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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】ウエハ搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20231201BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20231201BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20231201BHJP
   B65G 49/07 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
H01L21/68 C
B24B41/06 A
B23Q7/04 B
B65G49/07 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019059226
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020161636
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】松尾 康之
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-028863(JP,A)
【文献】特開2015-208804(JP,A)
【文献】特開2017-011178(JP,A)
【文献】特開平06-058794(JP,A)
【文献】特開平01-195328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B24B 41/06
B23Q 7/04
B65G 49/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハとパッド面との間に液体による液膜を形成し、該液膜を介して前記ウエハを吸着保持する非接触パッドを備えるウエハ搬送装置において、
前記非接触パッドは、
前記パッド面と前記ウエハとの間に前記液膜を形成する前記液体を放出する液体放出口と、
前記パッド面と前記ウエハとの間における前記液膜の有無を検出する複数の静電容量形の近接センサと、を備え、
前記非接触パッドが前記ウエハを前記パッド面に対して水平方向にずれて保持する場合、前記複数の近接センサの少なくとも1つが前記液膜を検出し、他の前記近接センサが前記液膜を検出しない、ことを特徴とするウエハ搬送装置。
【請求項2】
前記複数の近接センサは、前記ウエハが前記パッド面の略中央で吸着保持された状態において、前記ウエハの外周に沿って設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のウエハ搬送装置。
【請求項3】
前記液体放出口は、前記非接触パッドの下面に複数個設けられている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハ搬送装置。
【請求項4】
前記近接センサは、静電容量形のセンサでなる、ことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のウエハ搬送装置。
【請求項5】
前記非接触パッドは、前記ウエハが前記パッド面の略中央で吸着保持されている状態から前記パッド面の横方向に飛び出すのを防止する位置決めピンを、前記ウエハの外周に沿って複数個設けている、ことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のウエハ搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウエハ搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置では、半導体ウエハ(以下、「ウエハ」という)を各種処理工程間で搬送する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1で知られる、ウエハの裏面(一方の面)を研削する平面加工装置は、ウエハを吸着保持するチャックと、粗研削用砥石と、精研削用砥石と、研磨装置等を備えている。その平面加工装置によれば、ウエハの加工処理は、前記チャックによりウエハの表面(他方の面)が吸着保持された後、ウエハの裏面に前記粗研削用砥石を押し付け、更にチャック及びその砥石を回転させることによって裏面を粗研削する。また、粗研削終了したウエハは、次に前記精研削用砥石によって精研削される。更に、精研削を終了したウエハは、洗浄装置に搬送されて、その裏面が洗浄される。以上で、前記平面加工装置による1枚のウエハの裏面研削加工が終了する構成になっている。
