(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】載置台及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231201BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20231201BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20231201BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/302 101G
H01L21/68 R
C23C16/458
C23C14/50 E
(21)【出願番号】P 2019148133
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小泉 克之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 雅典
(72)【発明者】
【氏名】江崎 匠大
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-150104(JP,A)
【文献】特開2011-009351(JP,A)
【文献】特開2016-189425(JP,A)
【文献】国際公開第2019/088204(WO,A1)
【文献】特開2016-207979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
C23C 16/458
C23C 14/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の外側に位置する第1の面と、基板を載置する第2の面とを有する載置台であって、
前記第1の面に対応して第1の流路が形成さ
れ、
前記第1の流路の上面の延長線と、前記第1の流路の上面のうち前記第2の面に近い側の端部と前記第1の面の内端部とを結ぶ線とがなす角度が60°以下である、
載置台。
【請求項2】
前記第1の面の内端部と前記第2の面の外端部との間では、熱の伝達が可能である、
請求項1に記載の載置台。
【請求項3】
前記角度は、45°以下である、
請求項1又は2に記載の載置台。
【請求項4】
前記第2の面に対応して第2の流路が形成され、
前記第2の流路の水平方向の幅をw1、前記第1の流路の水平方向の幅をw2としたとき、w1>w2である、
請求項1
~3のいずれか一項に記載の載置台。
【請求項5】
前記第1の面と前記第2の面との境界面から前記第1の流路までの水平距離をd、前記第1の流路から前記第2の流路までの水平距離をd’としたとき、d’>dである、
請求項
4に記載の載置台。
【請求項6】
前記第1の流路と前記第2の流路とは、前記第1の流路と前記第2の流路とに熱交換媒体を流すことが可能なチラーユニットに並列に接続される、
請求項
4又は
5に記載の載置台。
【請求項7】
前記第1の流路と前記第2の流路とは、前記第1の流路と前記第2の流路とに熱交換媒体を流すことが可能なチラーユニットに直列に接続される、
請求項
4又は
5に記載の載置台。
【請求項8】
前記第1の面には、基板の周囲に位置するリング部材が設置される、
請求項1~
7のいずれか一項に記載の載置台。
【請求項9】
前記第1の面は、前記リング部材を吸着する静電チャックの外側上面である、
請求項
8に記載の載置台。
【請求項10】
前記第2の面は、基板を吸着する前記静電チャックの内側上面である、
請求項
9に記載の載置台。
【請求項11】
前記静電チャックは、前記第1の面と前記第1の流路との間に前記リング部材の温度を制御する第1のヒータを有する、
請求項
9又は
10に記載の載置台。
【請求項12】
前記静電チャックは、前記第2の面と平行に基板の温度を制御する第2のヒータを有する、
請求項
9~11のいずれか一項に記載の載置台。
【請求項13】
前記第1の流路は、基板の端部よりも外側に形成される、
請求項1~
12のいずれか一項に記載の載置台。
【請求項14】
プラズマ処理又は熱処理が行われるチャンバと、前記チャンバの内部にて静電チャックに基板を載置する載置台と、を有する基板処理装置であって、
前記載置台は、
基板の外側に位置する第1の面と基板を載置する第2の面とを有し、
前記第1の面に対応して第1の流路が形成さ
れ、
前記第1の流路の上面の延長線と、前記第1の流路の上面のうち前記第2の面に近い側の端部と前記第1の面の内端部とを結ぶ線とがなす角度が60°以下である、
基板処理装置。
