(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】レールボンド構造体およびレールボンド構造体の形成方法
(51)【国際特許分類】
E01B 31/02 20060101AFI20231130BHJP
E01B 37/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
E01B31/02
E01B37/00 Z
(21)【出願番号】P 2021160286
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000117010
【氏名又は名称】古河電工パワーシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】栗山 卓也
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】実公昭49-15053(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0158083(US,A1)
【文献】特開平11-144832(JP,A)
【文献】実開昭63-73860(JP,U)
【文献】実開昭53-000404(JP,U)
【文献】特許第5158888(JP,B2)
【文献】特開2005-007461(JP,A)
【文献】特開2006-334644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 31/02
E01B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルと、前記ケーブルの少なくとも一端に取り付けられ、取付部が形成された端子とを有する端子付きケーブルが、レールに対して電気接続されるように、前記端子を前記レールに連結してなるレールボンド構造体であって、
前記レールボンド構造体は、
前記レールの表面に対して溶接によって接合される基部、および、
前記基部から延在し、前記端子の前記取付部を取付可能な軸部
を有する第1締結部材と、
前記第1締結部材の前記軸部に対して分離可能に連結される第2締結部材と
を備え、
前記端子の前記取付部を前記第1締結部材の前記軸部に嵌め合わせた状態で、前記第2締結部材を、前記第1締結部材の前記軸部に対して分離可能に連結することによって、前記端子付きケーブルを、前記レールに対して着脱可能に連結される、レールボンド構造体。
【請求項2】
前記第2締結部材を前記第1締結部材の前記軸部に対して分離することによって、前記端子付きケーブルが、別の端子付きケーブルに交換できるように構成される、請求項1に記載のレールボンド構造体。
【請求項3】
前記第1締結部材の前記基部は、前記レールとの間および前記基部の周りに、溶接によって溶融固化して形成した溶接金属部と一体的に構成される、請求項1または2に記載のレールボンド構造体。
【請求項4】
前記溶接は、テルミット溶接である、請求項1から3までのいずれか1項に記載のレールボンド構造体。
【請求項5】
前記端子は、前記第1締結部材にねじ止め固定されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載のレールボンド構造体。
【請求項6】
前記第1締結部材は、前記軸部がねじ切りされたおねじ部である締結ボルトであり、
前記第2締結部材は、内面にねじ切りされためねじ部を有する締結ナットであり、
前記端子の取付部は、前記締結ボルトの前記おねじ部が嵌挿できる取付孔を有する、請求項5に記載のレールボンド構造体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のレールボンド構造体の形成方法であって、
前記レールに前記第1締結部材の前記基部を溶接する工程と、
前記第1締結部材の前記軸部に、前記端子付きケーブルの前記端子の前記取付部を取り付ける工程と、
前記端子が取り付けられた前記第1締結部材の前記軸部に対して、前記第2締結部材を分離可能に連結する工程と、
を含む、レールボンド構造体の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールボンド構造体およびレールボンド構造体の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線路は、複数のレールを犬釘などの固定手段によって路盤の枕木などに固定するとともに、線路の延在方向に沿って並べたレール同士を連結することによって形成する。延在方向に沿って並べられたレールは、隣接するレールとの間に、熱膨張を許容するための空隙を有しているが、これらのレールは、電車などからの帰線電流や、電車などの制御信号の回路としても用いられるため、車両の通過によって振動する継目板とは別に、端子付きケーブルによって構成されるボンド線をレールに設けて電気的に相互に接続し、レールボンド構造体を構成することが多い。
