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特許7394115基板処理装置、半導体装置の製造方法、基板支持具、およびその処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法、基板支持具、およびその処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20231130BHJP
   H01L 21/324 20060101ALI20231130BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01L21/31 E
H01L21/324 Q
H01L21/68 N
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021509089
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2020011443
(87)【国際公開番号】W WO2020196025
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-08-10
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2019055551
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】市村 圭太
(72)【発明者】
【氏名】油谷 幸則
【合議体】
【審判長】恩田 春香
【審判官】中野 浩昌
【審判官】松永 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-153273(JP,A)
【文献】特開2006-286434(JP,A)
【文献】特開2010-114280(JP,A)
【文献】特開2006-173413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/31
H01L21/324
H01L21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、前記基板を加熱するよう構成されたヒータを内側に設け、前記処理室内で前記基板を支持する基板支持具と、を備え、
前記基板支持具は、マグネシウムを含有するアルミニウムの合金で表面が構成され、大気雰囲気下において、前記表面が所定の第1温度となるように加熱する処理と、前記表面が前記第1温度となる状態を所定の時間維持することにより、前記表面に酸化アルミニウムの被膜を形成する処理と、が施され、
前記第1温度は450℃以上であり、前記酸化アルミニウムの被膜の厚さは1μm以上である、
基板処理装置。
【請求項2】
前記ヒータを制御して、前記基板支持具に前記基板が支持された状態で前記基板支持具の前記表面が所定の第2温度となるように、前記表面および前記基板を加熱するよう構成された制御部を備える、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1温度は、前記第2温度以上である、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第2温度は、400℃より高い、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記酸化アルミニウムの被膜は酸化マグネシウムを含み、単体のマグネシウムを実質的に含まない、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記大気雰囲気には水蒸気が含まれている、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記酸化アルミニウムの被膜を形成する処理は、大気圧下でおこなわれる、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記所定の時間は3時間以上である、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記酸化アルミニウムの被膜は、少なくとも前記処理室に露出する前記基板支持具の表面全体に形成される、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記アルミニウムの合金におけるマグネシウムの含有率は2wt%以上である、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記酸化アルミニウムの被膜を形成する処理は、前記処理室とは異なる第2の処理室内で行われる、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項12】
マグネシウムを含有するアルミニウムの合金で表面が構成され、大気雰囲気下において、前記表面が所定の第1温度となるように加熱する処理と、前記表面が前記第1温度となる状態を所定の時間維持することにより、前記表面に酸化アルミニウムの被膜を形成する処理と、が施され、内側にヒータが設けられた基板支持具に基板を支持させる工程と、
前記基板支持具に前記基板が支持された状態で前記基板支持具の前記表面が所定の第2温度となるように、前記表面および前記基板を加熱する工程と、
