(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】立体表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20231201BHJP
【FI】
G02B30/56
(21)【出願番号】P 2020068756
(22)【出願日】2020-04-07
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】307030980
【氏名又は名称】株式会社IMAGICA GROUP
(73)【特許権者】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 康博
(72)【発明者】
【氏名】工藤 隆朗
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-015063(JP,A)
【文献】特開平09-304740(JP,A)
【文献】国際公開第2008/001825(WO,A1)
【文献】特開2005-252551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0217390(US,A1)
【文献】特表2012-528346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラットパネルディスプレイにレンズアレイと開口アレイとを併用した立体表示装置であって、前記レンズアレイの焦点面よりも前記フラットパネルディスプレイを前記レンズアレイ側に寄せて配置し、前記フラットパネルディスプレイの要素画像を虚像結像により拡大して立体表示し得るように構成すると共に、画素がレンズアレイによって虚像結像される虚像結像面における一つの画素の拡大像の幅を前記レンズアレイのレンズピッチより小さくし且つ前記開口アレイの開口の幅を前記虚像結像面における一つの画素の拡大像の幅と一致させ、前記レンズアレイの一つのレンズを通して一つの画素
の拡大像が見えるように設定したことを特徴とする立体表示装置。
【請求項2】
開口アレイをレンズアレイにおけるフラットパネルディスプレイと対峙する側に配置したことを特徴とする請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項3】
開口アレイをレンズアレイにおけるフラットパネルディスプレイから離反する側に配置したことを特徴とする請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項4】
色画素を配置したフラットパネルディスプレイを採用し、該フラットパネルディスプレイの要素画像をカラー表示し得るように構成したことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の立体表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ライトフィールドディスプレイや多眼式ディスプレイなどの光線再生型の立体ディスプレイでは、光を光線として制御して立体表示を行うようにしており、この種の立体ディスプレイの構成方法としては、フラットパネルディスプレイにレンズアレイを組み合わせるレンズアレイ方式と、フラットパネルディスプレイに開口アレイを組み合わせる開口アレイ方式とが知られている。
【0003】
レンズアレイ方式では、
図9に示すように、フラットパネルディスプレイ1の複数の画素1aをレンズアレイ2の一つのレンズ2aに対応させるようにしており、また、開口アレイ方式でも、
図10に示すように、フラットパネルディスプレイ1の複数の画素1aを開口アレイ3の一つの開口3aに対応させるようにしている。このように一つのレンズ2aや開口3aに対応する複数の画素1aを以下では要素画像と称している。
【0004】
前記要素画像を構成する異なる画素1aから出射された光線は、レンズ2aや開口3aにより異なる進行方向が与えられるが、このように多数のレンズ2aや開口3aから異なる方向に進む光線を発生することにより、
図11に示すように、3次元物体から発せられる多数の光線が再現されて立体表示できるようになっている。尚、以降の説明では光を光線として扱い、回折による光の広がりは無視するものとする。
【0005】
他方、観察者の眼に見える画像についてレンズアレイ方式の場合で説明すると、
図12に示すように、眼の位置に応じて夫々のレンズ2aに対応する要素画像中の一つの画素1aから出射された光線が眼に入り、左右の眼の位置の違いにより要素画像中の異なる画素1aが見えるため、左右の眼に異なる画像が見える。左右の眼の位置に応じた異なる視差をもつ画像(視差画像)が左右の眼に見えるので立体感が得られることになる。
