IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社堀場製作所の特許一覧 ▶ エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-遠心沈降式の粒径分布測定装置 図1
  • 特許-遠心沈降式の粒径分布測定装置 図2
  • 特許-遠心沈降式の粒径分布測定装置 図3
  • 特許-遠心沈降式の粒径分布測定装置 図4
  • 特許-遠心沈降式の粒径分布測定装置 図5
  • 特許-遠心沈降式の粒径分布測定装置 図6
  • 特許-遠心沈降式の粒径分布測定装置 図7
  • 特許-遠心沈降式の粒径分布測定装置 図8
  • 特許-遠心沈降式の粒径分布測定装置 図9
  • 特許-遠心沈降式の粒径分布測定装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】遠心沈降式の粒径分布測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/04 20060101AFI20231130BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20231130BHJP
   G01N 21/49 20060101ALI20231130BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G01N15/04 A
G01N15/04 B
G01N21/01 B
G01N21/49 Z
G01N21/03 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020553909
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2019042242
(87)【国際公開番号】W WO2020090765
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2018205609
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】520276604
【氏名又は名称】エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】山口 哲司
(72)【発明者】
【氏名】渡部 仁
(72)【発明者】
【氏名】大澤 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 憲
(72)【発明者】
【氏名】根本 建一
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-116651(JP,U)
【文献】実開昭62-195747(JP,U)
【文献】特開平11-002546(JP,A)
【文献】特開2003-144977(JP,A)
【文献】実公昭56-053895(JP,Y2)
【文献】実開昭55-094175(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0155017(US,A1)
【文献】国際公開第2018/092573(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/04
G01N 21/01
G01N 21/49
G01N 21/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定試料及び分散媒が収容される測定セル及び参照試料が収容される参照セルを保持し、モータにより回転されるセル保持体と、
磁力又は静電容量を利用して、所定の回転位置を通過する前記セルを判別するセル判別機構とを備え
前記セル判別機構は、前記測定セルを判別するための磁石と、前記参照セルを判別するための磁石と、磁気検出素子とを有し、
当該複数の磁石は、前記セル保持体又は前記セル保持体に接続された回転軸に設けられている遠心沈降式の粒径分布測定装置。
【請求項2】
前記複数の磁石は、前記セル保持体において同心円状に設けられている請求項1に記載の遠心沈降式の粒径分布測定装置。
【請求項3】
前記測定セルを判別するための磁石と、前記参照セルを判別するための磁石とで周方向における配置パターンが互いに異なる、請求項2記載の遠心沈降式の粒径分布測定装置。
【請求項4】
前記回転軸は、フレキシブルシャフトである、請求項1乃至3の何れか一項に記載の遠心沈降式の粒径分布測定装置。
【請求項5】
前記セルに光を照射する光照射部と、
前記セルを透過した光を検出する光検出部と、
前記光検出部からの光強度信号を取得して、粒径分布を算出する粒径分布演算部とをさらに備える、請求項1乃至4の何れか一項に記載の遠心沈降式の粒径分布測定装置。
【請求項6】
前記モータにエンコーダが設けられており、
