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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】撮像装置及び放射線撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/76 20230101AFI20231201BHJP
   H04N 25/70 20230101ALI20231201BHJP
   H04N 25/30 20230101ALI20231201BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20231201BHJP
   H01L 27/144 20060101ALI20231201BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
H04N25/76
H04N25/70
H04N25/30
H01L27/146 A
H01L27/146 C
H01L27/144 K
H01L29/78 613Z
H01L29/78 614
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020030559
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021136538
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】堺 俊克
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘人
(72)【発明者】
【氏名】相原 聡
(72)【発明者】
【氏名】高木 友望
(72)【発明者】
【氏名】今村 弘毅
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-060350(JP,A)
【文献】特開2011-211171(JP,A)
【文献】特開平10-108075(JP,A)
【文献】特開2018-007213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/00-25/79
H01L 27/14-27/148
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の行及び複数の列を構成する複数の画素が配置された画素アレイと、前記複数の列に対応して設けられた複数の信号線と、を備えた撮像装置であって、
各画素は、光電変換素子と、前記光電変換素子から出力される電気信号を増幅する増幅トランジスタと、増幅された電気信号を前記信号線に出力する選択トランジスタとを有し、
前記増幅トランジスタは薄膜トランジスタであって、該薄膜トランジスタは第1の制御電極と第2の制御電極とを有し、
前記第1の制御電極と前記第2の制御電極との一方に、前記薄膜トランジスタのしきい値を調整する調整電圧を画素ごとに生成して印加する調整電圧生成部を備える撮像装置。
【請求項2】
前記複数の信号線はそれぞれ薄膜トランジスタで構成される負荷トランジスタを備えている、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記負荷トランジスタは、第3の制御電極と第4の制御電極とを有し、
前記調整電圧を第1調整電圧としたとき、前記第3の制御電極と前記第4の制御電極との一方に、前記負荷トランジスタのしきい値を調整する第2調整電圧を前記信号線ごとに印加する調整電圧印加部を備える請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記画素アレイの複数の画素行を順次選択して前記画素アレイから前記複数の信号線に信号を出力する走査回路部を備え、
前記調整電圧生成部は、前記走査回路部が前記画素アレイの一画素行を選択する行選択期間と同時のタイミングで、前記一画素行の各増幅トランジスタに前記調整電圧を印加する請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記画素アレイの複数の画素行を順次選択して前記画素アレイから前記複数の信号線に信号を出力する走査回路部を備え、
