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特許7394563基板処理装置の洗浄方法及び基板処理システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】基板処理装置の洗浄方法及び基板処理システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
H01L21/304 647A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019166627
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021044457
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】福井 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 柏翰
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-049446(JP,A)
【文献】特開2018-093063(JP,A)
【文献】特開2004-152925(JP,A)
【文献】特開2007-311411(JP,A)
【文献】特開2007-087986(JP,A)
【文献】特開2007-073722(JP,A)
【文献】特表2018-530157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 1/00 -13/00
F26B 5/00 - 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体により表面が濡れた状態の基板を超臨界流体と接触させて、前記基板を乾燥させる乾燥処理が行われる基板処理装置の洗浄方法であって、
前記超臨界流体と、極性分子を含み前記液体よりも沸点が低い溶媒とが混合した洗浄用流体を前記基板処理装置の内部で拡散させる工程と、
前記洗浄用流体の拡散の後に、前記基板処理装置の内部から前記洗浄用流体を排出する工程と、
を有し、
前記洗浄用流体を前記拡散させる工程は、前記基板処理装置の内部に前記洗浄用流体を供給する工程を有する、基板処理装置の洗浄方法。
【請求項2】
液体により表面が濡れた状態の基板を超臨界流体と接触させて、前記基板を乾燥させる乾燥処理が行われる基板処理装置の洗浄方法であって、
前記超臨界流体と、極性分子を含み前記液体よりも沸点が低い溶媒とが混合した洗浄用流体を前記基板処理装置の内部で拡散させる工程と、
前記洗浄用流体の拡散の後に、前記基板処理装置の内部から前記洗浄用流体を排出する工程と、
を有し、
前記洗浄用流体を前記拡散させる工程は、
前記溶媒が液盛りされた治具を前記基板処理装置の内部に搬入する工程と、
前記治具の搬入の後に、前記基板処理装置の内部に前記超臨界流体を供給しながら、前記基板処理装置の内部で前記溶媒を気化させる工程と、
を含む、基板処理装置の洗浄方法。
【請求項3】
前記液体は極性分子を含み、前記超臨界流体は無極性分子を含む、請求項1又は2に記載の基板処理装置の洗浄方法。
【請求項4】
前記液体は、イソプロピルアルコールを含み、
前記溶媒は、エタノール、メタノール若しくはアセトン又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1乃至のいずれか1項に記載の基板処理装置の洗浄方法。
【請求項5】
前記超臨界流体と、キレート剤を含む溶液とが混合した第2の洗浄用流体を前記基板処理装置の内部で拡散させる工程と、
前記第2の洗浄用流体の前記拡散の後に、前記基板処理装置の内部から前記第2の洗浄用流体を排出する工程と、
を有する、請求項1乃至のいずれか1項に記載の基板処理装置の洗浄方法。
【請求項6】
前記洗浄用流体を前記拡散させる工程と前記洗浄用流体を排出する工程との間に、前記超臨界流体を前記基板処理装置の内部で拡散させる工程を有し、
前記洗浄用流体を排出する工程において、前記基板処理装置の内部から前記超臨界流体も排出する、請求項1乃至のいずれか1項に記載の基板処理装置の洗浄方法。
【請求項7】
液体により表面が濡れた状態の基板を超臨界流体と接触させて、前記基板を乾燥させる乾燥処理が行われる基板処理装置と、
前記超臨界流体と、極性分子を含み前記液体よりも沸点が低い溶媒とが混合した洗浄用流体を前記基板処理装置の内部で拡散させる拡散部と、
前記基板処理装置の内部から前記洗浄用流体を排出する排出部と、
を有し、
前記拡散部は、前記基板処理装置の内部に前記洗浄用流体を供給する供給部を有する、基板処理システム。
【請求項8】
液体により表面が濡れた状態の基板を超臨界流体と接触させて、前記基板を乾燥させる乾燥処理が行われる基板処理装置と、
前記超臨界流体と、極性分子を含み前記液体よりも沸点が低い溶媒とが混合した洗浄用流体を前記基板処理装置の内部で拡散させる拡散部と、
前記基板処理装置の内部から前記洗浄用流体を排出する排出部と、
を有し、
前記拡散部は、
前記溶媒が液盛りされた治具を前記基板処理装置の内部に搬入する搬入部と、
前記治具の搬入の後に、前記基板処理装置の内部に前記超臨界流体を供給しながら、前記基板処理装置の内部で前記溶媒を気化させる気化部と、
有する、基板処理システム。
【請求項9】
前記洗浄用流体を前記基板処理装置に供給する第1の供給ラインと、
前記洗浄用流体から独立して前記超臨界流体を前記基板処理装置に供給する第2の供給ラインと、
前記第1の供給ラインおよび前記第2の供給ラインが繋がり、前記基板処理装置に供給される流体を前記洗浄用流体と前記超臨界流体との間で切り替えるバルブと、
を有する、請求項7又は8に記載の基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置の洗浄方法及び基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハなどの基板の表面を液体で処理した後の乾燥工程において、液体により表面が濡れた状態の基板を超臨界状態の処理流体と接触させることにより、基板を乾燥させる技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、基板を収容するチャンバと、チャンバに接続されて基板の表面に超臨界流体を供給する供給ラインと、チャンバに接続されてチャンバ内の超臨界流体を排出する排出ラインとを備えた基板処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-251550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、超臨界流体を用いた乾燥処理時の基板へのパーティクルの付着を抑制することができる基板処理装置の洗浄方法及び基板処理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による基板処理装置の洗浄方法は、液体により表面が濡れた状態の基板を超臨界流体と接触させて、前記基板を乾燥させる乾燥処理が行われる基板処理装置の洗浄方法であって、前記超臨界流体と、極性分子を含み前記液体よりも沸点が低い溶媒とが混合した洗浄用流体を前記基板処理装置の内部で拡散させる工程と、前記洗浄用流体の拡散の後に、前記基板処理装置の内部から前記洗浄用流体を排出する工程と、を有し、前記洗浄用流体を前記拡散させる工程は、前記基板処理装置の内部に前記洗浄用流体を供給する工程を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、超臨界流体を用いた乾燥処理時の基板へのパーティクルの付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る基板処理システムの洗浄処理の概要を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。