を有し、
前記第1温度は450℃以上であり、前記酸化アルミニウムの被膜の厚さは1μm以上である、
半導体装置の製造方法。
【請求項13】
マグネシウムを含有するアルミニウムの合金で表面が構成され、
大気雰囲気下において、前記表面が所定の第1温度である450℃以上で加熱する処理と、前記表面が前記第1温度となる状態を所定の時間維持することにより、前記表面に酸化アルミニウムの被膜を1μm以上の厚さで形成する処理と、が施され、内側にヒータが設けられた、基板処理装置の処理室内において基板を支持する基板支持具。
【請求項14】
内側にヒータが設けられた基板支持具の表面が、マグネシウムを含有するアルミニウムの合金で構成され、大気雰囲気下において、前記表面が所定の第1温度となるように加熱する工程と、
前記表面が前記第1温度となる状態を所定の時間維持することにより、前記表面に酸化アルミニウムの被膜を形成する工程と、
を有し、
前記第1温度は450℃以上であり、前記酸化アルミニウムの被膜の厚さは1μm以上である、
基板支持具の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法、基板支持具、およびその処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、例えば、所望の温度に加熱された基板上にガスを供給することで、基板上への薄膜の形成、アッシング等の様々な処理を行う基板処理工程が行われることがある(例えば特許文献1参照)。基板処理装置における処理容器内においては、アルミニウム(Al)の合金により形成される部材を使用することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-8949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、高温となった処理容器内でAl合金を使用すると、Al合金に含まれる成分が蒸発・飛散し、処理容器内や処理基板を汚染してしまうことがある。処理容器内や処理基板が汚染された場合、基板処理装置が正常な処理を行えなくなったり、基板のロットアウトを引き起こしたりする可能性がある。
【0005】
本開示は、高温処理容器内においてAl合金を使用した際に、Al合金に含まれる成分の蒸発・飛散を防止することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本開示の一実施形態によれば、基板を処理する処理室と、処理室内で基板を支持する基板支持具と、基板支持具で支持された基板を加熱するよう構成されたヒータと、を備え、基板支持具は、マグネシウム(Mg)を含有するAlの合金で表面が構成され、大気雰囲気下において、表面が所定の第1温度となるように加熱する処理と、表面が第1温度となる状態を所定の時間維持することにより、表面に酸化アルミニウム(AlO)の被膜を形成する処理と、が施されている技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、高温処理容器内においてAl合金を使用した際に、Al合金中に含まれる成分の蒸発・飛散を防止することが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の横断面概略図である。
図2】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の縦断面概略図である。
図3】本開示の一実施形態に係る処理室の縦断面概略図である。
図4】本開示の一実施形態に係る基板保持台の概略図である。
図5】本開示の一実施形態に係る基板処理装置のコントローラの構成例を示すブロック図である。
図6】本開示の一実施形態に係る基板処理装置により処理実験結果の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の一実施形態>
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、基板処理装置10は、例えば搬送室12を中心として、2つのロードロック室14a,14b及び2つの処理室16a,16bが配置されており、ロードロック室14a,14bの上流側にカセットなどのキャリアとの間で基板を搬送するための大気搬送室(EFEM: Equipment Front End Module)20が配置されている。大気搬送室20は、例えば25枚の基板を縦方向に一定間隔を隔てて収容可能なフープ(図示せず)が3台配置されている。また、大気搬送室20には、大気搬送室20とロードロック室14a,14bとの間で基板を例えば5枚ずつ搬送する図示しない大気ロボットが配置されている。例えば、搬送室12、ロードロック室14a,14b及び処理室16a,16bは、Alにて形成されている。
【0010】
まず、ロードロック室14a,14bの構成について、説明する。なお、ロードロック室14bの説明については、ロードロック室14aと左右対称構造となっているが構成は同一であるため、省略する。
【0011】
