(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】セルロース繊維分散樹脂複合材、成形体、及び複合部材
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20231130BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20231130BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20231130BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K7/02
C08L23/00
C08J5/00 CES
C08J5/00 CET
C08J5/00 CFD
(21)【出願番号】P 2020559969
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2019047436
(87)【国際公開番号】W WO2020116517
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2018228578
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】原 英和
(72)【発明者】
【氏名】廣石 治郎
(72)【発明者】
【氏名】金 宰慶
(72)【発明者】
【氏名】太附 雅巳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】池内 正人
(72)【発明者】
【氏名】坂戸 二郎
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-155248(JP,A)
【文献】特表2013-540913(JP,A)
【文献】DUC, A. L. et al.,Polypropylene/natural fibres composites: Analysis of fibre dimensions after compounding and observations of fibre rupture by rheo-optics,Composites: Part A,2011年,vol.42,pp.1727-1737
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C08J 5/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂中にセルロース繊維を分散してなるセルロース繊維分散樹脂複合材であって、
前記セルロース繊維の含有量が1質量%以上70質量%未満であり、
下記測定条件により測定される前記セルロース繊維の長さ加重平均繊維長をLL、数平均繊維長をLNとしたとき、LLとLNが下記[式1
-3]
及び[式3-2]を満たす、セルロース繊維分散樹脂複合材。
<測定条件>
前記セルロース繊維分散樹脂複合材を、該複合材中の樹脂を可溶な溶媒中に浸漬して得られる溶解残さについて、ISO 16065 2001で規定されたパルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法によりLLとLNを求める。
[式1
-3]
1.15<(LL/LN)<
1.4
[式3-2] (LL/LN)<(LL×0.0005+1.00)
【請求項2】
前記LLとLNが下記
[式3-3]を満たす、請求項1に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
[式3-3] (LL/LN)<(LL×0.0005+0.95)
【請求項3】
下記測定条件で測定される前記セルロース繊維の重さ加重平均繊維長をLWとしたとき、LWと前記LNが下記[式2]を満たす、請求項1又は2に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
<測定条件>
前記セルロース繊維分散樹脂複合材を、該複合材中の樹脂を可溶な溶媒中に浸漬して得られる溶解残さについて、ISO 16065 2001で規定されたパルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法によりLWを求める。
[式2] 1.1<(LW/LN)<3.0
【請求項4】
前記セルロース繊維の長さ加重平均繊維長が0.3mm以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
【請求項5】
前記セルロース繊維分散樹脂複合材中の前記セルロース繊維の含有量が下記測定方法により決定されるものであり、前記セルロース繊維分散樹脂複合材中の前記セルロース繊維の含有量が5質量%以上50質量%未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
<測定方法>
セルロース繊維分散樹脂複合材の試料を、窒素雰囲気下において+10℃/分の昇温速度で熱重量分析(TGA)に付し、下記[式I]によりセルロース繊維の含有量を算出する。
[式I] (セルロース繊維の含有量[質量%])=(200~380℃の間における試料の質量減少量[mg])×100/(熱重量分析に付す前の試料の質量[mg])
【請求項6】
前記樹脂が、ポリオレフィン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート重合体樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、及びポリ乳酸樹脂の1種又は2種以上を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
【請求項7】
前記樹脂がポリオレフィン樹脂を含み、前記LL、LN及びLWの測定条件において複合材中の樹脂を可溶な溶媒中に浸漬して得られる溶解残さが、熱キシレン溶解残さである、請求項1~6のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
【請求項8】
前記セルロース繊維分散樹脂複合材が前記樹脂中にアルミニウムを分散してなる、請求項1~7のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
【請求項9】
前記アルミニウムの少なくとも一部が折曲がり構造を有する、請求項8に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
【請求項10】
前記セルロース繊維分散樹脂複合材は、アルミニウム箔と熱融着した場合に該アルミニウム箔との間で1.0N/10mm以上の剥離強度を示す、請求項8又は9に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
【請求項11】
前記セルロース繊維分散樹脂複合材が、有機酸の金属塩、有機酸、シリコーンのいずれか1種以上の化合物を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
【請求項12】
前記セルロース繊維分散樹脂複合材が、前記樹脂中に前記樹脂とは異なる樹脂からなる樹脂粒を分散してなる、請求項1~11のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
【請求項13】
前記樹脂の少なくとも一部及び/又は前記セルロース繊維の少なくとも一部がリサイクル材に由来する、請求項1~12のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材を用いた成形体。
【請求項15】
前記成形体が管状体であり、又は管状体を分割してなる多分割体である、請求項14に記載の成形体。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の成形体と他の材料とを組合せてなる複合部材。
【請求項17】
金属と接合して複合体を形成するために用いる、請求項1~13のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維分散樹脂複合材、成形体、及び複合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製品の機械的物性を高めるために、樹脂にガラス繊維、炭素繊維、セルロース繊維等の強化繊維を配合した繊維強化樹脂が知られている。
ガラス繊維を強化繊維として用いた場合、不燃性の無機物であるガラス繊維は、サーマルリサイクル等により燃焼させても灰分として多く残留し、リサイクルにおけるエネルギー回収率に課題がある。また、ガラス繊維の比重は樹脂より大きく、繊維強化樹脂の重量が増大する問題もある。さらに、ガラス繊維は樹脂より熱容量が大きく、したがって成形後の冷却固化に時間を要し、樹脂製品の製造効率の向上にも制約がある。
また、強化繊維としてガラス繊維に代えて炭素繊維を用いることにより、上記の問題は解決できる。しかし、炭素繊維は高価であり、これを強化繊維として用いると樹脂製品のコストが上昇する問題がある。
【0003】
他方、セルロース繊維は軽量であり、サーマルリサイクル等における燃焼残渣も少なく、また比較的安価であるため、軽量化、リサイクル性、コスト面等において有利である。セルロース繊維を用いた繊維強化樹脂に関する技術が報告されている。例えば、特許文献1には、解繊処理を施した乾燥状態の古紙パルプ繊維にワックスを付着させた複合材料をマトリックス樹脂と混練することにより複合材を得ること、また、解繊された古紙パルプ繊維の長さ加重平均繊維長が0.1~5.0mmであることが記載されている。
また、特許文献2には、針葉樹漂白化学パルプを50質量%以上含有する紙の粉砕物及び樹脂を含有し、メルトマスフローレイトが2.0~7.0g/10minである紙含有樹脂組成物が開示されている。特許文献2には、上記パルプの平均繊維長を0.3~2mmとすることが記載されている。