図3】洗浄処理ユニットの構成を示す断面図である。
図4】乾燥処理ユニットの構成を示す外観斜視図である。
図5】第1の実施形態における乾燥処理ユニットのシステム全体の構成例を示す図である。
図6】制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図7】IPAの乾燥メカニズムを説明するための図であり、ウェハが有するパターンを簡略的に示した拡大断面図である。
図8】第1の実施形態における乾燥処理ユニットの洗浄処理を示すフローチャートである。
図9A】第1の実施形態における乾燥処理ユニットの洗浄処理の概要を示す図(その1)である。
図9B】第1の実施形態における乾燥処理ユニットの洗浄処理の概要を示す図(その2)である。
図9C】第1の実施形態における乾燥処理ユニットの洗浄処理の概要を示す図(その3)である。
図10】第2の実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。
図11】第2の実施形態における乾燥処理ユニットのシステム全体の構成例を示す図である。
図12】第2の実施形態における乾燥処理ユニットの洗浄処理を示すフローチャートである。
図13A】第2の実施形態における乾燥処理ユニットの洗浄処理の概要を示す図(その1)である。
図13B】第2の実施形態における乾燥処理ユニットの洗浄処理の概要を示す図(その2)である。
図13C】第2の実施形態における乾燥処理ユニットの洗浄処理の概要を示す図(その3)である。
図14A】治具の一例を示す斜視図である。
図14B】治具の一例を示す断面図である。
図15】第3の実施形態における乾燥処理ユニットの洗浄処理を示すフローチャートである。
図16A】第3の実施形態における乾燥処理ユニットの洗浄処理の概要を示す図(その1)である。
図16B】第3の実施形態における乾燥処理ユニットの洗浄処理の概要を示す図(その2)である。
図16C】第3の実施形態における乾燥処理ユニットの洗浄処理の概要を示す図(その3)である。
図16D】第3の実施形態における乾燥処理ユニットの洗浄処理の概要を示す図(その4)である。
図17】第4の実施形態における乾燥処理ユニットのシステム全体の構成例を示す図である。
図18】第4の実施形態における乾燥処理ユニットの洗浄処理の概要を示す図である。
図19】第5の実施形態における乾燥処理ユニットのシステム全体の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成には、同一の又は対応する符号を付して説明を省略することがある。
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態は、乾燥処理ユニットを含む基板処理システムに関する。乾燥処理ユニットは基板処理装置の一例である。
【0011】
<基板処理システムの洗浄処理の概要>
まず、図1を参照しながら、第1の実施形態に係る基板処理システム100の洗浄処理の概要について説明する。図1は、第1の実施形態に係る基板処理システム100の洗浄処理の概要を示す図である。
【0012】
第1の実施形態に係る基板処理システム100(図2参照)では、乾燥処理ユニット17(図2参照)において、図1に示すように、複数のウェハに対して超臨界流体を用いた乾燥処理(S1)が繰り返し行われる。かかる乾燥処理(S1)の詳細については後述する。
【0013】
ここで、第1の実施形態に係る基板処理システム100の洗浄処理では、基板処理システム100の乾燥処理ユニット17において、繰り返し行われる乾燥処理(S1)の合間に洗浄処理(S2)を行う。かかる洗浄処理(S2)は、洗浄用流体拡散処理(S3)と、排気処理(S4)とを含む。
【0014】
乾燥処理(S1)において、ウェハにパーティクルが付着する場合がある。本願発明者らは、パーティクルの付着を抑制すべく鋭意検討を重ねた。この結果、パーティクルが、乾燥の対象とする物質の残渣であることが明らかになった。また、乾燥の対象とする物質が極性分子であるのに対し、乾燥処理(S1)に用いる超臨界流体が非極性分子であるために、乾燥の対象とする物質が超臨界流体に溶解せず、残渣が生じていることが明らかになった。更に、極性分子の溶媒を超臨界流体とともに乾燥処理ユニット17に供給することで乾燥処理ユニット17の内部から残渣を除去し、ウェハへの残渣の付着を抑制することできることも明らかになった。
【0015】
そこで、洗浄用流体拡散処理(S3)では、超臨界流体と、極性分子を含みイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol:以下、IPAと呼称する。)よりも沸点が低い溶媒とが混合した洗浄用流体80(図9A図13B図16B参照)を乾燥処理ユニット17内で拡散させる。乾燥処理ユニット17内で拡散した洗浄用流体80は、乾燥処理ユニット17内の乾燥の対象とする物質の残渣を溶解する。
【0016】
続いて行われる排気処理(S4)では、残渣が溶解した洗浄用流体80を、ポンプなどを用いて乾燥処理ユニット17内から排出する。これにより、乾燥処理ユニット17内の残渣が、洗浄用流体80とともに乾燥処理ユニット17の外部に排出される。
【0017】
すなわち、乾燥処理ユニット17内の残渣を、洗浄用流体拡散処理(S3)と排気処理(S4)とにより除去することができる。したがって、第1の実施形態に係る基板処理システム100の洗浄処理(S2)によれば、超臨界流体を用いた乾燥処理(S1)が行われる乾燥処理ユニット17内の残渣を低減し、残渣のウェハへの付着を抑制することができる。
【0018】
<基板処理システムの概要>
つづいて、図2を参照しながら、第1の実施形態に係る基板処理システム100の概略構成について説明する。図2は、第1の実施形態に係る基板処理システム100の概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交する右手系のX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0019】
図2に示すように、基板処理システム100は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0020】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚の半導体ウェハW(以下ウェハW)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0021】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウェハWの搬送を行う。
【0022】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の洗浄処理ユニット16と、複数の乾燥処理ユニット17とを備える。複数の洗浄処理ユニット16と複数の乾燥処理ユニット17とは、搬送部15の両側に並べて設けられる。なお、図2に示した洗浄処理ユニット16および乾燥処理ユニット17の配置や個数は一例であり、図示のものに限定されない。
【0023】