前記調整電圧印加部は、前記走査回路部が前記画素アレイの一画素行を選択する行選択期間と同時のタイミングで、前記信号線の前記負荷トランジスタに前記第2調整電圧を印加する請求項3に記載の撮像装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の撮像装置と、少なくとも前記光電変換素子上に設けられた、放射線を光に変換するシンチレータとを備える放射線撮像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び放射線撮像装置に係り、特に画素内に増幅トランジスタを備えた撮像装置及び当該撮像装置を用いた放射線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各画素に増幅トランジスタを設けた、いわゆるAPS(アクティブピクセルセンサ)撮像素子において、信号を増幅する増幅トランジスタとして多結晶SiTFTを用いた例(特許文献1)、a-SiTFTを用いた例(特許文献2)、及びアモルファス酸化物半導体TFTを用いた例(特許文献3)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭58-068968号公報
【文献】特開昭60-091666号公報
【文献】特開2016-25572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画素内に増幅トランジスタを設けたAPS撮像素子では、薄膜トランジスタ(TFT)の製造上のばらつきに起因するしきい値電圧のばらつきの影響が大きく、これがソースフォロワ回路の動作不良につながり、素子の歩留まりが低下するという課題があった。
【0005】
本発明は、画素内に増幅トランジスタを備えた撮像装置において、TFTの製造上のばらつきに起因するしきい値電圧のばらつきによる素子の歩留まり低下を防ぐことが可能な撮像装置及び当該撮像装置を用いた放射線撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の第1の態様は、複数の行及び複数の列を構成する複数の画素が配置された画素アレイと、前記複数の列に対応して設けられた複数の信号線と、を備えた撮像装置であって、
各画素は、光電変換素子と、前記光電変換素子から出力される電気信号を増幅する増幅トランジスタと、増幅された電気信号を前記信号線に出力する選択トランジスタとを有し、
前記増幅トランジスタは薄膜トランジスタであって、該薄膜トランジスタは第1の制御電極と第2の制御電極とを有し、
前記第1の制御電極と前記第2の制御電極との一方に、前記薄膜トランジスタのしきい値を調整する調整電圧を画素ごとに生成して印加する調整電圧生成部を備える撮像装置である。
【0007】
(2)上記(1)の撮像装置において、前記複数の信号線はそれぞれ薄膜トランジスタで構成される負荷トランジスタを備えていてもよい。
【0008】
(3)上記(2)の撮像装置において、前記負荷トランジスタは、第3の制御電極と第4の制御電極とを有し、
前記調整電圧を第1調整電圧としたとき、前記第3の制御電極と前記第4の制御電極との一方に、前記負荷トランジスタのしきい値を調整する第2調整電圧を前記信号線ごとに印加する調整電圧印加部を備えていてもよい。
【0009】
(4)上記(1)から(3)のいずれかの撮像装置において、前記画素アレイの複数の画素行を順次選択して前記画素アレイから前記複数の信号線に信号を出力する走査回路部を備え、
前記調整電圧生成部は、前記走査回路部が前記画素アレイの一画素行を選択する行選択期間と同時のタイミングで、前記一画素行の各増幅トランジスタに前記調整電圧を印加してもよい。
【0010】
(5)上記(3)の撮像装置において、前記画素アレイの複数の画素行を順次選択して前記画素アレイから前記複数の信号線に信号を出力する走査回路部を備え、
前記調整電圧印加部は、前記走査回路部が前記画素アレイの一画素行を選択する行選択期間と同時のタイミングで、前記信号線の前記負荷トランジスタに前記第2調整電圧を印加してもよい。
【0011】
(6)本発明の第2の態様は、上記(1)から(5)のいずれかの撮像装置と、少なくとも前記光電変換素子上に設けられた、放射線を光に変換するシンチレータとを備える放射線撮像装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、撮像装置の画素アレイのTFTの製造上のばらつきに起因するしきい値電圧を画素単位で調整することが可能となり、しきい値電圧のばらつきによる素子の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態の撮像装置の構成を示すブロック図である。
図2】撮像素子部の一画素の回路構成を示す回路図である。
図3】増幅トランジスタの構造を示す断面図である。
図4】撮像素子部の一画素行の画素の各トランジスタへの入力信号及び出力信号の動作を示すタイミングチャートである。
図5】撮像素子部の複数の画素行の画素の各トランジスタへの入力信号及び出力信号の動作を示すタイミングチャートである。
図6】本発明の第2実施形態の撮像装置の撮像素子部の一画素の回路構成を示す回路図である。
図7】本発明の第2実施形態の撮像装置の構成を示すブロック図である。