【請求項15】
前記第1の面の内端部と前記第2の面の外端部との間では、熱の伝達が可能である、
請求項14に記載の基板処理装置
。
【請求項16】
前記角度は、45°以下である、
請求項
14又は15に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記第2の面に対応して第2の流路が形成され、
前記第1の流路と前記第2の流路とに熱交換媒体を流すことが可能なチラーユニットを有する、
請求項
14~16のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、載置台及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置において、載置台に載置された基板の温度調整を行うために、載置台の内部に設けられた流路に所定の温度に制御された冷媒を流すことによって基板を冷却することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-261541号公報
【文献】特開2011-151055号公報
【文献】特許第5210706号明細書
【文献】特許第5416748号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板の最外周の温度を制御することが可能な載置台及び基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、基板の外側に位置する第1の面と、基板を載置する第2の面とを有する載置台であって、前記第1の面に対応して第1の流路が形成される載置台が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、基板の最外周の温度を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る基板処理装置の一例を示す断面模式図。
【
図3】一実施形態に係る流路の構造と配置条件の一例を示す図。
【
図4】一実施形態に係る基板の最外周と熱源との位置関係の一例を示す図。
【
図5】一実施形態に係る流路の有無と基板設置領域の温度の実験結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[基板処理装置]
一実施形態に係る基板処理装置1について、
図1を用いて説明する。
図1は、一実施形態に係る基板処理装置1の一例を示す断面模式図である。基板処理装置1は、チャンバ10を備える。チャンバ10は、その中に内部空間10sを提供する。チャンバ10はチャンバ本体12を含む。チャンバ本体12は、略円筒形状を有する。チャンバ本体12は、例えばアルミニウムから形成される。チャンバ本体12の内壁面上には、耐腐食性を有する膜が設けられている。当該膜は、酸化アルミニウム、酸化イットリウムなどのセラミックスであってよい。
【0010】
チャンバ本体12の側壁には、通路12pが形成されている。基板Wは、通路12pを通して内部空間10sとチャンバ10の外部との間で搬送される。通路12pは、チャンバ本体12の側壁に沿って設けられるゲートバルブ12gにより開閉される。
【0011】
チャンバ本体12の底部上には、支持部13が設けられている。支持部13は、絶縁材料から形成される。支持部13は、略円筒形状を有する。支持部13は、内部空間10sの中で、チャンバ本体12の底部から上方に延在している。支持部13は、上部に載置台14を有する。載置台14は、内部空間10sの中において、基板Wを支持するように構成されている。
【0012】
載置台14は、基台18及び静電チャック20を有する。載置台14は、電極プレート16を更に有し得る。電極プレート16は、アルミニウムなどの導体から形成され、略円盤形状を有する。基台18は、電極プレート16上に設けられている。基台18は、アルミニウムなどの導体から形成されて、略円盤形状を有する。基台18は、電極プレート16に電気的に接続されている。
【0013】
基台18の載置面には静電チャック20が載置され、静電チャック20の載置面には基板Wが載置される。以下、静電チャック20の載置面を「第2の面20c」という。静電チャック20の本体は略円盤形状を有し、誘電体から形成される。静電チャック20には、第2の面20cに対して平行に電極20aが埋め込まれている。静電チャック20の電極20aは、膜状の電極である。静電チャック20の電極20aは、スイッチを介して直流電源20pに接続されている。静電チャック20の電極20aに直流電源20pからの電圧が印加されると、静電チャック20と基板Wとの間に静電引力が発生する。その静電引力により、基板Wが静電チャック20に保持される。
