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特許7394377無線給電システム、送電装置、及び受電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】無線給電システム、送電装置、及び受電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20231201BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20231201BHJP
   H02J 50/90 20160101ALI20231201BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231201BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20231201BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20231201BHJP
   B60L 53/60 20190101ALI20231201BHJP
   B60L 53/38 20190101ALI20231201BHJP
【FI】
H02J50/10
H02J50/40
H02J50/90
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/60
B60L53/38
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019186300
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021061724
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業、「第三世代ワイヤレスインホイールモータを開発と実証」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】藤本 博志
(72)【発明者】
【氏名】清水 修
(72)【発明者】
【氏名】芥川 恵造
(72)【発明者】
【氏名】若尾 泰通
(72)【発明者】
【氏名】桑山 勲
(72)【発明者】
【氏名】郡司 大輔
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105966259(CN,A)
【文献】特開平08-126106(JP,A)
【文献】特開2009-106136(JP,A)
【文献】特開2014-195350(JP,A)
【文献】特開2011-135772(JP,A)
【文献】特開平09-017667(JP,A)
【文献】特開2015-079822(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017218014(DE,A1)
【文献】特開2015-23667(JP,A)
【文献】国際公開第2014/184864(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/10
H02J 50/40
H02J 50/90
H02J 7/00
B60M 7/00
B60L 5/00
B60L 53/60
B60L 53/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に設置された送電装置であって、無線により電力を送電する送電コイルを備え、前記道路に設置された状態で、前記道路の幅方向断面において、前記送電コイルのコイル面の垂線が前記道路の路面の垂線に対して傾斜するように構成されている、送電装置と、
無線により電力を受電する受電コイルを備え、前記受電コイルの少なくとも一部が移動体の車輪に収容されている、受電装置と、
を含み、
前記道路には少なくとも1つの走行レーンが設けられ、
前記送電コイルのコイル面は、前記道路の幅方向断面において、前記走行レーンの幅方向内側に向かうに従って、前記路面に対して垂直方向上側に向かうように傾斜している、無線給電システム。
【請求項2】
前記送電コイルは、前記道路の前記路面よりも、前記路面に対して垂直方向下側に位置する、請求項1に記載の無線給電システム。
【請求項3】
前記送電装置は、前記道路の延在方向に沿って複数並んで設置されている、請求項1又は2に記載の無線給電システム。
【請求項4】
前記道路には少なくとも1つの走行レーンが設けられ、
前記走行レーンには、前記走行レーンの幅方向に少なくとも1対の前記送電装置が設置されている、請求項1からのいずれか一項に記載の無線給電システム。
【請求項5】
前記送電装置は、前記受電装置が前記送電装置から前記電力を受電可能な位置に存在すると判定した場合に、無線により電力を送電する、請求項1からのいずれか一項に記載の無線給電システム。
【請求項6】
前記受電装置は、前記移動体の幅方向断面において、前記受電コイルのコイル面の垂線が、前記車輪の前記路面との接地面の垂線に対して傾斜するように構成されている、請求項1からのいずれか一項に記載の無線給電システム。
【請求項7】
前記受電コイルのコイル面は、前記移動体の幅方向断面において、前記移動体の幅方向内側に向かうに従って、前記車輪の前記路面との接地面に対して垂直方向上側に向かうように傾斜している、請求項に記載の無線給電システム。
【請求項8】
前記受電コイルのコイル面は、前記移動体の幅方向断面において、前記車輪の前記路面との接地面に略平行に延在している、請求項1からのいずれか一項に記載の無線給電システム。
【請求項9】
前記車輪は、タイヤ及びホイールから成るタイヤ・ホイール組立体である、請求項1からのいずれか一項に記載の無線給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線給電システム、送電装置、及び受電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路等の路面に設けられた送電装置が、車両に設置された受電装置に、無線で電力を供給する無線給電技術が知られている。例えば、特許文献1には、車両の下側に受電装置を備えることによって、路面に設けられた送電装置からの電力を受電可能な車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-068077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の無線給電技術では、道路等の路面に設けられた送電装置と、路面の上を走行する移動体に設置された受電装置との距離が離れている場合、送電装置と受電装置との間の空間に、小動物又は金属等の障害物が入り込み、障害物の周囲に渦電流が発生して、給電効率が低下するおそれがあった。また、送電装置と受電装置との間に入り込んだ小動物又は金属等が加熱され、発火するおそれがあった。このため、移動体に対して無線で電力を供給する無線給電技術の更なる有用性の向上が求められている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、無線給電の有用性を向上させることができる、無線給電システム、送電装置、及び受電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る無線給電システムは、