図2に示すように、ロードロック室14aには、例えば25枚のウェハなどの基板22を縦方向に一定間隔を隔てて収容する基板支持体(ボート)24が設けられている。基板支持体24は、例えば炭化珪素等により構成され、3つの支柱30の長手方向内側には、例えば25個の基板22を載置する載置部32が平行に形成されている。また、基板支持体24は、ロードロック室14a内において、鉛直方向に移動(上下方向に移動)するようにされているとともに、鉛直方向に延びる回転軸を軸として回転するようにされている。基板支持体24が鉛直方向に移動することにより、基板支持体24の3つの支柱30それぞれに設けられた載置部32の上面に、後述するフィンガ対40から基板22が同時に2枚ずつ移載される。また、基板支持体24が鉛直方向に移動することにより、基板支持体24からフィンガ対40へも基板22が同時に2枚ずつ移載されるように構成されている。
【0012】
搬送室12には、ロードロック室14aと処理室16aとの間で基板22を搬送する真空ロボット36が設けられている。真空ロボット36は、上フィンガ38a及び下フィンガ38bから構成されるフィンガ対40が設けられたアーム42を有する。上フィンガ38a及び下フィンガ38bは、例えば同一の形状をしており、上下方向に所定の間隔で離間され、アーム42からそれぞれ略水平に同じ方向に延びて、それぞれ基板22を同時に支持することができるように構成されている。アーム42は、鉛直方向に延びる回転軸を軸として回転するように構成されているとともに、水平方向に移動するように構成され、同時に2枚の基板22を搬送可能に構成されている。
【0013】
(2)処理室の構成
次に、図3等を用いて処理室16a,16bの構成について説明する。図3は、本実施形態に係る基板処理装置10が備える処理室16aの縦断面概略図である。なお、処理室16bの説明については、処理室16aと左右対称構造となっているが、構成は同一であるため、省略する。
【0014】
図3に示すように、処理室16aは、ゲートバルブ78を介して搬送室12と連通している。処理室16aは、処理容器47を備えている。処理容器47は、キャップ状の蓋体43と、下側容器48と、を備えている。蓋体43が下側容器48の上に気密に設けられることにより、処理容器47が構成される。蓋体43は、例えばAlO又は石英等の非金属材料等により構成されており、下側容器48は、例えばAl等により構成されている。処理容器47内には、基板22を収容する反応室50が構成されている。
【0015】
反応室50内には、基板支持具である2つの基板保持台44a,44bが配置されている。すなわち、基板保持台44a,44bはそれぞれ、反応室50の同一空間内に設けられている。基板保持台44a,44bの上面、すなわち基板保持台44a,44bの蓋体43と対向する面には、基板22を保持する基板保持面41a,41bが設けられている。基板保持台44bは、搬送室12から見て、基板保持台44aを挟んで遠方に配置されている。そして、反応室50は、第1の基板保持台44aを備える第1の処理部59と、第2の基板保持台44bを備える第2の処理部61と、から構成されている。第1の処理部59と第2の処理部61との間の空間には、水平方向の一部を仕切る仕切部材46が設けられている。第1の処理部59と第2の処理部61は、それぞれ独立した構造となっている。第1の処理部59と、第2の処理部61とは連通している。
【0016】
そして、処理室16aは、真空ロボット36を介して基板保持台44a,44bに基板22がそれぞれ載置されることにより、反応室50の同一空間内で2枚の基板22を同時に熱処理することができるようにされている。
【0017】
(基板支持具)
図4は、本実施形態に係る基板支持具としての基板保持台44aの縦断面図である。上述したように、反応室50の底側には、基板支持具として、基板22を基板保持面41a,41bでそれぞれ保持する2つの基板保持台44a,44bが配置されている。第1の基板保持台44a及び第2の基板保持台44bは、処理室16a内において、固定部材52により、処理容器47にそれぞれ固定されている。 基板保持台44a,44bはそれぞれ、下方から支持する複数の支柱49が設けられることで支持されている。
【0018】
基板保持台44a,44bは、Alを主成分とする部材によって形成されている。基板処理装置における真空容器内においてAlを主成分とする部材を使用する利点としては、熱伝導率が高いこと、加工が容易であること、耐食性に優れること、安価であることなどが上げられる。特に、熱伝導率の高い材料で構成することで、後述する加熱部としてのヒータ45a,45bからの熱を基板22に効率よく、均一に伝達させることができる。従って、基板処理時において、基板22の温度が面内均一となるように加熱することができ、基板処理の面内均一性を向上させることができる。しかしながら、純Alの部材は熱によって強度の低下による変形を起こし易いという理由から、400℃を超える高温度帯で実用的に使用することは難しい。
【0019】
そのため本実施形態では、基板保持台44a,44bは、高温度帯での機械的強度を高める目的で、マグネシウム(Mg)やクロムなどを少量添加したAl合金によって形成されている。このようなAl合金としては、例えば、A5052やA5056等を用いることができる。本実施形態では特にA5052を用いる。A5052はMgを2.2~2.8%、クロムを0.15~0.35%、他にシリコン、鉄、銅、マンガン、亜鉛などを含有したAl合金である。このA5052を用いることで400℃を超える高温度帯においても、強度の低下による熱変形のリスクを抑えることが可能である。なお、本明細書における「2.2~2.8%」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「2.2~2.8%」とは「2.2%以上2.8%以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0020】
