(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】オートフォーカス光学系及び加工光学装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/046 20140101AFI20231201BHJP
G02B 7/28 20210101ALI20231201BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20231201BHJP
【FI】
B23K26/046
G02B7/28 H
G03B13/36
(21)【出願番号】P 2020039756
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】百村 和司
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-186825(JP,A)
【文献】特開2013-003333(JP,A)
【文献】特開2005-316071(JP,A)
【文献】特開2005-316069(JP,A)
【文献】特開2015-024428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/046
G02B 7/28
G03B 13/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の内部に加工用レーザー光を対物レンズを介して集光させる加工光学装置に用いられるオートフォーカス光学系であって、
前記オートフォーカス光学系は、前記対物レンズと前記被加工物との距離を所定の関係に保つために用いられる光学系であり、
前記加工用レーザー光とは異なるAF用レーザー光を前記対物レンズを介して前記被加工物の被測定面に集光させるためのフォーカス機構を備え、
前記フォーカス機構は、前記加工用レーザー光の集光位置と前記AF用レーザー光の集光位置との相対間隔を前記対物レンズの光軸方向に調整可能であり、
前記相対間隔の変化によらず、前記対物レンズのレンズ瞳位置における前記AF用レーザー光の光束径が略一定である、
オートフォーカス光学系。
【請求項2】
前記フォーカス機構は、
前記AF用レーザー光の光路に沿って移動可能な第1レンズ群と、
前記第1レンズ群よりも前記対物レンズに近い側に配置された第2レンズ群であって、前記第2レンズ群の後側焦点位置が前記対物レンズのレンズ瞳位置と共役な位置に配置された第2レンズ群と、
前記第1レンズ群を移動させることにより、前記AF用レーザー光の集光点の位置を調整する駆動部と、
を備える請求項1記載のオートフォーカス光学系。
【請求項3】
前記フォーカス機構は、前記対物レンズのレンズ瞳位置と共役な位置に配置された焦点距離可変レンズと、
前記焦点距離可変レンズの焦点距離を変化させることにより、前記AF用レーザー光の集光点の位置を調整する制御部と、
を備える請求項1記載のオートフォーカス光学系。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のオートフォーカス光学系と、
前記オートフォーカス光学系から導光された光を前記被加工物の被測定面に集光させる対物レンズと、
前記対物レンズを低倍率の対物レンズに変更する場合に、前記対物レンズと前記オートフォーカス光学系との間に挿入されるビームエキスパンダと、
を備える加工光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオートフォーカス光学系及び加工光学装置に係り、被加工物の内部に光を集光させる加工光学装置(例えば、レーザー加工装置等)に用いられるオートフォーカス光学系及び加工光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン等の被加工物の内部に集光点を合わせてレーザー光を切断予定ラインに沿って照射し、加工ラインに沿って被加工物内部に切断の起点となるレーザー加工領域を形成するレーザー加工装置(レーザーダイシング装置ともいう。)が知られている。レーザー加工領域が形成された被加工物は、その後、エキスパンドやブレーキングといった割断プロセスによって分割予定ラインで割断されて個々のチップに分断される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
レーザー加工装置では、被加工物の内部に形成するレーザー加工領域を被加工物の表面から一定の深さに形成するため、オートフォーカス(AF)光学系を用いて被加工物の表面の高さ位置(厚み方向位置)を検出しレーザー光の集光点の被加工物の表面からの深さを高精度に制御する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなAF光学系では、加工用レーザー光の集光点の被加工物の表面からの深さ(以下、加工深さという。)を変更すると、フォーカス誤差信号(以下、AF信号という。)の出力特性(以下、AF特性という。)が変化する。AF特性が変化すると、オートフォーカスの安定性及び応答性に影響する。