【0003】
ここで、端子付きケーブルの先端に取り付けられた金属端子は、溶着金属によってレールに溶接されることで、レールに恒久的に接続されている。このような溶接を行なうための工法の中でも、特にテルミット溶接法は、溶接部の導電性と接合強度が高く、かつ接合に高度な技能を必要としないことから、広く使用されている。
【0004】
テルミット溶接法は、母材の表面近傍に設けた坩堝内で、アルミニウムと酸化銅(または酸化鉄)の混合粉に点火して、その化学反応によって生じた熱によって銅(または鉄)を溶融して溶着を行なう方法である。
【0005】
例えば、特許文献1には、導線と、内部に導線が挿入されて所定形状に押圧成形されたテルミット溶接用の鉄製端子とを有して構成された、接続ケーブルが記載されている。この接続ケーブルは、鉄製端子の外表面に、鉄製端子の内部面が導線を圧接するように2以上の溝部が形成されており、これらの溝部は、鉄製端子の両端部の近傍にそれぞれ少なくとも1つ形成されている接続ケーブルを、鉄製端子の先端部の近傍を溝部とともに溶着部で覆い、かつ他の溝部が溶着部の外に位置するように、接続ケーブルを母材にテルミット溶接した構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されるレールボンド構造体に含まれる端子付きケーブルは、端子とケーブルが一体になっており、かつ、端子付きケーブルの全体が溶接によってレールから部分的に取り外せない構造になっている。
【0008】
そのため、特許文献1に記載されるレールボンド構造体では、一度端子をレールに溶接すると、端子付きケーブルを取り外す際には導体を切断する必要があるため、端子付きケーブルを容易に取り外したり交換したりすることができない。さらに、特許文献1に記載されるレールボンド構造体では、端子付きケーブルが破損した場合は、レールに溶接された古い端子を取り除き、テルミット剤を用いて新品の端子付きケーブルを溶接することで、端子付きケーブルの全体を交換する必要があり、端子付きケーブルの交換にコストと手間を要する。そのため、レールボンド構造体は、特にレールや端子付きケーブルを交換する際などに、レールに対して容易に着脱できることが望ましい。
【0009】
本発明の目的は、隣接するレールを安定して電気的に接続することができ、かつレールや端子付きケーブルを交換する際に、端子付きケーブルの端子をレールに対して容易に着脱することが可能な、レールボンド構造体およびその形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、端子付きケーブルの端子の取付部が、レールの表面に接合された第1締結部材の軸部に嵌め合わせた状態で、第2締結部材を、第1締結部材の軸部に対して分離可能に連結することによって、端子付きケーブルを、レールに対して着脱可能に連結できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)ケーブルと、前記ケーブルの少なくとも一端に取り付けられ、取付部が形成された端子とを有する端子付きケーブルが、レールに対して電気接続されるように、前記端子を前記レールに連結してなるレールボンド構造体であって、前記レールボンド構造体は、前記レールの表面に対して溶接によって接合される基部、および、前記基部から延在し、前記端子の前記取付部を取付可能な軸部を有する第1締結部材と、前記第1締結部材の前記軸部に対して分離可能に連結される第2締結部材とを備え、前記端子の前記取付部を前記第1締結部材の前記軸部に嵌め合わせた状態で、前記第2締結部材を、前記第1締結部材の前記軸部に対して分離可能に連結することによって、前記端子付きケーブルを、前記レールに対して着脱可能に連結される、レールボンド構造体。
【0012】
(2)前記第2締結部材を前記第1締結部材の前記軸部に対して分離することによって、前記端子付きケーブルが、別の端子付きケーブルに交換できるように構成される、上記(1)に記載のレールボンド構造体。
【0013】
(3)前記第1締結部材の前記基部は、前記レールとの間および前記基部の周りに、溶接によって溶融固化して形成した溶接金属部と一体的に構成される、上記(1)または(2)に記載のレールボンド構造体。
【0014】
(4)前記溶接は、テルミット溶接である、上記(1)から(3)までのいずれか1項に記載のレールボンド構造体。
【0015】
(5)前記端子は、前記第1締結部材にねじ止め固定されている、上記(1)から(3)までのいずれか1項に記載のレールボンド構造体。
【0016】
(6)前記第1締結部材は、前記軸部がねじ切りされたおねじ部である締結ボルトであり、前記第2締結部材は、内面にねじ切りされためねじ部を有する締結ナットであり、前記端子の取付部は、前記締結ボルトの前記おねじ部が嵌挿できる取付孔を有する、上記(5)に記載のレールボンド構造体。