道路に設置された送電装置であって、無線により電力を送電する送電コイルを備え、前記道路に設置された状態で、前記道路の幅方向断面において、前記送電コイルのコイル面の垂線が前記道路の路面の垂線に対して傾斜するように構成されている、送電装置と、
無線により電力を受電する受電コイルを備え、前記受電コイルの少なくとも一部が移動体の車輪に収容されている、受電装置と、
を含む。
本発明に係る無線給電システムによれば、送電コイルと受電コイルとの間の空間に障害物が入り込むおそれを低減させることができ、無線給電における給電効率を向上させることができる。このため、本発明に係る無線給電システムによれば、移動体に対して無線で電力を供給する無線給電技術の有用性が向上する。
【0007】
本発明に係る無線給電システムでは、前記送電コイルは、前記道路の前記路面よりも、前記路面に対して垂直方向下側に位置することが好ましい。
かかる構成によれば、無線給電システムは、道路を走行する移動体の車輪が、送電装置の送電コイルに接触して、送電コイルが損傷するおそれを低減させることができる。
【0008】
本発明に係る無線給電システムでは、前記道路には少なくとも1つの走行レーンが設けられ、前記送電コイルのコイル面は、前記道路の幅方向断面において、前記走行レーンの幅方向内側に向かうに従って、前記路面に対して垂直方向上側に向かうように傾斜していることが好ましい。
かかる構成によれば、無線給電システムにおいて、車輪が送電装置の上側を走行しないように、送電装置を設置することができる。そのため、無線給電システムは、車輪が送電装置の上側を走行して、車輪からの荷重により送電装置が損傷するおそれを低減できる。
【0009】
本発明に係る無線給電システムでは、前記道路には少なくとも1つの走行レーンが設けられ、前記送電コイルのコイル面は、前記道路の幅方向断面において、前記走行レーンの幅方向内側に向かうに従って、前記路面に対して垂直方向下側に向かうように傾斜していることが好ましい。
かかる構成によれば、無線給電システムは、道路を走行する移動体の受電装置に対して、移動体の幅方向外側から電力を送電することができる。そのため、無線給電システムは、車輪が送電装置の上側を走行して、車輪からの荷重により送電装置が損傷するおそれを更に低減させることができる。
【0010】
本発明に係る無線給電システムでは、前記送電装置は、前記道路の延在方向に沿って複数並んで設置されていることが好ましい。
かかる構成によれば、無線給電システムは、道路を走行中の移動体の受電装置に対して、電力を送電することができる。
【0011】
本発明に係る無線給電システムでは、前記道路には少なくとも1つの走行レーンが設けられ、前記走行レーンには、前記走行レーンの幅方向に少なくとも1対の前記送電装置が設置されていることが好ましい。
かかる構成によれば、無線給電システムは、複数の車輪が移動体の幅方向に並んで取り付けられている場合に、それぞれの車輪に対して、電力を送電することができる。
【0012】
本発明に係る無線給電システムでは、前記送電装置は、前記受電装置が前記送電装置から前記電力を受電可能な位置に存在すると判定した場合に、無線により電力を送電することが好ましい。
かかる構成によれば、無線給電システムは、受電装置が受電可能な位置に存在しない場合に、送電装置が無線により電力を送電することによる電力消費を低減させることができる。
【0013】
本発明に係る無線給電システムでは、前記受電装置は、前記移動体の幅方向断面において、前記受電コイルのコイル面の垂線が、前記車輪の前記路面との接地面の垂線に対して傾斜するように構成されていることが好ましい。
かかる構成によれば、無線給電システムは、送電コイルのコイル面の垂線が路面の垂線に対して傾斜している送電装置から送電された電力の、受電装置における受電効率を向上させることができる。
【0014】
本発明に係る無線給電システムでは、前記受電コイルのコイル面は、前記移動体の幅方向断面において、前記移動体の幅方向内側に向かうに従って、前記車輪の前記路面との接地面に対して垂直方向上側に向かうように傾斜していることが好ましい。
かかる構成によれば、無線給電システムは、移動体の受電装置に対して移動体の幅方向内側から無線により送電された電力の、受電装置における受電効率を向上させることができる。
【0015】
本発明に係る無線給電システムでは、前記受電コイルのコイル面は、前記移動体の幅方向断面において、前記移動体の幅方向内側に向かうに従って、前記車輪の前記路面との接地面に対して垂直方向下側に向かうように傾斜していることが好ましい。
かかる構成によれば、無線給電システムは、移動体の受電装置に対して移動体の幅方向外側から無線により送電された電力の、受電装置における受電効率を向上させることができる。
【0016】
本発明に係る無線給電システムでは、前記受電装置は、前記移動体の幅方向断面において、前記受電コイルのコイル面が、前記車輪の前記路面との接地面に略平行となるように構成されていることが好ましい。
かかる構成によれば、無線給電システムは、道路の幅方向における送電装置の設置位置、或いは道路に設置された送電装置の送電コイルの傾き等が異なる場合に、送電装置から無線により送電される電力の、受電装置における受電効率のばらつきを低減させることができる。
【0017】
本発明に係る無線給電システムでは、前記車輪は、タイヤ及びホイールから成るタイヤ・ホイール組立体であることが好ましい。
かかる構成によれば、無線給電システムは、タイヤ及びホイールにより車輪の内部空間が車輪の外部と区画されることで、送電コイルと受電コイルとの間の空間に障害物が入り込むおそれを低減させることができる。
【0018】
本発明に係る送電装置は、無線により電力を送電する送電コイルを備え、道路に設置された状態で、前記道路の幅方向断面において、前記送電コイルのコイル面の垂線が前記道路の路面の垂線に対して傾斜するように構成されている。
本発明に係る送電装置によれば、受電装置を備える移動体が道路を走行中に、無線により電力を送電することができる。更に、本発明に係る送電装置によれば、移動体の車輪が送電装置の上側を走行して、車輪からの荷重により送電装置が損傷するおそれを低減させることができる。このため、本発明に係る送電装置によれば、移動体に対して無線で電力を供給する無線給電技術の有用性が向上する。
【0019】
本発明に係る受電装置は、無線により電力を受電する受電コイルを備え、前記受電コイルの少なくとも一部が移動体の車輪に収容された状態で、前記移動体の幅方向断面において、前記受電コイルのコイル面の垂線が、前記車輪の路面との接地面の垂線に対して傾斜するように構成されている。