しかし一方で、処理容器47内でA5052等のAl合金で構成された部材(Al合金部材)が加熱されると、Al合金に含まれるMgが蒸発・飛散し、処理容器47内や被処理基板を汚染してしまうことがある。これは、Mgの蒸気圧が比較的高いため、高温下においてAl合金内部からMgが蒸発・飛散しやすくなることが原因である。また、処理容器47内の圧力が低いほどその傾向はより顕著となる。処理容器47内や被処理基板がMgで汚染された場合、基板処理装置が正常な処理を行えなくなったり、被処理基板のロットアウトを引き起こしたりする。そこで本実施形態では、後述するように、Al合金で構成された基板保持台44a,44bに対して事前にMgの揮発・析出を防止する被膜形成処理を施している。
【0021】
なお、基板保持台44a,44bをステンレス(SUS)で構成した場合、Al合金で構成した場合と比べて、耐熱性を向上させることができる場合はあるが、熱伝導率は低くなる。また、基板保持台44a,44bを窒化アルミニウム(AlN)で構成した場合、Al合金で構成した場合と比べて、熱伝導率を高くできる場合はあるが、耐熱性は低くなる。したがって本実施形態では、基板保持台44a,44bをAl合金により構成している。なお、本実施形態では、内蔵されたヒータ45a,45bなどの一部を除く基板保持台44a,44b全体をA5052により構成する例について説明するが、例えば、基板保持台44a,44bの内部をSUSで形成された部材し、基板保持台44a,44bの表面を含むその周りをAl合金で覆うように構成してもよい。これにより、基板保持台44a,44bの耐熱性をより向上させることができる。
【0022】
基板保持台44a,44bには、基板保持面41a,41bの下方に、加熱部としてのヒータ45a,45bがそれぞれ内包されており、基板22を加熱できるように構成されている。ヒータ45a,45bに電力が供給されると、基板22表面が所定温度まで加熱されるようになっている。なお、基板保持台44a,44bには、温度センサ(図中省略)が設けられている。ヒータ45a,45b及び温度センサには、図3のコントローラ77に対応するコントローラ121が電気的に接続されている。コントローラ121は、温度センサにより検出された温度情報に基づいてヒータ45a,45bへの供給電力などを制御するように構成されている。
【0023】
基板保持台44aの基板保持面41a及び基板保持台44bの基板保持面41bの外周にはそれぞれ、例えば3つの基板保持ピン(図中省略)が鉛直方向に貫通して設けられている。基板保持ピンは上下方向に昇降するように構成されている。これにより、搬送室12から真空ロボット36等を介して処理室16a内に搬送された基板22が、基板保持ピンに載置された後、基板保持ピンが上下に昇降されることで、第1の基板保持台44a(すなわち第1の基板保持面41a)及び第2の基板保持台44b(すなわち第2の基板保持面41b)上に、基板22がそれぞれ載置されるように構成されている。
【0024】
(支持部)
図4に示すように、基板保持台44と支柱49との間には、基板保持台44a,44bを支持する支持部55が設けられている。すなわち、基板保持台44a,44bのフランジ53a,53bのそれぞれの底面には、支持部55が設けられている。支持部55の部分55a等において支柱49が挿入されている。
【0025】
基板保持台44a,44bの外側には、それぞれの周囲を囲むように排気孔が形成されている排気バッフルリング54a,54bが配置されている。
【0026】
処理容器47の天井部には、第2の加熱部としてのランプハウス67a,67bが設けられている。ランプハウス67a,67bは、第1の加熱部としてのヒータ45a,45bとは実質的に反対側から、基板22を加熱するように構成されている。ランプハウス67a,67bにはそれぞれ、加熱源としてのランプ群57a,57bが設けられている。
【0027】
(基板搬送装置)
処理室16a内の第1処理部59と第2処理部61との間、すなわち仕切部材46には、基板搬送装置としてのロボットアーム64が設けられている。ロボットアーム64は、基板22を処理室16a内で搬送し、基板処理が行われている間、処理室16a内で待機するように構成されている。
【0028】
(ガス供給部)
図3に示すように、処理室16aの上部には、処理室16a内へ処理ガスを供給するガス供給部が設けられている。すなわち第1の処理部59へ処理ガスを供給する第1のガス供給部51aと、第2の処理部61へ処理ガスを供給する第2のガス供給部51bとが設けられている。処理容器47を構成する蓋体43には、ガス供給口63a,63bが設けられている。蓋体43のガス供給口63a,63bにはそれぞれ、第1のガス供給管65a,第2のガス供給管65bの下流端が気密に接続されている。
【0029】
