-261362(JP,A)
【文献】特開平01-009821(JP,A)
【文献】特開平10-158025(JP,A)
【文献】特開2001-031431(JP,A)
【文献】特開2000-313625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00-37/16,8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランクロッドの中心軸を回転軸として前記ブランクロッドを回転可能に把持し、第1の可動範囲において前記ブランクロッドの中心軸に沿った移動方向に移動可能な把持部と、
前記ブランクロッドに堆積するガラス粒子を生成するための火炎を形成し、前記移動方向における長さが前記第1の可動範囲よりも短い第2の可動範囲において定位置から前記移動方向に移動可能な複数のバーナーと、
前記把持部及び前記複数のバーナーを制御する制御部と
を有し、
前記制御部は、前記把持部により前記ブランクロッドを回転させながら、前記火炎を形成した前記複数のバーナーの移動を停止させつつ前記把持部を移動させ、前記把持部の移動を停止させつつ前記火炎を形成した前記複数のバーナーを移動させる
ことを特徴とする光ファイバ母材の製造装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記把持部の移動と前記複数のバーナーの移動とを交互に繰り返す
ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバ母材の製造装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ブランクロッドの一端と当該一端の側の最外端の前記バーナーとの位置関係が所定の関係になったときに、前記把持部の移動から前記複数のバーナーの移動に切り替える
ことを特徴とする請求項2記載の光ファイバ母材の製造装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記把持部を移動させる場合及び前記複数のバーナーを移動させる場合において、前記ブランクロッドに対する前記複数のバーナーの相対速度が一定になるように前記把持部の移動速度及び前記複数のバーナーの移動速度を制御する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光ファイバ母材の製造装置。
【請求項5】
前記複数のバーナーは、前記ブランクロッドの中心軸を向くように設置されている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光ファイバ母材の製造装置。
【請求項6】
前記複数のバーナーは、前記移動方向に交差する方向にずらされて設置されている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光ファイバ母材の製造装置。
【請求項7】
前記複数のバーナーの前記移動方向における一方の最外端の前記バーナーの前記定位置と他方の最外端の前記バーナーの前記定位置との間の距離は、前記ブランクロッドの長さの半分よりも小さい
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光ファイバ母材の製造装置。
【請求項8】
前記火炎の幅は、互いに隣接する前記バーナーの前記定位置の間の距離よりも小さい
ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバ母材の製造装置。
【請求項9】
前記ブランクロッドを介して前記第2の可動範囲を含む領域に対向するように設置された排気フードを有する
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光ファイバ母材の製造装置。
【請求項10】
ブランクロッドの中心軸を回転軸として前記ブランクロッドを回転可能に把持し、第1の可動範囲において前記ブランクロッドの中心軸に沿った移動方向に移動可能な把持部と、前記ブランクロッドに堆積するガラス粒子を生成するための火炎を形成し、前記移動方向における長さが前記第1の可動範囲よりも短い第2の可動範囲において定位置から前記移動方向に移動可能な複数のバーナーとを有する光ファイバ母材の製造装置を用いた光ファイバ母材の製造方法であって、
前記把持部により前記ブランクロッドを回転させながら、前記火炎を形成した前記複数のバーナーの移動を停止させつつ前記把持部を移動させ、前記把持部の移動を停止させつつ前記火炎を形成した前記複数のバーナーを移動させて、前記ブランクロッドに前記ガラス粒子を堆積させる
ことを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ母材の製造装置及び光ファイバ母材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転する出発ロッドに対向するように配置されたバーナーアレイを出発ロッドと平行に往復運動させながらバーナーで合成されるガラス微粒子を出発ロッドの表面に堆積させるガラス微粒子堆積体の製造方法が記載されている。また、特許文献1に記載の製造方法は、堆積を行う方向に移動している第1のバーナーアレイのバーナーのうち出発ロッドの堆積開始位置にきたバーナーから順次原料の供給を開始し、出発ロッドの堆積終了位置にきたバーナーから順次原料の供給を停止する。さらに、特許文献1に記載の製造方法は、全てのバーナーへの原料供給が停止したバーナーアレイを、移動方向を反転させてバーナーへの原料の供給を開始する前の位置に戻し、ガラス微粒子の堆積を行う操作を繰り返す。
【0003】