本発明に係る受電装置によれば、移動体が道路を走行中に、道路に設置された送電装置から、無線により電力を受電することができる。これによって、移動体を駆動させる電力を移動体の外部から受電することができるため、移動体に設置される蓄電池の小型化及び軽量化を可能にし、ひいては、移動体の燃費向上を可能にする。このため、本発明に係る受電装置によれば、移動体に対して無線で電力を供給する無線給電技術の有用性が向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、移動体に対して無線で電力を供給する無線給電技術の有用性を向上させることができる、無線給電システム、送電装置、及び受電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る無線給電システムを、車輪の幅方向断面を用いて概略的に示す、概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る無線給電システムにおける車輪の一例としてのタイヤ・ホイール組立体を、車輪の幅方向断面を用いて概略的に示す、概略図である。
図3】本発明の一実施形態に係る送電装置の構成例を概略的に示す、機能ブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る送電装置が備える送電コイルのコイル面及びその傾きを、道路の幅方向断面を用いて概略的に示す、概略図である。
図5】本発明の一実施形態に係る受電装置の構成例を概略的に示す、機能ブロック図である。
図6】本発明の一実施形態に係る受電装置が備える受電コイルのコイル面及びその傾きを、道路の幅方向断面を用いて概略的に示す、概略図である。
図7】本発明の一実施形態に係る無線給電システムにおける送電装置の道路への設置例を示す、概略図である。
図8】本発明の一実施形態に係る無線給電システムの変形例を、車輪の幅方向断面を用いて概略的に示す、概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る無線給電システム、送電装置、及び受電装置について、図面を参照して説明する。各図において共通する部品・部位には同一の符号を付している。本明細書において、車輪の幅方向とは、車輪の回転軸と平行な方向をいう。車輪の径方向とは、車輪の回転軸と直交する方向をいう。道路又は走行レーンの延在方向とは、道路又は走行レーンが延在する方向をいう。道路又は走行レーンの幅方向とは、延在方向と直交する方向をいう。移動体の幅方向とは、移動体が走行する方向と直交する方向をいう。
【0023】
(無線給電システムの構成)
図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態に係る無線給電システム1の構成について説明する。
【0024】
図1には、本発明の一実施形態に係る無線給電システム1を、移動体5の車輪6の幅方向断面を用いて概略的に示す、概略図が示されている。無線給電システム1は、送電装置2と、受電装置3とを含む。送電装置2は、道路4に設置されている。受電装置3は、移動体5に設置されている。これによって、無線給電システム1では、移動体5が道路4上を道路4の延在方向に走行する際に、送電装置2から受電装置3に対して、無線による電力の送電が行われる。
【0025】
送電装置2は、送電コイル21を備えている。送電装置2は、送電コイル21により、無線により電力を送電する。送電コイル21は、道路4の路面よりも、路面に対して垂直方向下側に位置している。具体的には、送電コイル21は、道路4の路面よりも下に埋設されている。本実施形態では、送電コイル21は、道路4の路面から少なくとも一部が露出するように、道路4の路面よりも下に埋設されている。図1において、送電コイル21は、説明の簡略のため、模式化して示されている。
【0026】
受電装置3は、受電コイル31を備えている。受電コイル31は、送電装置2の送電コイル21から無線により送電される電力を受電する。受電装置3は、移動体5に設置されている。本実施形態において、受電装置3は、受電コイル31の少なくとも一部が移動体5の車輪6に収容されている。本実施形態では、受電装置3は、受電コイル31の少なくとも一部が移動体5の車輪6に収容されるように、移動体5の車輪6に取り付けられている。しかしながら、受電装置3は、受電コイル31の少なくとも一部が移動体5の車輪6に収容されるように、移動体5の本体に取り付けられていてもよい。図1において、受電コイル31は、説明の簡略のため、模式化して示されている。
【0027】
道路4は、移動体5による交通に用いられる路面を有する。本明細書では、「路面」は、移動体5が車輪6で走行する道路4の表面である。本実施形態では、道路4は、例えば車道である。しかしながら、道路4は、車道に限られず、歩道、農道、林道、滑走路、駐車場、空き地、及び広場等を含み得る。移動体5の交通には、移動体5の走行、停車及び駐車が含まれる。
【0028】
道路4の路面には、少なくとも1つの走行レーン41が設けられ得る。走行レーン41は、移動体5が走行する領域として区画された路面の領域である。道路4には、並走可能な移動体5の数に応じて、複数の走行レーン41が設けられていてもよい。道路4の路面には、走行レーン41を示すために、白線等の区画線が引かれていてもよい。
【0029】
本実施形態では、道路4の路面は、例えばアスファルトで舗装されている。しかしながら、道路4の路面は、アスファルトに限られず、コンクリート、石、煉瓦、土、及び砂利等で構成されていてもよい。
【0030】
移動体5は、車輪6により道路4の路面を走行する。本実施形態では、移動体5は、例えば電気自動車又はハイブリッド車等の、動力源にモータが含まれる自動車である。自動車には、乗用車、トラック、バス、及び自動二輪車等が含まれる。しかしながら、移動体5には、自動車に限られず、トラクター等の農業用車両、ダンプカー等の工事用又は建設用車両、飛行機、ヘリコプター、原動機付自転車、電動自転車、並びに電動車いす等が含まれる。
【0031】
車輪6は、移動体5の移動に用いられる。車輪6は、移動体5に取り付けられた状態で、道路4の路面と接する接地面を有している。本実施形態では、車輪6は、タイヤ61をホイール62に装着させたタイヤ・ホイール組立体であるが、これに限られない。本明細書において、車輪6の「接地面」は、車輪6がタイヤ・ホイール組立体である場合、タイヤ61の接地面、即ち、タイヤ61を適用リムに装着し、規定内圧を充填し、最大荷重を負荷した状態で、路面と接する、タイヤ61の表面をいう。
【0032】
本明細書において、「適用リム」とは、空気入りタイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指すが、これらの産業規格に記載のないサイズの場合は、空気入りタイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。「適用リム」には、現行サイズに加えて将来的に前述の産業規格に含まれ得るサイズも含まれる。「将来的に記載されるサイズ」の例として、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズが挙げられ得る。