【0006】
図11は、AF特性と加工深さとの関係を示すグラフである。
図11の横軸はデフォーカス距離(変位)であり、縦軸はAF信号の出力である。
【0007】
図11には、加工深さを変更した場合のAF特性カーブが3つ示されている。
図11に示すAF特性カーブでは、C1からC3の順に加工深さが浅くなっている。
図11の符号R1、R2及びR3は、それぞれAF特性カーブC1、C2及びC3においてAF信号が検出可能な範囲(以下、フォーカス引き込み範囲という。)を示している。
【0008】
図11に示すように、加工深さが浅いほど、フォーカス引き込み範囲が狭くなる(R3>R2>R1)。一方、加工深さが深いほど、フォーカス引き込み範囲におけるAF特性カーブC1、C2及びC3の変化の割合(傾き)が小さく、フォーカス感度が低くなる。
【0009】
上記のように、加工深さに応じて、AF特性が変化し、フォーカス引き込み範囲及びフォーカス感度が変動する。このため、従来のレーザー加工装置では、フォーカス引き込み範囲及びフォーカス感度のバランスを考慮して、例えば、光源の大きさ、各レンズの焦点距離、及び位置等のパラメータを設定する必要があった。
【0010】
しかしながら、これらのパラメータは、加工光学装置の出荷前に設定されるものであり、一度設定したら変更は困難である。そして、これらのパラメータでは、加工深さの変更によるAF特性の変化を抑制することはできなかった。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、レーザー光の集光点の被加工物の被測定面からの深さの変更に伴うAF信号の出力特性の変化を抑制することが可能なオートフォーカス光学系及び加工光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るオートフォーカス光学系は、被加工物の内部に加工用レーザー光を対物レンズを介して集光させる加工光学装置に用いられるオートフォーカス光学系であって、オートフォーカス光学系は、対物レンズと被加工物との距離を所定の関係に保つために用いられる光学系であり、加工用レーザー光とは異なるAF用レーザー光を対物レンズを介して被加工物の被測定面に集光させるためのフォーカス機構を備え、フォーカス機構は、加工用レーザー光の集光位置とAF用レーザー光の集光位置との相対間隔を対物レンズの光軸方向に調整可能であり、相対間隔の変化によらず、対物レンズのレンズ瞳位置におけるAF用レーザー光の光束径が略一定である。
【0013】
本発明の第2の態様に係るオートフォーカス光学系は、第1の態様において、フォーカス機構は、AF用レーザー光の光路に沿って移動可能な第1レンズ群と、第1レンズ群よりも対物レンズに近い側に配置された第2レンズ群であって、第2レンズ群の後側焦点位置が対物レンズのレンズ瞳位置と共役な位置に配置された第2レンズ群と、第1レンズ群を移動させることにより、AF用レーザー光の集光点の位置を調整する駆動部とを備える。
【0014】
本発明の第3の態様に係るオートフォーカス光学系は、第1の態様において、フォーカス機構は、対物レンズのレンズ瞳位置と共役な位置に配置された焦点距離可変レンズと、焦点距離可変レンズの焦点距離を変化させることにより、AF用レーザー光の集光点の位置を調整する制御部とを備える。
【0015】
本発明の第4の態様に係る加工光学装置は、第1から第3の態様のいずれかに係るオートフォーカス光学系と、オートフォーカス光学系から導光された光を被加工物の被測定面に集光させる対物レンズと、対物レンズを低倍率の対物レンズに変更する場合に、対物レンズとオートフォーカス光学系との間に挿入されるビームエキスパンダとを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、レーザー光の集光点の被加工物の被測定面からの深さの変更に伴うAF信号の出力特性の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るレーザー加工装置を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、従来のオートフォーカス光学系を示す図である。
【
図4】
図4は、対物レンズ及びオートフォーカス光学系とAF用レーザー光の関係を示す図である。
【
図5】
図5は、対物レンズ及び検出光学系の結像レンズとAF用レーザー光の関係を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係るオートフォーカス光学系により得られるAF特性を示すグラフである。
【
図7】
図7は、比較例のAF特性を示すグラフである。
【
図8】
図8は、対物レンズの倍率ごとのAF特性の例を示すグラフである。
【
図9】
図9は、変形例1に係るオートフォーカス光学系を示す図である。
【
図10】
図10は、変形例2に係るオートフォーカス光学系を示す図である。
【
図11】