【0014】
静電チャック20は、基板の周囲において段差を有し、段差よりも外側の面がエッジリング25の載置面となる。これにより、基板Wの周囲にてエッジリング25が配置される。エッジリング25は、基板Wに対するプラズマ処理の面内均一性を向上させる。エッジリング25は、シリコン、炭化シリコン、又は石英などから形成され得る。エッジリング25は、基板の周囲に位置するリング部材の一例であり、フォーカスリングともいう。以下、静電チャック20の載置面を、基板の外側に位置する「第1の面20d」という。
【0015】
本実施形態に係る載置台14は、静電チャック20を有するが、これに限られない。例えば、載置台14は静電チャック20を有しなくてもよい。この場合、基台18の載置面に基板Wが載置され、基台18の載置面は基板を載置する第2の面20cを構成し、基台18の基板よりも外周の載置面は、基板の外側に位置する第1の面20dを構成する。
【0016】
以上に説明したように、第1の面20dには、基板Wの周囲に位置するエッジリング25が設置され、第1の面20dは、エッジリング25を吸着する静電チャック20の外側上面である。また、第2の面20cには、基板Wが載置され、基板Wを吸着する静電チャック20の内側上面である。
【0017】
以下、熱交換媒体の一例として冷媒を挙げて説明するが、熱交換媒体はこれに限られず、温度調整媒体であってもよい。第1の面20dの下方に位置する基台18内の外周には、冷媒が通流する第1の流路19bが形成されている。第1の流路19bには、チャンバ10の外部に設けられているチラーユニット22から配管23aを介して冷媒が供給される。冷媒は、配管23aを流れ、冷媒の供給口から第1の流路19bに供給され、排出口まで通流し、配管23bを介してチラーユニット22に戻される。
【0018】
また、第2の面20cの下方に位置する基台18内の中央には、内部に冷媒が通流する第2の流路19aが形成されている。第2の流路19aには、チラーユニット22から配管22aを介して冷媒が供給される。冷媒は、配管22aを流れ、冷媒の供給口から第2の流路19aに供給され、排出口まで通流し、配管22bを介してチラーユニット22に戻される。
【0019】
静電チャック20は、第1のヒータ20eを有する。第1のヒータ20eは、第1の面20dの下であって静電チャック20の段差の近傍に埋設されている、第1のヒータ20eは、第1の面20dと第1の流路19bとの間に1つ設けられる。第1のヒータ20eには、電源52が接続され、電源52からの電圧が印加されると、第1のヒータ20eが加熱される。第1のヒータ20eは、エッジリング25の温度制御に使用される。また、第1のヒータ20eは、基板の最外周(例えば、基板の端部から2~3mm程度)の局所的な領域の温度制御に使用される。
【0020】
また、静電チャック20は、基板Wの温度を制御する第2のヒータ20bを有する。第2のヒータ20bは、静電チャック20内の電極20aに平行して埋設されている。第2のヒータ20bには、電源51が接続され、電源51からの電圧が印加されると、第2のヒータ20bが加熱される。第2のヒータ20bは、基板Wの温度制御に使用される。
【0021】
すなわち、かかる構成の基板処理装置1では、静電チャック20上に載置された基板Wの温度が、各冷媒及び各ヒータと基台18との熱交換により調整される。なお、第1の流路19bは、第1の面20dに対応して内部に熱交換媒体が通流する流路の一例である。第2の流路19aは、第2の面20cに対応して内部に熱交換媒体が通流する流路の一例である。載置台14には、第1の流路19bが形成されていれば、第2の流路19aはなくてもよい。
【0022】
本実施形態では、第1の流路19bと第2の流路19aとは、第1の流路19bと第2の流路19aとに冷媒を流すことが可能なチラーユニット22に並列に接続される。しかし、これに限られず、第1の流路19bと第2の流路19aとは、第1の流路19bと第2の流路19aとに冷媒を流すことが可能なチラーユニット22に直列に接続されてもよい。本実施形態のように、チラーユニット22を2個配置し、第1の流路19bと第2の流路19aとでそれぞれ別系統の冷媒を循環させてもよいし、チラーユニット22を1個配置し、第1の流路19bと第2の流路19aとで共通して冷媒を循環させてもよい。
【0023】
基板処理装置1には、ガス供給ライン24が設けられている。ガス供給ライン24は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス(例えばHeガス)を、静電チャック20の上面と基板Wの裏面との間に供給する。