【0033】
本明細書において、「規定内圧」とは、前述したJATMA YEAR BOOK等の産業規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいい、前述した産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。また、本明細書において、「最大荷重」とは、前述した産業規格に記載されている適用サイズのタイヤにおける最大負荷能力に対応する荷重、又は、前述した産業規格に記載のないサイズの場合には、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する荷重を意味する。
【0034】
図2には、本発明の一実施形態に係る無線給電システム1における車輪6の一例としてのタイヤ・ホイール組立体を、車輪6の幅方向断面を用いて概略的に示す、概略図が示されている。
【0035】
図2に示されるように、タイヤ61は、一対のビード部611と、一対のサイドウォール部612と、トレッド部613とを有している。ビード部611は、タイヤ61をホイール62のリム部621に装着させたときに、ビード部611の径方向内側及び幅方向外側がリム部621に接するように構成されている。サイドウォール部612は、トレッド部613とビード部611との間に延在している。サイドウォール部612は、ビード部611よりも、車輪6の径方向外側に位置している。トレッド部613は、サイドウォール部612よりも車輪6の径方向外側に位置し、タイヤ61の接地面を含む。
【0036】
タイヤ61は、天然ゴム及び合成ゴム等のゴムで形成されており、カーカス、ベルト及びビードワイヤ等、スチール等の金属で形成されている部品を含み得る。例えば、カーカス、ベルト及びビードワイヤ等の部品の少なくとも一部は、非磁性材料で形成されていてもよい。これによって、タイヤ61は、タイヤ61の強度を維持しつつ、送電装置2と受電装置3との間に金属が存在することで、送電コイル21が生成した磁界が受電コイル31に到達するまでに減衰することを軽減し、ひいては、送電装置2から受電装置3への無線給電の給電効率を向上させることができる。但し、カーカス、ベルト及びビードワイヤ等の部品の少なくとも一部は、非磁性材料で形成されていなくてもよい。
【0037】
非磁性材料には、透磁率が小さい、常磁性体及び反磁性体が含まれ得る。非磁性材料として、例えば、ポリエステル及びナイロン等の熱可塑性樹脂、ビニルエステル樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、並びにその他の合成樹脂を含む、樹脂材料を用いることができる。樹脂材料には、更に、補強繊維として、ガラス、カーボン、グラファイト、アラミド、ポリエチレン、及びセラミック等の繊維を含ませることができる。非磁性材料として、樹脂に限らず、ゴム、ガラス、カーボン、グラファイト、アラミド、ポリエチレン、及びセラミック等を含む、任意の非金属材料を用いることができる。更に、非磁性材料として、アルミ等の常磁性体、又は銅等の反磁性体を含む、金属材料を用いることができる。
【0038】
ホイール62は、タイヤ61を装着するための円筒状のリム部621と、リム部621の径方向内側に設けられ、移動体5のシャフト52に固定されるハブ部622と、ハブ部622に支持固定されると共にリム部621を支持固定するディスク部623と、を有している。
【0039】
ホイール62は、スチール等の金属で形成され得るが、これに限られない。ホイール62のリム部621、ハブ部622、及びディスク部623の少なくとも一部は、前述した非磁性材料で形成されていてもよい。これによって、ホイール62の強度を維持しつつ、送電装置2と受電装置3との間にスチール等の金属が存在することで、送電コイル21が生成した磁界が受電コイル31に到達するまでに減衰することを軽減し、ひいては、送電装置2から受電装置3への無線給電の給電効率を向上させることができる。但し、ホイール62のリム部621、ハブ部622、及びディスク部623の少なくとも一部は、非磁性材料で形成されていなくてもよい。
【0040】
図2において、受電装置3は、ホイール62のハブ部622に取り付けられている。この状態において、受電コイル31の少なくとも一部は、車輪6に収容されている。「車輪に収容される」とは、車輪の外周面よりも径方向内側で、車輪の幅方向の両端よりも内側に配置されることを意味する。本実施形態では、受電コイル31の大部分が、車輪6に収容されている。
【0041】
受電装置3は、ホイール62のハブ部622のカバー等、車輪6の回転に伴って回転しない車輪6の部位に設置されている。これによって、受電装置3は、タイヤ61の回転に応じて車輪6の内部における受電コイル31の相対的な位置が変わらないため、車輪6の外部から無線により電力を安定的に供給することが容易になる。
【0042】
受電コイル31全体のうち、移動体5の車輪6に収容されている部分の割合は、任意に定められていてもよい。受電コイル31全体のうち、車輪6に収容されている部分の割合が大きくなるほど、送電コイル21からの給電中に、送電コイル21と受電コイル31との間の空間に障害物が入り込みにくい。一方で、受電コイル31全体のうち、車輪6に収容されている部分の割合が小さくなるほど、送電コイル21からの給電中に、送電コイル21により生成された磁界が受電コイル31に到達するまでに減衰しにくい。
【0043】
受電装置3は、ホイール62のハブ部622に限られず、車輪6の任意の位置に設置されていてもよい。受電装置3は、例えば、ホイール62のリム部621の内周面、或いはリム部621の外周面に設置されていてもよい。更に、受電装置3は、タイヤ61のトレッド部613の内周面に設置されていてもよく、或いはタイヤ61のトレッド部613の内部に設置されていてもよい。受電装置3をよりタイヤ61の接地面に近い位置に設置することで、移動体5が道路4を走行中における送電装置2と受電装置3との間の距離が短くなり、給電効率を更に向上させることができる。
【0044】
(送電装置の構成)
次に、図3及び図4を参照して、本発明の一実施形態に係る無線給電システム1に含まれる送電装置2の構成について説明する。
【0045】
図3には、本発明の一実施形態に係る送電装置2の構成例を概略的に示す、機能ブロック図が示されている。図3に示されるように、送電装置2は、送電コイル21に加えて、電力変換部22、蓄電部23、検出部24、通信部25、記憶部26、及び制御部27を備えている。送電コイル21、電力変換部22、蓄電部23、検出部24、通信部25、記憶部26、及び制御部27は、例えばLAN(Local Area Network)等のネットワークを介して、有線又は無線で互いに通信可能に接続されている。
【0046】