図11は、AF特性と加工深さとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に従って本発明に係るオートフォーカス光学系及び加工光学装置の実施の形態について説明する。
【0019】
[レーザー加工装置]
図1は、本発明の一実施形態に係るレーザー加工装置を示すブロック図である。
【0020】
図1に示すように、レーザー加工装置10は、被加工物W(例えば、半導体ウェーハ)を移動させるステージ12と、被加工物Wにレーザー光を照射するレーザー照射装置20と、レーザー加工装置10の各部を制御する制御部50とを備える。
【0021】
ステージ12は、XYZθ方向に移動可能に構成され、被加工物Wを吸着保持する。被加工物Wは、デバイスが形成された表面に粘着材を有するバックグラインドテープ(以下、BGテープ)が貼付され、裏面が図中上向きになるようにステージ12に載置される。以下、被加工物Wの対物レンズ24側の面を被測定面という。なお、被測定面は、被加工物Wの対物レンズ24側の面とは反対側の面(裏面)でもよい。被加工物Wは、一方の面に粘着材を有するダイシングシートを貼付し、このダイシングシートを介してフレームと一体化された状態でステージ12に載置されるようにしてもよい。
【0022】
レーザー照射装置20は、被加工物Wに対向する位置に配置されており、被加工物Wの内部にレーザー加工領域を形成するための加工用レーザー光L1を被加工物Wに対して照射する。
【0023】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、入出力回路部等からなり、レーザー加工装置10の各部の動作や加工に必要なデータの記憶等を行う。
【0024】
レーザー加工装置10はこの他に、図示しないウェーハ搬送手段、操作盤、テレビモニタ、及び表示灯等から構成されている。
【0025】
操作盤には、レーザー加工装置10の各部の動作を操作するスイッチ類や表示装置が取り付けられている。テレビモニタは、図示しないCCD(Charge Coupled Device)カメラで撮像したウェーハ画像の表示、又はプログラム内容や各種メッセージ等を表示する。表示灯は、レーザー加工装置10の加工中、加工終了、非常停止等の稼働状況を表示する。
【0026】
次に、レーザー照射装置20の詳細構成について説明する。
図1に示すように、レーザー照射装置20は、レーザー光源(第1レーザー光源)21と、ダイクロイックミラー23と、対物レンズ(集光レンズ)24と、第1アクチュエータ25と、AF装置30とを備える。
【0027】
レーザー光源21は、被加工物Wの内部にレーザー加工領域を形成するための加工用レーザー光L1を出射する。例えば、レーザー光源21は、パルス幅が1μs以下であって、集光点におけるピークパワー密度が1×108(W/cm2)以上となるレーザー光を出射する。
【0028】
加工用レーザー光L1の第1光路上には、レーザー光源21側から順に、ダイクロイックミラー23と、対物レンズ24とが配置される。ダイクロイックミラー23は、加工用レーザー光L1を透過し、かつ後述するAF装置30から出射されるAF用レーザー光L2を反射する。なお、AF用レーザー光L2の第2光路は、ダイクロイックミラー23により加工用レーザー光L1の第1光路と一部光路を共有するように屈曲され、その共有光路上に対物レンズ24が配置される。
【0029】
レーザー光源21から出射された加工用レーザー光L1は、ダイクロイックミラー23を通過した後、対物レンズ24により被加工物Wの内部に集光される。加工用レーザー光L1の集光点のZ方向位置(ウェーハ厚み方向位置)は、第1アクチュエータ25によって対物レンズ24をZ方向に微小移動させることにより調節される。
【0030】
第1アクチュエータ25は、対物レンズ24と被加工物Wの被測定面との距離を所定の関係に保つ(距離が一定となる)ように、制御部50によって駆動が制御される。
【0031】
[AF装置]
次に、AF装置30について、
図2を参照して説明する。
図2は、AF装置を示すブロック図である。なお、
図2では、簡単のため、ダイクロイックミラー23等の光学素子の図示を省略する。
【0032】
図2に示すように、AF装置30は、AF用光源(第2レーザー光源)32と、ナイフエッジ34と、ハーフミラー36と、オートフォーカス光学系38と、結像レンズ40と、ディテクタ42と、AF信号処理部44と、第2アクチュエータ46とを備える。
【0033】
AF用光源32は、例えばLD(Laser Diode)光源やSLD(Super Luminescent Diode)光源等からなり、加工用レーザー光L1とは異なる波長であって被加工物Wの被測定面で反射可能な波長を有するAF用レーザー光L2を出射する。
【0034】
AF用光源32から出射されたAF用レーザー光L2は、ナイフエッジ34によってその一部が遮光される。そして、ナイフエッジ34によって遮光されることなく進行した光は、オートフォーカス光学系38を介して対物レンズ24に導光され、被加工物Wに導かれる。すなわち、AF用レーザー光L2は、ダイクロイックミラー23により反射されて加工用レーザー光L1との共有光路に沿って進行し、対物レンズ24により集光されて被加工物Wに照射される(