搬送部15は、内部に基板搬送装置18を備える。基板搬送装置18は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置18は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いて受渡部14と、洗浄処理ユニット16と、乾燥処理ユニット17との間でウェハWの搬送を行う。
【0024】
洗浄処理ユニット16は、基板搬送装置18によって搬送されるウェハWに対して所定の洗浄処理を行う。洗浄処理ユニット16の構成例については後述する。
【0025】
乾燥処理ユニット17は、洗浄処理ユニット16によって洗浄処理されたウェハWに対し、上述した乾燥処理を行う。乾燥処理ユニット17の構成例については後述する。
【0026】
また、基板処理システム100は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部19と記憶部20とを備える。
【0027】
制御部19は、CPU(central processing unit)、ROM(read only memory)、RAM(random access memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。かかるマイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、後述する制御を実現する。
【0028】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から制御装置4の記憶部20にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0029】
記憶部20は、たとえば、RAM、フラッシュメモリ(flash memory)などの半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置によって実現される。
【0030】
上記のように構成された基板処理システム100では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウェハWを取り出し、取り出したウェハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウェハWは、処理ステーション3の基板搬送装置18によって受渡部14から取り出されて、洗浄処理ユニット16へ搬入される。
【0031】
洗浄処理ユニット16へ搬入されたウェハWは、洗浄処理ユニット16によって洗浄処理が施された後、基板搬送装置18によって洗浄処理ユニット16から搬出される。洗浄処理ユニット16から搬出されたウェハWは、基板搬送装置18によって乾燥処理ユニット17へ搬入され、乾燥処理ユニット17によって乾燥処理が施される。
【0032】
乾燥処理ユニット17によって乾燥処理されたウェハWは、基板搬送装置18によって乾燥処理ユニット17から搬出され、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウェハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0033】
<洗浄処理ユニットの概要>
次に、図3を参照しながら、洗浄処理ユニット16の概略構成について説明する。図3は、洗浄処理ユニット16の構成を示す断面図である。洗浄処理ユニット16は、たとえば、スピン洗浄によりウェハWを1枚ずつ洗浄する枚葉式の洗浄処理ユニットとして構成される。
【0034】
図3に示すように、洗浄処理ユニット16は、処理空間を形成するアウターチャンバー23内に配置されたウェハ保持機構25にてウェハWをほぼ水平に保持し、このウェハ保持機構25を鉛直軸周りに回転させることによりウェハWを回転させる。そして、洗浄処理ユニット16は、回転するウェハWの上方にノズルアーム26を進入させ、かかるノズルアーム26の先端部に設けられた薬液ノズル26aから薬液やリンス液を予め定められた順に供給することにより、ウェハWの表面の洗浄処理を行う。
【0035】
また、洗浄処理ユニット16には、ウェハ保持機構25の内部にも薬液供給路25aが形成されている。そして、かかる薬液供給路25aから供給された薬液やリンス液によって、ウェハWの裏面洗浄が行われる。
【0036】
上述のウェハWの洗浄処理は、たとえば、最初にアルカリ性の薬液であるSC1液(アンモニアと過酸化水素水の混合液)によるパーティクルや有機性の汚染物質の除去が行われ、次に、リンス液である脱イオン水(deionized water:以下、DIWと呼称する。)によるリンス洗浄が行われる。次に、酸性薬液である希フッ酸水溶液(diluted hydrofluoric acid:以下、DHFと呼称する。)による自然酸化膜の除去が行われ、次に、DIWによるリンス洗浄が行われる。
【0037】
上述の各種薬液は、アウターチャンバー23や、アウターチャンバー23内に配置されるインナーカップ24に受け止められて、アウターチャンバー23の底部に設けられる排液口23aや、インナーカップ24の底部に設けられる排液口24aから排出される。さらに、アウターチャンバー23内の雰囲気は、アウターチャンバー23の底部に設けられる排気口23bから排気される。
【0038】
上述のウェハWのリンス処理の後には、ウェハ保持機構25を回転させながら、ウェハWの表面および裏面に液体状態のIPA(以下、「IPA液体」と呼称する。)を供給し、ウェハWの両面に残存しているDIWと置換する。その後、ウェハ保持機構25の回転を緩やかに停止する。
【0039】
こうして洗浄処理を終えたウェハWは、その表面にIPA液体71(図7参照)が液盛りされた状態(ウェハW表面にIPA液体71の液膜が形成された状態)のまま、ウェハ保持機構25に設けられた不図示の受け渡し機構により基板搬送装置18に受け渡され、洗浄処理ユニット16より搬出される。
【0040】
ここで、ウェハWの表面に液盛りされたIPA液体71は、洗浄処理ユニット16から乾燥処理ユニット17へのウェハWの搬送中や、乾燥処理ユニット17への搬入動作中に、ウェハW表面の液体が蒸発(気化)することによってパターン倒れが発生することを防ぐ、乾燥防止用の液体として機能する。
【0041】
洗浄処理ユニット16での洗浄処理を終え、表面にIPA液体71が液盛りされたウェハWは、乾燥処理ユニット17に搬送される。そして、乾燥処理ユニット17内においてウェハW表面のIPA液体71にCOの超臨界流体70(図7参照)を接触させることにより、かかるIPA液体71をCOの超臨界流体70に溶解させて除去し、ウェハWを乾燥する処理が行われる。
【0042】
<乾燥処理ユニットの概要>
以下においては、まず、乾燥処理ユニット17の構成について説明し、その後、乾燥処理ユニット17におけるシステム全体の構成について説明する。図4は、乾燥処理ユニット17の構成を示す外観斜視図である。
【0043】
乾燥処理ユニット17は、本体31と、保持板32と、蓋部材33とを有する。筐体状の本体31には、ウェハWを搬入出するための開口部34が形成される。保持板32は、処理対象のウェハWを水平方向に保持する。蓋部材33は、かかる保持板32を支持するとともに、ウェハWを本体31内に搬入したときに、開口部34を密閉する。
【0044】
本体31は、たとえば直径300mmのウェハWを収容可能な処理空間が内部に形成された容器であり、その壁部には、供給ポート35A、35Bと排出ポート36とが設けられる。供給ポート35A、35Bと排出ポート36とは、それぞれ、乾燥処理ユニット17の上流側と下流側とに設けられる超臨界流体70(図7参照)を流通させるための供給ラインに接続されている。かかる供給ラインの構成例については後述する。