また、特許文献3には、解砕された古紙とポリオレフィンエラストマーとを混合して得られた古紙ペレットに熱可塑性樹脂ペレットを特定量混合して加熱混練し、造粒してペレットを得ること、また、上記古紙が、平均太さ0.01~0.1mm、平均長さ0.1~2.5mmに解砕されていることが記載されている。
さらに特許文献4には、熱可塑性樹脂とセルロース繊維と水溶性樹脂と変性オレフィン樹脂とを各特定量含有する樹脂組成物が開示され、アスペクト比が5以上のセルロース繊維を用いることも記載されている。
また、特許文献5には、フィルムラミネート紙の粉砕物のペレットに水を吸水させて得た紙ペレットと、ポリプロピレン樹脂、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂とを混合し、二軸押出機へ供給して混練し、紙配合熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを得て、このペレットを射出成形したことが記載されている。
また、特許文献6には、ポリオレフィン樹脂と、粉末状セルロースと、水とを二軸押出機により混錬することにより、セルロース凝集体の面積を微細化できたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/070616号
【文献】特開2007-45863
【文献】特許第3007880号公報
【文献】特開2012-236906号公報
【文献】特開2007-260941号公報
【文献】国際公開第2018/180469号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セルロース繊維強化樹脂は、疎水性の樹脂と親水性のセルロース繊維との界面の親和性が十分でなく、セルロース繊維による強化作用を十分に享受できない場合がある。この問題を解決するために、酸変性樹脂等を配合して樹脂とセルロース繊維との親和性を高めることが知られている。
他方、樹脂の強化作用に影響するセルロース繊維の特徴については、上記特許文献1~4に記載されるように、使用するセルロース繊維のサイズないし形状が検討されている。また、特許文献5、6に記載されるように、水を添加した二軸押出機による混錬によるセルロース繊維の分散状態やセルロースの凝集体について検討されている。
しかし、上記の各特許文献においてセルロース繊維のサイズないし形状は、樹脂と混合する前の状態について言及しているに過ぎず、あるいはセルロース繊維の分散状態やセルロースの凝集体ついて言及するものであり、樹脂中に混練分散した後におけるセルロース繊維のサイズないし形状、さらには繊維長さの分布の状態を正確には捉えていない。
【0006】
本発明は、樹脂中にセルロース繊維を分散してなり、引張強度、曲げ強度等の機械的物性に優れた複合材、この複合材を用いた成形体、及びこの成形体を用いた複合部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、セルロース繊維を分散してなる樹脂複合材の機械的物性の向上と、セルロース繊維の繊維長との関係について検討を進めた。具体的には、樹脂と混合する前におけるセルロース繊維と、樹脂と混合して混練された状態のセルロース繊維との間には、繊維長さの分布に違いがあること、また、この繊維長さの分布が混練条件により変化し、混練後の繊維長さの分布の状態が、得られる複合材の機械的物性に影響するとの予測のもとで検討を進めた。
すなわち本発明者らは、樹脂とセルロース繊維を混練して得られる複合材を、当該樹脂の可溶性溶媒に浸漬して樹脂を溶解し、セルロース繊維を取り出し、その繊維長分布について詳しく解析したところ、混練前と混練後において繊維長の分布が異なり、複合材中におけるセルロース繊維の繊維長分布を特定の分布状態へと調整することにより、得られる複合材の機械的物性を高めることができることを見い出すに至った。
本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
【0008】
本発明の上記課題は下記の手段により解決される。
〔1〕
樹脂中にセルロース繊維を分散してなるセルロース繊維分散樹脂複合材であって、
前記セルロース繊維の含有量が1質量%以上70質量%未満であり、
下記測定条件により測定される前記セルロース繊維の長さ加重平均繊維長をLL、数平均繊維長をLNとしたとき、LLとLNが下記[式1]を満たす、セルロース繊維分散樹脂複合材。
<測定条件>
前記セルロース繊維分散樹脂複合材を、該複合材中の樹脂を可溶な溶媒中に浸漬して得られる溶解残さについて、ISO 16065 2001で規定されたパルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法によりLLとLNを求める。
[式1] 1.1<(LL/LN)<1.5
〔2〕
前記LLとLNが下記[式1-2]を満たす、〔1〕に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
[式1-2] 1.1<(LL/LN)<1.4
〔3〕
下記測定条件で測定される前記セルロース繊維の重さ加重平均繊維長をLWとしたとき、LWと前記LNが下記[式2]を満たす、〔1〕又は〔2〕に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
<測定条件>
前記セルロース繊維分散樹脂複合材を、該複合材中の樹脂を可溶な溶媒中に浸漬して得られる溶解残さについて、ISO 16065 2001で規定されたパルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法によりLWを求める。
[式2] 1.1<(LW/LN)<3.0
〔4〕
前記セルロース繊維の長さ加重平均繊維長が0.3mm以上である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
〔5〕
前記セルロース繊維分散樹脂複合材中の前記セルロース繊維の含有量が下記測定方法により決定されるものであり、前記セルロース繊維分散樹脂複合材中の前記セルロース繊維の含有量が5質量%以上50質量%未満である、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
<測定方法>
セルロース繊維分散樹脂複合材の試料を、窒素雰囲気下において+10℃/分の昇温速度で熱重量分析(TGA)に付し、下記[式I]によりセルロース繊維の含有量を算出する。
[式I] (セルロース繊維の含有量[質量%])=(200~380℃の間における試料の質量減少量[mg])×100/(熱重量分析に付す前の試料の質量[mg])
〔6〕
前記樹脂が、ポリオレフィン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート重合体樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、及びポリ乳酸樹脂の1種又は2種以上を含む、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
〔7〕
前記樹脂がポリオレフィン樹脂を含み、前記LL、LN及びLWの測定条件において複合材中の樹脂を可溶な溶媒中に浸漬して得られる溶解残さが、熱キシレン溶解残さである、〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
〔8〕
前記セルロース繊維分散樹脂複合材が前記樹脂中にアルミニウムを分散してなる、〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
〔9〕
前記アルミニウムの少なくとも一部が折曲がり構造を有する、〔8〕に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
〔10〕
前記セルロース繊維分散樹脂複合材は、アルミニウム箔と熱融着した場合に該アルミニウム箔との間で1.0N/10mm以上の剥離強度を示す、〔8〕又は〔9〕に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
〔11〕
前記セルロース繊維分散樹脂複合材が、有機酸の金属塩、有機酸、シリコーンのいずれか1種以上の化合物を含む、〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
〔12〕
前記セルロース繊維分散樹脂複合材が、前記樹脂中に前記樹脂とは異なる樹脂からなる樹脂粒を分散してなる、〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
〔13〕
前記樹脂の少なくとも一部及び/又は前記セルロース繊維の少なくとも一部がリサイクル材に由来する、〔1〕~〔12〕のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
〔14〕
〔1〕~〔13〕のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材を用いた成形体。
〔15〕
前記成形体が管状体であり、又は管状体を分割してなる多分割体である〔14〕に記載の成形体。
〔16〕
〔14〕又は〔15〕に記載の成形体と他の材料とを組合せてなる複合部材。
〔17〕
金属と接合して複合体を形成するために用いる、〔1〕~〔13〕のいずれか1項に記載のセルロース繊維分散樹脂複合材。
【0009】