【0006】
ここで、レンズアレイ方式では、
図13に示すように、レンズ2aの焦点面にフラットパネルディスプレイ1の画素1aを配置するようにしており、このようにした場合には、画素1aの一点から発せられた光線が平行光になり、要素画素がレンズ2aにより無限遠に結像されて、その拡大率は無限大になる。
【0007】
即ち、レンズ2aの奥側の無限遠に無限大に拡大された虚像が結像されると考えることができ、眼で見た場合にレンズ2aを通して虚像の一部だけが見えることになる。この際、眼までの距離はレンズ2aの焦点距離に比べて十分に大きいため、
図13に示すように平行光で眼に見える範囲を考えることができる。そのため、一つのレンズ2aを通して一つの画素1aの拡大像が見え、見る方向により見える画素1aの拡大像が変化する。尚、開口アレイ方式では、
図14に示すように、開口3aの幅を画素の幅以下にすることで、一つの開口3aを通して一つの画素1aが見えるようにすることができる。
【0008】
また、レンズアレイ方式でも、開口アレイ方式でも、画素1aの大きさが小さい場合には、画素1aから発せられた光線はレンズ2aや開口3aにより平行光に変換される。そのため、レンズ2aや開口3aを通して一つの画素1aのみが見える。要素画像を構成する画素数が非常に多く、隣り合う画素1aに対応する平行光線の角度ピッチが0.3°以下と小さい場合には、異なる方向に進む複数の平行光線が同時に眼に入ることがあるが、通常の光線の角度ピッチでは、異なる方向に進む平行光線が同時に眼に入ることはない。
【0009】
レンズ2aや開口3aを通して複数の画素1aが見えるのは、光線が平行光ではない場合で、本来は眼に入らない光線が眼に入っていることを意味する。この場合、光線間にクロストークが生じるため、立体像にボケが生じる。以上のことから、レンズ2aや開口3aを通して、一つの画素1aが見えるようにすることで、光線にクロストークがなくなり、立体像のボケがなくなることになる。
【0010】
更に、ライトフィールドディスプレイでは、水平方向にのみに光線方向を制御する水平視差型のものが知られているが、水平視差型の場合は、水平方向にのみ視差があるため、水平方向に見え方が変化し、左右の眼に異なる視差画像が見えるため立体感が得られる。そもそも人間の目は水平方向に並んでいるため、水平視差は人間が感じる立体感において大きな役割をもつ。
【0011】
レンズアレイ方式では、レンズ2aとして一次元のレンズであるシリンドリカルレンズを用い(シリンドリカルレンズが水平方向に並んだものをレンチキュラレンズという。)、開口方式では、開口3aとして垂直方向に光を通すスリットを用いる(スリットが水平方向に並んだものをパララックスバリアという)。
【0012】
尚、この種の立体表示装置に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
最近、レンズアレイ方式において、
図15に示すように、フラットパネルディスプレイ1の画素1aをレンズ2aの焦点面より遠くに配置する構成が提案されている。この場合、画素1aの実像がレンズアレイ2より観察者側に結像されるため、レンズアレイ2より観察者側に飛び出した位置に立体像を表示する場合に用いられる。
【0015】
斯かる構成とした場合、画素1aの拡大率が有限になるため、一つの画素1aの拡大像の大きさがレンズ2aより小さくなるように拡大率を設定でき、人間の眼には、レンズ2aの中に複数の画素1aの拡大像が見えることになるため、立体像の解像度を増加させることができる。
【0016】
しかしながら、画素1aから出た光線はレンズ2aにより平行光に変換されず、結像位置で集光し、その前後で広がるため、結像位置から離れた位置に立体像を表示すると、光線間のクロストークが大きくなり立体像のボケが大きくなるという課題があった。
【0017】
逆に、レンズアレイ方式において、
図16に示すように、フラットパネルディスプレイ1の画素1aを焦点面よりレンズ2a側に配置すると、画素1aの虚像がレンズアレイ2の後方に結像される。そのため、レンズアレイ2よりも奥側に立体像を表示する場合に用いられるが、この場合も、立体像の解像度を増加させることができる一方、結像位置から離れた位置に立体像を表示するとボケが大きくなってしまう。
【0018】
また、レンズアレイ方式にあっては、光の利用効率は高いものの、視域を広げるために焦点距離を短くしてレンズピッチに近づけると、収差のためレンズ性能が低下してしまうため、レンズピッチに比べて焦点距離を小さくすることができず、立体像の視域を大きくすることができないという課題もあった。