図8】放射線撮像装置を含む放射線撮像システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態の撮像装置の構成を示すブロック図である。図2は撮像素子部の一画素の回路構成を示す回路図である。
【0015】
図1に示すように、撮像装置10は、撮像素子部100と、撮像素子部100の画素の走査を行う走査回路部110と、撮像素子部100から信号を読みだす読み出し回路部120と、走査回路部110、読み出し回路部120及び調整電圧生成部140を制御するとともに、調整電圧値を出力する制御部130と、制御部130から調整電圧値を受け、調整電圧値に基づいて調整電圧を生成して撮像素子部100に出力する調整電圧生成部140とを備えている。
【0016】
撮像素子部100は、j行及びk列(j及びkは2以上の自然数)を構成する複数の画素が配置された画素アレイ、j行に対応して設けられたj本の行選択線Rsとj本の行リセット線Rr、及びk列に対応して設けられたk本の列信号線Cs(信号線となる)とk本の列配線Cvを備えている。図2に示すように、撮像素子部100の一画素は、光電変換素子PD、選択トランジスタTr1、リセットトランジスタTr2、及び増幅トランジスタTr3を備えている。選択トランジスタTr1、リセットトランジスタTr2、及び増幅トランジスタTr3は、多結晶Si、アモルファスSi、又はアモルファス酸化物半導体等を用いた薄膜トランジスタ(TFT)で構成される。
【0017】
光電変換素子PDは光電変換膜を有し、光電変換膜はトランジスタ回路上に蒸着やCVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタ等の成膜法で形成される。光電変換膜の光電変換材料としては、例えば有機光導電膜やSi等の無機材料がある。光電変換膜上に電極を形成し、この電極にバイアス電圧Vfを印加することで、光により発生した電荷がトランジスタ回路側の増幅トランジスタTr3のゲート電極に読み出される。
【0018】
選択トランジスタTr1は、行選択線Rsにゲート電極が接続され、光電変換素子PDで発生した電荷により変動したゲート電位(電気信号)に基づき、増幅トランジスタTr3で増幅された電気信号(以下、信号という)を、列信号線Csに転送する。
リセットトランジスタTr2は、行リセット線Rrにゲート電極が接続され、光電変換素子PD及び増幅トランジスタTR3のゲート電極に残留した電荷をリセットして、光電変換素子PD及び増幅トランジスタTR3のゲート電極のゲート電位をリセット電圧Vrstにする。
増幅トランジスタTr3は、光電変換素子PDで発生した電荷により変動したゲート電位(電気信号となる)を増幅して、増幅された信号を出力する。
【0019】
撮像素子部100の行方向に配列された画素において、各画素の選択トランジスタTr1のゲート電極は共通の行選択線Rsに接続され、各画素のリセットトランジスタTr2のゲート電極は共通の行リセット線Rrに接続される。撮像素子部100の列方向に配列された各画素から転送された信号は共有の列信号線Csから行ごとに出力される。列信号線Csには列ごとに負荷トランジスタTr4が設けられ、増幅トランジスタTr3と負荷トランジスタTr4はソースフォロワ回路として働き、増幅した信号を画素外で読み出すことで高いS/N比で信号を読み出すことができる。
【0020】
走査回路部110は、撮像素子部100の画素アレイの画素行ごとに行選択信号を行選択線Rsに加え、行選択線Rsにゲート電極が接続された選択トランジスタTr1をオンさせる。選択トランジスタTr1がオンすることで、上述したように、増幅トランジスタTr3で増幅された信号が、列信号線Csに転送される。
また、走査回路部110は、選択トランジスタTr1をオンすることで、増幅トランジスタTr3で増幅された信号を読み出した後に、撮像素子部100の行ごとに行リセット信号を行リセット線Rrに加え、行リセット線Rrにゲート電極が接続されたリセットトランジスタTr2をオンさせる。リセットトランジスタTr2がオンすることで、上述したように、光電変換素子PD及び増幅トランジスタTR3に残留した電荷がリセットされる。
以上の動作で、走査回路部110は画素アレイの複数の画素行を順次選択して画素アレイからk本の列信号線Csに信号を出力する。
【0021】
読み出し回路部120は、各列信号線Csに現れた信号に対して所定の信号処理、例えば、増幅処理やA/D変換処理等の信号処理を実施し、信号処理された信号を列ごとに順次出力する。読み出し回路部120は、行選択期間中にリセットトランジスタTr2をオンすることで、光電変換素子PDで発生した電荷による蓄積電圧をリセットし、リセット前後の電圧差から信号出力を検出することができる。
【0022】