送電コイル21は、交流磁界を生成する。本実施形態では、送電コイル21は、全体を環状に構成されている。本明細書において、環状の送電コイル21によって囲まれている平面を、送電コイル21のコイル面S1ともいう。換言すれば、送電コイル21は、コイル面S1を形成するようにコイル面S1の面内方向に巻き回されている。送電コイル21は、送電コイル21に対して垂直方向に向けて、即ち、コイル面S1の垂線が延びる方向に向けて交流磁界を生成することができる。
【0047】
図4には、本発明の一実施形態に係る送電装置2が備える送電コイル21のコイル面S1及びその傾きを、道路の幅方向断面を用いて概略的に示す、概略図が示されている。図4に示されるように、送電装置2は、道路4に設置された状態で、道路4の幅方向断面において、送電コイル21のコイル面S1の垂線が路面の垂線に対して傾斜するように構成されている。換言すれば、送電コイル21のコイル面S1は、道路4に設置された状態で、道路4の幅方向断面において、路面に対して傾斜している。より具体的には、送電コイル21は、送電装置2が道路4に設置された状態で、道路4の幅方向断面において、コイル面S1の垂線Vが路面の垂線に対して傾きθ1を有するように、支持部材211を介して送電装置2の筐体に支持固定されている。傾きθ1は、送電コイル21のコイル面S1の垂線が路面の垂線と平行にならない範囲で、任意の角度に定められてもよい。支持部材211及び送電装置2の筐体の少なくとも一部は、前述した非磁性材料で形成されていてもよい。これによって、送電コイル21が生成した磁界が支持部材211及び送電装置2の筐体を通過する際に減衰しにくい。
【0048】
再び図3を参照して、電力変換部22は、送電コイル21と接続されている。電力変換部22は、例えば、AC/DCコンバータ及びインバータ等を含む。電力変換部22は、送電装置2の外部にある電源P又は蓄電部23から送電された電力を変換して、送電コイル21に送電する。
【0049】
蓄電部23は、電力変換部22と接続されている。蓄電部23は、例えば、鉛蓄電池、ニッケル水素蓄電池、リチウムイオン電池、及びナトリウム硫黄電池などの充放電可能な蓄電池を含む。蓄電部23は、蓄電池に限られず、キャパシタ等を含んでいてもよい。蓄電部23は、電力変換部22を介して、電源Pから送電された電力を蓄電し、或いは、送電コイル21に電力を送電する。
【0050】
検出部24は、例えば赤外線センサ、画像センサ、モーションセンサ、及び圧力センサ等のセンサを含む。検出部24は、受電装置3が送電装置2から受電可能な位置に存在することを検出する。
【0051】
通信部25は、1つ以上の通信モジュールを含む。通信モジュールは、例えば、有線LAN通信モジュール又は無線LAN通信モジュール、CAN(Controller Area Network)通信モジュール等である。通信部25は、インターネット等のネットワークを介して、外部のコンピュータ等との通信を実現する。
【0052】
記憶部26は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等である。記憶部26は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部26は、送電装置2の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部26は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、及び組み込みソフトウェア等を記憶する。
【0053】
制御部27は、1つ以上のプロセッサを含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサ等であってもよい。制御部27は、プロセッサに限られず、1つ以上の専用回路を含んでもよい。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよい。制御部27は、前述した、送電コイル21、電力変換部22、蓄電部23、検出部24、通信部25、及び記憶部26を制御して、送電装置2の機能を実現する。
【0054】
制御部27は、受電装置3が送電装置2から電力を受電可能な位置に存在するか否かを判定することができる。具体的には、制御部27は、検出部24により、受電装置3を検出することで、受電装置3が送電装置2から受電可能な位置に存在すると判定する。制御部27は、検出部24により、移動体5又は車輪6を検出することで、間接的に受電装置3が送電装置2から受電可能な位置に存在すると判定してもよい。或いは、制御部27は、通信部25を介して、受電装置3又は外部のコンピュータから受電装置3が送電装置2から受電可能な位置に存在することを示す情報を取得してもよい。
【0055】
制御部27は、受電装置3が送電装置2から電力を受電可能な位置に存在すると判定した場合に、無線により電力を送電することができる。具体的には、制御部27は、送電コイル21、電力変換部22、及び蓄電部23の少なくとも1つを制御して、送電コイル21のコイル面S1の垂線が延びる方向に向けて交流磁界を生成することができる。
【0056】
(受電装置の構成)
次に、図5及び図6を参照して、本発明の一実施形態に係る無線給電システム1に含まれる受電装置3の構成について説明する。
【0057】
図5には、本発明の一実施形態に係る受電装置3の構成例を概略的に示す、機能ブロック図が示されている。図5に示されるように、受電装置3は、受電コイル31に加えて、電力変換部32、蓄電部33、検出部34、通信部35、記憶部36、及び制御部37を備えている。受電コイル31、電力変換部32、蓄電部33、検出部34、通信部35、記憶部36、及び制御部37は、例えばCAN等のネットワークを介して、有線又は無線で互いに通信可能に接続されている。
【0058】
受電コイル31は、無線により電力を受電する。本実施形態では、受電コイル31は、全体を環状に構成されている。本明細書において、環状の受電コイル31によって囲まれている平面を、受電コイル31のコイル面S2ともいう。換言すれば、受電コイル31は、コイル面S2を形成するようにコイル面S2の面内方向に巻き回されている。受電コイル31は、送電コイル21等が生成した、コイル面S2を貫く交流磁界が変化することで、電磁誘導による起電力が生成され、電流が流れる。
【0059】
図6には、本発明の一実施形態に係る受電装置3が備える受電コイル31のコイル面S2及びその傾きを概略的に示す、概略図が示されている。図6に示されるように、受電装置3は、受電コイル31の少なくとも一部が移動体5の車輪6に収容された状態で、移動体5の幅方向断面において、受電コイル31のコイル面S2の垂線が、車輪6の路面との接地面の垂線に対して傾斜するように構成されている。換言すれば、受電コイル31のコイル面S2は、受電コイル31の少なくとも一部が移動体5の車輪6に収容された状態で、移動体5の幅方向断面において、車輪6の路面との接地面に対して傾斜している。より具体的には、受電コイル31は、受電コイル31の少なくとも一部が移動体5の車輪6に収容された状態で、移動体5の幅方向断面において、受電コイル31のコイル面S2の垂線が、車輪6の路面との接地面の垂線に対して傾きθ2を有するように、支持部材311を介して受電装置3の筐体に固定されている。これによって、移動体5が道路4を走行中に、受電コイル31のコイル面S2が送電コイル21のコイル面S1に対向することで、送電コイル21から受電コイル31へ電磁誘導方式による無線給電が行われる。傾きθ2は、受電装置3の用途、及び受電すべき電力量等に応じて、任意の角度に定められてもよい。支持部材311及び受電装置3の筐体の少なくとも一部は、前述した非磁性材料で形成されていてもよい。これによって、送電コイル21が生成した磁界が支持部材311及び受電装置3の筐体を通過する際に減衰しにくい。
