(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】ウェハチャックの洗浄方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B24B 7/04 20060101AFI20231201BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20231201BHJP
B08B 1/04 20060101ALI20231201BHJP
B08B 3/00 20060101ALI20231201BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
B24B7/04 A
B24B55/06
B08B1/04
B08B3/00
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2019045268
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】八木 隆之
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 健二
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-253938(JP,A)
【文献】特開2008-311382(JP,A)
【文献】特開平01-205950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/04
B24B 55/06
B08B 1/04
B08B 3/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に多孔質材料からなる吸着体が埋設されたウェハチャックの洗浄方法であって、
ウェハを研削した直後に前記ウェハチャックの表面を異物ごと砥石で研削して、前記表面の異物を除去するクリーニング工程と、
前記ウェハチャックを回転させながら、研削後の前記表面に水又は圧縮流体である洗浄流体を吐出して前記表面から除去された異物を洗い流すリンス工程と、
を含むウェハチャックの洗浄方法。
【請求項2】
前記クリーニング工程において、前記表面が略面一に研削されることを特徴とする請求項1記載のウェハチャックの洗浄方法。
【請求項3】
前記リンス工程において、前記洗浄流体の吐出位置を前記ウェハチャックの径方向に移動させることを特徴とする請求項1又は2記載のウェハチャックの洗浄方法。
【請求項4】
表面に多孔質材料からなる吸着体が埋設されたウェハチャックの洗浄装置であって、
ウェハを研削した直後に前記ウェハチャックの表面を異物ごと研削して、前記表面の異物を除去する砥石と、
回転する前記ウェハチャックの研削後の前記表面に水又は圧縮流体である洗浄流体を吐出して前記表面から除去された異物を洗い流すノズルと、
を備えていることを特徴とするウェハチャックの洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハを保持するウェハチャックの洗浄方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、シリコンウェハ等の半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という)を薄膜に研削する研削装置が知られている。研削装置は、ウェハを吸着保持するウェハチャック及びウェハチャックに対向して設けられた砥石をそれぞれ回転させた状態で、砥石をウェハに押し当てることにより、ウェハを薄く研削するものである。
【0003】
研削加工の際にはスラッジ等の異物が生じることは避けられず、この異物がウェハチャック表面に付着した状態で、ウェハチャックがウェハを吸着保持して研削加工を行うと、異物の噛み込みに起因してウェハが割れたり、ディンプルが発生する等の加工不良が発生する。
【0004】
特許文献1には、ポーラスセラミック製チャック12をブラシ31及びセラミック製竿32で摺動して、ポーラスセラミック製チャック12の表面に付着したスラッジを除去することが開示されている。なお、符号は特許文献1におけるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したポーラスセラミック製チャック12の表面に溝等の凹部が存在する場合、凹部内の数百nm程度の微小なスラッジをブラシ31及びセラミック製竿32で掻き出すことは難しく、ウェハの研削加工の際に、スラッジがポーラスセラミック製チャック12の表面に再付着する虞があった。
【0007】
従来のような厚いBGテープであれば、BGテープが微小なスラッジの噛み込み伴う凹凸を吸収可能であったが、昨今のウェハの薄膜化に伴ってBGテープも薄くなる傾向にあるところ、このような薄いBGテープの場合、微小なスラッジの噛み込み伴うディンプルが生じて、加工時のLTV(Local Thickness Variation)が悪化する虞があった。
【0008】
そこで、微小な異物をウェハチャック表面から除去するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るウェハチャックの洗浄方法は、表面に多孔質材料からなる吸着体が埋設されたウェハチャックの洗浄方法であって、ウェハを研削した直後に前記ウェハチャックの表面を異物ごと砥石で研削して、前記表面の異物を除去するクリーニング工程と、前記ウェハチャックを回転させながら、研削後の前記表面に水又は圧縮流体である洗浄流体を吐出して前記表面から除去された異物を洗い流すリンス工程と、を含む。