【0024】
基板処理装置1は、上部電極30を更に備える。上部電極30は、載置台14の上方に設けられている。上部電極30は、部材32を介して、チャンバ本体12の上部に支持されている。部材32は、絶縁性を有する材料から形成される。上部電極30と部材32は、チャンバ本体12の上部開口を閉じている。
【0025】
上部電極30は、天板34及び支持体36を含み得る。天板34の下面は、内部空間10sの側の下面であり、内部空間10sを画成する。天板34は、発生するジュール熱の少ない低抵抗の導電体又は半導体から形成され得る。天板34は、天板34をその板厚方向に貫通する複数のガス吐出孔34aを有する。
【0026】
支持体36は、天板34を着脱自在に支持する。支持体36は、アルミニウムなどの導電性材料から形成される。支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。支持体36は、ガス拡散室36aから下方に延びる複数のガス孔36bを有する。複数のガス孔36bは、複数のガス吐出孔34aにそれぞれ連通している。支持体36には、ガス導入口36cが形成されている。ガス導入口36cは、ガス拡散室36aに接続している。ガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0027】
ガス供給管38には、バルブ群42、流量制御器群44、及びガスソース群40が接続されている。ガスソース群40、バルブ群42、及び流量制御器群44は、ガス供給部を構成している。ガスソース群40は、複数のガスソースを含む。バルブ群42は、複数の開閉バルブを含む。流量制御器群44は、複数の流量制御器を含む。流量制御器群44の複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。ガスソース群40の複数のガスソースの各々は、バルブ群42の対応の開閉バルブ、及び流量制御器群44の対応の流量制御器を介して、ガス供給管38に接続されている。
【0028】
基板処理装置1では、チャンバ本体12の内壁面及び支持部13の外周に沿って、シールド46が着脱自在に設けられている。シールド46は、チャンバ本体12に反応副生物が付着することを防止する。シールド46は、例えば、アルミニウムから形成された母材の表面に耐腐食性を有する膜を形成することにより構成される。耐腐食性を有する膜は、酸化イットリウムなどのセラミックスから形成され得る。
【0029】
支持部13とチャンバ本体12の側壁との間には、バッフルプレート48が設けられている。バッフルプレート48は、例えば、アルミニウムから形成された母材の表面に耐腐食性を有する膜(酸化イットリウムなどの膜)を形成することにより構成される。バッフルプレート48には、複数の貫通孔が形成されている。バッフルプレート48の下方、且つ、チャンバ本体12の底部には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管53を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、圧力調整弁及びターボ分子ポンプなどの真空ポンプを含む。
【0030】
基板処理装置1は、第1の高周波電源62及び第2の高周波電源64を備えている。第1の高周波電源62は、第1の高周波電力を発生する電源である。第1の高周波電力は、プラズマの生成に適した周波数を有する。第1の高周波電力の周波数は、例えば27MHz~100MHzの範囲内の周波数である。第1の高周波電源62は、整合器66及び電極プレート16を介して基台18に接続されている。整合器66は、第1の高周波電源62の出力インピーダンスと負荷側(基台18側)のインピーダンスを整合させるための回路を有する。なお、第1の高周波電源62は、整合器66を介して、上部電極30に接続されていてもよい。第1の高周波電源62は、一例のプラズマ生成部を構成している。
【0031】
第2の高周波電源64は、第2の高周波電力を発生する電源である。第2の高周波電力は、第1の高周波電力の周波数よりも低い周波数を有する。第1の高周波電力と共に第2の高周波電力が用いられる場合には、第2の高周波電力は基板Wにイオンを引き込むためのバイアス用の高周波電力として用いられる。第2の高周波電力の周波数は、例えば400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数である。第2の高周波電源64は、整合器68及び電極プレート16を介して基台18に接続されている。整合器68は、第2の高周波電源64の出力インピーダンスと負荷側(基台18側)のインピーダンスを整合させるための回路を有する。