【0019】
即ち、視域の大きさの表し方として、その幅をディスプレイから見た角度で表す視域角がよく用いられるが、
図17に示すように、レンズピッチをpで、レンズの焦点距離をfで表すと、視域角は2 tan
-1(p/2f)で与えられることになる。
【0020】
球面レンズの場合、曲率半径をRで屈折率をnで表すと、焦点距離はf = R / (n-1)で与えられる。レンズの直径は最大で2Rであるが、レンズピッチpをその最大レンズ径を等しくp = 2Rとしたときに視域角は最大になり、2 tan-1(n-1)で与えられる。
【0021】
レンズアレイ2の材料にはアクリル等の樹脂が利用されるが、屈折率は約1.5であるのでf = 2Rより、最大視域角は53°となる。
【0022】
ただし、実際には、収差でレンズ性能が低下するため、レンズ直径を2Rにすることは難しく、現実的には1.5 R程度にするのが限界である。この場合、レンズピッチp = 1.5Rより視域角は41°となる。
【0023】
これに対し、開口アレイ方式では、光の利用効率が低いが、画素から発せられる光線の発散角が大きければ、開口アレイ3と画素1aの間隔を小さくすることで視域角を大きくすることができ、
図18に示すように、開口ピッチをpで、開口アレイ3と画素の間隔をgで表すと、視域角は2 tan
-1(p/2g)で与えられることになり、間隔gを開口ピッチpの半分にすれば、90°の視域角が得られる。
【0024】
この際、光線間のクロストークをなくするためには、開口3aの大きさは画素の大きさ以下にする必要がある。要素画像の画素数をP×Qとすると、水平垂直視差型では、開口3aの大きさをp/P×p/Qとする必要があり、光の利用効率は1/PQとなる。
【0025】
水平視差型では、開口3aを成すスリットの幅をp/Pとする必要があるので、光の利用効率は1/Pとなる。ライトフィールドディスプレイでは、光線方向は一次元方向に16程度(P ≧ 16, Q ≧ 16)は必要であるので、要素画像を構成する画素数を一次元方向に16以上にする必要があるため、光の利用効率は、水平垂直視差型では0.4 %で、水平視差型では6.3 %と小さくなる。
【0026】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、ボケの少ない立体表示を実現することが可能で、従来のレンズアレイ方式よりも視域角が広く、従来の開口アレイ方式よりも光の利用効率が高い立体表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、フラットパネルディスプレイにレンズアレイと開口アレイとを併用した立体表示装置であって、前記レンズアレイの焦点面よりも前記フラットパネルディスプレイを前記レンズアレイ側に寄せて配置し、前記フラットパネルディスプレイの要素画像を虚像結像により拡大して立体表示し得るように構成すると共に、画素がレンズアレイによって虚像結像される虚像結像面における一つの画素の拡大像の幅を前記レンズアレイのレンズピッチより小さくし且つ前記開口アレイの開口の幅を前記虚像結像面における一つの画素の拡大像の幅と一致させ、前記レンズアレイの一つのレンズを通して一つの画素の拡大像が見えるように設定したことを特徴とするものである。
【0028】
更に、本発明をより具体的に実施するにあたっては、開口アレイをレンズアレイに対してフラットパネルディスプレイと対峙する側に配置しても良いし、開口アレイをレンズアレイに対してフラットパネルディスプレイから離反する側に配置しても良い。
【0029】
また、色画素を有するフラットパネルディスプレイを採用し、該フラットパネルディスプレイに要素画像をカラー表示し得るように構成することも可能である。
【発明の効果】
【0030】
上記した本発明の立体表示装置によれば、ボケの少ない立体表示を実現することが可能で、従来のレンズアレイ方式よりも視域角が広く、従来の開口アレイ方式よりも光の利用効率が高い立体表示装置を実現することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明を実施する形態の一例を示す模式図である。
【
図2】虚像表示モードでの光線の広がりについて説明する模式図である。
【
図3】
図1とは異なる開口アレイの配置例を示す模式図である。
【
図4】開口アレイの更に別の配置例を示す模式図である。
【
図5】水平垂直視差型のカラー化に用いる一手法を説明する模式図である。
【