【0060】
ここで、本明細書において、例えば、面A(の少なくとも一部)が面Bと「対向する」とは、面Bが延在する範囲において面Bの垂直方向に延びる領域内(換言すれば、面Bを断面とする、柱状の領域内)に、面A(の少なくとも一部)が重なることをいう。
【0061】
再び図5を参照して、電力変換部32は、受電コイル31と接続されている。電力変換部32は、例えば、AC/DCコンバータ及びインバータ等を備える。電力変換部32は、受電コイル31に生じた電力を移動体5に搭載された車載装置51に送電する。
【0062】
車載装置51は、例えばモータである。かかる場合、モータである車載装置51は、受電装置3から送電された電力を消費して、車輪6を駆動させる。より具体的には、本実施形態では、車載装置51は、車輪6に搭載されている、インホイールモータである。しかしながら、車載装置51は、移動体5の本体に搭載され、移動体5のシャフト52を回転させることで、車輪6を駆動させる、オンボードモータであってもよい。
【0063】
車載装置51には、モータに限られず、蓄電池、通信機器、カーナビゲーションシステム、メディアプレイヤ、及び車載センサ等の、移動体5に設置された任意の電子装置が含まれていてもよい。
【0064】
蓄電部33は、電力変換部32と接続されている。蓄電部33は、例えば、鉛蓄電池、ニッケル水素蓄電池、リチウムイオン電池、及びナトリウム硫黄電池などの充放電可能な電池を含む。蓄電部33は、蓄電池に限られず、キャパシタを含んでもよい。蓄電部33がキャパシタを含む場合、蓄電池等に比べて短時間で充放電を行うことができ、高い即応性を求められる状況において、有利である。蓄電部33は、電力変換部32を介して、受電コイル31から送電された電力を蓄電し、或いは、車載装置51に電力を送電する。
【0065】
検出部34は、例えば電圧センサ及び電流センサ等の、センサを含む。検出部34は、受電コイル31が無線により受電した電力を検出する。
【0066】
通信部35は、1つ以上の通信モジュールを含む。通信モジュールは、例えば、有線LAN通信モジュール又は無線LAN通信モジュール、CAN通信モジュール等である。通信部35は、インターネット等のネットワークを介して、送電装置2を含む外部のコンピュータ、或いは移動体5の車載装置51等と通信を行う。
【0067】
記憶部36は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等である。記憶部36は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部36は、受電装置3の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部36は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、及び組み込みソフトウェア等を記憶する。
【0068】
制御部37は、1つ以上のプロセッサを含む。プロセッサは、例えば、CPU等の汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサ等であってもよい。制御部37は、プロセッサに限られず、1つ以上の専用回路を含んでもよい。専用回路は、例えば、FPGA、又はASICであってもよい。制御部37は、前述した、受電コイル31、電力変換部32、蓄電部33、検出部34、通信部35、及び記憶部36を制御して、受電装置3の機能を実現させる。
【0069】
制御部37は、受電装置3が無線により受電している電力を計測することができる。具体的には、制御部37は、検出部34により検出された情報に基づいて、受電コイル31が無線により受電した電力の強度を計測する。電力の強度は、例えば電力、電力量、電圧、電流、磁束、又は磁束密度等の、任意の数値情報で表されてもよい。
【0070】
制御部37は、受電装置3が無線により受電した電力を、移動体5に搭載された車載装置51に送電することができる。具体的には、制御部37は、受電コイル31から、受電コイル31に発生した電力を車載装置51に送電することができる。或いは、制御部37は、受電コイル31に発生した電力を蓄電部33に蓄電したのち、蓄電部33から車載装置51に送電してもよい。
【0071】
(送電装置の道路への設置例)
以下に、図1及び図7を参照して、無線給電システム1における送電装置2の道路4への設置例について、説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る無線給電システムにおける送電装置の道路への設置例を示す、概略図である。図7は、図1に示された無線給電システム1を斜視図で示したものである。
【0072】
本実施形態では、無線給電システム1には、複数の送電装置2が含まれる。図7に示されるように、送電装置2は、道路4の延在方向に沿って複数並んで設置されている。更に、道路4の走行レーン41には、走行レーン41の幅方向に少なくとも1対の送電装置2が設置されている。図7に示されるように、本実施形態では、走行レーン41の幅方向に並んだ送電装置2の対が、道路4の延在方向に所定の間隔Dで並んで設置されている。所定の間隔Dは、任意に定められてもよい。
【0073】
図1に示されるように、送電コイル21のコイル面S1は、道路4の幅方向断面において、走行レーン41の幅方向内側に向かうに従って、路面に対して垂直方向上側に向かうように傾斜している。更に、受電コイル31のコイル面S2は、移動体5の幅方向断面において、移動体5の幅方向内側に向かうに従って、車輪6の路面との接地面に対して垂直方向上側に向かうように傾斜している。これによって、無線給電システム1は、車輪6が送電装置2の上側を走行しないように、送電装置2を設置することができる。そのため、移動体5が道路4を走行中に、車輪6が送電装置2の上側を走行して、車輪6からの荷重により送電装置2が損傷するおそれを低減させることができる。更に、無線給電システム1は、道路4を走行する移動体5の車輪6に一部が収容された受電装置3の受電コイル31に対して、移動体5の幅方向内側から無線により電力を送電することができる。そのため、送電コイル21と受電コイル31との間の空間が道路4の路面、移動体5、及び車輪6により囲まれており、当該空間に障害物が入り込みにくい。
【0074】