ガス供給管65a,65bにはそれぞれ、上流側から順に、処理ガスとしての窒素含有ガスであるNガスを供給する窒素ガス供給源(図示せず)、流量制御装置としてのマスフローコントローラ(MFC)(図示せず)及び開閉弁であるバルブ(図示せず)が設けられている。
【0030】
MFC及びバルブには、後述するコントローラ77が電気的に接続されている。コントローラ77は、処理室16a内に供給するガスの流量が所定の流量となるように、MFC及びバルブの開閉を制御するように構成されている。このように、MFCにより流量制御しながら、ガス供給管65a,65b及びガス供給口63a,63bを介して、処理室16a内に処理ガスであるNガスを自在に供給できるように構成されている。なお、窒素ガス供給源、MFC及びバルブは、ガス供給部51a,51bでそれぞれ独立したものであってもよく、共有のものであってもよい。
【0031】
主に、ガス供給管65a,65b、窒素ガス供給源、MFC及びバルブにより、本実施形態に係るガス供給部51a,51bがそれぞれ構成されている。
【0032】
(排気部)
排気バッフルリング54a,54bの下方にはそれぞれ、処理容器47(下側容器48)と基板保持台44a,44bとによりそれぞれ形成される第1の排気口58が設けられている。処理容器47(下側容器48)の基板支持台44a,44bより下方には、中板が設けられている。中板には、処理室16aから処理ガス等を排気する第2の排気口60が設けられている。また、下側容器48の底面には、第2の排気口60から排気された処理ガス等を排気する第3の排気口62が設けられている。ガス排気口62には、ガスを排気するガス排気管(図示せず)の上流端が接続されている。ガス排気管には、圧力調整器であるAPCバルブ(図示せず)、開閉弁であるバルブ(図示せず)、排気装置であるポンプ(図示せず)が設けられている。また、ガス排気管には、圧力センサ(図示せず)が設けられている。
【0033】
APCバルブ、バルブ、ポンプ及び圧力センサには、後述するコントローラ121が電気的に接続されている。ポンプを作動させ、バルブを開けることにより、処理室16a内を排気可能なように構成されている。すなわち、ガス供給部51a,51bから供給された処理ガスは、排気バッフルリング54a,54bの排気孔、第1の排気口58、第2の排気口60及び第3の排気口62を介して処理室16aから排出される。
【0034】
また、圧力センサにより検出された圧力情報に基づいて、APCバルブの開度を調整することにより、処理室16a内の圧力値を、例えば0.1Pa程度までの減圧できるよう構成されている。
【0035】
主に、第1~第3のガス排気口、ガス排気管、APCバルブ、バルブ、ポンプにより、本実施形態に係る排気部が構成されている。
【0036】
(制御部)
図5に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、)CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0037】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aよって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域として構成されている。
【0038】
I/Oポート121dは、真空ロボット36、ゲートバルブ351a,351b,361a,361b、ロボットアーム64、ヒータ45a,45b等に接続されている。
【0039】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、真空ロボット36による基板搬送動作、ゲートバルブ351a,351b,361a,361bの開閉動作、ヒータ45a,45bの温度調整動作、真空ポンプの起動および停止、大気ロボットによる基板搬送動作、等を制御するように構成されている。
【0040】
(3)Al合金部材の被膜形成処理(Mg揮発・析出防止処理)
続いて、基板処理装置の基板保持台44aに対して、Mgを含有するAl合金の表面の熱酸化処理、すなわち、大気雰囲気下において、表面が所定の第1温度となるように加熱する処理と、表面が第1温度となる状態を所定の時間維持することにより、表面にAlOの被膜を形成する処理を実施する一実施形態について説明する。
【0041】
本実施形態においては、ヒータ45aを備えた基板保持台44aを基板処理装置の処理容器47に搭載する前に、処理容器47外において、基板保持台44aに対する以下の被膜形成処理を実施する。当該被膜形成処理は、密閉された容器内で実行される必要は必ずしもないが、以下の処理雰囲気を維持可能な熱処理室(処理容器)内で実行されることが好ましい。本実施形態では、内部を所定の湿度に維持可能に構成された、基板処理装置の処理容器47とは異なる熱処理室において当該被膜形成処理をおこなう。基板処理を行う処理容器47外で当該被膜形成処理を行うことにより、Al合金から揮発するMgが処理容器47内に付着し汚染が発生するのを防ぐことができる。
【0042】
まず、基板保持台44aを熱処理室内に搬入し、熱処理室内の雰囲気を大気雰囲気で絶対湿度を11.0~12.5(g/m)となるように調整する。その後、内蔵されたヒータ45aに通電を行い、第1温度としての基板保持台44aの表面温度を450℃となるまで加熱し、この状態を3時間維持する。これにより、Al合金で構成された基板保持台44aの表面にAlOで構成される酸化被膜を形成させる。