【0004】
そして、上記平面加工装置では、裏面の研削加工が終了したウエハは、次の工程である洗浄工程に移行される。すなわち、裏面の研削加工を行った第1の位置から次の洗浄工程を行う第2の位置へと順に移行させるが、その際、ウエハを吸着保持する吸着保持手段と、その吸着保持手段を第1の位置から第2の位置へと移動させる搬送装置を用いて搬送する方法が知られている。
【0005】
しかしながら、従来におけるウエハ搬送装置では、吸着保持手段のポーラス部の面にウエハを吸着させて保持するので、次の(1)から(4)のような問題点があった。
(1)ウエハを吸着させて保持する際にウエハが変形する等、ウエハに強いストレスを与える。
(2)ウエハの裏面に表面の粗いポーラス部を接触させることで、ウエハの表面に傷を付けてしまう虞がある。
(3)ウエハを加工した際、簡易洗浄が行われるが、スラッジが洗い落とされずに残る場合がある。そして、スラッジが残っている場合には、ポーラス部にウエハを真空吸着する際、ポーラス部がスラッジを吸い込み、ポーラス部に目詰まりを起す、あるいは、ポーラス部にスラッジを転写させてしまうことがある。
(4)また、スラッジが残っている場合に、真空吸着及びエアブローリリース(リリースエア)により、ポーラス部上及びウエハ上でスラッジをそれぞれ乾燥、固着させて、洗浄をしづらくする。
【0006】
そこで、ウエハの搬送時に、ウエハの表面及びポーラス部の表面を液体で洗浄してスラッジを取り除くとともに、ウエハの表面及びポーラス部の表面を保湿し、かつ、安定した状態で搬送可能にする非接触型のウエハ搬送装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
特許文献2で知られる、ウエハ搬送装置は、ウエハを吸着保持する吸着保持手段と、吸着保持手段を第1の位置から第2の位置へと移動させる搬送手段と、を備えるウエハ搬送装置であって、吸着保持手段が、搬送手段に連結した非接触パッドと、ウエハと対向する非接触パッドのパッド面から液体を噴射し、非接触パッドのパッド面側に該液体による液膜と負圧領域を形成して、ウエハを非接触状態で非接触パッドのパッド面側に保持する負圧発生手段と、を設けたものである。
【0008】
特許文献2で知られるウエハ搬送装置は、負圧発生手段により、非接触パッドのパッド面から液体を噴射させると、非接触パッドのパッド面側に該液体による液膜と負圧領域が形成される。そして、その非接触パッドのパッド面側に形成された負圧により、非接触パッドがウエハを、そのウエハの保持面と非接触パッドのパッド面との間に形成された薄い液膜のベルヌーイ効果により非接触状態で吸着保持し、そのウエハを非接触パッドと共に第1の位置から第2の位置へと移動させることができる。この移動時には、非接触パッドとウエハとの間に液体が常に流され、その液体により薄い液膜が形成され続ける。したがって、このウエハ装置では第1の位置から第2の位置まで、非接触パッドの下面であるパッド面とウエハの一面である保持面を保湿した状態で搬送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第4808278号公報
【文献】特開2017-92397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、ウエハ搬送装置においては、パッド面にウエハが保持されているか否かの在荷を検知し、パッド面にウエハが確実に吸着保持されている状態で搬送をする必要がある。その従来の手法では、パッド面側に圧力センサを設けておき、ウエハを吸着保持した際に、ウエハが圧力センサに押し付けられ、ウエハから圧力センサに加わる圧力を検出してウエハの在荷を検出していた。
【0011】
また、他の手法としては、ウエハを挟んで発光素子と受光素子を配置してなるフォトセンサを使用し、発光素子と受光素子との間にウエハが存在するか否かにより、ウエハの在荷を検出する方法もある。
【0012】
しかしながら、非接触型のウエハ搬送装置において、従来の圧力センサを使用したウエハ検出手法では、圧力センサとウエハとの接触を作らないので、圧力センサを使用した検出は不可能である。一方、フォトセンサを使用したウエハの検出手法では発光素子と受光素子との間に生じる液膜で誤検知をする場合がある。
【0013】