【0032】
なお、第1の高周波電力を用いずに、第2の高周波電力を用いて、即ち、単一の高周波電力のみを用いてプラズマを生成してもよい。この場合には、第2の高周波電力の周波数は、13.56MHzよりも大きな周波数、例えば40MHzであってもよい。基板処理装置1は、第1の高周波電源62及び整合器66を備えなくてもよい。第2の高周波電源64は一例のプラズマ生成部を構成する。
【0033】
基板処理装置1においてガスが、ガス供給部から内部空間10sに供給されて、プラズマを生成する。また、第1の高周波電力及び/又は第2の高周波電力が供給されることにより、上部電極30と基台18との間で高周波電界が生成される。生成された高周波電界がプラズマを生成する。
【0034】
基板処理装置1は、制御部80を更に備え得る。制御部80は、プロセッサ、メモリなどの記憶部、入力装置、表示装置、信号の入出力インターフェイス等を備えるコンピュータであり得る。制御部80は、基板処理装置1の各部を制御する。制御部80では、入力装置を用いて、オペレータが基板処理装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができる。また、制御部80では、表示装置により、基板処理装置1の稼働状況を可視化して表示することができる。さらに、記憶部には、制御プログラム及びレシピデータが格納されている。制御プログラムは、基板処理装置1で各種処理を実行するために、プロセッサによって実行される。プロセッサが、制御プログラムを実行し、レシピデータに従って基板処理装置1の各部を制御する。
【0035】
[流路]
基台18の内部に設けられた第2の流路19aでは、所定の温度に冷却された冷媒を流すことによって基板Wを冷却するが、直径が300mm以上の基板の端部から例えば数mm程度の、基板の最外周の局所的な領域の温度を制御することは難しい。
【0036】
そこで、本実施形態に係る載置台14では、基板の直径よりも外側に第1の流路19bを設け、第1の流路19bの流路に流す冷媒による温度制御の影響の範囲が小さくなるような位置に第1の流路19bを配置し、基板の最外周を局所的に温度制御する。また、本実施形態では、第1の流路19bの断面積を、第2の流路19aの断面積よりも相対的に小さくして流速を上げる。これにより、基板の最外周をより局所的に温度制御することを可能にする。
【0037】
図2は、一実施形態に係る流路の一例を示す図である。
図2(a)は、基台18の断面図をしめす。
図2(a)に示すように基台18内にて渦巻状に形成される。ただし、第2の流路19aの形状はこれに限られず、環状等であってもよいし、他の形状であってもよい。第1の流路19bは、第2の流路19aの周囲に略環状に形成される。ただし、第1の流路19bの形状はこれに限られず、2周以上環状又は渦巻状に形成されてもよいし、他の形状であってもよい。
【0038】
図2(a)のA-A断面を
図2(b)に示す。基板Wの端部又は静電チャック20の段差に対して外周側を第1の領域(外周領域)とし、内周側を第2の領域(基板設置領域)とする。本実施形態では、基板Wの端部から約2~3mmをターゲットとして、基板の最外周の温度制御を行うために、基台18の第1の領域に形成された第1の流路19bを必須の構成とする。第2の領域の基台18内に形成された第2の流路19aはなくてもよい。
【0039】
また、第1の領域には、主に第1の面20dに載置されるエッジリング25の温度を制御するための第1のヒータ20eが設けられている。本実施形態では、第1のヒータ20eは静電チャック20内に設けられているが、これに限られず、基台18に設けられてもよい。第1の領域の静電チャック20内に設けられた第2のヒータ20bはなくてもよい。
【0040】
第1の流路19bの断面積Sは、第2の流路19aの断面積S'よりも小さい。これにより、第1の流路19bを通流する冷媒の流速を、第2の流路19aを通流する冷媒の流速よりも上げることができ、第1の領域の抜熱効果を高めることができる。
【0041】
更に、第1の流路19bと第1のヒータ20eとの組み合わせにより、基板の最外周である基板の端部から数mm程度の範囲の温度制御をより精度良く行うことができる。
【0042】
[配置条件]
(条件1)
第1の流路19bは、第1の面20dに載置されるエッジリング25の温度を制御する。また、第1の流路19bは、基板の最外周の温度を制御する。第1の流路19bの配置条件について、
図3を参照して説明する。