【0017】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1項に記載のレールボンド構造体の形成方法であって、前記レールに前記第1締結部材の前記基部を溶接する工程と、前記第1締結部材の前記軸部に、前記端子付きケーブルの前記端子の前記取付部を取り付ける工程と、前記端子が取り付けられた前記第1締結部材の前記軸部に対して、前記第2締結部材を分離可能に連結する工程と、を含む、レールボンド構造体の形成方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、隣接するレールを安定して電気的に接続することができ、かつレールや端子付きケーブルを交換する際に、端子付きケーブルの端子をレールに対して容易に着脱することが可能な、レールボンド構造体およびその形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一の実施形態のレールボンド構造体における、端子付きケーブルのレールへの取付状態を示す図であって、
図1(a)が斜視図であり、また、
図1(b)が
図1(a)の仮想平面Pにおける断面図である。
【
図2】
図2は、レールボンド構造体における取付状態の一例を示す正面図であり、隣接するレールを電気的に相互に接続している図である。
【
図3】
図3は、
図1のレールボンド構造体の形成方法のうち、端子の取付部を第1締結部材の軸部に取り付ける工程と、第2締結部材を第1締結部材の軸部に連結する工程について説明する図である。
【
図4】
図4は、他の実施形態のレールボンド構造体を示したものであって、取付部がU型に形成されたU型端子を、端子として用いた状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、他の実施形態のレールボンド構造体を示したものであって、端子付きケーブルをレールの頭部側面に設けた状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、他の実施形態のレールボンド構造体を示したものであって、端子付きケーブルをレールの底部上面に設けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
【0021】
<レールボンド構造体について>
図1は、本発明の一の実施形態のレールボンド構造体における、端子付きケーブルのレールへの取付状態を示す図であって、
図1(a)が斜視図であり、また、
図1(b)が
図1(a)の仮想平面Pにおける断面図である。また、
図2は、レールボンド構造体における取付状態の一例を示す正面図であり、隣接するレールを電気的に相互に接続している図である。
【0022】
レールボンド構造体1は、
図1に示すように、ケーブル21と、ケーブル21の少なくとも一端に取り付けられ、取付部22が形成された端子23とを有する端子付きケーブル2が、レール3に対して電気接続されるように、端子23をレール3に連結してなるものであり、レール3の表面に対して溶接によって接合される基部41、および、基部41から延在し、端子23の取付部22を取付可能な軸部42を有する第1締結部材4と、第1締結部材4の軸部42に対して分離可能に連結される第2締結部材5、5’とを備え、端子23の取付部22を第1締結部材4の軸部42に嵌め合わせた状態で、第2締結部材5、5’を、第1締結部材4の軸部42に対して分離可能に連結することによって、端子付きケーブル2を、レール3に対して着脱可能に連結される。
【0023】
図1に示すように、端子付きケーブル2の取付部22を、レール3に接合された第1締結部材4の軸部42に嵌め合わせた状態で、第2締結部材5、5’を、第1締結部材4の軸部42に対して分離可能に連結することによって、端子付きケーブル2をレール3に対して着脱可能に連結することが可能になり、それにより、端子付きケーブル2のレール3からの取り外しも容易になる。その結果、
図2に示すように、隣接するレール3、3’を安定して電気的に接続することができ、かつ、レール3、3’のうち少なくとも一方や、端子付きケーブル2(または2a)を交換する際に、端子付きケーブル2(または2a)の端子23、23’(または23a、23a’)をレール3、3’に対して容易に着脱することが可能な、レールボンド構造体1およびその形成方法を提供することができる。
【0024】
本実施形態のレールボンド構造体1は、
図1に示すように、第1締結部材4と第2締結部材5とを備える。これら第1締結部材4および第2締結部材5が分離可能に構成されることで、端子付きケーブル2をレール3に対して着脱可能に連結することができる。
【0025】
このうち、第1締結部材4は、レール3の表面に接合される部材である。より具体的に、第1締結部材4は、レール3の表面に対して溶接によって接合される基部41と、基部41から延在し、端子付きケーブル2の端子23の取付部22を取付可能な軸部42とを有する。このような第1締結部材4によることで、基部41がレール3の表面に接合されるとともに、端子付きケーブル2をレール3に取り付けた際に、端子23の取付部22の位置が、基部41から延在する軸部42によって所定の位置に位置決めされる。そのため、端子付きケーブル2をレール3に取り付けた際に、レール3と端子付きケーブル2とを所定の位置関係で接続することができる。