【0045】
供給ポート35Aは、筐体状の本体31において、開口部34とは反対側の側面に接続されている。また、供給ポート35Bは、本体31の底面に接続されている。さらに、排出ポート36は、開口部34の下方側に接続されている。なお、図4には2つの供給ポート35A、35Bと1つの排出ポート36が図示されているが、供給ポート35A、35Bや排出ポート36の数は特に限定されない。
【0046】
また、本体31の内部には、流体供給ヘッダー37A、37Bと、流体排出ヘッダー38とが設けられる。流体供給ヘッダー37A、37Bと流体排出ヘッダー38とは、いずれも多数の開孔が形成されている。
【0047】
流体供給ヘッダー37Aは、供給ポート35Aに接続され、筐体状の本体31内部において、開口部34とは反対側の側面に隣接して設けられる。また、流体供給ヘッダー37Aに形成される多数の開孔は、開口部34側を向いている。
【0048】
流体供給ヘッダー37Bは、供給ポート35Bに接続され、筐体状の本体31内部における底面の中央部に設けられる。また、流体供給ヘッダー37Bに形成される多数の開孔は、上方を向いている。
【0049】
流体排出ヘッダー38は、排出ポート36に接続され、筐体状の本体31内部において、開口部34側の側面に隣接するとともに、開口部34よりも下方に設けられる。また、流体排出ヘッダー38に形成される多数の開孔は、流体供給ヘッダー37A側を向いている。
【0050】
流体供給ヘッダー37A、37Bは、超臨界流体70を本体31内に供給する。また、流体排出ヘッダー38は、本体31内の超臨界流体70を本体31の外部に導いて排出する。なお、流体排出ヘッダー38を介して本体31の外部に排出される超臨界流体70には、ウェハWの表面から超臨界流体70に溶け込んだIPA液体71(図7参照)が含まれる。
【0051】
上述のように配置される流体供給ヘッダー37A、37Bの開孔から本体31内に超臨界流体70が供給され、また流体排出ヘッダー38の開孔を介して超臨界流体70が本体31内から排出されることによって、本体31の内部には、ウェハWの周囲で所定の向きに流動する超臨界流体70の層流が形成される。
【0052】
かかる超臨界流体70の層流は、たとえば、流体供給ヘッダー37Aから、ウェハWの上方をウェハWの表面に沿って、開口部34の上部に向かって流れる。さらに、超臨界流体70の層流は、開口部34の上方で下方側に向きを変え、開口部34の近傍を通り、流体排出ヘッダー38に向かって流れる。
【0053】
かかる層流の例では、乾燥処理ユニット17の内部において、保持板32におけるウェハWと蓋部材33との間に不図示の開孔が形成され、かかる開孔を超臨界流体70の層流が通過する。
【0054】
なお、本体31内部への超臨界流体70の供給時と、本体31からの超臨界流体70の排出時とにウェハWに加えられうる負荷を軽減する観点からは、流体供給ヘッダーおよび流体排出ヘッダーは、それぞれ複数個設けられることが好ましい。
【0055】
乾燥処理ユニット17は、さらに、不図示の押圧機構を備える。かかる押圧機構は、本体31内部の処理空間内に供給された超臨界状態の超臨界流体70によってもたらされる内圧に抗して、本体31に向けて蓋部材33を押し付け、処理空間を密閉する機能を有する。また、かかる処理空間内に供給された超臨界流体70が所定の温度を保てるように、本体31の表面には、断熱材やテープヒータなどが設けられていてもよい。
【0056】
次に、図5を参照しながら、乾燥処理ユニット17のシステム全体の構成について説明する。図5は、第1の実施形態における乾燥処理ユニット17のシステム全体の構成例を示す図である。
【0057】
かかるシステム全体において、乾燥処理ユニット17よりも上流側には流体供給源51が設けられており、乾燥処理ユニット17において超臨界流体70(図7参照)を流通させるための供給ラインには、流体供給源51から超臨界流体70が供給される。流体供給源51には、たとえば、COの超臨界流体70を発生させるための原料COが貯蔵される。
【0058】
また、流体供給源51と乾燥処理ユニット17との間には、上流側から下流側に向かって、バルブ63aと、バルブ63bとが順次設けられる。なお、ここでいう上流側および下流側の用語は、供給ラインにおける超臨界流体70の流れ方向を基準とする。
【0059】
バルブ63aは、流体供給源51からの超臨界流体70の供給のオンおよびオフを調整するバルブであり、開状態では下流側の供給ラインに超臨界流体70を流し、閉状態では下流側の供給ラインに超臨界流体70を流さない。流体供給源51と乾燥処理ユニット17との間の供給ラインは第2の供給ラインの一例である。
【0060】
バルブ63bは、乾燥処理ユニット17への超臨界流体70の供給のオンおよびオフを調整するバルブである。バルブ63bから乾燥処理ユニット17に接続される供給ラインは、図4に示した供給ポート35Aに接続され、バルブ63bを流れる超臨界流体70は、供給ポート35Aと流体供給ヘッダー37Aとを介して、本体31内部に供給される。
【0061】
バルブ63aとバルブ63bとの間で供給ラインが分岐している。具体的には、バルブ63aとバルブ63bとの間の供給ラインから、バルブ63cを介して乾燥処理ユニット17に接続される供給ラインが分岐して延在する。
【0062】
バルブ63cを介して乾燥処理ユニット17に接続される供給ラインは、乾燥処理ユニット17への超臨界流体70の供給のための補助的な流路である。かかる供給ラインは、図4に示した供給ポート35Bに接続され、バルブ63cを流れる超臨界流体70は、供給ポート35Bと流体供給ヘッダー37Bとを介して、本体31内部に供給される。
【0063】
乾燥処理ユニット17よりも上流側に、洗浄用流体拡散処理(S3)に用いる超臨界流体となる液体、例えば液化COの供給源52と、洗浄用流体拡散処理(S3)に用いる溶媒の供給源53とが設けられる。溶媒は極性分子を含み、溶媒の沸点はIPAの沸点よりも低い。溶媒は、例えばメタノール、エタノール、アセトン又は酢酸エチルを含む。供給源52及び供給源53と乾燥処理ユニット17との間に、供給源52から供給された液体と供給源53から供給された溶媒とを混合する混合部54が設けられる。混合部54と乾燥処理ユニット17との間に、混合部54により生成された混合液から洗浄用流体80を生成する洗浄用流体生成部55が設けられる。洗浄用流体生成部55は、上流側から下流側に向かって配置されたポンプ56と、ヒータ57とを有する。洗浄用流体80の乾燥処理ユニット17への供給ラインは、バルブ63dを介して超臨界流体70の供給ラインに、バルブ63aとバルブ63bとの間の分岐点よりも上流側で繋がれる。
【0064】
バルブ63dは、乾燥処理ユニット17への洗浄用流体80の供給のオンおよびオフを調整するバルブであり、開状態では下流側の供給ラインに洗浄用流体80を流し、閉状態では下流側の供給ラインに洗浄用流体80を流さない。洗浄用流体生成部55と乾燥処理ユニット17との間の供給ラインは第1の供給ラインの一例である。
【0065】
乾燥処理ユニット17よりも下流側には、バルブ63eが設けられる。バルブ63eは、乾燥処理ユニット17からの超臨界流体70または洗浄用流体80の排出のオンおよびオフを調整するバルブである。乾燥処理ユニット17から超臨界流体70または洗浄用流体80を排出する場合にはバルブ63eが開状態に制御され、乾燥処理ユニット17から超臨界流体70または洗浄用流体80を排出しない場合にはバルブ63eが閉状態に制御される。
【0066】