特許文献2には、コアロッドの両端部にダミーロッドを溶着した出発部材を軸周りに回転させつつ、出発部材とバーナーを相対往復移動させて、出発部材の表面にガラス微粒子を堆積させ光ファイバ母材を製造する方法が記載されている。特許文献2に記載の製造方法は、バーナーを相対往復移動させる相対往復移動軸を出発部材と平行に2軸以上配置し、各移動軸にバーナーを出発部材に向けて装着し、出発部材端でのバーナーの折り返し移動(トラバース)毎に各移動軸のバーナーの移動速度を変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3521865号公報
【文献】特許第6245648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法では、バーナーへの原料の供給の開始及び停止が繰り返されるため、バーナーへの原料の供給が不安定である。この結果、特許文献1に記載の製造方法では、高品質のガラス微粒子堆積体を製造することは困難である。
【0006】
また、特許文献2に記載の製造方法では、折り返し移動が行われるバーナーに対して均一な排気が困難であるため、高品質の光ファイバ母材を製造することは困難である。特に大型の光ファイバ母材を高速に製造する場合、特許文献2に記載の製造方法では、均一な排気の困難性により高品質の光ファイバ母材を製造することは困難である。
【0007】
本発明の目的は、上述した課題を鑑み、高品質の光ファイバ母材を高い効率で製造することができる光ファイバ母材の製造装置及び光ファイバ母材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、ブランクロッドの中心軸を回転軸として前記ブランクロッドを回転可能に把持し、第1の可動範囲において前記ブランクロッドの中心軸に沿った移動方向に移動可能な把持部と、前記ブランクロッドに堆積するガラス粒子を生成するための火炎を形成し、前記移動方向における長さが前記第1の可動範囲よりも短い第2の可動範囲において定位置から前記移動方向に移動可能な複数のバーナーと、前記把持部及び前記複数のバーナーを制御する制御部とを有し、前記制御部は、前記把持部により前記ブランクロッドを回転させながら、前記火炎を形成した前記複数のバーナーを停止させつつ前記把持部を移動させ、前記把持部を停止させつつ前記火炎を形成した前記複数のバーナーを移動させることを特徴とする光ファイバ母材の製造装置が提供される。
【0009】
本発明の他の観点によれば、ブランクロッドの中心軸を回転軸として前記ブランクロッドを回転可能に把持し、第1の可動範囲において前記ブランクロッドの中心軸に沿った移動方向に移動可能な把持部と、前記ブランクロッドに堆積するガラス粒子を生成するための火炎を形成し、前記移動方向における長さが前記第1の可動範囲よりも短い第2の可動範囲において定位置から前記移動方向に移動可能な複数のバーナーとを有する光ファイバ母材の製造装置を用いた光ファイバ母材の製造方法であって、前記把持部により前記ブランクロッドを回転させながら、前記火炎を形成した前記複数のバーナーを停止させつつ前記把持部を移動させ、前記把持部を停止させつつ前記火炎を形成した前記複数のバーナーを移動させて、前記ブランクロッドに前記ガラス微粒子を堆積させることを特徴とする光ファイバ母材の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高品質の光ファイバ母材を高い効率で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態による光ファイバ母材の製造装置を示す概略図である。
図2図2は、本発明の一実施形態による光ファイバ母材の製造方法を示す概略図(その1)である。
図3図3は、本発明の一実施形態による光ファイバ母材の製造方法を示す概略図(その2)である。
図4図4は、本発明の一実施形態による光ファイバ母材の製造方法を示す概略図(その3)である。
図5図5は、本発明の一実施形態による光ファイバ母材の製造方法を示す概略図(その4)である。
図6図6は、第1の参考例による光ファイバ母材の製造装置を示す概略図である。
図7図7は、第2の参考例による光ファイバ母材の製造装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[一実施形態]
本発明の一実施形態による光ファイバ母材の製造装置及び光ファイバ母材の製造方法について図1乃至図7を用いて説明する。
【0013】
ここで、以下の説明において用いる方向を定義する。まず、水平方向に沿った方向をX方向とする。また、X方向と直交する方向である鉛直方向に沿った方向をZ方向とする。また、X方向及びZ方向に直交する方向に沿った方向をY方向とする。また、X方向のうち、一方の方向を+X方向、+X方向とは逆の他方の方向を-X方向とする。なお、X方向は、必ずしも水平方向に沿った方向である必要はないが、その場合もX方向を基準に同様に、X方向と直交する方向に沿った方向をZ方向、X方向及びZ方向に直交する方向に沿った方向をY方向として定めることができる。また、X方向、Y方向及びX方向は、必ずしも互いに直交する方向に限定されるものではなく、互いに交差する方向として定義することもできる。
【0014】
まず、本実施形態による光ファイバ母材の製造装置の構成について図1を用いて説明する。図1は、本実施形態による光ファイバ母材の製造装置を示す概略図である。図1(a)は、+Y方向に見た光ファイバ母材の製造装置を示す概略図である。図1(b)は、-X方向に見た光ファイバ母材の製造装置を示す概略図である。
【0015】