【0043】
本実施形態において、酸化被膜を形成する箇所は、基板保持台44aの表面全体である。すなわち、図4の太線で表示したフランジ53aを含めた基板保持台44aの表面である。但し、酸化被膜を形成する箇所は、基板保持台44aの表面全体の内、少なくとも処理容器47内に搭載された際に、処理室16aに対して露出する部分のみとしてもよい。少なくとも処理室16aに露出する表面部分の全てに酸化被膜を形成することによって、Al合金から析出するMgが処理室16a内に放出されて汚染が発生するのを防止することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、内蔵されたヒータ45aに通電することで基板保持台44aの表面の昇温を行ったが、ヒータ45aを用いずに、又は併用して、基板保持台44aの外側(表面側)に設けられたヒータから熱を照射して、基板保持台44aの表面を加熱するようにしてもよい。
【0045】
(4)Al合金サンプルに対する被膜形成処理の効果の評価
続いて、サンプルを用いて本実施形態に係る被膜形成処理の効果を検証した実験の結果を図6に示す。本実験では、Al合金であるA5052のブロックをサンプル(a)~(d)として用意し、熱酸化温度(第1温度)の違いによるMgの揮発・析出防止効果の違いについて評価した。サンプル(a)は、被膜形成処理を行っていないもの、サンプル(b)~(d)に対して被膜形成処理を行った。サンプル(b)~(d)に対する被膜形成処理は、絶対湿度が11.0~12.5(g/m)の範囲内に調整された大気圧雰囲気でそれらをヒータ上に載置して、その表面が各々の所定の温度となる状態を3時間維持させることにより行った。サンプル(b)~(d)の表面温度、すなわち第1温度としての酸化処理温度はそれぞれ、350℃、400℃、450℃とした。
【0046】
同図の下段には、被膜形成処理を施していないサンプル(a)と、被膜形成処理後のサンプル(b)~(d)の外観を示している。被膜形成処理を行っていないサンプル(a)と酸化処理温度が350℃であるサンプル(b)には酸化被膜が形成されていないことがその外観から分かる。また、酸化処理温度が400℃であるサンプル(c)には酸化被膜が形成されているが、同温度が450℃であるサンプル(d)に比べて酸化被膜が薄いことが、その外観から推測される。ここで、サンプル(d)の表面に形成された酸化被膜の厚さを測定した結果、その厚さは約1.0μmであった。
【0047】
同図の下段に示された結果から、A5052等のAl合金の表面に酸化被膜を形成するためには、その表面温度を400℃以上まで昇温させる必要があることが分かる。また、1.0μm以上の酸化被膜を形成するためには、その表面温度を450℃以上まで昇温させる必要があることが分かる。
【0048】
同図の中段には、基板処理装置を用いて基板処理が行われる際に基板保持台44aが置かれるのと同じ条件を再現し、その条件下に被膜形成処理後のサンプル(b)~(d)を置いた際の、シリコン基板へのMgの転写の様子を示している。これらのサンプリング条件は、被膜形成処理後のサンプル(b)~(d)をそれぞれ表面温度が450℃となるまで加熱するとともに、雰囲気をNガス100%、圧力を6Torrとした条件下で、加熱された状態の各サンプル上にシリコン基板を載せ、24時間経過させたものである。このシリコン基板への各サンプルからのMgの転写の様子によって、基板処理時と同様の条件において、各サンプルからMgが揮発・析出するかどうかを判定することができる。
【0049】
同図の中段に示されるように、サンプル(b)及び(c)の場合、白く示されたMgの転写が発生している。従って、酸化処理温度が400℃であるサンプル(c)では、酸化被膜は形成されているものの、Mgの析出を抑制する効果が不十分であることが分かる。一方、サンプル(d)の場合、そのようなMgの転写は発生していない。従って、酸化処理温度が450℃であるサンプル(d)では、表面に形成された酸化被膜によって、明確なMg析出の抑制効果が得られていることが分かる。
【0050】
この結果から、酸化処理温度が400~450℃の温度帯に、Mg析出の抑制効果が得られる境界となる温度が存在すると推定できる。また、酸化処理温度を450℃以上として、表面に形成される酸化被膜の厚さを1.0μm以上とすることで、Mg析出の抑制効果を明確に得ることができることが分かる。
【0051】
すなわち、以上の実験結果によれば、サンプル(d)への被膜形成処理のように、絶対湿度を11.0~12.5(g/m)の範囲に調整された大気雰囲気下(大気圧下)において、Al合金で形成された部材をその表面が450℃以上である所定の第1温度となるように加熱する処理と、その表面が第1温度となる状態を少なくとも2時間以上、望ましくは3時間以上である所定の時間維持する処理とを行うことにより、その表面にMg析出の抑制効果が得られるのに十分な1.0μm以上である所定の厚さの酸化被膜(AlO膜)を形成することができることが明らかとなった。また、被膜中のMgが十分に酸化され単体Mgを実質的に含まない被膜を形成することができる。
【0052】