なお、上述の供給ラインには、流体の圧力を検出する圧力センサ及び流体の温度を検出する温度センサが設置される。図5に示す例では、乾燥処理ユニット17とバルブ63eとの間に圧力センサ61が設けられ、乾燥処理ユニット17内の流体の温度を検出する温度センサ62が設けられている。圧力センサおよび温度センサは必要に応じて供給ラインの様々な箇所に設置してもよい。
【0067】
図6は、制御装置4の機能構成を示すブロック図である。上述のように、制御装置4は、制御部19と記憶部20とを備える。制御装置4は、図5に示す各種要素から計測信号を受信するとともに、図5に示す各種要素に制御指示信号を送信する。
【0068】
制御装置4は、たとえば、圧力センサ61と、温度センサ62との計測結果を受信するとともに、バルブ63a~63eに制御指示信号を送信する。なお、制御装置4が送受信可能な信号は特に限定されない。バルブ63a及び63dは、基板処理装置に供給される流体を洗浄用流体と超臨界流体との間で切り替えるバルブの一例である。制御装置4と、洗浄用流体生成部55と、バルブ63b~63dと、洗浄用流体生成部55と乾燥処理ユニット17との間の供給ラインとが拡散部に含まれる。
【0069】
<超臨界流体を用いた乾燥処理の概要>
次に、超臨界流体70を用いたIPA液体71の乾燥処理の概要について説明する。図7は、IPA液体71の乾燥メカニズムを説明するための図であり、ウェハWが有するパターンPを簡略的に示した拡大断面図である。
【0070】
乾燥処理ユニット17においてCOの超臨界流体70が乾燥処理ユニット17の本体31内部に導入された当初は、図7(a)に示すように、パターンPの間にはIPA液体71のみが充填されている。
【0071】
かかるパターンPの間のIPA液体71は、COの超臨界流体70と接触することで、徐々にCOの超臨界流体70に溶解し、図7(b)に示すように徐々に超臨界流体70と置き換わる。このとき、パターンPの間には、IPA液体71とCOの超臨界流体70とのほかに、IPA液体71とCOの超臨界流体70とが混合した状態の混合流体70aが存在する。
【0072】
さらに、パターンPの間でIPA液体71からCOの超臨界流体70への置換が進行するにしたがって、パターンPの間からはIPA液体71が除去され、最終的には図7(c)に示すように、COの超臨界流体70のみによってパターンPの間が満たされる。
【0073】
パターンPの間からIPA液体71が除去された後に、本体31内の圧力を大気圧まで下げることによって、図7(d)に示すように、COの超臨界流体70は超臨界状態から気体状態に変化し、パターンPの間は気体のみによって占められる。このようにしてパターンPの間のIPA液体71は除去され、ウェハWの乾燥処理が完了する。
【0074】
ここで、超臨界流体70は、液体(たとえばIPA液体71)と比べて粘度が小さく、また液体を溶解する能力も高いことに加え、超臨界流体70と平衡状態にある液体や気体との間で界面が存在しない。これにより、上述の超臨界流体70を用いた乾燥処理では、表面張力の影響を受けることなく液体を乾燥させることができることから、パターンPのパターン倒れを抑制することができる。
【0075】
一方で、ここまで説明した基板処理システム100におけるCOの超臨界流体70を用いた乾燥処理において、ウェハWにIPAの残渣が付着する場合がある。IPAの残渣が生じる原因について本願発明者らが鋭意検討を重ねた結果、IPAが極性分子であるのに対し、COが非極性分子であるために、IPAがCOに溶解せず、IPAの残渣が生じていることが明らかになった。また、沸点がIPAの沸点よりも低い極性分子の溶媒を超臨界流体とともに乾燥処理ユニット17に供給することで乾燥処理ユニット17の内部からIPAの残渣を除去し、ウェハWへのIPAの残渣の付着を抑制することできることも明らかになった。
【0076】
<基板処理システムの洗浄処理の詳細>
ここで、第1の実施形態に係る基板処理システム100における乾燥処理ユニット17を洗浄する処理の詳細について説明する。図8は、第1の実施形態における乾燥処理ユニット17の洗浄処理を示すフローチャートである。図9A図9Cは、第1の実施形態における乾燥処理ユニット17の洗浄処理の概要を示す図である。なお、図8に示す基板処理システム100の洗浄処理は、制御装置4の記憶部20に格納されているプログラムを制御部19が読み出すとともに、読み出した命令に基づいて制御部19が洗浄処理ユニット16や乾燥処理ユニット17などを制御することにより実行される。
【0077】
第1の実施形態では、まず、混合部54において、供給源52から供給された液体、例えば液体COと、供給源53から供給された溶媒、例えばメタノール、エタノール又はアセトンとを混合し、混合液を生成する(ステップS11)。
【0078】
次いで、洗浄用流体生成部55において、混合液中の、供給源52から供給された液体を超臨界流体とし、溶媒と超臨界流体とを混合した洗浄用流体80を生成する(ステップS12)。洗浄用流体生成部55により生成される洗浄用流体80に含まれる溶媒は液体のままであってもよく、洗浄用流体生成部55において、気化させてもよい。
【0079】
その後、洗浄用流体80を乾燥処理ユニット17の内部で拡散させる(ステップS13)。具体的には、制御装置4の制御部19が、図9Aに示すように、バルブ63a及び63eを閉状態に制御する一方で、バルブ63b~63dを開状態に制御する。また、乾燥処理ユニット17の内部の温度を溶媒の沸点以上の温度とする。かかる制御により、洗浄用流体生成部55からバルブ63b~63dを介して、洗浄用流体80が乾燥処理ユニット17の内部に供給され、乾燥処理ユニット17の内部で拡散する。このとき、洗浄用流体80に含まれる溶媒は気体となっている。洗浄用流体80が乾燥処理ユニット17の内部で拡散すると、IPAの残渣が洗浄用流体80に含まれる溶媒に溶解する。そして、洗浄用流体80を乾燥処理ユニット17の内部で拡散させた状態で所定の時間待機する。待機の時間は、例えば30分以上である。
【0080】
その後、超臨界流体70を乾燥処理ユニット17の内部で拡散させる(ステップS14)。具体的には、制御装置4の制御部19が、図9Bに示すように、バルブ63d及び63eを閉状態に制御する一方で、バルブ63a~63cを開状態に制御する。かかる制御により、流体供給源51からバルブ63a~63cを介して、超臨界流体70が乾燥処理ユニット17の内部に供給され、乾燥処理ユニット17の内部で拡散する。この結果、乾燥処理ユニット17の内部は、超臨界流体70及び洗浄用流体80により満たされる。乾燥処理ユニット17の内部が超臨界流体70及び洗浄用流体80により満たされている間、制御部19は乾燥処理ユニット17の内部を超臨界流体70が超臨界状態を維持できる温度に保つように制御する。つまり、ステップS14において、制御部19は、ウェハWの乾燥処理と同様にして、超臨界流体70を用いて乾燥処理ユニット17の内部の乾燥処理の制御を行う。
【0081】
続いて、乾燥処理ユニット17の内部から超臨界流体70及び洗浄用流体80を排出する(ステップS15)。具体的には、制御装置4の制御部19が、図9Cに示すように、バルブ63a~63dを閉状態に制御する一方で、バルブ63eを開状態に制御する。かかる制御により、乾燥処理ユニット17からバルブ63eを介して、超臨界流体70及び洗浄用流体80が外部に排出される。IPAの残渣は洗浄用流体80に含まれる溶媒に溶解しているため、洗浄用流体80とともに除去することができる。洗浄用流体80の排出が完了すると、乾燥処理ユニット17に対しての洗浄処理が完了する。また、ステップS14において超臨界流体70を用いた乾燥処理が行われており、乾燥処理ユニット17の内部の乾燥処理も完了している。