そこで、非接触パッドを使用してウエハの搬送を行う際に、ウエハの在荷確認が確実に行え、かつ、ウエハを安定した状態で搬送することができるウエハ搬送装置を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載の発明は、ウエハとパッド面との間に液体による液膜を形成し、該液膜を介して前記ウエハを吸着保持する非接触パッドを備えるウエハ搬送装置において、前記非接触パッドは、前記パッド面と前記ウエハとの間に前記液膜を形成する前記液体を放出する液体放出口と、前記パッド面と前記ウエハとの間における前記液膜の有無を検出する複数の静電容量形の近接センサと、を備え、前記非接触パッドが前記ウエハを前記パッド面に対して水平方向にずれて保持する場合、前記複数の近接センサの少なくとも1つが前記液膜を検出し、他の前記近接センサが前記液膜を検出しない、ウエハ搬送装置を提供する。
【0015】
この構成によれば、非接触パッドの液体放出口から液体が放出されると、非接触パッドのパッド面とウエハとの間に、液体による液膜が形成される。そして、その非接触パッドのパッド面とウエハとの間に生じる液膜のベルヌーイ効果により、非接触パッドがウエハを非接触状態で吸着保持して第1の位置から第2の位置へと移動させることができる。この移動時には、非接触パッドとウエハとの間に液体が常に流され、ウエハ上には、その液体により薄い液膜が形成され続ける。したがって、
(1)第1の位置から第2の位置まで、非接触パッドのパッド面とウエハの一面である保持面を保湿した状態で搬送することができる。
(2)また、搬送開始時(チャック保持時)及び搬送中に、パッド面及び保持面も同時に洗浄される。
(3)パッド面と保持面との間に薄い液膜を形成することで、ウエハの保持面に傷を付けずに搬送することができる。
(4)パッド面と保持面との間に薄い液膜を形成することで、その液膜がクッションとなり、搬送時におけるウエハの振動を液膜で抑制できる。
【0016】
また、近接センサを設けて、近接センサによりパッド面と保持面との間における液膜の有無を検出し、液膜の有無からウエハの在荷を検出するので、ウエハの在荷確認が確実に行え、かつ、安定した状態でウエハを搬送することが可能になる。すなわち、ここではウエハがない場合、液体放出口に放出された液体は自由落下し、液膜を形成しないので、近接センサが液膜を検出することがなく、ウエハが無いことがわかる。反対に、ウエハが有る場合は液膜が形成され、その液膜を近接センサが検出するので、ウエハの在荷が検出される。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の構成において、前記複数の近接センサは、前記ウエハが前記パッド面の略中央で吸着保持された状態において、前記ウエハの外周に沿って設けられている、ウエハ搬送装置を提供する。
【0018】
この構成によれば、複数の近接センサを、ウエハがパッド面の略中央で吸着保持された状態において、非接触パッドの下面内周に沿って複数個設けられているので、ウエハが非接触パッドの下面からずれて外れると、外れた部分に設けられている近接センサが、ウエハが前記領域から外れていることを検出できる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の構成において、前記液体放出口は、前記非接触パッドの下面に複数個設けられている、ウエハ搬送装置を提供する。
【0020】
この構成によれば、液体放出口が非接触パッドの下面に複数個設けられているので、非接触パッドの下面に放出される液体の量が分散し、非接触パッドの下面とウエハの保持面との間に形成される液膜の厚みが均一化する。これにより、ウエハを吸着保持する力が非接触パッドの下面全体に分散し、液膜によりウエハを安定して保持できる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1、2又は3記載の構成において、前記近接センサは、静電容量形のセンサでなる、ウエハ搬送装置を提供する。
【0022】
この構成によれば、近接センサとして、静電容量形の近接センサを使用するので、パッド面とウエハの保持面との間に形成される液膜を確実に検出できる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項1、2、3又は4記載の構成において、前記非接触パッドは、前記ウエハが前記パッド面の略中央で吸着保持されている状態から前記パッド面の横方向に飛び出すのを防止する位置決めピンを、前記ウエハの外周に沿って複数個設けている、ウエハ搬送装置を提供する。
【0024】
この構成によれば、ウエハがパッド面の横方向に飛び出すのを防止する位置決めピンを、非接触パッドの下面外周に沿って複数個設けているので、ウエハがパッド面の横方向にずれ飛び出すのを位置決めピンで抑止できる。
【発明の効果】
【0025】
発明によれば、ウエハの搬送移動時に、非接触パッドの液体放出口から液体を放出して、非接触パッドとウエハとの間に液体による液膜を形成し、該液膜のベルヌーイ効果により、非接触パッドにウエハを非接触状態で吸着保持するとともに、非接触パッドに近接センサを設けて、近接センサにより非接触パッドとウエハとの間における液膜の有無を検出し、ウエハの在荷を検出するようにしているので、