制御部130は、走査回路部110及び読み出し回路部120が上述した動作を行うようにタイミングを制御する制御信号を走査回路部110及び読み出し回路部120に送る。また制御部130は、行選択信号が行選択線Rsに加えられるタイミングと同じタイミングで調整電圧生成部140が調整電圧を撮像素子部100に出力できるように、制御信号を調整電圧生成部140に送る。さらに制御部130は調整電圧を生成するための調整電圧値を調整電圧生成部140に出力する。制御部130は各画素の調整電圧値を各画素と対応づけた補正テーブル131を備えている。
補正テーブル131には、あらかじめ均一光下で撮像した際の撮像素子部100から出力される信号が均一となるような調整電圧値を求めて記録されている。
【0023】
調整電圧生成部140は、制御部130から調整電圧値を受けて調整電圧を生成し、選択信号が行選択線Rsに加えられるタイミングと同じタイミングで、撮像素子部100の増幅トランジスタTr3のしきい値調整のための電極に、列配線Cvを介して調整電圧を印加する。列状に配列された複数の画素における増幅トランジスタTr3のしきい値調整のための電極は共通の列配線Cvに接続され、調整電圧は列配線Cvごとに印加される。列配線Cvに印加される調整電圧は、行選択信号により選択される画素の増幅トランジスタTr3のしきい値を調整するように、各画素ごとに設定される。
調整電圧生成部140は、例えば特開2011-102876号公報に記載のような既知の電圧生成部を用いることで、各画素の調整電圧を設定することができる。調整電圧生成部140は、調節電圧値に基づいて調整電圧を生成する電源であってもよいし、他の電源から供給された電圧を調節電圧値に基づいて調整電圧に変換する回路であってもよい。
【0024】
以下、しきい値調整のための電極を有する増幅トランジスタTr3について説明する。
図3は、増幅トランジスタTr3の構造を示す断面図である。図3において、基板201上に、第1の制御電極となる第1ゲート電極202が設けられ、第1ゲート電極202上に第1絶縁膜203が設けられ、第1絶縁膜203上に半導体層204、一方の主電極となるソース電極205、他方の主電極となるドレイン電極206が設けられる。半導体層204、ソース電極205、ドレイン電極206上に第2絶縁膜207が設けられ、半導体層204に対向するように第2の制御電極となる第2ゲート電極208が設けられる。第2ゲート電極208と第2絶縁膜207上には第3絶縁膜209が設けられる。第3絶縁膜209中には、ソース電極205とビアホール211を介して接続される配線層210、第2ゲート電極208とビアホール213を介して接続される配線層212、及びドレイン電極206とビアホール215を介して接続される配線層214が設けられる。第3絶縁膜209上には第4絶縁膜216が設けられる。
【0025】
増幅トランジスタTr3のしきい値電圧が各画素でばらついた場合、画素ごとの入力に対する増幅の特性がばらつくこととなり、これがソースフォロワ回路の動作不良につながり、素子の歩留まりが低下する。
このようなしきい値電圧のばらつきを補正する手段として、図3に示すように、増幅トランジスタTr3の半導体層204の上下両側に絶縁層を介した第2ゲート電極208、第1ゲート電極202をそれぞれ設ける。本実施形態では、これらの第1ゲート電極202及び第2ゲート電極208のうち、一方をしきい値調整のためのしきい値調整電極とする。
その他の選択トランジスタTr1、リセットトランジスタTr2及び負荷トランジスタTr4は、しきい値調整電極を備えなくて良い。ただし、後述する第2実施形態で説明するように、補正の精度を上げるため、負荷トランジスタTr4も増幅トランジスタTr3と同様の構造であることが望ましい。
【0026】
次に、しきい値調整電極を有する増幅トランジスタTr3のTFTの作製方法について図3を用いて説明する。
【0027】
まず、ガラス又はSi等の基板201上にCu,Al,Mo,Cr,Au,Ni,Ti,W等の金属、又はITO、有機材料等の導電性材料からなる第1ゲート電極202を形成する。この第1ゲート電極202はスパッタ・蒸着等の薄膜形成手法とフォトリソグラフィ・エッチング等によるパターニングにて形成する。第1ゲート電極202の厚みは10~1000nm程度が望ましい。
【0028】
次に、第1ゲート電極202を形成した基板上にSiO,SiN,Al等の酸化物、窒化物、又は有機材料等からなる第1絶縁膜203を形成する。この第1絶縁膜203はスパッタ、CVD等の薄膜形成手法とフォトリソグラフィ・エッチング等によるパターニングにて形成する。第1絶縁膜203の形成後、平坦化のために表面を研磨することが望ましく、研磨後の厚みとしては500nm以下が望ましい。
【0029】