【0082】
このように、第1の実施形態によれば、乾燥処理ユニット17の内部のIPAの残渣を容易に除去することができる。したがって、ウェハWへのパーティクルの付着を抑制することができる。また、溶媒の沸点がIPAの沸点よりも低いため、IPAを溶解した溶媒を乾燥処理ユニット17から容易に排出することができる。
【0083】
第1の実施形態では、乾燥処理ユニット17の内部だけでなく、洗浄用流体生成部55と乾燥処理ユニット17との間の供給ラインの内部も、乾燥処理ユニット17より下流側の供給ラインの内部も洗浄用流体80を用いて洗浄することができる。
【0084】
図8に示す処理手順を、一度の洗浄処理において、繰り返し実施してもよい。かかる処理手順を一度の洗浄処理において繰り返し実施することにより、乾燥処理ユニット17内のIPAの残渣をさらに除去することができる。
【0085】
なお、混合部54、洗浄用流体生成部55の構成は一例であり、乾燥処理ユニット17へ洗浄用流体を供給する部分の構成は、第1の実施形態の構成に限定されない。
【0086】
基板処理システム100の洗浄処理は、たとえば、それぞれの乾燥処理ユニット17において、パーティクルカウンタにより乾燥処理を行ったウェハWでのパーティクルの数を随時計測し、計測されたパーティクルの数が所定の数以上になった際に実施すればよい。
【0087】
また、基板処理システム100の洗浄処理は、たとえば、それぞれの乾燥処理ユニット17において、ウェハWに乾燥処理を行った累計時間が所定の時間以上になった際に行ってもよいし、乾燥処理を行ったウェハWの累計枚数が所定の枚数以上になった際に行ってもよい。
【0088】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、主に、洗浄用流体80を乾燥処理ユニット17の内部で拡散させるための構成の点で第1の実施形態と相違する。図10は、第2の実施形態に係る基板処理システム200の概略構成を示す図である。図11は、第2の実施形態における乾燥処理ユニット17のシステム全体の構成例を示す図である。
【0089】
図10に示すように、第2の実施形態に係る基板処理システム200では、搬送部12が治具載置部21を備える。治具載置部21には、治具22が載置されている。ここで、上述の基板搬送装置13におけるウェハ保持機構は、治具22を保持する機能も備える。そして、基板搬送装置13は、ウェハ保持機構を用いて治具載置部21と受渡部14との間で治具22の搬送を行う。
【0090】
第2の実施形態では、基板搬送装置18のウェハ保持機構が、ウェハWだけでなく治具22を保持することができる。基板搬送装置18は、ウェハ保持機構を用いて受渡部14と、洗浄処理ユニット16と、乾燥処理ユニット17との間でウェハWまたは治具22の搬送を行う。
【0091】
更に、図3に示す洗浄処理ユニット16には、溶媒81(図13A参照)を治具22に液盛りする機構が付加されている。
【0092】
図11に示すように、供給源52と、供給源53と、混合部54と、洗浄用流体生成部55と、バルブ63dとが設けられていなくてもよい。
【0093】
他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0094】
ここで、第2の実施形態に係る基板処理システム200における乾燥処理ユニット17を洗浄する処理の詳細について説明する。図12は、第2の実施形態における乾燥処理ユニット17の洗浄処理を示すフローチャートである。図13A図13Cは、第2の実施形態における乾燥処理ユニットの洗浄処理の概要を示す図である。
【0095】
第2の実施形態では、まず、基板搬送装置18(図10参照)は、洗浄処理ユニット16に治具22を搬入する。治具22は、輪形部22bを上方に向けた状態でウェハ保持機構25(図3参照)に保持される。その後、制御部19は、洗浄処理ユニット16を制御して、治具22に対し溶媒81の液盛りを行う(ステップS21)。
【0096】
溶媒81の液盛りでは、まず、図10に示した搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、治具載置部21に載置された治具22を取り出し、取り出した治具22を受渡部14に載置する。受渡部14に載置された治具22は、処理ステーション3の基板搬送装置18によって受渡部14から取り出されて、洗浄処理ユニット16へ搬入される。
【0097】
洗浄処理ユニット16へ搬入された治具22に、洗浄処理ユニット16によって溶媒81が液盛りされる。具体的には、洗浄処理ユニット16は、図3に示したウェハ保持機構25に保持された治具22の上方にノズルアーム26を進入させ、その先端部に設けられた不図示の溶媒ノズルから溶媒81を供給することにより、治具22への液盛りを行う。
【0098】
次いで、基板搬送装置18は、溶媒81が液盛りされた治具22を洗浄処理ユニット16から搬出し、図13Aに示すように、乾燥処理ユニット17内に搬入する(ステップS22)。治具22の搬入では、まず、液盛りされた治具22が保持板32(図4参照)に保持される。その後、保持板32と蓋部材33とが、液盛りされた治具22とともに本体31の内部に収容され、蓋部材33により開口部34が密閉される。図13Aに示すように、治具22の搬入の際には、バルブ63a~63c及び63eは、すべて閉状態に制御される。
【0099】
続いて、超臨界流体70及び洗浄用流体80を乾燥処理ユニット17の内部で拡散させる(ステップS23)。具体的には、制御装置4の制御部19が、図13Bに示すように、バルブ63eを閉状態に制御する一方で、バルブ63a~63cを開状態に制御する。また、乾燥処理ユニット17の内部の温度を溶媒の沸点以上の温度とする。かかる制御により、流体供給源51からバルブ63a~63cを介して、超臨界流体70が乾燥処理ユニット17の内部に供給されるとともに、治具22に液盛りされた溶媒81が気化し、超臨界流体70と気化した溶媒81とが混合した洗浄用流体80が乾燥処理ユニット17の内部で拡散する。洗浄用流体80が乾燥処理ユニット17の内部で拡散すると、IPAの残渣が洗浄用流体80に含まれる溶媒に溶解する。そして、洗浄用流体80を乾燥処理ユニット17の内部で拡散させた状態で所定の時間待機する。また、乾燥処理ユニット17の内部は、超臨界流体70及び洗浄用流体80により満たされる。乾燥処理ユニット17の内部が超臨界流体70及び洗浄用流体80により満たされている間、制御部19は乾燥処理ユニット17の内部を超臨界流体70が超臨界状態を維持できる温度に保つように制御する。つまり、ステップS23において、制御部19は、ウェハWの乾燥処理と同様にして、超臨界流体70を用いて乾燥処理ユニット17の内部の乾燥処理の制御を行う。
【0100】
次いで、乾燥処理ユニット17の内部から超臨界流体70及び洗浄用流体80を排出する(ステップS24)。具体的には、制御装置4の制御部19が、図13Cに示すように、バルブ63a~63cを閉状態に制御する一方で、バルブ63eを開状態に制御する。かかる制御により、乾燥処理ユニット17からバルブ63eを介して、超臨界流体70及び洗浄用流体80が外部に排出される。したがって、乾燥処理ユニット17内のIPAの残渣を、洗浄用流体80とともに除去することができる。
【0101】
その後、乾燥処理ユニット17では、治具22を搬出する(ステップS25)。治具22の搬出が完了すると、乾燥処理ユニット17に対しての洗浄処理が完了する。また、ステップS23において超臨界流体70を用いた乾燥処理が行われており、乾燥処理ユニット17の内部の乾燥処理も完了している。
【0102】