前記セル判別機構は、前記エンコーダの出力信号と、磁力又は静電容量による変化とに基づいて前記セルを判別するセル判別部を有する、請求項1~5の何れか一項に記載の遠心沈降式の粒径分布測定装置。
【請求項7】
前記セル判別部及び前記粒径分布演算部は、前記エンコーダの出力信号と同期して信号処理を行うものである、請求項5を引用する請求項6記載の遠心沈降式の粒径分布測定装置。
【請求項8】
前記セル判別部は、前記エンコーダの出力信号及び磁力又は静電容量による変化を示す検出信号を取得して前記セルを判別し、その判別信号を前記粒径分布演算部に送信するものであり、
前記粒径分布演算部は、前記判別信号に基づいて、前記光検出部の光強度信号を前記測定セルを透過した光と前記参照セルを透過した光とに区別して演算処理を行う、請求項7記載の遠心沈降式の粒径分布測定装置。
【請求項9】
前記セル保持体と前記測定セル又は前記参照セルとの間に介在して設けられ、前記測定セル又は前記参照セルに加わる遠心力を分散させて前記測定セル又は前記参照セルの破損を防止するセル保護部材をさらに備えている、請求項1乃至8の何れか一項に記載の遠心沈降式の粒径分布測定装置。
【請求項10】
前記セル保持体による前記測定セルの回転領域と対向する位置に設けられた検出機器と、
前記測定セルに加わる遠心力を分散させて前記測定セルの破損を防止するセル保護部材とを備え、
前記セル保護部材に前記検出機器に対応して透過部が形成されている、請求項1乃至8の何れか一項に記載の遠心沈降式の粒径分布測定装置。
【請求項11】
透光性樹脂製の前記測定セルが取り付けられ、前記モータにより回転される金属製の前記セル保持体と、
前記セル保持体による前記測定セルの回転領域を挟んで設けられ、前記検出機器を構成する光源及び光検出器とを備え、
前記セル保護部材は、前記光源から前記光検出器に対して光が透過する光透過部が形成されている、請求項10に記載の遠心沈降式の粒径分布測定装置。
【請求項12】
前記セル保持体を回転可能に収容する収容空間を有しており、
前記収容空間を形成する上壁において、前記セル保持体の回転中心軸上に吸気口が形成されている、請求項1乃至11の何れか一項に記載の遠心沈降式の粒径分布測定装置。
【請求項13】
前記吸気口にはフィルタが設けられている、請求項12記載の遠心沈降式の粒径分布測定装置。
【請求項14】
前記セル判別機構は、凹部又は凸部と距離測定素子とを有し、
前記凹部又は凸部は、前記セル保持体又は前記セル保持体に接続された回転軸に設けられている、請求項1記載の遠心沈降式の粒径分布測定装置。
【請求項15】
測定試料及び分散媒が収容される測定セル及び参照試料が収容される参照セルを保持し、モータにより回転されるセル保持体と、
磁力又は静電容量を利用して、所定の回転位置を通過する前記セルを判別するセル判別機構と、を備え、
前記モータにエンコーダが設けられており、
前記セル判別機構は、前記エンコーダの出力信号と、磁力又は静電容量による変化とに基づいて前記セルを判別するセル判別部を有する遠心沈降式の粒径分布測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心沈降式の粒径分布測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の遠心沈降式の粒径分布測定装置としては、非特許文献1に示すように、測定試料及び分散媒を収容した測定セルを回転させ、分散媒中で測定試料中の粒子を沈降させて、測定試料の粒径分布を測定するものがある。
【0003】
ここで、測定セルはモータにより回転される回転ディスクに装着されており、当該回転ディスクを挟んで測定光学系である光源及び光検出器が設けられている。また、この回転ディスクには、重量バランスのために分散媒のみを収容した参照セルが設けられている。また、参照セルは、当該参照セルを透過した参照光量を基準として、測定セルを透過した測定光量を補正することにより、光源の光量変化の影響を排除するためのものでもある。
【0004】
上記構成により測定光学系の光検出器は、測定セルを透過した光と参照セルを透過した光とを交互に検出し、当該光検出器からの光強度信号は交互にCPUに入力される。このため、それらの信号を区別するための判別光学系である光源及び光検出器が設けられている。これら判別用光学系である光源及び光検出器も、測定光学系と同様に、回転ディスクを挟んで設けられている。
【0005】
しかしながら、判別光学系の光源からの光が迷光となり、測定光学系の光検出器により検出される恐れがある。測定光学系の光検出器が判別光学系の光源からの迷光を検出した場合には、粒径分布測定の測定精度が下がってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】東川 喜昭、「自然/遠心沈降式粒度分布測定装置CAPA-700」、Readout、株式会社堀場製作所、1992年1月、No.4、p.23-29