【0026】
ここで、第1締結部材4の基部41は、基部41とレール3との間および基部41の周りに、溶接によって溶融固化して形成した溶接金属部43と一体的に構成されることが好ましい。基部41とレール3との間や、レール3の表面を含む基部41の周囲に、溶接金属部43を有することで、基部41をレール3に強固に固定し、かつ基部41をレール3に対して電気接続することができる。基部41のレール3への溶接は、溶接部の導電性と接合強度の高さや、接合に高度な技能を必要としない観点、アーク溶接などの他の溶接方法で必要となる電源装置を要しない観点から、テルミット溶接が好ましい。したがって、溶接金属部43としては、テルミット溶接によって形成される溶接部を用いることが好ましい。
【0027】
また、第1締結部材4の軸部42は、基部41から延在する部分であり、端子付きケーブル2の端子23の取付部22を取付可能に構成される。より具体的に、
図1のレールボンド構造体1では、軸部42は、端子23の取付部22である取付孔に対して、挿通可能に構成される。軸部42は、このように取付部22が取り付けられる位置を規定することで、端子付きケーブル2が連結される位置を規定することができる。ここで、軸部42は、特に取付部22が取付孔によって構成される場合、軸部42からの端子23の着脱を容易にする観点から、太さが略一定であり湾曲のない形状を有することが好ましく、例えば円柱や角柱の形状であることが好ましい。
【0028】
第1締結部材4の基部41と軸部42は、それぞれ、単一の部材の異なる部分によって構成されていてもよく、また、異なる部材によって構成されていてもよい。その中でも、基部41と軸部42は、単一の部材の異なる部分によって構成されることが好ましい。このような第1締結部材4の一例としては、締結ボルトを挙げることができる。このとき、第1締結部材4の基部41を締結ボルトの頭部によって構成し、かつ、第1締結部材4の軸部42を締結ボルトのねじ切り部(おねじ部)によって構成することができる。このとき、端子23の取付部22は、締結ボルトのおねじ部が嵌挿できる取付孔を有することが好ましい。
【0029】
基部41および軸部42の材質は、レール3からの電流を端子付きケーブル2に流すため、導体によって構成される。特に、溶接金属部43との接合性を高める観点では、鋼やステンレス、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金などの金属や合金によって構成されることが好ましい。
【0030】
第2締結部材5は、第1締結部材4の軸部42に対して分離可能に連結される部材である。この第2締結部材5は、第1締結部材4の軸部42に連結したときに、軸部42のうち第2締結部材5より基部41の側に取り付けられた部材の位置を規定し、好ましくは該部材を第2締結部材5と基部41との間に挟持して固定することができる。他方で、第2締結部材5を第1締結部材4の軸部42から分離した際には、軸部42に取り付けられた部材は、容易に取り外すことができる。このように、第2締結部材5は、軸部42に取り付けられた端子23などの部材を、レール3に対して着脱可能に連結することができる。
【0031】
例えば、
図1のレールボンド構造体1では、第2締結部材5は、第1締結部材4の軸部に連結したときに、軸部42に取り付けられた端子付きケーブル2の端子23の位置を規定することができる。他方で、第2締結部材5を第1締結部材4の軸部42から分離した際には、端子付きケーブル2を取り外すことができる。このように、第2締結部材5は、第1締結部材4の軸部42に対して分離することによって、端子付きケーブル2を、別の端子付きケーブルに交換できるように構成することができる。
【0032】
第2締結部材5は、端子23の取付部22を第1締結部材4の軸部42に嵌め合わせた状態で、第1締結部材4の軸部42に対して分離可能に連結することによって、端子付きケーブル2を、レール3に対して着脱可能に連結されるように構成する。これにより、第2締結部材5を第1締結部材4の軸部42に連結した際に、第1締結部材4と第2締結部材5との間に、軸部42に嵌め合わせられた端子23が固定されるため、第1締結部材4と第2締結部材5との間に、端子23を挟持させることで、端子23を第1締結部材4および第2締結部材5に固定することができる。
【0033】
ここで、端子付きケーブル2の端子23は、第1締結部材4にねじ止め固定されていることが好ましい。これにより、ねじ止めの締結および解除によって、端子23を第1締結部材4に容易に固定し、かつ解除することができるため、端子付きケーブル2の着脱可能な連結を、より容易にすることができる。
【0034】