第2の実施形態によれば、乾燥処理ユニット17に追加の配管やバルブなどを設置することなく、基板処理システム200の内部に治具載置部21と治具22とを設置するだけで実現することができる。したがって、第2の実施形態によれば、低コストで乾燥処理ユニット17の洗浄処理を実施することができる。
【0103】
図12に示す処理手順を、一度の洗浄処理において、繰り返し実施してもよい。かかる処理手順を一度の洗浄処理において繰り返し実施することにより、乾燥処理ユニット17内のIPAの残渣をさらに除去することができる。
【0104】
ここで、治具22の一例について、図14Aおよび図14Bを用いて説明する。図14Aは、治具22の一例を示す斜視図であり、図14Bは、治具22の一例を示す断面図である。図14Bは、図14AのA-A線に沿った断面図に相当する。
【0105】
図14Aおよび図14Bに示すように、治具22は、円板部22aと、輪形部22bとを有する。
【0106】
円板部22aは、ウェハWと略同一の径および厚さを有する。これにより、基板処理システム200において、ウェハWの搬送に用いられる基板搬送装置13や受渡部14、基板搬送装置18を用いて治具22を搬送することができるとともに、ウェハWを処理する洗浄処理ユニット16や乾燥処理ユニット17に治具22を搬入することができる。
【0107】
なお、基板処理システム200で複数種類の径や厚さを有するウェハWを取り扱うことができる場合、円板部22aは、基板処理システム200で取り扱うことのできる複数種類のうち1種類のウェハWと略同一の径および厚さを有していればよい。
【0108】
輪形部22bは、円板部22aにおける表側の主面から、輪形状に突出する部位である。そして、円板部22aと輪形部22bとにより、円板部22aの表側の主面に凹部22cが形成される。かかる凹部22cを円板部22aの表側の主面に形成することにより、凹部22cを形成しない場合に比べ、治具22の表面に液盛りできる溶媒81の量を増やすことができる。
【0109】
輪形部22bは、円板部22aの縁22dから所定の距離以上離して設けられる。これにより、基板処理システム200において、基板搬送装置13や受渡部14、基板搬送装置18を用いて治具22を搬送する際に、円板部22aの縁22dを把持して搬送することができる。
【0110】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、第1の実施形態に第2の実施形態を組み合わせた構成を有する。すなわち、図10に示すように、搬送部12に治具載置部21が設けられ、治具載置部21に治具22が載置される。更に、洗浄処理ユニット16に、溶媒81を治具22に液盛りする機構が付加されている。
【0111】
他の構成は第1の実施形態と同様である。つまり、第2の実施形態とは異なり、供給源52と、供給源53と、混合部54と、洗浄用流体生成部55と、バルブ63dとが設けられている(図5参照)。
【0112】
ここで、第3の実施形態に係る基板処理システムにおける乾燥処理ユニット17を洗浄する処理の詳細について説明する。図15は、第3の実施形態における乾燥処理ユニット17の洗浄処理を示すフローチャートである。図16A図16Dは、第3の実施形態における乾燥処理ユニットの洗浄処理の概要を示す図である。
【0113】
まず、第1の実施形態と同様に、混合部54において、供給源52から供給された液体と、供給源53から供給された溶媒とを混合し、混合液を生成する(ステップS31)。次いで、洗浄用流体生成部55において、洗浄用流体80を生成する(ステップS32)。
【0114】
また、第2の実施形態と同様に、制御部19は、洗浄処理ユニット16を制御して、治具22に対し溶媒81の液盛りを行う(ステップS33)。次いで、基板搬送装置18が、溶媒81が液盛りされた治具22を洗浄処理ユニット16から搬出し、図16Aに示すように、乾燥処理ユニット17内に搬入する(ステップS34)。図16Aに示すように、治具22の搬入の際には、バルブ63a~63eは、すべて閉状態に制御される。
【0115】
その後、洗浄用流体80を乾燥処理ユニット17の内部で拡散させる(ステップS35)。具体的には、制御装置4の制御部19が、図16Bに示すように、バルブ63a及び63eを閉状態に制御する一方で、バルブ63b~63dを開状態に制御する。また、乾燥処理ユニット17の内部の温度を溶媒の沸点以上の温度とする。かかる制御により、洗浄用流体生成部55からバルブ63b~63dを介して、洗浄用流体80が乾燥処理ユニット17の内部に供給されるとともに、治具22に液盛りされた溶媒81が気化し、気化した溶媒81を含む洗浄用流体80が乾燥処理ユニット17の内部で拡散する。洗浄用流体80が乾燥処理ユニット17の内部で拡散すると、IPAの残渣が洗浄用流体80に含まれる溶媒に溶解する。そして、洗浄用流体80を乾燥処理ユニット17の内部で拡散させた状態で所定の時間待機する。
【0116】
その後、超臨界流体70を乾燥処理ユニット17の内部で拡散させる(ステップS36)。具体的には、制御装置4の制御部19が、図16Cに示すように、バルブ63d及び63eを閉状態に制御する一方で、バルブ63a~63cを開状態に制御する。かかる制御により、流体供給源51からバルブ63a~63cを介して、超臨界流体70が乾燥処理ユニット17の内部に供給され、乾燥処理ユニット17の内部で拡散する。この結果、乾燥処理ユニット17の内部は、超臨界流体70及び洗浄用流体80により満たされる。乾燥処理ユニット17の内部が超臨界流体70及び洗浄用流体80により満たされている間、制御部19は乾燥処理ユニット17の内部を超臨界流体70が超臨界状態を維持できる温度に保つように制御する。つまり、ステップS36において、制御部19は、ウェハWの乾燥処理と同様にして、超臨界流体70を用いて乾燥処理ユニット17の内部の乾燥処理の制御を行う。
【0117】
続いて、乾燥処理ユニット17の内部から超臨界流体70及び洗浄用流体80を排出する(ステップS37)。具体的には、制御装置4の制御部19が、図16Dに示すように、バルブ63a~63dを閉状態に制御する一方で、バルブ63eを開状態に制御する。かかる制御により、乾燥処理ユニット17からバルブ63eを介して、超臨界流体70及び洗浄用流体80が外部に排出される。したがって、乾燥処理ユニット17内のIPAの残渣を、洗浄用流体80とともに除去することができる。
【0118】
その後、乾燥処理ユニット17では、治具22を搬出する(ステップS38)。治具22の搬出が完了すると、乾燥処理ユニット17に対しての洗浄処理が完了する。また、ステップS36において超臨界流体70を用いた乾燥処理が行われており、乾燥処理ユニット17の内部の乾燥処理も完了している。
【0119】
第3の実施形態によれば、より高い洗浄効果を得ることができる。すなわち、より確実にIPAの残渣を除去することができる。
【0120】
図15に示す処理手順を、一度の洗浄処理において、繰り返し実施してもよい。かかる処理手順を一度の洗浄処理において繰り返し実施することにより、乾燥処理ユニット17内のIPAの残渣をさらに除去することができる。
【0121】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。本願発明者らの検討によると、乾燥処理(S1)において、メタルを含む汚染物(以降、単に「汚染物」ということがある)がパーティクルとしてウェハに付着することや、汚染物が超臨界流体と反応しないことが明らかになった。メタルは、例えば遷移金属である。更に、メタルと反応するキレート剤を超臨界流体とともに乾燥処理ユニット17に供給することで乾燥処理ユニット17の内部から汚染物を除去し、ウェハへの汚染物の付着を抑制することできることも明らかになった。第4の実施形態は、主に、溶媒に代えてキレート剤が洗浄用流体に含まれる点で第1の実施形態と相違する。図17は、第4の実施形態における乾燥処理ユニット17のシステム全体の構成例を示す図である。