図1参照)。
【0035】
被加工物Wの被測定面で反射されたAF用レーザー光L2の反射光は、対物レンズ24に戻って共有光路に沿って進行し、ダイクロイックミラー23により反射される。このダイクロイックミラー23により反射されたAF用レーザー光L2の反射光は、オートフォーカス光学系38を通過してハーフミラー36によって反射される。そして、AF用レーザー光L2の反射光は、結像レンズ40により集光され、ディテクタ42上に照射され、ディテクタ42の受光面に集光像を形成する。
【0036】
ディテクタ42は、2分割された受光素子(光電変換素子)を有する2分割フォトダイオードからなり、AF用レーザー光L2の反射光の集光像を分割して受光し、それぞれの光量に応じた出力信号(電気信号)をAF信号処理部44に出力する。
【0037】
AF信号処理部44は、ディテクタ42の各受光素子から出力された出力信号に基づいて、被加工物Wの被測定面の基準位置からのZ方向の変位(被加工物Wの被測定面とAF用レーザー光L2の集光点とのデフォーカス距離)を示すフォーカス誤差信号(AF信号)を生成して制御部50に出力する。
【0038】
(オートフォーカス光学系)
AF装置30のオートフォーカス光学系38は、AF用レーザー光L2の第2光路上であって、加工用レーザー光L1の第1光路との共有光路とは独立した位置に配置される。本実施形態では、オートフォーカス光学系38は、ダイクロイックミラー23とハーフミラー36との間に配置される。
【0039】
図2に示すように、オートフォーカス光学系38は、第1レンズ群38Aと第2レンズ群38Bとを備える。ここで、第1レンズ群38A及び第2レンズ群38B並びに第2アクチュエータ46は、本発明のフォーカス機構として機能する。
【0040】
第1レンズ群(移動群)38Aは、第2アクチュエータ46により第2の光路方向に移動可能に配置されている。第1レンズ群38Aは、1又は複数のレンズからなり、負のパワーを有している。なお、後述するように、第1レンズ群38Aは、正のパワーを有するものであってもよい。
【0041】
第2レンズ群(固定群)38Bは、第2レンズ群38Bの後側焦点位置と対物レンズ24のレンズ瞳位置24Aとが光学的に共役となる位置に固定されている。第2レンズ群38Bは、1又は複数のレンズからなり、正のパワーを有している。
【0042】
第2アクチュエータ46により、第1レンズ群38Aが第2光路に沿って移動すると、加工用レーザー光L1の集光点のZ方向位置が固定された状態で、AF用レーザー光L2の集光点のZ方向位置が変化する。すなわち、第1レンズ群38Aの移動に伴い、加工用レーザー光L1の集光位置とAF用レーザー光L2の集光位置との相対間隔が対物レンズ24の光軸方向に変化する。
【0043】
AF信号処理部44は、ディテクタ42の各受光素子から出力された出力信号に基づいて、ナイフエッジ法によりAF信号を生成する。制御部50は、加工深さに応じて第2アクチュエータ46を制御して第1レンズ群38Aの位置を所定の位置とする。制御部50は、AF信号処理部44から出力されるAF信号に基づいて、第1アクチュエータ25を制御し、加工用レーザー光L1の集光点の位置を調整する。
【0044】
なお、AF信号の算出及びAF信号に基づく制御については、特開2015-186825号公報に記載の方法を適用可能である。
【0045】
[AF特性の変化の抑制]
次に、AF特性の変化を抑制するための条件について説明する。
【0046】
本願の発明者は、レーザー加工装置のオートフォーカス光学系においてAF特性が変化する原因について、下記のような考察を行った。すなわち、従来のオートフォーカス光学系では、加工深さが深い場合には(
図3(a))、AF用レーザー光を対物レンズ24に近い点にフォーカスさせるために、加工深さが浅い場合(
図3(b))と比較して、対物レンズ24のレンズ瞳位置24Aにおける光束径が小さくなる。このため、対物レンズ24を介してディテクタ側に戻るAF用レーザー光の光束径が小さくなり、対物レンズ24の実質的な開口数NA(Numerical Aperture)が小さくなる。この結果、加工深さが浅い場合に、AF信号の変化が緩やかになり、フォーカス感度が低くなる。
【0047】
そして、本願の発明者は、(A)対物レンズ24のレンズ瞳位置24AにおけるAF用レーザー光L2の光束径(
図4のh
3)と、(B)ディテクタ42側に戻るAF用レーザー光L2の光束径(
図5のh
TL)とを一定に保つことで、加工深さの変更に伴うAF特性の変化を抑制可能であることを確認した。以下に、(A)対物レンズ24のレンズ瞳位置24AにおけるAF用レーザー光L2の光束径(
図4のh
3)、及び(B)ディテクタ42側に戻るAF用レーザー光L2の光束径(
図5のh
TL)と、AF用レーザー光L2との関係について説明する。
【0048】
(対物レンズのレンズ瞳位置におけるAF用レーザー光の光束径)