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、セルを判別するための判別光学系を不要にして判別光学系により生じる迷光を無くし、測定光学系による測定精度を向上させることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る遠心沈降式の粒径分布測定装置は、測定試料及び分散媒が収容される測定セル及び参照試料が収容される参照セルを保持し、モータにより回転されるセル保持体と、磁力又は静電容量を利用して、所定の回転位置を通過する前記セルを判別するセル判別機構とを備えることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、磁力又は静電容量を利用したセル判別機構により所定の回転位置を通過するセルを判別するので、従来の判別光学系が不要となる。その結果、判別光学系により生じる迷光を無くし、測定光学系による測定精度を向上させることができる。
【0010】
前記セル判別機構としては、磁石と磁気検出素子とを有するものが考えられる。この場合、磁石の具体的な配置態様としては、前記磁石は、前記セル保持体又は前記セル保持体に接続された回転軸に設けられていることが望ましい。
この構成であれば、回転系であるセル保持体又は回転軸に磁石を設けているので、磁気検出素子を固定側に設けることができ、装置構成を簡単にすることができる。
【0011】
前記磁石は、前記セル保持体において同心円状に複数設けられており、前記測定セルを判別するための磁石と、前記参照セルを判別するための磁石とで周方向における配置パターンが互いに異なることが望ましい。
この構成であれば、回転中において磁気検出素子による磁気検出タイミングによりセルを判別することができる。
【0012】
セル保持体の振動を吸収して安定して回転させるためには、前記回転軸は、フレキシブルシャフトであることが望ましい。
【0013】
遠心沈降式の粒径分布測定装置は、前記セルに光を照射する光照射部と、前記セルを透過した光を検出する光検出部と、前記光検出部からの光強度信号を取得して、粒径分布を算出する粒径分布演算部とをさらに備えている。
【0014】
セル保持体の回転速度に応じて磁力又は静電容量による変化の検出タイミング(例えば磁気検出素子による磁気検出タイミング)が異なることになる。このため、前記モータにエンコーダが設けられている場合には、前記セル判別機構は、前記エンコーダの出力信号と、磁力又は静電容量による変化とに基づいて前記セルを判別するセル判別部を有することが望ましい。
この構成であれば、エンコーダによりモータ(セル保持体)の回転速度がわかり、当該回転速度に応じた磁力又は静電容量による変化の検出タイミングによりセルを判別することができる。具体的には、回転速度に応じた磁気検出素子による磁気検出タイミングによりセルを判別することができる。
【0015】
前記セル判別部及び前記粒径分布演算部は、前記エンコーダの出力信号と同期して信号処理を行うものであることが望ましい。
【0016】
具体的には、前記セル判別部は、前記エンコーダの出力信号及び磁力又は静電容量による変化を示す検出信号を取得して前記セルを判別し、その判別信号を前記粒径分布演算部に送信するものであり、前記粒径分布演算部は、前記判別信号に基づいて、前記光検出部の光強度信号を前記測定セルを透過した光と前記参照セルを透過した光とに区別して演算処理を行うことが望ましい。
【0017】
回転により測定セル又は参照セルが破損しないようにするためには、前記セル保持体と前記測定セル又は前記参照セルとの間に介在して設けられ、前記測定セル又は前記参照セルに加わる遠心力を分散させて前記測定セル又は前記参照セルの破損を防止するセル保護部材をさらに備えていることが望ましい。
【0018】
また、遠心沈降式の粒径分布測定装置は、前記セル保持体による前記測定セルの回転領域と対向する位置に設けられた検出機器と、前記測定セルに加わる遠心力を分散させて前記測定セルの破損を防止するセル保護部材とを備え、前記セル保護部材に前記検出機器に対応して透過部が形成されていることが望ましい。
【0019】
具体的に遠心沈降式の粒径分布測定装置は、透光性樹脂製の前記測定セルが取り付けられ、前記モータにより回転される金属製の前記セル保持体と、前記セル保持体による前記測定セルの回転領域を挟んで設けられ、前記検出機器を構成する光源及び光検出器とを備え、前記セル保護部材は、前記光源から前記光検出器に対して光が透過する光透過部が形成されていることが望ましい。
【0020】
遠心沈降式の粒径分布測定装置は、前記セル保持体を回転可能に収容する収容空間を有している。この収容空間においてセル保持体が回転すると、セル保持体の回転中心部が負圧となる。この特性を生かして、前記収容空間を形成する上壁において、前記セル保持体の回転中心軸上に吸気口が形成されていることが望ましい。ここで、前記吸気口にはフィルタが設けられていることが望ましい。
【0021】