以下に、図8を参照して、無線給電システム1の変形例について、説明する。図8は、本発明の一実施形態に係る無線給電システムの変形例を、車輪の幅方向断面を用いて概略的に示す、概略図である。
【0075】
図8に示される無線給電システム1の変形例では、送電コイル21のコイル面S1は、道路4の幅方向断面において、走行レーン41の幅方向内側に向かうに従って、路面に対して垂直方向下側に向かうように傾斜している。更に、受電コイル31のコイル面S2は、移動体5の幅方向断面において、移動体5の幅方向内側に向かうに従って、車輪6の路面との接地面に対して垂直方向下側に向かうように傾斜している。これによって、道路4を走行する移動体5の車輪6に収容された受電装置3に対して、移動体5の幅方向外側から無線により電力を送電することができる。そのため、移動体5が道路4を走行中に、車輪6が送電装置2の上側を走行して、車輪6からの荷重により送電装置2が損傷するおそれを低減させることができる。例えば、受電装置3は、道路4の走行レーン41の幅方向端部を示す区画線の下側に埋設されていてもよい。
【0076】
図1及び図8を参照して前述した無線給電システム1及び無線給電システム1の変形例において、受電装置3は、移動体5の幅方向断面において、受電コイル31のコイル面S2の垂線が、車輪6の路面との接地面の垂線に対して傾斜するように構成されていたが、この限りではない。受電コイル31のコイル面S2は、移動体5の幅方向断面において、車輪6の路面との接地面に略平行に延存していてもよい。これによって、図1又は図8に示されるように、道路4によって、道路4の幅方向における送電装置2の設置位置、或いは道路4に設置された送電装置2の送電コイル21の傾き等が異なる場合に、送電装置2から無線により送電される電力の、受電装置3における受電効率のばらつきを低減させることができる。
【0077】
本明細書において、例えば、面Aが面Bと「略平行である」とは、好ましくは、面Aが面Bと平行である。ただし、完全に平行である必要はなく、面Aが面Bに対して、±5度程度傾斜していてもよい。
【0078】
以上述べたように、本発明の一実施形態に係る無線給電システム1は、送電装置2と、受電装置3と、を含む。送電装置2は、道路4に設置された送電装置2であって、無線により電力を送電する送電コイル21を備え、道路4に設置された状態で、道路4の幅方向断面において、送電コイル21のコイル面の垂線が道路4の路面の垂線に対して傾斜するように構成されている。受電装置3は、無線により電力を受電する受電コイル31を備え、受電コイル31の少なくとも一部が移動体5の車輪6に収容されている。かかる構成を有する無線給電システム1によれば、路面と直接接触する車輪6に、受電コイル31の少なくとも一部が収容されていることで、路面に設けられた送電コイル21と受電コイル31との間の空間に障害物が入り込むおそれを低減させることができる。このため、無線給電システム1は、無線給電における給電効率を向上させることができる。更に、送電コイル21のコイル面の垂線が路面の垂線に対して傾斜していることで、移動体5は、受電コイル31のコイル面S2を送電コイル21のコイル面S1と対向させるために、車輪6の接地面が送電装置2の上側に位置するように走行する必要がない。このため、移動体5が道路4を走行中に、車輪6が送電装置2の上側を走行して、車輪6からの荷重により送電装置2が損傷するおそれを低減させることができる。このため、本発明の一実施形態に係る無線給電システム1によれば、移動体5に対して無線で電力を供給する無線給電技術の有用性が向上する。
【0079】
本発明の一実施形態に係る無線給電システム1では、送電コイル21は、道路4の路面よりも、路面に対して垂直方向下側に位置することが好ましい。かかる構成によれば、無線給電システム1は、道路4を走行する移動体5の車輪6が、送電装置2の送電コイル21に接触して、送電コイル21が損傷するおそれを低減させることができる。
【0080】
本発明の一実施形態に係る無線給電システム1では、道路4には少なくとも1つの走行レーン41が設けられ、送電コイル21のコイル面S1は、道路4の幅方向断面において、走行レーン41の幅方向内側に向かうに従って、路面に対して垂直方向上側に向かうように傾斜していることが好ましい。かかる構成によれば、無線給電システム1では、車輪6が送電装置2の上側を走行しないように、送電装置2を設置することができる。これによって、無線給電システム1は、移動体5が道路4を走行中に、車輪6が送電装置の上側を走行して、車輪6からの荷重により送電装置2が損傷するおそれを低減させることができる。更に、無線給電システム1では、送電装置2が、道路4を走行する移動体5の車輪6に収容された受電装置3に対して、移動体5の幅方向内側から無線により電力を送電することができる。これによって、無線給電システム1は、給電中に送電コイル21と受電コイル31との間の空間に障害物が入り込むおそれを更に低減させることができる。
【0081】
本発明の一実施形態に係る無線給電システム1では、道路4には少なくとも1つの走行レーン41が設けられ、送電コイル21のコイル面S1は、道路4の幅方向断面において、走行レーン41の幅方向内側に向かうに従って、路面に対して垂直方向下側に向かうように傾斜していることが好ましい。かかる構成によれば、無線給電システム1では、送電装置2が、道路4を走行する移動体5の車輪6に収容された受電装置3に対して、移動体5の幅方向外側から無線により電力を送電することができる。これによって、無線給電システム1は、移動体5が道路4を走行中に、車輪6が送電装置2の上側を走行して、車輪6からの荷重により送電装置2が損傷するおそれを更に低減させることができる。
【0082】
本発明の一実施形態に係る無線給電システム1では、送電装置2は、道路4の延在方向に沿って複数並んで設置されていることが好ましい。かかる構成によれば、無線給電システム1は、道路4を走行中の移動体5の車輪6に収容された受電装置3に対して、複数の送電装置2から無線により電力を送電することができる。
【0083】
本発明の一実施形態に係る無線給電システム1では、道路4には少なくとも1つの走行レーン41が設けられ、走行レーン41には、走行レーン41の幅方向に少なくとも1対の送電装置2が設置されていることが好ましい。かかる構成によれば、無線給電システム1は、四輪車等のように、複数の車輪6が移動体5の幅方向に並んで取り付けられている場合に、それぞれの車輪6に対して、それぞれの送電装置2から無線により電力を送電することができる。
【0084】
本発明の一実施形態に係る無線給電システム1では、送電装置2は、受電装置3が送電装置2から電力を受電可能な位置に存在すると判定した場合に、無線により電力を送電することが好ましい。かかる構成によれば、無線給電システム1は、送電装置2が、受電装置3が受電可能な位置に存在しない場合に無線により電力を送電することによる、送電装置2の電力消費を低減させることができる。
【0085】