図6】水平垂直視差型のカラー化に用いる別の手法を説明する模式図である。
【
図7】水平視差型のカラー化に用いる一手法を説明する模式図である。
【
図8】水平視差型のカラー化に用いる別の手法を説明する模式図である。
【
図9】従来のレンズアレイ方式について説明する模式図である。
【
図10】従来の開口アレイについて説明する模式図である。
【
図11】光線再生による立体表示に関する説明図である。
【
図13】レンズアレイ方式でレンズを通して見える画素に関する説明図である。
【
図14】開口アレイ方式でレンズを通して見える画素に関する説明図である。
【
図15】実像結像を用いた立体表示に関する説明図である。
【
図16】虚像結像を用いた立体表示に関する説明図である。
【
図17】レンズアレイ方式の視域角に関する説明図である。
【
図18】開口アレイ方式の視域角に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1~
図8は本発明を実施する形態の一例を示すもので、
図9~
図18と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0034】
本実施例の立体表示装置では、フラットパネルディスプレイ1にレンズアレイ2と開口アレイ3の両方を組み合わせた虚像結像モードを用いることで、レンズアレイ方式に比べて大きな視域角と、開口アレイ方式に比べて高い光の利用効率を実現するようにしており、
図1に示すように、レンズアレイ2の焦点よりもレンズアレイ2側にフラットパネルディスプレイ1の画素1aを配置し、開口アレイ3をフラットパネルディスプレイ1と対峙する側に近接させた状態でレンズアレイ2に一致させて配置するようにしている。
【0035】
このようにレンズアレイ2の焦点よりレンズアレイ2側に画素1aを配置すると、画素1aが虚像結像により拡大される。即ち、要素画像が拡大されるため、従来のレンズアレイ方式に比べて視域角が広がることになる。
【0036】
より具体的には、レンズ2aと画素1aの間隔をgで、レンズ2aと虚像までの距離をLで表すと、結像公式より1/g -1/L = 1/fが成り立つ。虚像の倍率はM = L / g = (1 -g / f)となる。視域角はΦ = 2 tan-1(M p / 2L) = 2 tan-1(p / 2g)で与えられるので、レンズアレイ2と画素1aの間隔gを小さくすれば視域角を拡大できる。
【0037】
例えば、レンズ2aと画素1aの間隔をg = 3f / 4とする場合を考える。このとき、L = 3f、M = 4となる。上記のf = 2R, p = 1.5 Rの場合、g = 3R/2であるので視域角は2 tan-1 0.75 = 53°となり、従来のレンズアレイ方式で得られる視域角41°より大きくなる。
【0038】
また、本実施例の立体表示装置では、画素1aの虚像結像の拡大率は有限になるが、一つの画素1aの拡大像の幅をレンズピッチpより小さくし、一つのレンズ2aを通して複数の画素1aの拡大像が見えるようにし、光線間のクロストークをなくしてボケのない立体表示を可能にするため、開口アレイ3を導入して開口3aの幅を画素1aの拡大像の幅と一致させ、一つのレンズ2aを通して一つの画素1aが見えるようにしている。
【0039】
この場合、水平垂直視差型では、開口3aの大きさをMp/P×Mp/Qとする必要があり、光の利用効率はM*M/PQとなる。水平視差型では、スリットの幅をMp/Pとする必要があり、光の利用効率はM/Pとなる。上記と同じように、光線数を P = 16、Q = 16とすると、光の利用効率は、水平垂直視差型では6.3 %で、水平視差型では25 %となる。従来の開口アレイ方式の場合(水平垂直視差型は0.4 %、水平視差型は6.3 %)に比べて、光の利用効率が向上することになる。
【0040】
更に、従来の虚像結像を用いた立体表示では、先に
図16に示したように、結像位置の前後で光線の広がりが大きく、結像位置から離れた位置に立体像を表示するとボケが大きくなってしまうが、
図2に示す如く、本実施例にあっては、開口アレイ3により光線の広がりが抑制されるため、結像位置から離れた位置に表示した立体像のボケが小さくなる。尚、レンズ2aの周辺部は収差が大きいが、この部分は開口3aで遮光され利用しないため、光線の制御特性が向上する。
【0041】
画素1aの虚像の結像位置はL = (1/g-1/f)-1で与えられるが、上記のようにgをfの3/4倍程度以下にしないと視域角拡大の効果が小さい。このとき、L = 3f程度以下となる。レンズアレイ2の焦点距離はf = 1 mm程度とするため、虚像はレンズアレイ2から約3 mm以内に結像される。このように、虚像結像位置はレンズアレイ2の位置とほぼ同じであるため、立体像の表示位置は、通常のレンズアレイ方式とほぼ等しくレンズアレイ2の前後となる。