【0010】
この構成によれば、砥石でウェハチャックの表面を異物ごと削ぎ落とし、さらに洗浄流体でウェハチャックの表面を洗い流すことにより、ウェハチャックの表面の異物を除去することができる。
【0011】
また、本発明に係るウェハチャックの洗浄方法は、前記クリーニング工程において、前記表面が略面一に研削されることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、ウェハチャックの表面が略面一に研削ことにより、溝等の凹部が形成されている場合と比較して、異物の残存やクリーニング工程中の巻き上げを抑制することができる。
【0013】
また、本発明に係るウェハチャックの洗浄方法は、前記リンス工程において、前記洗浄流体の吐出位置を前記ウェハチャックの径方向に移動させることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、洗浄流体の吐出位置をウェハチャックの径方向に移動させることにより、ウェハチャックの表面の広範囲に亘って洗浄流体を直接当てることができ、異物を効率的に除去することができる。
【0015】
また、上記目的を達成するために、本発明に係るウェハチャックの洗浄装置は、表面に多孔質材料からなる吸着体が埋設されたウェハチャックの洗浄装置であって、ウェハを研削した直後に前記ウェハチャックの表面を異物ごと研削して、前記表面の異物を除去する砥石と、回転する前記ウェハチャックの研削後の前記表面に水又は圧縮流体である洗浄流体を吐出して前記表面から除去された異物を洗い流すノズルと、を備えている。
【0016】
この構成によれば、砥石でウェハチャックの表面を異物ごと削ぎ落とし、さらに洗浄流体でウェハチャックの表面を洗い流すことにより、ウェハチャックの表面の異物を除去することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、砥石でウェハチャックの表面を異物ごと削ぎ落とし、さらに洗浄流体でウェハチャックの表面を洗い流すことにより、ウェハチャックの表面の異物を除去できるため、ウェハチャックとBGテープとの間に異物が噛み込むことを抑制し、LTVを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るウェハチャック洗浄装置を示す模式図。
【
図4】本発明の一実施例に係るウェハチャック洗浄方法を適用したウェハチャックの表面形状を示す画像、X軸方向の断面形状を示す画像及びY軸方向の断面形状を示す画像。
【
図5】クリーニング工程のみを施したウェハチャックの表面形状を示す画像、X軸方向の断面形状を示す画像及びY軸方向の断面形状を示す画像。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0020】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0021】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施例に係るウェハチャック洗浄装置1を示す模式図である。ウェハチャック洗浄装置1は、ウェハを保持するウェハチャック2のチャック表面21を洗浄するものである。ウェハチャック2は、例えば、ウェハを研削加工する研削装置又はウェハを研磨加工する研磨装置等に組み込まれているものである。
【0023】
ウェハチャック2は、チャック表面21にアルミナ等の多孔質材料からなる吸着体22が埋設されている。チャック表面21は、略面一に形成されている。ウェハチャック2は、図示しないモータによってウェハチャック2の中心を通る垂直軸2aを中心に回転可能に構成されている。
【0024】
ウェハチャック2は、内部を通ってチャック表面21に延びる図示しない管路を備えている。管路は、図示しないロータリージョイントを介して真空源、圧縮空気源又は給水源に接続されている。真空源が起動すると、ウェハチャック2に載置されたウェハが吸着体22に吸着保持される。また、圧縮空気源又は給水源が起動すると、ウェハと吸着体22との吸着が解除される。
【0025】
ウェハチャック洗浄装置1は、砥石3と、ノズル4と、を備えている。
【0026】
砥石3は、例えばカップ型砥石である。砥石3は、スピンドル31の下端に連結されている。スピンドル31は、図示しないモータの駆動によって回転軸31aを中心に回転可能に構成されている。また、スピンドル31は、図示しない昇降装置によって垂直方向に昇降自在に構成されている。
【0027】
ノズル4は、ウェハチャック2の上方に設けられている。ノズル4は、洗浄流体をウェハチャック2の表面に吐出する。洗浄流体は、水又は圧縮流体等である。ノズル4が吐出する洗浄流体の噴射形状は、線、扇、円錐等の如何なるものであっても構わない。ノズル4は、図示しないトラバース機構によって水平方向に移動可能に構成されている。
【0028】
ウェハチャック洗浄装置1の動作は、制御部5によって制御される。制御部5は、ウェハチャック洗浄装置1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御部5は、例えばコンピュータであり、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御部5の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作するものにより実現されても良い。