本発明の一実施形態に係る無線給電システム1では、受電装置3は、移動体5の幅方向断面において、受電コイル31のコイル面S2の垂線が、車輪6の路面との接地面の垂線に対して傾斜するように構成されていることが好ましい。かかる構成によれば、無線給電システム1は、送電コイル21のコイル面S1の垂線が路面の垂線に対して傾斜する送電装置2から送電された電力の、受電装置3における受電効率を向上させることができる。
【0086】
本発明の一実施形態に係る無線給電システム1では、受電コイル31のコイル面S2は、移動体5の幅方向断面において、移動体5の幅方向内側に向かうに従って、車輪6の路面との接地面に対して垂直方向上側に向かうように傾斜していることが好ましい。かかる構成によれば、無線給電システム1は、移動体5の受電装置3に対して移動体5の幅方向内側から無線により送電された電力の、受電装置3における受電効率を向上させることができる。
【0087】
本発明の一実施形態に係る無線給電システム1では、受電コイル31のコイル面S2は、移動体5の幅方向断面において、移動体5の幅方向内側に向かうに従って、車輪6の路面との接地面に対して垂直方向下側に向かうように傾斜していることが好ましい。かかる構成によれば、無線給電システム1は、移動体5の受電装置3に対して移動体5の幅方向外側から無線により送電された電力の、受電装置3における受電効率を向上させることができる。
【0088】
本発明の一実施形態に係る無線給電システム1では、受電コイル31のコイル面は、移動体5の幅方向断面において、車輪6の路面との接地面に略平行に延在していることが好ましい。かかる構成によれば、無線給電システム1は、道路4の幅方向における送電装置2の設置位置、或いは道路4に設置された送電装置2の送電コイル21の傾き等が異なる場合に、送電装置2から無線により送電される電力の、受電装置3における受電効率のばらつきを低減させることができる。
【0089】
本発明の一実施形態に係る無線給電システム1では、車輪6は、タイヤ61及びホイール62から成るタイヤ・ホイール組立体であることが好ましい。かかる構成によれば、無線給電システム1は、タイヤ61及びホイール62により車輪6の内部空間が車輪6の外部と区画されることで、送電コイル21と受電コイル31との間の空間に障害物が入り込むおそれを低減させることができる。
【0090】
本発明の一実施形態に係る送電装置2は、無線により電力を送電する送電コイル21を備え、道路4に設置された状態で、道路4の幅方向断面において、送電コイル21のコイル面S1の垂線が道路4の路面の垂線に対して傾斜するように構成されている。かかる構成によれば、送電装置2は、受電装置3を備える移動体5が道路4を走行中に、無線により電力を送電することができる。更に、送電装置2は、移動体5が道路4を走行中に、移動体5の車輪6が送電装置2の上側を走行して、車輪6からの荷重により送電装置2が損傷するおそれを低減させることができる。このため、本発明の一実施形態に係る送電装置2によれば、移動体5に対して無線で電力を供給する無線給電技術の有用性が向上する。
【0091】
本発明の一実施形態に係る受電装置3は、無線により電力を受電する受電コイル31を備え、受電コイル31の少なくとも一部が移動体5の車輪6に収容された状態で、移動体5の幅方向断面において、受電コイル31のコイル面S2の垂線が、車輪6の路面との接地面の垂線に対して傾斜するように構成されている。かかる構成によれば、受電装置3は、移動体5が道路4を走行中に、道路4に設置された送電装置2から、無線により電力を受電することができる。これによって、受電装置3は、移動体5を駆動させる電力を移動体5の外部から受電することができるため、移動体5に設置される蓄電池の小型化及び軽量化を可能にし、ひいては、移動体5の燃費向上を可能にする。このため、本発明の一実施形態に係る受電装置3によれば、移動体5に対して無線で電力を供給する無線給電技術の有用性が向上する。
【0092】
本発明を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本発明に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態又は各実施例に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態又は他の実施例に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【0093】
例えば、前述した実施形態において、送電装置2の制御部27又は受電装置3の制御部37の機能又は処理として説明された機能又は処理の全部又は一部が、例えばスマートフォン又はパーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータの機能又は処理として実現されてもよい。具体的には、本実施形態に係る送電装置2の制御部27又は受電装置3の制御部37の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、コンピュータのメモリに記憶させ、コンピュータのプロセッサによって当該プログラムを読み出して実行させることができる。したがって、本実施形態に係る発明は、プロセッサが実行可能なプログラムとしても実現可能である。例えば、移動体5の制御装置(ECU:Electronic Control Unit)が、受電装置3の制御部37として機能する構成とされてもよい。
【0094】
更に、前述した実施形態において、送電装置2の制御部27が実行する動作及び処理の一部又は全部を、受電装置3の制御部37が実行するように送電装置2及び受電装置3が構成されてもよい。例えば、送電装置2が設置された道路4を移動体5が走行する際に、受電装置3の制御部37が送電装置2を制御して、送電装置2に無線による電力の送電をさせてもよい。
【0095】
また例えば、前述した実施形態において、タイヤ61は、空気を充填されるものとして説明したが、この限りではない。例えば、タイヤ61には、窒素等の気体を充填することができる。また、例えば、タイヤ61には、気体に代えて又は加えて、液体、ゲル状物質、又は粉粒体等を含む、任意の流体を充填することができる。
【符号の説明】
【0096】
1:無線給電システム、 2:送電装置、 21:送電コイル、 211:支持部材、 22:電力変換部、 23:蓄電部、 24:検出部、 25:通信部、 26:記憶部、 27:制御部、 3:受電装置、 31:受電コイル、 311:支持部材、 32:電力変換部、 33:蓄電部、 34:検出部、 35:通信部、 36:記憶部、 37:制御部、 4:道路、 41:走行レーン、 5:移動体、 51:車載装置、 52:シャフト、 6:車輪、 61:タイヤ、 611:ビード部、 612:サイドウォール部、 613:トレッド部、 62:ホイール、 621:リム部、 622:ハブ部、 623:ディスク部、 P:電源、 S1、S2:コイル面、 θ1、θ2:傾き、 V:垂直方向
図1
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図8