従って、同じAl合金で構成された基板保持台44aに対して、同様の熱酸化条件で酸化被膜の形成処理を施すことによって、基板保持台44aに対しても同様のMg析出の抑制効果を得ることができる。酸化被膜は、少なくとも処理室に露出する基板保持台44aの表面全体に形成される。これにより、Al合金から析出するMgが処理室に放出されて汚染が発生するのを防止することができる。なお、上述した通り、基板保持台44a全体に対して被膜形成処理を施す際、フランジ53aの表面にも被膜が形成される。
【0053】
なお、本実施形態における被膜形成処理においては、Al合金で形成された部材の表面近傍に含まれたMgが揮発又は酸化され、単体Mgを実質的に含まない、酸化されたMg(MgO)を含むAlOの被膜が形成される。これにより、被膜中から単体Mgが蒸発・揮発しないようにすることができる。被膜形成処理の時間や酸化処理温度が不十分な場合、酸化被膜中に単体Mgが酸化されずに残留することや、Mg析出を防止するのに不十分な厚さの酸化被膜しか形成されないことがあり、Mg析出抑止効果を得ることができない。
【0054】
(5)基板処理工程
次に、上述の基板処理装置10の処理室16aを用いて、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、ウェハ等の基板22に窒化処理を行う工程例について説明する。本実施形態では、上述したサンプル(d)の場合と同様の被膜形成処理が施された基板保持台44a,44bを用いて当該工程が実行される。なお、以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0055】
(基板搬入工程)
まず、ゲートバルブ78を開き、真空ロボット36を、フィンガ対40に載置された2枚の基板22を同時搬送しながら、処理室16a内に移動させる。これにより、それぞれの基板22が、搬送室12からゲートバルブ78を介して処理室16a内に搬入される。
【0056】
(基板保持工程)
そして、処理室16a内に搬入された2枚の基板22は、基板保持台44a,44bにそれぞれもうけられた基板保持ピン(図示せず)およびロボットアーム64により、第1の基板保持面41a,第2の基板保持面41b上にそれぞれ移載されて保持される。
【0057】
(昇温・圧力調整工程)
続いて、基板保持台44a,44b内蔵のヒータ45a,45bにそれぞれ電力を供給し、基板保持台44a,44bの各基板保持面41a,41bに保持された基板22表面が所望の温度(例えば425℃)となるように加熱する。なお、この時の基板保持台44a,44bの表面温度を便宜上、基板処理時表面温度(第2温度)と呼ぶ。この際、ヒータ45a,45bの温度は、温度センサ(図示せず)により検出された温度情報に基づいてヒータ45a,45bへの供給電力を制御することによって調整される。なお、本実施形態では、ランプハウス67a,67bを用いて基板22の加熱を行わない。しかし、ランプハウス67a,67bをさらに用いることにより、基板22の表面温度を更に高めることもできる。
【0058】
また、処理室16a内が所望の圧力、ここでは6Torrとなるように、処理室16a内をポンプ(図示せず)によって真空排気する。この際、処理室16a内の圧力は圧力センサ(図示せず)で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ(図示せず)の開度をフィードバック制御する。
【0059】
(基板処理工程)
基板22の加熱処理と並行して、処理室16a内に処理ガスであるNガスを供給する。具体的には、ガス供給部51a,51bのバルブ(図示せず)を開け、処理ガスをガス供給管65a,65bから、第1の処理部59及び第2の処理部61へそれぞれ供給する。本実施形態では、処理ガスとして窒素(N)ガスを例として説明したが、それに限るものではなく、アッシング処理であれば酸素含有ガス、加熱処理であれば不活性ガス等を用いれば良い。このように、供給された処理ガスの雰囲気にて、基板22が加熱されることで、所定の処理がなされる。
【0060】
所定時間が経過して、所望の処理が終了したら、ガス供給部51a,51bのバルブを閉じ、処理室16a内へのNガスの供給を停止する。
【0061】
(大気圧復帰・基板搬出工程)
所定の処理が終了したら、ヒータ45a,45bへの電力供給を停止して処理室16a内を降温させると共に、排気部のAPCバルブ(図示せず)の開度を調整して処理室16a内の圧力を大気圧に復帰させる。そして、上述した基板搬入工程及び基板保持工程に示した手順とは逆の手順により、処理済みの2枚の基板22を処理室16a内から搬送室12へ搬送する。すなわち、ロボットアーム64及び真空ロボット36のフィンガ対40が、所定動作を逆の順序で行うことで、処理済みの2枚の基板22を処理室16a内から搬出する。そして、本実施形態に係る基板処理工程を終了する。
【0062】
このように、サンプル(d)と同様の被膜形成処理が施された基板保持台44a,44bを用いることにより、処理室16a内の圧力を6Torr、基板保持台44a,44bの表面温度を425℃まで加熱した状態にしても、基板保持台44a,44bを構成するAl合金からのMgの揮発・析出を抑制することができる。
【0063】