【0029】
次に、ウェハチャック洗浄装置1を用いてチャック表面21を洗浄する手順について図面に基づいて説明する。
【0030】
[クリーニング工程]
まず、ウェハチャック2に砥石3を接近させる。次に、ウェハチャック2及び砥石3をそれぞれ回転させた状態で、砥石3がウェハチャック2に押し当てられることにより、チャック表面21が研削される。
【0031】
チャック表面21が略面一に形成されていることにより、溝等の凹部が形成された場合と比べて、100~200nm程度の微小なスラッジ等の異物が、チャック表面21に残存することを抑制できる。
【0032】
また、砥石3がチャック表面21を研削する際には、砥石3とウェハチャック2とが接触する加工領域に冷却水が供給される。
図2には、冷却水が、ウェハチャック2に設けられた給水源から管路を介してチャック表面21から溢れるように供給される構成が示されている。これにより、冷却水が、加工領域を冷却すると共に異物をチャック表面21から浮かび上がらせることができる。
【0033】
砥石3がチャック表面21を異物ごと所定量だけ削ぎ落とすと、ウェハチャック2及び砥石3の回転を停止し、砥石3をウェハチャック2から退避させる。
【0034】
[リンス工程]
まず、ノズル4がウェハチャック2の上方に配置される。次に、ノズル4がチャック表面21に向かって洗浄流体を吐出する。チャック表面21の異物は、洗浄流体がチャック表面21に衝突した衝撃で除去される。また、洗浄流体は、チャック表面21に衝突した後に水平方向に向きを変えて、ウェハチャック2の外側に異物を洗い流す。なお、ノズル4は、洗浄流体をチャック表面21に対して略垂直に吐出する場合に限らず、例えば洗浄流体をチャック表面21に対して斜めに吐出するように構成しても構わない。
【0035】
ノズル4は、ウェハチャック2が回転した状態でチャック表面21に向けて洗浄流体を吐出するのが好ましい。これにより、洗浄流体として液体を用いる場合には、チャック表面21に衝突した洗浄流体が、ウェハチャック2の回転に伴う遠心力で外周に向けて飛散するため、異物を含んだ洗浄流体がチャック表面21に残存することを抑制できる。
【0036】
ノズル4は、トラバース機構で水平方向に移動しながら洗浄流体を吐出するように構成しても構わない。例えば、ノズル4をウェハチャック2の一方端から他方端に向かって水平移動させながら洗浄流体を吐出することにより、ウェハチャック2全面に亘って洗浄流体が直接当たるため、チャック表面21に付着した異物を水流の勢いで効率的に除去することができる。
【0037】
リンス工程の作用について、図面に基づいて説明する。
【0038】
図4(a)は、リンス工程を施したウェハチャック2の表面形状を示す顕微鏡画像であり、
図4(b)は、
図4(a)に示すウェハチャック2のX軸方向(Y=0)における表面形状を示すグラフであり、
図4(c)は、
図4(a)に示すウェハチャック2のY軸方向(X=0)における表面形状を示すグラフである。
【0039】
なお、リンス工程の主な条件は、以下の通りである。
吐出流体:水及びエアー
吐出圧力:水 0.2MPa、エアー 0.5MPa
吐出量:水 0.5L/min以上、エアー 100L/min
吐出時間:3秒以上
チャック回転数:100rpm
【0040】
図5(a)は、リンス工程を施していないウェハチャック2の表面形状を示す顕微鏡画像であり、
図5(b)は、
図5(a)に示すウェハチャック2のX軸方向(Y=0)における表面形状を示すグラフであり、
図5(c)は、
図5(a)に示すウェハチャック2のY軸方向(X=0)における表面形状を示すグラフである。
【0041】
なお、
図5(b)及び
図6(b)は、横軸にウェハチャック2の中心を原点としてX軸座標、縦軸にチャック表面21の高さを表している。また、
図5(c)及び
図6(c)は、横軸にウェハチャック2の中心を原点としてY軸座標、縦軸にチャック表面21の高さを表している。
【0042】
図4(a)によれば、チャック表面21の高さは、0.076~1.672μmの僅かな範囲に収まっており、また、
図4(b)、(c)によれば、ウェハチャック2の中央が局所的に高い(約1.3~1.6μm)ものの、その周囲は緩やかに勾配している(約1.0~1.3μm)ことが分かる。
【0043】
一方、リンス工程を施していないウェハチャック2については、
図5(a)によれば、チャック表面21の高さは、0.410~9.014μmとばらつきが大きく、また、局所的に大きな凸部が存在することが分かる。また、
図5(b)、(c)によれば、チャック表面21が、X方向の高さばらつき(約4.8~5.3μm)に対して、Y方向の高さバラつき(約1.6~5.3μm)が大きく、時に局所的な落ち込みが生じていることが分かる。
【0044】
このようにして、本発明の実施形態に係るウェハチャック洗浄装置1によれば、砥石3がチャック表面21を異物ごと削ぎ落とし、さらに洗浄流体がチャック表面21を洗い流すことにより、チャック表面21の異物を除去することができる。これにより、チャック表面21に異物が存在することに起因するディンプルを抑制してLTVを向上させることができる。
【0045】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0046】
1 ・・・ ウェハチャック洗浄装置
2 ・・・ ウェハチャック
21・・・ チャック表面
3 ・・・ 砥石
4 ・・・ ノズル
5 ・・・ 制御装置