(1)ウエハの在荷確認が確実に行え、かつ、安定した状態での搬送が可能になる。
(2)また、第1の位置から第2の位置まで、非接触パッドのパッド面とウエハの保持面をそれぞれ乾燥させることなく、保湿した状態で搬送することができる。
(3)また、搬送開始時及び搬送中に、ウエハの保持面及び非接触パッドのパッド面も同時に洗浄し、スラッジを無くした状態で保持することができる。
(4)パッド面と保持面との間に薄い液膜を形成することで、ウエハの保持面に傷を付けずに搬送することができる。
(5)非接触パッドのパッド面とウエハの保持面との間に薄い液膜を形成することで、その液膜がクッションとなり、搬送時におけるウエハの振動を液膜で抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態に係る実施例として示すウエハ搬送装置の全体斜視図である。
図2図1に示したウエハ搬送装置における非接触パッドを下面側から見た平面図である。
図3図2のA-A線に沿う方向から見た側面図を、液体を放出してウエハが非接触パッドに非接触状態で吸着保持されている状態で示す図である。
図4図2のB-B線に沿う断面図を、液体を放出してウエハが非接触パッドに非接触状態で吸着保持されている状態で示す図である。
図5】同上ウエハ搬送装置における非接触パッドの一変形例をパッド面側から見て示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は非接触パッドを使用してウエハの搬送を行う際に、ウエハの在荷確認が確実に行え、かつ、ウエハを安定した状態で搬送することができるウエハ搬送装置を提供するという目的を達成するために、ウエハとパッド面との間に液体による液膜を形成し、該液膜を介して前記ウエハを吸着保持する非接触パッドを備えるウエハ搬送装置において、前記非接触パッドは、前記パッド面と前記ウエハとの間に前記液膜を形成する前記液体を放出する液体放出口と、前記パッド面と前記ウエハとの間における前記液膜の有無を検出する近接センサと、を備えることにより実現した。
【実施例
【0028】
以下、本発明の実施形態に係るウエハ搬送装置の一実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0029】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0030】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0031】
また、以下の説明において、上下や左右等の方向を示す表現は、絶対的なものではなく、本発明のウエハ研磨装置の各部が描かれている姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。また、実施例の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付している。
【0032】
図1は本発明を適用した半導体製造装置10におけるウエハ搬送装置11の要部構成を示す全体斜視図である。図1におけるウエハ搬送装置11は、半導体製造装置10における研削加工部12及び洗浄加工部13に跨がって形成されている。その第1の位置である研削加工部12には、研削装置14及びポーラスチャック15が設けられており、第2の位置である洗浄加工部13には、洗浄装置16及びポーラスチャック17が設けられている。
【0033】
研削加工部12において、ポーラスチャック15と対向して配置される研削装置14の先端部には、水平に回転する砥石18を取り付けている。また、研削加工部12のポーラスチャック15は、研削装置14の砥石18と上下方向で対応する研削加工位置と、研削装置14の真下の位置から外れた搬送可能位置とへ水平移動可能になっている。なお、図1では、ポーラスチャック15が搬送可能位置に移動された状態で示している。
【0034】
ポーラスチャック15は、例えばセラミック製のポーラス部15aとセラミック製のボディ15bとからなる。ポーラスチャック15は、図示しないが、ボディ15bの中央部に設けたエア配管によりチャック時にはバキューム引きをして、ウエハWをボディ15b上にチャックし、リリース時にはリリースエアの供給を供給して、ウエハWのリリースを行うようにしたものである。
【0035】
そして、研削加工部12では、ポーラスチャック15と共に回転するウエハWに、回転する砥石18を押し付けて、ウエハWの裏面の研削加工を行うようになっている。
【0036】
洗浄加工部13には、洗浄装置(詳細な構造は省略している)16と、該洗浄装置16内に配設されたポーラスチャック17等が設けられている。
【0037】