次に、第1絶縁膜203上にIGZO (インジウム(Indium)、ガリウム(Gallium)、亜鉛(Zinc)、酸素(Oxygen)から構成される物質)等の酸化物半導体、Si、有機材料等からなる半導体層204を形成する。この半導体層204はスパッタ、CVD等の薄膜形成手法とフォトリソグラフィ・エッチング等によるパターニングにて形成する。半導体層204の厚みは5nm~100nm程度が望ましい。半導体層204を形成後、活性化のために基板加熱や光照射によるアニール処理を施しても良い。
【0030】
次に、半導体層204上にCu,Al,Mo,Cr,Au,Ni,Ti,W等の金属、又はITO(Indium Tin Oxide)、有機材料等の導電性材料からなるソース電極205及びドレイン電極206を形成する。これらのソース電極205及びドレイン電極206はスパッタ・蒸着等の薄膜形成手法とフォトリソグラフィ・エッチング等によるパターニングにて形成する。ソース電極205及びドレイン電極206の厚みは10nm~500nm程度が望ましい。ソース電極205及びドレイン電極206は後述の配線層210、214へのコンタクトのため、半導体層204だけでなく第1絶縁膜203上にも形成されても良い。
【0031】
次に、ソース電極205及びドレイン電極206を形成した基板上にSiO,SiN,Al等の酸化物、窒化物、又は有機材料等からなる第2絶縁膜207を形成する。この第2絶縁膜207はスパッタ、CVD等の薄膜形成手法とフォトリソグラフィ・エッチング等によるパターニングにて形成する。第2絶縁膜207の形成後、平坦化のために表面を研磨することが望ましく、研磨後の厚みとしては500nm以下が望ましい。
【0032】
次に、第2絶縁膜207を形成した基板上にCu,Al,Mo,Cr,Au,Ni,Ti,W等の金属、又はITO、有機材料等の導電性材料からなる第2ゲート電極208を形成する。この第2ゲート電極208はスパッタ・蒸着等の薄膜形成手法とフォトリソグラフィ・エッチング等によるパターニングにて形成する。第2ゲート電極208の厚みは10~1000nm程度が望ましい。
【0033】
次に、第2ゲート電極208を形成した基板上にSiO,SiN,Al等の酸化物、窒化物、又は有機材料等からなる第3絶縁膜209を形成する。この第3絶縁膜209はスパッタ、CVD等の薄膜形成手法とフォトリソグラフィ・エッチング等によるパターニングにて形成する。第3絶縁膜209の形成後、平坦化のために表面を研磨することが望ましく、研磨後の厚みとしては500nm以下が望ましい。
【0034】
次に、第3絶縁膜209及び第2絶縁膜207にフォトリソグラフィ・エッチング等でビアホール211、213、215を形成した後、Cu,Al,Mo,Cr,Au,Ni,Ti,W等の金属、又はITO、有機材料等の導電性材料からなる配線層210、212、214を形成する。ビアホール211、213、215内及び配線層210、212、214は平坦化に適したダマシン法により形成することが望ましい。配線層210はビアホール211を介してソース電極205と接続され、配線層212はビアホール213を介して第2ゲート電極に接続され、配線層214はビアホール215を介してドレイン電極206と接続される。続いて、必要であれば表面保護のために第4絶縁膜216を形成しても良い。
【0035】
増幅トランジスタTr3の第1ゲート電極202と第2ゲート電極208は、例えばそれぞれ選択のための通常のゲート電極、しきい値調整電極とする。第1絶縁膜203の厚み>第2絶縁膜207の厚みの場合、しきい値の調整電圧に対する感度が高くなり、第1ゲート電極202に対して比較的低電圧でのしきい値調整が可能になる。一方、第1絶縁膜203の厚み<第2絶縁膜207の厚みの場合、しきい値の調整電圧は上昇するが、調整電圧の変動に対するマージンが大きくなるため、ノイズに強くなる。なお、第1ゲート電極202と第2ゲート電極208の役割が逆になっても良く、その場合は厚みに対する効果も逆になる。
【0036】
次に、撮像素子部100の一画素行の画素の各トランジスタへの入力信号及び出力信号の動作を図4のタイミングチャートに示す。また、撮像素子部100の複数の画素行の画素の各トランジスタへの入力信号及び出力信号の動作を図5のタイミングチャートに示す。
撮像素子部100の各画素の光電変換素子PDに光が照射され、光電変換素子PDで発生した電荷は光電変換信号Vinとして増幅トランジスタTr3のゲート電極に蓄積される。
【0037】
次に、走査回路部110は、撮像素子部100の画素アレイの行に順次、行選択信号を送る。例えば、図4に示すように、ある画素行の行選択線Rsに行選択信号が送られる場合について説明する。ある画素行の行選択期間において行選択信号がオンレベルVonとなると、その画素行の画素の選択トランジスタTr1がオンする。増幅トランジスタTr3のゲート電極に蓄積された電荷により変動したゲート電位(光電変換信号Vin)に基づいて、増幅トランジスタTr3で増幅された信号はVsigとして選択トランジスタTr1を介して列信号線Csに読み出される。この行選択期間と同時のタイミングで、その画素行の各画素の増幅トランジスタTr3の第2ゲート電極208には列配線Cvを介して、しきい値の調整電圧Vad1が印加される。この調整電圧Vad1の値は画素行の画素ごとに増幅トランジスタTr3のしきい値のバラツキに合わせて設定される。