本実施形態による光ファイバ母材の製造装置は、例えばOVD(Outside Vapor Deposition)法により光ファイバ母材を製造する製造装置である。図1(a)及び図1(b)に示すように、本実施形態による光ファイバ母材の製造装置10は、装置ベース12と、ブランクロッド14を把持する把持部16a、16bとを有している。また、光ファイバ母材の製造装置10は、バーナー台18と、複数のバーナー20a、20b、20cと、排気フード22と、制御装置24とを有している。なお、本実施形態では、3つのバーナー20a、20b、20cが設置されたバーナー数nが3の場合を例に説明するが、バーナー数nは2以上の複数であれば特に限定されるものではない。
【0016】
装置ベース12は、把持部16a、16b及びバーナー台18を支持する支持部として機能する。装置ベース12は、後述するように所定の可動範囲において把持部16a、16bがX方向に移動できるように把持部16a、16bを支持する。また、装置ベース12は、装置ベース12の中央位置においてバーナー台18を支持する。装置ベース12は、特に限定されるものではないが、例えば、把持部16a、16b及びバーナー台18をあわせて又は個別に支持する台状、板状、枠状の構造体である。
【0017】
ブランクロッド14は、光ファイバ母材を形成するための円柱棒状の芯材である。ブランクロッド14の外周面には、後述するように複数のバーナー20a、20b、20cにより生成されたスートと呼ばれる例えば石英ガラスのガラス微粒子が堆積して、ガラス微粒子の堆積体からなる多孔質の光ファイバ母材が形成される。堆積するガラス微粒子は、特に限定されるものではなく、製造条件によって変わりうるが、例えば、粒径0.01μm~数μmのガラス粒子である。
【0018】
把持部16a、16bは、ブランクロッド14の中心軸を回転軸としてブランクロッド14を回転可能に把持する。把持部16a、16bは、X方向においてブランクロッド14を把持可能な間隔を空けて設置されている。把持部16aはブランクロッド14の一端を、把持部16bはブランクロッド14の他端を回転可能に把持する。これにより、把持部16a、16bは、ブランクロッド14の中心軸がX方向に沿うように把持するとともに、ブランクロッド14の中心軸を回転軸としてブランクロッド14を回転可能に把持する。
【0019】
また、把持部16a、16bは、制御装置24による制御に従って、ブランクロッド14の中心軸を回転軸としてブランクロッド14を回転させるように構成されている。把持部16a、16bは、制御装置24による制御に従って、ブランクロッド14を回転させる回転速度を変更することができる。
【0020】
また、把持部16a、16bは、制御装置24による制御に従って、所定の可動範囲においてブランクロッド14の中心軸に沿った移動方向であるX方向に移動可能に構成されている。具体的には、把持部16a、16bは、制御装置24による制御に従って、装置ベース12上における所定の可動範囲において+X方向への移動と-X方向への移動とを交互に繰り返すことができるように構成されている。把持部16a、16bは、制御装置24による制御に従って、+X方向及び-X方向への移動における移動速度及び移動方向を変更することができる。把持部16a、16bの移動機構は、特に限定されるものではないが、例えば、リニアモータ、ボールねじ等による移動機構である。
【0021】
把持部16a、16bが+X方向及び-X方向への移動を交互に繰り返す可動範囲のX方向における長さである可動範囲長は、それぞれL0である。把持部16a、16bの可動範囲長L0は、後述のバーナー20a、20b、20cの可動範囲長L1よりも長く設定されている。
【0022】
バーナー台18は、把持部16a、16bにより把持されたブランクロッド14に対して一方の側である下側に位置するように装置ベース12の中央位置に固定されて設置されている。バーナー台18は、後述するように所定の可動範囲において複数のバーナー20a、20b、20cが移動できるようにバーナー20a、20b、20cを支持する。
【0023】
複数のバーナー20a、20b、20cは、制御装置24による制御に従って、所定の可動範囲においてブランクロッド14の中心軸に沿った移動方向であるX方向にそれぞれの定位置から移動可能に構成されている。具体的には、複数のバーナー20a、20b、20cは、制御装置24による制御に従って、バーナー台18上における所定の可動範囲において+X方向への移動と-X方向への移動とを交互に繰り返すことができるように構成されている。
【0024】
複数のバーナー20a、20b、20cは、バーナー台18のX方向における一端から他端の間においてX方向及びY方向のそれぞれにおいて等間隔にX方向に対して斜めに並ぶように設定された複数の位置をそれぞれの定位置として設置されている。これにより、複数のバーナー20a、20b、20cは、それらの移動方向であるX方向に対して交差する方向であるY方向にずらされて設置されている。このように複数のバーナー20a、20b、20cの定位置がX方向に対して斜めに並んでいるため、各バーナー20a、20b、20cは、互いに干渉することなく、+X方向及び-X方向に移動することができるようになっている。複数のバーナー20a、20b、20cは、制御装置24による制御に従って、+X方向及び-X方向への移動における移動速度及び移動方向を変更することができる。複数のバーナー20a、20b、20cの移動機構は、特に限定されるものではないが、例えば、リニアモータ、ボールねじ等による移動機構である。
【0025】