まず、対物レンズ24のレンズ瞳位置24AにおけるAF用レーザー光L2の光束径とAF用レーザー光L2との関係について説明する。
【0049】
図4は、対物レンズ及びオートフォーカス光学系とAF用レーザー光の関係を示す図である。なお、
図4では、簡単のため、対物レンズ24、第1レンズ群38A及び第2レンズ群38B以外の光学素子の図示を省略する。
【0050】
本実施形態では、(1)対物レンズ24のレンズ瞳位置24AにおけるAF用レーザー光L2の光束径を一定に保ち、かつ、(2)AF用レーザー光L2の収束位置(集光点)の深さを任意に変更可能とする。
【0051】
第1レンズ群38Aに対する入射光の高さをh1、第2レンズ群38Bに対する入射光の高さをh2、第1レンズ群38Aのパワーをφ1、第2レンズ群38Bのパワーをφ2、第1レンズ群38Aと第2レンズ群38Bの基準面の間の距離をd1、第2レンズ群38Bの基準面と対物レンズ24のレンズ瞳位置24Aとの間の距離d2とする。h1=1として、近軸追跡を行うと、下記の式(1)が得られる。
【0052】
h3=d2{-(1-d1φ1)φ2-φ1}-d1φ1+1 …(1)
d1によらず、h3が一定であるためには、式(1)においてd1の項がゼロになればよい。式(1)におけるd1の項は、d1d2φ1φ2-d1φ1=d1φ1(d2φ2-1)である。よって、d1によらず、h3が一定となる条件は、下記の式(2)により表される。
【0053】
d2φ2-1=0 …(2)
第2レンズ群38Bの焦点距離をf2として式(2)を変形すると、下記の式(3)が得られる。
【0054】
d2=f2 …(3)
式(3)から、d1によらず、h3が一定となる条件は、第2レンズ群38Bの後側焦点位置と対物レンズ24のレンズ瞳位置24Aとが一致することであることがわかる。
【0055】
第1レンズ群38Aの焦点距離をf1とすると、下記の式(4)が得られる。
【0056】
h3=h1(φ1/φ2)=h1(f2/f1) …(4)
式(4)から、第1レンズ群38Aのパワーは、正負のいずれでもよい(凸レンズ系及び凹レンズ系のいずれでもよい)ことがわかる。
【0057】
次に、第2レンズ群38Bに着目すると、Newtonの式から、下記の式(5)が得られる。
【0058】
x1x2=-f2
2 …(5)
ここで、x2は、第2レンズ群38Bの焦点位置から像点P2までの距離である。第2レンズ群38Bの焦点位置は対物レンズ24のレンズ瞳位置24Aと共役となる位置に置かれる。また、x1は、第1レンズ群38Aによって投影される光源位置P1と第2レンズ群38Bの前側焦点位置の距離であり、P1の移動量と第1レンズ群38Aの移動量は等しい。
【0059】
式(5)から、第2レンズ群38Bの焦点距離f2が大きくなるほど、第1レンズ群38Aの移動量は大きくなる。
【0060】
第1レンズ群38Aの移動量dg1は加工深さをDp,被加工物Wの屈折率をNp,対物レンズ24の焦点距離をFobjとすると、Newtonの式から、次の式(6)が得られる。式(6)から、第1レンズ群38Aの移動量dg1の概略の値を求めることができる。
【0061】
dg1=(f2
2/fobj
2)(Dp/Np) …(6)
制御部50は、式(6)から加工深さDpに応じた第1レンズ群38Aの移動量dg1を算出し、移動量dg1に応じて第1レンズ群38Aを第2の光路に沿って移動させる。なお、実際の第1レンズ群38Aの移動量dg1は、式(6)により算出した値を含む範囲内の値としてもよい(実施例4参照)。
【0062】
式(5)の近軸結像公式から、所定のx2を得るための第1レンズ群38Aの移動量dg1はf2
2に比例することがわかる。そして、式(5)及び式(6)から、第1レンズ群38Aの移動量dg1を適当な範囲に収めるためには、第2レンズ群38Bの焦点距離f2を適当な値とすることが必要となる。
【0063】
(ディテクタ側に戻るAF用レーザー光の光束径)
次に、ディテクタ42側に戻るAF用レーザー光L2の光束径とAF用レーザー光L2との関係について説明する。
【0064】
図5は、対物レンズ及び検出光学系の結像レンズとAF用レーザー光の関係を示す図である。なお、
図5では、簡単のため、対物レンズ24、検出光学系の結像レンズ40以外の光学素子の図示を省略する。
【0065】
まず、オートフォーカス光学系38を省略して単純化した光学系について考える。
図5に示すように、検出光学系の結像レンズ40に対する入射光の高さをh
TL、結像レンズ40の焦点距離をf
TL、対物レンズ24と被加工物Wとの間の距離の変化量がδ
0のときの結像レンズ40の結像位置(集光点)の変化量をΔとする。ディテクタ42の受光面上での光束の広がりがAF信号に比例すると考えられるため、下記の式(7)が得られる。
【0066】
AF=kΔ(hTL/fTL) …(7)
ここで、kは比例定数である。式(7)から、結像レンズ40に入射する光束径が大きいほどAF信号の出力が大きくなる。また、式(7)から、結像レンズ40の焦点距離fTLが小さいほどAF信号の出力が大きくなる。加工深さによらず、一定のAF信号を得るためにはディテクタ光路TLに入射する光束径を一定にする必要がある。