本発明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のセルロース繊維分散樹脂複合材、成形体、及び複合部材は、樹脂中にセルロース繊維を分散してなり、引張強度、曲げ強度等の機械的物性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の複合材の一実施形態において、複合材に含まれるセルロース繊維の繊維長分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好ましい実施の形態について説明する。
[セルロース繊維分散樹脂複合材]
本発明のセルロース繊維分散樹脂複合材(以下、単に「本発明の複合材」とも称す。)は、樹脂中にセルロース繊維が分散しており、本発明の複合材(100質量%)中のセルロース繊維の含有量は1質量%以上70質量%未満である。セルロース繊維の含有量をこの範囲内とすることにより、セルロース繊維が均一に分散した複合材が得られやすく、また、その機械的物性も効果的に高めることができる。本発明の複合材は、使用する原料の種類に応じてアルミニウム等の無機物、各種添加剤等を含有する形態とすることができる。
【0013】
本発明の複合材中に含まれるセルロース繊維の含有量(質量%)は、下記のようにして熱重量分析により求められる値を採用して決定する。
<セルロース繊維の含有量(セルロース有効質量比)の決定方法>
事前に大気雰囲気にて80℃で1時間乾燥した複合材試料(10mg)を、窒素雰囲気下において+10℃/分の昇温速度で、23℃から400℃までの熱重量分析(TGA)に付し、下記[式I]によりセルロース繊維の含有量(質量%、セルロース有効質量比とも称す。)を算出する。
[式I](セルロース繊維の含有量[質量%])=(200~380℃の間における複合材試料の質量減少量[mg])×100/(熱重量分析に付す前の乾燥状態の複合材試料の質量[mg])
なお、窒素雰囲気下において+10℃/minの昇温速度で200~380℃まで昇温させた場合、セルロース繊維はほぼ熱分解して消失する。本発明では、上記[式I]により算出される質量%を、複合材中に含まれるセルロース繊維の含有量とみなす。ただし、セルロース繊維の一部はこの温度範囲内で消失せずに残る(場合がある)が、この温度範囲を超えると例えば樹脂成分の消失や、高温分解性の化合物が共存する場合にその加熱分解減量や残存成分と区別することができず、セルロース繊維量の測定が困難になる。そのため、本発明においては、[式I]により算出される質量%を、セルロース繊維量の把握に用いるが、このようにして求めたセルロース繊維量と複合材の機械的特性の関係は、関連性が高いものである。
【0014】
本発明の複合材は、下記測定条件で測定される前記セルロース繊維の長さ加重平均繊維長をLL、数平均繊維長をLNとしたとき、LLとLNが下記式[式1]を満たす。
[式1] 1.1<(LL/LN)<1.5
上記LLとLNは、セルロース繊維分散樹脂複合材を、該複合材中の樹脂を可溶な溶媒中に浸漬して得られる溶解残さ(不溶分)について、ISO 16065 2001(JIS P8226 2006)で規定されたパルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法により決定される。
より詳細には、上記LL及びLNは下記式により導出される。LLは繊維の長さにより重み付けられた平均繊維長である。
LL=(Σnili
2)/(Σnili)
LN=(Σnili)/(Σni)
ここで、niは、i番目の長さ範囲にある繊維の本数であり、liは、i番目の長さ範囲の中心値である。
LL/LNは、繊維長の分布の広がりを示す指標となる。LL/LNが大きければ繊維長の分布の広がりが大きく、逆にLL/LNが小さければ繊維長の分布が狭いことを示す。
本発明の複合材は、1.1<(LL/LN)<1.5を満たすことにより、複合材の機械強度を十分に高めることができる。LL/LNが大きすぎると、繊維長の分布が広がり過ぎて、平均繊維長に対して短繊維である繊維の割合が増加する。また、LL/LNが小さすぎると、繊維長の分布が狭すぎ、長繊維の割合が相対的に低下する。いずれの場合も機械強度の向上において不利に働く傾向にある。本発明の複合材はLLとLNの関係が上記[式1]を満たす構成とする。
LL/LNが小さすぎると、繊維長の分布が狭すぎ、長繊維の割合が相対的に低下し、引張強度等の械強度を十分に高めにくくなる。この点から(LL/LN)は1.15より大きいことが好ましい。即ち、1.15<(LL/LN)<1.5を満たすことが好ましい。
また、LL/LNが大きすぎると、繊維長の分布が広がり過ぎて、平均繊維長に対して長繊維である繊維の割合が増加する一方、短繊維である繊維の割合も増加し、引張強度等の機械強度のバラツキが出やすくなるとともに、引張強度等の機械強度を十分に高めにくくなる。この点から(LL/LN)は1.4より小さいことも好ましい。即ち、1.1<(LL/LN)<1.4を満たすことも好ましい。
なお、複合材中の樹脂を可溶な溶媒は、複合材中の樹脂の種類により適宜選択され、例えば、樹脂がポリオレフィンであれば熱キシレン等があげられるが、これに限らず、複合材中の樹脂を可溶でありセルロース繊維を不可溶であるものであればよい。
【0015】
本発明の複合材は、LLとLNが下記[式1-2]を満たすことも好ましく、LLとLNが下記[式1-2b]を満たすことも好ましく、下記[式1-3]を満たすことがより好ましく、さらに下記[式1-4]を満たすことがより好ましい。
[式1-2] 1.1<(LL/LN)<1.4
[式1-2b] 1.15<(LL/LN)<1.5
[式1-3] 1.15<(LL/LN)<1.4
[式1-4] 1.2<(LL/LN)<1.3
【0016】
複合材中のセルロース繊維の繊維長等は、複合材の表面やそれをスライスやプレス等で薄膜としたものを観察することによりある程度は測定できる。しかしこのような2次元的な観察面からの測定方法では、観察面が特定の面に限られるため、樹脂中に分散する個々の繊維の繊維長の全てを正確に測定することはできない。なぜなら、複合材中においてセルロース繊維は、繊維が薄膜の厚さ方向において重なりをもって存在していたり、繊維が観察面から傾いて配されていたりするものが少なからず存在するからである。X線CT等の透過断層画像の解析により繊維長を測定することも考えられるが、実際には複合材中のセルロース繊維のコントラストが必ずしも明瞭でなく、やはり繊維長の正確な測定は困難である。本発明者らは、複合材中のセルロース繊維の繊維長分布を正確に測定し、当該測定値と複合材の機械的物性との間に、従来知られていなかった技術的関係を見い出し、かかる知見に基づき本発明を完成させるに至った。
【0017】
本発明の複合材は、セルロース繊維の重さ加重(長さ長さ加重)平均繊維長をLWとしたとき、LWと上記LNが下記式[式2]を満たすことが好ましい。
[式2] 1.1<(LW/LN)<3.0
上記LWもまた、LLやLNと同様に、セルロース繊維分散樹脂複合材を、該複合材中の樹脂を可溶な溶媒中に浸漬して得られる溶解残さ(不溶分)について、ISO 16065 2001(JIS P8226 2006)で規定されたパルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法により決定される。
より詳細には、上記LWは下記式により導出される。LWは繊維の長さの2乗により重み付けられた平均繊維長である。
LW=(Σnili
3)/(Σnili
2)
ここで、niは、i番目の長さ範囲にある繊維の本数であり、liは、i番目の長さ範囲の中心値である。
LW/LNは、繊維長の分布の広がりを示す指標となる。LW/LNが大きければ繊維長の分布の広がりが大きく、逆にLW/LNが小さければ繊維長の分布が狭いことを示す。LW/LNが大きくなり過ぎると、機械特性のばらつきが大きくなる傾向にある。LW/LNは、LL/LNと比較すると、LW/LNの定義式からわかるように、LW/LNは繊維長が長いものが多いと、急激に大きくなることから、繊維長の長い側の分布の広がりの程度を示す指標となる。
本発明の複合材は、1.1<(LW/LN)<3.0を満たすことにより、複合材の機械強度をより高めることができる。本発明の複合材は、機械強度をより高める観点から、LWとLNの関係が下記[式2-2]を満たすことがより好ましく、下記式[2-3]を満たすことがさらに好ましい。
[式2-2] 1.5<(LW/LN)<2.3
[式2-3] 1.5<(LW/LN)<2.1
【0018】
本発明の複合材は、上記LLとLNとの関係が下記式[式3]を満たすことが好ましい。ここで[式3]においてLL及びLNの単位は、μmである。
[式3] (LL/LN)<(LL×0.0005+1.05)
上記[式3]を満たすことにより、複合材の機械強度をより高めることができる。この観点から、本発明の複合材は、上記LLとLNとの関係が下記[式3-2]を満たすことがより好ましく、[式3-3]を満たすことがさらに好ましく、[式3-4]を満たすことがさらに好ましい。上記の[式3]から[式3-4]までの式を全て満足することで、引張強度、曲げ強度などともに曲げ弾性率のいずれも向上させることができる。ここで[式3-2]、[式3-3]、[式3-4]においてLL及びLNの単位は、μmである。
[式3-2] (LL/LN)<(LL×0.0005+1.00)
[式3-3] (LL/LN)<(LL×0.0005+0.95)
[式3-4] (LL×0.0005+0.85)<(LL/LN)
【0019】
なお、複合材を構成する樹脂がポリオレフィン樹脂を含む場合などは、前記LL、LN及びLWの測定条件において、複合材中の樹脂を可溶な溶媒として、熱キシレン(130~150℃)を用いることができる。
【0020】
本発明の複合材は、複合材(100質量%)中のセルロース繊維の含有量が1質量%以上70質量%未満である。機械特性を向上の観点から、複合材中のセルロース繊維の含有量は3質量%以上であることがさらに好ましく、さらに好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。また、曲げ強度をより向上させる点も考慮すれば、複合材中のセルロース繊維の含有量は25質量%以上であることが好ましい。