複数のバーナー20a、20b、20cが+X方向及び-X方向への移動を交互に繰り返す可動範囲は、X方向におけるバーナー台18の一端に位置する最外端のバーナー20aの定位置と他端に位置する最外端のバーナー20cの定位置との間の範囲である。複数のバーナー20a、20b、20cの可動範囲のX方向における長さである可動範囲長L1は、把持部16a、16bの可動範囲長L0よりも短く設定されている。なお、複数のバーナー20a、20b、20cの可動範囲長L1は、X方向におけるバーナー台18の一端に位置する一方の最外端のバーナー20aの定位置と他端に位置する他方の最外端のバーナー20cの定位置との間の距離L3に一致する。
【0026】
各バーナー20a、20b、20cは、ブランクロッド14に向けて、ガラス微粒子を生成するための火炎を噴出口から形成する。各バーナー20a、20b、20cは、X方向及びY方向において、互いに隣接するバーナーの定位置の間の距離よりも小さい幅の火炎を形成することが好ましい。図1(a)に示す場合、X方向におけるバーナー台18の一端に位置する一方の最外端のバーナー20aの定位置と他端に位置する他方の最外端のバーナー20cの定位置との間の距離は、L3である。距離L3を用いると、X方向において互いに隣接するバーナーの定位置の間の距離は、L3×(1/2)と表される。したがって、この場合、X方向における火炎の幅L2は、L2<L3×(1/2)を満足することが好ましい。バーナー数がnの場合に一般化すると、火炎の幅L2は、L2<L3×{1/(n-1)}を満足することが好ましい。火炎の幅L2がこのような関係を満足することにより、各バーナー20a、20b、20cにより形成される火炎の相互の干渉を回避してガラス微粒子の堆積効率を向上することができる。Y方向においても、火炎の幅は、X方向における関係と同様の関係を満足することが好ましい。
【0027】
なお、火炎の幅は、例えば、各バーナー20a、20b、20cの火炎の噴出口において同心円状に多層に形成された火炎形成用ガスの噴出ノズルのうち、最外層の噴出ノズルの直径と同視することができる。火炎形成用ガスは、例えば、水素等の燃焼性ガス、酸素等の助燃性ガスを含んでいる。
【0028】
X方向におけるバーナー台18の一端に位置する一方の最外端のバーナー20aの定位置と他端に位置する他方の最外端のバーナー20cの定位置との間の距離L3は、ブランクロッド14の長さL4に対して、L3<L4×(1/2)を満足することが好ましい。これとは逆のL3>L4×(1/2)の場合、距離L3の距離を空けて位置するバーナー20a、20cを含む領域に対向するように排気フード22が設置されるため、ブランクロッド14の中央部は、排気フード22を含む排気機構による排気に常に曝される。このため、ブランクロッド14の中央部では、表面温度が低下してガラス微粒子の堆積状態が周囲とは異なるものとなる結果、光ファイバ母材の外径が不均一になりうる。距離L3がL3<L4×(1/2)を満足することにより、このような外径の不均一化を回避することができる。なお、距離L3は複数のバーナー20a、20b、20cの可動範囲長L1と一致するため、可動範囲長L1もL3と同様の関係を満足しうる。
【0029】
複数のバーナー20a、20b、20cは、噴出口から火炎を形成してその火炎中に原料ガスを導入するため、火炎形成用ガス及び原料ガスを含む複数種のガスが供給されるようになっている。複数のバーナー20a、20b、20cに供給される複数種のガスは、例えば、水素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、原料ガス等である。原料ガスには、四塩化ケイ素等が含まれる。キャリアガス等としてアルゴンガスが適宜用いられる。各バーナー20a、20b、20cにおいて、水素ガス及び酸素ガスの燃焼により酸水素火炎が形成されるとともに、その酸水素火炎中に原料ガスが導入される。火炎に導入された原料ガスが火炎加水分解を受けることにより、ガラス微粒子が生成されてブランクロッド14の外周面に堆積する。
【0030】
複数のバーナー20a、20b、20cは、それぞれの火炎の噴出口がブランクロッド14の中心軸を向くようにY方向における位置に応じて適宜傾斜されてバーナー台18上に設置されている。図1(a)及び図1(b)に示す場合、ブランクロッド14に対して斜め下に位置するバーナー20a、20cは、それぞれ噴出口がブランクロッド14の中心軸を向くように傾斜されて設置されている。一方、ブランクロッド14に対して直下に位置するバーナー20bは、噴出口が直上に位置するブランクロッド14の中心軸を向くように傾斜されることなく設置されている。各バーナー20a、20b、20cとブランクロッド14との間の距離は、各バーナー20a、20b、20cにより生成されたガラス微粒子がブランクロッド14に堆積可能な距離に設定されている。
【0031】
排気フード22は、ブランクロッド14を介してバーナー台18における複数のバーナー20a、20b、20cの可動範囲を含む領域に対向するようにバーナー台18の側を向いて設置されている。排気フード22には、不図示の排風機が接続されている。排気フード22は、排風機とともに、バーナー台18における複数のバーナー20a、20b、20cの可動範囲を含む領域と排気フード22との間の空間の気体を排気する排気機構として機能する。排気フード22は、複数のバーナー20a、20b、20cにより生成されたガラス微粒子のうちの余分なものを含む気体を排気して、複数のバーナー20a、20b、20cの火炎を安定化させることができる。
【0032】
制御装置24は、ブランクロッド14へガラス微粒子を堆積して光ファイバ母材を製造する間、光ファイバ母材の製造装置10の各部の管理及び制御を行う制御部として機能する情報処理装置である。制御装置24は、種々の演算、制御、判別等の処理を実行するCPU(Central Processing Unit)(図示せず)を有している。また、制御装置24は、CPUによって実行される様々な制御プログラム、CPUが参照するデータベース等を格納する記憶装置(図示せず)を有している。また、制御装置24は、CPUが処理しているデータ、入力データ等を一時的に格納するRAM(Random Access Memory)(図示せず)を有している。