【0067】
対物レンズ24と結像レンズ40の縦倍率を考慮すると、下記の式(8)が得られる。なお、縦倍率をα、横倍率をβとする。
【0068】
Δ=δ0α=δ0β2=δ0(fTL/fobj)2 …(8)
式(8)を式(7)に代入すると、下記の式(9)が得られる。
【0069】
AF=kδ0β2(hTL/fTL)
=kδ0(fTL/fobj)2(hTL/fTL)
=kδ0(fTL/fobj
2)hTL …(9)
式(9)から、AF信号は、fTLに比例し、1/fobj
2に比例し、hTLに比例することがわかる(AF∝fTL、AF∝(1/fobj
2)、AF∝hTL)。
【0070】
次に、オートフォーカス光学系38を含めた光学系について考える。この場合、式(9)において、対物レンズ24の焦点距離fobjに代えて、対物レンズ24とオートフォーカス光学系38の合成焦点距離(実効焦点距離)f´objを用いればよい。
【0071】
オートフォーカス光学系38を含めた光学系の場合の対物レンズ24のレンズ瞳位置24Aにおける入射光の高さをhpとすると、下記の式(10)が得られる。
【0072】
f´obj=fobj(hTL/hp) …(10)
式(9)及び式(10)から、下記の式(11)が得られる。
【0073】
AF=kδ0(fTL/f´obj
2)hTL
=kδ0(fTL/fobj
2)(hp
2/hTL) …(11)
式(11)から、対物レンズ24のレンズ瞳位置24Aにおける入射光の高さhpが変化すると、AF特性が変化することがわかる。このことは、従来のAF光学系において、加工深さが深くなったときに、対物レンズに対する光束径が小さくなり(入射光の高さが低くなり)、フォーカス感度が低下することと対応している。
【0074】
一方、式(11)から、結像レンズ40に対する入射光の高さhTLが小さくなると、AF信号が増大、すなわち、フォーカス引き込み範囲が狭くなることがわかる。
【0075】
式(11)から、異なる対物レンズ24を用いた場合にAF特性の変化を抑制するためには、対物レンズ24の焦点距離fobjの変化量に応じてfTL,hp,hTL等のパラメータを変更し、式(11)のAFの値が概略揃うようにすればいいことがわかる。
【0076】
対物レンズ24の開口数をNAobjとすると、NAobj=(hp/fobj)であるから、下記の式(12)が得られる。
【0077】
AF=kδ0(fTL/f´obj
2)hTL
=kδ0(fTL/fobj
2)(hp
2/hTL)
=kδ0NAobj
2(fTL/hTL) …(12)
式(12)から、対物レンズ24の開口数NAobjが大きいほど、AF信号が増大することがわかる。
【0078】
本実施形態によれば、第2レンズ群38Bの後側焦点位置と対物レンズ24のレンズ瞳位置24Aとを一致させることにより(式(3))、対物レンズ24のレンズ瞳位置24AにおけるAF用レーザー光L2の光束径を一定に保つことができる。また、対物レンズ24の焦点距離f
objの変化量に応じてf
TL,h
p,h
TL等のパラメータが調整されているので、ディテクタ42側に戻るAF用レーザー光L2の光束径(
図5のh
TL)を略一定に保ちつつ、AF信号の強度を確保することが可能になる。したがって、フォーカス引き込み範囲及びフォーカス感度の変化を抑制することができる。
【0079】
図6は、本実施形態に係るオートフォーカス光学系により得られるAF特性を示すグラフである。
図7は、比較例のAF特性を示すグラフである。
図6及び
図7の横軸はデフォーカス距離(変位)であり、縦軸はAF信号の出力である。
【0080】
図6に示すAF特性カーブでは、C11からC15の順に加工深さが深くなっている。また、
図7に示すAF特性カーブでは、C21からC25の順に加工深さが深くなっている。加工深さは、C11及びC21が0、C12及びC22が200μm、C13及びC24が400μm、C14及びC24が600μm、C15及びC25が800μmである。
【0081】
図7に示す比較例では、加工深さが浅いほど、フォーカス引き込み範囲が狭くなっている。一方、加工深さが深いほど、フォーカス引き込み範囲におけるAF特性カーブC21からC25の変化の割合(傾き)が小さく、フォーカス感度が低くなっている。
【0082】
これに対して、
図6に示す例は、AF特性カーブC11からC15において、フォーカス引き込み範囲及びフォーカス感度の変化が抑制されていることがわかる。
【0083】
(対物レンズの特性の調整)
式(9)から、AF信号は、1/fobj
2に比例するので、対物レンズ24の倍率が高いほど(焦点距離fobjが短いほど)、AF信号の出力が大きくなり、フォーカス引き込み範囲が狭くなる。
【0084】
図8は、対物レンズの倍率ごとのAF特性の例を示すグラフである。
図8から、100倍の対物レンズのAF特性カーブC
100Xの方が50倍の対物レンズのAF特性カーブC
50XよりもAF信号の絶対値が大きく、フォーカス引き込み範囲が狭い。そして、AF特性カーブC