本発明の複合材は、吸水性をより抑える観点から、複合材中のセルロース繊維の含有量を50質量%未満とすることが好ましく、40質量%未満とすることも好ましい。
本発明の複合材は、セルロース繊維の含有量が5質量%以上50質量%未満であることが好ましく、15質量%以上40質量%未満であることも好ましい。
【0021】
本発明の複合材は、一定以上の機械強度が必要とされる成形品(樹脂製品)の構成材料として好適である。本発明の複合材は、複合材中のセルロース繊維が上記[式I]の関係を満たし、機械強度に優れる。この理由は定かではないが、例えば、緩やかな変形と、高速の変形に対するセルロース繊維による補強作用が、それぞれセルロース繊維の特定の長さに依存しており、セルロース繊維の繊維長分布を特定範囲として繊維長に適度なばらつきをもたせることにより、機械強度の向上が実現されるものと推定される。
【0022】
本発明の複合材中に分散しているセルロース繊維は繊維長が0.3mm以上のセルロース繊維を含むことが好ましい。繊維長0.3mm以上のセルロース繊維を含むことにより、曲げ強度等の機械強度をより向上させることができる。この観点から、繊維長1mm以上のセルロース繊維を含むことがさらに好ましい。
【0023】
また、本発明の複合材は、複合材中のセルロース繊維の長さ加重平均繊維長が0.3mm以上であることが好ましい。長さ加重平均繊維長が0.3mm以上であることにより曲げ強度等の機械強度をより向上させることができる。この観点から、セルロース繊維の長さ加重平均繊維長は0.5mm以上であることがさらに好ましく、さらに好ましくは0.7mm以上である。複合材中のセルロース繊維の長さ加重平均繊維長は、通常は1.3mm以下である。
【0024】
本発明の複合材を構成する樹脂としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂があげられ、成形性からは熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂の他、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂(AS樹脂)、ポリアミド樹脂(ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート重合体樹脂(PHBH)、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリ乳酸樹脂等の熱可塑性の生分解性の樹脂等があげられる。本発明の複合材には、これらの樹脂の1種又は2種以上を用いることができる。なかでも複合材の樹脂がポリオレフィン樹脂を含むことが好ましく、複合材を構成する樹脂の50質量%以上(好ましくは70質量%以上)がポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
【0025】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が好ましく、あるいはポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂との混合物(ブレンド樹脂)も好ましい。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン-プロピレン共重合体等のエチレン系共重合体(エチレンを構成成分として含む共重合体)や、ポリブテン等の樹脂も、本発明の複合材に用いるポリオレフィン樹脂として好ましい。ポリオレフィン樹脂は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。本発明の複合材を構成するポリオレフィン樹脂はポリエチレン樹脂及び/又はポリプロピレン樹脂であることが好ましく、ポリエチレン樹脂であることがより好ましい。
上記ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)があげられる。本発明の複合材を構成する樹脂はポリオレフィン樹脂であることが好ましく、このポリオレフィンはポリエチレンであることが好ましく、特に低密度ポリエチレンであることが好ましい。
【0026】
本発明の複合材は、上記の通り複数種の樹脂を含有してもよい。また、例えば、ポリオレフィン樹脂と、ポリエチレンテレフタレート及び/又はナイロンとを併用してもよい。この場合、ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、ポリエチレンテレフタレート及び/又はナイロンの総量が10質量部以下であることが好ましい。
【0027】
上記低密度ポリエチレンは、密度が880kg/m3以上940kg/m3未満のポリエチレンを意味する。上記高密度ポリエチレンは、上記低密度ポリエチレンの密度より密度が大きいポリエチレンを意味する。
低密度ポリエチレンは、長鎖分岐を有する、いわゆる「低密度ポリエチレン」及び「超低密度ポリエチレン」といわれるものでもよく、エチレンと少量のα-オレフィンモノマーを共重合させた直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)でもよく、さらには上記密度範囲に包含される「エチレン-α-オレフィン共重合体エラストマー」であってもよい。
【0028】
本発明の複合材中の樹脂の含有量は、30質量%以上が好ましく、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。また、本発明の複合材中の樹脂の含有量
は通常は99質量%未満であり、95質量%未満が好ましく、90質量%未満がさらに好ましく、85質量%未満であることも好ましい。
なお、複合材中のセルロース繊維と樹脂の各含有量の合計が100質量%に満たない場合、残部には、例えば、後述する成分を目的に応じて、また使用する原料に応じて適宜に含むことができる。
【0029】
本発明の複合材は、樹脂中に、セルロース繊維に加え、アルミニウムが分散してなる形態であることも好ましい。アルミニウムを含有することにより、複合材の熱伝導性や目視認識性、光遮蔽性、滑り性が向上する。本発明の複合材が樹脂中にアルミニウムが分散されている場合、アルミニウムの含有量は、複合材中、1質量%以上30質量%以下が好ましい。アルミニウムの含有量をこの範囲内とすることにより、複合材の加工性をより高めることができ、複合材の加工時にアルミニウムの塊まりがより生じにくくなる。このアルミニウムは、原料とするポリエチレンラミネート加工紙のアルミニウム薄膜層に由来し得る。ポリエチレンラミネート加工紙のアルミニウム薄膜層は溶融混練時に、アルミニウムが溶融することはないが、混練時の剪断力により、徐々に剪断され微細化する。
上記加工性の観点に加え、熱伝導性、難燃性等をも考慮した場合、本発明の複合材は、アルミニウムの含有量が好ましくは5質量%以上20質量%以下である。
本発明の複合材中に分散しているアルミニウムは、個々のアルミニウムのX-Y最大長の平均が0.02~2mmであることが好ましく、0.04~1mmであることがより好ましい。X-Y最大長の平均は、後述するように、画像解析ソフトを用いて測定されるX-Y最大長の平均とする。
上記複合材がアルミニウムを含有する場合、このアルミニウムにはX-Y最大長が0.005mm以上のアルミニウム分散質が含まれることが好ましい。X-Y最大長が0.005mm以上のアルミニウム分散質の数に占めるX-Y最大長が1mm以上のアルミニウム分散質の数の割合は1%未満であることが好ましい。この割合を1%未満とすることにより、複合材の加工性をより高めることができ、また、複合材の加工時にアルミニウムの塊まりがより生じにくくなる。
また、アルミニウムを含有することにより滑り性を向上させることができ、例えば、複合材を成形して得られる複合材の成形シートを重ね置きしても、成形シート同士が密着しにくく剥がしやすい。このようなアルミニウムの作用を効果的に発現させる観点から、複合材中においてアルミニウムは、鱗片状の構造、さらにはアルミニウムの少なくとも一部が鱗片の折曲がり構造をとることが好ましい。
また、アルミニウムを含有することにより複合材の成形体同士の常温での滑り性を向上させる一方、複合材を金属との熱融着性した時の接着性が向上する。アルミニウムを含有する複合材は、アルミニウム箔と熱融着した場合に該アルミニウム箔との間で、例えば、1.0N/10mm以上の剥離強度を示すことができる。この剥離強度は、複合材のシートと厚さ0.1mmのアルミ箔とを、170℃、5分、1kg/cm2で加熱プレスにより熱融着したものを、幅25mmの短冊に切り出したものについて、23℃で、アルミ箔を90°方向に、速度50mm/分で剥離したきに、観測される剥離強度の平均による。
本発明の複合材は、ポリオレフィン樹脂中に、さらに、ポリオレフィン樹脂とは異なる樹脂粒を分散させた形態とすることができる。ポリオレフィン樹脂とは異なる樹脂粒を分散させた形態とすることにより機械強度がさらに高められた複合材とすることができる。樹脂粒は、最大直径が10μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは最大直径が50μm以上である。最大直径10μm以上、アスペクト比5以上であることも好ましい。特に、鱗片状で最大直径10μm以上、アスペクト比5以上であることが好ましい。複合材中、樹脂粒の含有量は0.1質量%以上30質量%以下が好ましい。樹脂粒は、マトリックスとなるポリオフィン樹脂の融点より10℃以上高い融点を有する樹脂を含むことが好ましい。また、樹脂粒は、170℃以上に融点を有する樹脂及び/又は示差走査熱量分析により170℃以上350℃以下に吸熱ピークを示す樹脂を含むことも好ましい。複合材から成形体を成形する際に樹脂粒を残すことができ、樹脂複合材の強度をさらに向上させることが可能となる。樹脂粒としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリアミドの少なくとも1種を含むものがあげられ、なかでもポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0030】