その他、前記セル判別機構としては、凹部又は凸部と距離測定素子とを有するものが考えられる。この場合、磁石の具体的な配置態様としては、前記凹部又は凸部は、前記セル保持体又は前記セル保持体に接続された回転軸に設けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上に述べた本発明によれば、セルを判別するための判別光学系を不要にして判別光学系により生じる迷光を無くし、測定光学系による測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態の遠心沈降式の粒径分布測定装置の構成を模式的に示す図である。
図2】同実施形態のセル保持体における磁石の配置パターンを示す模式図である。
図3】同実施形態のエンコーダ、磁気検出素子及び光検出器の信号を示す模式図である。
図4】セル判別機構の変形例を示す模式図である。
図5】変形実施形態の遠心沈降式の粒径分布測定装置の構成を模式的に示す図である。
図6】変形実施形態の遠心沈降式の粒径分布測定装置の構成を模式的に示す図である。
図7】変形実施形態の遠心沈降式の粒径分布測定装置の構成を模式的に示す図である。
図8】変形実施形態の遠心沈降式の粒径分布測定装置の構成を模式的に示す図である。
図9】変形実施形態のセル保持体における磁石の配置パターンを示す模式図である。
図10】変形実施形態のエンコーダ、磁気検出素子及び光検出器の信号を示す模式図である。
【符号の説明】
【0024】
100・・・遠心沈降式の粒径分布測定装置
2 ・・・測定セル
3 ・・・セル回転機構
31 ・・・セル保持体
34 ・・・セル保護部材
4 ・・・光照射部
5 ・・・光検出部
6 ・・・参照セル
7 ・・・セル判別機構
71 ・・・磁石
72 ・・・磁気検出素子
12 ・・・セル判別部
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る遠心沈降式の粒径分布測定装置について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
本実施形態の遠心沈降式の粒径分布測定装置100は、図1に示すように、測定試料及び分散媒(例えば水)からなる試料懸濁液を収容する測定セル2と、当該測定セル2を回転させるセル回転機構3と、当該セル回転機構3による測定セル2の回転通過領域を挟んで設けられた光照射部4及び光検出部5とを備えている。
【0027】
測定セル2は、例えば樹脂製の透光性を有する材料から形成された角形セルである。本実施形態では、参照セル6も設けられており、当該参照セル6には分散媒である水が収容されている。
【0028】
セル回転機構3は、測定セル2及び参照セル6が着脱可能に取り付けられるセル保持体31と、当該セル保持体31を回転させる回転部32とを有している。
【0029】
セル保持体31は、例えば円盤形状をなすものであり、その回転中心を挟むように測定セル2及び参照セル6が取り付けられる。なお、セル保持体31は、金属製のものである。
【0030】
また、セル保持体31の上面には、測定セル2及び参照セル6が回転中に不意に外れないようにするためのカバー体33が設けられている(図1参照)。
【0031】
さらに、セル保持体31には、保持体31及びセル2、6の間に介在して設けられ、セル2、6に加わる遠心力を受けて分散させてセル2、6の破損を防止するセル保護部材34が設けられている。このセル保護部材34は、例えば測定セル2と同じ樹脂製である。セル保護部材34はセル2、6とともにセル保持体31から取り外すことができる。
【0032】
このセル保持体31は、粒径分布測定装置100の筐体の内部に形成された収容空間Sに収容されている。そして、収容空間Sには循環流路Rが接続されている。この循環流路Rの一端は、収容空間Sの上壁に接続されており、循環流路Rの他端は、収容空間Sの側壁に接続されている。このように接続された循環流路Rは、収容空間Sに接続された一端が負圧となり、径方向外側に接続された他端が正圧となる。その結果、循環流路Rにおいては他端から一端に向かって気体が流れ、一端の開口が吸気口R1となる。ここで、吸気口R1は、収容空間Sの上壁においてセル保持体31の回転中心軸上に位置している。
【0033】
回転部32は、図1に示すように、セル保持体31の下面における中心部に接続された回転軸321と、当該回転軸321を回転させるモータ322とを有している。回転軸321は、可撓自在のものであり、セル保持体31の振動を吸収するとともに高速回転が可能なフレキシブルシャフトにより構成されている。また、モータ322にはエンコーダ323が設けられている。そして、エンコーダ323の出力信号を取得した制御部10が、モータ322の回転数を制御する。なお、回転軸321は、セル保持体31に一体形成されたものであってもよいし、別体に形成されたものであっても良い。また、回転軸321は、1つの部材から構成されるものであってもよいし、複数の部材を接続して構成されたものであっても良い。
【0034】