50Xの傾きは、AF特性カーブC
100Xの傾きよりも小さく、フォーカス感度が低いことがわかる。
【0085】
上記の式(11)及び式(12)から、対物レンズ24の実質焦点距離を短くすることができれば、低倍率の対物レンズを用いた場合でも、AF信号の出力を増大させることができる。
【0086】
AF特性カーブC
50XBEは、50倍の対物レンズを用いた光学系において、ビームエキスパンダを導入した例を示している。
図2に示す例において、オートフォーカス光学系38と対物レンズ24との間にビームエキスパンダを挿入して、対物レンズ24に向かうAF用レーザー光L2の光束径を拡大すると、オートフォーカス光学系38と対物レンズ24との間の距離を短くすることができる、実質的な焦点距離を短縮することできる。
図8から、ビームエキスパンダを用いた場合のAF特性カーブC
50XBEは、AF特性カーブC
100Xに近づいていることがわかる。
【0087】
上記のように、ビームエキスパンダを用いることにより、低倍率の対物レンズを用いた場合でも、AF信号の出力を増大させて、フォーカス感度を高めることが可能となる。
【0088】
(光源の大きさとAF特性の関係)
なお、AF用光源32の大きさもAF特性に影響を及ぼす。AF用光源32が大きい場合には、ディテクタ42に投影される光源像は、全体の包絡線で表される。そして、AF用光源32の大きさに相当する部分は、合焦の前後であまり変化しない。その結果、AF用光源32が大きい場合には、合焦位置付近でAF特性カーブがなだらかに変化し、フォーカス引き込み範囲を広げる作用を持つ。
【0089】
したがって、本実施形態においても、AF用光源32とナイフエッジ34との間に配置したピンホールのサイズを調整することで、フォーカス引き込み範囲を拡大又は縮小することが可能である。
【0090】
[変形例1]
上記の実施形態では、オートフォーカス光学系38を構成するレンズ群のうちの1つ(第1レンズ群38A)のみを移動させたが、オートフォーカス光学系38を構成する複数のレンズ群を移動させるようにしてもよい。
【0091】
図9は、変形例1に係るオートフォーカス光学系を示す図である。なお、以下の説明において、上記の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0092】
図9に示すオートフォーカス光学系38-1は、第1レンズ群38A-1と第2レンズ群38B-1とを備えている。第1レンズ群38A-1及び第2レンズ群38B-1は、いずれもAF用レーザー光L2の光路方向に移動可能に配置されている。
【0093】
図9に示す例でも、第1レンズ群38A-1及び第2レンズ群38B-1の移動量及び移動方向を調整することにより、対物レンズ24のレンズ瞳位置24AにおけるAF用レーザー光L2の光束径を一定に保つことが可能になる。
【0094】
なお、
図9に示す例では、第1レンズ群38A-1は負のパワーを有しており、第2レンズ群38B-1は正のパワーを有しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1レンズ群38A-1は正のパワーを有していてもよい。
【0095】
また、オートフォーカス光学系38-1を構成するレンズ群の数は2つに限定されない。2以上のレンズ群を有するオートフォーカス光学系38-1であっても、2以上のレンズ群のうちの任意の数のレンズ群を移動群として移動させることにより、対物レンズ24のレンズ瞳位置24AにおけるAF用レーザー光L2の光束径を一定に保つことが可能になる。
【0096】
[変形例2]
上記の実施形態及び変形例では、オートフォーカス光学系(38及び38-1)を構成するレンズ群の一部又は全部を移動群としたが、移動群を設けない態様も可能である。
【0097】
図10は、変形例2に係るオートフォーカス光学系を示す図である。なお、以下の説明において、上記の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0098】
図10に示すオートフォーカス光学系60は、焦点距離可変レンズ62及びアフォーカル光学系64を備える。ここで、焦点距離可変レンズ62及びアフォーカル光学系64並びに制御部50は、本発明のフォーカス機構として機能する。
【0099】
焦点距離可変レンズ62は、例えば、ダイナモルフレンズであり、弾性変形可能で透明な材料(例えば、ガラス等)により形成された2枚の板部材と、円筒部材とを備える。2枚の板部材は、円板状であり、円筒部材の両端に平行に取り付けられる。2枚の板部材と円筒部材によって囲まれる空間には、透明な液体(例えば、純水等)が充填される。円筒部材には、複数の圧電素子が取り付けられる。制御部50によりこの圧電素子に電流が印加されると、圧電素子の変形により円筒部材に力が作用し、円筒部材の両端に取り付けられた板部材が変形する。これにより、焦点距離可変レンズ62のレンズ表面(界面)の形状が変化し、焦点距離が変わる。なお、焦点距離可変レンズ62の種類については、上記の例に限定されない。