図3は、一実施形態に係る第1の流路19b及び第2の流路19aの構造と配置条件の一例を示す図である。第1の面20dから第1の流路19bまでの垂直距離をhとし、第1の面20dと第2の面20cとの境界面から第1の流路19bまでの水平距離をdとしたとき、d>hの条件1を満たす領域に第1の流路19bを設ける。条件1は、tan
-1(h/d)≦45°と置き換えてもよい。
【0043】
本実施形態では、
図3に示す基板の最外周の温度制御対象エリアTgの温度制御を行う。温度制御対象エリアTgは静電チャック20の上面である第2の面20cの端部から2~5mm程度の領域である。構造上、第2の面20cの端部と、第1の面20d及び第2の面20cの境界面とによりなす角部分は、基板処理時に発生する反応生成物が付き易く、かつ、プラズマ入熱により熱くなり易い。よって、温度制御対象エリアTgの温度制御は重要である。また、基板の最外周の領域の温度制御性を高めることで、歩留まりを上げ、生産性を高めることができる。以上の理由から、本実施形態では、第1の領域の第1の流路19bの構造を上記条件1、及び以下の条件を満足するように配置することで、温度制御対象エリアTgの温度を制御する。
【0044】
なお、本実施形態では、載置台14の上面(第1の面20d及び第2の面20c)に段差があるが、段差はなくてもよい。段差がない場合には、位置Cは、位置Bに重なる。また、第1の流路19bからの熱の伝達は、位置Cを経由して位置Bに伝わる。
【0045】
よって、載置台14の上面に段差がある場合及び載置台14の上面に段差がない場合のいずれの場合であっても、第1の流路19bから熱が移動する最短距離である位置Cの温度を制御することによって、温度制御対象エリアTgにおける局所的な温度制御が可能となる。
【0046】
(条件2)
また、第2の領域において基台18内に形成される第2の流路19aの水平方向の幅をw1、第1の領域において基台18内に形成される第1の流路19bの水平方向の幅をw2としたとき、w1>w2であることが好ましい。第1の流路19b及び第2の流路19aを流れる冷媒の流量が一定であって第1の流路19bの高さ方向の長さが第2の流路19aの高さ方向の長さ以下である場合、第1の流路19bの幅が細くなるほど流速が速くなる。この結果、第1の流路19bを通流する冷媒の流速を、第2の流路19aを通流する冷媒の流速よりも上げることができる。これにより、第1の領域の抜熱制御を高め、基板の最外周の温度制御をより精度良く行うことができる。
【0047】
(条件3)
また、第1の流路19bから第2の流路19aまでの水平距離をd'としたとき、d'>dであることが好ましい。これにより、更に第1の領域の抜熱制御を高め、基板の最外周の温度制御性をより高めることができる。
【0048】
(条件4)
さらに、熱源として第1の流路19bを設定したときの角度θの条件について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、一実施形態に係る基板端部周辺の基板の最外周と熱源との位置関係の一例を示す図である。熱源としては、第1の流路19bを例に挙げて説明するが、熱源は第1の領域に設けられた第1のヒータ20eであってもよい。また、
図4では、説明の便宜のために、熱源となる第1の流路19bを点で示す。
【0049】
角度θは、
図3に示すように、第1の流路19bの上面の延長線と、上面の内側の端部(温度制御対象エリアTgの領域に近い側)と位置Cとを結ぶ線とがなす角である。
図4(a)に示すように、角度θが90°のとき、ΔT、すなわち「←」で示す載置台14における温度影響範囲が
図4(a)~(d)の中で最も大きい。
図4(b)~(d)に示すように、角度θが60°、45°、30°と小さくなる程、ΔT、すなわち「←」の長さが短くなり、載置台14における温度影響範囲が小さくなる。
【0050】
つまり、角度θが小さい程、載置台14における温度影響範囲が小さくなるため温度の局所制御ができ、好ましい。ただし、角度θが60°以下では、角度θに対する温度影響範囲の相対的な効果は小さくなる。例えば、角度θが60°以下であれば温度制御対象エリアTgを局所的に制御できると考えられる。
【0051】
[実験]
次に、第1の流路19bがある場合と、第1の流路19bがない場合とで基板の設置領域の温度を測定した結果について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、一実施形態に係る第1の流路19bの有無と基板の設置領域の温度の実験結果の一例を示す図である。基板の設置領域の温度とは、基板が第2の面20cに載置されたときの基板の裏面又は基板が載置された第2の面20cの温度である。