特に、第1締結部材4が締結ボルトによって構成される場合、第2締結部材5は、締結ナットによって構成されることが好ましい。特に、第1締結部材4の軸部42が、ねじ切りされたおねじ部である締結ボルトによって構成される場合、第2締結部材5は、内面にねじ切りされためねじ部を有する締結ナットによって構成されることが好ましい。このように第1締結部材4と第2締結部材5を構成することにより、第2締結部材5である締結ナットを、第1締結部材4である締結ボルトに対して螺合および螺合解除することで、端子付きケーブル2の端子23を、レール3に対して容易に着脱可能に連結することができる。
【0035】
第2締結部材5は、
図1に示されるように、1本の第1締結部材4の軸部42に対して、複数設けることが好ましい。これにより、第1締結部材4と複数の第2締結部材5、5’との間の、端子23がねじ止め固定される部分における締付け力が高められるとともに、第1締結部材4に近い側にある一方の第2締結部材5’の緩みが、第1締結部材4から遠い側にある他方の第2締結部材5によって抑えられるため、端子付きケーブル2の端子23と第1締結部材4との間における電気接続の信頼性を、より高めることができる。
【0036】
第2締結部材5の材質は、特に限定されるものではないが、例えば第1締結部材4と同様に、鋼やステンレス、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金などの金属や合金によって構成することができる。
【0037】
本実施形態のレールボンド構造体1は、
図2に示すように、複数のレール3、3’の継目部分を端子付きケーブル2、2aによって電気的に接続する構造体として構成される。ここで、レールボンド構造体1は、電車などからの帰線電流に耐える観点や、レール3、3’に流れる信号電流をより確実に流す観点から、複数の端子付きケーブル2、2aを備えることが好ましいが、信号電流などのように流れる電流が小さい場合には、端子付きケーブル2を1本のみ備えていてもよい。なお、本明細書では、主に端子付きケーブル2について説明しているが、
図2に示される端子付きケーブル2aについても、端子付きケーブル2と同様のことがいえる。
【0038】
端子付きケーブル2、2aのうち、端子付きケーブル2について見た場合、レールボンド構造体1は、ケーブル21と、ケーブル21の少なくとも一端に取り付けられ、取付部22が形成された端子23とを有する端子付きケーブル2が、レール3、3’に対して電気接続されるように、端子23をレール3、3’に連結してなる。また、端子付きケーブル2aについても同様に、取付部22aが形成された端子23aを有する端子付きケーブル2aが、レール3、3’に対して電気接続されるように、端子23aをレール3、3’に連結してなる。このレールボンド構造体1では、端子付きケーブル2、2aの端子23、23aが、第1締結部材4および第2締結部材5に対して分離可能に連結されるため、端子付きケーブル2、2aを、レール3、3’に対して着脱可能に連結されるように構成することができる。その結果、端子付きケーブル2、2aのレールボンド構造体1からの交換を容易にすることができる。
【0039】
端子付きケーブル2のケーブル21や端子23は、帰線電流や信号電流を流すため、導体によって構成されることが好ましく、例えば銅や銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属や合金によって構成することもできる。このうち、ケーブル21は、電車などが通過する際の振動によっても、レール3、3’に対する電気接続を維持するため、可撓性を有することが好ましい。
【0040】
端子付きケーブル2の端子23は、第1締結部材4の軸部42に取り付けることが可能な形状を有する取付部22を備える。ここで、
図1のレールボンド構造体1では、取付部22として取付孔を備え、第1締結部材4の軸部42に対して挿通可能に構成される。
【0041】
端子付きケーブル2が連結されるレール3、3’は、典型的には鉄道用レールであり、電車や列車の走行面を構成することが好ましい。このようなレール3、3’は、電車などからの帰線電流や、信号電流を流す回路としても用いられている。そのため、本実施形態のレールボンド構造体1を構成することで、隣接するレール3、3’に安定して電気を流すことができるため、地中設備の電食や漏れ電流を低減することができる。ここで、本明細書における「レール」には、電車や列車の進路を分岐する分岐器が含まれる。
【0042】
本実施形態のレールボンド構造体1は、端子付きケーブル2が連結されているレール3、3’をねじ止めによって連結する、継目板6が設けられていてもよい。しかしながら、継目板6は、車両の通過によって振動する部材であるため、継目板6を介した電気的な接続状態は不安定になり易い。そのため、レールボンド構造体1では、継目板6とは別に設けた端子付きケーブル2によって、レール3、3’を着脱可能に連結している。