ポーラスチャック17は、ポーラスチャック15と同様に、例えばセラミック製のポーラス部17aとセラミック製のボディ17bとからなる。また、図示しないが、ポーラスチャック17もポーラスチャック15と同様に、ボディ17bの中央部に設けたエア配管によりチャック時にはバキューム引きをして、ウエハWをボディ17b上にチャックし、リリース時にはリリースエアの供給を供給して、ウエハWのリリースを行うようにしたものである。
【0038】
そして、この洗浄加工部13では、研削加工部12での研削加工を経て洗浄装置16に搬送されて、洗浄装置16内のポーラスチャック17のボディ17b上にセットされたウエハWの裏面を洗浄できるようになっている。
【0039】
ウエハ搬送装置11は、ウエハWを吸着保持する吸着保持手段19と、吸着保持手段19を第1の位置(研削加工位置)から第2の位置(研削加工位置)へと往復移動させる搬送手段20とを備えている。
【0040】
搬送手段20は、図1に示すように、吸着保持手段19をX軸方向(第1の位置と第2の位置を結ぶ水平方向)に往復移動可能なX軸方向ガイド部20aと、吸着保持手段19をY軸方向(上下方向)に往復移動可能なY軸方向ガイド部20bとを有する。そして、搬送手段20がY軸方向に動作を行うことにより、吸着保持手段19を上下方向に移動させることができる。また、搬送手段20がX軸方向に動作を行うことにより、吸着保持手段19を水平方向に移動させて、該吸着保持手段19を第1の位置から第2の位置、及び、第2の位置から第1の位置へと、それぞれ往復移動できるようになっている。
【0041】
吸着保持手段19は、搬送手段20のY軸方向ガイド部20bに連結された保持本体部19aと、その保持本体部19aの先端部(下端部)に固定して取り付けられた非接触パッド19bとを備えている。
【0042】
図4に示すように、保持本体部19aの内部には中央貫通孔21が設けられており、中央貫通孔21内には水供給配管22が配設されている。水供給配管22の先端部(下端部)22aは、非接触パッド19bに接続されている。また、図示しないが、水供給配管22の他端部(基端部)には、例えば水(純水)等の液体23を高圧で供給可能な液体貯蔵タンク(図示せず)が接続されており、その液体貯蔵タンクから高圧な液体が供給されるようになっている。
【0043】
図2図4に示すように、非接触パッド19bは、概略円板状をしたパッド本体部24を有している。パッド本体部24の上面24cには、パッド本体部24の内部に設けられた水配給路25に通じる水導入口26が設けられ、水導入口26に水供給配管22の先端部22aが接続されている。
【0044】
パッド本体部24の下面24dには、パッド面24aと複数個の液体放出口27が設けられている。これら複数個の液体放出口27は、ウエハWがパッド面24aの略中央で吸着保持された状態において、該ウエハWで覆われる領域内に設けられている。更に詳述すると、液体放出口27の周囲は、下側に向かって円環状に突出しており、パッド面24aは、液体放出口27の下面(環状に突出して下面)を平坦にして設けられている。パッド面24aを設けている液体放出口27は、図2に示すように、パッド本体部24の下面24dの外周縁内側(ウエハWを吸着保持する領域内周)に沿って略60°の等間隔で形成されている6個の外周側放出口27aと、外周側放出口27aよりも中心側で、同じく外周縁内側に沿って略120°の等間隔で形成されている3個の中心側放出口27bとで構成されている。したがって、各液体放出口27の下面に各々設けられているパッド面24aは、液体放出口27の数と同じ9つ設けられている。また、中心側放出口27bは、外周側放出口27aに対して回転方向に、略30°変位して設けられている。そして、この配置構成により、外周側放出口27aと中心側放出口27b、及びパッド面24aは、パッド本体部24上において略均等にバランスさせて配置されている。
【0045】
また、外周側放出口27aと中心側放出口27bは、保持本体部19a内に設けられている水配給路25に各々連通している。そして、水配給路25は、水導入口26に接続されている水供給配管22から、水導入口26を介して液体23が流入されると、流入された液体23の水量を、外周側放出口27aと中心側放出口27bとにそれぞれ略均等に振り分け、各部位における外周側放出口27aと中心側放出口27bからそれぞれ略均等量の液体23を放水できるようになっている。
【0046】
また、パッド本体部24の外周面24bには、ウエハ吸着保持領域を画成している9個のパッド面24aよりも下側に突出した状態にして、6個の位置決めピン28が、パッド本体部24の下面外周外側(ウエハWを吸着保持する領域の外周)に沿って取り付けられている。該位置決めピン28は、パッド面24aに吸着保持されたウエハWが、該ウエハWを吸着保持する領域に対して横方向(水平方向)にずれて飛び出そうとしたときに、ウエハWの外周面と当接してウエハWの飛び出しを防止するものであり、外周側放出口27aに対応して60°間隔で設けられている。