本発明の複合材を構成する上記の樹脂とセルロース繊維は、これらの少なくとも一部をリサイクル材に由来するものとすることができる。また、本発明の複合材に含まれ得るアルミニウム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート及びナイロンも、これらの少なくとも一部がリサイクル材に由来することができる。リサイクル材を利用することにより、複合材の製造コストを抑えることができる。
【0031】
リサイクル材としては、例えば、紙とポリエチレン薄膜層とを有するポリエチレンラミネート加工紙、紙とポリエチレン薄膜層とアルミニウム薄膜層とを有するポリエチレンラミネート加工紙、これらの加工紙からなる飲料パック及び/又は食品パック、あるいは、古紙、再生樹脂等があげられる。これらの複数種の使用であってもよい。より好ましくは、上記のラミネート加工紙及び/又は飲料・食品パックをパルパーで処理して紙部分を剥ぎ取り除去して得られた、セルロース繊維が付着してなるポリエチレン薄膜片(以下、「セルロース繊維付着ポリエチレン薄膜片」とも称す。)をリサイクル材として用いることが好ましい。ラミネート加工紙や飲料・食品パックがアルミニウム薄膜層を有する場合には、上記のセルロース繊維付着ポリエチレン薄膜片にはアルミニウムも付着した状態にある。
【0032】
このようなリサイクル材を原料とした場合にも、例えば、後述の溶融混練により本発明の複合材を得ることができる。
【0033】
本発明の複合材は、含水率が1質量%未満であることが好ましい。上記含水率は、複合材の製造後6時間以内に窒素雰囲気下において、23℃から120℃まで、+10℃/minの昇温速度で熱重量分析(TGA)を行った際の質量減少率(質量%)から求める。
【0034】
本発明の複合材は、有機酸の金属塩、有機酸、シリコーンのいずれか1種以上の化合物を含有してもよい。これらの化合物を含有する複合材は加熱時の流動性が向上し、成形時の成形不良を生じにくくする。上記化合物の好ましい例として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム等の脂肪酸の金属塩、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸などがあげられる。
本発明の複合材は、無機質材を含有してもよい。無機質材を含有することにより曲げ弾性、耐衝撃性、難燃性が向上し得る。無機質材としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン等があげられる。
【0035】
本発明の複合材は、目的に応じて、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、耐候剤、相溶化剤衝撃改良剤、改質剤等を含んでもよい。また、加工性向上のため、オイル成分や各種の添加剤を含むことができる。パラフィン、変性ポリエチレンワックス、ステアリン酸塩、ヒドロキシステアリン酸塩、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ化ビニリデン系共重合体、有機変性シロキサン等があげられる。
【0036】
本発明の複合材は、カーボンブラック、各種の顔料、染料を含有することができる。本発明の複合材は、金属光沢系の着色材を含有することもできる。また、導電性カーボンブラック等の、導電性付与成分を含むことができる。さらに、本発明の複合材は熱伝導性付与成分を含むことができる。
【0037】
本発明の複合材は、架橋されていてもよい。架橋剤としては、有機過酸化物等が挙げられ、具体例としてジクミルパーオキサイドがあげられる。本発明の複合材はシラン架橋法により架橋された形態であってもよい。
【0038】
本発明の複合材の形状に特に制限はない。例えば、本発明の複合材をペレット状とする
こともできるし、本発明の複合材は所望の形状に成形されたものでもよい。本発明の複合材がペレット状の場合、このペレットは、成形品(樹脂製品)の構成材料として好適である。
本発明の複合材の用途は特に制限されず、種々の部材やその原料として広く用いることができる。
【0039】
[セルロース繊維分散樹脂複合材の調製]
続いて本発明の複合材の製造方法について、好ましい実施形態を以下に説明する。本発明の複合材は、本発明の規定を満たす限り、下記方法により得られたものに限定されるものではない。
【0040】
本発明の複合材は、混練する際の混練条件の調整や添加剤の添加、あるいは使用するセルロース材の選定や配合を調整することにより、所望のセルロース繊維を含有する形態とすることができる。例えば、混練時間、混練速度、混練温度、水等の添加剤の添加量、添加のタイミング等により、得られる複合材中のセルロース繊維の繊維長分布を調整することができる。この際、混練によりセルロース繊維の平均繊維長も変動する傾向があるのでこれを踏まえて調整することが重要である。
例えば、混錬時間を長くしたり混練速度を高めたりして混錬時のエネルギー投入量を高めると、セルロース繊維の分散性がある程度高まるが、繊維長は短くなる傾向にある。この短繊維化は複合材の機械強度の向上において不利に働く。つまり、混錬時のエネルギー投入量の増大は繊維長の低下と狭い繊維長分布を同時にもたらすことが多いので、これらを所望の範囲へとコントロールする必要がある。
混錬条件にもよるが水の添加は、繊維の平均繊維長に対して、相対的に繊維の繊維長分布を小さくすることがある。その理由は定かでないが、水とセルロース繊維との極性相互作用、混練時のせん断力の水による緩和作用等が効いているものと推定される。特にセルロース材として、ラミネート紙を使用する場合や、ラミネート紙から紙分をある程度取り除いた残部であるセルロース付着樹脂片を使用する場合は、混錬条件等により得られる複合材中の繊維長分布が変動しやすい傾向にある。
【0041】
本発明の複合材は、樹脂とセルロース材とを、上記を踏まえて条件を調整して、溶融混練することにより得ることが好ましい。
上記の溶融混練には、ニーダや二軸押出機等、通常の混練装置を適用することができる。好ましくはニーダ等のバッチ式の混錬装置が適用できる。二軸押出機は、混練が過剰となり、セルロース繊維長が短く、かつセルロース繊維長の分布が狭くなりすぎ、複合材の機械強度が十分に高められない場合がある。
ニーダ等のバッチ式混錬機は、セルロース繊維長と繊維長の分布を所望の範囲にコントロールしやすい。例えば、バッチ式の混錬機であるニーダを使用する場合は、混錬途中で水を添加することにより、繊維長分布を望ましい範囲とすることができ、複合材の機械強度を高めることが可能となる。混練する際、水を最初から添加すると、得られる複合材中のセルロース繊維長の分布が狭くなり、複合材の機械強度が十分に高められない傾向がある。これは樹脂が溶融にしない状態でセルロース繊維が水と接触する時間が長くなりセルロース繊維に対する水の作用が過剰となるためとみられる。一方、水を添加しない場合は、セルロース繊維長の分布が広くなり、複合材の機械強度が十分に高められなかったり、複合材の強度がばらつきやすくなったりする傾向がある。これは、水を添加しないと、紙由来のセルロース繊維等のセルロース繊維同士が膠着している場合、この膠着が解き離れがたく、繊維の一部のみに、混練時のせん断が働きやすく、微細化された繊維ほどさらに微細化するためと考えられる。
ここで「溶融混練」とは、原料中の樹脂(熱可塑性樹脂)が溶融する温度で混練することを意味する。好ましくは、セルロース繊維が変質しない温度と処理時間で溶融混練する。「セルロース繊維が変質しない」とは、セルロース繊維が著しい変色や燃焼、炭化を生じないことを意味する。
上記溶融混練における温度(溶融混練物の温度)は、例えばポリエチレン樹脂を用いる場合を例にとると、110~280℃とすることが好ましく、130~220℃とすることがより好ましい。
【0042】
上記溶融混練に当たり、セルロース材の使用量は、得られる複合材が、複合材中のセルロース繊維の含有量が上述した好ましい範囲となるように調整することが好ましい。
セルロース材としては、セルロースを主体とするものがあげられ、より具体的には、パルプ、紙、古紙、紙粉、再生パルプ、ペーパースラッジ、ラミネート加工紙、ラミネート加工紙の損紙等があげられる。
紙、古紙には、セルロース繊維、紙の白色度を高めるために一般的に含まれる填料(例えばカオリン、タルク)、サイズ剤などが含まれていてもよい。ここで、サイズ剤とは、紙に対してインクなど液体の浸透性を抑え、裏移りや滲みを防ぎ、ある程度の耐水性を与える目的で加えられるものである。主なものとして、ロジン石鹸、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、ポリビニルアルコールなどが用いられる。表面サイズ剤には酸化でんぷん、スチレン・アクリル共重合体、スチレン・メタクリル共重合体などを用いる。例えば、紙、古紙に含まれる各種添加剤、インク成分、リグニン等が含まれていても良い。
ラミネート加工紙には、ポリエチレン樹脂、セルロース繊維、紙の白色度を高めるために一般的に含まれる填料(例えばカオリン、タルク)、サイズ剤などが含まれていてもよい。ここで、サイズ剤とは、紙に対してインクなど液体の浸透性を抑え、裏移りや滲みを防ぎ、ある程度の耐水性を与える目的で加えられるものである。主なものとして、ロジン石鹸、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、ポリビニルアルコールなどが用いられる。表面サイズ剤には酸化でんぷん、スチレン・アクリル共重合体、スチレン・メタクリル共重合体などを用いる。例えば、原料のラミネート加工紙に含まれる各種添加剤、インク成分、等が含まれていても良い。