【0100】
アフォーカル光学系64は、第1レンズ群64Aと、第1レンズ群64Aよりも対物レンズ24に近い側に配置された第2レンズ群64Bとからなる4F光学系である。第1レンズ群64A及び第2レンズ群64Bは、それぞれ1又は複数のレンズからなる。焦点距離可変レンズ62は、アフォーカル光学系64の第1レンズ群64Aの前側焦点位置からずれた位置に配置されており、対物レンズ24のレンズ瞳位置24Aは、第2レンズ群64Bの後側焦点位置からずれた位置に配置されている。なお、本実施形態では、対物レンズ24のレンズ瞳位置24Aは、第2レンズ群64Bの後側焦点位置からずれた位置に配置されているが、次に述べる共役関係が満たされていればこれに限定されない。
【0101】
焦点距離可変レンズ62は、アフォーカル光学系64を介して、対物レンズ24のレンズ瞳位置24Aと共役関係となっている。このため、焦点距離可変レンズ62の焦点距離を変更した場合でも、
図10の(a)から(c)に示すように、レンズ瞳位置24Aにおける光束径を一定に保つことが可能になる。
【0102】
変形例2によれば、焦点距離可変レンズ62を用いたことにより、オートフォーカス光学系60を構成するレンズ群の中に移動群を設けることなく、加工深さの変更によるAF特性の変化を抑制することが可能になる。
【0103】
なお、上記の各実施形態では、オートフォーカス光学系(38、38-1及び60)をレーザー加工装置10に適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。被加工物Wの内部にレーザー光を集光させる装置であれば、レーザー加工装置10以外の加工光学装置(例えば、亀裂検出装置等)に適用することも可能である。
【0104】
[実施例]
次に、上記のオートフォーカス光学系(38、38-1及び60)の具体的な実施例(パラメータ)について説明する。
【0105】
(実施例1)
上記実施形態に係るオートフォーカス光学系38において、第2レンズ群(固定群)の38Bの後側焦点位置と対物レンズ24のレンズ瞳位置24Aとの間の距離(以下、Δdという。)が長くなると、加工深さの変更によるAF特性カーブの変化が大きくなる。このため、距離Δdは、一例で50mm以下とすることが好ましく、ゼロであること(第2レンズ群の38Bの後側焦点位置とレンズ瞳位置24Aとが概略一致すること)がより好ましい。
【0106】
(実施例2)
上記実施形態に係るオートフォーカス光学系38において、第2レンズ群38Bと対物レンズ24のレンズ瞳位置24Aとの間の距離(
図4のd
2)が短すぎると、レンズの配置が困難になる。また、距離d
2が長すぎると、第2レンズ群38Bの径が大きくなる。そして、第2レンズ群38Bの焦点距離f
2が長くなるため、第1レンズ群38Aの移動量が大きくなる。このため、距離d
2は、一例で50~250mmとすることが好ましい。
【0107】
なお、変形例1に係るオートフォーカス光学系38-1においても、対物レンズ24に最も近いレンズ群とレンズ瞳位置24Aとの間の距離を一例で50~250mmとすることが好ましい。
【0108】
(実施例3)
上記実施形態に係るオートフォーカス光学系38において、第2レンズ群38Bの焦点距離f2が長すぎると、第1レンズ群38Aの移動量が大きくなりすぎる。焦点距離f2が短すぎると、第2レンズ群38Bを構成するレンズの焦点距離が短くなりすぎて、第2レンズ群38Bの構成が困難になる。このため、第2レンズ群38Bの焦点距離f2は、一例で10~40mmとすることが好ましい。
【0109】
(実施例4)
上記実施形態に係るオートフォーカス光学系38において、第1レンズ群38Aの移動量dg1、第2レンズ群38Bの焦点距離f2及び加工深さDpの関係(式(6))において、実際の移動量dg1にはマージンをもたせることができる。具体的には、移動量dg1は、一例で0.8(f2
2/fobj
2)(Dp/Np)<dg1<1.2(f2
2/fobj
2)(Dp/Np)の範囲とすることができる。
【0110】
(実施例5)
変形例2に係る焦点距離可変レンズ62を含むオートフォーカス光学系60では、焦点距離可変レンズ62の共役点と対物レンズ24のレンズ瞳位置24Aとの間の距離D3が長すぎると、加工深さの変更によるAF特性カーブの変化が大きくなる。このため、距離D3は、一例で50mm以下であることが好ましく、ゼロであること(焦点距離可変レンズ62の共役点とレンズ瞳位置24Aが概略一致すること)がより好ましい。
【符号の説明】
【0111】
10…レーザー加工装置、12…ステージ、20…レーザー照射装置、21…レーザー光源、23…ダイクロイックミラー、24…対物レンズ(集光レンズ)、25…第1アクチュエータ、30…AF装置、32…AF用光源、34…ナイフエッジ、36…ハーフミラー、38、38-1…オートフォーカス光学系、40…結像レンズ、42…ディテクタ、44…AF信号処理部、46…第2アクチュエータ、50…制御部、60…オートフォーカス光学系、62…焦点距離可変レンズ、64…アフォーカル光学系