【0038】
ある行の行選択期間において、信号出力が終わると、走査回路部110は撮像素子部100の画素アレイの当該行に行リセット信号を送る。例えば、図4に示すように、ある行目の選択期間において行リセット信号がオンレベルVonとなると、当該行の画素のリセットトランジスタTr2がオンする。リセットトランジスタTr2がオンすると、光電変換素子PD及び増幅トランジスタTR3に残留した電荷がリセットされる。行選択期間中にリセットトランジスタTr2をオンすることで、光電変換素子PDで発生した電荷による蓄積電圧をリセットし、リセット前後の電圧差から信号出力を検出することができる。
行選択期間が終了すると、走査回路部110は行選択信号及び行リセット信号をオフレベルVoffとする。
ある行の行選択期間が終了すると、次の行の行選択期間が開始され、ある行の行選択期間と同様な動作が、次の行の画素について行われる。
【0039】
図5では、n行目の行選択期間(nは1≦n<jの自然数)と(n+1)行目の行選択期間の画素行の動作が示されている。
図5に示すように、n行目の行選択期間において行選択信号がオンレベルVonとなると、n行目の画素行のk個の選択トランジスタTr1Xnがオンし、図4に示した動作と同様な動作で、k個の画素の信号がそれぞれk本の列信号線Csに転送される。図5に示す光電変換信号VinXnYmは、n行の画素行のm列(mは1≦m<kの自然数)の画素の増幅トランジスタTr3のゲート電極に蓄積された電荷により変動したゲート電位を示し、信号がVsigXnYmは、光電変換信号VinXnYmが増幅トランジスタTr3で増幅され、選択トランジスタTr1を介して列信号線Csに読み出された信号を示している。
この行選択期間と同時のタイミングで、その画素行の増幅トランジスタTr3Xn(不図示)の第2ゲート電極208にはしきい値の調整電圧Vad1が印加される。図5に示される調整電圧Vad1(n,m)はn行の画素行のm列の画素の増幅トランジスタの第2ゲート電極208に加えられる電圧である。
【0040】
n行目の行選択期間において、信号出力が終わると、走査回路部110は行リセット信号を送り、行リセット信号がオンレベルVonとなると、当該行の画素のk個のリセットトランジスタTr2Xnがオンし、各画素の光電変換素子PD及び増幅トランジスタTr3Xnに残留した電荷がリセットされる。
【0041】
n行目の選択期間が終了すると、(n+1)行目の選択期間が開始され、n行目の選択期間と同様な動作が、(n+1)行目の画素について行われる。図5に示される調整電圧Vad1(n+1,m)は(n+1)行の画素行のm列の画素の増幅トランジスタTr3Xn+1の第2ゲート電極208に加えられる電圧である。
【0042】
最終行の画素列の行選択期間が終了すると、読み出し回路部120から信号処理された信号を列ごとに順次出力される。こうして、撮像動作が行われる。
【0043】
本実施形態によれば、しきい値の調整電圧で増幅トランジスタのしきい値を調整することによって、信号の画素ごとのばらつきを低減しているため、画像の歪みを修正するために行う後段での信号処理の負荷を減らすことができる。また、製造上のばらつきを補正することが出来るため、製造歩留りの向上に寄与する。
【0044】
(第2実施形態)
第1実施形態では、負荷トランジスタTr4にしきい値調整電極を設けない例について説明したが、補正の精度を上げるため、負荷トランジスタTr4も増幅トランジスタTr3と同様にしきい値調整電極を設けてしきい値の調整を行うことが望ましい。第2実施形態では、負荷トランジスタTr4を、しきい値調整電極を有する負荷トランジスタTr5に置き換えて増幅トランジスタTr3と同様にしきい値調整電極を設けた例について説明する。
【0045】
図6は本発明の第2実施形態の撮像装置の撮像素子部の一画素の回路構成を示す回路図である。図6の回路図において図2の回路図と異なるのは、図6に示す負荷トランジスタTr5は、負荷トランジスタTr4にしきい値調整電極が加えられ、配線Wを介してしきい値調整電極に調整電圧Vad2が印加されることである。
【0046】
図7は本発明の第2実施形態の撮像装置の構成を示すブロック図である。図7のブロック図において図1のブロック図と異なるのは、図7に示す撮像装置11は図1の撮像装置10に調整電圧印加部150が加えられていることである。調整電圧印加部150は、k本の列信号線Csに接続されるk個の負荷トランジスタTr5のしきい値調整電極に、負荷トランジスタTr5ごとに設定された調整電圧Vad2を印加する。