パルプには、機械パルプと化学パルプがあり、機械パルプにはリグニンと夾雑物が含まれる。一方、化学パルプには、リグニンは殆ど含まれないが、リグニン以外の夾雑物が含まれることがある。上記の本発明に使用した、パルプ、紙、古紙、紙粉、再生パルプ、ペーパースラッジ、ラミネート加工紙、ラミネート加工紙の損紙等のセルロース原料におけるセルロース量は、それぞれの材料中の夾雑物や添加剤などの影響、あるいはセルロール量の熱重量分析における測定温度範囲を外れたセルロースの未分解成分等の影響等により、見かけ上セルロース量に差異が存在するが、本発明においては、熱重量分析にて、[式I]により求めたセルロース繊維量をセルロース繊維量として用いた。
【0043】
[成形体]
本発明の成形体は、本発明の複合材を用いて所望の形状に成形してなる成形体である。本発明の成形体として、シート状、板状、管状、各種構造の成形体があげられる。管状の成形体としては、断面略円形、四角形状の直管、曲がり管、波付けが付与された波付管等があげられる。また、断面略円形、四角形状の直管、曲がり管、波付けが付与された波付管等の管状成形体を半割れ等により分割した多分割体があげられる。また、管の接手部材の他、土木用、建材用、自動車用又は電線保護用の部材として本発明の成形体を用いることができる。本発明の成形体は、本発明の複合材を射出成形、押出成形、プレス成型、ブロー成形等の通常の成形手段に付して得ることができる。
【0044】
[複合部材]
本発明の成形体を他の材料(部材)と組合せて複合部材を得ることができる。この複合部材の形態に特に制限はない。例えば、本発明の成形体からなる層と、他の材料からなる層とを組み合わせた積層構造の複合部材とすることができる。この複合部材は管状構造とすることも好ましい。また、本発明の成形体と組合せて複合部材を構成する上記の他の材料として、例えば、熱可塑性樹脂材料、金属材料等を挙げることができる。
例えば、本発明の複合材は、金属と接合して複合体を形成するために用いることができる。この複合体は、本発明の複合材の層と金属の層とを含む積層体とすることができる。また、この複合体は、金属管の外周及び/又は内周に本発明の複合材を用いた被覆層を有する被覆金属管であることも好ましい。この被覆金属管は、例えば電磁波シールド管として用いることができる。本発明の複合材と金属との接合は、両者が直接結合した形態であることが好ましい。この接合は、熱融着等の常法により行うことができる。また、本発明の複合材は接着シートとして用いることもできる。例えば、金属とポリオレフィン樹脂材料とを接着するために、本発明の複合材を、金属とポリオレフィン樹脂材料との間に介在させて、接着性樹脂層として使用することができる。また、本発明の複合材は、ホットメルト接着剤として用いることもできる。
本発明の複合部材は、土木用、建材用、又は自動車用の部材又はその原料として好適に用いることができる。
本発明の複合材を金属と接合して複合体とする場合、当該金属の種類に特に制限はない。当該金属は、アルミニウム、銅、鋼、アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼、マグネシウム合金、鉛合金、銀、金、及び白金の少なくとも1種を含むことが好ましい。なかでも、当該金属はアルミニウム、アルミニウム合金、銅、及び銅合金の少なくとも1種を含むことが好ましく、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、及び銅合金の少なくとも1種であることがより好ましい。また、当該金属はアルミニウム及び/又はアルミニウム合金を含むことが好ましく、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金であることも好ましい。
【実施例】
【0045】
本発明を実施例に基づきさらに説明するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明における各指標の測定方法、評価方法は次のとおりである。
【0046】
[複合材中のセルロース含有量]
事前に大気雰囲気にて80℃×1時間乾燥した複合材試料(10mg)を、窒素雰囲気下において+10℃/minの昇温速度で、23℃から400℃まで熱重量分析(TGA)を行い、下記[式I]によりセルロース繊維の含有量(質量%)を算出した。同一の複合材試料を5つ調製し、各複合材試料について上記と同様にして熱重量分析を行い、算出されたセルロース繊維の含有量(質量%)の5つの値の平均値を求めて、その平均値をセルロース繊維の含有量(質量%)とした。
[式I](セルロース繊維の含有量[質量%])=(200~380℃の間における複合材試料の質量減少量[mg])×100/(熱重量分析に付す前の乾燥状態の複合材試料の質量[mg])
【0047】
[長さ加重平均繊維長、数平均繊維長、重さ加重平均繊維長]
長さ加重平均繊維長、数平均繊維長は、複合材の熱キシレン溶解残さ(不溶分)についてISO 16065 2001(JIS P8226 2006)で規定されるパルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法により測定した。具体的には、複合材の成形シートから0.1~1gを切だし試料とし、この試料を400メッシュのステンレスメッシュで包み、138℃のキシレン100mlに24時間浸漬した。次いで試料を引き上げ、その後試料を80℃の真空中で24時間乾燥させた。こうして得られた複合材の熱キシレン溶解残さ(不溶分)を用いて、パルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法により長さ加重平均繊維長、数平均繊維長、重さ加重平均繊維長を決定した。この測定にはTECHPAP社製MORFI COMPACTを使用した。
【0048】
[引張強度]
射出成形により試験片を作製し、JIS K7113 1995に準拠して、2号試験片について引張強度を測定した。単位は「MPa」である。
【0049】
[曲げ強度、曲げ弾性率]
JIS K7171 2016に準拠し、サンプル厚さ4mm、曲げ速度2mm/minにて、曲げ強度と曲げ弾性率を測定した。詳細には、射出成形で試験片(厚さ4mm、幅10mm、長さ80mm)を作製し、支点間距離64mm、支点及び作用点の曲率半径5mm、試験速度2mm/minにて荷重の負荷を行い、JIS-K7171 2016に準拠して曲げ試験を行ない、曲げ強度(MPa)と曲げ弾性率(MPa)を測定した。
ここで、曲げ弾性率 Efは、
歪み0.0005(εf1)におけるたわみ量において測定した曲げ応力σf1
歪み0.0025(εf2)におけるたわみ量において測定した曲げ応力σf2
を求めて、これらの差を、それぞれの対応する歪み量の差で割ること、
すなわち、下記の式
Ef=(σf2―σf1)/(εf2―εf1)
で求める。
このときの曲げ応力を求めるための、たわみ量Sは、
下記の式により求めることができる。
S=(ε・L2)/(6・h)
S:たわみ
ε:曲げ歪み
L:支点間距離
h:厚さ
【0050】
[剥離強度]
複合材をプレス成型により厚さ1mm、長さ20cmのシート状とした。このシートと、厚さ0.1mmのアルミニウム箔(株式会社UACJ製、1N-30材(軟質)、両艶)とを積層し、170℃にて5分間余熱後、170℃、加圧4.2MPaにて5分間、加熱プレスすることにより熱融着した。こうして得られた積層体を、23℃の環境下で2日以上放置した後、この積層体を幅25mm、長さ20cmの短冊に切り出した試料5個を調製した。各短冊状試料について、アルミニウム箔を90°方向(シート表面に対して垂直方向)に、速度50mm/分で剥離した。この剥離において、剥離強度が最大の試料と最小の試料について、各剥離強度の平均を算出し、得られた平均値を複合材の剥離強度とした。
【0051】
[調製例1]
調製例1では、樹脂として低密度ポリエチレンとエチレン-アクリル酸共重体を用い、またセルロース材としてパルプを用いて複合材を調製した。詳細を下記実施例1~2、比較例1~2として説明する。
【0052】
<実施例1>
実施例1では、低密度ポリエチレン1(ノバテックLC600A、日本ポリエチレン(株)製)とパルプ1(ARBOCEL BC200、レッテンマイヤー社製)とエチレン-アクリル酸共重体1(ニュークレル、三井・デュポンポリケミカル社製)とを、表1の上段に示す配合比(単位:質量部)で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。混練途中で水1.5質量部を添加した。こうして実施例1のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
なお、本実施例1、ならびに、以降の各実施例及び比較例において、得られた複合材の含水率はいずれも1質量%未満であった。
【0053】
<実施例2>
実施例2では、低密度ポリエチレン1(ノバテックLC600A、日本ポリエチレン(株)製)とパルプ2(ARBOCEL FIF400、レッテンマイヤー社製)と、エチレン-アクリル酸共重体1(ニュークレル、三井・デュポンポリケミカル社製)とを、表1の上段に示す配合比(単位:質量部)で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。混練途中で水40質量部を添加した。こうして実施例2のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
【0054】
<比較例1>
低密度ポリエチレン1(ノバテックLC600A、日本ポリエチレン(株)製)と、パルプ1(ARBOCEL BC200、レッテンマイヤー社製)と、エチレン-アクリル酸共重体1(ニュークレル、三井・デュポンポリケミカル社製)とを、表1の上段に示す配合比(単位:質量部)で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。混練に際しては最初から水を40質量部添加した。こうして比較例1のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