光照射部4は、図1に示すように、セル2、6の回転通過領域(セル保持体31)の下方に設けられている。本実施形態の光照射部4は、例えばLEDなどの光源41と、当該光源41から出射された光を集光する集光レンズ42とを有している。光照射部4により射出された光は、セル保持体31に形成された光通過孔31h及びセル保護部材34に形成された光通過孔34h1を通って測定セル2又は参照セル6に照射される。
【0035】
光検出部5は、図1に示すように、セル2、6の回転通過領域(セル保持体31)の上方に設けられている。本実施形態の光検出部5は、光検出器51と、当該光検出器51により検出される光を集光する集光レンズ52とを有している。光検出部5により検出される光は、セル2、6を透過してセル保護部材34に形成された光通過孔34h2及びカバー体33に形成された光通過孔33hを通り、集光レンズ52により集光される。
【0036】
光検出器51により得られた光強度信号は、粒径分布演算部11により取得されて、粒径分布演算部11によって粒径分布データが算出される。なお、粒径分布演算部11は、光強度信号を吸光度に換算し、その時間変化から粒径分布データを算出する。当該粒径分布データは、図示しない表示部によってディスプレイ上に表示される。
【0037】
しかして本実施形態の遠心沈降式の粒径分布測定装置100は、図1に示すように、所定の回転位置を通過するセルを判別するための磁石71及び磁気検出素子72を有するセル判別機構7を備えている。所定の回転位置は、光源41及び光検出器51の間の測定空間である。
【0038】
磁石71は、セル保持体31に設けられている。具体的に磁石71は、図2に示すように、セル保持体31において同心円状に複数設けられている。複数の磁石71には、測定セル2を判別するための磁石71aと、参照セル6を判別するための磁石71bとがある。
【0039】
そして、測定セル2を判別するための磁石71aと参照セル6を判別するための磁石71bとは周方向における配置パターンが互いに異なる。本実施形態では、いずれのセル2、6を判別するための磁石71も2つであり、それらの周方向における間隔が互いに異なるように構成されている。図2では、測定セル2を判別するための2つの磁石71aは短い間隔であり、参照セル6を判別するための2つの磁石71bは長い間隔としてある。なお、これらは逆であっても良い。その他の具体的配置は、図2のとおりである。
【0040】
磁気検出素子72は、固定側において磁石71と対向して設けられ、ホール効果を用いて磁束密度を測定するホールセンサである。この磁気検出素子72は、磁石71の回転軌道における一箇所に設けられている。
【0041】
そして、磁気検出素子72の検出信号は、セル判別部12に入力される。セル判別部12は、磁気検出素子72の検出信号を取得してセル2、6を判別し、その判別信号を粒径分布演算部11に送信する。粒径分布演算部11は、その判別信号に基づいて、光検出器51の光強度信号を測定セル2を透過した光と参照セル6を透過した光とに区別して演算処理を行う。このようにして、セル判別部12及び粒径分布演算部11は、エンコーダ323の出力信号と同期して信号処理を行う。
【0042】
ここで、セル判別部12は、図3に示すように、セル回転機構3のモータ322に設けられたエンコーダ323の出力信号を取得して、当該エンコーダ323の出力信号と、磁気検出素子72の検出信号とに基づいて、セル2、6を判別する。なお、図3では、エンコーダの出力信号は、1周で36パルス出力されるものであり、測定セル判別用の回転後方の磁石71a(磁石「2」)と、参照セル判別用の回転後方の磁石71b(磁石「4」)との検出間隔が、回転速度に応じて、1.667msec~60msecの間で変化することを示している。
【0043】
具体的にセル判別部12は、磁石71が検出される検出間隔においてエンコーダ323の出力信号(パルス信号)の個数を示すデータを記憶している。例えば、測定セル判別用の2つの磁石71aの検出間隔において4個の出力信号(パルス信号)が検出されることを記憶している。また、参照セル判別用の2つの磁石71bの検出間隔において7個の出力信号(パルス信号)が検出されることを記憶している。その他、測定セル判別用の回転後方の磁石71aと、参照セル判別用の回転前方の磁石71bとの検出間隔において11個の出力信号(パルス信号)が検出されることを記憶している。また、参照セル判別用の回転後方の磁石71bと、測定セル判別用の回転前方の磁石71aとの検出間隔において14個の出力信号(パルス信号)が検出されることを記憶している。
【0044】
そして、セル判別部12は、直前の磁気検出信号からのパルス信号の個数をカウントして次の磁気検出信号が検出された際のパルス信号のカウント数に基づいて、測定セル判別用の磁石71aを検出したか、参照セル判別用の磁石71bを検出したかを判断する。これにより、セル判別部12は、所定の回転位置を通過するセル2、6を判別する。
【0045】
<本実施形態の効果>
本実施形態の遠心沈降式の粒径分布測定装置100によれば、磁石71及び磁気検出素子72を有するセル判別機構7により所定の回転位置を通過するセル2、6を判別するので、従来の判別光学系が不要となる。その結果、判別光学系により生じる迷光を無くし、粒径分布測定の測定精度を向上させることができる。