【0047】
また、パッド本体部24には、上下に貫通した3個のセンサ取付孔29が、非接触パッド19bの下面内周に沿って120°間隔で、かつ、外周側放出口27aの間に位置した状態で設けられている。なお、センサ取付孔29を設けている位置は、ウエハWがパッド面24aの略中央に吸着保持される領域内で、ウエハWの外周に沿う位置である。また、各センサ取付孔29には、それぞれ近接センサ30が取り付けられている。
【0048】
近接センサ30は、静電容量形のセンサであり、検出面30aを下側に向けてセンサ取付孔29内に取り付けられている。近接センサ30は、汎用の静電容量形近接センサであり、パッド本体部24の下側に形成される液体23の液膜23a、及び、パッド面24aに吸着保持されるウエハWを検出する。
【0049】
次に、このように構成された半導体製造装置10において、第1の位置である研削加工部12での研削加工を終えて第2の位置である洗浄加工部13にウエハWを搬送するウエハ搬送装置11の搬送動作の一例を説明する。
【0050】
まず、研削加工を終えたウエハWをチャックしているポーラスチャック15は、図1に示すように研削装置14と外れた搬送可能位置に移動されている。
【0051】
そして、ポーラスチャック15の上方に搬送された吸着保持手段19は、搬送手段20により、非接触パッド19bのパッド面24aがウエハWの裏面、すなわち保持面Waに非接触状態で接近配置される。また、この状態ではポーラスチャック15側におけるウエハWへの吸着チャックも取り除かれる。
【0052】
次いで、図4に示すように、水供給配管22を通して液体23が、水導入口26からパッド本体部24内に導入される。パッド本体部24内に液体23が導入されると、導入された液体23が水配給路25を通って複数個の液体放出口27(複数個の外周側放出口27a及び複数個の中心側放出口27b)にそれぞれ流れる。
【0053】
液体23が流れて来た複数個の各液体放出口27では、該液体23が各液体放出口27で略均等量の液体が放水され、非接触パッド19bのパッド面24aとウエハWの保持面Waとの間の全体に液体23の流れを形成する。そして、この液体23の流れがパッド面24aとウエハWとの間に薄い液膜23aを形成した状態で外側に向けて流れる。そして、本実施例では、この液体23の流れによって、パッド面24aの略全体にベルヌーイの原理により負圧領域が形成され、その負圧でウエハWが、液膜23aを介して非接触パッド19bのパッド面24aに吸い付け保持され、非接触状態での吸着保持がなされる。
【0054】
また、非接触パッド19bのパッド面24aの全体に負圧領域が形成されて、その負圧領域内の負圧でポーラスチャック15上のウエハWが、図3図4に示すように非接触パッド19bのパッド面24a側に吸い付け保持されたら、その状態を保持したまま、吸着保持手段19は、搬送手段20により上方に移動され、その後、第2の位置である洗浄加工部13に移動される。そして、非接触パッド19bのパッド面24aに吸着保持されているウエハWが、洗浄加工部13のポーラスチャック17上に接近配置される。
【0055】
その後、水供給配管22からの液体23の供給が断たれる。液体23の供給が断たれると、パッド面24aと保持面Waとの間に生成されていた液膜23a及び負圧も無くなり、非接触パッド19bのパッド面24aの負圧が解かれる。そして、非接触パッド19bのパッド面24aに非接触で保持されていたウエハWが、洗浄加工部13のポーラスチャック17上に落下されて、該ポーラスチャック17上に受け渡される。この際、ポーラスチャック17側に負圧を発生させると、非接触パッド19bのパッド面24aから洗浄加工部13のポーラスチャック17側に、ウエハWをスムーズに受け渡すことができる。
【0056】
ところで、非接触パッド19bのパッド面24aがウエハWの保持面Waに非接触状態で接近配置されて、液膜23aで吸着保持されるとき、ポーラスチャック15上にウエハWが存在する場合は、パッド面24aと保持面Waとの間に形成される薄い液膜23aがウエハW上を流れるとき、ウエハWの液膜23aが近接センサ30により検出される。また、近接センサ30による液膜23aの検出で、ウエハWがポーラスチャック15上に存在することが検出される。
【0057】
これに対して、ポーラスチャック15上にウエハWが存在しない場合は、各水噴出孔37から放出された液体23は真っ直ぐに下側へ落下し、パッド面24aの下側、すなわち近接センサ30の下側には液膜23aが形成されない。すなわち、近接センサ30が液膜23aを検出しないことにより、ポーラスチャック15上にウエハWが在荷しないことを検出することができる。