すなわち、以上の実施形態によれば、少なくともその表面がMgを含むAl合金で構成された基板支持具に対して、その表面に、Al合金中に含まれるMgの揮発・析出を防止する酸化被膜を形成することにより、基板処理時表面温度(第2温度)が高温、特に純Alの熱変形が生じる温度、例えば、純Alの実耐用温度である400℃を超えるような条件で使用してもMg析出が発生せず、また熱変形等を起こさない基板支持具を得ることが可能となる。ただし、基板処理時表面温度が600℃超とすると、Al合金が軟化もしくは溶融を起こすことがあるため、基板処理時表面温度はそのような現象が起こりにくい600℃以下とすることが望ましい。
【0064】
また、以上の実施形態によれば、基板支持具を構成するAl合金からMgが蒸発・飛散して、基板処理装置の処理容器内部や基板にMgが付着することより、基板処理装置が正常な処理を行えなくなることや、基板のロットアウトを引き起こしたりすることを防止することが可能となる。
【0065】
ここで、Al合金により構成される部材に対する好適な酸化処理温度(第1温度)は、450℃以上とする。上述の処理実験結果の通り、少なくとも450℃以上で被膜形成処理を行うことにより十分なMg析出抑止機能を有する酸化被膜を形成できる。すなわち、被膜で覆われたAl合金に含まれる単体Mgが析出するのを抑止するのに十分な厚さを有し、且つ、被膜中のMgが十分に酸化され単体Mgを実質的に含まない被膜を形成することができる。450℃未満の場合、Mg析出を抑止するのに十分な酸化層の厚さが得られないか、膜中のMgの酸化が不十分となる可能性があり、析出抑止効果を得ることができないことがある。特に酸化処理温度が400℃以下の場合、上述の処理実験結果の通り、Mgの析出が発生する可能性が高くなる。ただし、酸化処理温度を600℃超とすると、Al合金が軟化もしくは溶融を起こすことがあるため、酸化処理温度はそのような現象が起こりにくい600℃以下とすることが望ましい。
【0066】
更に、酸化処理温度(第1温度)は、基板処理時表面温度(第2温度)以上とすることが望ましい。基板加熱処理時のAl合金の表面温度以上の温度条件下で被膜形成処理を行うことにより、基板処理時における合金中のMgの析出をより確実に抑制することができる。
【0067】
また、Al合金の部材の表面に形成される酸化被膜の厚さを1μm以上とすることにより、上述の処理実験結果の通り、基板処理時表面温度(第2温度)が450℃まで上昇したとしても、Al合金に含まれる単体Mgが被膜を透過して処理室内に放出されるのを抑止することができる。この酸化被膜の厚さが1μm未満の場合、第2温度が450℃まで上昇した際にAl合金に含まれる単体Mgが被膜を透過して処理室内に放出される可能性がある。また、望ましくは当該酸化被膜の厚さを3μm以上とすることにより、第2温度が450℃まで上昇したとしても、Al合金に含まれる単体Mgが被膜を透過して処理室内に放出されるのをより確実に抑止することができる。なお、酸化被膜の厚さが10μm超となると、基板支持具表面における熱伝導に実質的な影響を与える可能性があるため、酸化被膜の厚さは10μm以下であることが望ましい。
【0068】
また、酸化被膜形成処理が実施される大気雰囲気は水蒸気を含むことが望ましい。水蒸気含有雰囲気中で酸化被膜形成処理を行うことにより、被膜形成速度を高めることができる。また、酸化被膜形成処理を大気圧下で行うことにより、Mg析出を抑止可能な酸化被膜を簡易な設備でも比較的容易に形成することができる。ただし、酸化被膜形成処理における圧力は大気圧に限定されず、微減圧(例えば600Torr以上760Torr未満)下又は微加圧(例えば760Torr超900Torr以下)下で行ってもよい。
【0069】
酸化被膜形成処理において、Al合金部材の表面が第1温度となる状態を維持する時間は3時間以上であることが望ましい。少なくとも3時間以上、被膜形成処理としての熱酸化処理を行うことにより、Al合金に含まれる単体Mgが析出するのを抑止するのに必要な厚さを有し、且つ、被膜中のMgが十分に酸化され単体Mgを実質的に含まない被膜を形成することができる。3時間未満の場合、Al合金に含まれる単体Mgが析出するのを抑止するのに必要な厚さ(例えば1μm以上)の酸化被膜を形成することが困難である。なお、当該時間は100時間以下において十分な厚さの酸化被膜を形成することが可能であるため、生産性を考慮した場合、当該時間は100時間以下であることが望ましい。
【0070】
酸化被膜を形成することによりMgの析出抑制を行うAl合金の組成は、Mgの含有率が2~5wt%であることが望ましく、例えば、2.2wt%以上とする。本開示に係る酸化被膜形成処理を行うことによって、Mg含有率が2wt%以上のAl合金においても、実質的にMgによる汚染が発生しない程度にまでMg析出を抑制する効果が期待できる。但し、Mg含有率が5wt%を超えると、本開示に係る酸化被膜が実用的な厚さの範囲では、実質的にMgによる汚染が発生しない程度にまでMg析出を抑制することが困難な場合があるため、Mg含有率は5wt%以下であることが望ましい。
【0071】
本開示に係る技術は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本開示に係る技術のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0072】
10 基板処理装置
41a、41b 基板保持面
44a、44b 基板保持台
45a、45b ヒータ
47 処理容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6