【0046】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0047】
例えば、セル判別部12は、エンコーダ323の出力信号からモータ322(セル保持体31)の回転速度を検出し、当該回転速度に応じて各磁石71の検出間隔時間を求めて、各磁石71の検出間隔により測定セル判別用の磁石71aを検出したか、参照セル判別用の磁石71bを検出したかを判断しても良い。
【0048】
前記実施形態では、セル判別部12がエンコーダ323の出力信号と磁気検出素子72の検出信号との両方を用いてセル判別を行うものであったが、エンコーダ323の出力信号を用いることなく、磁気検出素子72の検出信号のみを用いてセル判別を行うものであっても良い。
【0049】
また、前記実施形態では、各セル2、6を判別するための磁気検出素子72が共通のものであったが、測定セル2を判別するための磁気検出素子72と参照セル6を判別するための磁気検出素子72とをそれぞれ設けても良い。この場合、測定セル2を判別するための磁石71aと、参照セル6を判別するための磁石71bとを径方向において異なる位置に設けて、相互の誤検出を防ぐようにすることが考えられる。
【0050】
さらに、磁石71を設ける位置は、セル保持体31の下面に限られず、側面であっても良いし、上面であっても良い。磁石71をセル保持体31の側面に設けた場合には、磁気検出素子72は、その側方、具体的には、セル保持体31の収容空間の側壁に設けることが考えられる。磁石71をセル保持体31の上面に設けた場合には、磁気検出素子72は、その上方、具体的には、セル保持体31の収容空間の上壁に設けることが考えられる。
【0051】
セル判別機構7は、前記実施形態の他に、磁力又は静電容量を利用する構成であればよく、例えば、図4に示す物が考えられる。図4(a)は、前記実施形態の磁石71に磁性体73を組み合わせて磁束密度を大きくする構成である。図4(b)は、セル保持体31又は回転軸321などに凸部74を設けて、当該凸部74との距離を測定する例えば近接スイッチ等の距離測定素子75によりセル2、6を判別する構成である。図4(c)は、セル保持体31又は回転軸321などに凹部76を設けて、当該凹部76との距離を測定する例えば近接スイッチ等の距離測定素子75によりセル2、6を判別する構成である。なお、近接スイッチとしては、高周波発振型又は磁気型等の磁界を利用するものであってもよいし、静電容量型等の電界を利用するものであっても良い。
【0052】
また、図5図8に示すように、収容空間Sの上壁が収容容器Cの開閉蓋により構成されており、当該開閉蓋に試料導入部8が形成されている場合には、当該試料導入部8を用いて循環流路Rを構成しても良い。この場合、循環流路Rの吸気口R1が試料導入部8に形成されることになる。なお、試料導入部8は、セル保持体の回転中心部に対応して設けられている。図5は、試料導入部8が貫通孔より構成された例であり、図6図8は、試料導入部8が試料導入針81を有する構成である。また、図8には、吸気口R1にフィルタFが設けられた例である。
【0053】
前記実施形態では、測定セルに光を照射してその透過光を検出するものであったが、測定セルに同位体試料や自発光試料を収容する場合には、光照射部を設けない構成としても良い。
【0054】
また前記実施形態では、セル判別機構7は磁石71aと磁石71bを2つずつ備えていたがこれに限らない。他の実施形態では、磁石71a又は磁石71bの一方を2つ備え、他方を1つのみ備え、それらの周方向における間隔が互いに異なるように構成されてもよい。具体的には図9に示すように、測定セル2を判別するための磁石71aを2つ備え、参照セル6を判別するための磁石71bを1つ備えても良い。なお、これらは逆であっても良い。その他の具体的配置は図9のとおりである。
【0055】
この場合エンコーダの出力信号は、図10に示すように、1周で9パルス出力されるように構成されてよい。そしてセル判別部12は、測定セル判別用の2つの磁石71aの検出間隔において1個の出力信号(パルス信号)が検出されることを記憶し、測定セル判別用の回転後方の磁石71a(磁石「2」)と、参照セル判別用の磁石71b(磁石「3」)との検出間隔において4個の出力信号(パルス信号)が検出されることを記憶し、参照セル判別用の磁石71bと、測定セル判別用の回転前方の磁石71a(磁石「1」)との検出間隔において3個の出力信号(パルス信号)が検出されることを記憶するように構成されてよい。
【0056】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、セルを判別するための判別光学系を不要にして判別光学系により生じる迷光を無くし、測定光学系による測定精度を向上させることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10