【0047】
しきい値調整電極を有する負荷トランジスタTr5の構造及び作成方法は図3を用いて説明した、増幅トランジスタTr3の構造及び作製方法と同じである。
負荷トランジスタTr5は、図3に示した増幅トランジスタTr3と同様に、負荷トランジスタTr5の半導体層204の上下両側に絶縁層を介した第4の制御電極となる第2ゲート電極208、第3の制御電極となる第1ゲート電極202をそれぞれ備える。そして、これらの第1ゲート電極202及び第2ゲート電極208のうち、一方をしきい値調整のためのしきい値調整電極とする。
また、増幅トランジスタTr3における第1ゲート電極202と第2ゲート電極208の機能、及び第1絶縁膜203と第2絶縁膜207との厚さの関係は、負荷トランジスタTr5についても同様である。
【0048】
負荷トランジスタTr5はk本の列信号線Csに対してそれぞれ設けられ、1本の列信号線Csに対して1つの負荷トランジスタTr5が接続される。そして、負荷トランジスタTr5のしきい値の調整電圧Vad2は画素アレイの行走査に関係なく列ごとに決められる。
調整電圧Vad2は、あらかじめ均一光下で撮像した際の画素データが均一となるように、増幅トランジスタTr3の調整電圧と負荷トランジスタTr5の調整電圧との組み合わせを求めて決められる。
調整電圧Vad2は画素アレイの行走査に関係なく列ごとに決めることができるので固定することができ、調整電圧印加部150では、k本の列信号線Csに対応するk個の負荷トランジスタTr5のしきい値の調整電圧Vad2がそれぞれ固定されている。
【0049】
調整電圧印加部150は、制御部130から出力される制御信号に基づいて、各画素行の行選択期間と同時のタイミングで負荷トランジスタTr5に調整電圧Vad2を入力する。1本の列信号線Csに接続される負荷トランジスタTr5に印加される調整電圧Vad2の電圧レベルは、1行目の画素行からj行目の画素行までの各行選択期間で同じである。
【0050】
上述した、撮像装置の用途は特に限定されないが、上述した撮像装置の撮像素子部の上部にシンチレータを配置し、放射線を検出する放射線撮像装置を構成することができる。放射線撮像装置は、放射線を用いた医療用画像診断装置、非破壊検査装置、分析装置等に用いることができる。放射線とは、X線、放射線崩壊によって放出される粒子(光子を含む)の作るビームであるα線、β線、γ線等の他に、同程度以上のエネルギーを有するビーム、例えば粒子線、宇宙線等も含まれる。
【0051】
図8は、放射線撮像装置を含む放射線撮像システムを示す図である。図8では放射線としてX線を用いた例について説明する。放射線撮像システムは放射線撮像装置20及びX線源30から構成される。図8に示すように、放射線撮像装置20は、撮像装置10の撮像素子部100の上部にシンチレータ101を配置して構成される。図8では撮像装置10の走査回路部110、読み出し回路部120、制御部130及び調整電圧生成部140は省略されている。
【0052】
X線源30から放射されるX線は被写体を通して放射線撮像装置20に入射する。X線はシンチレータ101で光に変換され、撮像素子部100の光電変換素子PDでその光を電荷に変換し、既に説明した動作で、撮像が行われる。
シンチレータ101はX線等の放射線を吸収し可視光を発生し、少なくとも光電変換素子PD上に設けられる。シンチレータ101の材料は、放射線の種類、用途等によって適宜決められるが、X線を検出する場合、例えば、ヨウ化セシウム(CsI)を用いることができる。
上述した説明では、放射線撮像装置20は撮像装置10を用いているが、撮像装置11を用いてもよい。
【0053】
上述した実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
例えば、撮像素子部100の画素構成は図2に示した構成に特に限定されず他の構成であってもよい。具体的には、選択トランジスタTr1は、増幅トランジスタTr3と列信号線Csとの間でなく、増幅トランジスタTr3の電圧Vddの印加側のドレイン電極に接続されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10、11 撮像装置
20 放射線撮像装置
30 X線源
100 撮像素子部
101 シンチレータ
110 走査回路部
120 読み出し回路部
130 制御部
131 補正テーブル
140 調整電圧生成部
150 調整電圧印加部
Tr1 選択トランジスタ
Tr2 リセットトランジスタ
Tr3 増幅トランジスタ
Tr4、Tr5 負荷トランジスタ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8