【0055】
<比較例2>
低密度ポリエチレン1(ノバテックLC600A、日本ポリエチレン(株)製)を比較例2とした。
【0056】
各実施例ないし比較例のセルロース繊維の含有量を表1中段に、評価結果等を表1下段に示す。
【0057】
【0058】
上記表1に示されるように、同じパルプを用いて、同じ原料配合量とした場合でも、LL/LNが1.1よりも大きい本発明の複合材において、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率のいずれにおいても高い値を示した(実施例1と比較例1との比較)。
また、LL/LNが本発明で規定する範囲内になる実施例2も、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率のいずれにおいても高い値を示し、機械強度に優れることがわかる。
【0059】
[調製例2]
調製例2では、樹脂として高密度ポリエチレンを用い、またセルロース材としてラミネート紙の損紙を使用して複合材を調製した。また、一部の例において酸変性ポリエチレン樹脂を配合した。詳細を下記実施例3~6、比較例3及び4として説明する。
【0060】
<実施例3>
実施例3では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)とを、表2の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。この混練途中では水30質量部を添加した。こうして実施例3のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
【0061】
<実施例4、5>
実施例4、5では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)と、酸変性ポリエチレン樹脂1(マレイン酸変性ポリエチレン、FUSABOND、デュポン)とを、表2の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。混練途中で、実施例4については水60質量部、実施例5については水100質量部を添加した。こうして実施例4、5のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
【0062】
<実施例6>
実施例6では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)とを、表2の上段に示す配合比で混合し、二軸押出機を用いて溶融混練して複合材を得た。実施例6では、溶融混練の最初から水60質量部を添加した。こうして、実施例6のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
【0063】
<比較例3>
実施例3において、混練途中で水を添加しなかったこと以外は、実施例3と同様にして、比較例3のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
【0064】
<比較例4>
高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)を比較例4とした。
【0065】
各実施例ないし比較例のセルロース繊維の含有量を表2中段に、評価結果等を表2下段に示す。
【0066】
【0067】
上記表2に示されるように、同じセルロース材を用いて、同じ原料配合量とした場合でも、LL/LNが1.5よりも小さい本発明の複合材において、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率のいずれにおいても高い値を示した(実施例3と比較例3との比較)。
また、ポリエチレン樹脂の一部を酸変性樹脂に置き換えることにより、LL/LNをより好ましい範囲へと調整でき、引張強度や曲げ強度がさらに高められることもわかる(実施例4、5)。
【0068】
[調製例3]
調製例3では、調製例2の実施例4、5と同様にして酸変性ポリエチレン樹脂を少量配合して複合材を調製した。詳細を下記実施例7~10、比較例5として説明する。
【0069】
<実施例7~8>
実施例7~8では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)と、酸変性ポリエチレン1(マレイン酸変性ポリエチレン、FUSABOND、デュポン社製)とを、表3の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。実施例7では、最初に水50質量部を添加し、さらに、混練途中で水50質量部を添加した。また、実施例8では混練途中で水100質量部を添加した。こうして実施例7~8のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
【0070】
<実施例9>
実施例9では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)と、酸変性ポリエチレン1(マレイン酸変性ポリエチレン、FUSABOND、デュポン社製)とを、表3の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。実施例9では、溶融混練の途中で水100質量部を添加した。こうして得られた複合材をさらに、粉砕機による粉砕処理とニーダによる混錬処理に2回ずつ交互に繰り返し付した。こうして、実施例9のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
【0071】
<実施例10>
実施例10では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)と、酸変性ポリエチレン1(マレイン酸変性ポリエチレン、FUSABOND、デュポン社製)とを、表3の上段に示す配合比で混合し、二軸押出機を用いて溶融混練して複合材を得た。実施例10では溶融混錬の最初から水100質量部を添加した。こうして実施例10のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
【0072】
<比較例5>
比較例5では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)と、酸変性ポリエチレン1(マレイン酸変性ポリエチレン、FUSABOND、デュポン社製)とを、表3の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。比較例5では混練の最初から水100質量部を添加した。こうして得られた複合材をさらに、粉砕機による粉砕処理とニーダによる混錬処理に2回ずつ交互に繰り返し付した。こうして比較例5のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
【0073】
各実施例ないし比較例のセルロース繊維の含有量を表3中段に、評価結果等を表3下段に示す。なお、下表中の各式の充足の欄において、○は充足(対応する式を満たす)、×は非充足(対応する式を満たさない)を意味する。
【0074】
【0075】
上記表3に示されるように、同じセルロース材を用いて、同じ原料配合量とした場合でも、LL/LNが1.1よりも大きい本発明の複合材において、引張強度と曲げ強度が向上していることがわかる(実施例10と比較例5との比較)。
また、本発明の規定を満たす複合材はいずれも機械強度に優れ、なかでも[式3]~[式3-4]を満たす場合に機械強度がより高められることもわかる(実施例7~10)。
【0076】
[調製例4]
調製例4では、樹脂として高密度ポリエチレンを用い、また、少量の酸変性ポリエチレン樹脂を配合し、セルロース材として古紙を用いて複合材を調製した。詳細を下記実施例11~13として説明する。
【0077】
<実施例11~13>
高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)と、酸変性ポリエチレン1(マレイン酸変性ポリエチレン、FUSABOND、デュポン)と、古紙とを、表4の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。混練途中で水1.7質量部を添加した。
ここで、古紙として実施例11ではオフィスペーパのシュレッター細断物を、実施例12では、新聞紙の粉砕物(回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用)を、実施例13ではポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙の粉砕物(回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用)を使用した。
【0078】
各実施例のセルロース繊維の含有量を表4中段に、評価結果等を表4下段に示す。
【0079】
【0080】
上記表4の結果から、本発明の複合材のなかでも、[式3]~[式3-4]を満たす場合に機械強度がより高められることがわかる(実施例11と実施例12~13との比較)。
【0081】
[調製例5]
調製例5では、樹脂として低密度ポリエチレンを用い、また、セルロース材としてラミネート紙の損紙を用いて複合材を調製した。詳細を下記実施例14~16、比較例6として説明する。
【0082】
<実施例14>
実施例14では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、低密度ポリエチレン1(ノバテックLC600A、日本ポリエチレン(株)製)とを、表5の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。混練途中では水40質量部を添加した。こうして実施例14のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