【0122】
図17に示すように、第4の実施形態では、溶媒の供給源53に代えて、キレート剤を含む溶液の供給源153が設けられる。供給源52及び供給源153と乾燥処理ユニット17との間に、供給源52から供給された液体と供給源153から供給された溶液とを混合する混合部154が設けられる。混合部154と乾燥処理ユニット17との間に、混合部154により生成された混合液から洗浄用流体180(図18参照)を生成する洗浄用流体生成部155が設けられる。洗浄用流体生成部155は、上流側から下流側に向かって配置されたポンプ56と、ヒータ57とを有する。洗浄用流体180の乾燥処理ユニット17への供給ラインは、バルブ63fを介して超臨界流体70の供給ラインに、バルブ63aとバルブ63bとの間の分岐点よりも上流側で繋がれる。
【0123】
バルブ63fは、乾燥処理ユニット17への洗浄用流体180の供給のオンおよびオフを調整するバルブであり、開状態では下流側の供給ラインに洗浄用流体180を流し、閉状態では下流側の供給ラインに洗浄用流体180を流さない。
【0124】
供給源153から供給されるキレート剤の一例を化1に示す。キレート剤は、超臨界流体に用いられるCOと親和性のある原子団を有することが望ましい。COと親和性のある原子団としては、パーフルオロポリエーテル(PFPE)、ジメチルポリシロキサン、パーフルオロオクタノイルが挙げられる。
【0125】
【化1】
【0126】
他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0127】
ここで、第4の実施形態に係る基板処理システムにおける乾燥処理ユニット17を洗浄する処理の詳細について説明する。この洗浄処理では、以下のように、第1の実施形態と同様の手順で洗浄処理を行う。図18は、第4の実施形態における乾燥処理ユニットの洗浄処理の概要を示す図である。
【0128】
第4の実施形態では、まず、混合部154において、供給源52から供給された液体、例えば液体COと、供給源153から供給されたキレート剤を含む溶液とを混合し、混合液を生成する。
【0129】
次いで、洗浄用流体生成部155において、混合液中の、供給源52から供給された液体を超臨界流体とし、キレート剤を含む溶液と超臨界流体とを混合した洗浄用流体180を生成する。
【0130】
その後、洗浄用流体180を乾燥処理ユニット17の内部で拡散させる。具体的には、制御装置4の制御部19が、図18に示すように、バルブ63a及び63eを閉状態に制御する一方で、バルブ63b、63c及び63fを開状態に制御する。かかる制御により、洗浄用流体生成部55からバルブ63b、63c及び63fを介して、洗浄用流体180が乾燥処理ユニット17の内部に供給され、乾燥処理ユニット17の内部で拡散する。洗浄用流体180が乾燥処理ユニット17の内部で拡散すると、化2に示すように、汚染物中のメタルのイオン(M)が洗浄用流体180に含まれるキレート剤と錯体を生成する。そして、洗浄用流体180を乾燥処理ユニット17の内部で拡散させた状態で所定の時間待機する。待機の時間は、例えば30分以上である。
【0131】
【化2】
【0132】
続いて、乾燥処理ユニット17の内部から洗浄用流体180を排出する。具体的には、制御装置4の制御部19が、第1の実施形態と同様に、バルブ63a~63c及び63fを閉状態に制御する一方で、バルブ63eを開状態に制御する。かかる制御により、乾燥処理ユニット17からバルブ63eを介して、洗浄用流体180が外部に排出される。汚染物中のメタルが洗浄用流体180に含まれるキレート剤と錯体を形成しているため、汚染物は洗浄用流体180とともに除去することができる。洗浄用流体180の排出が完了すると、乾燥処理ユニット17に対しての洗浄処理が完了する。
【0133】
このように、第4の実施形態によれば、乾燥処理ユニット17の内部の汚染物を容易に除去することができる。したがって、ウェハWへのパーティクルの付着を抑制することができる。また、キレート剤がCOと親和性の高い原子団を有している場合には、キレート剤を乾燥処理ユニット17から特に容易に排出することができる。
【0134】
第1の実施形態と同様に、かかる処理手順を、一度の洗浄処理において、繰り返し実施してもよい。かかる処理手順を一度の洗浄処理において繰り返し実施することにより、乾燥処理ユニット17内のIPAの残渣をさらに除去することができる。
【0135】
なお、第2の実施形態のように、キレート剤を含む溶液を液盛りした治具22を乾燥処理ユニット17の内部に搬入し、この溶液を気化させることで、気化したキレート剤を含む洗浄用流体180を乾燥処理ユニット17の内部に拡散させてもよい。
【0136】
また、第3の実施形態のように、キレート剤を含む溶液と超臨界流体とを混合した洗浄用流体180を洗浄用流体生成部55から乾燥処理ユニット17に供給するとともに、治具22に液盛りしたキレート剤を含む溶液を気化させることで、気化したキレート剤を含む洗浄用流体180を乾燥処理ユニット17の内部に拡散させてもよい。
【0137】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態は、主に、溶媒を含む洗浄用流体に加えて、キレート剤を含む洗浄用流体が用いられる点で第1の実施形態と相違する。図19は、第5の実施形態における乾燥処理ユニット17のシステム全体の構成例を示す図である。
【0138】
第5の実施形態では、乾燥処理ユニット17よりも上流側に、供給源52、供給源53、混合部54、洗浄用流体生成部55及びバルブ63dに加えて、第4の実施形態と同様に、供給源153、混合部154、洗浄用流体生成部155及びバルブ63fが設けられる。
【0139】
他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0140】
第5の実施形態に係る基板処理システムにおける乾燥処理ユニット17を洗浄する処理では、例えば、第1の実施形態に倣って洗浄用流体80を用いたIPAの残渣の除去を行い、その後に、第4の実施形態に倣って洗浄用流体180を用いたメタルを含む汚染物の除去を行う。
【0141】
第5の実施形態によれば、乾燥処理ユニット17の内部のIPAの残渣及びメタルを含む汚染物の両方を容易に除去することができる。したがって、ウェハWへのパーティクルの付着をより抑制することができる。
【0142】
なお、第4の実施形態に倣って洗浄用流体180を用いたメタルを含む汚染物の除去を行い、その後に、第1の実施形態に倣って洗浄用流体80を用いたIPAの残渣の除去を行うようにしてもよい。また、溶媒81とキレート剤を含む溶液とが互いに反応せず、独立してIPAの残渣の溶解、汚染物に含まれるメタルのイオンとの錯体の生成が進行する場合には、IPAの残渣の除去と汚染物の除去とを同時に行ってもよい。
【0143】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0144】
4 制御装置
16 洗浄処理ユニット
17 乾燥処理ユニット
19 制御部
70 超臨界流体
80、180 洗浄用流体
81 溶媒
100、200 基板処理システム
W ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図16C
図16D
図17
図18
図19