【0058】
また、パッド面24aに対してウエハWの位置が横方向(水平方向)に大きくずれて置かれていた場合は、パッド面24aとウエハWの保持面Waの間の液膜23aは、3つの近接センサ30の部分で均一に形成されない。そのため、3つの近接センサ30による液膜23aの検出が同じに得られず、ポーラスチャック15上にウエハWが正常な状態でセットされていないことを検知できる。さらに、ウエハ搬送装置11がウエハWを保持している際のズレの度合いも検知できるので、過大な横ずれが起きた際も検知できる。
【0059】
また、搬送途中で、パッド面24aに対してウエハWが大きく横ずれして飛び出しそうになった場合は、ウエハWの周面が位置決めピン28に当接して、位置決めピン28によりそれ以上の横ずれを抑止する。これにより、搬送途中での横ずれを無くして、確実に搬送することができる。
【0060】
なお、上記実施例は、近接センサ30を等間隔で3個設けた場合について説明したが、近接センサ30でウエハWの水平方向における位置ずれを検出しない場合は、例えば図5に示すように、近接センサ30を1個だけ設けた構造にしてもよいものである。
【0061】
また、パッド本体部24の外周面24bに設けた位置決めピン28は、ベルヌーイの原理による吸着保持がしっかりとしている場合には、必ずしも必要なものではない。
【0062】
また、液体放出口27は、パッド本体部24の下面24dよりも下側に突出させ、その液体放出口27の下面をパッド面24aとした構成を示したが、液体放出口27を突出させずに、パッド本体部24の下面24dと面一にし、パッド本体部24の下面24dの全体をパッド面24aとしてもよいものである。
【0063】
したがって、このように構成されたウエハ搬送装置11では、非接触パッド19bに近接センサ30を設けて、該近接センサ30によりパッド面24aと保持面Waとの間に形成される液膜23aの有無を検出し、該液膜23aの有無からウエハWの在荷を検出するので、ウエハWの在荷確認を確実に行い、かつ、ウエハWを安定した状態で搬送することが可能になる。
【0064】
また、ウエハWの搬送移動時に、非接触パッド19bのパッド面24aに液体放出口27から液体23を放出して、非接触パッド19bのパッド面24aとウエハWの保持面Waの間に液膜23aを形成し、液膜23aのベルヌーイ効果により、非接触パッド19bのパッド面24aがウエハWを非接触状態で保持し続けるとともに、非接触パッド19bに近接センサ30を設けて、近接センサ30によりパッド面24aと保持面Waとの間に形成される液膜23aの有無を検出し、該液膜23aの有無からウエハWの在荷を検出するようにしているので、
(1)ウエハWの在荷確認を確実に行い、かつ、該ウエハWを安定した状態で搬送することが可能になる。
(2)また、第1の位置から第2の位置まで、非接触パッド19bのパッド面24aとウエハWの保持面Waをそれぞれ乾燥させずに、保湿した状態で搬送することができる。
(3)また、搬送開始時及び搬送中に、ウエハWの保持面Wa及び非接触パッド19bのパッド面24aも同時に洗浄し、スラッジを無くした状態で保持することができる。
(4)パッド面24aと保持面Waとの間に薄い液膜23aを形成することで、ウエハWの保持面Waに傷を付けずに搬送することができる。
(5)パッド面24aと保持面Waとの間に薄い液膜23aを形成することで、その液膜23aがクッションとなり、搬送時におけるウエハWの振動を液膜23aで抑制できる。
【0065】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を成すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0066】
10 :半導体製造装置
11 :ウエハ搬送装置
12 :研削加工部
13 :洗浄加工部
14 :研削装置
15 :ポーラスチャック
15a :ポーラス部
15b :ボディ
16 :洗浄装置
17 :ポーラスチャック
17a :ポーラス部
17b :ボディ
18 :砥石
19 :吸着保持手段
19a :保持本体部
19b :非接触パッド
20 :搬送手段
20a :X軸方向ガイド部
20b :Y軸方向ガイド部
21 :中央貫通孔
22 :水供給配管
22a :先端部
23 :液体
23a :液膜
24 :パッド本体部
24a :パッド面
24b :外周面
24c :上面
24d :下面
25 :水配給路
26 :水導入口
27 :液体放出口
27a :外周側放出口
27b :中心側放出口
28 :位置決めピン
29 :センサ取付孔
30 :近接センサ
30a :検出面
W :ウエハ
Wa :保持面
図1
図2
図3
図4
図5