【0033】
なお、制御装置24は、特に限定されるものではないが、パーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータ装置により構成することもできるし、光ファイバ母材の製造装置10に専用のコンピュータ装置により構成することもできる。また、制御装置24の各機能は、単一のコンピュータ装置により実現することもできるし、複数台のコンピュータ装置により実現することもできる。
【0034】
制御装置24は、例えば、把持部16a、16b、複数のバーナー20a、20b、20c及び排気フード22を含む排気機構と通信可能に接続されている。これにより、制御装置24は、光ファイバ母材の製造装置10における把持部16a、16b、複数のバーナー20a、20b、20c、排気フード22を含む排気機構等の各部を制御することが可能になっている。
【0035】
また、制御装置24は、把持部16a、16bを制御して、把持部16a、16bによるブランクロッド14の回転速度を制御することができる。さらに、制御装置24は、把持部16a、16bによりブランクロッド14を回転させながら、以下のように把持部16a、16b及び火炎を形成した複数のバーナー20a、20b、20cの移動を制御することができる。
【0036】
制御装置24は、把持部16a、16bの移動及び複数のバーナー20a、20b、20cの移動を制御することができる。すなわち、制御装置24は、把持部16a、16bを制御して、把持部16a、16bの移動速度及び移動方向を制御することができる。また、制御装置24は、複数のバーナー20a、20b、20cの移動速度及び移動方向を制御することができる。
【0037】
また、制御装置24は、把持部16a、16b及び複数のバーナー20a、20b、20cのうちのいずれか一方を停止させつつ他方を移動させるように両者を移動させるタイミングを制御することができる。つまり、制御装置24は、把持部16a、16bと複数のバーナー20a、20b、20cとを同時に移動させないように両者を移動させるタイミングを制御することができる。具体的には、制御装置24は、把持部16a、16bを移動させる間、複数のバーナー20a、20b、20cを停止させた状態を維持する。また、制御装置24は、複数のバーナー20a、20b、20cを移動させる間、把持部16a、16bを停止させた状態を維持する。
【0038】
このように、制御装置24は、把持部16a、16bによりブランクロッド14を回転させながら、火炎を形成した複数のバーナー20a、20b、20cを停止させつつ把持部16a、16bを移動させることができる。また、制御装置24は、把持部16a、16bによりブランクロッド14を回転させながら、把持部16a、16bを停止させつつ火炎を形成した複数のバーナー20a、20b、20cを移動させることができる。
【0039】
さらに、制御装置24は、把持部16a、16bの移動と複数のバーナー20a、20b、20cとを交互に繰り返すように両者を移動させるタイミングを制御することができる。
【0040】
また、制御装置24は、複数のバーナー20a、20b、20cを制御して、複数のバーナー20a、20b、20cに供給される各種ガスの流量等を制御しつつ、複数のバーナー20a、20b、20cによるガラス微粒子の生成を制御することができる。また、制御装置24は、排気フード22を含む排気機構による排気を制御することができる。
【0041】
こうして、本実施形態による光ファイバ母材の製造装置10が構成されている。
【0042】
次に、本実施形態による光ファイバ母材の製造装置10による光ファイバ母材の製造方法についてさらに図2乃至図5を用いて説明する。図2乃至図5は、本実施形態による光ファイバ母材の製造方法を示す概略図である。図2(a)及び図2(b)、図3(a)及び図3(b)、図4(a)及び図4(b)並びに図5(a)及び図5(b)の各図は、光ファイバ母材の製造方法における各工程において図1(a)と同様に+Y方向に見た光ファイバ母材の製造装置10を示している。
【0043】
光ファイバ母材の製造装置10は、次の初期状態から光ファイバ母材の製造を開始する。すなわち、初期状態では、図2(a)に示すように、バーナー台18において複数のバーナー20a、20b、20cがそれぞれX方向における一端、中央及び他端の定位置に停止している。また、初期状態では、把持部16aに把持されたブランクロッド14の一端と当該一端側の最外端の定位置に位置するバーナー20aとのX方向における相対的な位置関係が第1の位置関係になっている。第1の位置関係は、例えば、ブランクロッド14の一端のX方向における位置及びバーナー20aのX方向における位置が互いに一致する位置関係である。なお、第1の位置関係は、これに限定されるものではなく、両者のX方向における位置が所定の距離で近接した位置関係等の所定の関係であってもよい。
【0044】
制御装置24は、排気フード22を含む排気機構を制御して排気機構による排気を開始する。また、制御装置24は、複数のバーナー20a、20b、20cを制御して複数のバーナー20a、20b、20cにより火炎を形成してガラス微粒子の生成を開始する。さらに、制御装置24は、把持部16a、16bを制御して、把持部16a、16bによるブランクロッド14の回転を開始するとともに、把持部16a、16bの-X方向への移動を開始する。制御装置24は、光ファイバ母材の製造開始から終了までの間、各バーナー20a、20b、20cに対して火炎ガス及び原料ガスを含む各種ガスを継続的に供給する。なお、制御装置24は、把持部16a、16bによるブランクロッド14の回転速度、各バーナー20a、20b、20cに供給する各種ガスの流量等を適宜変更することができる。