【0052】
図5の(1)は、第1の流路19bがある場合であって、第1の流路19bが細い場合を示す。第1の流路19bが細い場合とは、
図3に示す第2の流路19aの水平方向の幅w1及び第1の流路19bの水平方向の幅w2の関係が、w1>w2の条件を満たす場合である。
【0053】
図5の(2)は、第1の流路19bがない場合である。
図5の(3)は、基板の最外周制御用の第1の流路19bがある場合であって、第1の流路19bが(1)の場合よりも太い場合を示す。第1の流路19bが太い場合とは、第2の流路19aの水平方向の幅w1及び第1の流路19bの水平方向の幅w2の関係が、w1=w2又はw1<w2の条件を満たす場合である。
【0054】
なお、(1)~(3)のいずれの場合も、第2の領域に第2の流路19a及び第2のヒータ20bがある。
【0055】
図5の横軸は、基板の直径方向の位置を示し、縦軸は、基板の設置領域の温度を示す。
図5は、300mmの基板の中心から100mmをグラフの左端とし、基板端部148mmまでの第2の領域の温度と、基板端部148mmから基板外周の160mmまでの第1の領域の温度を示す。
【0056】
図5の結果によれば、第1の領域において、(1)の第1の流路19bが細い場合は、(2)の第1の流路19bがない場合及び(3)の第1の流路19bが太い場合と比べて冷媒による冷却効果が高まり、基板の最外周の温度が低下した。つまり、(1)の第1の流路19bが細い場合、(2)及び(3)の場合と比べて基板の最外周の温度制御性を高めることができた。
【0057】
この結果、第1の流路19bを有する(1)及び(2)の場合、第1の流路19bを有しない(3)の場合と比べて基板の設置領域の温度差ΔTが大きくなった。この結果、基板の最外周(基板端部から2~3mm程度)の温度を局所的に低下させることができた。さらに、第1の流路19bが細い(1)の場合、第1の流路19bが(1)の場合よりも細い(2)と比べて、基板の最外周の温度を更に低下させることができた。
【0058】
以上、本実施形態に係る載置台14及び基板処理装置1によれば、基板の最外周の温度を制御することができる。
【0059】
なお、本実施形態では、基板の最外周の温度を制御する構成として、主に第1の流路19bを熱源として挙げて説明したが、これに限られない。例えば、基板の最外周の温度を制御する構成として第1のヒータ20eを用いてもよいし、第1の流路19bと第1のヒータ20eとを組み合わせて用いてもよい。また、熱源は、第1の流路19b、第1のヒータ20eの他、発熱体、ピエゾ素子を用いてもよい。
【0060】
また、第1のヒータ20eは、第1の面20dと第1の流路19bとの間に1つ設けられる例を挙げて説明したが、これに限られず、複数設けられてもよい。複数の第1のヒータ20eが設けられる場合、複数の第1のヒータ20eの少なくとも一つは、第1の面20dと第1の流路19bとの間に設けられることが好ましい。
【0061】
今回開示された一実施形態に係る載置台及基板処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0062】
本開示の基板処理装置は、Atomic Layer Deposition(ALD)装置、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のいずれのタイプの装置でも適用可能である。
【0063】
また、基板処理装置1の一例としてプラズマ処理装置を挙げて説明したが、基板処理装置は、プラズマ処理装置に限定されるものではない。例えば、基板処理装置1は、プラズマを生成せず、ヒータ等の加熱機構により基板Wを熱処理する熱処理装置や、熱ALD装置、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)装置等であってもよい。また、基板処理装置1は、エッチング装置であってもよいし、成膜装置であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 基板処理装置
14 載置台
16 電極プレート
18 基台
19a 第2の流路
19b 第1の流路
20 静電チャック
20a 電極
20b 第2のヒータ
20c 第2の面
20d 第1の面
20e 第1のヒータ
22 チラーユニット
22a、22b 配管
30 上部電極
32 部材
34 天板
36 支持体
38 ガス供給管
40 ガスソース群
42 バルブ群
44 流量制御器群
46 シールド
48 バッフルプレート
80 制御部
W 基板