【0083】
<実施例15>
実施例15では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、低密度ポリエチレン1(ノバテックLC600A、日本ポリエチレン(株)製)とを、表5の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。混練途中で水10質量部を添加して混合する操作を4回行った(水の総配合量は40質量部)。こうして実施例15のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
【0084】
<実施例16>
実施例16では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、低密度ポリエチレン1(ノバテックLC600A、日本ポリエチレン(株)製)とを、表5の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練した。混練途中では水40質量部を添加した。得られた複合材をさらに、粉砕機による粉砕処理とニーダによる混錬処理に2回ずつ交互に繰り返し付した。こうして実施例16のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
【0085】
<比較例6>
比較例6では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、低密度ポリエチレン1(ノバテックLC600A、日本ポリエチレン(株)製)とを、表5の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練した。混練の際には最初から水40質量部を添加した。得られた複合材をさらに、粉砕機による粉砕処理とニーダによる混錬処理に2回ずつ交互に繰り返し付した。こうして比較例6のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
【0086】
各実施例ないし比較例のセルロース繊維の含有量を表5中段に、評価結果等を表5下段に示す。
【0087】
【0088】
上記表5に示されるように、同じセルロース材を用いて、同じ原料配合量とした場合でも、LL/LNが1.1よりも大きい本発明の複合材において、引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率のすべてが向上していることがわかる(実施例16と比較例6との比較)。また、本発明の規定を満たす複合材はいずれも機械強度に優れ、なかでも[式3]~[式3-4]を満たす場合に機械強度がより高められることもわかる(実施例14~16)。
また、実施例15で得られた複合材中のアルミニウムの含有量は8.1質量%であった。実施例15の複合材について、曲げ試験片の断面を観察したところ、アルミニウムが折曲がった折り畳み構造が観察された。さらに、実施例15の複合材について、上述の方法でアルミニウム箔との剥離強度をみたところ、1.7N/10mmであった。実施例15で使用しているのと同じポリエチレンの単体(比較例2となる)について、アルミニウム箔との剥離強度は0.8N/10mmであった。このようにラミネート紙を原料としてアルミニウムを含み、セルロース繊維が特定の繊維長分布を有する実施例15の複合材は高い剥離強度を有し、金属との接着性にも優れるものであった。
【0089】
[調製例6]
調製例6では、樹脂として高密度ポリエチレンを用い、また、少量の酸変性ポリエチレン樹脂を配合し、セルロース材としてラミネート紙の損紙を用いて複合材を調製した。詳細を下記実施例17~18として説明する。
【0090】
<実施例17>
実施例17では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)と、酸変性ポリエチレン1(マレイン酸変性ポリエチレン、FUSABOND、デュポン社製)とを、表6の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。この混練途中には水100質量部を添加した。こうして実施例17のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
【0091】
<実施例18>
実施例18では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)と、酸変性ポリエチレン1(マレイン酸変性ポリエチレン、FUSABOND、デュポン社製)とを、表6の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。この混練途中には水5質量部を添加した。こうして実施例18のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
【0092】
各実施例のセルロース繊維の含有量を表6中段に、評価結果等を表6下段に示す。また、実施例8及び実施例5の結果も参考のため併記する。
【0093】
【0094】
上記表6に示されるように、LW/LNが大きくなると、引張強度の変動係数が大きくなる傾向にある(実施例18)。
【0095】
[調製例7]
調製例7では、樹脂として高密度ポリエチレンを用い、また、少量の酸変性ポリエチレン樹脂を配合し、セルロース材として古紙を用いて複合材を調製した。詳細を下記実施例19~20として説明する。
【0096】
<実施例19~20>
高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)と、酸変性ポリエチレン1(マレイン酸変性ポリエチレン、FUSABOND、デュポン)と、古紙とを、表7の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。混練途中で水3.3質量部を添加した。
ここで、古紙として実施例19ではオフィスペーパのシュレッター細断物を、実施例20では、新聞紙の粉砕物(回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用)を使用した。
【0097】
各実施例のセルロース繊維の含有量を表7中段に、評価結果等を表7下段に示す。さらに、各実施例の繊維長分布を示すグラフを
図1に示す。
図1中、Aが実施例19、Bが実施例20の複合材である。
【0098】
【0099】
表7に示されるように、実施例19と実施例20を比較すると、長さ加重平均繊維長は実施例19の方が小さい。しかし、引張強度や曲げ強度は実施例19の方が高められている。これまで、セルロース繊維の繊維長が長い方が、一般に機械的物性が高められるとされてきた。しかし上記表7の結果は、LL/LNを一定のレベルに抑えることにより(例えばLL/LNを1.3より小さくすることにより、あるいは[式3-2]を充足する構成とすることにより)、セルロース繊維の繊維長が短くても、複合材の機械的物性を効果的に高めることができることを示している。
【0100】
[調製例8]
調製例8では、樹脂としてポリプロピレンを用い、セルロース材としてラミネート紙の損紙を用いて複合材を調製した。詳細を下記実施例21~22、比較例7として説明する。
【0101】
<実施例21>
ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、ポリプロピレンとを、表8上段に示す配合比で混合した。ポリプロピレン樹脂として、J783HV、MI12.7g/min、(株)プライムポリマー製を使用した。この混合物を、ニーダに投入し、溶融混練した。混錬途中で水50質量部を投入するようにした。こうしてセルロース繊維分散樹脂複合材を作製した。
【0102】
<実施例22>
ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、ポリプロピレンとを、表8上段に示す配合比で混合した。ポリプロピレン樹脂として、J783HV、MI12.7g/min、(株)プライムポリマー製を使用した。この混合物を、二軸押出機を用いて溶融混練して複合材を得た。溶融混練の最初から水50質量部を添加した。こうして、セルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
【0103】
<比較例7>
ポリプロピレン樹脂と紙原料としてポリエチレンラミネート加工紙の損紙を用い、混錬条件をかえてセルロース繊維分散樹脂複合材を作製した。ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、ポリプロピレン樹脂(J783HV、MI12.7g/min、(株)プライムポリマー製)とを表8上段に示す配合比で混合し、この混合物を、ニーダに投入し、溶融混練して複合材を得た。溶融混練の最初から水50質量部を添加した。得られた複合材をさらに、粉砕機による粉砕処理とニーダによる混錬処理に2回ずつ交互に繰り返し付した。こうして、比較例7のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
各複合材の成分組成を表8中段に、評価結果等を表8下段に示す。
【0104】
【0105】
表8に示されるように、LL/LNが1.1よりも小さい比較例7の複合材は、機械的物性に劣る結果となった。
【0106】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0107】
本願は、2018年12月5日に日本国で特許出願された特願2018-228578に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。