【0045】
把持部16a、16bは、制御装置24による制御に従って、図2(b)に示すように、ブランクロッド14を回転させつつ、-X方向に移動していく。把持部16a、16bが-X方向に移動する間、複数のバーナー20a、20b、20cは、制御装置24による制御に従って、X方向に移動することなく停止した状態を維持して火炎を形成している。こうして、制御装置24は、把持部16a、16bによりブランクロッド14を回転させながら、火炎を形成した複数のバーナー20a、20b、20cを停止させつつ把持部16a、16bを-X方向に移動させる。このようにブランクロッド14を把持する把持部16a、16bが-X方向に移動する間、回転するブランクロッド14の外周面には、各バーナー20a、20b、20cにより生成されるガラス微粒子が堆積していく。
【0046】
把持部16a、16bが-X方向に移動していくと、図3(a)に示すように、把持部16bに把持されたブランクロッド14の他端と当該他端側の最外端の定位置に位置するバーナー20cとのX方向における相対的な位置関係が第2の位置関係になる。第2の位置関係は、例えば、ブランクロッド14の他端のX方向における位置及びバーナー20cのX方向における位置が互いに一致する位置関係である。なお、第2の位置関係は、これに限定されるものではなく、両者のX方向における位置が所定の距離で近接した位置関係等の所定の関係であってもよい。制御装置24は、両者の相対的な位置関係が第2の位置関係になると、把持部16a、16bを制御して、把持部16a、16bによるブランクロッド14の回転を維持しつつ、把持部16a、16bの-X方向への移動を停止する。
【0047】
続いて、把持部16a、16bが停止した状態において、制御装置24は、各バーナー20a、20b、20cを制御して、図3(a)及び図3(b)に示すように、バーナー台18上において各バーナー20a、20b、20cをX方向に移動させる。具体的には、バーナー20aは、制御装置24による制御に従って、その定位置からバーナー20cの定位置に向かって+X方向への移動を開始する。バーナー20bは、制御装置24による制御に従って、その定位置からバーナー20cの定位置を経由してその定位置に戻る+X方向への移動及びその後の-X方向への移動を含む往復移動を開始する。バーナー20cは、制御装置24による制御に従って、その定位置からバーナー20aの定位置に向かって-X方向への移動を開始する。各バーナー20a、20b、20cがX方向に移動する間、把持部16a、16bは、制御装置24による制御に従って、X方向に移動することなく停止した状態を維持している。
【0048】
こうして、制御装置24は、ブランクロッド14の他端と当該他端側の最外端の定位置に位置するバーナー20cとの位置関係が第2の位置関係になったときに、把持部16a、16bの移動から複数のバーナー20a、20b、20cの移動に切り替える。
【0049】
バーナー20aは、バーナー台18上において、+X方向に移動してバーナー20cの定位置で停止する。また、バーナー20bは、バーナー台18上において、+X方向に移動してバーナー20cの定位置で折り返し、さらに-X方向に移動してその元の定位置で停止する。また、バーナー20cは、-X方向に移動してバーナー20aの定位置で停止する。こうして、制御装置24は、把持部16a、16bによりブランクロッド14を回転させながら、把持部16a、16bを停止させつつ火炎を形成した複数のバーナー20a、20b、20cをX方向に移動させる。このように各バーナー20a、20b、20cがX方向に移動する間も、回転するブランクロッド14の外周面には、各バーナー20a、20b、20cにより生成されるガラス微粒子が堆積していく。
【0050】
各バーナー20a、20b、20cが停止すると、図4(a)に示すように、制御装置24は、把持部16a、16bを制御して、把持部16a、16bの+X方向への移動を開始する。
【0051】
把持部16a、16bは、制御装置24による制御に従って、ブランクロッド14を引き続き回転させつつ、+X方向に移動していく。把持部16a、16bが+X方向に移動する間、複数のバーナー20a、20b、20cは、制御装置24による制御に従って、X方向に移動することなく停止した状態を維持して火炎を形成している。こうして、制御装置24は、把持部16a、16bによりブランクロッド14を回転させながら、火炎を形成した複数のバーナー20a、20b、20cを停止させつつ把持部16a、16bを+X方向に移動させる。このようにブランクロッド14を把持する把持部16a、16bが+X方向に移動する間、回転するブランクロッド14の外周面には、各バーナー20a、20b、20cにより生成されるガラス微粒子が堆積していく。
【0052】
把持部16a、16bが+X方向に移動していくと、図4(b)に示すように、把持部16aに把持されたブランクロッド14の一端と当該一端側の最外端の定位置に位置するバーナー20cとのX方向における相対的な位置関係が第3の位置関係になる。第3の位置関係は、第1の位置関係と同様、例えば、ブランクロッド14の一端のX方向における位置及びバーナー20cのX方向における位置が互いに一致する位置関係である。なお、第3の位置関係は、これに限定されるものではなく、両者のX方向における位置が所定の距離で近接した位置関係等の所定の関係であってもよい。制御装置24は、両者の相対的な位置関係が第3の位置関係になると、把持部16a、16bを制御して、把持部16a、16bによるブランクロッド14の回転を維持しつつ、把持部16a、16bの+X方向への移動を停止する。