【0042】
従って、上記実施例によれば、ボケの少ない立体表示を実現することが可能で、従来のレンズアレイ方式よりも視域角が広く、従来の開口アレイ方式よりも光の利用効率が高い立体表示装置を実現することができる。
【0043】
ここで、本実施例に関する説明では、
図1に示す如く、開口アレイ3をフラットパネルディスプレイ1と対峙する側に近接させた状態でレンズアレイ2に一致させて配置しているが、
図3に示すように、開口アレイ3をフラットパネルディスプレイ1から離反する側(観察者側)に近接させた状態でレンズアレイ2に一致させて配置するようにしてもよい。
【0044】
また、
図4に示すように、開口アレイ3をフラットパネルディスプレイ1と対峙する側に配置するにあたり、開口アレイ3をレンズアレイ2から離間させた状態でレンズアレイ2に一致させて配置してもよく、このようにした場合には、開口3aもレンズ2aで虚像結像されることになり、開口アレイ3とレンズアレイ2の間隔をhで、開口アレイ3の虚像とレンズアレイ2の間隔をh'で表すと、1/h-1/h' = 1/fの関係が成り立つ。眼には前記開口3aの虚像を通して画素1aの虚像が見えることになるため、開口3aの虚像の幅が画素1aの虚像の幅Mp / Pと一致するようにしておくとよい。開口3aの虚像結像の倍率はh'/hであるので、開口3aの幅はMph / Ph'とする。
【0045】
次に、カラー表示を行う場合について補足説明を加えておくと、このようにする場合には、画素としてRGB[赤 (Red)、緑 (Green)、青 (BLue)の三原色カラーモデル]の色画素を配置したフラットパネルディスプレイを採用し、該フラットパネルディスプレイが要素画像をカラー表示し得るように構成すればよく、従来のライトフィールドディスプレイや多眼式立体表示で用いられているカラー化の方法を利用することができる。
【0046】
例えば、水平垂直視差型では、以下の2つの方法が知られているが、何れの方法を採用してもよい。
(1)
図5に示すように、RGBの色画素1a'が水平方向あるいは垂直方向に繰り返すRGBストライプ配置のフラットパネルディスプレイ1を用いる場合、レンズアレイ方式では、レンズピッチを適切に設定することで、レンズ2aの中心に対応する色画素1a'の色が隣り合うレンズ2aでRGBと変わるようにする。即ち、眼から見ると一つのレンズ2aはRGBのどれか一色に見えるようになり、レンズ2aが立体表示の色画素のように機能する。
(2)
図6に示すように、一つのレンズ2aに対応する要素画像をRGBのどれか一色の色画素1a'のみで構成する。隣り合うレンズ2aで、要素画像を構成する色画素1a'の色をRGBと変える。この場合も、一つのレンズ2aはRGBのどれか一色に見えるが、(1)の方法では見る方向によってレンズ2aの色が変化するのに対して、この方法では見る方向によって色は変化しない。
【0047】
また、水平視差型では、以下の2つの方法が知られており、何れの方法を採用することもできる。
(1) RGBストライプ配置のフラットパネルディスプレイ1を用いる場合、
図7に示すように、レンチキュラレンズ(レンズアレイ2)を傾けることで、シリンドリカルレンズ(レンズ2a)の中心軸が通る色画素が垂直方向にRGBと変化するようにする。この場合、レンズ2aを通して見える色画素の色が垂直方向にRGBとして変化し、立体表示の色画素として機能する。この場合、パララックスバリア(開口アレイ3)もレンチキュラレンズと同じ角度で傾ける必要がある。
(2)
図8に示すように、水平方向に同色の色画素1a'が並び、垂直方向に色画素1a'の色がRGBと周期的に変化する色画素配置のフラットパネルディスプレイ1を用いる場合、レンチキュラレンズ(レンズアレイ2)の各シリンドリカルレンズ(レンズ2a)を通して見える色画素が垂直方向にRGBと変化し、立体表示の色画素として機能する。
【0048】
尚、本発明の立体表示装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、ペンタイル配置などの様々な色画素配置のフラットパネルディスプレイを用いてカラー表示を行う方法などを利用してもよいこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1 フラットパネルディスプレイ
1a 画素
1a' 色画素
2 レンズアレイ
2a レンズ
3 開口アレイ
3a 開口
p レンズピッチ