【0043】
なお、上述の実施形態では、端子23に取付部22として取付孔を設けた場合を示したが、かかる構成だけには限定されない。例えば、
図4のレールボンド構造体1Aに示すように、取付部22AがU型に形成されたU型端子を、端子23Aとして用いてもよい。また、取付部がクリップにより構成されるクリップ型端子を、端子として用いてもよい(図示せず)。端子23AとしてU型端子やクリップ型端子を用いることで、第2締結部材5、5’を取り外さずに端子23Aを交換することができるため、端子付きケーブル2やレール3の交換作業における作業性をより一層高めることができる。
【0044】
また、上述の実施形態では、第1締結部材4をレール3の腹部の表面に設け、端子付きケーブル2の取付部22を第1締結部材4の軸部42に嵌め合わせた場合を示したが、かかる構成だけには限定されない。例えば、
図5のレールボンド構造体1Bに示すように、レール3の頭部側面のうち、電車や列車の走行面を構成しない部分の表面に第1締結部材4を設け、端子付きケーブル2の端子23の取付部22を、レール3の頭部側面に設けた第1締結部材4の軸部42に嵌め合わせてもよい。また、
図6のレールボンド構造体1Cに示すように、レール3の底部上面に第1締結部材4を設け、端子付きケーブル2の端子23の取付部22を、レール3の底部上面に設けた第1締結部材4の軸部42に嵌め合わせてもよい。
【0045】
<レールボンド構造体の形成方法について>
図3は、
図1のレールボンド構造体の形成方法のうち、端子の取付部を第1締結部材の軸部に取り付ける工程と、第2締結部材を第1締結部材の軸部に連結する工程について説明する図である。ここで、
図3では、第1締結部材の基部がレールに溶接されており、端子の取付部である取付孔を第1締結部材の軸部であるねじ切り部に嵌め合わせた後、第2締結部材であるナットを第1締結部材のねじ切り部に螺合連結する工程を示している。
【0046】
本発明のレールボンド構造体の形成方法は、上述のレールボンド構造体1を形成する方法であって、レール3に第1締結部材4の基部41を溶接する工程と、第1締結部材4の軸部42に、端子付きケーブル2の端子23の取付部22を取り付ける工程と、端子23が取り付けられた第1締結部材4の軸部42に対して、第2締結部材5、5’を分離可能に連結する工程と、を含む。
【0047】
このうち、レール3に第1締結部材4の基部41を溶接する工程では、テルミット溶接法を用いて行なうことが好ましい。ここで、テルミット溶接法としては、レール3の表面の近傍に設けた坩堝内で、アルミニウムと酸化銅(または酸化鉄)の混合粉に点火して、その化学反応によって生じた熱によって溶融した銅(または鉄)を用いて、レール3の表面と、第1締結部材4の基部41とを溶着する方法である。これにより、基部41とレール3との間や、レール3の表面を含む基部41の周囲に、溶接金属部43が形成されるため、基部41をレール3に強固に固定し、かつ基部41をレール3に対して電気接続することができる。
【0048】
また、第1締結部材4の軸部42に、端子付きケーブル2の端子23の取付部22を取り付ける工程では、例えば、
図3に示すように、端子23の取付部22である取付孔に、軸部42を嵌挿することで取り付けることができる。この工程では、端子付きケーブル2の端子23の取付部22が、第1締結部材4の軸部42に取り付けられていればよく、U型端子やクリップ型端子によって取り付けられていてもよい。
【0049】
また、端子23が取り付けられた第1締結部材4の軸部42に対して、第2締結部材5、5’を分離可能に連結する工程としては、例えば、第1締結部材4として締結ボルトを用いるとともに、第2締結部材5、5’として締結ナットを用い、かつ、第2締結部材5、5’である締結ナットを、第1締結部材4である締結ボルトに対して、それぞれ螺合および螺合解除することで、端子付きケーブル2の端子23を第1締結部材4にねじ止め固定することが挙げられる。
【0050】
このように、レール3に第1締結部材4の基部41を溶接した状態で、第1締結部材4の軸部42に端子付きケーブル2の取付部22を取り付けた後、端子23が取り付けられた第1締結部材4の軸部42に、第2締結部材5、5’を分離可能に連結することで、第2締結部材5、5’を分離したときに端子付きケーブル2が第1締結部材4の軸部42から容易に取り外すことができるため、レール3を摩耗などによって交換する場合や、端子付きケーブル2を断線などの接続不良によって交換する場合などに、端子付きケーブル2の端子23をレール3に対して容易に着脱することで、レールボンド構造体1を容易に分解することができる。
【符号の説明】
【0051】
1、1A、1B、1C レールボンド構造体
2、2a、2A 端子付きケーブル
21、21a ケーブル
22、22A 取付部
23、23a、23’、23a’、23A 端子
3、3’ レール
4 第1締結部材
41 基部
42 軸部
43 溶接金属部
5、5’ 第2締結部材
6 継目板