【0053】
続いて、把持部16a、16bが停止した状態において、制御装置24は、複数のバーナー20a、20b、20cを制御して、図4(b)及び図5(a)に示すように、バーナー台18上において各バーナー20a、20b、20cをX方向に移動させる。具体的には、バーナー20aは、制御装置24による制御に従って、その定位置からバーナー20cの定位置に向かって+X方向への移動を開始する。バーナー20bは、制御装置24による制御に従って、その定位置からバーナー20cの定位置を経由してその定位置に戻る-X方向への移動及びその後の+X方向への移動を含む往復移動を開始する。バーナー20cは、制御装置24による制御に従って、その定位置からバーナー20aの定位置に向かって+X方向への移動を開始する。各バーナー20a、20b、20cがX方向に移動する間、把持部16a、16bは、制御装置24による制御に従って、X方向に移動することなく停止した状態を維持している。
【0054】
こうして、制御装置24は、ブランクロッド14の一端と当該一端側の最外端の定位置に位置するバーナー20cとの位置関係が第3の位置関係になったときに、把持部16a、16bの移動から複数のバーナー20a、20b、20cの移動に切り替える。
【0055】
バーナー20aは、バーナー台18上において、-X方向に移動してバーナー20cの定位置で停止する。また、バーナー20bは、バーナー台18上において、-X方向に移動してバーナー20cの定位置で折り返し、+X方向に移動してその元の定位置で停止する。また、バーナー20cは、+X方向に移動してバーナー20aの定位置で停止する。こうして、制御装置24は、把持部16a、16bによりブランクロッド14を回転させながら、把持部16a、16bを停止させつつ火炎を形成した複数のバーナー20a、20b、20cをX方向に移動させる。このように各バーナー20a、20b、20cがX方向に移動する間も、回転するブランクロッド14の外周面には、各バーナー20a、20b、20cにより生成されるガラス微粒子が堆積していく。
【0056】
図5(b)に示すように、各バーナー20a、20b、20cが停止すると、制御装置24は、把持部16a、16bを制御して、図2(a)に示す場合と同様に把持部16a、16bの-X方向への移動を開始する。
【0057】
こうして、制御装置24は、光ファイバ母材の製造装置10の各部を制御して上述した図2(a)に示す工程から図5(b)に示す工程を繰り返す。これにより、ブランクロッド14の全長にわたってブランクロッド14の外周面にガラス微粒子が堆積していく。
【0058】
制御装置24は、工程を繰り返す間、ブランクロッド14に対する複数のバーナー20a、20b、20cの相対速度の大きさが一定になるように、把持部16a、16bの移動速度及び複数のバーナー20a、20b、20cの移動速度を制御することができる。すなわち、制御装置24は、把持部16a、16bを移動させる場合及び複数のバーナー20a、20b、20cを移動させる場合において、ブランクロッド14に対する複数のバーナー20a、20b、20cの相対速度の大きさを一定に維持することができる。ブランクロッド14に対する複数のバーナー20a、20b、20cの相対速度の大きさを一定に維持することにより、ブランクロッド14の長手方向における全長にわたって光ファイバ母材の外径の変動をより小さく抑制することができる。
【0059】
制御装置24は、例えば、ブランクロッド14の重量変化を検出した結果、堆積したガラス微粒子の厚さを検出した結果、製造開始からの経過時間等に基づき、光ファイバ母材の製造装置10の各部の動作を停止して光ファイバ母材の製造を終了する。
【0060】
こうして、ブランクロッド14の外周には、ガラス微粒子の堆積体からなる所定の外径を有する多孔質の光ファイバ母材が製造される。製造された多孔質の光ファイバ母材は、ブランクロッド14が引き抜かれた後、電気炉等の加熱炉での加熱により脱水及び焼結が行われて透明な光ファイバ母材となる。
【0061】
本実施形態よる光ファイバ母材の製造装置10とは異なり、把持部16a、16b及び複数のバーナー20a、20b、20cのいずれかのみが移動し、他方が固定されている構成も考えられる。しかしながら、そのような構成では、高品質の光ファイバ母材を製造することは困難である。この点について図6及び図7を用いて説明する。
【0062】
図6(a)及び図6(b)は、把持部16a、16bのみが移動し、複数のバーナー20a、20b、20cが固定されている第1の参考例による光ファイバ母材の製造装置110を示す概略図である。なお、図6(a)及び図6(b)では、上記図1(a)及び図1(b)に示す構成と対応する構成には同一の符号を付している。
【0063】
図6(a)及び図6(b)に示すように、第1の参考例では、把持部16a、16bが移動する一方、複数のバーナー20a、20b、20cが固定されている。第1の参考例では、ブランクロッド14の長手方向における全長にわたって、複数のバーナー20a、20b、20cがブランクロッド14に向けて火炎を形成するためには、X方向における把持部16a、16bの可動範囲を長くする必要がある。この結果、第1の参考例では、光ファイバ母材の製造装置110のX方向における装置構成の大型化を回避することができない。X方向における装置構成が大型化すると、ブランクロッド14を把持する部材に撓みが生じるため、ブランクロッド14の長手方向における全長にわたって均一にガラス微粒子を堆積させることが困難となる。このため、第1の参考例では、高品質の光ファイバ母材を製造することが困難であり、特にブランクロッド14の一端及び他端において光ファイバ母材に大きな耳ロスが発生しうる。
【0064】
一方、図7は、把持部16a、16bが固定され、複数のバーナー20a、20b、20cのみが移動する第2の参考例による光ファイバ母材の製造装置210を示す概略図である。なお、図7では、上記図1(a)及び図1(b)に示す構成と対応する構成には同一の符号を付している。
【0065】
図7に示すように、第2の参考例では、把持部16a、16bが固定されている一方、複数のバーナー20a、20b、20cが移動する。第2の参考例では、ブランクロッド14の長手方向における全長にわたって、複数のバーナー20a、20b、20cがブランクロッド14に向けて火炎を形成するためには、X方向における複数のバーナー20a、20b、20cの可動範囲を長くする必要がある。さらに、第2の参考例では、X方向における複数のバーナー20a、20b、20cの可動範囲を長くすることにあわせて、排気フード22をX方向において大型なものにする必要がある。しかしながら、大型な排気フード22では、均一な排気が困難であるため、ブランクロッド14の長手方向における全長にわたって均一にガラス微粒子を堆積させることが困難となる。このため、第2の参考例では、高品質の光ファイバ母材を製造することが困難である。
【0066】
これら第1及び第2の参考例に対して、本実施形態による光ファイバ母材の製造装置10は、ブランクロッド14へガラス微粒子が堆積する間、把持部16a、16b及び複数のバーナー20a、20b、20cのいずれかが移動する。すなわち、本実施形態では、把持部16a、16bと複数のバーナー20a、20b、20cとが交互に移動する。このため、本実施形態による光ファイバ母材の製造装置10では、X方向における装置構成の大型化を伴うこととなく、比較的に小型な装置構成を採用することができる。また、本実施形態による光ファイバ母材の製造装置10では、排気フード22をX方向において大型なものにする必要もない。したがって、本実施形態による光ファイバ母材の製造装置10では、長尺のブランクロッド14の場合であっても、装置構成の大型化を伴うことなく、ブランクロッド14の長手方向における全長にわたってより均一にガラス微粒子を堆積させることができる。
【0067】
さらに、本実施形態による光ファイバ母材の製造装置10では、複数のバーナー20a、20b、20cの可動範囲のX方向における長さである可動範囲長L1が、把持部16a、16bの可動範囲長L0よりも短く設定されている。このように複数のバーナー20a、20b、20cの可動範囲長L1が比較的短く設定されていることにより、複数のバーナー20a、20b、20cに対して排気フード22を含む排気機構によるより均一な排気を実現することができる。一方、把持部16a、16bの可動範囲長L0が比較的長く設定されていることにより、複数のバーナー20a、20b、20cの可動範囲長L1が比較的短く設定されている場合でも、ブランクロッド14の全長にわたってガラス微粒子を堆積させることができる。
【0068】
また、本実施形態では、光ファイバ母材の製造開始から終了までの間、各バーナー20a、20b、20cに対して火炎ガス及び原料ガスを含む各種ガスが継続的に供給される。このように、本実施形態では、各種ガスの供給の開始及び停止が繰り返されるものではないため、各バーナー20a、20b、20cに各種ガスを安定して供給することができ、供給再開後の各種ガスの供給が安定するまでの待機時間が不要である。このため、本実施形態では、高い効率で光ファイバ母材を製造することができる。
【0069】
したがって、本実施形態によれば、ブランクロッド14の長手方向における全長にわたってより均一な外径を有する高品質の光ファイバ母材を高い効率で製造することができる。
【0070】
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず、種々の変形が可能である。
【0071】
例えば、上記実施形態では、OVD法により光ファイバ母材を製造する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。光ファイバ母材の製造装置10が採用する光ファイバ母材の製造方法は、例えば、MCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法であってもよい。この場合、上記ブランクロッド14に代えてガラス微粒子を形成するための原料ガスが内部に流される管状ロッドを用い、この管状ロッドを外部から加熱するためのバーナーとしてバーナー20a、20b、20cを構成することができる。
【0072】
また、上記実施形態では、ブランクロッド14の中心軸が水平方向に沿うように把持部16a、16bによりブランクロッド14が把持される場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。光ファイバ母材の製造装置10は、例えば、ブランクロッド14の中心軸が鉛直方向に沿うように把持部16a、16bによりブランクロッド14が把持されるように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10…光ファイバ母材の製造装置
12…装置ベース
14…ブランクロッド
16a、16b…把持部
18…バーナー台
20a、20b、20c…バーナー
22…排気フード
24…制御装置
110…光ファイバ母材の製造装置
210…光ファイバ母材の製造装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7